(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-103816(P2018-103816A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】漁船の操船システム
(51)【国際特許分類】
B63H 25/04 20060101AFI20180608BHJP
B63H 25/38 20060101ALI20180608BHJP
B63H 25/02 20060101ALI20180608BHJP
【FI】
B63H25/04 Z
B63H25/38 B
B63H25/38 101
B63H25/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-252185(P2016-252185)
(22)【出願日】2016年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000107365
【氏名又は名称】ジャパン・ハムワージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博敬
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和志
(57)【要約】
【課題】操船に不慣れな者でも迅速にかつ最適な進路で自船を魚群に向けて操船することができる漁船の操船システムを提供する。
【解決手段】魚群探知装置351は、魚群を探知したときに自船に対する魚群の相対位置を操舵制御装置200に通知するターゲット位置通知部352を有し、操舵制御装置200は、魚群探知時操船部301を有し、魚群探知時操船部301は、ターゲット位置通知部352から魚群の相対位置の通知を受けて、プロペラ101が前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群の相対位置に向けて船の進路を変更制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚群を探知する魚群探知装置と、1基1軸のプロペラからなるプロペラ推進器と、プロペラの後方に配置した2枚の高揚力舵と、各高揚力舵毎に設けたロータリーベーン舵取機と、各ロータリーベーン舵取機で操作する各高揚力舵の舵角を制御する操舵制御装置を備え、
魚群探知装置は、魚群を探知したときに自船に対する魚群の相対位置を操舵制御装置に通知するターゲット位置通知部を有し、
操舵制御装置は、魚群探知時操船部を有し、魚群探知時操船部は、ターゲット位置通知部から魚群の相対位置の通知を受けて、プロペラが前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群の相対位置に向けて船の進路を変更制御することを特徴とする漁船の操船システム。
【請求項2】
魚群探知時操船部は、ターゲット位置通知部から通知される魚群と自船との間のターゲット離間距離が設定値以下となった時に、プロペラが前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、自船をその場にホバリングさせ、かつ、ターゲット離間距離が再び設定値以上に離間した時に、プロペラが前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群に向けて自船を進めてターゲット離間距離を設定値以下に保持する制御を行うことを特徴とする漁船の操船システム。
【請求項3】
魚群探知装置は、自船の全周囲の魚群を探知するソナーからなることを特徴とする請求項1に記載の漁船の操船システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漁船の操船システムに関し、魚群に追従して操船する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、魚群の位置や量などを調査し、認知するために使う機器として魚群探知器が知られている。魚群探知器は、発信、受信、記録などの装置を備え、水中に超音波,極超音波を発信し、その反射による映像で魚群の密度を検知するもので、魚の種類もある程度推測することができる。
【0003】
魚群探知器としては、例えば特許文献1に示すものがある。これは、深度レンジを選定するレンジ選定手段と、ディスプレイ画面上に、海底画像を縦断面状に表示し、かつ可変基準図形を表示するディスプレイ装置と、前記ディスプレイ画面上に、送受波器によって探知された海底情報に基づき、前記レンジ選定手段により選定された深度レンジによって指定された尺度で、海底画像を表示形成すると共に、前記深度レンジにほぼ反比例して段階又は無段階に大きさが変化する関係となるように可変基準図形をディスプレイ画面上に表示形成する画像形成手段とを具備している。
【0004】
