【実施例】
【0015】
図1に示すように、実施例に係るシート10は、乗員の下半身を支持する座部12と、この座部12の後部に傾動可能に設置されて乗員の上半身を支持する背もたれ部14と、この背もたれ部14の上部に設置されて乗員の頭部を支持するヘッドレスト16とから基本的に構成される。シート10の各部12,14,16は、ポリウレタン等の発泡体を本体とするシート用パッド20の表側に、布地や合成皮革や本革などの表皮材18を覆うように貼り込んだり、被せたりして構成されている。なお、座部12と背もたれ部14は、その基本的な構造が類似すると共に、製造方法も同様であるので、座部12をなすシート用パッド20を挙げて以下に説明する。また、座部12をなすシート用パッド20の説明において、車両への設置状態を基準として上下前後左右を指称する。
【0016】
図2に示すように、シート用パッド20は、座席に座った乗員の大腿部を主に支持する前部サポート部22と、乗員の臀部を主に支持する後部サポート部24と、乗員を左右から支持する左右のサイドサポート部26,26とに大別されるパッド本体21を備えている。なお、パッド本体21は、クッション性を有するポリウレタン等の発泡体で基本的に構成されている。また、シート用パッド20は、パッド本体21における車体側となる下面を覆うように設けられた保護部材28を備え、座席の骨格を構成する金属フレームに設置した際に、保護部材28が金属フレームに接するようになっている。保護部材28は、例えば不織布や布地などの柔軟な材料が用いられ、振動等によって金属フレームとの間で異音が発生することを防止している。
【0017】
図2に示すように、パッド本体21には、該パッド本体21における乗員側となる支持面に開口すると共に支持面に沿って延在する複数条の溝部30が形成されている。溝部30は、それぞれのサポート部22,24,26の境界に延在するよう、基本的に配置されている。実施例のパッド本体21には、前部サポート部22および後部サポート部24とサイドサポート部26とを分ける2条の縦溝部30,30が、前後に延在すると共に左右に離して配置されている。また、パッド本体21には、2条の縦溝部30,30の間に位置すると共に各縦溝部30に連ねて、左右に延在する横溝部30が設けられ、横溝部30によって前部サポート部22と後部サポート部24とが区分されている。なお、溝部30は、表皮材18をシート用パッド20に取り付ける際に、表皮材18を溝部30内(パッド本体21の内側)に引き込んで表皮材18にテンションをかけるために用いられる。
【0018】
前記パッド本体21は、シート用パッド20の用途に応じて、目的とする機械物性(例えば硬度や反発弾性率等)になるように発泡体原料64,68の組成等が設計されている。
図2〜
図4に示すように、パッド本体21は、前部サポート部22および後部サポート部24が物性の異なる2層の発泡体層32,34で構成され、サイドサポート部26が単一の発泡体層34で構成される。具体的には、前部サポート部22および後部サポート部24は、第1発泡体層32と、第1発泡体層32よりも硬く設定された第2発泡体層34とから構成され、第1発泡体層32と第2発泡体層34とが乗員からの荷重がかかる方向(厚み方向)となる上下に積層している。また、前部サポート部22および後部サポート部24は、パッド本体21の支持面側が比較的柔軟な第1発泡体層32で構成されると共に、パッド本体21の支持面と反対側が比較的硬い第2発泡体層34で構成される。サイドサポート部26は、第2発泡体層34で構成されている。そして、パッド本体21は、発泡体層32,34同士を接着剤等で接合したものではなく、同一型内で各発泡体層32,34を成形することで両発泡体層32,34を一体化している。
【0019】
図2〜
図4に示すように、シート用パッド20は、パッド本体21において溝部30に対応して配置された枠部36と、枠部36に繋がると共に並んだ枠部36の間に架設してパッド本体21に配置された区画部材38とを備えている。枠部36は、細長い棒状または板状の部材であり、前後または左右に所要長さで延在する溝部30に長手を沿わせて配置され、溝部30の全長と同じまたは全長に近い寸法に亘って延在する、または延在するように並べられている。枠部36としては、針金や棒材や板材などの長尺物を用いることができ、製造時に取り扱いが容易であることから実施例では針金を用いている。枠部36は、1つの溝部30に対応して1本で構成しても、1つの溝部30に対応して複数本を並べてまたは複数本を繋げて構成しても、複数の溝部30に対応した形状に一体で構成しても、複数の溝部30に対応して複数繋げて構成しても、何れであってもよい。実施例では、パッド本体21の支持面において「日」の字状に配置された溝部30に対応して、枠部36も「日」の字状に配置されている。枠部36は、金属材や合成樹脂材などを用いることができ、実施例では成形型50に磁石からなる保持手段52を用いて枠部36を固定するので(
