【解決手段】溶接システムAは、溶接電源装置1と遠隔操作装置3とを備えている。溶接電源装置1は、記憶部14と、遠隔操作装置3と無線通信を行う通信部11と、記憶部14および通信部11を制御する制御部15とを備えている。遠隔操作装置3は、固有の識別情報を記憶する記憶部34と、溶接電源装置1と無線通信を行う通信部31と、操作者による操作を受け付ける操作部33と、操作部33からの操作入力に基づいて、記憶部34および通信部31を制御する制御部35とを備えている。制御部35は、操作部33から所定の操作入力があった場合に識別情報を通信部31に送信させ、制御部15は、通信部11が当該識別情報を受信した場合に当該識別情報を記憶部14に記憶させるようにした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接作業が行われる現場には複数の溶接システムが存在しているので、溶接電源装置と遠隔操作装置との通信においては、通信相手を特定して通信を行う必要がある。通信相手を特定するためには、通信相手同士で共通の識別情報を設定するペアリング処理が行われる。しかし、ペアリング処理を手入力で行うと、誤った識別情報が設定される場合がある。誤った識別情報が設定されると、遠隔操作装置が別の溶接電源装置とペアリングされてしまう場合がある。
【0005】
また、無線通信機能を有さない溶接電源装置を無線の遠隔操作装置で操作する方法として、溶接電源装置に無線通信装置を接続して、当該無線通信装置と遠隔操作装置とで無線通信を行う方法が開発されている(特許文献2参照)。この場合、溶接電源装置に接続される無線通信装置は、無線通信を行うために最低限必要な機能だけを備えるようにしており、操作部などを備えていない。したがって、ペアリング処理を行うためには、記憶部に識別情報を直接書き込むための専用の装置を用いる必要がある。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、溶接電源装置との間で容易に、かつ、正確にペアリング処理を行うことができる遠隔操作装置および溶接システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される溶接システムは、溶接電源装置と、前記溶接電源装置を遠隔操作する遠隔操作装置とを備えている溶接システムであって、前記溶接電源装置は、第1記憶部と、前記遠隔操作装置と無線通信を行う第1通信部と、前記第1記憶部および前記第1通信部を制御する第1制御部とを備えており、前記遠隔操作装置は、固有の識別情報を記憶する第2記憶部と、前記溶接電源装置と無線通信を行う第2通信部と、操作者による操作を受け付ける操作部と、前記操作部からの操作入力に基づいて、前記第2記憶部および前記第2通信部を制御する第2制御部とを備えており、前記第2制御部は、前記操作部から所定の操作入力があった場合に、前記識別情報を前記第2通信部に送信させ、前記第1制御部は、前記第1通信部が前記識別情報を受信した場合に、当該識別情報を前記第1記憶部に記憶させることを特徴とする。この構成によると、遠隔操作装置の第2制御部は、所定の操作入力に基づいて識別情報を送信させ、溶接電源装置の第1制御部は、受信した当該識別情報を第1記憶部に記憶させる。これにより、遠隔操作装置の固有の識別情報を、溶接電源装置に設定することができる。つまり、遠隔操作装置と溶接電源装置との間でペアリング処理を行うことができる。遠隔操作装置において所定の操作を行うだけであって、他の装置に接続する必要がなく、また、識別情報を手入力する必要もないので、容易に、かつ、正確にペアリング処理を行うことができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記溶接電源装置は、表示を行う表示部をさらに備えており、前記第2制御部は、前記操作部から第2の所定の操作入力があった場合に、開始信号を前記第2通信部に送信させ、前記第1制御部は、前記第1通信部が前記開始信号を受信した場合に、前記表示部に所定の表示を行わせる。この構成によると、第2の所定の操作入力に基づいて遠隔操作装置が開始信号を送信し、当該開始信号を受信した溶接電源装置には所定の表示が行われる。これにより、操作者は、遠隔操作装置とペアリングしたい溶接電源装置が開始信号を受信したか否かを判断することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第2通信部は、前記識別情報を送信するときの出力を、前記開始信号を送信するときの出力より小さくする。この構成によると、識別情報を受信できる範囲を狭くすることが可能である。したがって、遠隔操作装置とペアリングしたい溶接電源装置以外の溶接電源装置が識別情報を受信しないようにできる。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供される溶接システムは、溶接電源装置と、前記溶接電源装置を遠隔操作する遠隔操作装置とを備えている溶接システムであって、前記溶接電源装置は、固有の識別情報を記憶する第1記憶部と、前記遠隔操作装置と無線通信を行う第1通信部と、操作者による操作を受け付ける操作部と、前記操作部からの操作入力に基づいて、前記第1記憶部および前記第1通信部を制御する第1制御部とを備えており、前記遠隔操作装置は、第2記憶部と、前記溶接電源装置と無線通信を行う第2通信部と、前記第2記憶部および前記第2通信部を制御する第2制御部とを備えており、前記第1制御部は、前記操作部からの所定の操作入力があった場合に、前記識別情報を前記第1通信部に送信させ、前記第2制御部は、前記第2通信部が前記識別情報を受信した場合に、当該識別情報を前記第2記憶部に記憶させることを特徴とする。