特開2018-100758(P2018-100758A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-100758(P2018-100758A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】弾性ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/387 20060101AFI20180601BHJP
   B61F 5/08 20060101ALI20180601BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20180601BHJP
【FI】
   F16F1/387 C
   B61F5/08
   F16F15/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-248401(P2016-248401)
(22)【出願日】2016年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】柏原 広樹
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB21
3J048DA01
3J048EA15
3J059AB11
3J059BA42
3J059BD01
3J059BD04
3J059BD06
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】弾性材の大型化や容積減少を招くことなく、その外端面の径方向長さを増大させ、径方向荷重だけでなく捻り、及び抉り荷重も受けながらも、弾性材の外端面に早期に亀裂が生じることが抑制され、耐久性向上が図れる弾性ブッシュを提供する。
【解決手段】軸心Pを有する軸からなる内側部材1と、内側部材1の径外側に周設される外筒2とを備え、内側部材1と外筒2との間に弾性材3が介装されてなる弾性ブッシュにおいて、弾性材3における軸心P方向の外端面5を軸心P方向に凹凸させて、外端面5の径方向の表面長さを増大させる表面長増大手段Hが設けられている。表面長増大手段Hは、凹曲面6と凸曲面7とを径方向に交互に繋げた波形状の外端面5により構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を有する筒又は軸からなる内側部材と、前記内側部材の径外側に周設される外筒とを備え、前記内側部材と前記外筒との間に弾性材が介装されてなる弾性ブッシュであって、
前記弾性材における前記軸心方向の外端面を前記軸心方向に凹凸させて、前記外端面の径方向の表面長さを増大させる表面長増大手段が設けられている弾性ブッシュ。
【請求項2】
前記表面長増大手段は、前記外端面が凹曲面と凸曲面とを径方向に交互に繋げた波形状に形成されることで構成されている請求項1に記載の弾性ブッシュ。
【請求項3】
前記表面長増大手段は、丸く膨張した底部を有して前記外端面から軸心方向に延びる切込みを前記弾性材に形成することにより構成されている請求項1に記載の弾性ブッシュ。
【請求項4】
前記外端面は、前記弾性材の径方向中間部の軸心方向の長さが前記弾性材の前記内側部材及び前記外側部材それぞれとの接合部の軸心方向の長さよりも短い凹入湾曲面に形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の弾性ブッシュ。
【請求項5】
前記軸心が、車両進行方向に対して交差する方向の軸心に設定された鉄道車両用のものである請求項1〜4の何れか一項に記載の弾性ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道台車の牽引装置といった走行車両などに好適な弾性ブッシュに係り、詳しくは、軸心を有する筒又は軸からなる内側部材と、内側部材の径外側に周設される外筒とを備え、内側部材と外筒との間に弾性材が介装されてなる弾性ブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の弾性ブッシュとしては、特許文献1において開示される自動車のサスペンションアームに用いられるゴムブッシュ(図1など)や、特許文献2(特に、図5〜7を参照)において開示されるように、鉄道車両用牽引装置の牽引リンク(10)に用いられた弾性ブッシュ(緩衝ゴムG)が知られている。
【0003】
これらの弾性ブッシュは、基本的には、内側部材と外筒とが軸心に対する径方向の力(荷重)を受けての緩衝作用が発揮されるように配置されている。しかしながら、実機においては、内側部材と外筒とが相対的に捻られる(抉られる)方向に荷重が掛る場合も多い。
【0004】
従来の弾性ブッシュAは、図6に示されるように、軸心Pを有する軸状の内側部材1と外筒2とを備え、内側部材1と外筒2との間に環状の弾性材3を介装して構成されている。弾性材3の軸心P方向の端面である外端面5,5は、弾性材3の径方向中間部の軸心P方向幅が最も小さくなる状態の凹入湾曲面に形成されていた。
従来の弾性ブッシュAにおいては、弾性材3の外端面5に応力集中し易く、そこから亀裂が生じ易い傾向があった。
【0005】
軸心荷重に加えて捻り、及び抉り荷重も受ける弾性ブッシュにおいて、弾性材の外端面(表面)に亀裂が入り易い傾向を抑制させ、弾性ブッシュとしての耐久性向上を図る手段としては、特許文献3や特許文献4において示されるものがある。