図5および
図6参照)、磁石にくっつく強磁性体である鉄が用いられている。
【0020】
図3および
図4に示すように、区画部材38は、パッド本体21において物性が異なる2層の発泡体層32,34の間に延在するシート状の部材であり、第1発泡体層32をなす第1発泡体原料64が通過可能な開口を有している。具体的には、区画部材38は、パッド本体21の内部において左右のサイドサポート部26,26の間に位置して前部サポート部22および後部サポート部24に対応して配置されている。なお、第1発泡体層32および第2発泡体層34は、区画部材38および区画部材38に設けられた開口を介して一体化している。また、上下2層の発泡体層32,34は、区画部材38を挟んで乗員側に配置された第1発泡体層32と比べて、該区画部材38を挟んで乗員より遠い側に配置された第2発泡体層34が硬く設定されている。
【0021】
前記区画部材38は、網目状や、多数の孔が貫通形成されたものなどを用いることができ、例えば、天然繊維や合成繊維からなる糸を網目状に配置したメッシュシートや、寒冷紗等の目の粗い布地や、不織布などを採用可能である。また、区画部材38は、成形型50にセットする際の取り扱い性をよくする観点から、可撓性を有していることが好ましい。区画部材38は、縁部が枠部36に取り付けられて該枠部36に繋がっており、前後または左右に並んだ枠部36,36の間に掛け渡されている。区画部材38は、前部サポート部22および後部サポート部24の四角形状領域(溝部30の配置形状)に合わせて四角形に形成されている。区画部材38は、前後および左右の縁辺が当該縁辺に沿って配置された枠部36に繋がると共に、前後方向中央部が左右に延在するように配置された枠部36に繋がっている。区画部材38は、四方の縁辺が該縁辺全体に亘って枠部36で保持されると共に、長手となる前後方向中央部も枠部36で保持されている。
【0022】
図3および
図4に示すように、第2発泡体層34には、パッド本体21における支持面と反対側を覆うように配置された保護部材28と区画部材38との間に、第2発泡体層34とは別体のスペーサ40が埋め込まれている。スペーサ40は、保護部材28および区画部材38の両方あるいは何れか一方に接するように配置され、四角等の多角柱状や円柱状などに形成されている。スペーサ40は、第2発泡体層34と異なる物性としてもよいが、第2発泡体層34により発現するクッション性などの性能を阻害しないように、第2発泡体層34と同様の物性を有するものが好ましい。スペーサ40としては、例えば、破砕したポリウレタンをブロック状に成形したウレタンブロックや、スラブウレタンなどを用いることができる。
【0023】
次に、実施例に係るシート用パッド20の製造方法について説明する。
図7および
図8に示すように、シート用パッド20は、区画部材38および保護部材28をセットした成形型50で、パッド本体21を発泡・成形することで製造することができる。
図5および
図7(b)に示すように、成形型50は、パッド本体21における支持面側を規定する第1型54と、パッド本体21における支持面と反対側を規定する第2型56とを有し、第1型54が下側に配置されている。すなわち、パッド本体21は、車両への設置姿勢と上下反転した向きで成形型50において成形される。
【0024】
図5および
図6に示すように、第1型54は、パッド本体21の支持面に設ける溝部30を規定する突条58を備え、支持面を規定する型面から突出する突条58が、得るべき縦溝部30および横溝部30に合わせて「日」の字状に延在している。第1型54は、突条58の頂部に対して区画部材38を突条58の延在方向に沿った線状に保持可能な保持手段52を備えている。第1型54は、保持手段52によって、区画部材38を突条58の頂部に該突条58の延在方向に沿って線状に保持した状態で取り付けて、前後または左右に並んだ突条58,58の間に渡した状態で区画部材38をセット可能になっている。
【0025】
