【解決手段】凹凸面を有する第1の光学層2と、前記第1の光学層2の凹凸面上に配置された無機層1と、前記無機層1側に他の凹凸面を有し、該他の凹凸面における凹凸が埋没するように配置された第2の光学層3と、を有し、前記第2の光学層3が、粘着層と接して使用され、前記第2の光学層3が、光ラジカル発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記第1の光学層2、前記無機層、及び前記第2の光学層3の積層体について、85℃で15分間のパージ&トラップ分析を行った際の、アウトガス中の前記光ラジカル発生剤の含有量が、前記積層体に対して15質量ppm以下である、光学体である。
前記光ラジカル発生剤が、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、並びにオキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル及びオキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物の少なくともいずれかである請求項1から11のいずれかに記載の光学体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選択される1種または2種を意味する。
また、本明細書において、「単官能(メタ)アクリレート」とは、「官能基を1個有する(メタ)アクリレート」を意味し、「多官能(メタ)アクリレート」とは、「官能基を複数個有する(メタ)アクリレート」を意味する。
【0012】
(光学体)
本発明の第1の実施形態に係る光学体は、少なくとも、無機層と、第1の光学層と、第2の光学層とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。係る光学体は、第2の光学層が、粘着層と接して使用される。
本発明の第2の実施形態に係る光学体は、少なくとも、無機層と、第1の光学層と、第2の光学層と、粘着層とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0013】
本発明の光学体において、前記第1の光学層、前記無機層、及び前記第2の光学層の積層体について、85℃で15分間のパージ&トラップ分析を行った際の、アウトガス中の前記光ラジカル発生剤の含有量は、前記積層体に対して15質量ppm以下である。
【0014】
本発明者らは、光学体において、外部支持体と第2の光学層との間に形成された第2の基材を省略すると、第2の光学層に光硬化性樹脂組成物の硬化物を用いた場合に、外部支持体に光学体を貼り付けるために使用され、第2の光学層に接する粘着層が、黄変しやすくなる問題があることを知見した。
そこで、本発明者らは、前記問題を解決するために鋭意検討を行った。そのところ、第2の光学層に残存する光ラジカル発生剤が粘着層を黄変させる一因であることを見出した。
従来の光学体では、第2の光学層と粘着層との間には、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが介在する。そのため、第2の光学層に光ラジカル発生剤が残存していても、前記光ラジカル発生剤は、粘着層に移行しないため、前記光ラジカル発生剤に起因して粘着層が黄変することはない。
しかし、外部支持体と第2の光学層との間に形成された第2の基材を省略すると、第2の光学層と粘着層とが接するため、第2の光学層に残存する光ラジカル発生剤が粘着層に移行し得る。
その結果、第2の光学層に接する粘着層が黄変しやすくなる。
そのところ、本発明の光学体においては、第2の光学層に残存する前記光ラジカル発生剤の量を低減させているため、粘着層の黄変を防止することができる。
なお、第2の光学層に残存する前記光ラジカル発生剤の量を低減させる方法としては、第2の光学層を作製する際に使用する前記光ラジカル発生剤の量を少なくする方法、残存しにくい前記光ラジカル発生剤を使用する方法、第2の光学層を作製する際に(メタ)アクリレートの官能基数の調整により反応性を高める方法などが挙げられる。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学体の一例の断面図である。
図1において、光学体11は、凹凸面2aを有する第1の光学層2と、第1の光学層2の凹凸面2a上に配置された無機層1と、無機層1側に他の凹凸面3aを有し、他の凹凸面3aにおける凹凸が埋没するように配置された第2の光学層3と、第1の光学層2の凹凸面2aと対向する面2b上に配置された第1の基材4とを備える。光学体11は、第2の光学層3の他の凹凸面3aと対向する面3b上(外部支持体側)に配置される第2の基材(
図10における第2の基材105)を有さず、第2の光学層3が粘着層に接して使用される。
【0016】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光学体の一例の断面図である。
図2において、光学体11は、凹凸面2aを有する第1の光学層2と、第1の光学層2の凹凸面2a上に配置された無機層1と、無機層1側に他の凹凸面3aを有し、他の凹凸面3aにおける凹凸が埋没するように配置された第2の光学層3と、第1の光学層2の凹凸面2aと対向する面2b上に配置された第1の基材4と、第2の光学層3と接する粘着層5とを備える。光学体11は、第2の光学層3の他の凹凸面3aと対向する面3b上(外部支持体側)に配置される第2の基材(
図10における符号105)を有さない。
【0017】
<光ラジカル発生剤検出量>
前記第1の光学層、前記無機層、及び前記第2の光学層の積層体について、85℃で15分間のパージ&トラップ分析を行った際の、アウトガス中の光ラジカル発生剤の含有量(検出量)は、前記積層体に対して15質量ppm以下であり、9.0質量ppm以下が好ましく、8.0質量ppm以下がより好ましい。なお、係る検出量を以下、「光ラジカル発生剤検出量」と称することがある。
前記光ラジカル発生剤検出量は、前記第2の光学層に残存する前記光ラジカル発生剤の前記粘着層への移行量と相関している。
【0018】
前記光ラジカル発生剤検出量は、揮発成分の測定方法である、GC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析法)・パージ&トラップ法により求めることができる。具体的には以下の方法で求めることができる。
試料10mgをパージ&トラップ装置の試料管に入れ、流速50ml/分のヘリウムガスでパージしながら、85℃で15分間で加熱する。発生した揮発分(アウトガス)を−60℃でトラップし、試料加熱終了後トラップした成分を高周波誘導加熱法により急速加熱してGC/MSに導入する。検出揮発分の同定及び定量を行う。
そして、光学体における積層体(第1の光学層、無機層、及び第2の光学層)の質量に対する光ラジカル発生剤の検出質量を、光ラジカル発生剤検出量(質量ppm)とする。
【0019】
<第1の光学層>
前記第1の光学層は、凹凸面を有する。
前記第1の光学層は、該凹凸面上に形成された無機層を支持し、かつ保護する。
前記第1の光学層は、光学体に可撓性を付与する観点から、例えば、樹脂を主成分とする層からなる。前記第1の光学層の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は凹凸面(第1の面)である。無機層は該凹凸面(第1の面)上に配される。
【0020】
前記第1の光学層の厚みの最小値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
前記第1の光学層は、例えば、光硬化性樹脂組成物の硬化物である。
