【解決手段】感熱記録材料は、支持体と、該支持体上に設けられた感熱発色層とを備え、感熱発色層が、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンと、下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)で表される化合物を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の感熱記録材料は、支持体と、該支持体上に設けられた、発色物質及び顕色剤成分を含む感熱発色層とを備える。
【0018】
支持体としては、特に制限はなく、例えば、中性紙や酸性紙などの紙、古紙パルプを用いた再生紙、合成紙、フィルム、不織布、織布などを用いることができる。
【0019】
発色物質としては、無色又は淡色のロイコ染料を用いることができる。ロイコ染料としては、例えば、フルオラン誘導体、キナゾリン誘導体、フタリド誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。これらのロイコ染料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記の中でもフルオラン構造を有するロイコ染料は、発色性が良好であることから特に好適に用いることができる。フルオラン構造を有するロイコ染料としては、例えば、3−イソアミルエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−(4−メチルフェニル)−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−シクロヘキシルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどを挙げることができる。
【0021】
感熱発色層における発色物質の含有量は、目的とする記録材料の特性に応じて適宜選択することができる。
【0022】
本実施形態に係る感熱発色層は、顕色剤成分として、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンと、下記一般式(I)で表される化合物(以下、化合物Iという場合もある)と、下記一般式(II)で表される化合物(以下、化合物IIという場合もある)とを含有する。
【0023】
【化4】
[式(I)中、R
1は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、R
2及びR
3は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、n及びmは、一方が1であり、他方が0である。]
【0024】
【化5】
[式中、X及びYはそれぞれ独立に直鎖若しくは分枝を有してもよい炭素数1〜12の飽和、不飽和若しくはエーテル結合を有してもよい炭化水素基、
【化6】
(Rはメチレン基又はエチレン基を表し、Tは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)を示し、R
10〜R
15はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はアルケニル基を示し、a、b、c、d、e、fは0〜4の整数を表し、gは0〜10の整数を表す。なお、a、b、c、d、e、fが2以上のときは、R
10〜R
15はそれぞれ異なっていてもよい。]
【0025】
4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのアラルキル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基などが挙げられる。アラルキル基は、メチル基やエチル基等の炭素数1〜4のアルキル基などの置換基を有していてもよい。発色性及び保存性に優れた画像部を形成できる感熱記録材料を得る観点から、ベンジル基又はメチルベンジル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0026】
上記式(I)中のR
1は、発色性に優れるとともに、保存性に優れた画像部を形成できる感熱記録材料を得る観点から、置換基を有していてもよい炭素数7〜13のアラルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数7〜10のアラルキル基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数7〜8のアラルキル基がさらに好ましい。
【0027】
アラルキル基が置換基を有している場合、当該置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基若しくはエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基を挙げることができる。
【0028】
R
1の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、メチルフェニチル基、ジメチルフェネチル基、トリメチルフェネチル基などを挙げることができる。
【0029】
式(I)中のR
2又はR
3は、発色性に優れるとともに、保存性に優れた画像部を形成できる感熱記録材料を得る観点から、置換基を有していてもよい炭素数7〜13のアラルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数7〜10のアラルキル基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数7〜8のアラルキル基がさらに好ましい。
【0030】
アラルキル基が置換基を有している場合、当該置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基若しくはエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基を挙げることができる。
【0031】
R
2又はR
3の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、メチルフェニチル基、ジメチルフェネチル基、トリメチルフェネチル基などを挙げることができる。
【0032】
