【解決手段】防振基体が外周に接合される接合部は、フランジ部と接合部とが連絡する隅を取った面取部と、面取部の軸線方向に連接される基部と、基部の軸線方向に連接される先端部と、を備えている。接合部は、少なくとも先端部において、軸線と直交する第1方向へ投影した第1の投影面の面積よりも、軸線および第1方向と直交する第2方向へ投影した第2の投影面の面積が大きく設定される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施の形態における防振装置10の平面図であり、
図2は
図1のII−II線における防振装置10の断面図である。
図1に示す矢印X及び矢印Yは、防振装置10が搭載される自動車の左右方向(第1方向)及び前後方向(第2方向)をそれぞれ示している。軸線O方向(
図1紙面垂直方向)は自動車の上下方向であり、防振装置10の主たる振動の入力方向である。なお、
図2に示す防振装置10は無負荷状態を示している。
【0014】
図2に示すように防振装置10は、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントであり、振動源であるエンジン(図示せず)側に取り付けられる第1取付具20と、支持側の車体(図示せず)に取り付けられる第2取付具30と、第1取付具20及び第2取付具30の間に介在して第1取付具20及び第2取付具30を接合するゴム弾性体からなる防振基体50とを備えている。
【0015】
第1取付具20は、鉄系材料やアルミニウム合金等で一体成形されると共に軸線Oに沿って延びる軸状の鋳造製品である。第1取付具20は、防振基体50が外周に接合される接合部21と、接合部21に連接されるフランジ部25と、フランジ部25に連接される軸部28と、を備えている。軸部28の中心には、軸線Oに沿って延びるボルト穴29が形成されている。第1取付具20は、ボルト穴29に螺着されるボルト(図示せず)を介してエンジン等の相手側部材に取り付けられる。
【0016】
接合部21は、面取部22、基部23及び先端部24を備えている。面取部22は、フランジ部25と接合部21とが連絡する隅を取って、隅を丸面または斜面にするための部位である。面取部22は、本実施の形態では、フランジ部25と基部23とに接する丸みである。
【0017】
基部23は、面取部22の軸線O方向(フランジ部25の反対側)に連接される部位である。基部23は、本実施の形態では円柱状に形成されている。基部23は、軸線Oと直交する第1方向(
図1矢印X方向)へ基部23を投影した第1の投影面の面積と、軸線O及び第1方向と直交する第2方向(
図1矢印Y方向)へ基部23を投影した第2の投影面の面積とが、実質的に同じ大きさに設定されている。
【0018】
図2において、第1の投影面は、軸線Oを境にして右側の部分と、軸線Oを対称軸として右側の部分を反転させた部分と、を合わせた面である。第2の投影面は、軸線Oを境にして左側の部分と、軸線Oを対称軸として左側の部分を反転させた部分と、を合わせた面である。即ち基部23は、接合部21のうち、
図2において軸線Oを挟んだ左右の面積が実質的に同じ大きさとなる部分である。
【0019】
なお、基部23の2つの投影面の面積が実質的に同じ大きさとは、2つの投影面の面積が全く同じ大きさであるもの以外に、2つの投影面の面積が若干異なるものも含む意味である。2つの投影面の面積が異なる程度は、防振基体50のうち基部23の周囲に接合された部分の歪を抑制すること(後述する)の妨げにならない程度をいう。
【0020】
先端部24は、基部23の軸線O方向(フランジ部25の反対側)に連接される部位である。先端部24は、第1方向(
図1矢印X方向)へ先端部24を投影した第1の投影面の面積より、第2方向(
図1矢印Y方向)へ先端部24を投影した第2の投影面の面積が大きな扁平した円錐台状に形成されている。即ち先端部24は、接合部21のうち、
図2において軸線Oを挟んだ左側の面積が右側の面積よりも大きい部分である。
【0021】