この構成によると、溶接電源装置の第1制御部は、所定の操作入力に基づいて識別情報を送信させ、遠隔操作装置の第2制御部は、受信した当該識別情報を第2記憶部に記憶させる。これにより、溶接電源装置の固有の識別情報を、遠隔操作装置に設定することができる。つまり、遠隔操作装置と溶接電源装置との間でペアリング処理を行うことができる。溶接電源装置において所定の操作を行うだけであって、他の装置に接続する必要がなく、また、識別情報を手入力する必要もないので、容易に、かつ、正確にペアリング処理を行うことができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記操作部は、複数の操作手段を備えており、前記所定の操作入力は、前記複数の操作手段を同時に操作したことによる操作入力である。この構成によると、複数の操作手段を同時に操作することで、識別情報を送信することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記操作部は、押しボタンを備えており、前記所定の操作入力は、前記押しボタンを所定時間以上押下し続けたことによる操作入力である。この構成によると、押しボタンを所定時間以上押下し続けることで、識別情報を送信することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記操作部は、押しボタンを備えており、前記所定の操作入力は、前記押しボタンをダブルクリック操作したことによる操作入力である。この構成によると、押しボタンをダブルクリック操作することで、識別情報を送信することができる。
【0014】
本発明の第3の側面によって提供される遠隔操作装置は、第1記憶部を備えている溶接電源装置を遠隔操作する遠隔操作装置であって、固有の識別情報を記憶する第2記憶部と、前記溶接電源装置と無線通信を行う第2通信部と、操作者による操作を受け付ける操作部と、前記操作部からの操作入力に基づいて、前記第2記憶部および前記第2通信部を制御する第2制御部とを備えており、前記第2制御部は、前記操作部から所定の操作入力があった場合に、前記識別情報を、前記第1記憶部に記憶させるために、前記第2通信部に送信させることを特徴とする。この構成によると、容易に、かつ、正確にペアリング処理を行うことができる遠隔操作装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、遠隔操作装置の第2制御部は、所定の操作入力に基づいて識別情報を送信させ、溶接電源装置の第1制御部は、受信した当該識別情報を第1記憶部に記憶させる。これにより、遠隔操作装置の固有の識別情報を、溶接電源装置に設定することができる。つまり、遠隔操作装置と溶接電源装置との間でペアリング処理を行うことができる。遠隔操作装置において所定の操作を行うだけであって、他の装置に接続する必要がなく、また、識別情報を手入力する必要もないので、容易に、かつ、正確にペアリング処理を行うことができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、本発明に係る遠隔操作装置を溶接システムに用いた場合を例として、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る溶接システムAの全体構成を示す機能ブロック図である。
図2は、第1実施形態に係る遠隔操作装置の外観を示す概略平面図である。
【0020】
図1に示すように、溶接システムAは、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、遠隔操作装置3、パワーケーブル41,42、および、溶接トーチTを備えている。溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル41を介して、ワイヤ送給装置2に接続されている。ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチTに送り出して、ワイヤ電極の先端を溶接トーチTの先端から突出させる。溶接トーチTの先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル41とワイヤ電極とは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル42を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチTの先端から突出するワイヤ電極の先端と、被加工物Wとの間に高電圧を印加してアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムAは、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。なお、溶接システムAは、実際には、溶接トーチTから放出するためのシールドガスのガスタンク、溶接トーチTを冷却する冷却水を循環させる冷却水循環装置などを備えている場合もあるが、図への記載や説明を省略している。
【0021】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチTに供給するものである。
図1に示すように、溶接電源装置1は、通信部11、表示部12、操作部13、記憶部14、制御部15、および、電源部16を備えている。
【0022】
電源部16は、電力系統から入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力に変換して出力するものである。電源部16に入力される三相交流電力は、整流回路によって直流電力に変換され、インバータ回路によって交流電力に変換される。そして、トランスによって降圧または昇圧され、整流回路によって直流電力に変換されて出力される。なお、電源部16の構成は、上記したものに限定されない。
