特開2018-103499(P2018-103499A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-103499(P2018-103499A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】帳面
(51)【国際特許分類】
   B42D 15/00 20060101AFI20180608BHJP
【FI】
   B42D15/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2016-253185(P2016-253185)
(22)【出願日】2016年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴史
(57)【要約】
【課題】筆記した筆跡が見やすく、且つ巾広い筆記具の種類、またその筆記具に使用される巾広いインキの種類に対応できる黒色等濃色の紙を用いた帳面を得ることを目的とする。
【解決手段】表面が黒色等濃色であり、密度が0.75〜1.0g/cmである紙を複数綴じて構成したことを特徴とする帳面。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が黒色等濃色であり、密度が0.75〜1.0g/cmである紙を複数綴じて構成したことを特徴とする帳面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色等濃色の紙を用いた帳面に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、白色等淡色の紙を用いた帳面は知られており、この紙は、黒色や赤色や青色など、各色の筆跡を形成するボールペンやマーカーあるいはシャープペンシルの被筆記面として広く利用されている。
また、最近では、黒色等濃色の紙に対して筆記が行われることもあり、この場合の筆記具としては、白色やパステル色の筆跡を、あるいは金属光沢色の筆跡を形成するボールペンやマーカーが用いられることが多い。黒色等濃色の紙に当該筆記具にて筆記を行った際には、黒板にチョークで描画した様な筆跡が得られることから面白みがあり、これでPOP広告を作成して人目を引く、といった目的に対して利用されることもある。
【0003】
ところで、前記黒色等濃色の紙は、紙の内部にまでインキが浸透した際には、紙が濃い色であるが故に筆跡が見難くなってしまう、という問題があった。あるいは、紙に対してインキが浸透し難く、インキが乾き難かったり、インキの定着性が悪く筆跡が擦れて滲んでしまう、という問題があった。
この問題に対し特許文献1(特開平6−287499号公報)では、そのような濃色の紙面に対して筆記された筆跡を見やすくするためのボールペン用水性白色顔料インキが開示されている。この特許文献1では、インキ中に板状の珪酸塩を含有させ、インキの粘度を6000〜100000cpsの粘度に設定することで、紙に対して白色顔料が浸透しないようにして、筆跡の濃度を低下させない旨の構成が記載されている。
【0004】
前記特許文献1に記載のインキを用いたボールペンによれば、黒色等濃色の紙に対して見やすい筆跡を形成できることになっているが、その反面、当該インキは粘度が高いことから、例えばマーカーのような構造の筆記具で筆記を行うことができず、使用する筆記具が限定されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−287499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、筆記した筆跡が見やすく、且つ巾広い筆記具の種類、またその筆記具に使用される巾広いインキの種類に対応できる黒色等濃色の紙を用いた帳面を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
「表面が黒色等濃色であり、密度が0.75〜1.0g/cmである紙を複数綴じて構成したことを特徴とする帳面。」である。
【0008】
本発明における黒色等濃色とは、黒色であれば明度3.0以下/彩度1.0以下のものを指し、いわゆる黒板のような緑色であれば色相10GY〜5BG/明度2.5〜4.0/彩度1.0〜4.0のものを指し、青などその他の色であれば明度4.0以下/彩度4.0以下のものを指す。
また、密度(g/cm)は、JIS P 8124に準じて測定したものである。
【0009】
紙の密度が0.75〜1.0g/cmであることにより、白色やパステル色の筆跡を構成するためインキに含有させたチタン白等の一般的な白色顔料や、あるいは金属光沢色の筆跡を構成するためインキに含有させたアルミニウム粉等の一般的な高輝性顔料が、紙に浸透し難くなり、結果、筆記した筆跡が見やすいものとなる。
また、本発明の帳面によれば、黒色等濃色の紙に対して主にコントラストを形成するインキ中に含有された顔料が、当該紙に浸透し難くなることから、筆記具に使用できるインキ粘度の巾が広がり、巾広い筆記具の種類、また巾広いインキの種類に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筆記した筆跡が見やすく、且つ巾広い筆記具の種類、またその筆記具に使用される巾広いインキの種類に対応できる黒色等濃色の紙を用いた帳面を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における実施例について説明を行うが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
密度が0.89g/cmである黒色の紙を複数綴じて帳面を形成した。
(実施例2)
密度が0.92g/cmである黒色の紙を複数綴じて帳面を形成した。
(実施例3)
密度が0.79g/cmである黒色の紙を複数綴じて帳面を形成した。
(比較例1)
密度が0.69g/cmである黒色の紙を複数綴じて帳面を形成した。
(比較例2)
密度が1.10g/cmである黒色の紙を複数綴じて帳面を形成した。
次に、実施例および比較例の帳面に対する試験結果を詳述する。
試験は、水性白色顔料インキを用いたボール径0.5mmの白色インキボールペンを使用し、帳面に対して筆記角度65°、筆記加重0.98N、筆記速度4m/minで直線筆記を行った筆跡を用いて、筆跡の隠蔽性(見やすさ)と筆跡の定着性の評価を行っている。
なお、測定に用いた水性白色顔料インキは以下の構成である。
酸化チタン(クロノスKR−380、チタン工業(株)製) 50重量部、
ガーガム誘導体(ジャガーHP−60、三晶(株)製)の1.5重量%水溶液 20重量部、
グリセリン 10重量部、
水 15重量部、
スチレン−アクリル酸共重合物のアンモニウム塩 5重量部、
上記成分中、ガーガム誘導体の1.5重量%水溶液以外の成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、ガーガム誘導体の1.5重量%水溶液を加え、1時間撹拌を行い、水性白色顔料インキを得た。
【0012】
表1では、「筆跡の隠蔽性(見やすさ)」の欄に、筆跡と帳面とのコントラスト値を、ISO13660に準じて、クオリティ・エンジニアリング・アソシエイツ(QEA)社製のハンディ型画像評価システム「PIAS−II」を使用して測定した結果を記載してある。
また、「筆跡の定着性」の欄には、筆記した直後に帳面を閉じて、筆記面の上側の紙の裏面にインキが転写されたか否かという裏移り現象の状況による評価を記載し、「◎」は非常に良好、「○」は良好、「×」は不十分であったことをそれぞれ示している。
【0013】
【表1】
【0014】
評価結果が示す通り、実施例1〜3は、筆跡の隠蔽性(見やすさ)と定着性が共に良好または非常に良好であるという結果を得られた。
なお、密度が0.75g/cmよりも小さい黒色の紙では、インキ中の白色顔料の多くが紙の繊維間へ早く浸透することから、筆跡の定着性は非常に良好であったが筆跡が見難くなってしまった。密度が1.0g/cmよりも大きい黒色の紙では、インキ中の白色顔料が紙の繊維間にほとんど浸透しないことから、筆跡の隠蔽性(見やすさ)は非常に良好であったが筆跡の定着性は不十分な結果となった。
【0015】
また、本実施例の帳面に対して、軸筒内に前記インキを充填したマーカーで筆記を行い、評価したところ、上記表と同様の結果が得られた。
なお、本実施例の帳面に対して、シャープペンシルの色つきの芯で筆記を行ったところ、その筆跡は見やすく、筆跡の定着性も優れていた。