本実施の形態では、先端部24は、第1の投影面に外周面24a,24b,24cが現れ、第2の投影面に外周面24d,24eが現れる。外周面24a,24b,24c及び外周面24d,24eは、フランジ部25から離れる方向へ、それぞれ軸線O方向に沿って連接されている。軸線Oを含む断面において、外周面24a,24b,24cは、フランジ部25から離れるにつれて、次第に軸線Oとの距離が小さくなるように傾斜する。軸線Oを含む断面において、外周面24aと軸線Oとのなす角は外周面24bと軸線Oとのなす角より小さく、外周面24aと軸線Oとのなす角は外周面24cと軸線Oとのなす角より大きい。
【0022】
軸線Oを含む断面において、外周面24dは、フランジ部25から離れるにつれて、次第に軸線Oとの距離が小さくなるように傾斜する。軸線Oを含む断面において、外周面24eは軸線Oと略平行である。軸線Oを含む断面において、外周面24dと軸線Oとのなす角は外周面24aと軸線Oとのなす角より小さい。外周面24dの軸線O方向の長さと外周面24aの軸線O方向の長さとは略同一である。外周面24eの軸線O方向の長さは、外周面24b及び外周面24cを合わせた軸線O方向の長さと略同一である。これにより、接合部21はフランジ部25に近い根元側が扁平した円柱状、フランジ部25から遠い先端側が扁平した柱状に形成されている。
【0023】
また、基部23の軸線O方向の中央の位置における外径の平均値よりも、先端部24の軸線O方向の中央の位置における外径の平均値が小さく設定される。なお、基部23の軸線O方向の中央の位置における外径の平均値とは、基部23の軸線O方向の中央の位置で軸線Oと直交する方向に基部23を切断して得られる切断面の面積と同じ面積をもつ円の直径をいう。先端部24の軸線O方向の中央の位置における外径の平均値とは、先端部24の軸線O方向の中央の位置で軸線Oと直交する方向に先端部24を切断して得られる切断面の面積と同じ面積をもつ円の直径をいう。
【0024】
フランジ部25は、基部23の外径よりも外径が大きい円盤状に形成されている。フランジ部25は、面取部22が連接される面の反対側の面に、軸線O方向に突出する突部27が形成されている。突部27は、フランジ部25の周方向に断続的に設けられているので、突部27の軸線O方向の高さよりも低い平坦部26が、突部27間に形成される。本実施の形態では、第1方向(
図1矢印X方向)に平坦部26が、第2方向(
図1矢印Y方向)に突部27が形成されている。
【0025】
第2取付具30は、接合部21の外径よりも大きい内径を有する筒状の高剛性の部材であり、軸線O方向の両端に開口部31,32が形成されている。第1取付具20は、接合部21を開口部31側へ向けて、第2取付具30に対し同一の軸線O上に離隔して配置される。第2取付具30に規制部材40が固定される。
【0026】
規制部材40は、ストッパ部56(後述する)が当接して第1取付具20と第2取付具30との相対変位を規制する高剛性の部材である。規制部材40は、第2取付具30が嵌め込まれる筒状の保持部41と、保持部41から軸線O方向に延びる筒状の第1規制部42と、第1規制部42の軸線O方向の端部から径方向の内側へ向けて突出する環状の第2規制部43とを備えている。
【0027】
防振基体50は、ゴム弾性体から構成される部材であり、軸線O方向の一端側の小径側端部51と、他端側の大径側端部52と、小径側端部51と大径側端部52とを連絡する壁部53と、を備えている。小径側端部51は、第1取付具20の接合部21の外周が加硫接合される部位である。小径側端部51に接合部21が接合されることで、接合部21が防振基体50に埋設される。大径側端部52は、小径側端部51より外径が大きく形成される部位である。大径側端部52は、第2取付具30の開口部31側の内周面に外周面が加硫接合される。
【0028】
第1取付具20及び第2取付具30に防振基体50が加硫接合されることで、第2取付具30の開口部31を塞ぐ壁部53が、第1取付具20と第2取付具30との間に介設される。壁部53は円錐台状に形成されている。防振基体50は、大径側端部52の軸線O方向の端面に凹部54が形成されている。凹部54は、軸線O方向に沿って第1取付具20から離れるにつれて内径が拡大する。防振基体50は、大径側端部52の外周縁の全周から軸線O方向へ向かって延びる筒状のシール層52aが形成されている。シール層52aは、第2取付具30の内周面に加硫接合されている。
【0029】
