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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-100839(P2018-100839A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】校正装置及び校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20180601BHJP
   H04B 17/11 20150101ALI20180601BHJP
   H04B 17/21 20150101ALI20180601BHJP
【FI】
   G01R31/00
   H04B17/11
   H04B17/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-245192(P2016-245192)
(22)【出願日】2016年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】土井 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 武史
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA05
2G036AA09
2G036BA13
2G036BB17
2G036CA12
(57)【要約】
【課題】多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる校正装置を提供する。
【解決手段】校正システム1は、基準信号を生成しアップコンバータ34に出力する基準信号発生器41と、アレーアンテナ38の各アンテナ素子から送信された無線周波数の信号を受信する受信アンテナ44と、受信アンテナ44がアレーアンテナ38の各アンテナ素子から受信した受信信号を中心周波数が無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバータ45と、ダウンコンバータ45によって周波数変換された被解析信号に基づいてアレーアンテナ38の各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正する校正部48と、基準信号生成器41とアレーアンテナ38の各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替えるSW群37と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(34)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する複数のアンテナ素子(38a〜c)と、を有する被測定装置(10)を校正する校正装置であって、
前記基準信号を生成し前記アップコンバート手段に出力する基準信号生成手段(41)と、
前記各アンテナ素子から送信された前記無線周波数の信号を受信する受信アンテナ(44)と、
前記受信アンテナが前記各アンテナ素子から受信した受信信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(45)と、
前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正する校正手段(48)と、
前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)と、
を備えたことを特徴とする校正装置。
【請求項2】
基準信号を生成する基準信号生成手段(21)と、前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(34)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する複数のアンテナ素子(38a〜c)と、を有する被測定装置(10)を校正する校正装置であって、
前記各アンテナ素子から送信された前記無線周波数の信号を受信する受信アンテナ(44)と、
前記受信アンテナが前記各アンテナ素子から受信した受信信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(45)と、
前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正する校正手段(48)と、
前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)と、
を備えたことを特徴とする校正装置。
【請求項3】
前記被測定装置は、前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との間に、前記入力信号の電力を増幅する増幅器(35)と、前記入力信号の位相を調整する移相器(36)とのうち少なくとも一方を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の校正装置。
【請求項4】
無線周波数の信号を受信する複数のアンテナ素子(74a〜c)と、受信した前記無線周波数の信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(73)と、を有する被測定装置(50)を校正する校正装置であって、
基準信号を生成する基準信号生成手段(41)と、
生成された前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(81)と、
周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する送信アンテナ(82)と、
前記送信アンテナから送信され、前記各アンテナ素子で受信した受信信号が前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子からそれぞれ出力される出力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を解析する受信解析手段(47)と、
前記受信解析手段の解析結果に基づいて校正する校正手段(48)と、
前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)と、
を備えたことを特徴とする校正装置。
【請求項5】
無線周波数の信号を受信する複数のアンテナ素子(74a〜c)と、受信した前記無線周波数の信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(73)と、を有する被測定装置(50)を校正する校正装置であって、
