【課題】 内表面に微粒子ピーニング処理により形成された微小凹部を有する金属製容器を用いて被処理物を油で揚げる処理などを行なう際の泡の生成度合いの制御方法、延いては金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御しつつ被処理物を処理して製品を生産する金属製容器を用いた生産方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る金属製容器内泡生成制御方法は、金属製容器の内表面に微粒子ピーニング処理により微小凹部を複数形成すると共に、該微小凹部の入口径、深さ、存在密度等を調整することにより、金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御する。また、本発明に係る金属容器を用いた生産方法は、前記金属製容器の内表面に微粒子ピーニング処理により微小凹部を複数形成すると共に、該微小凹部の入口径、深さ、存在密度等を調整することにより、金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御して、製品の仕上がり具合を調整する。
前記微小凹部は、球面状に陥没した凹部であり、入口径がφ5〜φ100μm、深さが0.5〜3μmの範囲で調整されることを特徴とする請求項2に記載の金属製容器を用いた生産方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属製ざる状容器(或いは金属製蓋状部材)の内面等にテフロン(登録商標)コーティングやセラミックスコーティング等を施す場合には、金属製ざる状容器の母材である金属材料の表面に、母材とは異なる物質を成膜することになるため、なんらかの衝撃や劣化等によって、コーティング層が母材から剥離して被処理物に混入してしまうことが懸念され、このような剥離等の心配のない技術が求められているといった実情がある。
【0007】
このようなことから、本願出願人等は、特願2016−102194号において、金属プレートからなり、底面或いはその付近に小さな開口を複数有する金属製ざる状容器の少なくとも被処理物と接触する領域に、微粒子ピーニング処理により微小凹部を複数形成することを提案した。
そして、このような微粒子ピーニング処理により形成された微小凹部を有する金属製ざる状容器を用いてフライ処理を行なえば、剥離等による異物の混入のおそれがなく、被処理物(金属製ざる状容器等により処理される物体)が付着し難いことが確認できた。
【0008】
ここで、「微粒子ピーニング処理」は、「精密ショットピーニング処理」、「FPB(Fine Particle Bombarding)処理」などとも称される表面処理で、金属製品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。
【0009】
この一方で、上述したような微粒子ピーニング処理により形成された微小凹部を有する金属製ざる状容器の仕様を変更等して実際にフライ処理を行なっていると、本発明者等は、微小凹部の仕様(入口径、深さ、単位面積当たりの存在個数等)の違いによって泡の生成(発生)の仕方に相違があり、かかる相違を利用することで泡の生成度合いの制御延いては被処理物のフライ処理の仕上がり具合(揚がり具合、仕上がりサイズ、仕上がりまでの所要時間、被処理物の金属製ざる状容器への付着度合いなど)を制御(調整)することができるという新たな知見を得るに至った。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、内表面に微粒子ピーニング処理により形成された微小凹部を有する金属製容器を用いて被処理物を油で揚げる処理(フライ処理)などを行なう際の泡の生成度合いの制御方法、延いては、金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御しつつ被処理物を処理して製品を生産する金属製容器を用いた生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明に係る金属製容器内泡生成制御方法は、
金属製容器の内表面に、微粒子ピーニング処理により微小凹部を複数形成すると共に、
該微小凹部の入口径、深さ、存在密度の少なくとも一つを調整することにより、金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る金属容器を用いた生産方法は、