前記第1の光学層を形成するための前記光硬化性樹脂組成物の組成は、後述する前記第2の光学層を形成するための光硬化性樹脂組成物の組成と同じであってもよいし、異なっていてもよいが、通常、光学特性等を考慮しつつ、異なる組成が選択される。
【0022】
<<貯蔵弾性率>>
前記第1の光学層の25℃での貯蔵弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1×10
9Pa以下が好ましく、8.0×10
8Pa以下がより好ましい。前記貯蔵弾性率が、好ましい範囲であることにより、第1の光学層が伸びやすくなり、その結果、前記光学体が伸びやすくなる。
【0023】
前記第1の光学層は、前記第2の光学層よりも、貯蔵弾性率が大きくて硬いことが好ましい。なお、これは、前記第1の光学層を構成する樹脂に多官能(メタ)アクリレートモノマーが含有されていることにより、達成される。
【0024】
<無機層>
前記無機層は、前記第1の光学層の凹凸面上に配置された層である。
前記無機層としては、少なくとも近赤外線を反射する反射層が好ましい。前記反射層としては、例えば、下記積層膜などが挙げられる。前記反射層の一例の詳細については、
図4を用いて後述する。
【0025】
前記無機層の前記第2の光学層側の表面は酸化物からなることが好ましい。
前記酸化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ZnOを主成分とした酸化物、Nb
2O
5を主成分とした酸化物、などが挙げられる。
【0026】
前記無機層の平均膜厚としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。前記平均膜厚が20μm以下であると、透過光が屈折する光路が短くなり、透過像が歪んで見えるのを防止することができる。
【0027】
前記無機層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
【0028】
前記無機層の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、積層膜、透明導電層、機能層、半透過層などが挙げられる。これらは、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
【0029】
<<積層膜>>
前記積層膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)屈折率の異なる低屈折率層及び高屈折率層を交互に積層してなる積層膜、(ii)赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層、または透明導電層とを交互に積層してなる積層膜、などが挙げられる。
【0030】
−金属層−
前記金属層には、赤外領域において反射率の高い金属が使用される。
赤外領域において反射率の高い金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、これらの単体を2種以上含む合金、などが挙げられる。これらの中でも、実用性の点で、Ag系、Cu系、Al系、Si系、Ge系が好ましい。
前記合金としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFe、Ag、SiB、などが好ましい。
前記金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、金属層の材料としてAgを用いる場合には、上記材料を添加することが好ましい。
【0031】
−光学透明層−
前記光学透明層は、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層である。
前記光学透明層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン等の高誘電体、などが挙げられる。
【0032】
前記光学透明層成膜時の下層金属の酸化劣化を防ぐ目的で、成膜する光学透明層の界面に数nm程度のTiなどの薄いバッファー層を設けてもよい。ここで、バッファー層とは、上層成膜時に、自らが酸化することで下層である金属層などの酸化を抑制するための層である。
【0033】
<<透明導電層>>
前記透明導電層は、可視領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層である。
前記透明導電層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモンドープ酸化錫、カーボンナノチューブ含有体等の透明導電物質、などが挙げられる。
また、前記透明導電層として、前記透明導電物質のナノ粒子や金属などの導電性を持つ材料のナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤーを樹脂中に高濃度に分散させた層を用いてもよい。
【0034】
<<機能層>>
前記機能層は、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする層である。
前記クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。
前記クロミック材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、ガスクロミック材料、エレクトロクロミック材料、などが挙げられる。
【0035】
前記フォトクロミック材料は、光の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。
前記フォトクロミック材料は、紫外線等の光照射により、反射率、色等の物性を可逆的に変化させることができる材料である。
前記フォトクロミック材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cr、Fe、NiなどをドープしたTiO
2、WO
3、MoO
3、Nb
2O
5等の遷移金属酸化物、などを挙げることができる。また、これらの層と屈折率の異なる層を積層することで波長選択性を向上させることもできる。
【0036】
前記サーモクロミック材料とは、熱の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。
前記サーモクロミック材料は、加熱により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。
前記サーモクロミック材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、VO
2、などが挙げられる。また、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。
また、VO
2などのサーモクロミック材料を主成分とする薄膜を、TiO
2やITOなどの高屈折率体を主成分とする反射防止層で挟んだ積層構造としてもよい。
【0037】
または、コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。前記コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。この時、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
【0038】
エレクトロクロミック材料とは、電気により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる材料である。
