【解決手段】水洗大便器1は、貯水タンク20内に洗浄水が供給されるタンク給水時において上方フロートスイッチ64aもしくは下方フロートスイッチ64bの異常を検知したとき、全洗浄水をタンク側に供給する状態(タンク100%)から、全洗浄水のうちタンク側に20〜30%、リム側に70〜80%を供給する状態(タンク20〜30%、リム70〜80%)に給水路切替弁36を切り替えて貯水タンク20への洗浄水の供給を行なう。
前記制御手段は、前記貯水タンクが空状態のときに前記貯水タンクへの洗浄水の供給を開始させるタンク空給水時において、前記水洗大便器を施工してから初回の前記タンク空給水の場合は、前記貯水タンクに供給される洗浄水の流量が前記貯水タンクから前記オーバーフロー流路へ流出可能な洗浄水の最大流量より多くなるように前記給水手段を制御する請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0016】
先ず、
図1乃至
図3により、本発明の実施形態による水洗大便器の構造を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面図である。
図2は、
図1に示す水洗大便器の平面図である。
図3は、本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0018】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、排水トラップ管路14の下端に接続された排水管15と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐水するようになっている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0019】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。トラップ下降管14cの下端に上述した排水管15が接続されている。
【0020】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22によって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0021】
次に、
図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。
図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、上流側から、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30、定流量弁32、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34、給水路切替弁36がそれぞれ設けられている。定流量弁32は、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。
【0022】
これらの定流量弁32、電磁開閉弁34、及び、給水路切替弁36は、
図3に示すように、バルブユニット37(給水手段)として、一体的に組み立てられたものとなっている。また、給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路38、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路40が接続されている。
【0023】
ここで、定流量弁32を通過した洗浄水は、電磁開閉弁34に流入し、電磁開閉弁34を通過した洗浄水は、給水路切替弁36により、リム側であるリム側給水路38からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタンク側給水路40から貯水タンク20に供給されるようになっている。給水路切替弁36は、リム側給水路38とタンク側給水路40の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更出来る切替弁である。
これらの電磁開閉弁34の開閉操作、及び、給水路切替弁36の切替操作は、機能部10のコントローラ62(制御手段)により制御される。そして、電磁開閉弁34を開弁して給水路切替弁36がタンク側給水路40に連通させることにより貯水タンクへ水を供給することができる。
【0024】
また、貯水タンク20の下部には、ジェット側給水路46が接続されており、このジェット側給水路46の下流端は、ジェット吐水口16に接続されている。また、ジェット側給水路46の途中に上述した加圧ポンプ22が設けられている。この加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるためのものである。加圧ポンプ22の回転数や作動時間等は、機能部10に設けられたコントローラ62により制御される。