金属製容器内に収容された被処理物を液中に浸けることで所定の処理を施して製品を生産する金属容器を用いた生産方法であって、
前記金属製容器の内表面に、微粒子ピーニング処理により微小凹部を複数形成すると共に、
該微小凹部の入口径、深さ、存在密度の少なくとも一つを調整することにより、金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御して、製品の仕上がり具合を調整することを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記微小凹部は、球面状に陥没した凹部であり、入口径がφ5〜φ100μm、深さが0.5〜3μmの範囲で調整されることを特徴とすることができる。
【0014】
本発明において、前記所定の処理が、フライ処理であることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、前記金属製容器が、金属製ざる状容器であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内表面に微粒子ピーニング処理により形成された微小凹部を有する金属製容器を用いて被処理物を油で揚げる処理(フライ処理)などを行なう際の泡の生成度合いの制御方法、延いては、金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御しつつ被処理物を処理して製品を生産する金属製容器を用いた生産方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0019】
本発明者等は、微粒子ピーニング処理により形成した微小凹部を有する金属製ざる状容器の凹部の仕様(サイズ(入口径、深さ)、凹部の形成密度(単位面積当たりに存在する凹部の数:以下、単に密度とも称する)など)を変更して実際にフライ処理を行なうと、微小凹部の仕様(入口径、深さ、密度等)に応じて泡の生成(発生)の仕方に相違(変化)があることを確認した。
【0020】
すなわち、金属製ざる状容器の内壁(被処理物が収容される側の壁面:内表面)に形成した微小凹部のサイズを大きくすると、金属製ざる状容器の内壁から生成(発生)する泡の量が増大し、この生成(発生)した多量の泡により被処理物が外周から押圧されて固まってしまうと共に、被処理物の中央部分に良好に熱が入らないなどといった現象が確認された。
【0021】
この一方、サイズを適切なものとすると、金属製ざる状容器の内壁から生成(発生)する泡の量が減り、壁面への被処理物が付着等することなく、被処理物の中央部分まで良好に熱が入るようになるといった現象が確認された。
【0022】
なお、微小凹部のサイズを小さくし過ぎたり、微小凹凸を無くしてしまうと、金属製ざる状容器の内壁から生成(発生)する泡の量が減り、壁面への被処理物が付着等してしまうといった問題が発生するおそれがある。
【0023】
従って、微小凹部のサイズや密度の相違を利用することにより、泡の生成(発生)度合いを制御することができること、延いては被処理物のフライ処理の仕上がり具合フライ処理の仕上がり具合(揚がり具合、仕上がりサイズ、仕上がりまでの所要時間、被処理物の金属製ざる状容器への付着度合いなど)を制御(調整)することができるという新たな知見を得るに至った。
後述する計算式から分かるように、液中や壁面に確率的に発生する微細泡は、小さい場合は液の圧力により消失するが、ある半径を超えると成長する。微粒子ピーニング処理による凹部(凹凸)形成により、成長可能な半径を小さく(かつ制御)することができると考えられる。
【0024】
ここで、かかる知見について泡の生成(発生)及び成長のメカニズムを含めて考察する。
泡(気泡等)の生成(発生)のメカニズムとしては、
図1に示すように、泡は液中(液体中)や壁の欠陥(不純物や傷など)を契機にして発生する。
【0025】
そして、発生した泡の安定性について説明すると、
大きくなろうとする力は、体積に比例する(体積=(3/4)aπr
3)。
小さくしようとする力は、表面エネルギーに比例する(表面エネルギー=4bπr
2)。
rは泡の半径であり、a,bは比例定数である。
【0026】
上記のように、体積は半径の3乗に比例し、面積は半径の2乗に比例するから、大きい泡は成長するが、小さい泡はなくなる(消失する)といった傾向がある。
(3/4)aπr
3 −4bπr
2
従って、泡の生成は、U(r)=((3/4)aπr
3 −4bπr