化合物Iの具体例としては、3−ベンジル−4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、3−フェネチル−4−フェネチルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、及び3−メチルベンジル−4−メチルベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンなどの3−アラルキル−4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、並びに、4−ベンジルオキシ−3’−ベンジル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−フェネチルオキシ−3’−フェネチル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、及び4−メチルベンジルオキシ−3’−メチルベンジル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンなどの4−アラルキルオキシ−3’−アラルキル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて組成物に含有させることができる。
【0033】
発色性に優れるとともに、保存性に優れた画像部を形成できる感熱記録材料を得る観点から、感熱発色層は、3−アラルキル−4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は4−アラルキルオキシ−3’−アラルキル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを含有することが好ましく、3−アラルキル−4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び4−アラルキルオキシ−3’−アラルキル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの両方を含有することがより好ましい。
【0034】
本実施形態の感熱発色層は、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン100質量部に対して、化合物Iを0.2〜10質量部含有することが好ましく、0.3〜5質量部含有することがより好ましく、0.4〜2質量部含有することが更に好ましい。このような範囲とすることで、地肌カブリが少なく、保存性に優れるとともに、十分な発色性を有する感熱記録材料を得ることが容易となる。
【0035】
また、4−アラルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホンと良好な相溶性を有している化合物Iを、4−アラルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン100質量部に対して10質量部以下の割合で感熱発色層に含有させることにより、感熱発色層内において均一な固溶体を形成することができ、優れた感熱発色性を発現させることができる。
【0036】
4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び化合物Iの製造方法としては、従来公知の製造方法で製造することができ、特に限定されない。
【0037】
例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとアラルキルハライドとを反応させることにより、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び化合物Iが含まれる顕色剤組成物を得ることができ、反応溶媒の種類と量、反応温度、反応時間などの条件を選択することにより、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び化合物Iの生成量を制御することができる。アラルキルハライドの添加量を少なく、反応温度を低く、滴下速度を遅くすると、化合物Iの生成を少なくすることができ、アラルキルハライドの添加量を多く、反応温度を高く、滴下速度を速やかにすると、化合物Iの生成を多くすることができる。また、塩析、酸析、再結晶、再沈殿のような精製を行うことで、各成分の含有量を調整することもできる。なお、上記組成物に含まれる4−アラルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン及び化合物Iの含有割合は、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)によるチャートにおけるピーク面積比から算出することができる。
【0038】
さらに、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンと化合物Iとをそれぞれ別々に用意してもよい。この場合、化合物Iは、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの一方のヒドロキシル基に置換基を有していてもよいアラルキル基が結合した化合物と、アラルキルハライドとのフリーデルクラフツ反応によって製造することができる。
【0039】
上記一般式(II)中のX及びYは、X及びYが同一で、且つ飽和エーテル基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であるものが好ましく、X及びYが同一で、且つ飽和エーテル基を有する炭素数1〜6の炭化水素基であるものがより好ましく、X及びYが同一で、−CH
2CH
2OCH
2CH
2−であるものが更に好ましい。
【0040】
また、上記Rはメチレン基が好ましく、Tは水素原子が好ましい。
【0041】
上記一般式(II)中のR
10〜R
15は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。また、a〜fは、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。更に、gは0〜7の整数が好ましい。
【0042】
化合物IIは、D−90(商品名、日本曹達(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0043】
化合物IIの製造方法としては、従来公知の製造方法で製造することができ、特に限定されない。例えば、特開平10−29969号公報に記載の方法で製造することができる。
【0044】
