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特開2018-102227電子レンジ調理用食品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-102227(P2018-102227A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】電子レンジ調理用食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20180608BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20180608BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20180608BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20180608BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20180608BHJP
【FI】
   A23L5/10 C
   A23L29/256
   A23L29/231
   A23L29/244
   A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-252681(P2016-252681)
(22)【出願日】2016年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】埋橋 祐二
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌敬
(72)【発明者】
【氏名】原山 智子
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B035LC12
4B035LC16
4B035LE01
4B035LE04
4B035LG12
4B035LG22
4B035LG24
4B035LG25
4B035LG27
4B035LK04
4B035LP59
4B041LC10
4B041LD01
4B041LD03
4B041LE01
4B041LH05
4B041LH06
4B041LH08
4B041LH10
4B041LH16
4B041LH18
4B041LK18
4B041LK21
4B041LK31
4B041LK42
4B041LP02
4B041LP25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子レンジによる加熱調理を行う際に加熱ムラが生じず、加熱時間を短縮することができる電子レンジ調理用食品及びその製造方法の提供。
【解決手段】融点が90℃以上である耐熱性ゲルが食品中又は粒状食品群中に分散している電子レンジ調理用食品。前記耐熱性ゲルが油脂をさらに含有し、前記耐熱性ゲルに対する前記油脂の含有量が5〜70重量%である電子レンジ調理用食品。前記耐熱性ゲルがアルギン酸1価カチオン塩、脱アシルジェランガム、カードラン、寒天、こんにゃく粉、LMペクチンのうちいずれか1以上のゲル化剤に由来する電子レンジ調理用食品。融点が90℃以上である耐熱性ゲルを形成するゲル化剤をゲル化させて、前記耐熱性ゲルを得る工程と、前記耐熱性ゲルを食品中又は粒状食品群中に分散させる工程と、を有する電子レンジ調理用食品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が90℃以上である耐熱性ゲルが食品中又は粒状食品群中に分散していることを特徴とする電子レンジ調理用食品。
【請求項2】
前記耐熱性ゲルが油脂をさらに含有し、前記耐熱性ゲルに対する前記油脂の含有量が5重量%〜70重量%である請求項1記載の電子レンジ調理用食品。
【請求項3】
前記耐熱性ゲルがアルギン酸1価カチオン塩、脱アシルジェランガム、カードラン、寒天、こんにゃく粉、LMペクチンのうちいずれか1以上のゲル化剤に由来する請求項1又は2項記載の電子レンジ調理用食品。
【請求項4】
