特開2018-100830(P2018-100830A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-100830(P2018-100830A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】光スペクトル測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20180601BHJP
   G01J 3/04 20060101ALI20180601BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20180601BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20180601BHJP
【FI】
   G01J3/18
   G01J3/04
   G01J3/02 S
   G02B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-244990(P2016-244990)
(22)【出願日】2016年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉城 竜
(72)【発明者】
【氏名】小島 学
(72)【発明者】
【氏名】堀口 篤
(72)【発明者】
【氏名】金子 力
(72)【発明者】
【氏名】山本 智一
(72)【発明者】
【氏名】森 徹
【テーマコード(参考)】
2G020
2H249
【Fターム(参考)】
2G020BA20
2G020CB04
2G020CB13
2G020CC04
2G020CC07
2G020CC45
2G020CC46
2G020CC55
2G020CD06
2G020CD24
2G020CD51
2H249AA58
(57)【要約】
【課題】測定品質の低下を招くことなく、広い測定帯域を有する光スペクトル測定装置を提供する。
【解決手段】入射光を分光し、スリットから出射する回折格子分光器と、受光特性の異なる複数個のフォトダイオードセンサを前記スリットからの出射光の進行方向に直交する平面上に並べた移動台と、いずれかのフォトダイオードセンサに出射光が入射する状態に移動台を移動させる駆動機構と、を備える光スペクトル測定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を分光し、スリットから出射する回折格子分光器と、
受光特性の異なる複数個のフォトダイオードセンサを前記スリットからの出射光の進行方向に直交する平面上に並べた移動台と、
いずれかのフォトダイオードセンサに前記出射光が入射する状態に前記移動台を移動させる駆動機構と、
を備えることを特徴とする光スペクトル測定装置。
【請求項2】
前記スリットは、前記入射光の非分散方向に延びた形状であることを特徴とする請求項1に記載の光スペクトル測定装置。
【請求項3】
前記複数個のフォトダイオードセンサは、前記入射光の分散方向に並んでおり、
前記駆動機構は、前記移動台を前記入射光の分散方向に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の光スペクトル測定装置。
【請求項4】
前記複数個のフォトダイオードセンサは、1つのパッケージに収容されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光スペクトル測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子分光器を使用した光スペクトル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光スペクトル測定装置は、入力光に対して、各波長に対応した光パワーを分光により測定して分析を行なう測定器であり、光ファイバ伝送システムの評価や光通信用デバイスの特性評価を目的とした測定等に広く使用されている。
【0003】
図8は、従来の光スペクトル測定装置500の測定原理を示す図である。測定対象の入力光は、光バンドパスフィルタ521で、狭い波長スロットに分割され、フォトダイオード540で電気信号に変換される。そして、増幅器550で増幅され、A/D変換器560でデジタル信号に変換される。
【0004】