2)で示すことができる。
【0027】
次に、
図2に示すように、壁に発生した泡と液中に発生した泡のでき易さについて説明する。
簡単のために、泡を半球状とすると考えると、泡の発生式は、
図2に示したものとなる。すなわち、壁に発生した泡については、
U(r)=((3/4)aπr
3 −4bπr
2)×(1/2)・・・式(1)
にて表される。また、縦軸をU(r)とし、横軸をrとして、式(1)をグラフ化したものを
図3に示す。
液中に発生した泡については、
U(r)=((3/4)aπr
3 −4bπr
2)・・・式(2)
にて表される。また、縦軸をU(r)とし、横軸をrとして、式(1)をグラフ化したものを
図4に示す。
上式から、臨界半径(2b/a)は変らないが、乗り越えるエネルギー(臨界エネルギー)については、液中の(U
0)に対して、壁上では(U
0/2)と液中の半分となり、乗り越え易い。
従って、泡は壁上(壁の表面)で多く発生するものと考えられる。
【0028】
液中で発生した泡は、上記の式(2)に従うので、
図4中のグラフから解るように、殆どの泡は、発生後つぶれてしまうが、たまたま半径rが(2b/a)より大きくなったものが成長し、目に見える泡となって発生する。
【0029】
次に、壁に凹凸がある場合(微小凹凸を形成した場合)について考察する(
図5参照)。
壁に凹凸がある場合、
図5に示した模式図から解るように、凹部で発生した泡は、平坦な部分で発生した泡に対して、液に接している表面積が同一であっても、壁の窪み分だけ体積が大きくなるから、泡は成長し易くなる(上式(1)等参照)。
すなわち、壁に凹凸がある場合には、泡は凹部で発生し易く、凹部のサイズが大きいほど成長し易いものと考えられます。
【0030】
以上より、金属製ざる状容器の表面(内表面)に微粒子ピーニング処理により微小凹部を形成した場合には、微粒子ピーニング処理(微小凹部形成)による即席麺(被加工物、被処理物)の剥離性(金属製ざる状容器の内表面への被処理物の付着度合い)は、
a)表面の凹凸による接触面積の減少
b)壁からの泡の発生による離型性の向上
という2つの要因があるものと考えられる。
【0031】
図6に示すように、金属製ざる状容器内に収容した即席麺を油で揚げる前は、麺が水分を含んでいるために油中に投下した時に泡が発生し広がっていく。一方で、金属製ざる状容器の内壁からは微粒子ピーニング処理による微小凹部(微小凹凸)により泡が発生するため、金属製ざる状容器内に収容されている麺を周囲から中心に向かって押圧するため麺を固める力が働くことになる。
【0032】
従って、微粒子ピーニング処理による凹凸(微小凹部)のサイズ、深さ、密度を制御(調整)することで、金属製ざる状容器の内壁への即席麺の付着度合い、更には金属製ざる状容器の内壁からの泡の生成(発生)度合い延いては被処理物(即席麺)の揚げ具合を制御(調整)することができるという知見を得るに到った。
【0033】
ここで、本実施の形態に係る金属製ざる状容器10について説明する。なお、金属製ざる状容器10は、本発明に係る金属製容器の一例に相当する。
かかる金属製ざる状容器10は、
図7に示すように、複数の小さな穴(パンチングメタル状の開口)が底面或いはその付近に開口されたカップ状容器であり、これらを複数連設して構成したものを、生産能率向上のために生産ライン等では利用している。
【0034】
金属製ざる状容器10は、
図7に示したように、例えば、金属プレートをカップ状に成形したもので、底面(或いはその付近)にパンチ等により複数の穴が開口されたものとすることができるが、これに限定されるものではなく、収容した麺を収容部に残し食用油を排出可能な構成であれば金属製ざる状容器であれば適用可能である。
【0035】
即席麺などの生産ラインにて麺(被加工物、被処理物)を食用油で揚げる処理を行う際に、当該処理前の麺を金属製ざる状容器10に入れ、その状態で、金属製ざる状容器10を麺と共に所定温度の食用油に浸けて麺を揚げるといった処理(フライ処理)に、当該金属製ざる状容器10は例えば利用される。
【0036】
そして、本実施の形態に係る金属製ざる状容器10は、麺が接触する領域(内周面の少なくとも一部)に、微粒子ピーニング処理を行い微小ディンプル(球面状に陥没した多数の微小凹部、微小凹凸)が形成されている(
図8参照)。
【0037】
ここで、「微粒子ピーニング処理」は、「精密ショットピーニング処理」、「FPB(Fine Particle Bombarding)処理」、「WPC処理」などと称される表面処理で、金属製品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。