基準信号を生成する基準信号生成手段(41)と、
生成された前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(81)と、
周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する送信アンテナ(82)と、
を備え、
前記被測定装置は、
前記送信アンテナから送信され、前記各アンテナ素子で受信した受信信号が前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子からそれぞれ出力される出力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を解析する受信解析手段(62)と、
前記受信解析手段の解析結果に基づいて校正する校正手段(63)と、
を備え、
前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)を備えたことを特徴とする校正装置。
【請求項6】
前記被測定装置は、前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との間に、前記出力信号の電力を増幅する増幅器(35)と、前記出力信号の位相を調整する移相器(36)とのうち少なくとも一方を備えたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の校正装置。
【請求項7】
前記基準信号生成手段は、前記各アンテナ素子が対応可能な帯域幅以上の帯域幅を有する基準信号を生成するものであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の校正装置。
【請求項8】
基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(34)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する複数のアンテナ素子(38a〜c)と、を有する被測定装置(10)を校正する請求項1に記載の校正装置を用いた校正方法であって、
前記基準信号を生成し前記アップコンバート手段に出力する基準信号生成ステップ(S13)と、
前記各アンテナ素子から送信された前記無線周波数の信号を受信する受信ステップ(S17)と、
前記受信ステップにおいて前記各アンテナ素子から受信した受信信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバートステップ(S18)と、
前記ダウンコンバートステップにおいて周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正する校正ステップ(S20)と、
前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替ステップ(S15)と、
を含むことを特徴とする校正方法。
【請求項9】
無線周波数の信号を受信する複数のアンテナ素子(74a〜c)と、受信した前記無線周波数の信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコバート手段(73)と、を有する被測定装置を校正する請求項4に記載の校正装置を用いた校正方法であって、
基準信号を生成する基準信号生成ステップ(S13)と、
生成された前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバートステップ(S32)と、
周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する送信ステップ(S33)と、
前記送信アンテナから送信され、前記各アンテナ素子で受信した受信信号を前記被解析信号に周波数変換するダウンコンバートステップ(S18)と、
前記ダウンコンバートステップにおいて周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子からそれぞれ出力される出力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を解析する受信解析ステップ(S19)と、
前記受信解析ステップの解析結果に基づいて校正する校正ステップ(S20)と、
前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替ステップ(S15)と、
を含むことを特徴とする校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アレーアンテナを備えた装置を校正する校正装置及び校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、互いに直交する信号を各アンテナ素子に同時に出力してアンテナ素子間の位相差を算出するアレーアンテナ校正装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、各アンテナ素子に相互に直交した原校正信号を供給する供給手段と、各アンテナ素子から放射され、それに隣接するアンテナ素子で受信された校正信号と、該受信された校正信号に係る原校正信号との相関を計算することにより、各アンテナ素子の位相振幅特性を求める位相振幅特性計算手段と、各アンテナ素子の位相振幅特性を基に全てのアンテナ素子間の相対校正係数を求める相対校正係数計算手段と、相対校正係数を基に各アンテナ素子に供給すべき基準信号を校正する校正手段と、を備える。
【0004】
この構成により、外部に校正受信局を設けることなく、アンテナ素子の放射特性まで含めた振幅及び位相特性のばらつきを補正することができると特許文献1には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−218621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のものでは、校正対象のアンテナ素子数が増大すると、校正が煩雑となり、校正の精度も劣化するという課題があった。
【0007】
具体的には、従来のものでは、アンテナ素子で受信された校正信号と原校正信号との相関を計算する構成となっているので、マッシブMIMO(Massive Multi-Input Multi-Output)のように多数のアンテナ素子(例えば256素子)を有する装置を校正する場合には、校正が煩雑になるという課題があった。
【0008】