融点が90℃以上である耐熱性ゲルを形成するゲル化剤をゲル化させて、前記耐熱性ゲルを得る工程と、前記耐熱性ゲルを食品中又は粒状食品群中に分散させる工程と、を有する電子レンジ調理用食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで加熱することにより可食となる電子レンジ調理用食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵又は冷凍保存され、電子レンジにより加熱して喫食する麺類、米飯、パン、惣菜等の調理食品が数多く市販されている。
【0003】
このような調理食品において、食品中の水分含有量にムラがある場合、電子レンジによる加熱時に温まり方にムラが出たり、水分含有量が少ない場合に加熱時間が長くなったりするという問題がある。
【0004】
上記のような問題を解決するために、種々の提案がなされている。例えば特許文献1には、電子レンジ調理加熱食品に、油脂50〜80重量%、水10〜40重量%、エタノール2〜10重量%、及び加熱半変性処理卵黄又は酵素処理卵黄4〜15重量%を含む水中油型乳化物を付着させることにより、電子レンジで加熱したとき食品に加熱ムラが生じないようにすることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、油脂を小麦粉に対し、0.1〜10重量%と、グリアジンを混合した電子レンジ調理用生麺類とすることで、極短時間の電子レンジ調理により、可食状態にできることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−327773号公報
【特許文献2】特許第3549680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の電子レンジ調理加熱食品においては、水中油型乳化物が付着した箇所のみの加熱が促進される。従って、加熱ムラの解消は不十分であるといえ、実施例1における加熱後のグラタンは、中心部は65℃、容器周辺部では95℃となっている。また、水中油型乳化物を食品に付着させるため、喫食した際に違和感があることが想定される。
【0008】
特許文献2に記載の電子レンジ調理用生麺類においては、麺線への吸水速度を向上させることができるが、加熱ムラを解消させる方法については全く開示されていない。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、電子レンジによる加熱調理を行う際に加熱ムラが生じず、加熱時間を短縮することができる電子レンジ調理用食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、食品中又は食品群中に耐熱性のゲルを分散させることで、電子レンジ調理時に加熱ムラが生じず、加熱時間を短縮できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る電子レンジ調理用食品は、融点が90℃以上である耐熱性ゲルが食品中又は粒状食品群中に分散していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る電子レンジ調理用食品によれば、電子レンジによる加熱調理を行う際に加熱ムラが生じず、加熱時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.電子レンジ調理用食品
本発明に係る電子レンジ調理用食品は、常温、冷蔵又は冷凍保存されており、電子レンジで加熱することで可食となるものである。電子レンジ調理用食品として特に限定はなく、例えばパスタ、うどん、そば、中華麺、パンケーキ、グラタン、ハンバーグ、つみれ、コロッケ、米飯、おにぎり、カレーライス等が挙げられる。本発明に係る電子レンジ調理用食品は、融点が90℃以上である耐熱性ゲルが食品中又は粒状食品群中に分散している。
【0014】
本発明に係る耐熱性ゲルが分散している食品とは、電子レンジ調理用食品の材料となり得る食品であり、例えば、小麦粉、米粉、そば粉等の穀物粉末、野菜粉末、たんぱく質粉末などの粉末状食品と水とを混練して得られる生地や、挽肉、魚介類のすり身、餡子、各種ソースなどのペースト状食品等が挙げられる。耐熱性ゲルを、このような生地やペースト状食品等の食品と混練することで、食品中に分散した状態とすることができる。耐熱性ゲルが分散した食品を成形、加工、味付けして調理することで、パスタ、うどん、そば、中華麺、パン、ハンバーグ、つみれ、コロッケ等の電子レンジ調理用食品とすることができる。
