特開2018-101153(P2018-101153A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-101153水平配向型液晶表示装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-101153(P2018-101153A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】水平配向型液晶表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20180601BHJP
【FI】
   G02F1/1337 520
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-42648(P2018-42648)
(22)【出願日】2018年3月9日
(62)【分割の表示】特願2013-197897(P2013-197897)の分割
【原出願日】2013年9月25日
(71)【出願人】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
【住所又は居所】大韓民国 ソウル、ヨンドゥンポーグ、ヨウィ−テロ 128
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
【住所又は居所】山形県山形市小白川町1丁目4−12
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】桃井 優一
【住所又は居所】大韓民国、413−811 キョンギ−ド、パジュ−シ、ウーロン−ミョン、エルジー−ロ 245
(72)【発明者】
【氏名】ムスン・クァク
【住所又は居所】大韓民国、413−811 キョンギ−ド、パジュ−シ、ウーロン−ミョン、エルジー−ロ 245
(72)【発明者】
【氏名】香田 智則
【住所又は居所】山形県米沢市城南4−3−16(国立大学法人山形大学内)
(72)【発明者】
【氏名】米竹 孝一郎
【住所又は居所】山形県米沢市城南4−3−16(国立大学法人山形大学内)
(72)【発明者】
【氏名】羽場 修
【住所又は居所】山形県米沢市城南4−3−16(国立大学法人山形大学内)
【テーマコード(参考)】
2H290
【Fターム(参考)】
2H290AA73
2H290BB91
2H290BD01
2H290BE01
2H290BF24
2H290BF52
2H290DA03
(57)【要約】
【課題】ラビング処理を施した配向膜に頼らなくても基板に対して水平配向に液晶分子を配向制御することが可能な液晶水平配向剤、水平配向型液晶組成物及び水平配向型液晶表示装置を得る。
【解決手段】本発明は、コアと、前記コアに連結され且つアゾ基を有するデンドロンとを有するデンドリマーからなることを特徴とする液晶水平配向剤である。また、本発明は、液晶成分と、前記液晶水平配向剤とを含むことを特徴とする水平配向型液晶組成物である。さらに、本発明は、前記水平配向型液晶組成物を液晶層として備えた水平配向型液晶表示装置であって、前記水平配向型液晶組成物に偏光UVを照射することによって液晶分子を水平配向させていることを特徴とする水平配向型液晶表示装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶成分と、コア及び前記コアに連結され且つアゾ基を有するデンドロンを有するデンドリマーからなる液晶水平配向剤とを含む水平配向型液晶組成物を液晶層として備えた水平配向型液晶表示装置であって、
前記水平配向型液晶組成物に偏光UVを照射することによって液晶分子を水平配向させていることを特徴とする水平配向型液晶表示装置。
【請求項2】
前記液晶層は、配向膜が形成されていない一対の基板間に挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の水平配向型液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶層は、電極と接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の水平配向型液晶表示装置。
【請求項4】
液晶成分と、コア及び前記コアに連結され且つアゾ基を有するデンドロンを有するデンドリマーからなる液晶水平配向剤とを含む水平配向型液晶組成物を基板間に導入した後、前記水平配向型液晶組成物に偏光UVを照射することを特徴とする水平配向型液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶水平配向剤、水平配向型液晶組成物、並びに水平配向型液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低駆動電圧、低消費電力及び軽量などの特性を有していることから、時計の表示板や携帯電話のディスプレイのほか、コンピュータやテレビのディスプレイなどでの用途が拡がっている。
【0003】