【0025】
ジェット側給水路46は、加圧ポンプ22より上流側の上流ジェット側給水路46aと下流側の下流ジェット側給水路46bとから構成されている。ここで、下流ジェット側給水路46bは、
図3に示すように、先ず、加圧ポンプ22から上方に延び、水洗大便器1のボウル部12の溜水面Aよりも上方に配管が配置され、その後、配管が下方に向けて延びて構成されている。このように上方に向けた凸型に形成されている下流ジェット側給水路46bにおいて、その凸型部分の最も高い部分である頂部46cは、貯水タンク20からジェット吐水口16に至るジェット側給水路46の中で最も高い部分になっている。
【0026】
次に、上述したリム側給水路38には、リム吐水用バキュームブレーカ48が設けられており、給水路24に負圧が発生したときに洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。また、リム吐出用バキュームブレーカ48は、
図3に示すように、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ48の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク20に流入するようになっている。
タンク側給水路40にも、逆止弁であるバキュームブレーカ42が設けられており、洗浄水の貯水タンクからの逆流を防止している。
【0027】
ここで、貯水タンク20は、密閉タイプの貯水タンクであり、タンク側給水路40と貯水タンク20との接続部には、逆止弁43が設けられている。この逆止弁43により、貯水タンク20が満水状態になった場合でも、逆止弁43が浮上して、タンク側給水路40との接続部を閉鎖するので、洗浄水がタンク側給水路40に逆流することがないようになっている。
同様に、戻り管路50と貯水タンク20の接続部にも、逆止弁44が設けられており、貯水タンク20が満水状態となった場合でも、洗浄水が戻り管路50に逆流することはないようになっている。
【0028】
さらに、ジェット側給水路46の上流ジェット側給水路46aには、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58が設けられている。これらのジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58は、加圧ポンプ22よりも下方の、貯水タンク20の下端部付近の高さに配置されている。このため、水抜栓58を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク20内及び加圧ポンプ22内の洗浄水を排水することができるようになっている。
【0029】
また、貯水タンク20と加圧ポンプ22の間にジェット吐水用フラッパー弁56を配置することにより、貯水タンク20内の水位が加圧ポンプ22の高さよりも低くなった場合に、洗浄水が加圧ポンプ22から貯水タンク20に逆流し、加圧ポンプ22内の洗浄水が抜け、加圧ポンプ22が空運転してしまうことを防止している。また、加圧ポンプ22の下方には、水受けトレイ60が配置されており、結露した水滴や漏水を受けるようになっている。
【0030】
さらに、貯水タンク20の上方フロートスイッチ64aよりも上方位置に、その一端が開口し(開口70a)、他端70bが下流ジェット側給水路46bに接続されたオーバーフロー流路70が設けられている。このオーバーフロー流路70には、逆止弁であるフラッパー弁72が取り付けられている。
このオーバーフロー流路70は、貯水タンク20において、水位が開口70aより高くなるような場合、その貯水タンク20内の水をジェット側給水路46を介してジェット吐水口16から便器本体2に逃がして、貯水タンク20から水が溢れ出すことがないようにするものである。
【0031】
また、このオーバーフロー流路70及びフラッパー弁72により、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止すると共に、これらの間の縁切りを行うことができるようになっている。また、オーバーフロー流路70の他端70bが、ボウル部12内の溜水の水位よりも上方に設けられているため、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流をより確実に防止するようにしている。
【0032】