感熱発色層における化合物IIの含有量は、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び化合物Iの合計100質量部に対し、1〜300質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましく、15〜80質量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、発色性に優れるとともに、保存性に優れた画像部を形成できる感熱記録材料を得ることができる。化合物IIの含有量が300質量部を超えると、得られる感熱記録材料の発色性が低下する傾向にあり、1質量部未満であると、保存性が低下する傾向にある。
【0045】
本実施形態の感熱発色層における4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、化合物I及び化合物IIの合計含有量は、発色物質100質量部に対して、100〜360質量部となる割合が好ましい。
【0046】
本実施形態の感熱発色層は、発色性、特に発色感度に優れる感熱記録材料を得る観点から、ビス(4−アラルキルオキシフェニル)スルホンを更に含んでいてもよい。
【0047】
また、感熱発色層は、上記以外の顕色剤を更に含有することができる。併用する顕色剤としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸フェニルエステルなどのフェニルスルホンやベンゼンスルホン酸の誘導体などを挙げることができる。他の顕色剤を併用することにより、発色物質をより高度に発色させたり、保存性を向上させたりすることができる。
【0048】
なお、感熱発色層に発色性を向上する目的で4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを含有させる場合、感熱発色層における4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量が、4−アラルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
【0049】
また、トミラック244(商品名、エーピーアイコーポレーション社製、アルキルフェノールホルマリン縮合物)や、特開2008−303225号公報に記載の下記式(III)で示されるジフェニルスルホン架橋型化合物のような高保存性顕色剤と併用することにより、得られる感熱記録材料の画像保存性を向上することもできる。
【0050】
【化7】
[式中、jは1〜10の整数を表す。]
【0051】
感熱発色層における顕色剤の総含有量は、発色物質100質量部に対して100〜500質量部であることが好ましい。
【0052】
感熱発色層は増感剤を更に含むことがより好ましい。含有させる増感剤に特に制限はないが、融点が90〜140℃の増感剤であることが好ましい。このような増感剤としては、例えば、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類、1,2−ビスフェノキシエタン、1,2−ビス(m−トリルオキシ)エタン、2−ベンジルオキシナフタレンなどのエーテル類、シュウ酸ジ(4−メチルベンジル)などのエステル類、N−フェニルスルホンアミドなどのスルホンアミド類、トルエンスルホン酸ナフチルエステルなどのスルホン酸エステル類、m−テルフェニル、p−ベンジルビフェニルなどの芳香族炭化水素化合物、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、高級直鎖グリコール類、高級ケトン類、ジフェニルスルホン、ビスフェノールS誘導体、ビスフェノールA誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、フタル酸ジエステル類などを挙げることができる。これらの増感剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
感熱発色層における増感剤の含有量は、顕色剤の合計100質量部に対して40〜400質量部であることが好ましく、特には感熱発色層に含まれる4−アラルキルオキシ−4'−ヒドロキシジフェニルスルホン100質量部に対して50〜300質量部であることが好ましい。
【0054】
感熱発色層は、画像安定剤を更に含んでいてもよい。含有させる画像安定剤に特に制限はないが、例えば、4−ベンジルオキシ−4'−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ウレタン構造を有する物質などを挙げることができる。これらの画像安定化物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
本実施形態の感熱記録材料においては、必要に応じて、感熱発色層に填料を含有させることができる。填料としては、無機充填剤や有機充填剤などを挙げることができる。さらに、必要に応じて、他の添加剤を感熱発色層に含有させることができる。他の添加剤としては、例えば、滑剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料などを挙げることができる。
【0056】
本実施形態の感熱記録材料の製造方法に特に制限はなく、例えば、発色物質、上述した顕色剤成分、増感剤、画像安定化物質及び必要に応じて添加するその他の成分を、適当な結合剤とともに、水性媒体などの媒体中に分散させて感熱発色層の塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に塗布し、乾燥することにより製造することができる。
【0057】
発色物質、顕色剤及び増感剤を含有する分散液は、発色物質を含有する分散液と、顕色剤を含有する分散液と、増感物質を含有する分散液とをそれぞれ別々に調製したのち、これらの分散液を混合することにより調製することができる。各分散液中において、発色物質、顕色剤及び増感剤は、微粒子化して分散していることが望ましい。このような分散液の調製には、サンドミル、ボールミルなどを用いることができる。
【0058】