防振基体50は、小径側端部51に連絡部55が連接されている。連絡部55は、第1取付具20のうち、先端部24の外周面24a,24dから基部23、面取部22を経てフランジ部25に至る部分を取り囲む。連絡部55のうち、先端部24の外周面24a,24d及び基部23に接合される部分は、軸線O方向の全長に亘って外径が同一である。連絡部55は、小径側端部51とストッパ部56とを連絡する部位である。防振基体50は、先端部24の外周面24a,24dを取り囲む部分(連絡部55の一部)の外径より、先端部24の外周面24b,24c,24eを取り囲む部分(壁部53の一部)の外径が、大きく設定されている。
【0030】
ストッパ部56は、フランジ部25を覆うゴム弾性体である。ストッパ部56は、規制部材40に当接して第1取付具20と第2取付具30との相対変位を規制する。ストッパ部56は、フランジ部25の外周面を覆う側部57と、フランジ部25の平坦部26を覆う第1部58と、フランジ部25の突部27を覆う第2部59とを備えている。側部57は規制部材40の第1規制部42に対面する。側部57が第1規制部42に当接すると、軸線Oと直交する方向における第1取付具20と第2取付具30との相対変位を規制する。第1部58及び第2部59は規制部材40の第2規制部43に対面する。第1部58及び第2部59が第2規制部43に当接すると、軸線O方向における第1取付具20と第2取付具30との相対変位を規制する。
【0031】
第2部59におけるゴム弾性体の軸線O方向の厚さは、第1部58におけるゴム弾性体の軸線O方向の厚さより小さいので、第2部59のばねを第1部58のばねより硬くできる。本実施の形態では、第1方向(
図1矢印X方向)に第1部58が、第2方向(
図1矢印Y方向)に第2部59が形成されている。
【0032】
第2取付具30は、防振基体50の大径側端部52(凹部54)に対向するダイヤフラム60が、開口部32に取り付けられる。ダイヤフラム60は、ゴム弾性体から構成される円形状の可撓性膜であり、外周縁に円環状の固定金具61が加硫接合されている。
【0033】
第2取付具30、防振基体50及びダイヤフラム60により区画される密閉空間に液体(水等の非圧縮性流体)が封入され、液室が形成される。液室は仕切部材62により、防振基体50が室壁の一部を構成する受圧室64と、ダイヤフラム60が室壁の一部を構成する平衡室65とに区画される。仕切部材62は、外周がシール層52aに密着して液室を受圧室64及び平衡室65に区画し、外周に形成された溝63とシール層52aとの間に受圧室64と平衡室65とを互いに連通するオリフィス66を形成する。
【0034】
仕切部材62及びダイヤフラム60は、仕切部材62、ダイヤフラム60の順に開口部32から第2取付具30へ挿入された後、第2取付具30を縮径加工し、第2取付具30の端部33を内側へ折り曲げて固定金具61に密着させることにより、第2取付具30の内側に固定される。
【0035】
防振基体50が接合された第1取付具20の先端部24は、第1方向(
図1矢印X方向)へ先端部24を投影した第1の投影面の面積より、第2方向(
図1矢印Y方向)へ先端部24を投影した第2の投影面の面積が大きい。よって、第1方向のばねを第2方向のばねより軟らかくできる。防振装置10の第1方向を車両の左右に一致させ、防振装置10の第2方向を車両の前後に一致させることにより、車両前後方向の振動絶縁効果を発揮し、加減速等に起因する振動を軽減できる。一方、車両左右方向では振動減衰効果を発揮し、乗り心地を良化できる。
【0036】
第1取付具20の先端部24の2方向の投影面の面積を異ならせて2方向のばねを異ならせるので、第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)における壁部53の自由長に影響を与え難くすることができる。壁部53の自由長が短くなることを防止できるので、第1取付具20と第2取付具30との間に大変位が入力された場合にも、壁部53の座屈を防ぐことができる。また、防振基体50の外形を変更しなくて済むので、防振基体50を加硫成形する成形型を変更する必要がない。或いは、成形型の変更を最小限に抑えることができる。その結果、既存設備を有効活用できる。
【0037】
防振基体50は、先端部24の外周面24a,24dを取り囲む部分(連絡部55の一部)の外径より、先端部24の外周面24b,24c,24eを取り囲む部分(壁部53の一部)の外径が大きいので、荷重が入力されたときには、連絡部55と壁部53との境界B(表面および内部)に大きな歪が発生する。この歪を小さくするため、第1取付具20に基部23が形成されている。