上述した電磁開閉弁34、給水路切替弁36、加圧ポンプ22などの動作内容を説明する。コントローラ62は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁開閉弁34、給水路切替弁36を作動させ、先ずリム吐水口18から吐水し、リム吐水を継続させながら、次に加圧ポンプ22を作動してジェット吐水口からの吐水を開始させて、サイホン作用を発生させてボウル部12の溜水を汚物と共に排出洗浄する。さらに、コントローラ62は、加圧ポンプ22の作動停止した後もリム吐水を継続してボウル部12に溜水を貯めて洗浄終了する。その洗浄終了後、給水路切替弁36を貯水タンク20側に切り替えて洗浄水を貯水タンク20に補給する。貯水タンク20内の水位が上昇し、上方フロートスイッチ64aが規定の貯水量を検出すると、コントローラ62は、電磁開閉弁34を閉鎖して給水を停止する。
【0033】
次に、貯水タンク20の内部には、上方フロートスイッチ64a、及び、下方フロートスイッチ64bが配置されている。上方フロートスイッチ64aは、貯水タンク20内に洗浄水が供給されるときの貯水タンク20内の水位を検出する上方水位検出手段であって、貯水タンク20内の水位が所定の上方位置L1よりも上方へ上昇するとオフからオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、電磁開閉弁34を閉鎖させる。これにより、最終的に貯水タンク20内に貯水される洗浄水は止水水位(WFL)まで貯まる。下方フロートスイッチ64bは、貯水タンク20からジェット吐水口16に洗浄水が供給されるときの貯水タンク20内の水位を検出する下方水位検出手段であって、貯水タンク20内の水位が所定の下方位置L3よりも下方へ下降するとオフからオンに切り替わる。
【0034】
なお、給水路切替弁36を貯水タンク20側に切り替えて、全洗浄水をタンク側に供給する状態(タンク100%)の場合、貯水タンク20に供給される洗浄水の流量は、貯水タンク20からオーバーフロー流路70へ流出可能な洗浄水の最大流量よりも多くなる。一方で、給水路切替弁36を切り替えて、全洗浄水のうち貯水タンク20側に20〜30%以下で供給する状態の場合、貯水タンク20に供給される洗浄水の流量は、貯水タンク20からオーバーフロー流路70へ流出可能な洗浄水の最大流量以下となる。
【0035】
次に、
図4〜6により、本実施形態による水洗大便器の動作フローについて説明する。
図4は、本発明の実施形態による水洗大便器のタンク空給水について説明したフローチャートである。
図5は、本発明の実施形態による水洗大便器の便器洗浄開始からタンク給水開始までについて説明したフローチャートである。
図6は、本発明の実施形態による水洗大便器のタンク給水について説明したフローチャートである。
【0036】
まず、
図4に示すように、使用者によって便器洗浄スイッチ(図示せず)が押されると、コントローラ62は、貯水タンク20内が空状態であるか否かを判断する(S1,S2)。具体的には、使用者によって便器洗浄スイッチ(図示せず)が押されたときに、コントローラ62は、上方フロートスイッチ64aがオフ、且つ下方フロートスイッチ64bがオンであるか否かを判断する。
なお、便器洗浄スイッチは、便器本体2に供給される洗浄水の量が多くなる状態(大洗浄)と、便器本体2に供給される洗浄水の量が少なくなる状態(小洗浄)と、のいずれかを使用者が選択できるようになっている。
【0037】
ステップS1において、貯水タンク20内が空状態でなかった場合、つまり上方フロートスイッチ64aがオン、且つ下方フロートスイッチ64bがオフであった場合、コントローラ62は、便器本体2の洗浄を開始する便器洗浄が使用者によって指示されたと判断し、便器洗浄開始のステップに進む(S3)。便器洗浄開始後のフローについては、
図5以降で詳しく説明する。
一方で、ステップS2において、貯水タンク20内が空状態であった場合、つまり上方フロートスイッチ64aがオフ、且つ下方フロートスイッチ64bがオンであった場合は、コントローラ62は、貯水タンク20が空状態のときに貯水タンク20への洗浄水の供給を開始するタンク空給水が使用者によって指示されたと判断し、ステップS4へと進む。
なお、このタンク空給水は、水洗大便器1を施工した後に初めて貯水タンク20への給水を行なう場合や、凍結や固着等の理由で貯水タンク20内の水を一度全て抜いた後に再び貯水タンク20への給水を行なう場合のものである。
【0038】
そして、タンク空給水が開始される前に、ステップS4において、コントローラ62は、水洗大便器1が施工されてから初回のタンク空給水であるか否かを判断する。
ステップS4において、水洗大便器1が施工されてから初回のタンク空給水であると判断した場合は、ステップS5へと進み、コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水をリム側に供給する状態(リム100%)にする。これにより、便器本体2の排水トラップ管路14へと洗浄水を供給して排水トラップ管路14内に溜水面Aを形成させる。その後、コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水をタンク側に供給する状態(タンク100%)にし、貯水タンク20が満水になるまで貯水タンク20への給水を行なう(ステップS6,7)。ステップS7において、貯水タンク20内が満水になったときに貯水タンク20への給水を停止して(ステップS10)、タンク空給水を終了する。
