(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-104292(P2018-104292A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】マグネシウム化合物を有効成分とする医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/282 20060101AFI20180608BHJP
A61K 33/24 20060101ALI20180608BHJP
A61K 33/08 20060101ALI20180608BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20180608BHJP
A61K 33/12 20060101ALI20180608BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20180608BHJP
【FI】
A61K31/282
A61K33/24
A61K33/08
A61K33/10
A61K33/12
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-94833(P2015-94833)
(22)【出願日】2015年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000162489
【氏名又は名称】協和化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 孝輔
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB17
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA43
4C206MA48
4C206MA51
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA06
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】ガン予防または治療のための白金含有化学製剤を併用することを特徴とし、白金含有化学製剤起因性腎障害に優れた予防効果または治療効果を有するマグネシウム化合物を有効成分とする、医薬組成物を提供すること。
【解決手段】白金含有化学製剤と併用する医薬組成物であって、その医薬組成物はマグネシウム化合物を有効成分とし、患者に経口的にもしくは非経口的に投与させることによって、白金化合物起因性腎障害を軽減させ、患者を白金化合物排泄療法の時間的拘束や腎不全などの不利益から解放でき患者の負担を軽減する医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン予防または治療のための白金含有化学製剤を併用することを特徴とするマグネシウム化合物を有効成分とする医薬組成物。
【請求項2】
前記白金含有化学製剤は、シスプラチン(シス−ジアミンジクロロ白金)、オキサリプラチン(シス−1,2−シクロヘキサンジアミン−オキサレート白金)、カルボプラチン(シス−ジアミン−1,1−シクロブタンジカルボキサレート白金)およびネダプラチン(シス−ジアミングリコレート白金)からなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記マグネシウム化合物は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
経口投与するための、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤または経口ゼリー剤の形態である請求項1,2または3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
輸液、注射剤、吸入剤、坐剤、外用液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤または貼付剤の形態である請求項1,2または3のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤により起因される腎障害を軽減させるマグネシウム化合物含有医薬組成物に関する。さらに詳しくは、ガン予防または治療のための白金含有製剤を併用することを特徴とする有効成分としてマグネシウム化合物を含有する医薬組成物に関する。
【0002】
近年、悪性腫瘍を根治または維持し、延命や完治を目的とした様々な抗ガン剤治療がなされている。中でも白金化合物応答性悪性腫瘍(睾丸腫瘍、膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍、前立腺癌、卵巣癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、食道癌、子宮頸癌、神経芽細胞腫、胃癌、小細胞肺癌、骨肉腫、胚細胞腫瘍、悪性胸膜中皮腫、胆道癌)を有する患者に対して、白金含有化学製剤が処方されることも多い。この白金含有化学製剤は白金化合物応答性悪性腫瘍に強い抗ガン作用を有しており、治療には不可欠の抗ガン剤であるが、副作用として重篤な腎障害を示す場合も多く、本治療を受ける大半の患者では腎機能低下が散見される。
腎機能低下は軽度のものから重度のものまで様々だが、腎機能は不可逆的に悪化していくため慢性的な腎不全に陥らせることもしばしばみられ、被験者に対し負担や苦痛を伴い、生活の質(QOL)を大幅に低下させている。特に白金含有化学製剤が長期に渡り繰り返し投与される場合には、その蓄積毒性により、腎障害の発現した患者によっては用量減少や他の薬剤への変更を余儀なくされ、一部の患者では存命率の低下を引き起こす可能性もある。ゆえに腎機能の悪化は寿命を縮めることにつながりかねない重大な副作用とされている。