【0023】
通信部11は、遠隔操作装置3との間で無線通信を行うためのものである。通信部11は、遠隔操作装置3から受信した信号を復調して、制御部15に出力する。遠隔操作装置3から受信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号、および、インチングを指示する信号などがある。また、通信部11は、制御部15から入力される信号を変調して、遠隔操作装置3に送信する。遠隔操作装置3に送信する信号には、例えば、設定されている溶接条件を示す信号などがある。なお、遠隔操作装置3との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。
【0024】
表示部12は、溶接電源装置1の状態を表示するものであり、稼働状態や、通信状態、エラー状態などを、点灯、点滅および消灯によって表示するLED、および、設定されている溶接条件などを表示する例えば液晶表示装置などを備えている。表示部12は、制御部15によって制御されている。なお、表示部12はこれに限られない。例えば、LEDを備えずに、各状態なども液晶表示装置などに表示するようにしてもよい。
【0025】
操作部13は、作業者による操作を受け付けるものであり、操作ボタンや操作ツマミなどの操作手段を備えている。操作部13は、各操作手段の操作を操作信号として制御部15に出力する。
【0026】
記憶部14は、各種情報を記憶するものであり、例えばフラッシュメモリなどのメモリによって実現されている。記憶部14は、後述するペアリング処理において、遠隔操作装置3より受信する、遠隔操作装置3に固有の識別番号を記憶するための領域を有している。当該識別番号は、本発明の「識別情報」に相当する。
【0027】
制御部15は、溶接電源装置1の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部15は、操作部13より入力される操作信号に応じて、各種処理を行う。また、制御部15は、溶接電源装置1から出力される溶接電圧および溶接電流が設定電圧および設定電流になるように、電源部16のインバータ回路を制御する。また、制御部15は、溶接電源装置1の通信相手となる遠隔操作装置3を特定するために、ペアリング処理を行う。ペアリング処理の詳細については後述する。
【0028】
本実施形態においては、通信部11、表示部12、記憶部14および制御部15が、それぞれ、本発明の「第1通信部」、「表示部」、「第1記憶部」および「第1制御部」に相当する。
【0029】
ワイヤ送給装置2は、ワイヤ電極を溶接トーチTに送り出すものである。ワイヤ送給装置2は、図示しない送給モータを制御して、ワイヤ電極の送り出しを行う。ワイヤ送給装置2は、溶接電源装置1と通信を行っており、溶接電源装置1からの指示に応じて送給モータを制御する。溶接電源装置1は、溶接の開始および停止に合わせてワイヤ電極の送給の開始および停止を行うように、送給モータの駆動を制御する指示を行う。また、溶接条件などに応じてワイヤ電極の送給速度を調整するために、送給モータの回転速度を制御する指示を行う。なお、溶接システムAがティグ溶接などの非消耗電極式の溶接システムである場合は、ワイヤ電極を送給するためのワイヤ送給装置2は必要ない。
【0030】
遠隔操作装置3は、離れた位置から溶接電源装置1を操作するためのものである。遠隔操作装置3は、溶接電源装置1の溶接条件の変更を行ったり、溶接電源装置1に設定されている溶接条件を確認したり、インチングを指示したりする。インチングは、溶接開始準備のために溶接トーチTの先端までワイヤ電極を送り出す作業である。
【0031】
図1および
図2に示すように、遠隔操作装置3は、筐体30、通信部31、表示部32、操作部33、記憶部34、制御部35、および、電源部36を備えている。
【0032】
筐体30は、略直方体形状の例えば合成樹脂製であり、装置内部を保護するためのものである。なお、筐体30の形状および材質は限定されない。筐体30の操作面30a(
図2に示す面)には、表示部32のLED32a、32b、32c、操作部33の操作ボタン33a,33bおよび操作ツマミ33c,33dが配置されている。なお、これらの配置位置は限定されない。
【0033】
通信部31は、溶接電源装置1との間で無線通信を行うためのものである。通信部31は、溶接電源装置1から受信した信号を復調して、制御部35に出力する。溶接電源装置1から受信する信号には、例えば、設定されている溶接条件を示す信号などがある。また、通信部31は、制御部35から入力される信号を変調して、溶接電源装置1に送信する。溶接電源装置1に送信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための信号、および、インチングを指示する信号などがある。なお、溶接電源装置1との間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。また、通信部31は、通信の出力を切り替えることができる。通信部31は、後述するペアリング処理において、識別番号を送信するときは、通信距離を短く(例えば30cm以内)するために、出力を小さくする。
【0034】