【0015】
また、粒状食品群として、米、大麦、粟、稗、黍、キヌア、アマランサス等の穀物粒、米様食品、クスクス等の造粒食品などが挙げられる。本発明に係る耐熱性ゲルは、粒状食品群の各粒の周囲に満遍なく付着させることで、粒状食品群中に分散した状態とすることができる。耐熱性ゲルが分散した粒状食品群を炊飯し、適宜調理することで、米飯、おにぎり、カレーライス等の電子レンジ調理用食品とすることができる。また、耐熱性ゲルは、炊飯後の粒状食品群中に分散させてもよい。
【0016】
ここで、本発明において、耐熱性ゲルの「分散」とは、本発明に係る耐熱性ゲルが食品中に混練された状態、又は本発明に係る耐熱性ゲルが粒状食品群の各粒の周囲に満遍なく付着した状態を意味する。なお、粒状食品群の全ての粒に耐熱性ゲルが付着している必要はなく、耐熱性ゲルが粒状食品群の全体的に均一に分布していればよい。
【0017】
本発明に係る耐熱性ゲルの融点は90℃以上であり、92℃以上であることがより好ましく、95℃以上であることが特に好ましい。融点が90℃以上である耐熱性ゲルは、食品を加熱調理する際の温度条件下で溶解せず、離水も生じないため、食品の加熱ムラを生じさせず、食感を損ねることもない。このような耐熱性ゲルを形成するゲル化剤として、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸1価カチオン塩、脱アシルジェランガム、カードラン、寒天、こんにゃく粉(グルコマンナン)、LMペクチンが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記ゲル化剤をゲル化して得られる耐熱性ゲルとして、アルギン酸カルシウム、カルシウム架橋型ジェランガム、カードランのハイセットゲル、こんにゃく(グルコマンナンをアルカリ処理して形成したゲル)、寒天ゲル、カルシウム架橋型ペクチン等が挙げられる。寒天として、融点が90℃以上である高融点寒天が好ましく、例えば特許第2560027号に開示された高融点寒天が挙げられる。
【0018】
一方、例えばカラギナンのゲル等、融点が90℃より低いゲルは、食品の加熱調理における温度条件下でゲルが溶解し、離水が生じてしまい、加熱ムラの原因となったり、食感を損ねたりするため好ましくない。
【0019】
水分を含有した状態の耐熱性ゲルの含水率は、30%〜99.7%であることが好ましく、70%〜99.7%であることがより好ましい。含水率が30%〜99.7%であることで、電子レンジ調理の際に効率的に加熱することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る耐熱性ゲルは、より効率的に加熱を行う目的で油脂を含有することができる。耐熱性ゲルが油脂を含有する場合、油脂は、耐熱性ゲルに対して5重量%〜70重量%含有することが好ましく、5重量%〜60重量%であることがより好ましい。油脂が5重量%以下となると、効率的な加熱を行うことができず、油脂が70重量%以上となると、耐熱性が得られなくなりゲルが調理時に溶解してしまうため好ましくない。油脂として、例えば大豆油、ひまわり油、キャノーラ油、胡麻油、米油、オリーブ油、中鎖脂肪酸等の植物油、魚油等の動物油、ショートニング、マーガリン、バターなど一般に食品に使用されるものが挙げられる。
【0021】
また、本発明に係る耐熱性ゲルが油脂を含有する場合、乳化剤をさらに含有することが好ましい。乳化剤としては、食品に使用できるものであれば特に限定されないが、例えばショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、ユッカフォーム抽出物、植物性ステロール、シクロデキストリン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
一般に油脂は水よりも比熱が低く、低い熱量で温度上昇することができるため、油脂を含有する耐熱性ゲルが分散した電子レンジ調理用食品とすることで、より効率的に加熱を行うことができる。
【0023】