前記エレクトロクロミック材料としては、例えば、電圧の印加により構造を可逆的に変化させる材料を用いることができる。前記エレクトロクロミック材料の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロトンなどのドープまたは脱ドープにより、反射特性が変わる反射型調光材料、などが挙げられる。
前記反射型調光材料とは、具体的には、外部刺激により、光学的な性質を透明な状態と、鏡の状態、及び/又はその中間状態に制御することができる材料である。前記反射型調光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マグネシウム及びニッケルの合金材料、マグネシウム及びチタンの合金材料を主成分とする合金材料、WO
3やマイクロカプセル中に選択反射性を有する針状結晶を閉じ込めた材料、などが挙げられる。
【0039】
前記機能層の具体的構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)第2の光学層上に、上記合金層、Pdなどを含む触媒層、薄いAlなどのバッファー層、Ta
2O
5などの電解質層、プロトンを含むWO
3などのイオン貯蔵層、透明導電層が積層された構成、(ii)第2の光学層上に透明導電層、電解質層、WO
3などのエレクトロクロミック層、透明導電層が積層された構成、などが挙げられる。
これらの構成では、透明導電層と対向電極の間に電圧を印加することにより、電解質層に含まれるプロトンが合金層にドープまたは脱ドープされる。これにより、合金層の透過率が変化する。また、波長選択性を高めるために、エレクトロクロミック材料をTiO
2やITOなどの高屈折率体と積層することが望ましい。
また、その他の構成として、第2の光学層上に透明導電層、マイクロカプセルを分散した光学透明層、透明電極が積層された構成、が挙げられる。この構成では、両透明電極間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル中の針状結晶が配向した透過状態にしたり、電圧を除くことで針状結晶が四方八方を向き、波長選択反射状態にすることができる。
【0040】
<<半透過層>>
前記半透過層は、例えば、単層または複数層の金属層からなり、半透過性を有するものである。
前記金属層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の積層膜の金属層と同様のものを用いることができる。
【0041】
<第2の光学層>
前記第2の光学層は、前記無機層側に他の凹凸面(第2の面)を有し、該他の凹凸面(第2の面)における凹凸が埋没するように配置(形成)され、前記無機層を保護する。
前記第2の光学層は、光硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0042】
前記第2の光学層の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は他の凹凸面(第2の面)である。第1の光学層の凹凸面と第2の光学層の他の凹凸面とは、互いに凹凸を反転した関係にある。
【0043】
<<光硬化性樹脂組成物>>
前記光硬化性樹脂組成物は、光ラジカル発生剤を少なくとも含有し、好ましくはラジカル硬化性材料を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0044】
<<<ラジカル硬化性材料>>>
前記ラジカル硬化性材料としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレートモノマー、リン酸基含有アクリレートなどが挙げられる。
【0045】
前記第1の光学層及び前記第2の光学層は、例えば、それぞれ異なる光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるが、屈折率の観点から、ベース樹脂(即ち、2官能ウレタン(メタ)アクリレート及び単官能(メタ)アクリレート化合物)の種類が同じであることが好ましい。
【0046】
−単官能(メタ)アクリレート化合物−
前記単官能(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂環式単官能アクリレートモノマー、含窒素複素環を有する単官能アクリレートモノマー、直鎖式単官能アクリレートモノマー、水酸基を有するアクリレートモノマー、アルキレンオキサイド鎖を有する単官能アクリレートモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、硬さ調整の点で、脂環式単官能アクリレートモノマー、含窒素複素環を有する単官能アクリレートモノマー等の環状構造を有する単官能アクリレートモノマー、特に、ガラス転移温度Tgが80℃以上の環状構造を有する単官能アクリレートモノマーが好ましい。
【0047】
−−脂環式単官能アクリレートモノマー−−
前記脂環式単官能アクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソボルニルアクリレート(ガラス転移温度Tg:97℃)、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート(ガラス転移温度Tg:120℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(ガラス転移温度Tg:120℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
−−含窒素複素環を有する単官能アクリレートモノマー−−
前記含窒素複素環を有する単官能アクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリロイルモルホリン、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ペンタメチルピペリジルメタクリレ−トなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アクリロイルモルホリン(ガラス転移温度Tg:145℃)が好ましい。
【0049】
−−直鎖式単官能アクリレートモノマー−−
前記直鎖式単官能アクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、n−オクチルアクリレート(ガラス転移温度Tg:−65℃)、ステアリルアクリレート(ガラス転移温度Tg:30℃)、ラウリルアクリレート(ガラス転移温度Tg:15℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
−−水酸基を有するアクリレートモノマー−−
前記水酸基を有するアクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(ガラス転移温度Tg:18℃)、4−ヒドロキシブチルアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート(ガラス転移温度Tg:−32℃)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(ガラス転移温度Tg:−7℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
−−アルキレンオキサイド鎖を有する単官能アクリレートモノマー−−