また、従来のものでは、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合には、アンテナ素子間の経路差による時間差によって完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生し、校正の精度が劣化するという課題があった。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる校正装置及び校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る校正装置は、基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(34)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する複数のアンテナ素子(38a〜c)と、を有する被測定装置(10)を校正する校正装置であって、前記基準信号を生成し前記アップコンバート手段に出力する基準信号生成手段(41)と、前記各アンテナ素子から送信された前記無線周波数の信号を受信する受信アンテナ(44)と、前記受信アンテナが前記各アンテナ素子から受信した受信信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(45)と、前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正する校正手段(48)と、前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)と、を備えた構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の請求項1に係る校正装置は、基準信号生成手段と各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段を備えるので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のもののように、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0012】
したがって、本発明の請求項1に係る校正装置は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【0013】
本発明の請求項2に係る校正装置は、基準信号を生成する基準信号生成手段(21)と、前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(34)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する複数のアンテナ素子(38a〜c)と、を有する被測定装置(10)を校正する校正装置であって、前記各アンテナ素子から送信された前記無線周波数の信号を受信する受信アンテナ(44)と、前記受信アンテナが前記各アンテナ素子から受信した受信信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(45)と、前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正する校正手段(48)と、前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)と、を備えた構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の請求項2に係る校正装置は、基準信号生成手段と各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段を備えるので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のもののように、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0015】
したがって、本発明の請求項2に係る校正装置は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る校正装置は、前記被測定装置は、前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との間に、前記入力信号の電力を増幅する増幅器(35)と、前記入力信号の位相を調整する移相器(36)とのうち少なくとも一方を備えた構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項3に係る校正装置は、増幅器及び移相器の少なくとも一方を校正することができる。
【0018】
本発明の請求項4に係る校正装置は、無線周波数の信号を受信する複数のアンテナ素子(74a〜c)と、受信した前記無線周波数の信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(73)と、を有する被測定装置(50)を校正する校正装置であって、基準信号を生成する基準信号生成手段(41)と、生成された前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(81)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する送信アンテナ(82)と、前記送信アンテナから送信され、前記各アンテナ素子で受信した受信信号が前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子からそれぞれ出力される出力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を解析する受信解析手段(47)と、前記受信解析手段の解析結果に基づいて校正する校正手段(48)と、前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)と、を備えた構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項4に係る校正装置は、各アンテナ素子と校正手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段を備えるので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のもののように、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0020】
したがって、本発明の請求項4に係る校正装置は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【0021】