【0039】
ステップS4において、水洗大便器1が施工されてから2回目以降のタンク空給水であると判断した場合は、コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水のうちタンク側に20〜30%、リム側に70〜80%を供給する状態(タンク20〜30%、リム70〜80%)にし、タンク空給水を開始してから所定時間T0が経過するまで貯水タンク20への給水を行い、貯水タンク20内を満水にする(ステップS8,9)。これは、2回目以降のタンク空給水のときは、上方フロートスイッチ64aおよび下方フロートスイッチ64bが故障して貯水タンク20内が空状態の検出結果となっているだけで、実際はすでに貯水タンク20内が満水であるという可能性があるため、このように制御している。ステップS9において、タンク空給水を開始してから所定時間T0が経過したときに貯水タンク20への給水を停止して(ステップS10)、タンク空給水を終了する。
【0040】
次に、便器洗浄開始後のフローについて説明する。
図5に示すように、
図4におけるステップS3において便器洗浄が開始されると、リム吐水口18からのリム吐水を開始する(ステップS11)。つまり、コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水をリム側に供給する状態(リム100%)にし、リム側給水路38からリム吐水口18へ洗浄水を供給する。なお、このリム吐水口18からのリム吐水は、タンク給水が開始される前(ステップS22)まで継続して行われる。
【0041】
ステップS11においてリム吐水口18からのリム吐水が開始されてから所定時間T1が経過したときに、ジェット吐水口16からのジェット吐水を開始する(ステップS12,13)。つまり、コントローラ62は、加圧ポンプ22を作動させて、貯水タンク20に貯水された洗浄水をジェット側給水路46を介してジェット吐水口16へ供給する。
【0042】
なお、ステップS13においてジェット吐水口16からのジェット吐水が開始されるにあたり、
図4のステップS1において使用者によって押された便器洗浄スイッチの種類が大洗浄であったか、それとも小洗浄であったかによってフローが分かれる(ステップS14)。
【0043】
ステップS14において大洗浄であった場合、つまりステップS1において使用者によって押された便器洗浄スイッチの種類が大洗浄であった場合、貯水タンク20内の水位が大洗浄時の死水水位に到達するまで貯水タンク20からジェット吐水口16への洗浄水の供給を行なった後に、ジェット吐水を停止する(ステップS15,16,20)。
具体的にいうと、コントローラ62は、貯水タンク20内の下方フロートスイッチ64bがオンに切り替わったか否かを判断する(ステップS15)。ステップS15において、下方フロートスイッチ64bがオンに切り替わっていないと判断した場合、コントローラ62は、ジェット吐水を開始してから所定時間T2が経過したか否かを判断する(ステップS16)。このステップS16は、下方フロートスイッチ64bが故障していてオフに切り替わらなかった場合の安全タイマーである。ステップS16において、ジェット吐水を開始してから所定時間T2が経過したと判断した場合、もしくは、ステップS15において、下方フロートスイッチ64bがオンに切り替わったと判断した場合、ジェット吐水を停止する(ステップS20)。すなわち、コントローラ62は、加圧ポンプ22を停止させて貯水タンク20からのジェット側給水路46を介したジェット吐水口16への洗浄水の供給を停止させる。
なお、本実施形態においては、ステップS15において下方フロートスイッチ64bがオンに切り替わったときにジェット吐水を停止する(ステップS20)こととしたが、本発明はこれに限らず、貯水タンク20からジェット吐水口16への洗浄水の供給量や下方フロートスイッチ64bが設けられる位置に応じて、ステップS15において下方フロートスイッチ64bがオンに切り替わってから所定時間が経過したときにジェット吐水を停止させてもよい。
【0044】
ステップS14において小洗浄であった場合、つまりステップS1において使用者によって押された便器洗浄スイッチの種類が小洗浄であった場合、貯水タンク20内の水位が小洗浄時の死水水位に到達するまで貯水タンク20からジェット吐水口16への洗浄水の供給を行なった後に、ジェット吐水を停止する(ステップS17〜20)。