臨床の現場では、腎臓から白金化合物排泄を促す療法として、利尿薬を併用する療法や白金含有化学製剤投与前後で点滴等により水分を負荷するハイドレーション療法などが実施され、最近では負荷水分量および負荷時間を低減させたショートハイドレーション法も考案されているが、腎機能低下防止に関しては十分ではなく、また患者は長時間の医療行為に対する時間的拘束が強いられ、これに代わる腎障害軽減策が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、患者に経口的にもしくは非経口的に投与することにより白金含有化学製剤による腎障害を予防または軽減し、患者の負担を軽減させるとともにハイドレーション等の白金化合物排泄療法を受ける時間的拘束を和らげ、患者のQOLを改善する製剤の開発を進めた。
その結果、マグネシウム化合物の併用により、前記した白金化合物に起因する腎障害を予防または軽減できること、患者の負担や時間的拘束を和らげることが見いだされ、抗がん剤による治療の受容性向上が見込めるマグネシウム化合物含有医薬組成物を開発した。本発明のこの医薬組成物は、マグネシウム化合物の作用により白金化合物起因性腎障害を軽減させること、腎障害を軽減するため患者の白金化合物排泄療法の時間的拘束から解放できること、この医薬組成物は例えば錠剤や顆粒剤もしくは経口液剤の形態で服用できるので患者の負担を軽減し、かつ抗がん剤治療の受容性を向上できることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記知見に基づいて到達されるものであり、本発明によれば、下記の医薬組成物が提供される。
(1) ガン予防または治療のための白金含有化学製剤を併用することを特徴とするマグネシウム化合物を有効成分とする医薬組成物。
(2) 前記白金含有化学製剤は、シスプラチン(シス−ジアミンジクロロ白金)、オキサリプラチン(シス−1,2−シクロヘキサンジアミン−オキサレート白金)、カルボプラチン(シス−ジアミン−1,1−シクロブタンジカルボキサレート白金)およびネダプラチン(シス−ジアミングリコレート白金)からなる群より選択される少なくとも一種を含む前記(1)記載の医薬組成物。
(3) 前記マグネシウム化合物は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも1種である前記(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4) 経口投与するための、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤または経口ゼリー剤の形態である前記(1),(2)または(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5) 輸液、注射剤、吸入剤、坐剤、外用液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤または貼付剤の形態である前記(1),(2)または(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0005】
本発明の医薬組成物は、白金含有化学製剤を併用することによるガンの治療前または治療中において、マグネシウム化合物の作用により白金化合物起因性腎障害を抑制または軽減させること、腎障害を抑制または軽減するための患者の白金化合物排泄療法の時間的拘束から解放できること、この医薬組成物は例えば錠剤や顆粒剤のように経口製剤の形態で服用でき、もしくは輸液や注射剤のように非経口的に投与できるので患者の負担を軽減し、かつ抗がん剤治療の受容性を向上できるという利点を有している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
臨床の現場では、抗がん剤として白金化合物により腎障害が引き起こされることが確認されており、投与した白金化合物を速やかに排泄除去することによる方法が実施されている。詳しくは、腎臓から白金化合物排泄を促す療法として、利尿薬を併用する療法や白金含有化学製剤投与前後で点滴等により水分を負荷するハイドレーション療法、近年では負荷水分量および負荷時間を低減させたショートハイドレーション法も考案されている。しかしながら、これらに一定の効果が認められるものの、腎機能低下防止に関しては十分ではなく、さらに患者は長時間の医療行為に対する時間的拘束が強いられ、これに代わる腎障害軽減策が求められていた。
本発明のマグネシウム化合物含有医薬組成物は、経口で簡便に服用できること、経口以外でも投与できること、白金化合物による治療前に投与されることで白金化合物起因性腎障害を軽減できることを見出した。これらにより患者は白金化合物による負担が軽減され、かつ抗がん剤治療の受容性も向上できることが判明した。
【0007】
本発明の医薬組成物はマグネシウム化合物を有効成分としている。白金化合物起因性腎障害を軽減するために有効成分のマグネシウム化合物は投与量として、1回当たりマグネシウム金属換算として、下限として10mg、好ましくは30mg、さらに好ましくは50mg、上限として650mg、好ましくは600mg、さらに好ましくは500mgを服用するのが望ましい。また望ましくは本発明の医薬組成物を投与後の血中マグネシウム濃度が、1回当たり下限として0.75mmol/L、好ましくは0.8mmol/L、より好ましくは0.9mmol/L、上限として2.3mmol/L、好ましくは2.2mmol/L、さらに好ましくは2.0mmol/Lに維持されるよう投与するのが好ましい。
前述したマグネシウムの量は、1回の投与に使用された場合に血液中に維持される総量であって、緩やかに吸収できる徐放性製剤としてもしくは2〜3度に分割して投与することもできる。徐放性もしくは分割して服用する場合、血液中のマグネシウム濃度が下限として0.75mmol/L、好ましくは0.8mmol/L、より好ましくは0.9mmol/L、上限として2.3mmol/L、好ましくは2.2mmol/L、さらに好ましくは2.0mmol/Lに維持できれば各1度毎に投与する医薬の量は均等である必要はなく、適宜変更してもよい。また、本発明の医薬は、白金含有化学製剤投与の1〜3日前、より好ましくは1週間前より継続して投与すること、さらには白金含有化学製剤投与後も継続して投与することができる。
