【解決手段】 空気入りタイヤにおいては、第1陸溝の屈曲部は、陸部のタイヤ幅方向の一方側の第1端部領域に配置され、第1陸溝のタイヤ幅方向の一方側の端部は、周溝に連接され、第1陸溝のタイヤ幅方向の他方側の端部は、周溝から離れ、第1及び第2陸溝のそれぞれの屈曲部は、湾曲状に形成され、第1及び第2陸溝のそれぞれは、屈曲部のタイヤ幅方向の両側に直線状に延びる第1及び第2直線部を備え、第1及び第2陸溝のそれぞれにおいて、第1直線部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きと、第2直線部がタイヤ幅方向に対して傾斜する向きとは、反対向きである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、各図(
図3及び
図4も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
図1(以下の図も同様)において、第1の方向D1は、タイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D2である。なお、タイヤ幅方向D1の一方向(
図1の右方向)は、第1幅方向D11といい、他方向(
図1の左方向)は、第2幅方向D12という。また、タイヤ周方向D2の一方向(
図1の上方向)は、第1周方向D21といい、他方向(
図1の下方向)は、第2周方向D22という。
【0015】
そして、タイヤ径方向は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の直径方向である。また、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード部(図示していない)と、各ビード部からタイヤ径方向の外側に延びるサイドウォール部(図示していない)と、一対のサイドウォール部のタイヤ径方向の外端部に連接され、外表面がトレッド面を構成するトレッド部2とを備えている。なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着されており、タイヤ1の内部は、空気により加圧されている。
【0017】
トレッド部2は、タイヤ周方向D2に沿って延びる複数の周溝3,4と、複数の周溝3,4に区画される複数の陸部5〜7とを備えている。本実施形態においては、周溝3,4は、四つ備えられており、陸部5〜7は、五つ備えられている。なお、周溝3,4及び陸部5〜7の数量は、斯かる構成に限られない。
【0018】
タイヤ幅方向D1の最外側に配置される周溝3は、ショルダー周溝3といい、ショルダー周溝3よりもタイヤ幅方向D1の内側に配置される周溝4は、センター周溝4という。また、ショルダー周溝3よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置される陸部5は、ショルダー陸部5といい、ショルダー周溝3及びセンター周溝4の間に配置される陸部6は、メディエイト陸部6といい、センター周溝4,4の間に配置される陸部7は、センター陸部7という。
【0019】
陸部5〜7は、タイヤ周方向D2と交差するように延びる複数の陸溝8,9を備えている。陸溝8,9は、周溝3,4よりも幅狭である細溝と、細溝よりも幅狭であるサイプとを備えている。例えば、細溝は、幅が1.0mm以上である凹状部のことであり、サイプは、幅が1.0mm未満である凹状部のことである。このように、多数の陸溝8,9が備えられているため、タイヤ1のスノー操縦安定性能が優れている。
【0020】
ここで、陸部5〜7に対する陸溝8,9の構成について、説明する。なお、一例として、第1幅方向D11側のメディエイト陸部6について、
図2を参照しながら、説明する。
【0021】
まず、
図2に示すように、陸部6は、タイヤ幅方向D1の外側に配置される端部領域A1,A2と、端部領域A1,A2の間に配置される中央領域A3と、に区画される。なお、端部領域A1,A2及び中央領域A3は、タイヤ幅方向D1で均等に(1/3ずつに)区画されている。また、第1幅方向D11側の端部領域A1は、第1端部領域A1といい、第2幅方向D12側の端部領域A2は、第2端部領域A2という。
【0022】
端部領域A1,A2は、タイヤ幅方向D1の中央に配置される中央部A11,A21と、タイヤ幅方向D1の内側に配置される内側部A12,A22と、タイヤ幅方向D1の外側に配置される外側部A13,A23と、に区画される。なお、中央部A11,A21、内側部A12,A22、及び外側部A13,A23は、タイヤ幅方向D1で均等に(1/3ずつに)区画されている。