本発明の請求項5に係る校正装置は、無線周波数の信号を受信する複数のアンテナ素子(74a〜c)と、受信した前記無線周波数の信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバート手段(73)と、を有する被測定装置(50)を校正する校正装置であって、基準信号を生成する基準信号生成手段(41)と、生成された前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(81)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する送信アンテナ(82)と、を備え、前記被測定装置は、前記送信アンテナから送信され、前記各アンテナ素子で受信した受信信号が前記ダウンコンバート手段によって周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子からそれぞれ出力される出力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を解析する受信解析手段(62)と、前記受信解析手段の解析結果に基づいて校正する校正手段(63)と、を備え、前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段(37)を備えた構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の請求項5に係る校正装置は、各アンテナ素子と校正手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替手段を備えるので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のもののように、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0023】
したがって、本発明の請求項5に係る校正装置は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【0024】
本発明の請求項6に係る校正装置は、前記被測定装置は、前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との間に、前記出力信号の電力を増幅する増幅器(35)と、前記出力信号の位相を調整する移相器(36)とのうち少なくとも一方を備えた構成を有している。
【0025】
この構成により、本発明の請求項6に係る校正装置は、増幅器及び移相器の少なくとも一方を所望の値に調整することにより被測定装置を校正することができる。
【0026】
本発明の請求項7に係る校正装置は、前記基準信号生成手段は、前記各アンテナ素子が対応可能な帯域幅以上の帯域幅を有する基準信号を生成するものである構成を有している。
【0027】
この構成により、本発明の請求項7に係る校正装置は、広帯域の校正値を一度に取得することができる。
【0028】
本発明の請求項8に係る校正方法は、基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバート手段(34)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する複数のアンテナ素子(38a〜c)と、を有する被測定装置(10)を校正する請求項1に記載の校正装置を用いた校正方法であって、前記基準信号を生成し前記アップコンバート手段に出力する基準信号生成ステップ(S13)と、前記各アンテナ素子から送信された前記無線周波数の信号を受信する受信ステップ(S17)と、前記受信ステップにおいて前記各アンテナ素子から受信した受信信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコンバートステップ(S18)と、前記ダウンコンバートステップにおいて周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正する校正ステップ(S20)と、前記基準信号生成手段と前記各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替ステップ(S15)と、を含む構成を有している。
【0029】
この構成により、本発明の請求項8に係る校正方法は、基準信号生成手段と各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替えるので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のもののように、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0030】
したがって、本発明の請求項8に係る校正装置は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【0031】
本発明の請求項9に係る校正方法は、無線周波数の信号を受信する複数のアンテナ素子(74a〜c)と、受信した前記無線周波数の信号を中心周波数が前記無線周波数よりも低い被解析信号に周波数変換するダウンコバート手段(73)と、を有する被測定装置を校正する請求項4に記載の校正装置を用いた校正方法であって、基準信号を生成する基準信号生成ステップ(S13)と、生成された前記基準信号を無線周波数の信号に周波数変換するアップコンバートステップ(S32)と、周波数変換された前記無線周波数の信号を送信する送信ステップ(S33)と、前記送信アンテナから送信され、前記各アンテナ素子で受信した受信信号を前記被解析信号に周波数変換するダウンコンバートステップ(S18)と、前記ダウンコンバートステップにおいて周波数変換された前記被解析信号に基づいて前記各アンテナ素子からそれぞれ出力される出力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を解析する受信解析ステップ(S19)と、前記受信解析ステップの解析結果に基づいて校正する校正ステップ(S20)と、前記各アンテナ素子と前記受信解析手段との接続を所定のタイミングで順次切り替える切替ステップ(S15)と、を含む構成を有している。
【0032】
この構成により、本発明の請求項9に係る校正方法は、各アンテナ素子と校正手段との接続を所定のタイミングで順次切り替えるので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のもののように、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0033】