前記アルキレンオキサイド鎖を有する単官能アクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシエチルアクリレート(ガラス転移温度Tg:−22℃)、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、フェノキシエチルアクリレート(ガラス転移温度Tg:−22℃)、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートが好ましい。
【0052】
−多官能(メタ)アクリレートモノマー−
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、環状の架橋剤がより好ましい。
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることで、室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、硬化物を耐熱化することができるからである。室温での貯蔵弾性率が大きく変化すると、光学体が脆くなり、ロール・ツー・ロール工程などによる光学体の作製が困難となる。
前記環状の架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート(エトキシ化イソシアヌ―ル酸トリアクリレート)、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、可撓性の点で、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)が好ましい。
【0053】
−−2官能ウレタン(メタ)アクリレート−−
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの一例としての前記2官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL8402、KRM8296(以上ダイセル・オルネクス(株)製)、CN9001、CN978、CN962(以上サートマー社製)、紫光UV6640B、紫光UV3300B、UV3200B(以上日本合成化学工業(株)製)、TEAI−2000、TE−2000(以上、日本曹達株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、柔軟性及び耐候性の点で、脂肪族2官能アクリレート(例えば、EBECRYL8807)が好ましい。
【0054】
前記2官能ウレタン(メタ)アクリレートのガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、−30℃以上45℃以下が好ましい。前記ガラス転移温度が−30℃以上45℃以下であると、引張破断伸び率と柔軟性を向上させることができる。なお、ここで言うガラス転移温度は、前記(メタ)アクリレートの単独重合物の値を指す。
【0055】
−リン酸基含有アクリレート−
前記リン酸基含有アクリレートを添加剤として、含有させることにより、無機層との密着性を向上させることができる。
前記リン酸基含有アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジ−2−メタクリロキシエチルフォスフェート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<<<光ラジカル発生剤>>>
前記光ラジカル発生剤としては、光によってラジカルを発生する有機物質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、
・1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651) ・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)
・2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア127)
・2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907)
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819)
・オキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル及びオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物(イルガキュア754)
、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、これらは、光重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと称されることもある。
【0057】
前記光硬化性樹脂組成物における前記光ラジカル発生剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.00質量%超5.0質量%以下が好ましく、0.01質量%超5.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上超3.0質量%以下が更により好ましく、0.1質量%超1.0質量%以下が特に好ましい。
【0058】
<<<その他の成分>>>
前記その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0059】
−シランカップリング剤−
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
<<第2の光学層の厚みの最小値>>
前記第2の光学層の厚みの最小値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm以上が好ましく、2μm以上40μm以下がより好ましく、2μm以上25μm以下が更により好ましく、2μm以上10μm以下が特に好ましい。前記第2の光学層の厚みの最小値が2μm以上であることにより、プリズム効果を低減させて、十分な透明性が得ることができる。
前記第2の光学層の厚みの最小値とは、例えば、
図3においては「A」で表され、「第1の光学層の厚みが最大であるときの第2の光学層の厚み」を意味する。
【0061】
<<貯蔵弾性率>>
前記第2の光学層の25℃での貯蔵弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1×10
9Pa以下が好ましく、8.0×10
8Pa以下がより好ましい。前記貯蔵弾性率が、好ましい範囲であることにより、第2の光学層が伸びやすくなり、その結果、前記光学体が伸びやすくなる。
【0062】
前記第1の光学層及び前記第2の光学層の少なくともいずれかが、25℃での貯蔵弾性率が3×10
9Pa以下である樹脂を含んでいることが好ましい。室温25℃において光学体に可撓性を付与することができるので、ロール・ツー・ロールでの光学体の製造が可能となるからである。
【0063】
貯蔵弾性率は、例えば、以下のようにして確認することができる。第1の光学層の表面が露出している場合には、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。また、第1の光学層の表面に第1の基材などが形成されている場合には、第1の基材などを剥離して、第1の光学層の表面を露出させた後、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。