表示部32は、遠隔操作装置3の状態を表示するものであり、LED32a、32b、32cを備えている。LED32aは、遠隔操作装置3の稼働状態などを表示するものであり、稼動中に点灯し、後述するペアリングモード時には点滅する。LED32bは、遠隔操作装置3の通信状態などを表示するものであり、通信中に点滅し、後述するペアリングが成功した時には点灯する。LED32cは、遠隔操作装置3のエラー状態などを表示するものであり、エラー時には点滅する。なお、各LED32a、32b、32cの表示態様は限定されない。また、各LED32a、32b、32cが、どのような状態において表示を行うかも限定されない。なお、表示部32はこれに限られず、例えば液晶表示装置などを備えて各状態を文字や絵で表示するようにしてもよい。この場合は、設定されている溶接条件なども表示するようにしてもよい。
【0035】
操作部33は、作業者による操作ボタン33a,33bおよび操作ツマミ33c,33dの操作を操作信号として制御部35に出力するものである。操作ボタン33aは、溶接条件(溶接電流設定値および溶接電圧設定値)を溶接電源装置1に送信するための押しボタンである。操作ボタン33aが押下されると、操作ツマミ33c,33dの回動位置に応じた溶接電流設定値および溶接電圧設定値が取得され、溶接電源装置1に送信される。操作ボタン33bは、インチングの指示を溶接電源装置1に送信するための押しボタンである。操作ボタン33bが押下されると、インチングを指示するインチング信号が溶接電源装置1に送信される。溶接電源装置1はインチング信号が入力されている間、ワイヤ送給装置2の送給モータを駆動させて、ワイヤ電極の送給を行う。操作ツマミ33cは、溶接電流設定値を調整するためのツマミである。操作ツマミ33dは、溶接電圧設定値を調整するためのツマミである。操作ツマミ33cおよび操作ツマミ33dは、可変抵抗器を備えている。各可変抵抗器は、各ツマミの回動角度に応じて抵抗値が変化する。この抵抗値に応じた溶接電流設定値(溶接電圧設定値)が取得される。なお、操作部33には、他の操作手段が含まれていてもよい。
【0036】
本実施形態において、操作ボタン33a,33bは、上記した以外に、ペアリング処理に関する操作にも用いられる。具体的には、操作ボタン33aが長押し操作されることで、ペアリング処理が開始される。また、操作ボタン33aが押下された状態で、操作ボタン33bが押下(同時押し)されると、識別番号の送信が行われる。ペアリング処理の詳細については後述する。
【0037】
記憶部34は、各種情報を記憶するものであり、例えばフラッシュメモリなどのメモリによって実現されている。記憶部34は、後述するペアリング処理に用いられる、遠隔操作装置3に固有の識別番号を記憶している。なお、本実施形態では、識別情報として識別番号を用いる場合について説明しているが、識別情報は番号に限定されず、その他の情報であってもよい。
【0038】
制御部35は、遠隔操作装置3の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部35は、操作部33より入力される操作信号に応じて、各種処理を行う。
【0039】
操作者は、操作ツマミ33c(33d)を回動させて、所望の設定値を指すように位置を合わせてから、操作ボタン33aを押下する。制御部35は、操作ボタン33aの押下による操作信号が入力されると、操作ツマミ33cおよび操作ツマミ33dの可変抵抗器に電流を流し、各可変抵抗器の抵抗値に応じた溶接電流設定値および溶接電圧設定値を取得する。そして、制御部35は、取得した溶接電流設定値および溶接電圧設定値に基づく信号を通信部31に出力して、溶接電源装置1に送信させる。操作ボタン33aが押下されるまでは、操作ツマミ33cおよび操作ツマミ33dの可変抵抗器に電流が流れないので、操作ツマミ33c(33d)の操作途中での溶接電流設定値(溶接電圧設定値)が取得されることはない。
【0040】
また、制御部35は、通常モードと省エネモードとの切り替えを行う。省エネモード時には、不要な電力消費を行わないように、電源部36による電力供給が制限される。また、制御部35は、遠隔操作装置3の通信相手となる溶接電源装置1を特定するために、ペアリング処理を行う。ペアリング処理の詳細については後述する。
【0041】
電源部36は、制御部35および各部に電圧を供給するものであり、例えば乾電池を備えている。なお、乾電池に代えて、蓄電池などの二次電池を備えるようにしてもよい。電源部36は、乾電池の出力電圧をDC/DCコンバータで昇圧して、各部に供給する。また、電源部36は、制御部35からの指令により、電力供給を制限しない通常モードと、電力供給を制限する省エネモードとで切り替えられる。電源部36は、省エネモードに切り替えられているときは、通信部31および表示部32への電力供給を行わない。したがって、省エネモード時には、LED32a、32b、32cは消灯し、また、遠隔操作装置3は通信を行うことができない。一方、電源部36は、省エネモードに切り替えられているときでも、制御部35および操作部33への電力供給は継続する。したがって、省エネモード時でも、操作者が操作ボタン33aの操作を行うと、操作部33は、操作信号を出力する。そして、操作信号を入力された制御部35は、電源部36を省エネモードから通常モードへ切り替える指令を出力する。電源部36内の、通信部31および表示部32への電力供給線には、例えば半導体スイッチが配置されており、制御部35は、当該半導体スイッチのオンオフを切り替えることで、通常モードと省エネモードとを切り替える。なお、制御部35は、他の方法で、通常モードと省エネモードとを切り替えるようにしてもよい。
【0042】
本実施形態においては、通信部31、操作部33、記憶部34および制御部35が、それぞれ、本発明の「第2通信部」、「操作部」、「第2記憶部」および「第2制御部」に相当する。
【0043】