本発明に係る耐熱性ゲルとして、その微粒子を使用することが好ましい。耐熱性ゲルの微粒子は、耐熱性ゲルを破砕、裁断等する方法、耐熱性ゲルの製造時にサイズを調整する方法等により製造される。微粒子の大きさは特に限定されるものではないが、例えば、耐熱性ゲルの微粒子を球に模した場合の直径を粒径とした平均粒径が、2mm以下であることが好ましく、0.1mm〜1mmであることがさらに好ましい。平均粒径が2mm以上となると、食品との違和感があり、食品の食感を損ねるため好ましくない。
【0024】
本発明に係る耐熱性ゲルは、塩類、糖類又は多糖類を含有してもよい。塩類、糖類又は多糖類を含有することで、耐熱性ゲルの浸透圧が増加するため、離水や水分移行しにくくなる。塩類として、例えば食塩、乳酸カルシウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。糖類として、例えばデキストリン、ショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、オリゴ糖等が挙げられる。多糖類として、例えばアラビアガム、プルラン、大豆多糖類、低粘度グアーガム、低粘度タマリンドガム、化工デンプン等が挙げられる。これらのうち、1種を単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0025】
また、本発明に係る耐熱性ゲルは、ゲル化剤のゲル化を遅延させる遅延剤を含有してもよい。遅延剤として、グルコノデルタラクトン(GDL)、乳酸、クエン酸等が挙げられる。
【0026】
また、本発明に係る耐熱性ゲルは、酸、香料、色素、機能性成分等の添加剤を含有することができる。
【0027】
本発明に係る耐熱性ゲルは、食品又は粒状食品群100重量%に対し、0.5重量%〜30重量%含有することが好ましく、3重量%〜20重量%がさらに好ましい。0.5重量%以下であると、電子レンジ調理用食品を加熱した際に十分に加熱ムラを解消することができず、30重量%以上であると、食感を損ねてしまうため好ましくない。
【0028】
以上のように、本発明に係る電子レンジ調理用食品は、融点が90℃以上である耐熱性ゲルが食品中又は粒状食品群中に分散しているため、電子レンジ調理した際に加熱ムラが生じず、加熱時間を短縮することができる。
【0029】
2.電子レンジ調理用食品の製造方法
以下、本発明に係る電子レンジ調理用食品の製造方法について説明する。本発明に係る電子レンジ調理用食品は、融点が90℃以上である耐熱性ゲルを形成するゲル化剤をゲル化させることにより耐熱性ゲルを得て、得られた耐熱性ゲルを食品中又は粒状食品群中に分散させ、当該食品又は粒状食品群を調理することにより製造される。
【0030】
耐熱性ゲルは、粉末状のゲル化剤を水に溶解又は分散させ、使用するゲル化剤に応じて適宜加熱溶解、カルシウム塩の添加、冷却を行うことにより製造される。ゲル化剤を溶解又は分散させる水として特に限定はなく、ゲル化剤のゲル化を阻害しない程度であれば他の液体を使用してもよい。このような液体として、例えば、生理食塩水、各種緩衝液、酢酸水溶液、クエン酸水溶液、エタノール水溶液等が挙げられる。
【0031】
ゲル化剤がアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸1価カチオン塩、脱アシルジェランガム、LMペクチンである場合、これらゲル化剤の水溶液と、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸1水素2カルシウム等のカルシウム塩とを接触させることで、耐熱性ゲルであるアルギン酸カルシウム、カルシウム架橋型ジェランガム、カルシウム架橋型ペクチンが得られる。
【0032】
ゲル化剤がこんにゃく粉である場合、こんにゃく粉を分散させた水に水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム等を添加してアルカリ処理することで、耐熱性ゲルであるこんにゃくを形成することができる。
【0033】
ゲル化剤が寒天である場合、粉末状の寒天を水に溶解し、加熱した後冷却することでゲル化させ、耐熱性ゲルである寒天ゲルを得ることができる。
【0034】