現在主流の液晶表示装置では、TN(twisted nematic)モード、VA(vertical alignment)モード、IPS(in-plane switching)モードなどが採用されているが、これらの種類や仕様によって液晶材料に要求される物性(例えば、屈折率異方性、誘電率異方性、粘度、相転位温度など)が異なる。そのため、所望の物性を満たすために、単一の液晶成分ではなく、2種以上の液晶成分を含む混合液晶が液晶材料として一般的に使用されている。また、最近では、液晶材料に微粒子を含有させることによって様々な物性を向上させ得ることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上記駆動方式の液晶表示装置ではいずれも、液晶分子の配向を制御する手段が必要であり、配向膜を形成する手段が一般的に使用されている。例えば、TNやIPSモードの液晶表示装置では、ラビング処理を施した配向膜によって、基板に対して水平方向に液晶分子を配向制御している。他方、ラビング処理が不要なVAモードの液晶表示装置では、配向膜によって基板に対して垂直方向に液晶分子を配向制御している。ここで、「配向膜」とは、液晶の配列状態を制御する膜であり、一般的にポリイミドなどの樹脂からなる膜を意味する。また、「ラビング処理」とは、レーヨンや綿などの布を巻いたローラーを、回転数及びローラーと基板との距離を一定に保った状態で回転させ、配向膜の表面を一方向に擦る処理を意味する。
【0005】
しかしながら、上記のような配向膜を用いた液晶分子の配向制御には、配向膜の形成及びラビング処理に起因する様々な問題がある。例えば、配向膜の形成やラビング処理の際にゴミやピンホールによって印刷上の製造歩留まりが低下したり、製造工程のガラス基板の大型化に伴って配向膜の形成及びラビング処理に要求されるコストが増大してしまう。
そこで、本発明者らは、特許文献2において、配向膜を用いることなく液晶分子の配向制御を行う手段として、デンドリマーを液晶配向剤として液晶成分に配合することを提案した。この文献中で提案された液晶配向剤は、基板に対して垂直配向に液晶分子を配向させることができるため、VAモードの液晶表示装置において使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−247921号公報
【特許文献2】特開2010−170090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2は、基板に対して水平方向に液晶分子を配向させる手段について開示していない。そのため、水平方向に液晶分子を配向制御する液晶表示装置に特許文献2の手段を適用することができない。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ラビング処理を施した配向膜に頼らなくても基板に対して水平配向に液晶分子を配向制御することが可能な液晶水平配向剤、水平配向型液晶組成物、並びに水平配向型液晶表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意研究した結果、デンドロンにアゾ基を導入したデンドリマーが、基板に対して垂直配向のみならず、基板に対して水平方向にも液晶分子を配向させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、コアと、前記コアに連結され且つアゾ基を有するデンドロンとを有するデンドリマーからなることを特徴とする液晶水平配向剤である。
また、本発明は、液晶成分と、上記の液晶水平配向剤とを含むことを特徴とする水平配向型液晶組成物である。
【0009】
また、本発明は、上記の水平配向型液晶組成物を液晶層として備えた水平配向型液晶表示装置であって、前記水平配向型液晶組成物に偏光UVを照射することによって液晶分子を水平配向させていることを特徴とする水平配向型液晶表示装置である。
さらに、本発明は、電極を備えた基板間に上記の水平配向型液晶組成物を導入する工程と、前記水平配向型液晶組成物に偏光UVを照射する工程とを含むことを特徴とする水平配向型液晶表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ラビング処理を施した配向膜に頼らなくても基板に対して水平配向に液晶分子を配向制御することが可能な液晶水平配向剤、水平配向型液晶組成物、並びに水平配向型液晶表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態3に係るIPSモード液晶表示装置の断面図である。
図2】偏光UVを照射する前のIPSモード液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本実施の形態の液晶水平配向剤は、コアと、コアに連結したデンドロンとを有するデンドリマーからなる。ここで、「コア」とは、デンドリマーの中心部分を意味し、「デンドロン」とは、コアから規則的に枝分かれした側鎖部分を意味する。また、「液晶水平配向剤」とは、ラビング処理を施した配向膜に頼ることなく、それ自体で基板に対して水平方向に液晶分子の配向制御を行うことが可能な添加剤を意味し、「液晶水平配向剤」は、一般に、水平配向型液晶表示装置の液晶層に用いられる液晶組成物に配合される。ここで、「水平配向型液晶表示装置」とは、基板に対して水平方向に液晶分子を配向制御する液晶表示装置、特に、IPSモードの液晶表示装置のことを意味する。