次に、遠隔操作装置3の制御部35および溶接電源装置1の制御部15が行うペアリング処理について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0044】
ペアリング処理は、通信相手を特定するための処理であり、共通の識別情報をそれぞれに設定するものである。送信側が送信する信号に当該識別情報を付与して送信し、受信側が当該識別情報が付与された信号だけを処理することで、通信相手以外から送信されて受信した信号を排除することができる。
【0045】
図3(a)は、遠隔操作装置3の制御部35が行うペアリング処理を説明するためのフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS1〜S3で、ペアリング処理を開始するための操作が行われたか否かを判別するための処理が行われる。当該処理では、まず、第1の操作信号が入力されたか否かが判別される(S1)。具体的には、操作部33より操作ボタン33aの押下による操作信号(第1の操作信号)が入力されたか否かが判別される。第1の操作信号が入力されていない場合(S1:NO)は、ステップS1に戻って判別が繰り返される。第1の操作信号が入力された場合(S1:YES)、遠隔操作装置3が稼働状態であることを示す表示が行われる。本実施形態では、制御部35がLED32aを点灯させる指示を表示部32に出力することで、LED32aを点灯させる。なお、稼働状態を示す表示は、これに限られない。そして、図示しない第1のタイマによる計時が開始され、第1の操作信号の入力が停止したか否かが判別される(S2)。第1のタイマは、第1の操作信号の入力が継続されている時間を計時するものである。第1の操作信号の入力が停止していない場合(S2:NO)、第1の所定時間が経過したか否かが判別される(S3)。具体的には、第1のタイマによって計時された時間が第1の所定時間を経過したか否かが判別される。本実施形態では、第1の所定時間を例えば10秒としている。なお、第1の所定時間はこれに限られない。第1の所定時間が経過していない場合(S3:NO)は、ステップS2に戻って、ステップS2およびS3の判別が繰り返される。ステップS3において、第1の所定時間が経過した場合(S3:YES)は、第1の操作信号の入力が第1の所定時間継続したとして、ペアリング処理(S4〜S8)が行われる。つまり、ステップS1〜S3は、ペアリング処理を開始するための操作である、操作ボタン33aの第1の所定時間(例えば10秒)以上の長押し操作が行われたか否かを判別している。当該操作による操作入力、つまり、操作ボタン33aの押下による操作信号が第1の所定時間以上継続したことが、本発明の「第2の所定の操作入力」に相当する。ステップS2において、第1の操作信号の入力が停止した場合(S2:YES)は、ペアリング処理を開始するための操作(操作ボタン33aの長押し操作)ではなかったと判断されて、ペアリング処理に進まずに、ステップS1に戻って、第1の操作信号の入力を待つ。また、本実施形態では、ペアリング処理に進んだ後も、ペアリング処理が終了する前に第1の操作信号の入力が停止した場合は、ペアリング処理が中断されて、ステップS1に戻る。
【0047】
ペアリング処理を開始するための操作が行われた場合(S3:YES)、ペアリングモードになったことを示す表示が行われる。本実施形態では、制御部35がLED32aを点滅させる指示を表示部32に出力することで、LED32aを点滅させる。ペアリング処理が終了した場合や、ペアリング処理が中断された場合は、制御部35がLED32aを消灯させる指示を表示部32に出力することで、LED32aを消灯させる。なお、ペアリングモードになったことを示す表示は、これに限られない。そして、ペアリングを開始するための開始信号が送信され(S4)、図示しない第2のタイマによる計時が開始される。具体的には、制御部35は、通信部31に開始信号を出力して送信させる。第2のタイマは、開始信号が送信されてからの経過時間を計時するものである。開始信号を受信した溶接電源装置1は、ペアリングモードとなり、ペアリングモードとなったことを示す表示を行う。当該表示を見ることで、操作者は、通信相手にしようとしている溶接電源装置1がペアリングモードになったことを確認することができる。
【0048】
次に、第2の所定時間が経過する前に、識別番号を送信するための操作が行われたか否かを判別するための処理が行われる。当該処理では、まず、第2の所定時間が経過したか否かが判別される(S5)。具体的には、第2のタイマによって計時された時間が第2の所定時間を経過したか否かが判別される。本実施形態では、第2の所定時間を例えば3秒としている。なお、第2の所定時間はこれに限られない。第2の所定時間が経過していない場合(S5:NO)は、第2の操作信号が入力されたか否かが判別される(S6)。具体的には、操作部33より操作ボタン33aの押下による操作信号と操作ボタン33bの押下による操作信号の両方(第2の操作信号)が入力されているか否かが判別される。第2の操作信号が入力されていない場合(S6:NO)は、ステップS5に戻って、ステップS5およびS6の判別が繰り返される。ステップS6において、第2の操作信号が入力された場合(S6:YES)は、第2の所定時間が経過する前に第2の操作信号の入力があったとして、識別番号の設定処理(S7,S8)が行われる。つまり、ステップS5〜S6は、識別番号を送信するための操作である、操作ボタン33aおよび操作ボタン33bの同時押し操作が行われたか否かを判別している。当該操作による操作入力、つまり、操作ボタン33aの押下による操作信号と操作ボタン33bの押下による操作信号の両方の入力が、本発明の「所定の操作入力」に相当する。ステップS5において、第2の所定時間が経過した場合(S5:YES)は、識別番号を送信するための操作(操作ボタン33aおよび操作ボタン33bの同時押し操作)が行われなったと判断されて、ステップS1に戻って、第1の操作信号の入力を待つ。