したがって、本発明の請求項9に係る校正装置は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができるという効果を有する校正装置及び校正方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る校正装置の第1実施形態におけるブロック構成図である。
図2】本発明に係る校正装置の第1実施形態におけるフローチャートである。
図3】本発明に係る校正装置の第2実施形態におけるブロック構成図である。
図4】本発明に係る校正装置の第2実施形態におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の校正装置を備えた校正システムを例に挙げて説明する。
【0037】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る校正システムの第1実施形態における構成について説明する。
【0038】
図1に示すように、本実施形態における校正システム1は、校正対象である被測定装置としての基地局10と、基地局10の送信特性の校正を行うための測定を行う測定装置40と、を備えている。
【0039】
基地局10は、メインボード20と、RF/ANTボード30と、を備えている。
【0040】
メインボード20は、基準信号発生器21、DAC(デジタル・アナログコンバータ)22、SW(スイッチ)切替部23を備えている。
【0041】
RF/ANTボード30は、切替SW31及び32、SW切替部33、UC(アップコンバータ)34、増幅器群35、移相器群36、SW群37、アレーアンテナ38を備えている。
【0042】
測定装置40は、基準信号発生器41、DAC42、SW切替部43、受信アンテナ44、DC(ダウンコンバータ)45、ADC(アナログ・デジタルコンバータ)46、受信解析部47、校正部48を備えている。
【0043】
本実施形態における校正システム1は、測定装置40の基準信号発生器41からの基準信号(後述)を用いて基地局10内のRF/ANTボード30を校正するモード(以下、単に「ANTボード校正モード」という)と、基地局10のメインボード20内の基準信号発生器21からの基準信号(後述)を用いて基地局10全体を校正するモード(以下、単に「基地局校正モード」という)と、を有する。以下、校正システム1の詳細な構成について説明する。
【0044】
まず、基地局10のメインボード20の構成について説明する。
【0045】
基準信号発生器21は、校正用のベースバンド信号を発生可能であって、アレーアンテナ38が備える各アンテナ素子が対応可能な帯域幅以上の帯域幅を有する基準信号を生成するものである。この基準信号は、例えばOFDM通信方式で用いられる信号のような広帯域の変調波の信号である。また、基準信号は、具体的には、例えばOFDM通信方式で用いられるパイロット信号のような電力及び位相が既知の信号である。この種の基準信号を用いることにより、本実施形態における校正システム1は、広帯域の校正値を一度に短時間で取得することが可能となっている。
【0046】
さらに具体的には、各アンテナ素子が対応可能な周波数が、例えばミリ波帯で中心周波数28GHz、帯域幅1GHzであれば、基準信号発生器21は、27.5GHz〜28.5GHzの帯域幅以上の帯域幅を有する広帯域な基準信号を生成するものである。この基準信号発生器21は、基地局校正モードにおける基準信号生成手段の一例である。
【0047】
なお、従来のものでは、例えば帯域幅1GHzのように広帯域の信号を校正する場合には、帯域幅内の周波数特性を考慮して多数ポイントの周波数の校正値を求める必要があったため校正に長時間を要していた。これに対し、本実施形態では、前述のような広帯域の基準信号を用いるので、広帯域の校正値を一度に短時間で取得することができ、校正の短時間化を図ることができる。
【0048】
DAC22は、基準信号発生器21が発生した変調波の基準信号をデジタル値からアナログ値に変換し、RF/ANTボード30に出力するようになっている。
【0049】
SW切替部23は、RF/ANTボード30の切替SW32を介してRF/ANTボード30のSW群37に制御信号を出力し、SW群37に含まれる各SWを所定のタイミングで順次切り替えるようになっている。SW切替部23は、各SWを切り替えるタイミングとして、例えば、基地局10がOFDM通信方式で動作する場合には、1フレームごと、1サブフレームごと、又は1シンボルごとというように予め定められたデータの単位ごとの切替時間間隔で切り替えるのが好ましい。SW切替部23は、SW群37の中の1つのSWのみをオン、その他のSWをオフとし、オンとするSWを順次切り替える制御を行う。
【0050】
次に、基地局10のRF/ANTボード30の構成について説明する。
【0051】
切替SW31は、SW切替部33からの制御信号に基づいて、DAC22又はDAC42とUC34とを接続するようになっている。
【0052】
切替SW32は、SW切替部33からの制御信号に基づいて、SW切替部23又はSW切替部43とSW群37とを接続するようになっている。
【0053】
SW切替部33は、切替SW31及び切替SW32の切替動作を制御するようになっている。
【0054】
具体的には、SW切替部33は、ANTボード校正モードにおいて、測定装置40のDAC42とUC34とを接続するよう切替SW31に制御信号を出力するとともに、測定装置40のSW切替部43とSW群37とを接続するよう切替SW32に制御信号を出力するようになっている。また、SW切替部33は、基地局校正モードにおいて、メインボード20のDAC22とUC34とを接続するよう切替SW31に制御信号を出力するとともに、メインボード20のSW切替部23とSW群37とを接続するよう切替SW32に制御信号を出力するようになっている。
【0055】
UC34は、DAC22又はDAC42から入力した基準信号を所定の無線周波数の信号に周波数変換し、周波数変換した信号を増幅器群35に含まれる各増幅器に分配して出力するようになっている。
【0056】
増幅器群35は、入力信号の電力を増幅する複数の増幅器を備えている。増幅器群35は、増幅器35a〜35cを含む。増幅器群35に含まれる各増幅器の増幅率は、校正部48によって所定の値に設定可能になっている。
【0057】
移相器群36は、入力信号の位相を調整する複数の移相器を備えている。移相器群36は、移相器36a〜36cを含む。移相器群36に含まれる各移相器の位相調整値は、校正部48によって所定の値に設定可能になっている。
【0058】