結合剤としては、特に制限はなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ゼラチン、カゼイン、デンプン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、スチレン−マレイン酸共重合物、スチレン−ブタジエン共重合物、ポリアミド樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂などを挙げることができる。これらの結合剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本実施形態の感熱記録材料においては、必要に応じて、無機充填剤や有機充填剤などを含む下塗り層を設けることができる。さらに、必要に応じて、感熱発色層の上に、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール類などの水溶性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合物などの水溶性エマルジョン樹脂、非水溶性樹脂、又は、それらの樹脂に填料、イソシアネート類、不飽和化合物などのモノマーやオリゴマー、架橋剤を加えた材料から形成されるオーバーコート層を設けることができる。
【0060】
本実施形態の感熱記録材料は、色調の異なる発色物質が含まれる発色層を多層形成した感熱多色記録材料とすることができる。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0062】
<顕色剤組成物の製造>
得られた顕色剤組成物における各成分の含有量は、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)によるチャートにおけるピーク面積比により算出した。HPLCの測定は、以下の条件にて行った。
【0063】
[HPLCの測定条件]
カラム:Shim−pack HRC−ODS(内径4.6mm×長さ250mm、株式会社島津ジーエルシー製)
移動相:70%アセトニトリル水
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/min
検出器:SPD−10Avp(株式会社島津製作所製)
検出波長:UV(254nm)
試料濃度:反応生成物/移動相=20mg/50mL
【0064】
(合成例1)
撹拌機と冷却管を備えた反応容器に精製水2,000質量部、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン250質量部及び水酸化ナトリウム47質量部を仕込み、約65℃で塩化ベンジル139質量部を4時間かけて滴下した。滴下終了後、60〜65℃で4時間反応した。反応終了後、水酸化ナトリウムを用いてpH8.5に調整し、80℃に加温し、反応生成物を濾別した。
【0065】
次に、精製工程として、撹拌機と冷却管を備えた容器に、上記生成物418質量部、精製水92質量部及びメタノール600質量部を仕込み、加熱溶解したのち、精製水123質量部を添加し、室温まで冷却して、精製物を濾別し、乾燥する操作を行った。こうして、顕色剤組成物290質量部を得た。
【0066】
得られた顕色剤組成物は、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン100質量部に対して、3−ベンジル−4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び4−ベンジルオキシ−3’−ベンジル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを合計で0.9質量部含有していた。
【0067】
(合成例2)
合成例1と同様の方法で得られた反応生成物を用いて、精製工程として、撹拌機と冷却管を備えた容器に、上記反応生成物418質量部、精製水92質量部及びメタノール680質量部を仕込み、加熱溶解したのち、精製水146質量部を添加し、室温まで冷却して、精製物を濾別し、乾燥する操作を行った。こうして、顕色剤組成物220質量部を得た。
【0068】
得られた顕色剤組成物は、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン100質量部に対して、3−ベンジル−4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び4−ベンジルオキシ−3’−ベンジル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを合計で0.3質量部含有していた。
【0069】
(合成例3)
合成例1と同様の方法で得られた反応生成物を用いて、精製工程として、撹拌機と冷却管を備えた容器に、上記反応生成物418質量部、精製水92質量部及びメタノール680質量部を仕込み、加熱溶解したのち、室温まで冷却して、精製物を濾別し、乾燥する操作を行った。こうして、顕色剤組成物166質量部を得た。
【0070】
得られた顕色剤組成物は、3−ベンジル−4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン及び4−ベンジルオキシ−3’−ベンジル−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを含有していなかった。
【0071】
合成例1〜3で得られた顕色剤組成物の組成(質量部)を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
<感熱記録材料の作製>
(実施例1)
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン40質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液80質量部及び水40質量部を、サンドミルを用いて4時間微粉砕して分散させることにより、発色物質分散液(A液)を調製した。合成例1で得られた顕色剤組成物25.5質量部、D−90(商品名、日本曹達(株)製、一般式(II)で表される化合物(X及びYが−CH
2CH
2OCH
2CH
2−であり、a、b、c、d、e、fが0であり、gが0〜7であるものの混合物))2.5質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液120質量部及び水52質量部を、サンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させることにより、顕色剤分散液(B液)を調製した。1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン28質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液120質量部及び水52質量部を、サンドミルを用いて4時間微粉砕して分散させることにより、増感物質分散液(C液)を調製した。