ゲル化剤がカードランである場合、カードラン粉末を水に分散後、60℃〜70℃で溶解してローセットゲルを作製後、さらに80℃程度の高温に加熱することで、耐熱性ゲルであるハイセットゲルを得ることができる。ゲル化剤としてカードランを用いる場合は、ハイセットゲルを形成した後に食品中又は粒状食品群中に分散させてもよいし、ローセットゲルを食品中又は粒状食品群中に分散させた後に、加熱調理してハイセットゲルを形成するようにしてもよい。
【0035】
耐熱性ゲルは、そのままで食品と混練し、あるいは適宜裁断して耐熱性ゲルの微粒子としてから食品と混練することにより、食品中に分散させることができる。耐熱性ゲルを裁断せずにそのまま食品と混練する場合は、分散性を高めるために、せん断応力を与えながら混練することが好ましい。
【0036】
また、耐熱性ゲルに油脂を含有させる場合は、粉末状のゲル化剤及び乳化剤を水に添加し、適宜加熱して溶解させた溶液に油脂を添加して、撹拌することにより得られる。撹拌は、高速撹拌機等の通常使用する乳化機を用いて行うことができる。
【0037】
得られた耐熱性ゲルを微粒子とする場合、微粒子を球に模した場合の平均粒径が2mm以下であることが好ましく、0.1mm〜1mmであることがさらに好ましい。耐熱性ゲルの微粒子を得る方法は特に限定されず、ゲル状の耐熱性ゲルを刃物等で裁断する方法や、乾燥させた耐熱性ゲルを粉砕する方法などにより製造することができる。
【0038】
本発明に係る耐熱性ゲルは、食品中又は粒状食品群中において、水分を含有した状態で分散していても、乾燥した状態で分散していてもよい。乾燥状態の耐熱性ゲルが分散した食品又は粒状食品群を使用する場合、例えば茹で加工、蒸し加工、炊飯等の加水調理を行い、乾燥状態の耐熱性ゲルを吸水膨潤させる。
【0039】
また、耐熱性ゲルは、熱風乾燥等の公知の方法により乾燥し、乾燥状態とすることができる。耐熱性ゲルの乾燥は、ゲル化剤でゲル化後、微粒子とせずに行ってもよいし、耐熱性ゲルの微粒子とした後に行ってもよい。
【0040】
上記のようにして得られた耐熱性ゲル、耐熱性ゲルの微粒子、又は乾燥状態の耐熱性ゲルを、粉末状食品及び水を含む生地や、ペースト状食品といった食品と共に混練して、適宜、茹で加工又は蒸し加工等の加水調理や、焼いたり炒めたり調理することにより、本発明に係る電子レンジ調理用食品を製造することができる。乾燥状態の耐熱性ゲルを使用する場合は、茹で加工又は蒸し加工等の加水調理を行うことで、乾燥状態の耐熱性ゲルを膨潤させることができ、その後適宜調理を行うことで、本発明に係る電子レンジ調理用食品を製造することができる。また、乾燥状態の耐熱性ゲルを予め水や湯に浸漬して膨潤させてから粉末状食品及び水を含む生地や、ペースト状食品といった食品と共に混練して、適宜、茹で加工又は蒸し加工等の加水調理や、焼いたり炒めたり調理することにより、本発明に係る電子レンジ調理用食品を製造することもできる。
【0041】
混練の方法としても特に限定されるものではないが、微粒子でない耐熱性ゲルを使用する場合には、分散性を高めるために、せん断応力を与えながら食品と共に混練することが好ましい。食品中の耐熱性ゲルの分散性が悪いと、電子レンジ調理の際に加熱ムラが生じる原因となってしまう。
【0042】
耐熱性ゲルを粒状食品群中に分散させる場合は、粒状食品と耐熱性ゲルの微粒子とを混合する方法や、ゲル状の耐熱性ゲル中に粒状食品を添加し、混合する方法などを採用することができる。このとき、耐熱性ゲル又は耐熱性ゲルの微粒子が粒状食品の周囲に付着させることが好ましい。付着が不十分であると、粒状食品群中の耐熱性ゲルの分布に偏りが生じ、加熱ムラが生じる原因となる。
【0043】
得られた電子レンジ調理用食品は、冷蔵、冷凍保存することができ、喫食する際に電子レンジで加熱することで可食となる。本発明に係る電子レンジ調理用食品は、耐熱性ゲルが分散しているため電子レンジで加熱調理を行う際に加熱ムラが生じず、ゲルの溶解も生じない。従って、加熱時間を短縮することができ、食感を損ねることもない。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。なお、以下において、%表示は特に規定がない限り重量%を示す。
【0045】
実施例1〜39及び比較例1〜6に係る電子レンジ調理用食品において用いた材料は、以下の通りである。
小麦粉強力粉:日清製粉社製
こんにゃく粉:イナゲル(登録商標)マンナンS(伊那食品工業社製)