SW群37は、SW切替部23又はSW切替部43からの制御信号に基づいて、移相器群36と複数のアンテナ素子との経路を所定のタイミングで順次切り替える複数のSWを備えている。このSW群37は、基準信号発生器21又は41と各アンテナとの間の経路を所定のタイミングで順次切り替えるようになっている。SW群37は、SW37a〜37cを含み、SW切替部23により、例えば、まずSW37aのみがオンで他のSWはすべてオフ、次にSW37bのみがオンで他のSWはすべてオフ、次にSW37cのみがオンで他のSWはすべてオフ、というように切替制御される。なお、SW群37は、切替手段の一例である。
【0059】
アレーアンテナ38は、複数のアンテナ素子を備えている。各アンテナ素子は、例えばマイクロストリップアンテナのような平面アンテナで構成され、無線周波数の信号(電波)を受信アンテナ44に送信するようになっている。アレーアンテナ38は、アンテナ素子38a〜38cを含む。
【0060】
次に、測定装置40の構成について説明する。
【0061】
基準信号発生器41は、前述の基準信号発生器21と同様に、アレーアンテナ38が備える各アンテナ素子が対応可能な帯域幅以上の帯域幅を有する広帯域な基準信号を生成するようになっている。この基準信号発生器41は、ANTボード校正モードにおける基準信号生成手段の一例である。
【0062】
DAC42は、基準信号発生器41が発生した変調波の基準信号をデジタル値からアナログ値に変換し、RF/ANTボード30に出力するようになっている。
【0063】
SW切替部43は、前述のSW切替部23と同様に、切替SW32を介してRF/ANTボード30のSW群37に制御信号を出力し、SW群37に含まれる各SWを所定のタイミングで順次切り替えるようになっている。
【0064】
SW切替部43が各SWを切り替えるタイミングは、基地局10側とで共有されている。例えば、スタート時のトリガタイミングと、クロックとを基地局10側と測定装置40側とで共有して、予め決められたタイミングで、送信で使われるアンテナ素子が切り替わるようにする。また、例えば、切替タイミング用の制御信号を基地局10側と測定装置40側とでやり取りする手段を設け、基準信号を含む電波を送信するアンテナ素子を測定装置40から基地局10に対して指定する構成や、基準信号を含む電波を送信するアンテナ素子を基地局10が決定して測定装置40に通知する構成とすることができる。
【0065】
受信アンテナ44は、アレーアンテナ38の各アンテナ素子から送信された無線周波数の信号(電波)を受信し、DC45に出力するようになっている。前述のように、SW切替部23又は43によってアレーアンテナ38のアンテナ素子が所定のタイミングで順次切り替えるので、受信アンテナ44は、各アンテナ素子の送信信号を所定のタイミングで順次受信することとなる。
【0066】
DC45は、受信アンテナ44が各アンテナ素子から順次受信した受信信号をベースバンドの信号に周波数変換し、ADC46に出力するようになっている。このDC45は、ダウンコンバート手段の一例である。
【0067】
ADC46は、DC45が周波数変換した信号をアナログ値からデジタル値に変換し、受信解析部47に出力するようになっている。
【0068】
受信解析部47は、DC45から出力されるベースバンドの信号を解析するようになっている。具体的には、受信解析部47は、SW切替部23又は43によってアレーアンテナ38のアンテナ素子が所定のタイミングで順次切り替えるに従って、アレーアンテナ38のアンテナ素子からの周波数変換後の信号について、電力及び位相を求める。この受信解析部47は、受信解析手段を構成する。
【0069】
また、受信解析部47は、予め定められた電力基準値に対する電力差をアレーアンテナ38のアンテナ素子ごとに求める。また、受信解析部47は、予め定められた1つのアンテナ素子の位相を基準位相として、その基準位相に対する位相差をアレーアンテナ38のアンテナ素子ごとに求める。なお、受信解析部47は、RF/ANTボード30のSW群37の切替によるデータへの影響がない範囲のデータを解析するようになっている。
【0070】
校正部48は、DC45によって周波数変換されたベースバンドの信号に基づいて、各アンテナ素子にそれぞれ入力される入力信号の電力差及び位相差を校正するようになっている。具体的には、校正部48は、電力基準値に対して各アンテナ素子に順次入力される信号の電力が所定の公差内に収まるよう、また、基準位相に対して各アンテナ素子に順次入力される信号の位相が所定の公差内に収まるよう、各アンテナ素子の電力及び位相を校正するようになっている。なお、校正部48は、校正手段の一例である。
【0071】
前述の構成において、基準信号発生器21又は41、受信アンテナ44、DC45、校正部48、SW群37は、本発明に係る校正装置を構成する。
【0072】
なお、本実施形態では、校正部48が、入力信号の電力差及び位相差の両方を校正するものとしているが、入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正するものであってもよい。
【0073】
次に、本実施形態における校正システム1の動作について図2を用いて説明する。
【0074】
基地局10及び測定装置40の操作部(図示省略)を利用者が操作することにより、初期設定が行われる(ステップS11)。
【0075】
初期設定としては、ANTボード校正モード又は基地局校正モードのいずれかを指定するモード設定、基準信号発生器21又は41に発生させるベースバンドの基準信号の設定、増幅器群35及び移相器群36の初期値の設定等がある。なお、SW群37に含まれる全SWは、初期状態ではオフに設定されている。
【0076】
モード設定において、ANTボード校正モードが設定されたものとして以下説明する。
【0077】
SW切替部33は、切替SW31の入力側を測定装置40のDAC42側に、切替SW32の入力側を測定装置40のSW切替部43側に、それぞれ設定する(ステップS12)。
【0078】
基準信号発生器41は、初期設定で設定されたベースバンドの基準信号を発生し(ステップS13)、DAC42に出力する。DAC42は、入力した基準信号をデジタル値からアナログ値に変換し、切替SW31を介してUC34に出力する。
【0079】
UC34は、入力したアナログ値の基準信号を所定の無線周波数の信号に周波数変換し(ステップS14)、周波数変換した信号を増幅器群35に含まれる各増幅器に分配して出力する。
【0080】
増幅器群35は、入力信号の電力を予め設定された増幅率で増幅し、移相器群36に出力する。移相器群36は、入力信号の位相を予め設定された位相に調整し、SW群37に出力する。
【0081】
SW群37は、SW切替部43からの制御信号に基づいて、各SWを所定のタイミングで順次切り替える(ステップS15)。具体的には、まず、SW群37は、SW37aのみをオフからオンに切り替え、所定の時間経過後オフにする。次に、SW群37は、SW37bのみをオフからオンに切り替え、所定の時間経過後オフにする。続いて、SW群37は、SW37cのみをオフからオンに切り替え、所定の時間経過後オフにする。