【0074】
次に、B液60質量部、C液60質量部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液16質量部及びカオリン12.2質量部を、ディスパーを用いて撹拌混合し、D液を調製した。
【0075】
次に、A液11.3質量部及びD液100質量部を混合して、感熱発色層形成用塗布液を調製した。この塗布液を、坪量65g/m
2の上質紙に、乾燥塗布量が約6g/m
2となるように塗布し、風乾し、カレンダー処理を行って感熱記録材料を作製した。
【0076】
(実施例2〜4、比較例1〜6)
表2〜4に示す組成(質量部)を有する顕色剤分散液(B液)を調製したこと以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0077】
なお、表中のMAEは、BPS−MAE(商品名、日華化学株式会社製、4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン)を示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
<感熱記録材料の評価>
実施例及び比較例において作製した感熱記録材料の評価は、次の方法により行った。
【0082】
(1)地肌カブリ
発色試験前の試験紙の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど表面が白く、良好であり、数値が大きいほどカブリが多く見られ劣ることを示す。
【0083】
(2)発色性
感熱印字装置[(株)大倉電機]を用い、パルス巾3msで、0.07mJ/dotごとに印字エネルギーを高めて発色を行い、得られた画像の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど画像が薄く、数値が大きくなるほど濃い画像であることを示す。
【0084】
(3)耐可塑剤性
前記の感熱印字装置を用い、印字電圧20V、パルス巾3msにて発色した画像と白紙部を、ポリ塩化ビニルストレッチフィルム(ダイヤラップ(商標)、商品名、三菱樹脂株式会社製)に密着させ、20℃の条件下で3時間放置したのち、試験前後の画像部の色濃度及び白紙部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど画像が薄く白く、数値が大きくなるほど画像が濃く黒いことを示す。
【0085】
(4)耐水性
前記の感熱印字装置を用い、印字電圧20V、パルス巾3msにて発色した画像と白紙部を、室温(20℃)の精製水に浸して24時間放置した。この後、感熱記録材料を引き上げ、ろ紙で表面を押さえ、自然乾燥したのち、試験前後の画像部の色濃度及び白紙部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど画像が薄く白く、数値が大きくなるほど画像が濃く黒いことを示す。
【0086】
(5)耐湿熱性
前記の感熱印字装置を用い、印字電圧20V、パルス巾3msにて発色した画像と白紙部を、60℃、80%RHの条件下で24時間放置したのち、試験前後の画像部の色濃度及び白紙部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど画像が薄く白く、数値が大きくなるほど画像が濃く黒いことを示す。
【0087】
(6)耐熱性
前記の感熱印字装置を用い、印字電圧20V、パルス巾3msにて発色した画像と白紙部を、80℃で24時間放置したのち、試験前後の画像部の色濃度及び白紙部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど画像が薄く白く、数値が大きくなるほど画像が濃く黒いことを示す。
【0088】
(7)耐アルコール性
前記の感熱印字装置を用い、印字電圧20V、パルス巾3msにて発色した画像と白紙部を、室温(20℃)のエタノール25容量部と精製水75容量部との混合液に浸して3時間放置した。この後、感熱記録材料を引き上げ、ろ紙で表面を押さえ、自然乾燥したのち、試験前後の画像部の色濃度及び白紙部の色濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。数値が小さいほど画像が薄く白く、数値が大きくなるほど画像が濃く黒いことを示す。
【0089】
実施例1〜4、比較例1〜6における評価結果を表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
実施例1〜4の感熱記録材料は、地肌カブリが少なく、十分な発色性を有するとともに、保存性に優れていた。
【0092】
ところで、性能の高いものと性能の低いものとを併用すると、その評価が性能の低いものに影響されて低下し、両者の間となる場合がある。このような傾向は、発色性に関して比較例4、比較例5及び比較例6において示されている。比較例5及び6に示されるように、MAEは発色性に優れ、化合物IIは発色性に劣る。MAEと化合物IIとを組み合わせた比較例4では、MAEを用いた比較例5に対して発色性が低下した。印字エネルギー0.7mJ/dotのときの色濃度を例にとると、比較例5では1.31という高い数値を示したが、比較例4では1.28に低下した。
【0093】
また、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンと化合物IIとを組み合わせた比較例3においても、比較例1で得られるような発色性を維持することができない。これに対し、4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、化合物I及び化合物IIを組み合わせた実施例2の感熱記録材料は、発色性が低い化合物IIと組み合わせているにもかかわらず、比較例1で得られるような発色性を十分維持しつつ、同量の化合物IIを配合した比較例3又は4よりも保存性が良好となった。
【0094】
実施例1及び4においても同様の結果が示されており、比較例1及び2で得られるような発色性を十分維持しつつ、保存性が良好となった。
【0095】
本発明に係る4−アラルキルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、化合物I及び化合物IIの組み合わせによれば、発色性と保存性とを高水準で両立することができる。例えば、実施例3に示されるように、化合物IIの高配合によって保存性を高めた場合であっても、発色性の低下を十分に抑制することが可能となる。