【0038】
基部23は、第1方向(
図1矢印X方向)へ基部23を投影した第1の投影面の面積と、第2方向(
図1矢印Y方向)へ基部23を投影した第2の投影面の面積とが、実質的に同じ大きさである。基部23を取り囲む連絡部55は壁部53に比べて体積が小さく薄いので、基部23が無い場合に比べて、連絡部55に基部23の影響を与えて連絡部55を硬くできる。連絡部55の硬さが増すことにより、連絡部55と壁部53との境界Bに生じる歪を抑制できる。その結果、防振基体50の耐久性を向上できる。
【0039】
また、軸線Oを含む断面において、第1取付具20は、基部23に連接される先端部24の外周面24a,24dが軸線Oに対して傾斜している。そのため、接合部21を周方向に取り囲むゴム弾性体の厚さを、軸線O方向に沿って連絡部55から壁部53へ向かうにつれて徐々に大きくできる。壁部53へ近づくにつれて基部23の影響を連絡部55が受け難くできるので、連絡部55は、連絡部55と壁部53との境界Bに生じる歪を緩衝する。その結果、連絡部55と壁部53との境界Bに生じる歪を小さくできるので、防振基体50の耐久性を向上できる。
【0040】
第1取付具20は、フランジ部25と接合部21とが連絡する隅を取った面取部22が形成されているので、連絡部55のうち面取部22を覆う部分に荷重が集中しないようにできる。その結果、連絡部55のうち面取部22を覆う部分に亀裂が生じないようにできる。
【0041】
第1取付具20は、フランジ部25を覆うゴム弾性体からなるストッパ部56を備えている。第2取付具30に固定される規制部材40は、ストッパ部56と軸線O方向に対面して第1取付具20の相対変位を規制するので、防振基体50の軸線O方向の引張荷重を制限できる。その結果、防振基体50の耐久性を向上できる。
【0042】
フランジ部25は、軸線O方向に突出する突部27が、周方向に断続的に設けられている。ストッパ部56は、突部27間の平坦部26をゴム弾性体が覆う第1部58と、突部27をゴム弾性体が覆う第2部59とを備えている。第2部59におけるゴム弾性体の軸線O方向の厚さは、第1部58におけるゴム弾性体の軸線O方向の厚さより小さいので、第1部58のばねを第2部59のばねより軟らかくできる。よって、軸線O方向のばねの硬さの異なるストッパ部56を簡易に設けることができる。第1部58が規制部材40(第2規制部43)に当接したときには、第1部58の動ばねによる防振効果が得られる。
【0043】
本実施の形態では、第1方向(
図1矢印X方向)に第1部58が配置されている。防振基体50は第1方向のばね定数が第2方向のばね定数より小さいので、防振基体50は第1方向に入力された振動の減衰効果を発揮する。さらに、ストッパ部56の第1部58が規制部材40に当接することにより、第1部58による防振効果が得られる。
【0044】
なお、フランジ部25の突部27の位置を変更して、第2方向(
図1矢印Y方向)に第1部58を配置することは当然可能である。防振基体50は第2方向のばね定数が第1方向のばね定数より大きいので、防振基体50は第2方向に入力された振動の絶縁効果を発揮する。さらに、ストッパ部56の第1部58が規制部材40に当接することにより、第1部58による防振効果が得られる。
【0045】
また、フランジ部25の平坦部26を第1方向および第2方向に配置するように変更して、第1方向(
図1矢印X方向)及び第2方向(
図1矢印Y方向)に第1部58を配置することは当然可能である。この場合には、第1方向および第2方向のいずれから入力された振動においても、ストッパ部56の第1部58が規制部材40に当接することにより、第1部58の動ばねによる防振効果が得られる。
【0046】
次に
図3を参照して第2実施の形態について説明する。
図3は第2実施の形態における防振装置70の断面図である。
図3に断面図を示した防振装置70の切断の位置は、
図1及び
図2における切断の位置と同じである。
図3は、便宜上、ダイヤフラム60や仕切部材62の図示が省略されている。なお、
図3に示す防振装置70は無負荷状態を示している。
【0047】