【0082】
アレーアンテナ38は、SW群37の切り替え動作に応じて、アンテナ素子38a、38b、38c、・・・から所定のタイミングで順次、無線周波数の信号(電波)を送信する(ステップS16)。
【0083】
受信アンテナ44は、アレーアンテナ38から送信される無線周波数の信号を順次受信し(ステップS17)、DC45に出力する。
【0084】
DC45は、受信アンテナ44が各アンテナ素子から順次受信した受信信号をベースバンドの信号に周波数変換し(ステップS18)、ADC46に出力する。ADC46は、DC45が周波数変換した信号をアナログ値からデジタル値に変換し、受信解析部47に出力する。
【0085】
受信解析部47は、DC45から出力されるベースバンドの信号を解析し(ステップS19)、予め定められた電力基準値に対する電力差をアンテナ素子ごとに求める。また、受信解析部47は、予め定められた1つのアンテナ素子の位相を基準位相として、その基準位相に対する位相差をアンテナ素子ごとに求める。
【0086】
校正部48は、電力基準値に対して各アンテナ素子に順次入力される入力信号の電力が所定の公差内に収まるよう、また、基準位相に対して各アンテナ素子に順次入力される入力信号の位相が所定の公差内に収まるよう、各アンテナ素子の電力及び位相を校正する(ステップS20)。
【0087】
なお、基地局校正モードでは、SW切替部23、基準信号発生器21及びDAC22が、それぞれ、前述のSW切替部43、基準信号発生器41及びDAC42に代わって各処理を実行する。
【0088】
以上のように、本実施形態における校正システム1は、基準信号発生器21又は41とアレーアンテナ38の各アンテナ素子との接続を所定のタイミングで順次切り替えるSW群37を備える構成としたので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のものとは異なり、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0089】
したがって、本実施形態における校正システム1は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【0090】
なお、前述の実施形態において、被測定装置として基地局を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばOFDM通信方式で通信する端末装置であっても同様な効果が得られる。
【0091】
また、前述の実施形態において、基準信号発生器21からアレーアンテナ38までの経路を1つの経路として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、この経路を複数の並列経路に分割した構成としてもよい。
【0092】
(第2実施形態)
まず、本発明に係る校正システムの第2実施形態における構成について説明する。
【0093】
図3に示すように、本実施形態における校正システム2は、校正対象である被測定装置としての基地局50と、基地局50の受信特性の校正を行うための測定を行う測定装置80と、を備えている。なお、第1実施形態(図1参照)と同様な構成要素には同一の符号を付し、重複する構成の説明は省略する。
【0094】
基地局50は、メインボード60と、RF/ANTボード70と、を備えている。
【0095】
メインボード60は、SW切替部23、ADC61、受信解析部62、校正部63を備えている。
【0096】
RF/ANTボード70は、切替SW31、32及び71、SW切替部72、DC73、アレーアンテナ74、加算器75、増幅器群35、移相器群36、SW群37を備えている。
【0097】
測定装置80は、基準信号発生器41、DAC42、UC81、送信アンテナ82、SW切替部43、ADC46、受信解析部47、校正部48を備えている。なお、本実施形態における受信解析部47は、受信解析手段の一例である。
【0098】
本実施形態における校正システム2は、測定装置80の校正部48を用いて基地局50内のRF/ANTボード70を校正するANTボード校正モードと、基地局50のメインボード60内の校正部63を用いて基地局50全体を校正する基地局校正モードと、を有する。以下、校正システム2の詳細な構成について説明する。
【0099】
まず、基地局50のメインボード60の構成について説明する。
【0100】
ADC61は、DC73が周波数変換した信号をアナログ値からデジタル値に変換し、受信解析部62に出力するようになっている。
【0101】
受信解析部62は、ADC61から出力されるベースバンドの信号を解析するようになっている。具体的には、受信解析部62は、SW切替部23によってアレーアンテナ74のアンテナ素子が所定のタイミングで順次切り替わるに従って、アレーアンテナ74のアンテナ素子が出力する受信信号を周波数変換後した信号について、電力及び位相を求める。また、受信解析部62は、予め定められた電力基準値に対する電力差をアンテナ素子ごとに求める。また、受信解析部62は、予め定められた1つのアンテナ素子の位相を基準位相として、その基準位相に対する位相差をアンテナ素子ごとに求める。なお、受信解析部62は、受信解析手段の一例である。
【0102】
校正部63は、RF/ANTボード70のDC73によって周波数変換されたベースバンドの信号に基づいて、RF/ANTボード70の各アンテナ素子から出力される出力信号の電力差及び位相差を校正するようになっている。具体的には、校正部63は、電力基準値に対して各アンテナ素子から順次出力される出力信号の電力が所定の公差内に収まるよう、また、基準位相に対して各アンテナ素子から順次出力される出力信号の位相が所定の公差内に収まるよう、各アンテナ素子の電力及び位相を校正するようになっている。なお、校正部63は、校正手段の一例である。
【0103】
次に、基地局50のRF/ANTボード70の構成について説明する。
【0104】
切替SW71は、SW切替部72からの制御信号に基づいて、校正部48又は63と増幅器群35及び移相器群36とを接続するようになっている。
【0105】
SW切替部72は、切替SW31、32及び71の切替動作を制御するようになっている。
【0106】
具体的には、SW切替部72は、ANTボード校正モードにおいて、測定装置80の校正部48と増幅器群35及び移相器群36とを接続するよう切替SW71に制御信号を出力するようになっている。また、SW切替部72は、基地局校正モードにおいて、メインボード60の校正部63と増幅器群35及び移相器群36とを接続するよう切替SW71に制御信号を出力するようになっている。