また、船舶の操縦装置としては、例えば特許文献2に記載するものがある。これは、一基の推進プロペラの後方に推進プロペラ軸心に対して対称の位置に一対の舵を設けた二枚舵システム、あるいは、二基の推進プロペラの後方にそれぞれ一枚の舵を設けた二枚舵システムを有する船舶の操舵制御装置である。
【0005】
この操舵制御装置は、操舵命令系統がオートパイロット装置とジョイスティック・パネルとから構成され、オートパイロット装置は針路設定装置とジャイロコンパスとからなり、ジョイスティック・パネルはテールインボード設定装置とジョイスティックレバーと舵角設定装置と緊急停止押釦とからなり、制御装置系統が自動演算装置とテールインボード対応操舵量調整器とジョイスティック・ユニットと舵角設定器と緊急停止制御ユニットとから構成される。
【0006】
そして、自動操舵モードによる航行時は、設定針路復帰のための当て舵において、テールインボードとなっている二枚の舵を、テールインボード対応操舵量調整器により、それぞれ別々の転舵パターンで転舵させるようにし、操縦モードによる出入港又は狭水路航行時は、自動演算装置とジョイスティック・ユニットと緊急停止制御ユニットとにより、二枚の舵のそれぞれの舵角の組合せによる船の複数の操縦パターンと緊急停止とができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3519791
【特許文献2】特許第5213729
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スポーツフィッシングでは、操船者および釣り人は専業の漁師とは違って毎日操船を行っておらず、魚群探知器で魚群を捉えても魚群に向けて自船を操船することを十分に行うことができなかった。
【0009】
本発明は上記した課題を解決するものであり、操船に不慣れな者でも迅速にかつ最適な進路で自船を魚群に向けて操船することができる漁船の操船システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の漁船の操船システムは、魚群を探知する魚群探知装置と、1基1軸のプロペラからなるプロペラ推進器と、プロペラの後方に配置した2枚の高揚力舵と、各高揚力舵毎に設けたロータリーベーン舵取機と、各ロータリーベーン舵取機で操作する各高揚力舵の舵角を制御する操舵制御装置を備え、魚群探知装置は、魚群を探知したときに自船に対する魚群の相対位置を操舵制御装置に通知するターゲット位置通知部を有し、操舵制御装置は、魚群探知時操船部を有し、魚群探知時操船部は、ターゲット位置通知部から魚群の相対位置の通知を受けて、プロペラが前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群の相対位置に向けて船の進路を変更制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の漁船の操船システムにおいて、魚群探知時操船部は、ターゲット位置通知部から通知される魚群と自船との間のターゲット離間距離が設定値以下となった時に、プロペラが前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、自船をその場にホバリングさせ、かつ、ターゲット離間距離が再び設定値以上に離間した時に、プロペラが前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群に向けて自船を進めてターゲット離間距離を設定値以下に保持する制御を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の漁船の操船システムにおいて、魚群探知装置は、自船の全周囲の魚群を探知するソナーからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記した構成により、魚群探知時操船部がターゲット位置通知部から通知された魚群の相対位置に向けて船の進路を変更制御するので、操船に不慣れな者でも迅速にかつ最適な進路で自船を魚群に向けて操船することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における操船スタンドの構成を示す模式図
【
図2】同実施の形態における船舶操縦装置の構成を示す模式図であり、プロペラ推進器101を省略した図
【
図3】同実施の形態における推進器および高揚力舵を示す平面図であり、推力システム100の船尾部の構成を示す図
【
図4】同実施の形態におけるジョイスティックを示す正面図
【
図6】舵の組み合せ舵角と旋回方向を示す模式図であり、推力システム100の船尾部の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態における二枚舵操舵システムは、
図1から
図4に示すように、推力システム100と推力システム100を制御する操船システム(操舵制御装置)200からなる。