【0023】
したがって、中央部A11,A21は、周溝3,4の端縁から、陸部6の幅W1の1/9以上で且つ2/9以下の領域である。また、内側部A12,A22は、周溝3,4の端縁から、陸部6の幅W1の2/9を超えて且つ1/3以下の領域であり、外側部A13,A23は、周溝3,4の端縁から、陸部6の幅W1の1/9未満までの領域である。
【0024】
第1陸溝8は、第1周方向D21に向けて凸状となる屈曲部8aを一つ有するように延びている。また、第2陸溝9は、第2周方向D22に向けて凸状となる屈曲部9aを一つ有するように延びている。このように、第1陸溝8の屈曲部8aと第2陸溝9の屈曲部9aとが異なる方向に向けて凸状となっているため、特定の方向の力に対して、陸部6の剛性が小さくなることを抑制することができている。
【0025】
なお、第1幅方向D11側のメディエイト陸部6においては、第1陸溝8は、細溝であり、第2陸溝9は、サイプである。また、本実施形態においては、陸部5〜7に設けられる溝のうち、「陸溝」8,9は、屈曲部8a,9aを一つ有する溝のみをいい、それ以外の溝(屈曲部を有しない溝、屈曲部を複数有する溝)は、単なる「溝」10といい、区別している。
【0026】
メディエイト陸部6においては、第1陸溝8がタイヤ周方向D2で隣接する陸溝8,9のうち、少なくとも一方は、第2陸溝9となっている。例えば、第1幅方向D11側のメディエイト陸部6においては、第1陸溝8がタイヤ周方向D2で隣接する陸溝8,9は、両方とも第2陸溝9である。
【0027】
また、メディエイト陸部6においては、第2陸溝9がタイヤ周方向D2で隣接する陸溝8,9のうち、少なくとも一方は、第1陸溝8となっている。例えば、第1幅方向D11側のメディエイト陸部6においては、第2陸溝9がタイヤ周方向D2で隣接する陸溝8,9は、第1陸溝8及び第2陸溝9である。
【0028】
第1陸溝8の屈曲部8aは、湾曲状(曲線状)に形成されており、第1陸溝8は、屈曲部8aのタイヤ幅方向D1の両側に直線状に延びる直線部8b,8cを備えている。第2陸溝9の屈曲部9aは、湾曲状(曲線状)に形成されており、第2陸溝9は、屈曲部9aのタイヤ幅方向D1の両側に直線状に延びる直線部9b,9cを備えている。
【0029】
また、屈曲部8a,9aは、陸部6の端部領域A1,A2に配置されている。具体的には、第1陸溝8の屈曲部8aは、陸部6の第1端部領域A1に配置され、第2陸溝9の屈曲部9aは、陸部6の第2端部領域A2に配置されている。このように、屈曲部8a,9aが、陸部6の両方の端部領域A1,A2に配置されているため、陸部6のタイヤ幅方向D1の外側の剛性が大きくなると共に、陸部6のタイヤ幅方向D1における剛性差が生じることを抑制することができている。
【0030】
本実施形態においては、第1陸溝8の屈曲部8aは、陸部6の第1端部領域A1の中央部A11に配置され、第2陸溝9の屈曲部9aは、陸部6の第2端部領域A2の中央部A21に配置されている。即ち、周溝3,4の端縁から陸溝8,9の屈曲部8a,9aまでの距離W2,W3は、陸部6の幅W1の1/9以上で且つ2/9以下である。
【0031】
なお、屈曲部8a,9aのタイヤ幅方向D1の位置は、屈曲点8d,9dの位置とする。該屈曲点8d,9dは、屈曲部8a,9aが湾曲形状である場合には、陸溝8,9のうち、凸状の内側となる端縁上の位置で、且つ、屈曲部8a,9aのうち、タイヤ周方向D2の最端位置の点である。なお、屈曲点8d,9dは、屈曲部8a,9aが屈折形状(直線が折れ曲った形状)である場合には、陸溝8,9の凸状の内側となる端縁上の屈折位置(二つの直線の連結位置)の点である。
【0032】
例えば、第1陸溝8の屈曲部8aは、第1周方向21に向けて湾曲した凸状であるため、第1陸溝8のうち、第2周方向D22側の端縁上の位置で、且つ、屈曲部8aのうち、第1周方向D21の最端位置の点である。また、第2陸溝9の屈曲部9aは、第2周方向22に向けて湾曲した凸状であるため、第2陸溝9のうち、第1周方向D21側の端縁上の位置で、且つ、屈曲部9aのうち、第2周方向D22の最端位置の点である。
【0033】
なお、本実施形態に係るメディエイト陸部6のように、少なくとも半数の陸溝8,9の屈曲部8a,9aが、陸部6,7のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されている、という構成が好ましい。さらに、本実施形態に係るメディエイト陸部6のように、全ての陸溝8,9の屈曲部8a,9aが、陸部6,7のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されている、という構成がより好ましい。