具体的にいうと、コントローラ62は、貯水タンク20内の上方フロートスイッチ64aがオフに切り替わったか否かを判断する(ステップS17)。ステップS17において、上方フロートスイッチ64aがオフに切り替わったと判断した場合、上方フロートスイッチ64aがオフに切り替わってから所定時間T3が経過した後にジェット吐水を停止する(ステップS18,20)。ステップS17において、上方フロートスイッチ64aがオフに切り替わっていないと判断した場合、コントローラ62は、ジェット吐水を開始してから所定時間T4が経過したか否かを判断する(ステップS19)。このステップS19は、上方フロートスイッチ64aが故障していてオフに切り替わらなかった場合の安全タイマーである。ステップS19において、ジェット吐水を開始してから所定時間T4が経過した場合、ステップS20へと進み、ジェット吐水を停止する。
【0045】
貯水タンク20から便器本体2への洗浄水の供給開始から供給停止までをすべてタイマー制御すると、便器の製造誤差の影響で貯水タンク20から便器本体2へ供給される洗浄水の量にバラつきが生じてしまう虞がある。
しかし、本実施形態のように小洗浄時において貯水タンク20からジェット吐水口16への洗浄水の供給の停止を全てタイマー制御にて行なうのではなく、貯水タンク20内の水位の所定水位までの下降を、本来貯水タンク20内に洗浄水が供給されるときの貯水タンク20の水位を検出するための上方フロートスイッチ64aを利用することにより、小洗浄時における貯水タンク20から便器本体2への洗浄水の供給量のバラつきを抑制することができる。
【0046】
ステップS20においてジェット吐水を停止してから所定時間T5が経過した後、リム吐水口18からのリム吐水を停止して、貯水タンク20へ洗浄水を供給するタンク給水を開始する(ステップS21〜23)。つまり、ジェット吐水を停止してから所定時間T5が経過したとき、コントローラ62は、給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水をリム側に供給する状態(リム100%)から全洗浄水をタンク側に供給する状態(タンク100%)に切り替えてタンク給水を開始する。
【0047】
次に、タンク給水開始後のフローについて
図6を参照して説明する。
【0048】
まずは、上方フロートスイッチ64a及び下方フロートスイッチ64bが故障しておらず、正常な状態である場合について、
図6を用いて説明する。
タンク給水開始から一定時間が経過すると、まず貯水タンク20内の水位が下方位置L3まで上昇してきて下方フロートスイッチ64bがオフとなる(ステップS24)。その後、さらに一定時間が経過すると、貯水タンク20内の水位が上方位置L1まで上昇してきて今度は上方フロートスイッチ64aがオンとなる(ステップS25)。これにより、ステップS25からステップS30へと進み、タンク給水が停止される(ステップS30)。
【0049】
次に、下方フロートスイッチ64bに故障等の異常があり、オンからオフに切り替わらずにオンのままとなってしまう場合について説明する。
タンク給水開始から一定時間が経過すると、貯水タンク20内の水位が上昇してきて貯水タンク20内の水位が下方位置L3まで上昇する。しかし、上述したように、下方フロートスイッチ64bには故障等の異常があり、オフに切り替わらずにオンのままとなる。そして、タンク給水開始から所定時間T6が経過するまで下方フロートスイッチ64bがオフに切り替わらなかった場合、コントローラ62は、下方フロートスイッチ64bの異常を検知する(ステップS26)。そして、下方フロートスイッチ64bの異常を検知した場合、コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水のうちタンク側に20〜30%、リム側に70〜80%を供給する状態(タンク20〜30%、リム70〜80%)にし、タンク給水開始から所定時間T8が経過するまでタンク給水を行なった後にタンク給水を停止する(ステップS28〜30)。
【0050】
最後に、上方フロートスイッチ64aに故障等の異常があり、オフからオンに切り替わらずにオフのままとなってしまう場合について説明する。
タンク給水開始から一定時間が経過すると、貯水タンク20内の水位が上昇してきて貯水タンク20内の水位が下方位置L3まで上昇する。このとき、下方フロートスイッチ64bが正常であるとすると、下方フロートスイッチ64bがオフとなる(ステップS24)。その後、さらに一定時間が経過すると、貯水タンク20内の水位がさらに上昇してきて貯水タンク20内の水位が上方位置L1まで上昇する。しかし、上述したように、上方フロートスイッチ64aには故障等の異常があり、オンに切り替わらずにオフのままとなる。そして、ステップS24での下方フロートスイッチ64bのオフへの切り替わりから所定時間T7が経過するまでに上方フロートスイッチ64aがオンに切り替わらなかった場合、コントローラ62は、上方フロートスイッチ64aの異常を検知する(ステップS27)。そして、上方フロートスイッチ64aの異常を検知した場合、コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水のうちタンク側に20〜30%、リム側に70〜80%を供給する状態(タンク20〜30%、リム70〜80%)にしてタンク給水開始から所定時間T8が経過するまでタンク給水を行なった後に、タンク給水を停止する(ステップS28〜30)。