図3に示すように防振装置70は、振動源であるエンジン(図示せず)側に取り付けられる第1取付具80と、支持側の車体(図示せず)に取り付けられる第2取付具90と、第1取付具80及び第2取付具90の間に介在して第1取付具80及び第2取付具90を接合するゴム弾性体からなる防振基体110とを備えている。
【0048】
第1取付具80は、鉄系材料やアルミニウム合金等で一体成形されると共に軸線Oに沿って延びる軸状の鋳造製品である。第1取付具80は、防振基体110が外周に接合される接合部81と、接合部81に連接されるフランジ部85と、フランジ部85に連接される軸部88と、を備えている。軸部88の中心には、軸線Oに沿って延びるボルト穴89が形成されている。第1取付具80は、ボルト穴89に螺着されるボルト(図示せず)を介してエンジン等の相手側部材に取り付けられる。
【0049】
接合部81は、面取部82、基部83及び先端部84を備えている。面取部82は、フランジ部85と接合部81とが連絡する隅を取って、隅を丸面にするための部位である。基部83は、面取部82の軸線O方向に連接される部位である。基部83は、本実施の形態では円錐台状に形成されている。基部83は、軸線Oと直交する第1方向(
図1矢印X方向)へ基部83を投影した第1の投影面の面積と、軸線O及び第1方向と直交する第2方向(
図1矢印Y方向)へ基部83を投影した第2の投影面の面積とが同じ大きさに設定されている。基部83は、接合部81のうち、
図3において軸線Oを挟んだ左右の面積が同じ大きさとなる部分である。
【0050】
先端部84は、基部83の軸線O方向に連接される部位である。先端部84は、第1方向(
図1矢印X方向)へ先端部84を投影した第1の投影面の面積より、第2方向(
図1矢印Y方向)へ先端部84を投影した第2の投影面の面積が大きな扁平した形をしている。先端部84は、接合部81のうち、
図3において軸線Oを挟んだ左側の面積が右側の面積よりも大きい部分である。
【0051】
本実施の形態では、先端部84は、第1の投影面に外周面84a,84bが現れ、第2の投影面に外周面84c,84dが現れる。外周面84a,b4b及び外周面84c,84dは、フランジ部85から離れる方向へ、それぞれ軸線O方向に沿って連接されている。軸線Oを含む断面において、外周面84a,84cは、フランジ部85から離れるにつれて、次第に軸線Oとの距離が小さくなるように傾斜する。軸線Oを含む断面において、外周面84aと軸線Oとのなす角は外周面84cと軸線Oとのなす角より大きい。軸線Oを含む断面において、外周面84b,84dは軸線Oと略平行であり、外周面84bと軸線Oとの距離は、外周面84dと軸線Oとの距離より小さい。これにより先端部84は、フランジ部85に近い根元側が扁平した円錐台状、フランジ部85から遠い先端側が扁平した柱状に形成されている。
【0052】
フランジ部85は、基部83の外径よりも外径が大きい円盤状に形成されている。フランジ部85は、面取部82が連接される面の反対側の面に、軸線O方向に突出する突部87が形成されている。突部87は、フランジ部85の周方向に断続的に設けられており、突部87の軸線O方向の高さよりも低い平坦部86が、突部87間に形成される。本実施の形態では、第1方向(
図1矢印X方向)に平坦部86が、第2方向(
図1矢印Y方向)に突部87が形成されている。
【0053】
第2取付具90は、接合部81の外径よりも大きい内径を有する筒状の高剛性の部材であり、軸線O方向の両端に開口部91,92が形成されている。第1取付具80は、接合部81を開口部91側へ向けて、第2取付具90に対し同一の軸線O上に離隔して配置される。第2取付具90に規制部材100が固定される。
【0054】
規制部材100は、ストッパ部116(後述する)が当接して第1取付具80と第2取付具90との相対変位を規制する高剛性の部材である。規制部材100は、第2取付具90が嵌め込まれる筒状の保持部101と、保持部101から軸線O方向に延びる筒状の第1規制部102と、第1規制部102の軸線O方向の端部から径方向の内側へ向けて突出する第2規制部103とを備えている。
【0055】