【0038】
本実施の形態では、金属製ざる状容器10の被加工物(被処理物)が接触する収容部10の表面11(
図7参照)に、微粒子ピーニング処理により、微小ディンプル(微小凹部)を多数形成した。
【0039】
なお、
図6に示す微小ディンプル(微小凹部)100のサイズとしては、入口径φ5〜φ100μm程度(好ましくは、φ10〜30μm程度)、深さで0.5〜3μm(好ましくは、1〜2μm程度)の範囲とすることができる。
【0040】
また、微粒子ピーニング処理としては、例えば、特許第5341971号に記載されている金属製品の熱処理方法(微粒子ピーニング処理)を適用することができる。
【0041】
実際に、金属製ざる状容器10を用いて、即席麺を食用油で揚げる処理(フライ処理)を行って製品(フライ処理後の即席麺)を生産してみたところ、次のような結果を得た。
【0042】
実験に用いた金属製ざる状容器10は、その材質をSUS304とし、内表面(内周面、内壁面)に微粒子ピーニング処理により形成した微小凹部の入口径がφ23μm程度、窪み深さが0.95μm程度のもの(径φ45μm程度のショット微粒子を、ショット圧:0.2MPaにてショットしたもの)(
図9参照)と、比較例として、微小凹部の入口径がφ29μm程度、窪み深さが1.78μm程度のもの(径φ45μm程度のショット微粒子を、ショット圧:0.4MPaにてショットしたもの)(
図10参照)を準備して、泡の発生具合、揚げ具合(即席麺の揚がり具合)、即席麺の金属製ざる状容器10への付着具合などを確認した。
【0043】
入口径がφ23μm程度、深さが0.95μm程度の微小凹部を内壁面に形成した金属製ざる状容器10(径φ45μm程度のショット微粒子を、ショット圧:0.2MPaにてショットしたもの)(
図9参照)を用いて即席麺を油で揚げた場合には、泡の発生量が適切で、発生した泡が即席麺を外側から適切に押し(
図6の水平方向矢印参照)、程よく即席麺を圧縮して適切なサイズ(体積)に仕上げることができると共に、即席麺全体に亘って加熱状態が良く、金属製ざる状容器10の内表面への即席麺の付着も無いことが確認できた。
【0044】
これに対して、入口径がφ29μm、深さが1.78μm程度の微小凹部を内表面に形成した金属製ざる状容器10(径φ45μm程度のショット微粒子を、ショット圧:0.4MPaにてショットしたもの)(
図10参照)を用いて即席麺を油で揚げた場合には、金属製ざる状容器への即席麺の付着も無いが、泡の発生量が多く、発生した泡が即席麺を外側から押し付ける力(
図6の水平方向矢印参照)が大きくなり、即席麺を外側から比較的強く圧縮してサイズ(体積)を縮小してしまう可能性があると共に、泡が多く即席麺の加熱状態を良好に保つことに懸念が生じる結果となった。
【0045】
このように、実際に、微小凹部のサイズ(入口径、深さ)を変更することで、泡の発生度合いに変化が生じ、金属製ざる状容器の内壁への付着度合い、更には金属製ざる状容器の内壁からの泡の発生延いては被処理物(即席麺)の揚げ具合を制御(調整)することができることを確認することができた。
【0046】
なお、微粒子ピーニング処理を行なわず金属製ざる状容器10の内表面(即席麺を収容する部分)に微小凹部を設けない場合(微粒子ピーニング未処理の場合)には、即席麺が付着することがあり、それを改善するために微粒子ピーニング処理を施して実験したものであり、微粒子ピーニング処理により微小凹部を形成することで付着の問題は解決されるに到っている。
【0047】
また、簡易的に、炭酸水を用いた実験においても確認を行なった。
かかる簡易的な実験では、炭酸水を洩らさずに溜めておくことができる金属製容器を用いることとし、内表面に微小凹部を形成しない未処理の容器と、微粒子ピーニング処理により内表面に微小凹部を形成した金属製容器と、を用いて実験を行なった。
【0048】
金属製容器の材質をSUS304とし、内表面に微小凹部を形成しない未処理のものと、内表面に微粒子ピーニング処理により形成した微小凹部の入口径がφ29μm程度、深さが1.78μm程度のもの(径φ45μm程度のショット微粒子を、ショット圧:0.4MPaにてショットしたもの)を準備して、泡の発生具合を確認した。
【0049】
炭酸水を投入した直後において、泡の発生具合を確認した様子を、
図11に示す。