【0016】
推力システム100は、船体110の船尾に配置した1基1軸のプロペラからなるプロペラ推進器101と、プロペラの後方に配置した2枚の高揚力舵102、103を配したもので、ここではベクツイン舵と称する。
【0017】
ベクツイン舵は、各舵がそれぞれ、アウトボード(外舷側)へ105°、インボード(内舷側)へ35゜転舵可能に構成されており、1基1軸の推進器(プロペラ)をプロペラ前進回転のままで、1対2枚の高揚力舵をそれぞれ独立して種々の角度に作動させ、両舷の舵の舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に分配し、それぞれの方向の推力を自在に変えることができ、従ってそれぞれの方向の推力の合成推力を自在に変えることができ、プロペラ後流を制御して船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御し、船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等の操船を行わせ、船の運動を自由に制御することができる。
【0018】
さらに、推力システム100は、高揚力舵102、103を駆動するロータリーベーン舵取機104、105と、ロータリーベーン舵取機104、105を制御する舵制御装置(サーボアンプ)106、107と、船体110の船首側に配置した船首スラスター108および船首スラスター108を制御するスラスター制御装置109を有している。
【0019】
また、ロータリーベーン舵取機104、105のそれぞれには、ポンプユニット151、152と舵角発信器153、154とフィードバックユニット155、156が接続しており、フィードバックユニット155、156が舵制御装置106、107に接続している。
【0020】
操船システム(操舵制御装置)200は、操船スタンド250に格納されており、ジャイロコンパス251のジャイロ方位を表示するジャイロ方位表示部252と、GPSコンパスを用いたオートパイロットによる操縦モードで操船するオート操船部253と、ジョイスティックレバー254による操縦モードで操船するジョイスティック操船部255と、手動操舵輪256による操縦モードで操船する手動操船部257と、ノンフォローアップ操舵レバー258による操縦モードで操船するノンフォローアップ操船部259と、モード切替スイッチ260により各操船部の切替を行うモード切替部261と、画面にタッチパネルを配したモニター262と、モニター262に映す画像を制御する画像制御部263と、緊急停船押釦264を操作することにより全ての操縦モードに優先して船舶を緊急に停船させる操縦モードで操船する緊急停船部265と、魚群探知時操船部301と、ジョイスティック操船部255の操縦モードから魚群探知時操船部301の操縦モードへ切り替える操縦モード切替部302と、操縦モード切替部302に操縦モードの切り替えを指示する操舵切替押釦303とをスタンド筺体305に一体的に備えている。
【0021】
魚群探知装置351は、海中の魚群を超音波により探知するものであり、魚群を探知したときに自船に対する魚群の相対位置を算出して表示する機能、および魚群と自船との間のターゲット離間距離を算出する機能を有する。魚群探知装置351は、自船の全周囲の魚群を探知するソナーからなるが、魚群探知器を採用することも可能である。魚群探知装置351は、魚群を探知したときに自船に対する魚群の相対位置およびターゲット離間距離を操船システム(操舵制御装置)200に通知するターゲット位置通知部352を有する。
【0022】
画像制御部263は、ジャイロ方位を映すジャイロ方位表示画像267と、ジャイロ方位表示部252をモニター画面上でタッチ操作するための方位表示部操作画像268と、オート操船部253をモニター画面上でタッチ操作するためのオート操船操作画像269を選択的に表示し、あるいは同時に表示する。
【0023】
ジョイスティック操作部255は、ジョイスティックレバー254がX−Y方向の何れの方向へも操作可能に構成されており、ジョイスティックレバー254の傾倒方向で船体の指令運動方向を制御し、傾倒方向における傾倒角度で船首尾方向指令速度および船体横方向指令速度を制御するものである。
【0024】
ジョイスティック操船部255は、両舷の高揚力舵102、103の舵角をそれぞれジョイスティックレバー254の傾倒方向に応じて設定した舵角に制御し、かつ両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せることで、プロペラ後流の推力を目的方向に向けて変向し、双方のロータリーベーン舵取機104、105により両舷の高揚力舵102、103のそれぞれの舵角を外舷側へ105°、内舷側へ35°の範囲で制御する。
【0025】
オート操船部253は、GPSコンパス、電子海図システムにより自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて自船を予め定めた設定針路に誘導制御するものである。