【0013】
液晶水平配向剤(以下、「水平配向剤」と略す)として用いられるデンドリマーは、デンドロンにアゾ基(−N=N−)を有する。
このような構造を有するデンドリマーは、偏光UVを照射することにより、液晶層中の液晶分子を基板に対して水平方向に一軸配向させ得るので、水平配向剤として使用することが可能である。他方、このデンドリマーは、偏光UVを照射しない場合、液晶層中の液晶分子を基板に対して垂直方向に一軸配向させ得るので、垂直配向剤としても使用することが可能である。このように偏光UVの照射の有無によって液晶分子の配向方向が変化するのは、アゾ基を有するデンドロン部分のシス−トランス光異性化による構造変化に主に起因していると考えられる。すなわち、このデンドリマーのデンドロン部分が、偏光UVの照射によって直線的な形状から屈曲した形状に変化することにより、液晶層中の液晶分子を基板に対して水平方向に一軸配向させることが可能になると考えられる。
【0014】
本実施の形態の水平配向剤は、上記のように、偏光UVの照射の有無によって液晶分子の配向方向を制御することができるため、従来の方法に比べて、材料の切り替えや清掃などの作業が不要であり、配向モードの異なる液晶表示装置を容易且つ迅速に製造することができる。
【0015】
水平配向剤として用いられるデンドリマーは、液晶成分に対して相溶性であることが好ましい。液晶成分と相溶性がないと、デンドリマーが沈殿し、均一な配向制御性(水平配向)が得られないことがある。ここで、「液晶成分に対して相溶性である」とは、液晶成分にデンドリマーを配合し、これをオーブンで液晶成分の相転移温度以上の温度まで上昇させて等方相にした際にデンドリマーが溶解しており(すなわち、液晶成分とデンドリマーとを含む液晶組成物が透明であり)、室温(25℃)まで戻してもデンドリマーの沈殿が確認されないものを意味する。
【0016】
水平配向剤として用いられるデンドリマーは、アルキル基、アルコキシ基及びフッ素からなる群より選択される少なくとも1つデンドロンの末端に有していることが好ましい。その理由としては、このデンドリマーが単成分のシアノ系液晶だけでなく、2種以上の液晶成分を含む混合液晶との相溶性に優れているためである。特に、実用的な液晶表示装置に一般的に使用されている混合液晶は、液晶表示装置の信頼性を確保する観点から不純物が溶解し難いように設計してあるために添加物が溶解し難いものの、このデンドリマーは、混合液晶に対しても良好な相溶性を示す。
【0017】
水平配向剤として用いられるデンドリマーを構成するコアは、以下の一般式(1)を有することが好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
水平配向剤として用いられるデンドリマーを構成するデンドロンは、以下の一般式(2)を有することが好ましい。
【0020】
【化2】
【0021】
式中、a及びbは2〜5の整数、好ましくは2〜4の整数、より好ましくは3の整数であり;Rは以下の式(3)により表される。
【0022】
【化3】
【0023】
式中、cは3〜12の整数、好ましくは4〜10の整数、より好ましくは5〜8の整数であり;Aは
【0024】
【化4】
【0025】
であり、Bは
【化5】
【0026】
(式中、Rは、炭素数1〜12、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数3〜8のアルキル基若しくはアルコキシ基、又はフッ素である)である。
【0027】
水平配向剤として用いられるデンドリマーは、各種文献に記載の公知の方法に準じて合成することができ、一般に、コアを与える化合物と、この化合物と結合してデンドロンを与える化合物とを有機溶剤中で反応させればよい。また、デンドリマーの世代を制御するために、デンドロンの分岐鎖となる部分を、コアを与える化合物に予め形成しておいてもよい。
【0028】
水平配向剤として用いられるデンドリマーの合成方法の具体例としては、多官能性アミン化合物と、アクリル酸エステル誘導体とを有機溶剤中で反応させる方法が挙げられる。
多官能性アミン化合物としては、ポリプロピレンテトラミンデンドリマー第1世代(Polypropylene tetramine Dendrimer, Generation 1.0)、ポリプロピレンオクタミンデンドリマー第2世代(Polypropylene octaamine Dendrimer, Generation 2.0)などであり、アルドリッチ社製のDAB−Am−4やDAB−Am−8などの市販品を使用することもできる。また、この多官能性アミン化合物は、エチレンジアミン及びアクリロニトリルを出発原料として合成することもできる。