特許文献3にて開示される弾性ブッシュは、内側部材(インナ筒金具12)と外筒(アウタ筒金具14)との間に介装されている弾性材(本体ゴム弾性体16)は、その軸心(L)方向の表面である外端面を、軸心(L)方向に大きく湾入する凹入形状とされている。特許文献4においても、特許文献3のものと同様の工夫が弾性材(40)に為されている。
【0006】
特許文献3,4のものでは、弾性材の厚みが制約される条件化において、外端面の凹入量を大きく増すことで表面長さを増やして応力集中を避け、外端面に早期に亀裂が発生し難いようにする手段である。しかしながら、単に大きく凹入させる手段では、弾性ブッシュの大きさ自体を変えない場合は弾性材の容積減少が無視できなくなり、また、弾性材の容積を確保する場合には弾性材の、つまりは弾性ブッシュの大きさが軸心方向などに大型化するので、いずれの場合であっても実現は困難である。従って、弾性ブッシュを大型化させず、かつ、弾性材を容積減少させ過ぎずに外端面の径方向長さを増大させるには、より一層の改善が求められるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−051099号公報
【特許文献2】特開2009−051420号公報
【特許文献3】特開2015−010627号公報
【特許文献4】特開2016−017523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、さらなる構造工夫により、弾性材の大型化や容積減少を招くことなく、その外端面の径方向長さを増大させ、径方向荷重だけでなく捻り、及び抉り荷重も受けながらも、弾性材の外端面に早期に亀裂が生じることが抑制され、耐久性向上が図れる弾性ブッシュを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、軸心Pを有する筒又は軸からなる内側部材1と、前記内側部材1の径外側に周設される外筒2とを備え、前記内側部材1と前記外筒2との間に弾性材3が介装されてなる弾性ブッシュにおいて、
前記弾性材3における前記軸心P方向の外端面5を前記軸心P方向に凹凸させて、前記外端面5の径方向の表面長さを増大させる表面長増大手段Hが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の弾性ブッシュにおいて、
前記表面長増大手段Hは、前記外端面5が凹曲面6と凸曲面7とを径方向に交互に繋げた波形状に形成されることで構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の弾性ブッシュにおいて、
前記表面長増大手段Hは、丸く膨張した底部9を有して前記外端面5から軸心P方向に延びる切込み8を前記弾性材3に形成することにより構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の弾性ブッシュにおいて、
前記外端面5は、前記弾性材3の径方向中間部の軸心P方向の長さLtが前記弾性材3の前記内側部材1及び前記外筒2それぞれとの接合部の軸心P方向の長さL1,L2よりも短い凹入湾曲面に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の弾性ブッシュにおいて、
前記軸心Pが、車両進行方向Zに対して交差する方向Xの軸心に設定された鉄道車両用のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、外端面を軸心方向に凹凸させる表面長増大手段により、弾性ブッシュを軸心方向や中心線の方向に大型化させることなく、かつ、弾性材を過剰に容積減少させることなく外端面の径方向長さを増大させ、応力集中が生じ難いように改善されている。
その結果、さらなる構造工夫により、弾性材の大型化や容積減少を招くことなく、その外端面の径方向長さを増大させ、径方向荷重だけでなく捻り、及び抉り荷重も受けながらも、弾性材の外端面に早期に亀裂が生じることが抑制され、耐久性向上が図れる弾性ブッシュを提供することができる。
【0015】
請求項2の発明は、凹曲面と凸曲面とを径方向に交互に繋げた波形状の外端面とする表面長増大手段であり、請求項3の発明は、丸く膨張した底部を有して外端面から軸心方向に延びる切込みを弾性材に形成する表面長増大手段である。
【0016】
請求項4の発明は、弾性材の外端面が凹入湾曲面に形成された弾性ブッシュであり、請求項5の発明は、内側部材の軸心が、車両進行方向に対して交差する方向の軸心に設定された鉄道車両用の弾性ブッシュである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】弾性ブッシュを示し、(a)は一部切欠きの側面図、(b)は正面図
図2図1(a)における弾性材の要部を示す断面図
図3】弾性ブッシュの変形例を示す一部切欠きの側面図(実施形態2)
図4】実施形態3の弾性ブッシュを示す一部切欠きの側面図
図5図4における弾性材の要部を示す断面図
図6】従来の弾性ブッシュを示す一部切欠きの側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明による弾性ブッシュの実施の形態を、鉄道車両用のものとして図面を参照しながら説明する。なお、各図においては、軸心P方向である矢印X方向を左右、中心線Wの方向である矢印Y方向を上下、矢印Z方向を前後として説明する。なお、矢印Xを「方向X」と換言することもある。