アルギン酸ナトリウム:イナゲル(登録商標)GS−80(伊那食品工業社製)
リン酸1水素2カルシウム:太平化学産業社製
グルコノデルタラクトン(GDL):理研ビタミン社製
脱アシルジェランガム:ケルコゲル(登録商標)(CPケルコ社製)
カードラン:キリン協和フーズ社製
寒天1:伊那寒天(登録商標)M−13(高融点寒天、伊那食品工業社製)
寒天2:伊那寒天(登録商標)T−1(伊那食品工業社製)
LMペクチン:イナゲル(登録商標)JP−20(伊那食品工業社製)
カラギナン:イナゲル(登録商標)E−150(伊那食品工業社製)
α−サイクロデキストリン:シクロケム社製
ショ糖脂肪酸エステル:S−1170(三菱化学フーズ社製)
乳酸カルシウム:昭和化工社製
【0046】
実験例1<ゲル化物又は乾燥ゲルを添加した麺>
表1に示した配合にて、実施例1〜8及び比較例1〜3に係るうどんの麺を作製した。詳細には、水に食塩を溶解後、小麦粉強力粉を加え混練した後、下記方法により作成したゲル化物1〜7、乾燥ゲル1又は乾燥ゲル2のいずれかを加えさらに混練後、製麺機(さぬき(登録商標)M305型P、さぬき麺機社製)にて生うどんを作製し(5mm×5mm)、沸騰した湯で10分茹でた後に水冷した。この麺180gを上部直径19cm、底部直径9.2cm、高さ7cmの発泡スチロール製の麺用の容器に入れ検体とした。
【0047】
(ゲル化物1)
こんにゃく粉15.0gを水500gに添加して分散し、充分に膨潤させた。これに予め水酸化カルシウム0.30gを水20gに分散させたものを加え充分に撹拌混合した。当該混合物を耐熱性の袋に充填し、90℃の湯の中で2時間浸漬して加熱処理した。その後冷却し、袋から取り出し水に浸漬して余分の水酸化カルシウムを除去した。このゲルを1mmに裁断してゲル化物1とした。ゲル化物1の融点は97℃以上であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0048】
(ゲル化物2)
アルギン酸ナトリウム5g、リン酸1水素2カルシウム1.35g及びGDL2.15gを水500gに加え均一になるまで撹拌後、24時間放置しゲル化させた。このゲルを2〜3mmに裁断してゲル化物2とした。ゲル化物2の融点は97℃以上であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0049】
(ゲル化物3)
脱アシルジェランガム2gを水500gに加え、沸騰溶解させた。この溶液に、予め水20gに乳酸カルシウム0.5gを溶解した液を加えよく撹拌後、冷却してゲル化させた。このゲルを1mmに裁断してゲル化物3とした。ゲル化物3の融点は95℃であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0050】
(ゲル化物4)
水500gにカードラン20gを分散させた。これを60℃まで加熱し充分に溶解させ、ローセットゲルを得た後、容器に充填した。この容器を100℃で1時間蒸気加熱して、ハイセットゲルを作製した。このゲルを高速撹拌機(バーミックス)を使用して0.2mmに裁断してゲル化物4とした。ゲル化物4の融点は95℃以上であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0051】
(ゲル化物5)
寒天1を5g秤量し、水500gに分散し耐熱性の袋に充填後、レトルト殺菌機にて121℃、15分間加熱溶解後、冷却してゲル化させた。当該ゲルをバーミックスを使用して0.5mmに裁断し、ゲル化物5とした。ゲル化物5の融点は97℃以上であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0052】
(ゲル化物6)
LMペクチン15gを水500gに分散し90℃にて加熱溶解した。この溶液を予め用意した1%乳酸カルシウム溶液500gに滴下して直径約3mmのゲル状物を得た。更に1時間浸漬後このゲルを取り出してバーミックスを使用して0.5mmに裁断してゲル化物6とした。ゲル化物6の融点は97℃以上であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0053】
(乾燥ゲル1)