アクリル酸エステル誘導体としては、合成するデンドリマーの種類に応じて適宜選択する必要があるが、例えば、上記の一般式を有するコア及びデンドロンを有するデンドリマーを合成する場合、下記の式(4)で表される化合物を原料として用いることができる。
【0029】
【化6】
【0030】
上記の式(4)中、A、B及びcは、上記で定義した通りである。
多官能性アミン化合物とアクリル酸エステル誘導体との反応比は、特に限定されないが、多官能性アミン化合物1モルに対して、アクリル酸エステル誘導体が1.0〜3.0モル、好ましくは1.1〜1.5モルである。
【0031】
有機溶剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。有機溶剤の例としては、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
また、有機溶剤の量は、多官能性アミン化合物やアクリル酸エステル誘導体の量などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
【0032】
反応温度としては、特に限定されないが、−50〜150℃、好ましくは25〜80℃である。反応温度が−50℃未満であると、反応速度が著しく低下することがある。また、反応温度が150℃を超えると、多官能性アミン化合物やアクリル酸エステル誘導体の安定性が低下することがある。
反応時間としては、特に限定されないが、2〜200時間、好ましくは48〜100時間である。反応時間が2時間未満であると、反応が十分に進行しないことがある。反応時間が200時間を超えると、時間がかかりすぎて実用的でない。
反応終了後は溶剤を除去することにより、目的とするデンドリマーを得ることができる。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、トルエンなどの貧溶剤を加えて加熱し、上澄みを除去することによって精製してもよい。
【0033】
実施の形態2.
本実施の形態の水平配向型液晶組成物(以下、「液晶組成物」と略す)は、液晶成分と、上記の水平配向剤とを含む。
この液晶組成物は、液晶層に用いる場合、偏光UVの照射によって水平配向剤(デンドリマー)のシス−トランス光異性化を生じさせ、基板に対して水平方向に液晶分子を配向させることができる。
液晶組成物中の水平配向剤(デンドリマー)は、液晶層と液晶層を挟持する基板との界面に存在し、ラビング処理を施した配向膜と同様の作用効果を与え、液晶層中の液晶分子を基板に対して水平方向に配向させる。従って、液晶組成物中の水平配向剤の含有量は、当該界面に水平配向剤を存在させ得るような量であればよい。この液晶組成物中の水平配向剤の含有量は、液晶層を挟持する基板の面積に依存するため一義的に定義することはできないが、一般的に0.01〜50質量%である。水平配向剤の含有量が0.01質量%未満であると、当該界面に存在する水平配向剤の量が少なすぎてしまい、液晶分子の配向制御に対する長期信頼性が低下することがある。一方、配向制御剤の含有量が50質量%を超えると、液晶成分の量が少なくなり、応答時間の増大や駆動電圧の増加などのような液晶表示装置としての所望の性能が得られないことがある。
【0034】
液晶組成物に水平配向剤を含有させる方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、水平配向剤を液晶成分に加えた後、周知の混合手段を用いて混合すればよい。
【0035】
液晶組成物に用いられる液晶成分としては、特に限定されないが、2種以上の液晶成分を含む混合液晶であることが好ましい。この混合液晶は、使用用途にあわせて所望の物性(例えば、屈折率異方性、誘電率異方性、粘度、相転位温度など)を満たすように幾つかの液晶成分を混合することによって調製されるため、一義的に定義することは難しいが、フッ素系混合液晶やシアノ系混合液晶などと一般的に称される混合液晶であり得る。これらの中でも、現在、液晶表示装置に一般的に使用されているフッ素系混合液晶を用いることが好ましい。ここで、「フッ素系混合液晶」とは、1種以上のフッ素系液晶を含む混合液晶を意味し、「シアノ系混合液晶」とは、1種以上のシアノ系液晶を含む混合液晶を意味する。
上記の混合液晶は、一般的に公知であると共に商業的に利用可能であり、例えば、フッ素系混合液晶は、ZLI−4792(p型)やMLC−6608(n型)という商品名でメルク株式会社によって販売されている。また、シアノ系混合液晶は、JC−5066XX(p型)という商品名でチッソ石油化学株式会社によって販売されている。
【0036】
液晶組成物は、液晶表示装置の実用性の観点から、室温において液晶性を示し、液晶相から等方相又は別の液晶相への相転移温度が50℃以上120℃以下であることが好ましい。
【0037】
液晶組成物は、液晶表示装置の液晶層として用いた場合に、液晶層と液晶層と接する部材との界面に水平配向剤を主に存在させ、ラビング処理した配向膜と同じ作用効果(すなわち、液晶分子の水平配向)を与えることができる。したがって、本発明の液晶組成物を用いれば、ラビング処理を施した配向膜を設けなくてもよい。
【0038】
実施の形態3.