また、第1の光学層、及び第2の光学層に相当する試験片を作製し、その試験片について、貯蔵弾性率を測定してよい。
【0064】
<粘着層>
前記粘着層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系、ゴム系、ポリエステル系、シリコン系などが挙げられるが、前記粘着層は、光学特性や耐候性の観点から、アクリル系粘着層であることが好ましい。
前記アクリル系粘着層は、アクリル系ポリマーを含有する粘着層である。
また、耐候性を向上させるために、粘着層にはUV吸収剤を含有しても良い。
【0065】
前記粘着層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上20μm以下がより好ましい。
【0066】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、例えば、基材などが挙げられる。
【0067】
<<基材>>
前記基材は、前記第1の光学層の凹凸面と対向する面上に配置され、通常、透明性を有する。
前記基材は、エネルギー線透過性を有することが好ましい。これにより、前記基材と前記無機層との間に介在させた光硬化性樹脂組成物に対して、前記基材側からエネルギー線を照射し、前記光硬化性樹脂組成物を硬化させることができるからである。
前記基材の形状としては、光学体に可撓性を付与する観点から、フィルム状を有することが好ましいが、特にこの形状に限定されるものではない。
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、などが挙げられる。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生産性の観点から、38μm以上100μm以下が好ましい。
【0068】
<引張破断伸び率>
前記光学体の引張破断伸び率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60%以上が好ましく、60%以上1,000%以下がより好ましく、60%以上500%以下が特に好ましい。
前記光学体の引張破断伸び率が60%以上であることにより、JIS−A5759に規定される「ガラス飛散防止フィルム」に適合することができる。
【0069】
従来の光学体では、第2の光学層が第2の基材に接し、第1の光学層、無機層、及び第2の光学層からなる積層体は、2枚の基材(第1の基材、第2の基材)により挟持されていた。そのため、光学体の引張破断伸び率は、2枚の基材が好影響を与える結果、第1の光学層、及び第2の光学層の柔軟性についてはそれほど考慮しなくても、光学体の引張破断伸び率60%以上を達成できた。
しかし、本発明の光学体では、前記第2の基材が存在しないため、前記第1の光学層、及び前記第2の光学層の柔軟性を考慮しないと、光学体の引張破断伸び率60%以上を達成できない。
更に、前記第2の光学層において、柔軟性を付与するために架橋密度を下げる手法を採用すると、残存する光ラジカル発生剤が、前記粘着層に移行しやすくなり、前記粘着層の黄変が生じやすくなる。ここで、残存する光ラジカル発生剤の前記粘着層への移行量は、パージ&トラップ分析による光ラジカル発生剤検出量と相関する。即ち、光学体の引張破断伸び率を高くすることと、光ラジカル発生剤検出量を少なくすることとは、相反し、一方のみを考慮すると、他方を満たさなくなる。
そのため、前記光学体の引張破断伸び率を60%以上にする際には、光ラジカル発生剤検出量も考慮しつつ、光硬化性樹脂組成物の組成(例えば、多官能(メタ)アクリレートモノマーの量と、光ラジカル発生剤の量)を十分に検討する必要がある。
【0070】
前記光学体の引張破断伸び率は、例えば、以下の方法で測定される。
JIS A5759 2008に従い測定を行う。試験長さ100mm×幅25mmの試験片を作製し、試験速度300mm/minで引張り試験を3回行い、その破断時のひずみの平均値を測定する。
【0071】
<透過像鮮明度>
前記光学体において、透過性を持つ波長帯に対する透過像鮮明度に関し、2.0mmの光学くしを用いたときの値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。
更に、前記光学体において、透過性を持つ波長帯に対する透過像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。透過像鮮明度の値が60%以上75%未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。透過像鮮明度の値が75%以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。
ここで、透過像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K−7374:2007に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0072】
<波長選択反射性>
図4は、波長選択反射性を有する光学体11に対して入射する入射光と、光学体11により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学体11は、光Lが入射する入射面S1を有する。光学体11は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光L
1を選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L
2を透過する。また、光学体11は、上記特定波長帯以外の光に対して透明性を有する。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。但し、θ:入射面S1に対する垂線l
1と、入射光Lまたは反射光L
1とのなす角である。φ:入射面S1内の特定の直線l
2と、入射光Lまたは反射光L
1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。ここで、入射面内の特定の直線l
2とは、入射角(θ、φ)を固定し、光学体11の入射面S1に対する垂線l
1を軸として光学体11を回転したときに、φ方向への反射強度が最大になる軸である。但し、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線l
2として選択するものとする。なお、垂線l
1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l
2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0073】
選択的に指向反射する特定の波長帯の光、及び透過させる特定の光は、光学体11の用途により異なる。例えば、外部支持体としての窓材に対して光学体11を適用する場合、選択的に指向反射する特定の波長帯の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定の波長帯の光が、主に波長帯域780nm以上2100nm以下の近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、光学体をガラス窓などの窓材に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、正反射以外のある特定の方向への反射光強度が、正反射光強度より強く、かつ、指向性を持たない拡散反射強度よりも十分に強いことを意味する。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上であることを示す。