光バンドパスフィルタ521の中心波長を掃引させることで得られる信号をプロットしていくことで光スペクトラムが得られ、表示装置570に測定結果として表示される。この光バンドパスフィルタ521は,回折格子を波長分散素子として使用したメカニカルな装置でモノクロメータと呼ばれる。光バンドパスフィルタ521では、回転ステージ上に配された回折格子の角度を、モータを備えた位置制御部526で変更することにより中心波長を掃引させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−85729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光スペクトル測定装置は、使用する光学素子の特性によって測定帯域が制限される。例えば、回折格子の回折効率により分光器を透過できる光の帯域が制限される。また、分光器を透過した光についても、フォトダイオードの受光感度の範囲内でないと電気信号に変換できず、測定不能となる。このため、測定帯域に合わせて適切な光学素子を選択する必要がある。
【0007】
例えば、光スペクトル測定装置のフォトダイオードとして一般的に用いられているInGaAsのセンサは、800nm〜1700nmの近赤外領域に高い感度を有しているが、これよりも短波長あるいは長波長の範囲では感度が急激に低下する。
【0008】
このため、短波長側を測定する場合には、例えば、400nm〜1100nmの範囲で感度が優れるSiセンサを搭載したフォトダイオードが用いられる。しかしながら、Siフォトダイオードもこの範囲外では感度が急激に低下する。
【0009】
そこで、広い測定帯域を実現するために、特性の異なる2つのフォトダイオードを波長範囲に合わせて切り換えることが考えられる。例えば、図9に示すような、フォトダイオードのパッケージの中に感度帯域が異なる2つのセンサ(第1センサ581、第2センサ582)を同軸上に並べた市販の同軸複合フォトダイオード580を利用することが考えられる。本図において、同軸複合フォトダイオード580の前段には、スリット591と光学フィルタ592とを配置している。
【0010】
同軸複合フォトダイオード580では、第2センサ582で受光する範囲の波長の光は、第1センサ581を透過して、第2センサ582に入射することになる。このため、受光するセンサの切り替えを電気的に行うことができ、機構的な切り替えの必要がなく、測定速度を遅くすることなく測定帯域を広げることができる。
【0011】
しかし、第2センサ582で測定する光が第1センサ581を通過することによりいくつかの問題が発生する。
【0012】
第1の問題は、測定波形にリップルが乗ってしまうことである。第1センサ581が平行平板になっているため、図10のように入射光の一部が第1センサ581の端面間で反射してしまい、干渉が起こる。このため図11のように第2センサ582での光スペクトルの測定結果に、第1センサ581の厚みに応じたリップルが載ってしまい、正確な測定を行うことができない。
【0013】
このリップルの周期波長λFSRは下記の[数1]で求めることができる。ここで、λは波長、nは第1センサ581の屈折率、Lは第1センサ581の厚さである。
【数1】
例として、λ=1530nm、n=3.48、L=0.25mmとすると、現われるリップルの周期波長λFSRは1.35nmとなる。このとき、測定器の分解能が周期波長以上の広さである場合、このリップルは平均化され、目立たなくなる。つまり高分解能な測定をする場合に顕著に見える問題となる。図8で示すような光スペクトル測定装置500は、一般的に100pm以下の高分解能な測定を行なうため、大きな問題となってしまう。
【0014】
第2の問題は、測定効率が低下してしまうことである。同軸複合フォトダイオード580では、感度がクロスするポイントでセンサを切り替えることが想定されるが、第2センサ582で測定する範囲で、第1センサ581に感度のある範囲があると、この分の光が第1センサ581に吸収されてしまうことになる。この結果、第2センサ582に到達する光が減ってしまい、感度がクロスしている範囲での測定効率が、著しく低下してしまうことになる。
【0015】
そこで、本発明は、測定品質の低下を招くことなく、広い測定帯域を有する光スペクトル測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の光スペクトル測定装置は、入射光を分光し、スリットから出射する回折格子分光器と、受光特性の異なる複数個のフォトダイオードセンサを前記スリットからの出射光の進行方向に直交する平面上に並べた移動台と、いずれかのフォトダイオードセンサに前記出射光が入射する状態に前記移動台を移動させる駆動機構と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記スリットは、前記入射光の非分散方向に延びた形状とすることができる。
また、前記複数個のフォトダイオードセンサは、前記入射光の分散方向に並んでおり、前記駆動機構は、前記移動台を前記入射光の分散方向に移動させることができる。
また、前記複数個のフォトダイオードセンサは、1つのパッケージに収容されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定品質の低下を招くことなく、広い測定帯域を有する光スペクトル測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の光スペクトル測定装置の基本構成を示すブロック図である。