オートクレーブを使用し、121℃で15分間、寒天1を3g及びアルギン酸ナトリウム7gを水500gに溶解させた後、容器に充填して冷却し、ゲル化させた。当該ゲルを1mmに裁断してゲル化物とした後、水500gに塩化カルシウム1.0gを溶解した溶液に1時間浸漬後、ゲル化物を取り出した。さらにこのゲル化物を水500gに塩化ナトリウム2.5gを溶解した溶液に1時間浸漬した。浸漬後ゲルを取り出し溶液を分離後70℃にて12時間乾燥して乾燥ゲル1を得た。1gの乾燥ゲル1を20℃、95℃の水に1時間浸漬し、吸水後の重量を吸水倍率としたところ、20℃で20倍、95℃で35倍であり、且つ粒子が溶解することなく粒子を保持していた。
【0054】
(乾燥ゲル2)
オートクレーブを使用し、110℃で15分間、寒天2を15g秤量し、水500gに溶解させた後、容器に充填して冷却し、ゲル化させた。このゲルを1mmに裁断してゲル化物とした後、70℃にて12時間乾燥して乾燥ゲル2を得た。この乾燥ゲル2の吸水倍率を乾燥ゲル1と同様の方法で調べたところ、20℃で6倍、95℃で15倍であり、且つ粒子が溶解することなく粒子を保持していた。
【0055】
(ゲル化物7)
カラギナン10gを水500gに分散し加熱沸騰溶解後、冷却してゲル化させた。このゲルを1mmに裁断してゲル化物7とした。このゲル化物7の融点は72℃であり、耐熱性はなかった。
【0056】
(評価方法)
1.電子レンジ加熱時の温度測定
上記実験例1に従い作製した麺を入れた麺用の容器を600Wの電子レンジで加熱し、20秒ごとにサーミスタ温度計(SN3000、熱研社製)のセンサーを麺中心部に入れ温度を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
2.食感評価
温度が80℃になった時の麺を10名のパネラーに喫食させ、食感が通常の麺と比べて同じ、あるいはそれ以上と答えた人数により食感を評価した。結果を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
耐熱性のあるゲル化物1〜6、又は耐熱性の乾燥ゲル1、2を使用した実施例1〜8の麺は、電子レンジによる加熱において温度上昇が比較例に比べて早く、且つ食感も良好であった。また、耐熱性のないゲル化物7を使用した比較例3はゲルが溶解し、糊状感のある食感になった。
【0061】
実験例2<含油ゲル>
表3に示した配合にて、実施例9〜11及び比較例4〜6に係るうどんを作製した。詳細には、水に食塩を溶解後、小麦粉を加え混練した。これに下記方法により作成したゲル化物8〜11を加えてさらに混練後、実験例1と同様にして製麺機にて生うどんを作製し、沸騰した湯で10分茹でた後、水冷した。この麺を実験例1と同様に電子レンジで加熱して麺の温度を測定した。また、実験例1と同様にして食感を評価し、結果を表4に示した。
【0062】
(ゲル化物8)
こんにゃく粉5.0gを水250gに添加し分散し充分に膨潤させた。これに乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(S−1170)5gを加え混合した後、大豆油を250g添加してさらに混合し乳化させた。次に水酸化カルシウム0.30gを水20gに分散させたものを加え充分に撹拌混合した。これを耐熱性の袋に充填し、90℃の湯の中で2時間浸漬して加熱処理した。その後冷却し、袋から取り出し水に浸漬して余分の水酸化カルシウムを除去した。このゲルを0.8mmに裁断してゲル化物8とした。ゲル化物8の融点は97℃以上であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0063】
(ゲル化物9)
アルギン酸ナトリウム3g、リン酸1水素2カルシウム1.35g、
GDL2.15g、α−サイクロデキストリン5gを水250gに加え均一になるまで撹拌後、キャノーラ油を250g加え、高速撹拌機(バーミックス)を使用して乳化させた。24時間放置しゲル化後、ゲルを0.8mmに裁断してゲル化物9とした。ゲル化物9の融点は97℃以上であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0064】
(ゲル化物10)