【0074】
波長選択反射性を有する光学体11において、指向反射する方向φoが−90°以上、90°以下であることが好ましい。光学体11を外部支持体に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空方向に戻すことができるからである。周辺に高い建物がない場合にはこの範囲の光学体11が有用である。また、指向反射する方向が(θ、−φ)近傍であることが好ましい。近傍とは、好ましく(θ、−φ)から5度以内、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内の範囲内のずれのことをいう。この範囲にすることで、光学体11を外部支持体に貼った場合、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。このような指向反射を実現するためには、例えば球面や双曲面の一部や三角錐、四角錘、円錐などの3次元構造体を用いることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、その形状に基づいて(θo、φo)方向(0°<θo<90°、−90°<φo<90°)に反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて(θo、−φ)方向(0°<θo<90°)に反射させることができる。
【0075】
波長選択反射性を有する光学体11において、特定波長帯の光の指向反射が、再帰反射近傍方向、すなわち、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光に対する、特定波長帯の光の反射方向が、(θ、φ)近傍であることが好ましい。光学体11を外部支持体に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に戻すことができるからである。ここで近傍とは5度以内が好ましく、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内である。この範囲にすることで、光学体11を外部支持体に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができるからである。また、赤外線センサーや赤外線撮像のように、赤外光照射部と受光部が隣接している場合は、再帰反射方向は入射方向と等しくなければならないが、特定の方向からセンシングする必要がない場合は、厳密に同一方向とする必要はない。
【0076】
<凹凸形状>
図5Aに示すように、第1の光学層2を構成する構造体2cの形状を、光学体11の入射面S1または出射面S2に垂直な垂線l
1に対して非対称な形状としてもよい。この場合、構造体2cの主軸l
mが、垂線l
1を基準にして構造体2cの配列方向aに傾くことになる。ここで、構造体2cの主軸l
mとは、構造体断面の底辺の中点と構造体の頂点とを通る直線を意味する。地面に対して略垂直に配置された外部支持体としての窓材に光学体11を貼る場合には、
図5Bに示すように、構造体2cの主軸l
mが、垂線l
1を基準にして外部支持体としての窓材の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。一般に窓を介した熱の流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多いため、上記形状を採用することで、これら高角度から入射する光を効率的に上方に反射できるからである。
図5A及び
図5Bでは、プリズム形状の構造体2cを垂線l
1に対して非対称な形状とした例が示されている。なお、プリズム形状以外の構造体2cを垂線l
1に対して非対称な形状としてもよい。例えば、コーナーキューブ体を垂線l
1に対して非対称な形状としてもよい。
【0077】
構造体2cをプリズム形状とする場合、プリズム形状の構造体2cの傾斜角度α(
図1)は、例えば45°である。構造体2cは、窓材に適用した場合に、上空から入射した光を反射して上空に多く戻す観点からは、傾斜角がなるべく45°以上傾斜した平面または曲面を有することが好ましい。このような形状にすることで、入射光はほぼ1回の反射で上空へ戻るため、波長選択反射膜の反射率がそれ程高く無くとも効率的に上空方向へ入射光を反射できると共に、波長選択反射膜における光の吸収を低減できるからである。
【0078】
図6Aは、本発明の一実施形態に係る光学体における第1の光学層の構成例を示す平面図である。
図6Bは、
図6Aに示した第1の光学層のB−B線に沿った断面図である。
【0079】
第1の光学層2の一主面には、構造体2cが2次元的に配列されている。この配列は、最稠密充填状態での配列であることが好ましい。例えば、第1の光学層2の一主面には、構造体2cを最稠密充填状態で2次元配列することによりデルタ稠密アレイなどの稠密アレイが形成されている。デルタ稠密アレイは、例えば
図6A〜
図6Bに示すように、三角形状の底面を有する構造体2c(例えば三角錐)を最稠密充填状態で配列させたものである。
【0080】
また、第1の光学層2の表面に形成される構造体2cの形状は1種類に限定されるものではなく、複数種類の形状の構造体2cを第1の光学層の表面に形成するようにしてもよい。複数種類の形状の構造体2cを表面に設ける場合、複数種類の形状の構造体2cからなる所定のパターンが周期的に繰り返されるようにしてもよい。また、所望とする特性によっては、複数種類の構造体2cがランダム(非周期的)に形成されるようにしてもよい。
【0081】
<光学体の製造方法>
以下、
図7A〜
図7C、
図8A〜
図8C、及び
図9A〜
図9Dを参照して、本発明の一実施形態に係る光学体の製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す製造プロセスの一部または全部は、生産性を考慮して、ロール・ツー・ロールにより行われることが好ましい。但し、金型の作製工程は除くものとする。
【0082】
まず、
図7Aに示すように、例えばバイト加工またはレーザー加工などにより、第1の光学層2を構成する構造体2cと同一の凹凸形状の金型21、またはその金型21の反転形状を有する金型(レプリカ)を形成する。次に、
図7Bに示すように、例えば溶融押し出し法または転写法などを用いて、金型21の凹凸形状をフィルム状の樹脂材料に転写する。転写法としては、型に光硬化性樹脂組成物を流し込み、エネルギー線を照射して硬化させる方法、樹脂に熱や圧力を加え、形状を転写する方法、または樹脂フィルムをロールから供給し、熱を加えながら型の形状を転写する方法(ラミネート転写法)などが挙げられる。これにより、
図7Cに示すように、一主面に構造体2cを有する第1の光学層2が形成される。
【0083】
また、
図7Cに示すように、第1の基材4上に、第1の光学層2を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、フィルム状の第1の基材4をロールから供給し、該第1の基材4上に光硬化性樹脂組成物を塗布した後に型に押し当て、型の形状を転写し、紫外線等のエネルギー線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させる方法が用いられる。
【0084】
次に、
図8Aに示すように、その第1の光学層2の一主面上に無機層1としての波長選択反射層(機能性層)を成膜する。無機層1としての波長選択反射層の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられ、これらの成膜方法から、構造体2cの形状などに応じて適宜選択することが好ましい。次に、