図2】並列フォトダイオードの第1例を示す図である。
図3】並列フォトダイオードの移動方向を説明する図である。
図4】第1例のスリットの形状を示す図である。
図5】並列フォトダイオードの移動の様子を示す図である。
図6】並列フォトダイオードの第2例を示す図である。
図7】第2例のスリットの形状を示す図である。
図8】従来の光スペクトル測定装置の測定原理を示す図である。
図9】同軸複合フォトダイオードを説明する図である。
図10】リップルの発生原因を説明する図である。
図11】リップルが乗った測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の光スペクトル測定装置の基本構成を示すブロック図である。本図に示すように、光スペクトル測定装置100は、回折格子分光器120、並列フォトダイオード140、増幅器150、A/D変換器160、表示装置170、制御部180、駆動部190を備えている。
【0020】
回折格子分光器120は、回折格子を波長分散素子として使用したモノクロメータで構成された光バンドパスフィルタ121と、回転ステージ上に配された回折格子の角度を、モータを用いて変更することにより中心波長を掃引させる位置制御部126を備えている。増幅器150、A/D変換器160、表示装置170については従来と同様である。
【0021】
本図に示すように、本実施形態では、複数のフォトダイオードセンサを、各受光面が同一面上になるように配置した並列フォトダイオード140を用いている。
【0022】
図2は、並列フォトダイオード140の第1例を示す図である。並列フォトダイオード140の第1例では、測定帯域が異なる第1フォトダイオード141と第2フォトダイオード142とをブロック(移動台)148に載せた構成となっている。第1フォトダイオード141の受光面と第2フォトダイオード142の受光面とが、スリット122からの出射光の進行方向に直交する平面上に並んでいる。なお、並列に配置するフォトダイオードは2個に限られず3個以上であってもよい。
【0023】
このブロック148を、駆動部190を用いて移動させることで、スリット122を通過した光をいずれかのフォトダイオードに入射させる。駆動部190は、例えば、ステッピングモータとすることができ、移動方向は図示するようにフォトダイオードが並んだ方向とする。また、移動制御は、制御部180により行なわれる。
【0024】
ここで、フォトダイオードを並べる方向、すなわち、並列フォトダイオード140の移動方向は、図3に示すように、回折格子分光器120の分散方向と一致させている。
【0025】
本実施形態において、スリット122は、図4に示すように、ピンホールではなく、非分散方向に延びた横長形状となっている。回折格子分光器120の分散方向の細さが測定波形の分解能やシャープさにつながってくることから、スリット122の短手方向が回折格子分光器120の分散方向になるようにしている。これに対し、非分散方向の細さは測定波形や分解能に影響しないため、幅広とすることで、センサへの受光効率を高めるようにしている。
【0026】
ただし、非分散方向のスリット幅を極端に長くすることは困難である。なぜならば、スリット122から光を出力させるにはスリット122上に光を結像させる必要があるが、非分散方向に長くなるにつれ結像ビームのサイズが大きくなってしまう。これは光を結像させるための役割を果たすレンズの収差の影響を受けてしまうためである。よって非分散方向のスリット幅は、1mm程度が一般的である。これは、フォトダイオードの受光面の大きさと、ほぼ同じサイズである。
【0027】
一般に、光スペクトル測定装置では、フォトダイオードの位置を自動的に最適な高さに調整するためのアライメント機構が搭載されている。並列フォトダイオード140を移動させる駆動部190は、このアライメント機構を利用するようにしてもよい。
【0028】
図5は、並列フォトダイオード140の移動の様子を示す図である。図5(a)は、第1フォトダイオード141にスリット122を通過した光が入射している状態を示し、図5(b)は、第2フォトダイオード142にスリット122を通過した光が入射している状態を示している。制御部180は、駆動部190を制御することで、この2つの状態を測定帯域に応じて切り換える。
【0029】
上述のように、本実施形態では、2つのフォトダイオードを、回折格子分光器120の分散方向に並べている構造となっている。フォトダイオードのセンサの形状は円形や、正方形になっているものが一般的であるが、図4に示したように、センサ面で受光する光の形は、スリット122の影響で非分散方向に長い形となっている。このため、分散方向の光の径は小さく、センサの受光径に対して余裕があることになる。これにより、フォトダイオード切替時のモータの静止位置精度による、センサの受光レベルの変動を抑えることができ、安定した測定を行なうことができる。