【0034】
ところで、第1陸溝8の屈曲部8aが第1幅方向D11側の第1端部領域A1に配置されることで、第1陸溝8の第1幅方向D11側の剛性が大きくなる。そこで、第1陸溝8においては、第2幅方向D12側の剛性も大きくするために、第2幅方向D12側の直線部8cの端部は、周溝4から離れている。
【0035】
これにより、陸部6の第1幅方向D11と第2幅方向D12とにおいて、第1陸溝8に起因する剛性差が生じることを抑制することができている。なお、第1陸溝8の第2幅方向D12側の直線部8cの端部は、タイヤ幅方向D1において、第2端部領域A2まで延びている。そして、第1陸溝8の溝としての機能(例えば、排水機能、エッジ機能)を発揮させるために、第1幅方向D11側の直線部8bの端部は、周溝3に連接されている。
【0036】
同様に、第2陸溝9の屈曲部9aが第2幅方向D12側の第2端部領域A2に配置されることで、第2陸溝9の第2幅方向D12側の剛性が大きくなる。そこで、第2陸溝9においては、第1幅方向D11側の剛性も大きくするために、第1幅方向D11側の直線部9cの端部は、周溝3から離れている。
【0037】
これにより、陸部6の第1幅方向D11と第2幅方向D12とにおいて、第2陸溝9に起因する剛性差が生じることを抑制することができている。なお、第2陸溝9の第1幅方向D11側の直線部9cの端部は、タイヤ幅方向D1において、第1端部領域A1まで延びている。そして、第2陸溝9の溝としての機能(例えば、排水機能、エッジ機能)を発揮させるために、第2幅方向D12側の直線部9bの端部は、周溝4に連接されている。
【0038】
なお、本実施形態に係るメディエイト陸部6のように、少なくとも半数の陸溝8,9において、陸溝8,9の屈曲部8a,9aを有する側の端部が、周溝4,3に連接され、その反対側の端部が、周溝3,4から離れている、という構成が好ましい。さらに、本実施形態に係るメディエイト陸部6のように、全ての陸溝8,9において、斯かる構成であることが、より好ましい。
【0039】
また、第1陸溝8においては、周溝3に連接される第1幅方向D11側の直線部8bが、周溝4から離れている第2幅方向D12側の直線部8cよりも剛性が小さくなり易い。そこで、第1陸溝8においては、第1幅方向D11側の直線部8bがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1は、第2幅方向D12側の直線部8cがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2よりも、小さくなっている。
【0040】
これにより、第1幅方向D11側の直線部8bがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1が、小さくなることで、第1陸溝8がタイヤ幅方向D1の力を受けても、第1陸溝8の変形が大きくなることを抑制することができる。また、第2幅方向D12側の直線部8cがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2が、大きくなることで、第1陸溝8の長さが長くなるため、スノー操縦安定性能を向上させることができる。
【0041】
同様に、第2陸溝9においては、周溝4に連接される第2幅方向D12側の直線部9bが、周溝3から離れている第1幅方向D11側の直線部9cよりも剛性が小さくなり易い。そこで、第2陸溝9においては、第2幅方向D12側の直線部9bがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ3は、第1幅方向D11側の直線部9cがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ4よりも、小さくなっている。
【0042】
これにより、第2幅方向D12側の直線部9bがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ3が、小さくなることで、第2陸溝9がタイヤ幅方向D1の力を受けても、第2陸溝9の変形が大きくなることを抑制することができる。また、第1幅方向D11側の直線部9cがタイヤ幅方向D1と交差する角度θ4が、大きくなることで、第2陸溝8の長さが長くなるため、スノー操縦安定性能を向上させることができる。
【0043】