具体的には、保持手段52は、区画部材38に取り付けられた枠部36を保持可能に構成されて、枠部36を突条58の頂部に保持することで、区画部材38を枠部36によって突条58の延在方向に沿って連続的に保持している。また、保持手段52は、成形型50でパッド本体21を成形した後に該パッド本体21を脱型する際に、枠部36の保持を解除可能に構成されている。ここで、保持手段52は、枠部36の前後左右の移動を規制するように保持するだけでなく、枠部36の上下方向の移動もある程度規制するように保持する。保持手段52は、左右または前後に並んだ突条58,58間に掛け渡された区画部材38を、前後または左右にテンションをかけた状態で保持可能であると共に、区画部材38が突条58から上方へ離れないように保持可能である。保持手段52としては、鉄等の強磁性体からなる枠部36を引きつける磁石や、枠部36を挟んで保持するクリップなどを用いることができ、枠部36の着脱が容易なことから実施例のように磁石を用いることが好ましい。
【0026】
前述した成形型50を用いた製造方法について説明する。第1型54における突条58の配置に合わせて、区画部材38の縁辺および前後方向中央部に枠部36を取り付ける。
図5に示すように、区画部材38には、例えば、前後に延在する長手の縁辺に2本の枠部36,36を直列するように並べて、左右に延在する短手の縁辺に1本の枠部36を配置し、長手の縁辺に並ぶ2本の枠部36,36の間に左右に延在するように枠部36を配置する。また、区画部材38は、隣り合う枠部36,36同士が直接繋がっておらず、隣り合う枠部36,36の間で折り曲げ可能にしてある。枠部36は、区画部材38に対して前後左右方向および上下方向へ移動しないように固定される。枠部36の固定方法としては、例えば、粘着テープ等による貼着や、接着や、区画部材38に直線的に並べてあけた孔に縫い糸のように枠部36を通したり、予め区画部材38の端部を折り返して縫製して環状部を形成しておき、この環状部に枠部36を通すなど、種々の方法を採用でき、取り付けが容易であることから、実施例では粘着テープを用いている。枠部36は、該枠部36の全体に亘って区画部材38を保持するよう、区画部材38に取り付けられる。そして、区画部材38は、縁辺の全周および内側の中央部が複数条の枠部36によって枠状に保持される。
【0027】
次に、枠部36を取り付けた区画部材38を第1型54にセットする(
図5および
図7(a)参照)。区画部材38は、突条58の頂部に取り付けて、前後または左右に並んだ突条58,58の間に渡して、キャビティ60に配置される。より具体的には、区画部材38は、突条58に設けられた磁石からなる保持手段52に枠部36が保持されることで、縦溝部30を規定する突条58に前後に延在する枠部36が保持されて、長手の縁辺が突条58に対して該突条58の延在方向に沿って連続的に保持される。同様に、区画部材38は、横溝部30を規定する突条58に左右に延在する枠部36が保持されて、短手の縁辺および前後の中央部が突条58に対して該突条58の延在方向に沿って連続的に保持される。区画部材38は、長手の両縁辺に対して互いに反対向きへテンションをかけた状態になるように、縦溝部30を規定する突条58に前後に延在する枠部36を取り付ける。同様に、区画部材38は、短手の両縁辺に対して互いに反対向きへテンションをかけた状態になるように、横溝部30を規定する突条58に左右に延在する枠部36を取り付ける。枠部36には、磁石からなる保持手段52によって突条58の頂部に向けて常に力がかかっており、区画部材38における突条58への取り付け部位が突条58の頂部から離れないように保持される。
【0028】
次に、第1型54における突条58と区画部材38とに囲まれる第1領域62に、第1発泡体層32となる液状の第1発泡体原料64を区画部材38を通して注入する(
図7(a))。また、第1型54における第1領域62以外の第2領域66に、第2発泡体層34となる液状の第2発泡体原料68を注入する。第2発泡体原料68は、例えば、第2領域66におけるサイドサポート部26となる部分に注入される。また、第2発泡体原料68は、第1発泡体原料64の注入タイミングと同時、第1発泡体原料64の注入時期と重なるタイミング、第1発泡体原料64の注入時期とずれたタイミングなどに注入すればよい。
【0029】
図7(b)に示すように、第2型56には、保護部材28が取り付けられており、成形型50を型閉じすることで、保護部材28がセットされる。また、保護部材28におけるキャビティ60に臨む面および区画部材38の第2領域66に臨む面の少なくとも一方(実施例では保護部材28)には、スペーサ40が粘着テープ等で取り付けられており、成形型50を型閉じした際に第2領域66における区画部材38とこれに対向する型面との間にスペーサ40が配置される(