【0019】
〔実施形態1〕
図1及び図2に示されるように、弾性ブッシュAは、軸心Pを有する軸状部材である支軸(内側部材の一例)1と、支軸1の径外側に周設される外筒2と、支軸1と外筒2との環状隙間を満たす筒状ゴム(弾性材の一例)3を設けて構成されている。弾性ブッシュAの実機での使用例としては、軸心Pが、車両進行方向Zに対して交差する方向Xの軸心に設定された鉄道車両用のものであって、前述の特許文献2において開示されたように、牽引リンクの前後に用いられる構成がある。
【0020】
支軸1は、図1及び図2に示されるように、長手方向で両端の取付部1A,1Aと、長手方向中間(中央)の支持部1Bとからなる金属製のものであり、支持部1Bの外周面1bに筒状ゴム3が外囲固着されている。支持部1Bは円柱状の部位であり、各取付部1A,1Aは、支持部1Bより若干細径(同径又は大径でも可)で、かつ、前後に平面状の取付面1aを有して左右方向視の形状が小判型となる部位である。各取付部1A,1Aには、ボルト層通用の取付孔4があけられている。
【0021】
鋼板などの金属製の円環でなる外筒2は、図1及び図2に示されるように、支持部1Bの径外側に同心状態で配備されている。支軸1と外筒2とは、中心線Wに関して線対称に形成されている。外筒2の左右幅は、支持部1Bの左右幅よりも少し狭い程度の長さに設定されている。筒状ゴム3は、加硫接着により支持部1Bの外周面1bと外筒2の内周面2aとに固着された状態で、支軸1と外筒2との間の環状空間部に充填配置されている。
【0022】
各外端面5は、全体として見た場合、基本的に、弾性材3の径方向中間部の軸心P方向の長さLtが、弾性材3の支軸1及び外筒2それぞれとの接合部の軸心P方向の長さL1,L2よりも短い凹入湾曲面に形成されている(図6も参照)。例えば、径方向中間部長さLtは50〜70mm(好ましくは63mm)、内径側長さL1は90〜110mm(好ましくは102mm)に、外径側長さL2は70〜90mm(好ましくは80mm)にそれぞれ設定されているが、これらの値には限られない。その基本的な凹入湾曲面である外端面5に表面長増大手段Hが設けられている。
【0023】
表面長増大手段Hは、図1及び図2に示されるように、弾性材3における軸心P方向の端面である外端面5を軸心P方向に凹凸させて、外端面5の径方向の表面長さを増大させるものである。即ち、凹曲面(凹円弧面)6と凸曲面(凸円弧面)7とを径方向に交互に繋げた波形状に形成されることで構成されている。複数の凹及び凸曲面6,7は、外端面5の周方向に連続形成されて軸心P方向視で環状をなしている。この凹凸曲面による表面長増大手段Hにより、外端面5の径方向長さを無理なく増大させることができている。
【0024】
つまり、表面長増大手段Hによって、弾性ブッシュAを軸心P方向や中心線Wの方向に大型化させることなく、かつ、弾性材3を過剰に容積減少させることなく外端面5の径方向長さを増大させることができている。その結果、軸心荷重に加えて捻り、及び抉り変位も受ける弾性ブッシュにおいて、外端面5における応力集中が低減されるようになり、耐久性が向上するように改善されている。
【0025】
〔実施形態2〕
図3に、実施形態2による弾性ブッシュAが示されている。この弾性ブッシュAは、図1,2に示された実施形態1の弾性ブッシュAの支軸1が、内周面1cを有する金属製の筒部材1に置き換えられた以外は、図1,2の弾性ブッシュAと同じである。従って、対応する箇所には同じ符号を付し、説明は割愛する。
【0026】
〔実施形態3〕
図4及び図5に、実施形態3による弾性ブッシュAが示されている。実施形態3の弾性ブッシュAは、表面長増大手段Hが異なる以外は、実施形態1の弾性ブッシュAと同じであり、対応する箇所には同じ符号を付し、説明は割愛する。
【0027】
実施形態3の弾性ブッシュAの表面長増大手段Hは、図5に示されるように、丸く膨張した底部9を有して外端面5から軸心P方向に延びる切込み8を弾性材3に形成することにより構成されている。底部9は、例として内球面状(球の内面)に形成されている。
【0028】
切込み8の深さ(軸心P方向長さ)dは、あまり深くなり過ぎず、かつ、浅過ぎず程度の長さ(例えば4.6mm)に設定されている。軸心P周りに連続形成された周溝である切込み8は、同心状で径方向へ均等間隔又は不等間隔ごとに5つ形成されているが、それ以上やそれ以下の個数でもよい。複数の切込み8により、外端面5の径方向長さは飛躍的に増大しており、かつ、丸められた底部9により、切込み8から亀裂がまず生じないように抑制されている。
【0029】
〔別実施例〕
表面長増大手段Hは、より小幅な又は大幅な凹凸曲面を交互に繋げたもの(実施形態1の変形例)や、切込み8の形状や深さ、切込み方向を変化させたもの(実施形態3の変形例)、或いはその他のものでも良い。
【符号の説明】
【0030】
1 内側部材(支軸)
2 外筒
3 弾性材(筒状ゴム)
5 外端面
6 凹曲面
7 凸曲面
8 切込み
9 底部
H 表面長増大手段
L1 弾性材の内側部材との接合部の軸心方向の長さ
L2 弾性材の外筒との接合部の軸心P方向の長さ
Lt 弾性材の径方向中間部の軸心方向の長さ
P 軸心
X 車両進行方向に交差する方向
Z 車両進行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6