なお、陸溝8,9の屈曲部8a,9aの一方側又は他方側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1〜θ4は、陸溝8,9の屈曲点8d,9dを有する側の端縁がタイヤ幅方向D1と交差する角度である。また、屈曲部8a,9aが湾曲形状であって、屈曲部8a,9aの一方側又は他方側に直線部8b,8c,9b,9cが存在しない場合は、当該角度θ1〜θ4は、屈曲部8a,9aの端点における接線がタイヤ幅方向D1と交差する角度である。
【0044】
なお、当該角度θ1〜θ4は、屈曲部8a,9aにより陸溝8,9の剛性を大きくするために、10°以上であることが好ましく、また、15°以上であることがより好ましい。また、当該角度θ1〜θ4は、タイヤ幅方向D1の力を受けた際に陸溝8,9が過度に変形しないように、45°以下であることが好ましく、また、40°以下であることがより好ましい。
【0045】
なお、本実施形態に係るメディエイト陸部6のように、少なくとも半数の陸溝8,9において、陸溝8,9の屈曲部8a,9aに対して、周溝3,4に連接される側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1,θ3は、周溝4,3から離れている側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2,θ4よりも、小さい、という構成が好ましい。さらに、本実施形態に係るメディエイト陸部6のように、全ての陸溝8,9において、斯かる構成であることがより好ましい。
【0046】
図1に戻り、本実施形態においては、センター周溝4に連接されて且つ当該周溝4の両側に配置される陸溝8,9は、同じ方向D21,D22に凸状となる屈曲部8a,9aを備えている。例えば、第1幅方向D11側のセンター周溝4に連接されて且つ当該周溝4の両側に配置される陸溝9は、全て第2陸溝9であり、また、第2幅方向D12側のセンター周溝4に連接されて且つ当該周溝4の両側に配置される陸溝8は、全て第1陸溝8である。
【0047】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向D2に沿って延びる複数の周溝3,4と前記複数の周溝3,4に区画される複数の陸部5〜7とを有するトレッド部2を備え、少なくとも一つの前記陸部6,7は、タイヤ周方向D2の一方D21側に向けて凸状となる屈曲部8aを一つ有するように延びる少なくとも一つの第1陸溝8と、タイヤ周方向D2の他方D22側に向けて凸状となる屈曲部9aを一つ有するように延びる少なくとも一つの第2陸溝9と、を備える。
【0048】
斯かる構成によれば、少なくとも一つの陸部6,7は、屈曲部8a,9aを一つ有するように延びる少なくとも一つの第1陸溝8と第2陸溝9とを備えている。そして、第1陸溝8の屈曲部8aは、タイヤ周方向D2の一方D21側に向けて凸状となっており、第2陸溝9の屈曲部9aは、タイヤ周方向D2の他方D22側に向けて凸状となっている。
【0049】
これにより、第1陸溝8の屈曲部8aと第2陸溝9の屈曲部9aとが異なる方向D21,D22に向けて凸状となっているため、特定の方向の力に対して、陸部6,7の剛性が小さくなることを抑制することができる。したがって、例えば、旋回方向が異なることで、陸部6,7が異なる方向の力を受けても、陸部6,7の変形が大きくなることを抑制することができるため、タイヤ1のドライ旋回性能を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記陸溝8,9の前記屈曲部8a,9aは、前記陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置される、という構成である。
【0051】
斯かる構成によれば、陸溝8,9の屈曲部8a,9aが、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されているため、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなる。これにより、タイヤ1のドライ旋回性能をさらに向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、少なくとも一つの前記陸溝8の前記屈曲部8aは、前記陸部6のタイヤ幅方向D1の一方D11側の端部領域A1に配置され、少なくとも一つの前記陸溝9の前記屈曲部9aは、前記陸部6のタイヤ幅方向D1の他方D12側の端部領域A2に配置される、という構成である。
【0053】