【0030】
これに対して、非分散方向にフォトダイオードを並べると、スリット122の長手方向にフォトダイオードを移動することになる。そうすると、フォトダイオードの位置ずれにより、受光する光がセンサから外れやすくなってしまう。つまり、フォトダイオードの受光レベルの位置感度が高くなり、安定した測定が困難になる。
【0031】
光がセンサから外れないように、センサ面積を大きくすることも考えられる。しかし、センサを大きくすると、フォトダイオードの特性として一般的に雑音レベルが上がり、測定器としての感度が低下してしまう。このため、安易にセンサ面積を大きくすることはできない。従って、本実施形態のように、分散方向に並べる配置が有効である。
【0032】
図5に示したように、本実施形態の光スペクトル測定装置100では、2つのフォトダイオードを並列配置とすることで各センサがそれぞれ独立して受光できるようになる。これにより、同軸複合フォトダイオード580を用いた場合に生じる、第1センサ581を透過することによる、感度がクロスするポイントでの測定効率低下、端面間反射によるリップルの影響を回避することができる。このため、測定品質の低下を招くことなく、広い波長範囲での高分解能かつ正確な光スペクトル測定が可能になる。
【0033】
また、同軸複合フォトダイオード580では、構造上、第1センサ581に独立して冷却機構を設けることができない。一般に、フォトダイオードのセンサは受光感度を量子効率として表すことができるが、この効率には温度依存性がある。このため、通常はセンサを冷却素子上に配置して一定の温度に保っているが、同軸複合フォトダイオード580では、第1センサ581に独立して冷却機構を設けることができないことから、第1センサ581の感度特性が温度に依存して変化してしまうという懸念があった。
【0034】
しかしながら、本実施形態の並列フォトダイオード140では、それぞれのフォトダイオードを冷却素子上に配置することができる。このため、温度上昇を防ぎ、センサの温度変化による感度特性の変化を抑え、測定波形への影響を回避することができる。
【0035】
並列フォトダイオード140の構成の例として、第1フォトダイオード141にSi、第2フォトダイオード142にInGaAsを組み合わせることで、300〜1800nmの波長範囲において感度を確保することができる。この複合素子を回折格子分光器120と組み合わせることで、広い測定帯域において高分解能かつ高感度な光スペクトル測定装置100を実現することができる。
【0036】
次に、並列フォトダイオード140の第2例について、図6を参照して説明する。並列フォトダイオード140の第1例では、独立したパッケージに収容されたセンサを複数個並べた構成を挙げたが、第2例は、1つのパッケージに複数個の異なるセンサを並べた構成である。本図の例では、冷却素子145上に第1センサ143と第2センサ144とを分散方向に並べて配置し、ブロック149上に載せている。
【0037】
この場合も、ブロック(移動台)149を、駆動部190を用いて移動させることで、スリット122を通過した光をいずれかのセンサに入射させる。また、図7に示すように、スリット122は、非分散方向に延びた横長のスリットとすることで、高分解能かつ広帯域な測定を安定して行なうことができる。
【0038】
さらに、第2例では、2つのセンサ間の距離を極めて短くすることができるため、移動距離が小さくなり、センサに切り換えにかかる時間をより短縮することができる
第1例、第2例とも、並列に採用するセンサは、SiとInGaAsが代表的であるが、同素材のセンサでもタイプによって感度波長範囲が異なるため、適宜選択して組み合わせることで、広い感度波長範囲を実現することができる。また、別素材のセンサを用いてもよい。
【0039】
このとき、センサの組み合わせによっては感度が低くなる波長範囲が存在したり、センサの電気的なノイズが大きくなってしまう可能性があるため、選択には注意が必要である。しかしながら、センサを適切に組み合わせることで、感度波長範囲200〜2500nm程度の広帯域を実現する可能性がある。このように、本実施形態によれば、広帯域で高分解能かつ高感度な光スペクトル測定装置100を実現することができる。
【符号の説明】
【0040】
100…光スペクトル測定装置、120…回折格子分光器、121…光バンドパスフィルタ、122…スリット、126…位置制御部、140…並列フォトダイオード、141…第1フォトダイオード、142…第2フォトダイオード、143…第1センサ、144…第2センサ、145…冷却素子、148…ブロック、149…ブロック、150…増幅器、160…A/D変換器、170…表示装置、180…制御部、190…駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11