【0051】
次に、本実施形態における水洗大便器の作用効果を説明する。
【0052】
本実施形態において、水洗大便器1は、貯水タンク20内に洗浄水が供給されるタンク給水時において上方フロートスイッチ64aもしくは下方フロートスイッチ64bの異常を検知したとき、全洗浄水をタンク側に供給する状態(タンク100%)から、全洗浄水のうちタンク側に20〜30%、リム側に70〜80%を供給する状態(タンク20〜30%、リム70〜80%)に給水路切替弁36を切り替えて貯水タンク20への洗浄水の供給を行なう。つまり、コントローラ62は、タンク給水時において上方フロートスイッチ64aもしくは下方フロートスイッチ64bの異常を検知したとき、貯水タンク20に供給される洗浄水の流量が、貯水タンク20からオーバーフロー流路70へ流出可能な洗浄水の最大流量以下となるように、給水路切替弁36を切り替え制御する。これにより、上方フロートスイッチ64aもしくは下方フロートスイッチ64bが故障していたとしても、貯水タンク20内の洗浄水をオーバーフロー流路70から確実に便器本体2へ逃がすことができるため、貯水タンク20内の洗浄水がタンク側給水路40へ逆流したり、貯水タンク20外へ洗浄水が溢れてしまったりすることを防止することができる。
加えて、タンク給水時において確実に貯水タンク20に供給される洗浄水を止水水位WFLまで貯めることができるため、上方フロートスイッチ64aもしくは下方フロートスイッチ64bが故障していたとしても、水洗大便器1を不便なく使用することができる。
【0053】
また、本実施形態において、タンク給水時に上方フロートスイッチ64aもしくは下方フロートスイッチ64bの異常を検知したとき、リム吐水口18からも洗浄水が吐水され(タンク20〜30%、リム70〜80%)、タンク給水時というリム吐水が行なわれるはずではないタイミングでリム吐水が行なわれることにより、使用者が上方フロートスイッチ64aもしくは下方フロートスイッチ64bの異常に気付くことができる。
【0054】
また、本実施形態において、水洗大便器1のコントローラ62は、貯水タンク20が空状態のときに貯水タンク20への洗浄水の供給を開始させるタンク空給水時において、水洗大便器1を施工してから初回のタンク空給水時の場合は、貯水タンク20に供給される洗浄水の流量が貯水タンク20からオーバーフロー流路70へ流出可能な洗浄水の最大流量より多くなるように給水路切替弁36を切り替え制御する(タンク100%)一方で、水洗大便器1を施工してから2回目以降のタンク空給水時の場合は、貯水タンク20に供給される洗浄水の流量が貯水タンク20からオーバーフロー流路70へ流出可能な洗浄水の最大流量以下となるように給水路切替弁36を切り替え制御する(タンク20〜30%、リム70〜80%)。これにより、水洗大便器1を施工してから初回のタンク空給水時という貯水タンク20内が確実に空状態のときにおいては、貯水タンク20内に供給される洗浄水の流量をできるだけ多くしてなるべく早く貯水タンク20内を満水状態にすることにより、水洗大便器1を施工してから水洗大便器1を使える状態にするまでに掛かる時間を短縮することができる。
【0055】
以上、本願の開示する技術の実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものではない。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、貯水タンク20内の洗浄水をジェット側給水路46を介してジェット吐水口16へ供給することとしたが、本発明はこれに限らず、貯水タンク20内の洗浄水をリム吐水口18へ供給するような構成としてもよい。また、同様に、オーバーフロー流路70に流入した洗浄水を、リム吐水口18から便器本体2へ逃がすような構成としてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、給水路切替弁36を切り替え制御して全洗浄水のうちリム側に供給される洗浄水の割合とタンク側に供給される洗浄水の割合とを調整して、貯水タンク20へ供給される洗浄水の流量を調整することとしたが、本発明はこれに限らず、例えば単純に給水源から供給された洗浄水を貯水タンク20に供給する流量を調整可能な流量調整弁を設けることとしてもよい。
【0058】
前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。