本実施の形態の水平配向型液晶表示装置(以下、「液晶表示装置」と略す)は、上記の液晶組成物を液晶層として備えている。この液晶表示装置は、上記の液晶組成物を基板間に導入した後、この液晶組成物に偏光UVを照射することによって製造することができる。なお、液晶層は、上記の液晶組成物から構成されるため、液晶層の組成についての説明は省略する。
【0039】
以下、IPSモード液晶表示装置を例に挙げ、図面を参照しながら本発明の液晶表示装置について詳細に説明する。なお、本実施の形態の液晶表示装置は、液晶層の構成以外は公知の液晶表示装置の構成を採用することができ、以下の構成に限定されるものではない。また、この液晶層の構成を採用すれば、ラビング処理を施した配向膜を設けなくてもよいが、ラビング処理を施した配向膜と併用して液晶配向制御を行ってもよい。この場合においても、コントラストなどの特性を低下させることなく液晶配向制御を行うことが可能である。
【0040】
図1は、本実施の形態のIPSモード液晶表示装置の断面図である。図1において、この液晶表示装置は、対向した一対のガラス基板などの基板1a,1bと、基板1aと基板1bとの間に形成された液晶層2とを備えている。基板1aには、所望のカラーを実現するためのカラーフィルタ層4、及びカラーフィルタ層4を保護するためのオーバーコート層5が順次形成されており、基板1bには、櫛型電極6が形成されている。そして、液晶層2は、基板1a,1bに形成された櫛型電極6と直に接していると共に、シール材7によって封止されている。なお、櫛型電極構造には、FFS(フリンジフィールドスィッチング)モード(例えば、特開2008−51846号公報参照)を用いることも可能である。液晶層2に配合された水平配向剤8は、液晶層2と液晶層2が接する部材(櫛型電極6)との界面に主に存在して、ラビング処理を施した配向膜と同様の作用効果を与え、液晶層2中の液晶分子3を基板に対して水平方向に配向させる。このIPSモード液晶表示装置では、櫛型電極6によって基板1a,1bの面方向に電界を加えることにより、液晶分子3を基板1a,1bと平行な面内で回転させることができる。
【0041】
このIPSモード液晶表示装置は、以下のようにして製造することができる。
まず、カラーフィルタ層4及びオーバーコート層5を形成した基板1aと、櫛型電極6を形成した基板1bとの間に、液晶層2として上記の液晶組成物を導入し、シール材7によって封止する。
液晶組成物の導入方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。導入方法の例としては、ODF(液晶滴下注入法)や毛細管現象を利用する方法が挙げられる。
このとき、液晶層2では、図2に示すように、水平配向剤8が、液晶層2と液晶層2が接する部材(図2ではオーバーコート層5、基板1b及び櫛型電極6)との界面に主に存在し、液晶層2中の液晶分子3を基板に対して垂直方向に配向させる。
【0042】
次に、基板1aと基板1bとの間に導入された液晶組成物に偏光UVを照射する。
偏光UVの照射方法としては、特に限定されないが、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いて行なうことができる。偏光UVを得る方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、基板面に対して斜め方向から非偏光UVを照射することにより、偏光UVを得ることができる(詳細は、特開2006−18106号公報参照)。或いは、グランテーラープリズムなどのプリズムを用いる方法、偏光膜を用いる方法、石英ガラスなどのブリュスター角を利用する方法などを用いてもよい。
【0043】
偏光UVの波長は、水平配向剤であるデンドリマーがシス−トランス光異性化する範囲であれば特に限定されず、一般に200〜380nm、好ましくは300〜380nmである。
偏光UVのピーク強度は、作製する液晶表示装置の大きさなどに応じて適宜調整する必要があるが、一般に、100〜5000mW/cm程度であり、好ましくは500〜2000mW/cm、より好ましくは1000〜1500mW/cmである。
【0044】
偏光UVの照射を行うと、液晶層2では、水平配向剤8が、シス−トランス光異性化によって構造変化し、図1に示すように、液晶層2中の液晶分子3を基板に対して水平方向に配向させる。
【0045】
上記のように、本実施の形態のIPSモード液晶表示装置では、水平配向剤8を液晶層2に配合することにより、液晶層2と液晶層2と接する部分(図1ではオーバーコート層5、基板1b及び櫛型電極6)との界面に水平配向剤8を主に存在させ、液晶分子3の配向制御を行う。すなわち、水平配向剤8は、液晶層2と液晶層2と接する部分との界面に存在して、ラビング処理を施した配向膜と同じ作用効果を与えるため、従来のIPSモード液晶表示装置とは異なり、ラビング処理を施した配向膜を設けなくても液晶分子3の配向制御が可能である。また、ラビング処理を施した配向膜を設けない場合には、液晶層2を櫛型電極6と直に接触させることができるため、ラビング処理を施した配向膜による電力ロスを低減して液晶表示装置の駆動電圧を低下させることもできる。