【0049】
識別番号の設定処理では、まず、識別番号が送信される(S7)。具体的には、制御部35は、記憶部34に記憶されている固有の識別番号を読み出し、通信部31に当該識別番号を出力して送信させる。このとき、通信部31は、通信距離を短く(例えば30cm以内)するために、出力を小さくする。そして、返信信号が受信されたか否かが判別される(S8)。具体的には、制御部35は、通信部31から返信信号の入力が有ったか否かを判別する。後述するように、識別番号を受信した溶接電源装置1は、遠隔操作装置3に返信信号を送信する。ステップS8では、当該返信信号の受信を待っている。ステップS8において、返信信号が受信されない場合(S8:NO)は、ステップS8に戻って判別が繰り返される。返信信号が受信された場合(S8:YES)、遠隔操作装置3と溶接電源装置1とのペアリングが成功したことを示す表示が行われて、ステップS1に戻る。本実施形態では、制御部35がLED32bを点灯させる指示を表示部32に出力することで、LED32bを点灯させる。なお、ペアリング成功を示す表示は、これに限られない。ペアリングが成功した後(S8:YES)は、操作者が操作ボタン33aの押下を停止することで第1の操作信号の入力が停止され、ステップS2でYESとなって、ステップS1に戻る。そして、操作入力が無い状態が継続すると、省エネモードに切り替わって、LED32a、32b、32cは消灯する。
【0050】
図3(b)は、溶接電源装置1の制御部15が行うペアリング処理を説明するためのフローチャートである。
【0051】
まず、開始信号が受信されたか否かが判別される(S11)。具体的には、制御部15は、通信部11から開始信号の入力が有ったか否かを判別する。開始信号が受信されない場合(S11:NO)は、ステップS11に戻って判別が繰り返される。開始信号が受信された場合(S11:YES)、ペアリングモードになったことを示す表示が行われる(S12)。本実施形態では、制御部15が所定のLEDを点滅表示させる指示を表示部12に出力することで、当該LEDを点滅させる。当該LEDの点滅が、本発明の「所定の表示」に相当する。ペアリング処理が終了した場合や、ペアリング処理が中断された場合は、制御部15が当該LEDを消灯させる指示を表示部12に出力することで、当該LEDを消灯させる。なお、ペアリングモードになったことを示す表示は、これに限られない。例えば、液晶表示装置に「ペアリングモード」との表示を行うようにしてもよい。この場合、当該表示が、本発明の「所定の表示」に相当する。
【0052】
次に、識別番号が受信されたか否かが判別される(S13)。具体的には、制御部15は、通信部11から識別番号の入力が有ったか否かを判別する。識別番号が受信されない場合(S13:NO)は、ステップS13に戻って判別が繰り返される。識別番号が受信された場合(S13:YES)、識別番号を受信したことを示す表示が行われる(S14)。本実施形態では、制御部15が所定のLEDを点滅表示させる指示を表示部12に出力することで、当該LEDを点滅させる。なお、識別番号を受信したことを示す表示は、これに限られない。例えば、液晶表示装置に「識別番号受信」との表示を行うようにしてもよい。そして、受信した識別番号を記憶する(S15)。具体的には、制御部15は、通信部11から入力された識別番号を記憶部14に出力して記憶させる。これにより、遠隔操作装置3の固有の識別番号が、溶接電源装置1に設定される。そして、返信信号が送信される(S16)。具体的には、制御部15は、通信部11に返信信号を出力して送信させる。そして、ペアリング処理が終了して、ステップS11に戻る。
【0053】
なお、
図3のフローチャートに示す処理は一例であって、ペアリング処理は上述したものに限定されない。
【0054】
次に、遠隔操作装置3と溶接電源装置1のペアリング方法について説明する。
【0055】
操作者は、まず、ペアリング処理を開始するための操作を行う。具体的には、遠隔操作装置3の操作ボタン33aを長押し操作する。操作ボタン33aの押下により、遠隔操作装置3が稼働状態になり、LED32aが点灯する。そして、長押し操作が第1の所定時間(例えば10秒)を経過したときにペアリングモードになって、LED32aが点滅する。そして、遠隔操作装置3が送信した開始信号を受信した溶接電源装置1もペアリングモードになり、ペアリングモードとなったことを示す表示(所定のLEDの点滅)が行われる。
【0056】
操作者は、ペアリングモードになった溶接電源装置1のうち、ペアリングしたい溶接電源装置1に、第2の所定時間(例えば3秒)が経過する前に、遠隔操作装置3を近づけて(例えば30cm以内)、操作ボタン33aを押下したまま、操作ボタン33bを押下する。これにより、遠隔操作装置3から溶接電源装置1に識別番号が送信され、当該識別番号を受信した溶接電源装置1において、識別番号を受信したことを示す表示(所定のLEDの点滅)が行われる。そして、当該溶接電源装置1から返信信号を受信して、遠隔操作装置3のLED32bが点灯する(ペアリング成功)。ペアリングが成功した後、操作者は、操作ボタン33aの押下を停止する。その後、操作しない状態が継続することで、遠隔操作装置3は省エネモードに切り替わって、LED32a、32b、32cが消灯する。
【0057】
次に、本実施形態に係る遠隔操作装置3の作用および効果について説明する。
【0058】
