特開2018-103895(P2018-103895A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-103895(P2018-103895A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20180608BHJP
   B29D 30/60 20060101ALN20180608BHJP
【FI】
   B60C11/00 C
   B29D30/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-253934(P2016-253934)
(22)【出願日】2016年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】能勢 昇一郎
【テーマコード(参考)】
4F212
4F215
【Fターム(参考)】
4F212AH30
4F212VD03
4F212VK34
4F215VD03
4F215VK34
(57)【要約】
【課題】リボン工法によりサイズ等の違いにも柔軟に対応することができ、しかも転がり抵抗を抑制する。
【解決手段】ストリップゴム11を螺旋状に巻回したゴム部材を有する。ストリップゴム11は、摩耗性能特化ゴムからなる外面層13と、燃費性能特化ゴムからなる内面層12とで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップゴムを螺旋状に巻回したゴム部材を有する空気入りタイヤであって、
前記ストリップゴムは、摩耗性能特化ゴムからなる外面層と、燃費性能特化ゴムからなる内面層とで構成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ストリップゴムは、前記内面層から前記外面層に向かって両側部から徐々に幅狭となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ストリップゴムは、幅方向の半分が重なるように巻回されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、導電性ゴムと非導電性ゴムの2層からなる複合ゴムリボンを螺旋状に巻回し、導電性ゴム同士を部分的に重複させることにより導電経路を形成するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また他の空気入りタイヤとして、キャップトレッドのタイヤ径方向内側に設けたベーストレッドを、表層部と内層部とで構成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、前者の空気入りタイヤでは、複合ゴムリボンを螺旋状に巻回した際の導電性の確保を特徴とするものであり、タイヤの転がり抵抗(RR:Rolling resistance)について考慮したものではない。
【0005】
また、後者の空気入りタイヤでは、幅広のベーストレッドを巻き付ける構成となっており、タイヤサイズや形状が相違すればそれに応じたものを用意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−43138号公報
【特許文献2】特開2013−233899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リボン工法によりサイズ等の違いにも柔軟に対応することができ、しかも転がり抵抗の少ない空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
ストリップゴムを螺旋状に巻回したゴム部材を有する空気入りタイヤであって、
前記ストリップゴムは、摩耗性能特化ゴムからなる外面層と、燃費性能特化ゴムからなる内面層とで構成されていることを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0009】
この構成により、ストリップゴムを巻回するだけで、外面側を摩耗性能特化ゴムからなる外面層で構成することができ、優れた耐摩耗性を発揮させることができる。また、内面側は燃費性能特化ゴムで構成されるので、転がり抵抗を抑制して燃費を改善することが可能となる。
【0010】
前記ストリップゴムは、前記内面層から前記外面層に向かって両側部から徐々に幅狭となるように形成されていればよい。
【0011】
前記ストリップゴムは、幅方向の半分が重なるように巻回されているのが好ましい。
【0012】
この構成により、ストリップゴムを巻回するだけで、タイヤ径方向に、摩耗性能特化ゴムからなる層と、燃費性能特化ゴムからなる層とを簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、摩耗性能特化ゴムからなる外面層と、燃費性能特化ゴムからなる内面層からなるストリップゴムを螺旋状に巻回するようにしたので、走行時の耐摩耗性を維持しつつ、転がり抵抗を抑制して燃費を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤの概略を示す子午線半断面図である。
図2図1のトレッド部及びショルダー部を形成するためのストリップゴムの横断面図である。
図3図2のストリップゴムを形成するための押出機の概略図である。
図4図2のストリップゴムを螺旋状に巻回した状態を示す断面図である。
図5】他の実施形態に係るストリップゴムの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0016】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの概略を示す子午線半断面図である。この空気入りタイヤは、タイヤ径方向の内径側に位置するインナーライナー1からタイヤ外径側に向かって、カーカスプライ2、ベルト層3、補強層4が設けられ、表面側がトレッド部5及びショルダー部6で構成されている。カーカスプライ2の両端部は、ビードコア7へと延び、タイヤ内側から外側へと折り返され、ビードフィラー8を挟み込む。なお、その他の構成部品については図示及び説明を省略する。
【0017】
ベルト層3は、タイヤ径方向の内側に配置される第1ベルト部9と、外側に配置される第2ベルト部10とで構成されている。第1ベルト部9は、タイヤ幅方向のショルダー部6の途中まで延びている。第2ベルト部10は、第1ベルト部9よりもタイヤ幅方向外側への形成範囲が狭くなっている。
【0018】