【0026】
緊急停船部265は、緊急時に緊急停止押釦264を押すと、ジョイスティックレバー254でいかなる操船状態を指示していようとも、あるいは他の操縦モードで操船していても、現在の操船に係る舵角をキャンセルして、左舷舵103を取舵方向(上から見て時計回りの方向)に、右舷舵102を面舵方向(上から見て反時計回りの方向)に、それぞれハードオーバー(舵いっぱい)まで転舵させ、船に制動力を与えて停止させる。
【0027】
手動操船部257は、手動操舵輪256の回転操作により二枚の高揚力舵102、103の舵角を制御して操船するものである。
【0028】
ノンフォローアップ操船部259は、ノンフォローアップ操舵レバー258を左右に操作している時間に応じて右舷もしくは左舷に舵を切る。
【0029】
魚群探知時操船部301は、ターゲット位置通知部352から魚群の相対位置の通知を受けて、プロペラ101が前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群の相対位置に向けて船の進路を変更制御する。
【0030】
また、 魚群探知時操船部301は、魚群探知装置351のターゲット位置通知部352から通知される魚群と自船との間のターゲット離間距離を算出し、ターゲット離間距離が設定値以下となった時に、プロペラ101が前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、自船をその場にホバリングさせる。
【0031】
操縦モード切替部302は、操舵切替押釦303の操作を受けて、ジョイスティック操船部255の操縦モードから魚群探知時操船部301の操縦モードへ切り替える。
【0032】
以下、上記構成における作用を説明する。
1.ジョイスティックによる操縦モード
モード切替スイッチ260を操作してジョイスティックによる操縦モードを選択する。ジョイスティックレバー254によって船体の指令運動方向、船首尾方向指令推力、船体横方向指令推力を指令する。この操船においては、プロペラ推進器101をプロペラ前進回転のままで、それぞれの高揚力舵102、103をそれぞれ独立に種々の角度に作動させてプロペラ後流を制御し、船尾回りの推力を360゜全方向にわたって制御する。この制御によって船の前後進、停止、前進旋回、後進旋回等を行わせることにより操船における機動性を向上させることができる。
【0033】
高揚力舵102、103の基本的な舵角の組合せ、およびジョイスティックレバー254の状態と、その呼称及びプロペラ後流線と運動方向を、
図6において説明する。
【0034】
図6中で、舵は水平断面で示してあり、その横あるいは下方に各々の舵の舵角を示している。舵角は右に取るのが正(+)、左に取るのが負(−)として表示し、これらの舵角の組み合わせに対する呼称を掲げている。プロペラ後流は、細い矢印線で、又、それによる船の推進方向を太い中抜き矢印線で画いている。
【0035】
ちなみに、「TURN TO PORT」(前進左旋回)は左舷舵−35°、右舷舵−25°であり、「ROTATE TO PORT」(船首左回頭)は左舷舵−70°、右舷舵−25°であり、「STERN TO PORT」(船尾左旋回)は左舷舵−105°、右舷舵+45°から+75°であり、「ASTERN TO PORT」(後進左旋回)は左舷舵−105°、右舷舵+75°から+105°であり、「AHEAD」(前進)は左舷舵0°、右舷舵0°であり、「HOVERING」(その場停止)は左舷舵−75°、右舷舵+75°であり、「ASTERN」(後進)は左舷舵−105°、右舷舵+105°であり、「TURN TO STARD」(前進右旋回)は左舷舵+25°、右舷舵+35°であり、「ROTATE TO STARD」(船首右回頭)は左舷舵+25°、右舷舵+70°であり、「STERN TO STARD」(船尾右旋回)は左舷舵−45°から−75°、右舷舵+105°であり、「ASTERN TO STARD」(後進右旋回)は左舷舵−75°から−105°、右舷舵+105°である。
【0036】
このように、両舷の舵の舵角の組合せを変えることによって、プロペラ後流を目的とする望ましい方向に向けてその方向に推力を変えることができる。ここに挙げた舵角の組み合わせは一例であり、目的とする推進方向及び推力を得るように、舵角の組み合わせを任意に変えることができる。
【0037】
このように、操船においては推進器推力の反転(プロペラ逆転)が不要であり、主機関は常に前進回転のままであらゆる操船制御が行え、主機関の回転数を加減せずとも、両舵の舵角を加減して、そのときのプロペラ回転数に対応した前進最大速度から後進最大速度まで無段階にきめ細かく船速を制御することができる。
2.緊急停船部による操縦モード