本実施形態によると、遠隔操作装置3の操作ボタン33aの長押し操作によりペアリング処理が開始され、操作ボタン33aおよび操作ボタン33bの同時押し操作により、遠隔操作装置3の固有の識別番号が送信される。そして、識別番号を受信した溶接電源装置1の記憶部14に、当該識別番号が記憶される。これにより、遠隔操作装置3と溶接電源装置1とがペアリングされる。遠隔操作装置3において所定の操作を行うだけであって、他の装置に接続する必要がなく、また、識別番号を手入力する必要もないので、容易に、かつ、正確にペアリング処理を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態によると、ペアリング処理の開始により遠隔操作装置3から開始信号が送信され、当該開始信号を受信した溶接電源装置1では、ペアリングモードとなったことを示す表示が行われる。これにより、操作者は、遠隔操作装置3とペアリングしたい溶接電源装置1がペアリング可能になったか否かを判断することができる。
【0060】
本実施形態によると、遠隔操作装置3の通信部31は、識別番号を送信するときは出力を小さくして、通信距離を短く(例えば30cm以内)する。したがって、遠隔操作装置3とペアリングしたい溶接電源装置1以外の溶接電源装置1が識別番号を受信しないようにできる。
【0061】
本実施形態によると、操作ボタン33aの長押し操作をペアリング処理を開始するための操作とし、操作ボタン33aおよび操作ボタン33bの同時押し操作を識別番号を送信するための操作としている。これにより、限られた操作ボタンで、特殊な操作を行うことができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、ペアリング処理を開始するための操作を、操作ボタン33aの長押し操作とした場合について説明したが、これに限られない。ペアリング処理を開始するための操作は、他の操作であってもよく、他のボタンの長押し操作、所定のボタンの押下操作、複数のボタンの同時押し操作、ダブルクリック操作またはトリプルクリック操作などの操作であってもよい。なお、ダブルクリック操作は、所定のボタンが押下のあと開放され(クリック操作)、所定時間(例えば0.3秒)内に再度クリック操作された場合を、操作信号により判断すればよい。また、ダブルクリック操作の後、さらに所定時間内に再度クリック操作された場合を、トリプルクリック操作と判断すればよい。
【0063】
本実施形態においては、識別番号を送信するための操作を、操作ボタン33aおよび操作ボタン33bの同時押し操作とした場合について説明したが、これに限られない。識別番号を送信するための操作は、他の操作であってもよく、他のボタンの同時押し操作、3つ以上のボタンの同時押し操作、所定のボタンの押下操作、所定のボタンの長押し操作、ダブルクリック操作またはトリプルクリック操作などの操作であってもよい。また、識別番号を送信するための操作は、ペアリング処理を開始するための操作と異なる操作であってもよいし、同じ操作であってもよい。
【0064】
本実施形態においては、ペアリング処理を開始するための操作および識別番号を送信するための操作を、操作ボタンの押下操作とした場合について説明したが、これに限られない。その他の操作手段の操作としてもよい。また、遠隔操作装置3をゆする動作(シェイク)や、遠隔操作装置3を動かすことによる操作としてもよい。これらの操作は、遠隔操作装置3に設けられている加速度センサ(図示なし)が検出する加速度の変化に基づいて検出することができる。この場合、加速度センサおよび検出された加速度を入力されて所定以上変化したことを検出する制御部35も、本発明の「操作部」に相当する。
【0065】
第1実施形態においては、ペアリング処理を開始するための操作が行われた場合にペアリングの開始信号が送信され、その後、識別番号を送信するための操作が行われた場合に識別番号の設定処理が行われる場合について説明したが、これに限られない。例えば、ペアリング処理を開始するための操作が行われた場合に、すぐに、識別番号の設定処理が行われるようにしてもよい。このような実施例について、以下に説明する。
【0066】
図4は、ペアリング処理の他の実施例を説明するためのフローチャートである。
図4(a)は、遠隔操作装置3の制御部35が行うペアリング処理を示し、
図4(b)は、溶接電源装置1の制御部15が行うペアリング処理を示している。
図4に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートにおいて、ステップS4〜S6およびS11〜S12を省略したものである。
【0067】
図4に示すペアリング処理においては、遠隔操作装置3の制御部35は、ペアリング処理を開始するための操作(操作ボタン33aの第1の所定時間以上の長押し操作)が行われたか否かを判別して(S1〜S3)、当該操作が行われた場合(S3:YES)、開始信号の送信を行わずに、識別番号の設定処理(S7,S8)を行う。また、溶接電源装置1の制御部15は、開始信号の受信の判別を行わない。
【0068】
本実施例においても、遠隔操作装置3の固有の識別番号が送信され、識別番号を受信した溶接電源装置1の記憶部14に当該識別番号が記憶される。したがって、遠隔操作装置3と溶接電源装置1とをペアリングすることができる。なお、ペアリング処理を開始するための操作後すぐに識別番号が送信されるので、操作者は、ペアリングしたい溶接電源装置1の近くで、遠隔操作装置3の操作を行う必要がある。本実施例の場合、ステップS1〜S3は、識別番号を送信するための操作が行われたか否かを判別している。したがって、当該操作による操作入力、つまり、操作ボタン33aの押下による操作信号が第1の所定時間以上継続したことが、本発明の「所定の操作入力」に相当する。