脱アシルジェランガム2g、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステルS−1170)5gを水250gに加え、沸騰溶解させた。この溶液に、予め用意しておいた、水20gに乳酸カルシウム0.5gを溶解した液を加えよく撹拌後、ひまわり油を250g加え、高速撹拌機(バーミックス)を使用して乳化させた。室温まで放置しゲル化後、ゲルを0.8mmに裁断してゲル化物10とした。ゲル化物10の融点は96℃であり、耐熱性を有するゲルであった。
【0065】
(ゲル化物11)
カラギナン15g、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステルS−1170)5gを水250gに加え、沸騰溶解させた。ひまわり油を250g加え、高速撹拌機(バーミックス)を使用して乳化させた。室温まで放置しゲル化後、ゲルを0.8mmに裁断してゲル化物11とした。このゲル化物11の融点は70℃であり、耐熱性はなかった。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
耐熱性のあるゲル化物8〜10を使用した実施例9〜11の麺は、電子レンジによる加熱において温度上昇が比較例に比べて早く、且つ食感も良好であった。また、耐熱性のないゲル化物11を使用した比較例6はゲルが溶解して油が溶け出し、油を感じる美味しくない食感になった。
【0069】
実験例3<耐熱性ゲルの添加量>
表5〜7に示した配合にて実施例12〜30に係るうどんを作製した。詳細には、水に食塩を溶解後、小麦粉を加えて混練した。これにゲル化物1、8又は乾燥ゲル1のいずれかを加えてさらに混練後、実験例1と同様にして生うどんを作製し、沸騰した湯で10分茹でた後、水冷した。この麺を実験例1同様に電子レンジで加熱して麺の温度を測定した。また、実験例1と同様にして食感を評価し、結果を表8に示した。
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
耐熱性のあるゲル化物1、8又は乾燥ゲル1を使用した実施例12〜30の麺は、電子レンジによる加熱において温度上昇が比較例に比べて早く、且つ食感も良好であった。なお、実施例17及び23においては、パネラー2名が、若干麺のこしが少ないと評価した。また、実施例29においては、パネラー3名が、若干麺のこしが少なく油感を感じると評価した。
【0075】
実験例4<耐熱性ゲルの含水率>
表9に示した配合量(重量%)にて、ゲル化剤として脱アシルジェランガムを使用し、含水量の異なる耐熱性ゲルをそれぞれ作製した。詳細には、脱アシルジェランガム及びショ糖を水に分散し沸騰溶解後、予め水20gに乳酸カルシウムを溶解した液を加えよく撹拌後、冷却してゲル化させた。このゲルを1mmに裁断してゲル化物11〜15とした。このゲル化物11〜15を用い、実施例1の配合割合と同様にして実施例31〜35に係るうどんの麺を作製し、実験例1と同様に評価を行った。結果を表10に示す。
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
耐熱性のあるゲル化物11〜15を使用した実施例31〜35の麺は、電子レンジによる加熱において温度上昇が比較例に比べて早く、且つ食感も良好であった。
【0079】
実験例5<含油耐熱性ゲルの含油率>
表11に示した配合量(重量%)にて、ゲル化剤として脱アシルジェランガムを使用し、含油量の異なる耐熱性ゲルを作製した。詳細には、脱アシルジェランガム2g、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステルS−1170)5gを水に加え、沸騰溶解させた。この溶液に、予め水20gに乳酸カルシウム0.5gを溶解した液を加えよく撹拌後、ひまわり油を加え、高速撹拌機(バーミックス)を使用して乳化させた。室温まで放置しゲル化後、ゲルを0.8mmに裁断してゲル化物16〜19とした。このゲル化物16〜19を用い、実施例1の配合割合と同様にして実施例36〜39に係るうどんの麺を作製し、実験例1と同様に評価を行った。結果を表12に示す。
【0080】
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
耐熱性のあるゲル化物16〜19を使用した実施例36〜39の麺は、電子レンジによる加熱において温度上昇が比較例に比べて早く、且つ食感も良好であった。