図8Bに示すように、必要に応じて、無機層1としての波長選択反射層に対してアニール処理31を施す。アニール処理の温度は、例えば100℃以上250℃以下の範囲内である。
【0085】
次に、
図8Cに示すように、光硬化性樹脂組成物22を、無機層1としての波長選択反射層上に塗布する。
次に、
図9Aのように、コーター等で光硬化性樹脂組成物22を所定厚みに塗り広げて凹凸構造を埋めることにより、積層体を形成する。
次に、
図9Bに示すように、例えばエネルギー線32により光硬化性樹脂組成物22を硬化させるとともに、積層体に対して圧力33を加える。前記エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線、紫外線、可視光線、ガンマ線、電子線などが挙げられる。これらの中でも、生産設備の観点から、紫外線が好ましい。積算照射量としては、特に制限はなく、樹脂の硬化特性、樹脂や基材4の黄変抑制などを考慮して、適宜選択することができる。積層体に加える圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01MPa以上1MPa以下が好ましい。積層体に加える圧力が、0.01MPa未満であると、フィルムの走行性に問題が生じ、一方、1MPaを超えると、ニップロールとして金属ロールを用いる必要があり、圧力ムラが生じ易い。
以上により、
図9Cに示すように、無機層1としての波長選択反射層上に第2の光学層3が形成され、光学体11が得られる。
更に、本発明の光学体は、第2の光学層3の無機層1側と反対側に粘着層5が形成されていてもよい。粘着層5の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第2の光学層3上に粘着剤組成物を塗布して形成してもよいし、第2の光学層3と粘着層5とをラミネート加工により貼り合わせることで形成してもよい。
なお、第2の光学層3の他の凹凸面3aと対向する面3bの平坦度は、コーターヘッド等の平坦度、及び、樹脂の厚さ(凹凸の埋まり具合)に起因する。
【実施例】
【0086】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0087】
(実施例1)
<光学体の作製>
二次元平行溝を有する転写金型を用いて、PET基材A4300(東洋紡株式会社製、厚み50μm)上に、下記光硬化性樹脂組成物A1を用いて、
図5Aに示す第1の光学層を形成した。形成した第1の光学層上に、下記構成の無機層を真空スパッタ法により形成した。形成した無機層上に、下記光硬化性樹脂組成物B1を塗布し、紫外線を照射して硬化させて第2の光学層を形成した。以上により、光学体を得た。硬化後の第2の光学層の最薄部の厚みは20μmであった。光学体の厚みは、85μmであった。
【0088】
<<光硬化性樹脂組成物A1>>
以下の表1に記載の材料を混合して、光硬化性樹脂組成物A1を得た。
【0089】
【表1】
【0090】
表1中の材料の詳細は以下のとおりである。
・EBECRYL8807:2官能ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス株式会社製
・ACMO:含窒素複素環を有する単官能アクリレートモノマーとしてのアクリロイルモルホリン、KJケミカルズ株式会社製、ガラス転移温度Tg:145℃
・A−NOD−N:多官能アクリレートモノマーとしての1,9−ノナンジオールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製、ガラス転移温度Tg:67℃
・NKエステルA9300:多官能アクリレートモノマーとしてのエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、新中村化学工業株式会社製
・イルガキュア127:光ラジカル発生剤(光重合開始剤)、BASFジャパン株式会社製
【0091】
<<無機層の構成>>
(第1の光学層)/Nb
2O
5(32nm)/AgPdCu(11nm)/Al
2O
3−ZnO(8nm)/Nb
2O
5(70nm)/AgPdCu(11nm)/AZO(32nm)/(第2の光学層)
【0092】
<<光硬化性樹脂組成物B1>>
2官能ウレタンアクリレート(EBECRYL8807、ダイセル・オルネクス株式会社製)45.9質量部と、含窒素複素環を有する単官能アクリレートモノマーとしてのアクリロイルモルホリン(ACMO、KJケミカルズ株式会社製、ガラス転移温度Tg:145℃)34質量部と、多官能アクリレートモノマーとしてのポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、アロニックスM−260、東亞合成株式会社製)20質量部と、リン酸含有アクリレートとしての2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(ライトエステルP−2M、共栄社化学株式会社製)0.1質量部とを含むモノマー含有組成物(樹脂組成物)に、光ラジカル発生剤(光重合開始剤)としてのイルガキュア184(BASFジャパン株式会社製)0.6質量部を添加した。
【0093】
得られた光学体を以下の試験・測定に供した。結果を表3−1に示す。
【0094】
<貯蔵弾性率の測定>
試験片は、光硬化性樹脂組成物A1又はB1の硬化物(短冊状:長さ10mm、幅4mm、厚み100μm)を用いた。
動的粘弾性測定装置RSA3(TAインスツルメント社製)により、昇温速度5℃/min、周波数1Hzで、25℃における弾性率を測定した。
【0095】
<光ラジカル発生剤検出量>
光ラジカル発生剤の検出量については、揮発成分の測定方法である、GC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析法)・パージ&トラップ法により求めた。具体的には以下の方法で求めた。
試料10mgをパージ&トラップ装置の試料管に入れ、流速50ml/分のヘリウムガスでパージしながら、85℃で15分間で加熱した。発生した揮発分を−60℃でトラップし、試料加熱終了後トラップした成分を高周波誘導加熱法により急速加熱してGC/MSに導入した。検出揮発分の同定及び定量を行った。
そして、光学体における積層体(第1の光学層、無機層、及び第2の光学層)の質量に対する光ラジカル発生剤の検出質量を、光ラジカル発生剤の検出量(質量ppm)とする。
【0096】
<光学体の引張破断伸び率の測定>
JIS A5759 2008に従い測定を行った。即ち、第1の光学層に形成された二次元平行溝の平行方向に引っ張り試験ができるように、試験片(試験長さ100mm×幅25mm)を作製した。試験速度300mm/minで引張り試験を3回行い、その破断時のひずみの平均値を測定した。
【0097】
<耐光性>
作製した光学体の第2の光学層に、粘着層X(平均厚み16μm、MF58UV0455、巴川製紙所製)を貼り付けた。それを、厚み3mmのガラスに貼合し、ガラス側から、メタルハライドランプ光源からの光を170時間照射した。照射前後の透過光のイエローインデックス(YI)を分光光度計V−560(日本分光株式会社製)により測定した。イエローインデックスの照射前後の変化(黄変度:ΔYI)を以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:ΔYIが5.00以下
△:ΔYIが5.00超6.00未満
×:ΔYIが6.00以上
なお、ΔYI=YI