防振基体110は、ゴム弾性体から構成される部材であり、軸線O方向の一端側の小径側端部111と、他端側の大径側端部112と、小径側端部111と大径側端部112とを連絡する壁部113と、を備えている。小径側端部111は、第1取付具80の接合部81の外周が加硫接合される部位である。小径側端部111に接合部81が接合されることで、接合部81が防振基体110に埋設される。大径側端部112は、小径側端部111より外径が大きく形成される部位である。大径側端部112は、第2取付具90の開口部91側の内周面に外周面が加硫接合される。
【0056】
第1取付具80及び第2取付具90に防振基体110が加硫接合されることで、第2取付具90の開口部91を塞ぐ壁部113が、第1取付具80と第2取付具90との間に介設される。壁部113は円錐台状に形成されている。防振基体110は、大径側端部112の軸線O方向の端面に凹部114が形成されている。凹部114は、軸線O方向に沿って第1取付具80から離れるにつれて内径が拡大する。
【0057】
防振基体110は、小径側端部111に連絡部115が連接されている。連絡部115は、第1取付具80のうち、基部83から面取部82を経てフランジ部85に至る部分を取り囲む。連絡部115は、小径側端部111とストッパ部116とを連絡する部位である。
【0058】
ストッパ部116は、フランジ部85を覆うゴム弾性体である。ストッパ部116は、規制部材100に当接して第1取付具80と第2取付具90との相対変位を規制する。ストッパ部116は、フランジ部85の外周面を覆う側部117と、フランジ部85の平坦部86を覆う第1部118と、フランジ部85の突部87を覆う第2部119とを備えている。側部117は規制部材100の第1規制部102に対面する。側部117が第1規制部102に当接すると、軸線Oと直交する方向における第1取付具80と第2取付具90との相対変位を規制する。第1部118及び第2部119は規制部材100の第2規制部103に対面する。第1部118及び第2部119が第2規制部103に当接すると、軸線O方向における第1取付具80と第2取付具90との相対変位を規制する。
【0059】
第2部119におけるゴム弾性体の軸線O方向の厚さは、第1部118におけるゴム弾性体の軸線O方向の厚さより小さいので、第2部119のばねを第1部118のばねより硬くできる。本実施の形態では、第1方向(
図1矢印X方向)に第1部118が、第2方向(
図1矢印Y方向)に第2部119が形成されている。
【0060】
防振装置70は、防振基体110が接合された第1取付具80の先端部84が、第1方向(
図1矢印X方向)へ先端部84を投影した第1の投影面の面積より、第2方向(
図1矢印Y方向)へ先端部84を投影した第2の投影面の面積が大きい。よって、第1方向のばねを第2方向のばねより軟らかくできる。
【0061】
防振基体110は、面取部82を取り囲む部分(連絡部115の一部)の外径より、先端部84を取り囲む部分(壁部113の一部)の外径が、大きく設定されているので、荷重が入力されたときには、連絡部115と壁部113との境界B(表面および内部)に大きな歪が発生する。この歪を小さくするため、第1取付具80に基部83が形成されている。
【0062】
基部83は、第1方向(
図1矢印X方向)へ基部83を投影した第1の投影面の面積と、第2方向(
図1矢印Y方向)へ基部83を投影した第2の投影面の面積とが同じ大きさである。基部83を取り囲む連絡部115は壁部113に比べて体積が小さく薄いので、基部83が無い場合に比べて、基部83の影響を受けて連絡部115を硬くできる。連絡部115の硬さが増すことにより、連絡部115と壁部113との境界Bに生じる歪を抑制できる。その結果、防振基体110の耐久性を向上できる。
【0063】
また、軸線Oを含む断面において、第1取付具80は、基部83に連接される先端部84の外周面84a,84cが軸線Oに対して傾斜している。そのため、接合部81を周方向に取り囲むゴム弾性体の厚さを、軸線O方向に沿ってフランジ部85から離れるにつれて徐々に大きくできる。フランジ部85から離れるにつれて基部83の影響を連絡部115が受け難くできるので、連絡部115は、連絡部115と壁部113との境界Bに生じる歪を緩衝する。その結果、連絡部115と壁部113との境界Bに生じる歪を小さくできるので、防振基体110の耐久性を向上できる。
【0064】
さらに、ストッパ部116及び規制部材100により防振基体110の変位量を制限できるので、第1実施の形態と同様に、防振基体110に作用する引張荷重を抑制できる。よって、防振基体110の耐久性を向上できる。