【0046】
また、従来の液晶表示装置の製造方法では、液晶配向制御のための配向膜を形成するために、一般的に、(1)基板上へのポリイミド(以下、PIという)の塗布、(2)仮焼成、(3)本焼成、(4)ラビング処理及び(5)ラビング処理後の基板洗浄を行う必要があった。なお、駆動方式によっては、(4)ラビング処理及び(5)ラビング処理後の基板洗浄の工程が行われない場合もある。
これに対して本実施の形態の液晶表示装置の製造方法では、水平配向剤の添加及び偏光UVの照射という簡単な方法によって液晶分子の配向制御を行うことができるため、配向膜の形成やラビング処理を行わなくてもよい。したがって、配向膜の形成やラビング処理を行う際に必要となる上記(1)〜(5)の工程を要しないため、製造方法の簡素化及び設備投資の大幅な削減が可能になると共に、ゴミやピンホールによって印刷上の製造歩留まりが低下したり、製造工程のガラス基板の大型化に伴って配向膜の形成工程の投資コストが増大するなどの問題も生じない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
<デンドリマーAの合成>
上記の一般式(2)におけるRが、下記の式(5)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0048】
【化7】
【0049】
6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキサノールの合成
200mLの三口フラスコに、4−(4−ヘキシルフェニルジアゼニル)フェノール(5.0g、17.7mmol)、6−ブロモヘキサノール(4.9g、18mmol)、炭酸カリウム(2.45g、17.7mmol)及びエタノール(20mL)を入れて溶解し、48時間加熱還流した。加熱還流が終了した後、減圧下でエタノールを除去して得られた残渣をジエチルエーテルに溶解し、この溶液を水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した後、ジエチルエーテルを減圧下で留去し、得られた残渣をn−ヘキサンで再結晶させることで、橙色の針状結晶を収量3.9g(収率58%)で得た。この針状結晶は、IRにより、3289cm−1(OH)、2919cm−1(C−H)、1473cm−1(N=N)、1253cm−1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0050】
6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキシルアクリレートの合成
100mLの三口フラスコに、6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキサノール(3.5g、9.2mmol)、トリエチルアミン(0.92g、9.2mmol)及びTHF(30mL)を入れて溶解し、氷で0℃に冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(1.2g、14mmol)を注射器を用いて加え、室温で24時間撹拌した。生じた白色固体をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮した後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:クロロホルム)により精製し、黄色固体を収量3.4g(収率85%)で得た。この黄色固体は、IRにより、2935cm−1(C−H)、1716cm−1(C=O)、1473cm−1(N=N)、1261cm−1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この黄色固体の元素分析値は、C2736として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:74.28%、H:8.31%、N:6.42%、実測値〜C:74.48%、H:8.61%、N:6.35%)
【0051】
デンドリマーAの合成
100mLのナスフラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.39g、0.51mmol)、6−[4−(4−ヘキシルフェニルジアゼジル)フェノキシ]ヘキシルアクリレート(4.9g、11mmol)及びTHF(20mL)を入れ、50℃で72時間加熱した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のTHFに溶解して400mLのヘキサンに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を2回繰り返すことによって精製し、ペースト状の橙色固体を収量3.9g(収率98%)で得た。この橙色固体は、IRにより、2931cm−1(C−H)、1735cm−1(C=O)、1457cm−1(N=N)、1253cm−1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この橙色固体の元素分析値は、C4726724648として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:73.07%、H:8.73%、N:8.30%、実測値〜C:72.86%、H:8.49%、N:8.40%)さらに、この橙色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては−13℃にTg、33℃及び83℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては81℃及び28℃に発熱ピーク、−29℃にTgが観測された。
【0052】
<デンドリマーBの合成>
上記の一般式(2)におけるRが、下記の式(6)で表されるデンドリマーを次のようにして合成した。
【0053】
【化8】
【0054】
6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキサノールの合成
200mLのナスフラスコに、4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシフェノール(10g、41mmol)、6−ブロモヘキサノール(8.8g、49mmol)、炭酸カリウム(11g、80mmol)及び2−ブタノン(50mL)を入れて溶解し、60時間加熱還流した。加熱還流が終了した後、減圧下で2−ブタノンを除去して得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、この溶液を水で3回洗浄した。次に、この溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて水分を除去した後、酢酸エチルを減圧下で留去し、得られた残渣をn−ヘキサンで再結晶させることで、白色結晶を収量6.2g(収率44%)で得た。この白色結晶は、IRにより、3340cm−1(OH)、2922cm−1(C−H)、1245cm−1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0055】
6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキシルアクリレートの合成
200mLの三口フラスコに、6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキサノール(6.0g、17mmol)、トリエチルアミン(2.2g、22mmol)及びTHF(50mL)を入れて溶解し、氷で0℃に冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(1.9g、21mmol)を注射器を用いてゆっくり加え、室温で12時間撹拌した。生じた白色固体をろ別し、ろ液を減圧下で濃縮した後、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、100mlの水で3回洗浄した。次に、有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、減圧下で濃縮した。次に、残渣をカラムクロマトグラフィー(固定相:シリカゲル、移動相:ヘキサン/クロロホルム(容積比率50:1))により精製し、無色透明な液体を収量6.4g(収率93%)で得た。この液体は、IRにより、2920cm−1(C−H)、1716cm−1(C=O)、1245cm−1(PhO−)の特性吸収が観測された。
【0056】
デンドリマーBの合成