図8(a)参照)。スペーサ40の固定方法は、保護部材28および区画部材38の少なくとも一方に、粘着テープ等により貼り合わせる以外に、成形型50の形状(凸形状や凹形状等)により、スペーサ40を固定してもよい。成形型50を所定の条件で加熱等して発泡体原料64,68の発泡・固化を促進することで、第1発泡体原料64が次第に発泡して上昇するものの(
図8(a))、注入時よりも粘度が増した第1発泡体原料64は、区画部材38をほとんど通過することができず、第1領域62で第1発泡体層32が成形される。また、第2発泡体原料68が次第に発泡して上昇して側方から回り込んで第1領域62の上方に重なるものの、注入時よりも粘度が増した第2発泡体原料68は、区画部材38をほとんど通過することができず、第2領域66で第2発泡体層34が成形される。
【0030】
このようにして、物性が異なる2層の発泡体層32,34が厚み方向に積層して一体化したパッド本体21、およびパッド本体21に保護部材28を一体化したシート用パッド20が得られる(
図8(b))。そして、成形型50を開いて、第1型54からシート用パッド20を持ち上げることで、磁石からなる保持手段52から枠部36が外れ、シート用パッド20を脱型することができる。
【0031】
前述したシート用パッド20は、上下に重なる発泡体層32,34の間に延在する区画部材38が、枠部36に繋がって該枠部36に保持されていると共に、前後および左右に並んだ枠部36,36の間に架設されて展張されている。従って、区画部材38がずれ難く、2層の発泡体層32,34の厚みを設計通りまたは設計により近くすることができる。これにより、シート用パッド20は、2層の発泡体層32,34の物性が複合した乗り心地のよい良好なクッション性能が得られる。第1発泡体層32で構成される前部サポート部22および後部サポート部24は、第2発泡体層34で構成されるサイドサポート部26よりも柔らかいため、乗員がシート用パッド20に座った際に、大きく沈み込み、乗員の大腿部や臀部をしっかりとホールドできる。一方、サイドサポート部26は、前部サポート部22および後部サポート部24よりも硬いため、乗員がシート用パッド20に座っても沈み込みが小さく、底付きしないため、乗員の大腿部や臀部をしっかり支えることが可能となる。特に、シート用パッド20は、前後および左右に並んだ枠部36,36の間に架設されて展張された区画部材38を、ハンモックのように機能させて、支持面から入力される荷重を支持させることもできる。また、シート用パッド20は、枠部36が溝部30に沿って配置してあるので、表皮材18を溝部30に入れ込んでホグリング等の固定具で固定するときの固定対象(固定部材)としても機能させることができる。そして、枠部36を表皮材18の固定対象として共用することで、表皮材18を固定するための固定部材を削減できる。
【0032】
前記シート用パッド20は、区画部材38と保護部材28との間に、第2発泡体層34と別体のスペーサ40が配置されているので、スペーサ40によって区画部材38の位置ずれをより適切に防止できる。これにより、積層された2層の発泡体層32,34の厚みを設計通りまたは設計により近くすることができ、パッド本体21の乗り心地のよい良好なクッション性能が得られる。また、配置するスペーサ40を変えることで、第2発泡体層34全体のクッション性を調節することも可能である。
【0033】
従来のように、突条58に設けたピンに区画部材38を挿入する点固定の場合は、点固定した部位の間で区画部材38が発泡圧により波打ってしまい、発泡体層32,34の厚みが設計通りにならない。これに対して、実施例の製造方法によれば、区画部材38が第1型54に対して突条58の延在方向に沿って線状に保持されているので、発泡体原料64,68の発泡圧によって区画部材38が波打つなどで位置ずれすることを防止できる。従って、得られるパッド本体21は、区画部材38を第1型54に対して線状に保持させるだけの簡単な方法で、積層した2層の発泡体層32,34の厚みを設計通りまたは設計により近くすることができ、それ故に、乗り心地のよい良好なクッション性能が得られる。
【0034】