炭酸水を投入した直後には、炭酸水中に含まれている炭酸が内表面から発生するが、微粒子ピーニング処理を施した容器(微小凹部が内表面に形成された容器)(
図11において右側の容器)の場合には、きめ細かい泡が多量に発生するが、未処理の容器(内表面に凹凸の無い平坦な容器)(
図11において左側の容器)の場合には、泡のサイズが比較的大きく、その数が比較的少ないことが確認された。
かかる結果から、泡の生成に影響を及ぼすサイズの微小凹部を内表面に形成することで、泡の生成(発生)を促進することが確認できた。
【0050】
次に、炭酸水を投入した後、5〜10秒以内の状態を、
図12に示す。
未処理の容器(内表面に凹凸の無い平坦な容器)(
図12において左側の容器)の場合には、泡の生成がまだ継続しているが、微粒子ピーニング処理を施した容器(微小凹部が内表面に形成された容器)(
図12において右側の容器)の場合には、すでに泡の生成が終了した状態(脱気した状態;炭酸水中に炭酸が無くなった状態)となることが確認された。
【0051】
すなわち、微粒子ピーニング処理を施した容器(微小凹部が内表面に形成された容器)の方が、未処理の容器(内表面に凹凸の無い平坦な容器)に比べて、細かい泡が単位時間当たりに多量に発生し、炭酸水中から早期に炭酸が消失(脱気)することが確認できた。
【0052】
このように、金属製容器の内表面に泡の生成及び成長に影響を与える程度のサイズの微小凹部を仕様を変えて形成することで、内表面(内壁)からの泡の発生度合いに変化が生じることを確認でき、かかる泡の発生度合いを変化させる(変更する)ことにより、金属製容器の内壁への付着度合い、被処理物(即席麺)の揚げ具合を制御(調整)することができるものと考えられる。
【0053】
また、泡の生成及び成長には、単位面積当たりに存在合する微小凹部の数(存在密度)が影響し、当該存在密度を調整することで、金属製容器の内壁への付着度合い、被処理物(即席麺)の揚げ具合等を制御(調整)することができるものと考えられる。
【0054】
なお、微小ディンプル(微小凹部)100のサイズとしては、入口径φ5〜φ100μm程度(好ましくは、φ10〜30μm程度)、深さで0.5〜3μm(好ましくは、1〜2μm程度)の範囲で調整することができ、これにより、例えば、金属製容器の内壁への付着を抑制しながら、泡の発生度合いを変化させる(変更する)ことができ、延いては被処理物(即席麺)の揚げ具合を制御(調整)することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、フライ処理等における即席麺等の被処理物を生産する生産方法に関して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属容器内の液中に泡を発生させるためであれば、それにより得られる様々な効果(視覚的効果なども含む)にかかわらず、本発明は適用可能である。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、内表面に微粒子ピーニング処理により形成された微小凹部を有する金属製容器を用いて被処理物を油で揚げる処理(フライ処理)などを行なう際の泡の生成度合いの制御方法、延いては、金属製容器内の液中に生じる泡の生成度合いを制御しつつ被処理物を処理して製品を生産する金属製容器を用いた生産方法を提供することができる。
【0057】
なお、上記では、金属製容器の材質としてSUS304を例示したが、これに限定されるものではなく、鉄、アルミ、チタン等の金属製(合金製)とすることができ、鉄の場合には、スチール(SS400など)のほか、ステンレス製とすることができ、特に非磁性のオーステナイト系のステンレス(SUS303、316など)とすることができる。
【0058】
また、被処理物は、即席麺の麺(ラーメン、そば、うどんなど)に限定されるものではなく、即席麺以外の麺、掻揚げ(てんぷら)などフライ処理(油で揚げる処理)やお湯で茹でるような処理などが施される物であれば適用可能である。
【0059】
つまり、金属製ざる状容器内に収容した被処理物(うどん、そば、ラーメン、パスタ、掻揚げなど)を比較的大きな釜の中に投入してお湯や油などの液中に浸けて茹でたり揚げたりするような場合、金属製容器内に被処理物とお湯や油などの液体を入れて茹でたり揚げたりするような場合なども本発明の範囲に含まれるものである。
【0060】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。