170−YI
0で求められる。
ΔYI:黄変度
YI
170:暴露後の黄色度
YI
0:試験片の初期の黄色度
【0098】
<透過像鮮明度の測定>
JIS K−7374:2007に従い、くし幅0.5mm又は2.0mmの光学くしを用いて透過像鮮明度を評価した。評価に使用した測定装置はスガ試験機株式会社製の写像性測定器(ICM−1T型)である。なお、測定は、第2の光学層の側から光を入射することにより行った。
【0099】
(実施例2)
実施例1において、光硬化性樹脂組成物A1を、下記表2に記載の光硬化性樹脂組成物A2に変え、光硬化性樹脂組成物B1を、表3−1に記載の光硬化性樹脂組成物B2に変更した以外は、実施例1と同様にして、光学体を作製した。
作製した光学体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3−1に示した。
【0100】
【表2】
表2中の材料の詳細は以下のとおりである。なお、表1に記載の材料と重複する材料の紹介は、省略する。
・NK−エステルAMP−10G:アルキレンオキサイド鎖を有する単官能アクリレートモノマーとしてのフェノキシエチルアクリレート、新中村化学工業株式会社製、ガラス転移温度Tg:−22℃
・イルガキュア184:光ラジカル発生剤(光重合開始剤)、BASFジャパン株式会社製
【0101】
(実施例3〜4)
実施例1において、光硬化性樹脂組成物A及び光硬化性樹脂組成物Bを、表3−1に記載の光硬化性樹脂組成物A及び光硬化性樹脂組成物Bにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、光学体を作製した。
作製した光学体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3−1に示した。
【0102】
(実施例5〜7)
実施例4において、第2の光学層の最薄部の厚みを、表3−2に記載の厚みに変更した以外は、実施例4と同様にして、光学体を作製した。
作製した光学体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3−2に示した。
【0103】
(実施例8)
実施例2と同じ光学体を用いた。
<耐光性>
以下のようにして耐光性評価を行った。
光学体の第2の光学層に、粘着層Y(平均厚み25μm、TD06UV0145、株式会社巴川製紙所製)を貼り付けた。それ以外は、前述の耐光性評価と同様にして、ΔYIを測定した。結果を表3−2に示した。
【0104】
(比較例1〜2)
実施例1において、光硬化性樹脂組成物A及び光硬化性樹脂組成物Bを、表3−3に記載の光硬化性樹脂組成物A及び光硬化性樹脂組成物Bにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、光学体を作製した。
作製した光学体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3−3に示した。
【0105】
(比較例3)
比較例1と同じ光学体を用いた。
<耐光性>
以下のようにして耐光性評価を行った。
作製した光学体の第2の光学層に、粘着層Y(平均厚み25μm、TD06UV0145、株式会社巴川製紙所製)を貼り付けた。それ以外は、前述の耐光性評価と同様にして、ΔYIを測定した。結果を表3−3に示した。
【0106】
(比較例4)
実施例1において、光硬化性樹脂組成物A及び光硬化性樹脂組成物Bを、表3−3に記載の光硬化性樹脂組成物A及び光硬化性樹脂組成物Bにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、光学体を作製した。
作製した光学体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3−3に示した。
【0107】
(参考例1)
<光学体の作製>
二次元平行溝を有する転写金型を用いて、PET基材A4300(東洋紡株式会社製、厚み50μm)上に、光硬化性樹脂組成物A2を用いて、
図5Aに示す第1の光学層を形成した。形成した第1の光学層上に、実施例1に記載の無機層を真空スパッタ法により形成した。形成した無機層上に、光硬化性樹脂組成物B5を塗布し、PET基材A4300(東洋紡株式会社製、厚み50μm)を載せた上から、紫外線を照射して硬化させて第2の光学層を形成した。以上により、光学体を得た。
光学体の層構成は、PET/第1の光学層/無機層/第2の光学層/PET、である。
得られた光学体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3−3に示した。
【0108】
(参考例2)
<光学体の作製>
二次元平行溝を有する転写金型を用いて、PET基材A4300(東洋紡株式会社製、厚み50μm)上に、光硬化性樹脂組成物A1を用いて、
図5Aに示す第1の光学層を形成した。形成した第1の光学層上に、実施例1に記載の無機層を真空スパッタ法により形成した。形成した無機層上に、光硬化性樹脂組成物B4を塗布し、PET基材A4300(東洋紡株式会社製、厚み50μm)を載せた上から、紫外線を照射して硬化させて第2の光学層を形成した。以上により、光学体を得た。
光学体の層構成は、PET/第1の光学層/無機層/第2の光学層/PET、である。
得られた光学体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3−3に示した。
【0109】
【表3-1】
【0110】
【表3-2】
【0111】
【表3-3】
【0112】
表3−1〜表3−3において、「E」は、10のべき乗を意味する。即ち、「1.0E+08」は「1.0×10
8」を意味する。
【0113】
表3−1〜表3−3中の材料の詳細は以下のとおりである。
・EBECRYL8807:2官能ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス株式会社製
・ACMO:含窒素複素環を有する単官能アクリレートモノマーとしてのアクリロイルモルホリン、KJケミカルズ株式会社製、ガラス転移温度Tg:145℃
・NK−エステルAMP−10G:アルキレンオキサイド鎖を有する単官能アクリレートモノマーとしてのフェノキシエチルアクリレート、新中村化学工業株式会社製、ガラス転移温度Tg:−22℃
・A−LEN−10:アルキレンオキサイド鎖を有する単官能アクリレートモノマーとしてのエトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、新中村化学工業株式会社製
・ライトエステルP−2M:リン酸含有アクリレートモノマーとしての2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学株式会社製
・アロニックスM−260:多官能アクリレートモノマーとしてのポリエチレングリコールジアクリレート、PEGDA、東亞合成株式会社製
・アロニックスM−211B:多官能アクリレートモノマーとしてのビスフェノールA EO変性(n≒2)ジアクリレート、東亞合成株式会社製
・イルガキュア184:光ラジカル発生剤(光重合開始剤)、BASFジャパン株式会社製
・イルガキュア745:光ラジカル発生剤(光重合開始剤)、BASFジャパン株式会社製
・イルガキュア127:光ラジカル発生剤(光重合開始剤)、BASFジャパン株式会社製
【0114】
以上より、第1の光学層と、無機層と、第2の光学層とを備え、第2の光学層が、粘着層と接して使用される光学体において、光ラジカル発生剤検出量を15質量ppm以下にすることにより、粘着層の黄変を防止できることがわかった。