斯かる構成によれば、陸溝8,9の屈曲部8a,9aが、陸部6のタイヤ幅方向D1の両方の端部領域A1,A2に配置されている。これにより、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の剛性が大きくなると共に、陸部6のタイヤ幅方向D1における剛性差が生じることを抑制することができる。したがって、タイヤ1のドライ旋回性能を向上させることができると共に、ドライ制動性能を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記陸溝8(9)の前記屈曲部8a(9a)は、前記陸部6のタイヤ幅方向D1の一方D11(D12)側に配置され、当該陸溝8(9)のタイヤ幅方向D1の一方D11(D12)側の端部は、前記周溝3(4)に連接され、当該陸溝8(9)のタイヤ幅方向D1の他方D12(D11)側の端部は、前記周溝4(3)から離れる、という構成である。
【0055】
斯かる構成によれば、陸溝8(9)の屈曲部8a(9a)が、陸部6のタイヤ幅方向D1の一方D11(D12)側に配置されているため、陸溝8(9)のタイヤ幅方向D1の一方D11(D12)側の剛性が大きくなる。そして、当該陸溝8(9)のタイヤ幅方向D1の他方D12(D11)側の端部が、周溝4(3)から離れているため、陸溝8(9)のタイヤ幅方向D1の他方D12(D11)側の剛性も、大きくすることができる。
【0056】
これにより、陸部6のタイヤ幅方向D1の一方D11(D12)側と他方D12(D11)側とにおいて、剛性差が生じることを抑制することができる。したがって、タイヤ1のドライ旋回性能をさらに向上させることができると共に、タイヤ1のドライ制動性能も向上させることができる。そして、当該陸溝8(9)のタイヤ幅方向D1の一方D11(D12)側の端部が、周溝3(4)に連接されることで、溝としての機能(排水機能、エッジ機能)が発揮される。
【0057】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記陸溝8(9)の前記屈曲部8a(9a)の一方D11(D12)側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1(θ3)は、前記陸溝8(9)の前記屈曲部8a(9a)の他方D12(D11)側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2(θ4)よりも、小さい、という構成である。
【0058】
斯かる構成によれば、周溝3(4)と連接する陸溝8(9)の一方D11(D12)側の剛性が小さくなり易いことに対して、陸溝8(9)の屈曲部8a(9a)の一方D11(D12)側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1(θ3)は、陸溝8(9)の屈曲部8a(9a)の他方D12(D11)側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2(θ4)よりも、小さくしている。
【0059】
これにより、陸溝8(9)の屈曲部8a(9a)の一方D11(D12)側の剛性が小さくなり過ぎることを抑制することができる。したがって、陸部6がタイヤ幅方向D1の力を受けても、陸溝8(9)の屈曲部8a(9a)の一方D11(D12)側の変形が大きくなることを抑制することができる。
【0060】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0061】
上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、所定の陸部6に設けられる全ての溝が、屈曲部8a,9aを一つ有する陸溝8,9である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、所定の陸部5〜7に設けられる溝においては、少なくとも一つの溝が、屈曲部8aを一つ有する第1陸溝8であり、少なくとも一つの溝が、屈曲部8a,9aを一つ有する第2陸溝9である、という構成であればよい。
【0062】
なお、上記実施形態に係るメディエイト陸部6及びセンター陸部7のように、所定の陸部6,7に設けられる溝において、半数以上の溝が、屈曲部8a,9aを一つ有する陸溝8,9である、という構成が好ましい。また、上記実施形態に係るメディエイト陸部6のように、所定の陸部6に設けられる溝おいて、全ての溝が、屈曲部8a,9aを一つ有する陸溝8,9である、という構成がさらに好ましい。