緊急停船押釦264を押すことの一挙動で、緊急停船部265を起動し、全ての操縦モードに優先して船舶を緊急に停船させることができる。すなわち、ジョイスティックレバー254の操舵モードにかかわらず、あるいは他の操縦モードにかかわらず、緊急停船部265によってクラッシュアスターンモード(左舷舵は左般105°、右舷舵は右舷105゜に舵を取る)に切換えて、両舵により非常に大きな制動力と後進力を発生させるので、プロペラ逆転による操船よりもはるかに短い時間、短い距離で船体を停止させることができる。
【0038】
また、クラッシュアスターンにおいても、主機関を止めて後進再始動をする必要がないため、操船中にいわゆる無制御状態となることがないので、航行における事態ヘのすばやい対応が可能である。
【0039】
尚、緊急停船部265による操船中に、船の特性、外乱等により旋回を起した場合や、または必要によって船首方位を含めて進行力向を変えたい場合には、そのままジョイスティツクレバー254を操作すれば通常のジョイスティック操作と同様に、ジョイスティックレバー254によって自在に操船して避行航行することができる。
3.オートパイロットによる操縦モード
通常航行操船では、モード切替スイッチ260を操作してオートパイロットによる操縦モードを選択する。
【0040】
モニター262のモニター画面上にオート操船操作画像269を表示し、モニター画面上のタッチ操作によりオート操船部253に自船の位置、進みたい方位、到達したい位置ないし船首尾線方位を入力し、設定した針路で船を自動誘導操船する。オート操船部253は、自船の現在位置情報、誘導経路情報、停船保持位置情報に基づいて適宜に舵角を制御する。
4.手動による操縦モード
モード切替スイッチ260を操作して手動操舵輪256による操縦モードを選択する。この操縦モードでは、手動操舵輪256の回転操作により二枚の高揚力舵102、103の舵角を手動操船部257に指示し、二枚の高揚力舵102、103の舵角を制御して操船する。
5.ノンフォローアップの操縦モード
モード切替スイッチ260を操作してノンフォローアップ操縦レバー258による操縦モードを選択する。この操縦モードでは、ノンフォローアップ操船部259により、ノンフォローアップ操舵レバー258を左右に操作している時間に応じて右舷もしくは左舷に舵を切る。
6.魚群探知時の操縦モード
操舵切替押釦303を操作して操縦モード切替部302によりジョイスティック操船部255の操縦モードから魚群探知時操船部301の操縦モードへ切り替える。
【0041】
魚群探知時操船部301は、ターゲット位置通知部352から魚群の相対位置の通知を受けて、プロペラ101が前進方向に一定回転数で回転する状態で、
図6に示すように、両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群の相対位置に向けて船の進路を変更制御する。
【0042】
そして、ターゲット位置通知部352から通知される魚群と自船との間のターゲット離間距離が設定値以下となった時に、プロペラ101が前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せて、左舷舵−75°、右舷舵+75°とし、プロペラ後流の推力の方向を転向させ、自船をその場にホバリングさせる。さらに、ターゲット離間距離が再び設定値以上に離間した時に、プロペラ101が前進方向に一定回転数で回転する状態で、両舷の高揚力舵102、103の舵角を組合せてプロペラ後流の推力の方向を転向させ、魚群に向けて自船を進めてターゲット離間距離を設定値以下に保持する制御を行う。
【0043】
このように、魚群探知時操船部301がターゲット位置通知部352から通知された魚群の相対位置に向けて船の進路を変更制御するので、操船に不慣れな者でも迅速にかつ最適な進路で自船を魚群に向けて操船することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 推力システム
110 船体
101 プロペラ推進器
102、103 高揚力舵
104、105 舵取機
106、107 舵制御装置
108 船首スラスター
109 スラスター制御装置
151、152 ポンプユニット
153、154 舵角発信器
155、156 フィードバックユニット
200 操船システム
250 操船スタンド
251 ジャイロコンパス
252 ジャイロ方位表示部
253 オート操船部
254 ジョイスティックレバー
255 ジョイスティック操船部
256 手動操舵輪
257 手動操船部
258 ノンフォローアップ操舵レバー
259 ノンフォローアップ操船部
260 モード切替スイッチ
261 モード切替部
262 モニター
263 画像制御部
264 緊急停船押釦
265 緊急停船部
267 ジャイロ方位表示画像
268 方位表示部操作画像
269 オート操船操作画像
301 魚群探知時操船部
302 操縦モード切替部
303 操舵切替押釦
305 スタンド筺体
351 魚群探知装置
352 ターゲット位置通知部