【0065】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、例えば、第1取付具20,80、第2取付具30,90及び防振基体50,110の形状、第2取付具30,90に対する第1取付具20,80の位置など、要求特性に応じて適宜設定することが可能である。
【0066】
上記各実施の形態では、防振基体50,110とダイヤフラム60との間に液体を封入する液封入式の防振装置10,70の場合を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。ダイヤフラム60や仕切部材62等を省略して、防振基体50,110(ゴム弾性体の特性)だけを利用する非液封入式の防振装置に適用することは当然可能である。非液封入式の防振装置であっても、第1取付具20,80の形状によって、軸線O方向と直交する2方向のばね定数を異ならせることができるからである。
【0067】
上記各実施の形態では、第2取付具30,90の両端に開口部31,32,91,92が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ダイヤフラム60や仕切部材62等を省略した非液封入式の防振装置の場合には、一方の開口部32,92を省略した有底筒状の第2取付具30,90にすることができる。
【0068】
上記各実施の形態では、第1取付具20,80の面取部22,82に丸みを設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。隅を斜面にする面取りを面取部22,82に設けることは当然可能である。面取りを面取部22,82に施した場合も、連絡部55,115のうち面取部22,82を覆う部分に荷重が集中しないようにできる。
【0069】
上記各実施の形態では、軸方向視において略円形状に形成される第2取付具30,90及び防振基体50,110を備える防振装置10,70について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2取付具30,90及び防振基体50,110の形状(外形)を、軸方向視において長円状または楕円状に形成することは当然可能である。これにより、防振装置の設置スペースを有効利用することができ、自動車等への搭載性を向上できる。なお、長円状とは、小判型または競技トラック状、即ち、互いに等しい大きさの2つの半円、及び、これらを滑らかに結ぶ2本の直線により作られる形状である。
【0070】
上記各実施の形態では、接合部21,81(第1取付具20,80)の投影面の面積の小さい第1方向を車両左右方向に配置し、接合部21,81の投影面の面積の大きい第2方向を車両前後方向に配置する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、要求される性能に応じて、接合部21,81の投影面の面積の小さい第1方向を車両前後方向に配置し、接合部21,81の投影面の面積の大きい第2方向を車両左右方向に配置することは当然可能である。このように防振装置10,70を配置することにより、車両前後方向のばね定数を車両左右方向のばね定数より小さくできる。
【0071】
上記各実施の形態では、振動源となるエンジンを第1取付具20,80に取り付け、支持側の車体を第2取付具30,90に取り付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ブラケット(図示せず)を適宜用いて、支持側(車体)に第1取付具20,80を取り付け、振動源(エンジン)に第2取付具30,90を取り付けることは当然可能である。
【0072】
上記各実施の形態では、防振装置10,70を、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントとして用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。自動車用の防振装置に限定されるものではなく、例えば列車や自動二輪車、自転車等に用いられる防振装置に適用することは当然可能である。また、エンジンマウントのみならず、ボデーマウント、デフマウント等、種々の防振装置に適用することは当然可能である。