補強層4は、樹脂材料(例えば、ナイロン66)の繊維コードを所定間隔で複数列に配置してゴム材料で被覆することにより補強用ゴムとし、ベルト層3を覆うように螺旋状に巻回したものである。
【0019】
トレッド部5及びショルダー部6は、ストリップゴム11を巻回することにより形成される。
【0020】
図2に示すように、ストリップゴム11は横断面三角形状で、帯状に延びている。また、ストリップゴム11は、摩耗性能特化ゴムと燃費性能特化ゴムの2層で構成されている。燃費性能特化ゴムは、ストリップゴム11の底部すなわち内面層12を構成し、それ以外の部分すなわち外面層13は摩耗性能特化ゴムで構成されている。以下、ストリップゴム11で、内面層12が露出する面を底面14、外面層13及び内面層12の一部が露出する一方の斜面を第1斜面15、他方を第2斜面16と記載する。また、底面14の第1斜面15に対応する部分を第1半面17、第2斜面16に対応する部分を第2半面18と記載する。
【0021】
摩耗性能特化ゴムは、路面に直接接触する部分の使用に適した摩耗しにくいがグリップ力に優れた素材で構成されている。燃費性能特化ゴムは、高反発素材で構成され、タイヤの転がり抵抗を低減するように作用する。
【0022】
前記ストリップゴム11は、図3に示す2つの押出機19を利用して形成できる。
【0023】
各押出機19は、本体20内にスクリュー(図示せず)を備えている。スクリューは、モータ等の駆動装置21によって回転する。本体20には、ゴムを投入するためのホッパー22が設けられている。両押出機19の先端部分には口金23を有するダイ24が取り付けられている。ダイ24の前方には、一対の送りローラ25、圧着ローラ26及びドラム27が配置されている。
【0024】
前記構成の空気入りタイヤは、以下のようにして形成されるグリーンタイヤを加硫成型することにより得ることができる。
【0025】
グリーンタイヤの形成では、ドラム27の外周にインナーライナー1、ベルト層3及び補強層4を巻回する。そして、これらの外周にストリップゴム11を巻回する。
【0026】
巻回するストリップゴム11は次のようにして形成する。
【0027】
まず、各押出機19のホッパー22から摩耗性能特化ゴムと燃費性能特化ゴムをそれぞれ投入する。摩耗性能特化ゴムと燃費性能特化ゴムは、スクリューの回転により混練されながら前方へと送られ、ダイ24で合流し、先端の口金23から2層に重なった横断面三角形状のストリップゴム11として押し出される。
【0028】
ストリップゴム11は、一対の送りローラ25間を通過させた後、圧着ローラ26で押し付けながら先に巻回した補強層4の外周に巻回する。
【0029】
図4に示すように、ストリップゴム11は、底面14が補強層4の外周面に密着するようにして補強層4の中心部分から巻き始め、一方の側縁部に向かって螺旋状に巻回する。ここで、図4に示す断面位置を基準として、1周目の巻回部分を第1巻回部、2周目の巻回部分を第2巻回部、以下同様に、n周目の巻回部分を第n巻回部と記載する。
【0030】
ストリップゴム11の第1巻回部に対して第2巻回部を巻回すると、第1巻回部の第2斜面16に、第2巻回部の底面14の第1半面17が接触する。第2巻回部の残る半分が弾性変形して第2半面18が補強層4に接触する。この状態では、第1巻回部の内面層12と、第2巻回部の内面層12とが連続する。以下同様にして、第n巻回部の内面層12と第(n+1)巻回部の内面層12とを連続させる。
【0031】
続いて、ストリップゴム11の巻回位置が補強層4の側縁部を超えれば折り返し、今度は反対側の側縁部を超える位置まで巻回する。先に巻回した1層目に対して2層目も同様に巻回する。中心位置まで巻回すれば、再び直接補強層へと巻回し、反対側の側縁部を超えれば、折り返して2層目として巻回し、中心部分の巻き終わり位置で終端させる。
【0032】
このようにして巻回することにより得られたゴム部材では、1層目及び2層目のいずれでも燃費性能特化ゴムで構成される内面層12が内径側に位置し、摩耗性能特化ゴムで構成される外面層13が外径側に位置する。つまり、いずれも内面層12の燃費性能特化ゴムと外面層13の摩耗性能特化ゴムとで構成される2層構造となり、全体として4層構造となる。
【0033】
これによれば、タイヤ外径面を摩耗性能特化ゴムで構成される外面層13で構成することができる。また、タイヤ内径側に燃費性能特化ゴムで構成される内面層12を配置することができる。したがって、耐摩耗性とグリップ性に優れた外面層13を備えつつ、内面層12により転がり抵抗を低減することができる。
【0034】
また、内面層12と外面層13とを一体化した2層構造のストリップゴム11を巻回するだけで、ゴム部材であるトレッド部5及びショルダー部6を形成することができる。したがって、製造工程を簡略化して安価に製作することが可能となる。また、サイズ等の異なる種々の空気入りタイヤの製造にも柔軟に対応することができる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0036】
前記実施形態では、ストリップゴム11を螺旋状に巻回する際の巻回数については、図4に示す例のみを示したが、空気入りタイヤのタイヤ幅寸法の違いに応じて自由に変更することができる。
【0037】
前記実施形態では、ストリップゴム11を2層に巻回するようにしたが、1層あるいは3層以上で巻回するようにしてもよい。また、部分的に巻回数を多くしてタイヤ幅方向の積層数を相違させることもできる。
【0038】
前記実施形態では、ストリップゴム11の内面層12と外面層13の厚み、ストリップゴム自体の幅寸法については特に言及しなかったが、空気入りタイヤの仕様に応じて自由に設定することができる。
【0039】
前記実施形態では、内面層12をストリップゴム11の底面14だけでなく、第1斜面15及び第2斜面16にもその一部を露出させるようにしたが、図5に示すように、底面14のみに露出させるように構成することもできる。これによれば、ストリップゴム11を巻回することにより得られたトレッド部5及びショルダー部6には、内面層12すなわち燃費性能特化ゴムが露出しないように構成できる。
【符号の説明】
【0040】
1…インナーライナー
2…カーカスプライ
3…ベルト層
4…補強層
5…トレッド部
6…ショルダー部
7…ビードコア
8…ビードフィラー
9…第1ベルト部
10…第2ベルト部
11…ストリップゴム
12…内面層
13…外面層
14…底面
15…第1斜面
16…第2斜面
17…第1半面
18…第2半面
19…押出機
20…本体
21…駆動装置
22…ホッパー
23…口金
24…ダイ
25…送りローラ
26…圧着ローラ
27…ドラム
図1
図2
図3
図4
図5