前記製造方法では、区画部材38に、枠部36を突条58に対応して延在するように取り付けて、枠部36を突条58の頂部に沿って取り付けて、これにより区画部材38を突条58に対して該突条58の延在方向に連続して保持させている。このように、区画部材38に長尺な枠部36を取り付けておくことで、枠部36を突条58に合わせるだけで、区画部材38における枠部36の長さ分の部分を第1型54に一括して位置合わせすることができる。このように、区画部材38の第1型54へのセットを容易にすることができる。また、枠部36によって区画部材38を突条58に沿って連続的に保持すると共に、前後および左右に並ぶ突条58,58の間でテンションをかけた状態で区画部材38を展延することで、区画部材38の位置ずれをより好適に防止できる。
【0035】
前記製造方法は、強磁性体からなる枠部36を、突条58に設けられた磁石からなる保持手段52で保持させるので、区画部材38の第1型54へのセットをより簡単にすることができる。また、突条58に設けたピンに区画部材38を挿入する点固定の場合は、ピンから区画部材38が抜けることを防止できない。これに対して、実施例の製造方法によれば、枠部36を保持手段52の磁力によって突条58から離れないように保持することができるので、区画部材38の高さ方向への位置ずれをより好適に防止できる。
【0036】
前記製造方法は、第2領域66における区画部材38と該区画部材38に対向する第1型54の型面との間にスペーサ40を配置した状態で、第2発泡体層34を発泡・成形しているので、スペーサ40によって区画部材38が上方に変位することを規制することができる。従って、第1発泡体原料64の発泡圧による区画部材38の位置ずれを防止することができるから、積層した2層の発泡体層32,34の厚みを設計通りまたは設計により近くすることができ、乗り心地のよい良好なクッション性能が得られる。
【0037】
(試験例)
試験例1、試験例2および比較例のシート用パッドを製作し、発泡体層の厚みのばらつきおよび波打ち度合いを測定した。試験例および比較例は、何れも同じ形状であり、第1発泡体層が第2発泡体層よりも柔らかいポリウレタンで形成されている。試験例1は、ワイヤ(針金)からなる枠部を取り付けた区画部材を、枠部を磁石からなる保持手段で突条に保持させた状態で、2層の発泡体層を発泡・成形したものである。試験例2は、試験例1の条件に加えて、区画部材と保護部材との間にスペーサを配置した状態で、2層の発泡体層を発泡・成形したものである。比較例は、区画部材を突条の頂部に突出するピンに引っ掛けた状態で、2層の発泡体層を発泡・成形したものである。なお、試験例および比較例は、実施例で説明した製造方法と同様の発泡成形工程で同一条件で成形されたものである。
【0038】
試験例および比較例を、
図9に示すように、前後方向に破断した各断面(丸1〜丸5)について、左右方向の各系列(I〜V)に対応する箇所で、パッド本体から支持面から区画部材までの第1発泡体層の厚みを測定した。その結果を表1に示す。なお、
図9では、各部に実施例と同じ符号を付してある。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、枠部で区画部材を線状に保持した状態で成形型にセットすることで、発泡体層の厚みのばらつきおよび波打ちを防止されることが明らかである。また、区画部材と保護部材との間にスペーサを入れておくことで、発泡体層の厚みのばらつきおよび波打ちをより好適に防止し得ることが判る。
【0041】
(変更例)
前述した構成に限定されず、例えば以下のようにも変更することができる。
(1)実施例では、「日」の字状に配置された突条(溝部)に対応して、枠部を「日」の字状に配置したが、これに限らず、「ロ」の字状、「コ」の字状、「ニ」の字状、または「U」の字状などの適宜形状で枠部を配置するようにしてもよい。
(2)区画部材は、前後または左右に並列する枠部(突条)の間に掛け渡す構成に限らず、例えば「L」字状に交差する角度で並ぶ枠部(突条)の間に掛け渡す構成であってもよい。
(3)パッド本体には、溝部に対応する枠部(特に区別する場合は対応枠部という)とは別に、対応枠部の間に配置して溝部の位置とずれた枠部(特に区別する場合は非対応枠部という)を設けてもよい。この場合、非対応枠部は、対応枠部に繋げて設けることがよい。
(4)本発明は、シートの座部に用いられるシート用パッドだけでなく、背もたれ部など他の部位に用いられるシート用パッドに用いることができる。また、車両の前部座席だけでなく、後部座席にも適用可能である。
(5)本発明は、自動車などの車両の座席に用いられるシート用パッドだけでなく、鉄道車両の座席や航空機の座席などに用いられるシート用パッドにも適用可能である。
(6)本発明は、自動車などの車両の座席に用いられるシート用パッドだけでなく、家具などに用いられるシート用パッドにも適用可能である。