【0063】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、メディエイト陸部6及びセンター陸部7は、第1陸溝8及び第2陸溝9を備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、少なくとも一つの陸部が、第1陸溝8及び第2陸溝9を備えている、という構成でもよい。
【0064】
なお、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1のように、少なくともショルダー周溝3及びセンター周溝4間に配置される陸部6は、第1陸溝8及び第2陸溝9を備えている、という構成が好ましい。また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1のように、少なくとも周溝3,4間に配置される陸部6,7は、第1陸溝8及び第2陸溝9を備えている、という構成がさらに好ましい。
【0065】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝8,9の屈曲部8a,9aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、上記実施形態に係るセンター陸部7のように、陸溝8,9の屈曲部8a,9aは、陸部7のタイヤ幅方向D1の中央領域A3に配置されている、という構成でもよい。
【0066】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝8,9の屈曲部8a,9aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の両方の端部領域A1,A2に配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、陸溝8,9の屈曲部8a,9aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の一方の端部領域A1(A2)のみに配置されている、という構成でもよい。
【0067】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝8,9の屈曲部8a,9aを有する側の端部が、周溝4,3に連接され、その反対側の端部が、周溝3,4から離れている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0068】
例えば、陸溝8,9の屈曲部8a,9aを有する側の端部が、周溝4,3から離れており、その反対側の端部が、周溝3,4に連接されている、という構成でもよい。また、例えば、陸溝8,9の両側の端部が、周溝3,4に連接されている、という構成でもよい。また、例えば、陸溝8,9の両側の端部が、周溝3,4から離れている、という構成でもよい。
【0069】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、陸溝8,9の屈曲部8a,9aに対して、周溝3,4に連接される側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1,θ3は、周溝4,3から離れている側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2,θ4よりも、小さい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0070】
例えば、周溝3,4に連接される側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1,θ3は、周溝4,3から離れている側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2,θ4よりも、大きい、という構成でもよい。また、例えば、周溝3,4に連接される側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ1,θ3は、周溝4,3から離れている側がタイヤ幅方向D1と交差する角度θ2,θ4と、同じ、という構成でもよい。
【実施例】
【0071】
タイヤ1の構成と効果を具体的に示すため、タイヤ1の実施例とその比較例とについて、
図3〜
図5を参照しながら、以下に説明する。
【0072】
<ドライ旋回性能(コーナリングパワー)>
サイズが195/65R15である各タイヤに対して、直径が2500mmのドラム試験機を使用し、内圧200kPa、荷重4.2kNにおけるタイヤに発生するコーナリングフォースを測定し、スリップ角±1°におけるコーナリングフォースの値の差を角度の差で除して、コーナリングパワーとして求めた。比較例1の結果を100とする指数で評価し、数値が大きいほど、コーナリングパワーが大きく、ドライ旋回性能に優れていることを示す。