【0107】
加算器75は、増幅器群35から入力した無線周波数の信号を加算してDC73に出力するようになっている。
【0108】
DC73は、加算器75から入力した無線周波数の信号をベースバンドの信号に周波数変換し、周波数変換した信号を切替SW31に出力するようになっている。
【0109】
アレーアンテナ74は、複数のアンテナ素子を備え、無線周波数の信号(電波)を送信アンテナ82から受信するようになっている。アレーアンテナ74は、アンテナ素子74a〜74cを含む。アレーアンテナ74によって受信された無線周波数の信号は、SW群37、移相器群36、増幅器群35及び加算器75を順次経由してDC73に入力される。
【0110】
次に、測定装置80の構成について説明する。
【0111】
UC81は、DAC42から入力した基準信号を所定の無線周波数の信号に周波数変換し、周波数変換した信号を送信アンテナ82に出力するようになっている。
【0112】
送信アンテナ82は、無線周波数の信号(電波)をアレーアンテナ74に送信するようになっている。
【0113】
前述の構成において、基準信号発生器41、UC81、送信アンテナ82、校正部48又は63、SW群37は、本発明に係る校正装置を構成する。
【0114】
なお、本実施形態では、校正部48及び63が、入力信号の電力差及び位相差の両方を校正するものとしているが、入力信号の電力差及び位相差のうち少なくとも一方を校正するものであってもよい。
【0115】
次に、本実施形態における校正システム2の動作について図4を用いて説明する。
【0116】
基地局50及び測定装置80の操作部(図示省略)を利用者が操作することにより、初期設定が行われる(ステップS11)。
【0117】
モード設定において、ANTボード校正モードが設定されたものとして以下説明する。
【0118】
SW切替部72は、切替SW31の出力側を測定装置80のADC46側に、切替SW32の入力側を測定装置80のSW切替部43側に、切替SW71の入力側を測定装置80の校正部48側に、それぞれ設定する(ステップS31)。
【0119】
基準信号発生器41は、初期設定で設定されたベースバンドの基準信号を発生し(ステップS13)、DAC42に出力する。DAC42は、入力した基準信号をデジタル値からアナログ値に変換し、UC81に出力する。
【0120】
UC81は、入力したアナログ値のベースバンド信号を所定の無線周波数の信号に周波数変換し(ステップS32)、周波数変換した信号を送信アンテナ82に出力する。
【0121】
送信アンテナ82は、UC81から出力される無線周波数の信号(電波)を送信する(ステップS33)。
【0122】
アレーアンテナ74は、送信アンテナ82からの無線周波数の信号(電波)を受信する(ステップS34)。
【0123】
SW群37は、SW切替部43からの制御信号に基づいて、各SWを所定のタイミングで順次切り替え(ステップS15)、移相器群36に出力する。移相器群36は、入力信号の位相を予め設定された位相に順次調整し、増幅器群35に出力する。増幅器群35は、入力信号の電力を予め設定された増幅率で順次増幅し、加算器75に出力する。加算器75は、増幅器群35から入力した無線周波数の信号を加算してDC73に出力する。
【0124】
DC73は、加算器75からの信号をベースバンドの信号に周波数変換し(ステップS18)、ADC46に出力する。ADC46は、DC73が周波数変換した信号をアナログ値からデジタル値に変換し、受信解析部47に出力する。
【0125】
受信解析部47は、ADC46から出力されるベースバンドの信号を解析し(ステップS19)、予め定められた電力基準値に対する電力差をアンテナ素子ごとに求める。また、受信解析部47は、予め定められた1つのアンテナ素子の位相を基準位相として、その基準位相に対する位相差をアンテナ素子ごとに求める。
【0126】
校正部48は、電力基準値に対して各アンテナ素子から順次出力される出力信号の電力が所定の公差内に収まるよう、また、基準位相に対して各アンテナ素子から順次出力される出力信号の位相が所定の公差内に収まるよう、各アンテナ素子の電力及び位相を校正する(ステップS20)。
【0127】
なお、基地局校正モードでは、SW切替部23、ADC61、受信解析部62及び校正部63が、それぞれ、前述のSW切替部43、ADC46、受信解析部47及び校正部48に代わって各処理を実行する。
【0128】
以上のように、本実施形態における校正システム2は、アレーアンテナ74の各アンテナ素子と受信解析部47又は62の接続を所定のタイミングで順次切り替えるSW群37を備える構成としたので、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、従来のもののように、校正が煩雑になったり、完全直交しない成分同士の干渉が校正信号間で発生したりすることがない。
【0129】
したがって、本実施形態における校正システム2は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができる。
【0130】
なお、前述の実施形態において、被測定装置として基地局を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばOFDM通信方式で通信する端末装置であっても同様な効果が得られる。
【0131】
また、前述の実施形態において、アレーアンテナ74から受信解析部62までの経路を1つの経路として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、この経路を複数の並列経路に分割した構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上のように、本発明に係る校正装置及び校正方法は、多数のアンテナ素子を有する装置を校正する場合でも、簡単な構成で高精度に校正することができるという効果を有し、アレーアンテナを備えた装置を校正する校正装置及び校正方法として有用である。
【符号の説明】
【0133】
1、2 校正システム
10、50 基地局(被測定装置)
21、41 基準信号発生器(基準信号生成手段)
34 UC(アップコンバート手段)
35 増幅器群
35a〜35c 増幅器
36 移相器群
36a〜36c 移相器
37 SW群(切替手段)
37a〜37c SW
38、74 アレーアンテナ
38a〜38c、74a〜74c 複数のアンテナ素子
40、80 測定装置
44 受信アンテナ
45、73 DC(ダウンコンバート手段)
47、62 受信解析部(受信解析手段)
48、63 校正部(校正手段)
81 UC(アップコンバート手段)
82 送信アンテナ
図1
図2
図3
図4