【0069】
第1実施形態においては、遠隔操作装置3の操作によりペアリング処理が開始される場合について説明したが、これに限られない。溶接電源装置1の操作によりペアリング処理を開始して、溶接電源装置1が遠隔操作装置3に識別番号を送信するようにしてもよい。このような実施例について、以下に説明する。
【0070】
図5は、ペアリング処理の他の実施例を説明するためのフローチャートである。
図5(a)は、溶接電源装置1の制御部15が行うペアリング処理を示し、
図5(b)は、遠隔操作装置3の制御部35が行うペアリング処理を示している。
図5に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートに対して、溶接電源装置1の制御部15が行うペアリング処理と遠隔操作装置3の制御部35が行うペアリング処理とを入れ替えたものである。
【0071】
図5に示すペアリング処理においては、溶接電源装置1の所定の操作ボタンが長押し操作されること(S1〜S3)でペアリング処理が開始され、溶接電源装置1が開始信号を送信する(S4)。遠隔操作装置3は、開始信号を受信した場合(S11:YES)にペアリングモードになったことを表示する(S12)。そして、溶接電源装置1の別の所定の操作ボタンが押下されて同時押し操作が行われること(S5〜S6)で、溶接電源装置1が識別番号を送信する(S7)。遠隔操作装置3は、識別番号を受信した場合(S13:YES)に返信信号を送信して(S14)、識別番号を記憶する(S15)。
【0072】
本実施例においては、操作部13が本発明の「操作部」に相当する。
【0073】
本実施例によると、溶接電源装置1の記憶部14に記憶された固有の識別番号が通信部11から送信され、当該識別番号を通信部31によって受信した遠隔操作装置3が、受信した識別番号を記憶部34に記憶する。したがって、本実施例においても、遠隔操作装置3と溶接電源装置1とをペアリングすることができる。
【0074】
第1実施形態においては、溶接電源装置1が無線通信を行う通信部11を備えている場合について説明したが、これに限られない。無線通信を行わない溶接電源装置に、無線通信装置を接続して、遠隔操作装置3と無線通信を行う場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0075】
図6は、第2実施形態に係る溶接システムA’の全体構成を示す機能ブロック図である。
図6において、第1実施形態に係る溶接システムA(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。なお、
図6においては、遠隔操作装置3の内部構成の記載を省略している。
【0076】
第2実施形態に係る溶接システムA’は、溶接電源装置1’が無線通信を行わず、溶接電源装置1’に制御線6で接続された無線通信装置5を用いて、遠隔操作装置3と無線通信を行う点で、第1実施形態に係る溶接システムAと異なる。
【0077】
溶接電源装置1’は第1実施形態に係る溶接電源装置1と異なり、遠隔操作装置3と無線通信を行うための通信部11を備えていない。溶接電源装置1’は、無線通信機能を備えた無線通信装置5と、制御線6によって接続されている。無線通信装置5は、溶接電源装置1’の近くに配置される。例えば、溶接電源装置1’の筐体に取り付けられる。
【0078】
無線通信装置5は、通信部51、表示部52、記憶部54および制御部55を備えている。
【0079】
通信部51は、遠隔操作装置3との間で無線通信を行うものである。通信部51は、遠隔操作装置3から受信した信号を復調して、制御部55に出力する。また、通信部51は、制御部55から入力される信号を変調して、遠隔操作装置3に送信する。
【0080】
表示部52は、無線通信装置5の状態を表示するものであり、稼働状態や、通信状態、エラー状態などを、点灯、点滅および消灯によって表示するLEDを備えている。表示部52は、制御部55によって制御されている。なお、表示部52はこれに限られない。例えば、液晶表示装置などを備えて各状態を文字や絵で表示するようにしてもよい。
【0081】
記憶部54は、各種情報を記憶するものであり、例えばフラッシュメモリなどのメモリによって実現されている。記憶部54は、ペアリング処理において、遠隔操作装置3より受信する、遠隔操作装置3に固有の識別番号を記憶するための領域を有している。
【0082】
制御部55は、無線通信装置5の制御を行うものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御部55は、通信部51が遠隔操作装置3の通信部31より受信して入力した溶接条件を示す信号などを、制御線6を介して溶接電源装置1’の制御部15に出力する。また、制御部55は、無線通信装置5の通信相手となる遠隔操作装置3を特定するために、
図3(b)に示すペアリング処理を行う。
【0083】
本実施形態においては、溶接電源装置1’と無線通信装置5とを合わせたものが、本発明の「溶接電源装置」に相当し、通信部51、表示部52、記憶部54および制御部55が、それぞれ、本発明の「第1通信部」、「表示部」、「第1記憶部」および「第1制御部」に相当する。
【0084】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0085】
本発明に係る遠隔操作装置および溶接システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る遠隔操作装置および溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。