20mLのナスフラスコに、アルドリッチ社製DAB−Am−8(0.16g、0.21mmol)、6−[4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ]ヘキシルアクリレート(4.0g、10mmol)及びTHF(5mL)を入れ、50℃で72時間加熱した。次に、この溶液を減圧下で濃縮した後、残渣を少量のクロロホルムに溶解して100mlのメタノールに加え、上澄みをデカンテーションによって除去し、沈殿物を回収した。この操作を2回繰り返すことによって精製し、ペースト状の淡黄色固体を収量0.45g(収率30%)で得た。この淡黄色固体は、IRにより、2921cm−1(C−H)、1736cm−1(C=O)、1247cm−1(PhO−)の特性吸収が観測された。また、この淡黄色固体の元素分析値は、C4567361448として計算した値と0.5%の範囲内で一致した。(計算値〜C:76.25%、H:10.33%、N:2.73%、実測値〜C:76.09%、H:10.52%、N:2.80%)また、この淡黄色固体のMALDI−TOF−MSによる分子量を測定したところ、理論値m/Z=7183(M+H)に対して、実測値m/Z=7181.2(M+H)であった。さらに、この淡黄色固体のDSC測定を行ったところ、昇温過程においては−24℃にTg、14℃及び73℃に吸熱ピークが観測され、また、降温過程においては69℃及び15℃に発熱ピーク、−26℃にTgが観測された。
【0057】
(実施例1)
デンドリマーAと、フッ素系混合液晶ZLI−4792(P型、メルク株式会社)とをバイアル瓶に入れて混合することによって液晶組成物を調製した。この液晶組成物中のデンドリマーAの含有量は1質量%とした。
次に、調製した液晶組成物を110℃で10分間保持したところ、デンドリマーAがフッ素系混合液晶に完全に溶解していることを目視にて確認した。また、この液晶組成物を室温に冷却した後も、デンドリマーAの分離や沈殿などは確認されなかった。
【0058】
次に、調製した液晶組成物を用いて配向膜のない液晶セルを作製した。
まず、一方のガラス基板に、クロム櫛型電極(イーエッチシー社製、電極間距離10μm、電極面積2cm)、及びドット状カラムスペーサー(JSR株式会社製、型番JNPC−123−V2、高さ約5μm)をフォトリソグラフィによってパターニングして形成した。次に、このガラス基板を洗浄した後、注入口エリアとなる部分を除くガラス基板の周辺に熱硬化型シール材(三井化学株式会社製、型番XN21−S)を塗布した後、他方の洗浄済み素ガラス基板と重ね合わせ、バネ式冶具加圧環境下、160℃で5時間加熱することにより接着させた。次に、液晶組成物を注入口からキャピラリーを用いて注入した後、UV接着剤(スリーボンド製、型番3027D)で注入口を封止した。得られた液晶セルのセルギャップは約5.2μmであった。
【0059】
作製した液晶セルについて偏光顕微鏡観察を行った結果、クロスニコル状態で偏光子を回転しても暗状態を維持していたことから、液晶分子が基板に対して垂直方向に配向していることを確認した。
次に、この液晶セルに、UV照射器(パナソニック株式会社製、LED方式SPOT型UV照射器Aicure UJ30)を用い、ガラス基板までの距離3cm、入射角30°、照射時間30〜60秒、ピーク強度1290mW/cm、波長369nmの条件下で非偏光UVを照射した。
UV照射後の液晶セルについて偏光顕微鏡観察を行った結果、クロスニコル状態で偏光子を回転すると、偏光子の角度45°ごとに明暗状態が観察され、液晶分子が基板に対して水平方向に配向していることを確認した。
【0060】
(比較例1)
デンドリマーAをデンドリマーBに変えたこと以外は実施例1と同様にして液晶組成物を調製した。
調製した液晶組成物を110℃で10分間保持したところ、デンドリマーBがフッ素系混合液晶に完全に溶解していることを目視にて確認した。また、この液晶組成物を室温に冷却した後も、デンドリマーBの分離や沈殿などは確認されなかった。
【0061】
次に、この液晶組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして配向膜のない液晶セルを作製した。
作製した液晶セルについて偏光顕微鏡観察を行った結果、クロスニコル状態で偏光子を回転しても暗状態を維持していたことから、液晶分子が基板に対して垂直方向に配向していることを確認した。
次に、この液晶セルに実施例1と同様にして偏光UVを照射した。この偏光UV照射後の液晶セルについて偏光顕微鏡観察を行った結果、クロスニコル状態で偏光子を回転しても暗状態を維持していたことから、偏光UVを照射しても液晶分子が基板に対して垂直方向に配向したままであることを確認した。
【0062】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、ラビング処理を施した配向膜に頼らなくても基板に対して水平配向に液晶分子を配向制御することが可能な液晶水平配向剤、水平配向型液晶組成物、並びに水平配向型液晶表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1a、1b 基板、2 液晶層、3 液晶分子、4 カラーフィルタ層、5 オーバーコート層、6 櫛型電極、7 シール材、8 水平配向剤。
図1
図2