【0073】
<ドライ制動性能>
サイズが195/65R15である各タイヤを車両に装着させて、時速100キロメートルでドライ路面(アスファルト舗装路面)を走行させた状態からABSを作動させた際の、制動距離を測定し、その測定値の逆数を算出した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、ドライ制動性能が優れていることを示す。
【0074】
<スノー操縦安定性能>
サイズが195/65R15である各タイヤを車両に装着させて、スノー路面を、加速・制動・旋回・レーンチェンジをする走行を実施した。そして、ドライバーによる官能試験により、操縦安定性能を評価した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、スノー操縦安定性能が優れていることを示す。
【0075】
<実施例1>
実施例1は、
図1及び
図2に係る上記実施形態に係るタイヤ1である。具体的には、実施例1の各メディエイト陸部6においては、周溝3,4の端縁から陸溝8,9の屈曲部8a,9aまでの距離W2,W3が、陸部6の幅W1の2/11(1/9以上で且つ2/9以下)であるため、屈曲部8a,9aは、端部領域A1,A2の中央部A11,A21に配置されている。
【0076】
<実施例2>
実施例2は、実施例1に係るタイヤ対して、各メディエイト陸部6において、屈曲部8a,9aの位置を変更したタイヤである。具体的には、実施例2の各メディエイト陸部6においては、周溝3,4の端縁から陸溝8,9の屈曲部8a,9aまでの距離W2,W3が、陸部6の幅W1の7/22(2/9を超えて且つ1/3以下)であるため、屈曲部8a,9aは、端部領域A1,A2の内側部A12,A22に配置されている。
【0077】
<実施例3>
実施例3は、実施例1に係るタイヤ対して、各メディエイト陸部6において、屈曲部8a,9aの位置を変更したタイヤである。具体的には、実施例3の各メディエイト陸部6においては、周溝3,4の端縁から陸溝8,9の屈曲部8a,9aまでの距離W2,W3が、陸部6の幅W1の1/11(0を超えて且つ1/9未満)であるため、屈曲部8a,9aは、端部領域A1,A2の外側部A13,A23に配置されている。
【0078】
<実施例4>
実施例4は、実施例1に係るタイヤ対して、各メディエイト陸部6において、屈曲部8a,9aの位置を変更したタイヤである。具体的には、実施例4の各メディエイト陸部6においては、
図3に示すように、周溝3,4の端縁から陸溝8,9の屈曲部8a,9aまでの距離W2,W3が、陸部6の幅W1の1/2であるため、屈曲部8a,9aは、陸部6の中心であり、中央領域A3に配置されている。
【0079】
<比較例1>
比較例1は、実施例4に係るタイヤ対して、各メディエイト陸部6において、第2陸溝9のみを備えている構成に変更したタイヤである。即ち、比較例1の各メディエイト陸部6においては、
図4に示すように、屈曲部9aは、陸部6の中心であり、中央領域A3に配置されると共に、全て第2周方向D22に向けて凸状となっている。
【0080】
<評価結果>
図5に示すように、実施例1〜4は、比較例1に対して、スノー操縦安定性能を維持しつつ、ドライ旋回性能を向上させることができている。このように、陸部6は、第1陸溝8と第2陸溝9との両方を備えることで、スノー操縦安定性能を維持しつつ、ドライ旋回性能を向上させることができる。
【0081】
また、タイヤ1のより好ましい実施例について、以下に説明する。
【0082】
まず、実施例1〜3は、実施例4に対して、ドライ旋回性能及びドライ制動性能を向上させることができている。このように、ドライ旋回性能及びドライ制動性能を向上させるために、陸溝8,9の屈曲部8a,9aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2に配置される、という構成が好ましい。
【0083】
また、実施例1は、実施例2及び3に対して、ドライ旋回性能及びドライ制動性能を向上させることができている。このように、ドライ旋回性能及びドライ制動性能をさらに向上させるために、陸溝8,9の屈曲部8a,9aは、陸部6のタイヤ幅方向D1の端部領域A1,A2の中央部A11,A21に配置される、という構成が好ましい。即ち、周溝3,4の端縁から陸溝8,9の屈曲部8a,9aまでの距離W2,W3は、陸部6の幅W1の1/9以上で且つ2/9以下である、という構成が好ましい。