【0008】
本発明の医薬組成物は、有効成分がマグネシウム化合物であるので、経口投与する際には複数のマグネシウム塩を選択することができ、吸収されるマグネシウム量に合わせて投与量を特定する必要がある。消化管を介さずに投与する場合には可溶性で存在する複数のマグネシウム塩を選択することができ、維持されるマグネシウム量に合わせて投与量を特定する必要がある。これらは適切に管理することにより血中マグネシウム濃度を維持したとき、腎障害の軽減効果に優れている。また有効成分のマグネシウムは白金含有化学製剤と直接相互作用せず、白金含有化学製剤の有効性に影響しない一方、血中のマグネシウムの作用により毒性を示す白金化合物起因性腎障害を著しく軽減させる。
【0009】
本発明の医薬組成物は、有効成分としてマグネシウム化合物を含有しており、種々の形態で投与してよいが、好ましくは錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、輸液、注射剤、吸入剤、坐剤、貼付剤のいずれであってもよい。これらの形態の中で患者の使用性や受容性を考慮すると、錠剤、散剤、輸液、注射剤または貼付剤となる。また、医薬添加物もしくは食品添加物として用いてもよい。
例えば、マグネシウム化合物を含有する医薬組成物は、マグネシウム化合物の含有割合が、下限として0.1重量%、好ましくは0.5重量%、好ましくは1重量%、上限として99.5重量%、好ましくは95重量%、さらに好ましくは85重量%であるのが有利である。
【0010】
本発明の医薬組成物に含有されるマグネシウム化合物は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ハイドロタルサイトのいずれであってもよいが、これらの中で患者の服用性や受容性を考慮すると、好ましくは酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ハイドロタルサイトとなる。また経口的に投与する場合には形態を問わないが、非経口的に投与する場合には可溶性マグネシウム塩が好ましい。
【0011】
前記マグネシウム化合物のいくつかの代表例について1日当たりの摂取量を説明すると、酸化マグネシウムの場合、下限は0.5g、好ましくは1g、上限は6g、好ましくは5gである。水酸化マグネシウムの場合、下限は1g、好ましくは1.5g、上限は8g、好ましくは7gである。硫酸マグネシウムの場合、下限は1.5g、好ましくは3g、上限は20g、好ましくは15gである。炭酸マグネシウムの場合、下限は1g、好ましくは1.5g、上限は12g、好ましくは10gである。ケイ酸マグネシウムの場合、下限は2g、好ましくは4.5g、上限は25g、好ましくは20gである。ハイドロタルサイトの場合、下限は10g、好ましくは20g、上限は120g、好ましくは100gである。これらの下限および上限の値は概括的な量であり、白金含有化学製剤による腎障害の程度や患者の状態によって変化することを理解すべきである。
【0012】
本発明において、前記マグネシウム化合物を有効成分とする医薬組成物と併用する白金含有化学製剤は、白金化合物応答性悪性腫瘍に対して強い抗ガン作用を有し、種々の腫瘍の治療に不可欠の抗ガン剤として知られ広く利用されている。前記白金含有化学製剤として、代表的には、シスプラチン(シス−ジアミンジクロロ白金)、オキサリプラチン(シス−1,2−シクロヘキサンジアミン−オキサレート白金)、カルボプラチン(シス−ジアミン−1,1−シクロブタンジカルボキサレート白金)およびネダプラチン(シス−ジアミングリコール白金)が挙げられる。
【0013】
これら白金含有化学製剤は、通常生理食塩液またはブドウ糖−食塩液に混和し、点滴静注により投与される。白金含有化学製剤の用法および用量は、その製剤の種類、腫瘍の種類、患者の状態、他の腫瘍剤との併用の有無などにより、投与量や回数は一定の範囲ではない。具体的には日本薬局方に規定されている。白金含有化学製剤の前記代表例について、概括的に説明すると、シスプラチンの場合、下限は1日1回10mg/m
2(体表面積、以下“m
2”の単位は体表面積を示す)、好ましくは15mg/m
2であり、上限は100mg/、好ましくは90mg/m
2である。オキサリプラチンの場合、1日1回80〜150mg/m
2であり、カルボプラチンの場合、1日1回300〜400mg/m
2であり、ネダプラチンの場合、1日1回、80〜100mg/m
2である。
【0014】
実施例1
(i)試験方法
8週齢のSD系雄ラットに酸化マグネシウム含有餌を与えた。この餌は1日量として酸化マグネシウム400mg/kgを含有したものであった。一方シスプラチン7.0mg/kgを腹腔内投与し、採血して腎機能を評価した。食餌はシスプラチン投与1週間前から与えて馴化し、シスプラチン投与後から試験終了まで継続した。採血時点はシスプラチン投与前、投与後1、3、5、7、14、21、28日目とし、腎機能評価項目はクレアチニン(Cre)および血中尿素窒素(BUN)とした。
(ii)使用した酸化マグネシウム
本評価には食品添加物として販売されている酸化マグネシウムを動物用飼料に練りこんだ飼料を使用し、1日の食餌量に相当する飼料を餌として与えた。
【0015】
参考例1:
前記実施例1において、酸化マグネシウムを含有しない通常の餌を与えた以外、実施例1と同様にして腎機能を評価した。
以下実施例1および参照例1の結果をまとめて下記表1および2に示した。
【0018】
実施例1と参照例1の評価の対比
実施例1では、クレアチニンの上昇および血中尿素窒素の上昇が明らかに抑制され、シスプラチンによる腎障害を軽減することが示された。また、マグネシウムが血中に移行しても速やかに排泄されるため蓄積しなかったことから、MgOを含む食餌の有効性が示された。
参照例1では腎機能低下に伴い、クレアチニン及び血中尿素窒素は著しく上昇し、シスプラチンによる細胞障害で細胞から漏出したマグネシウムが血液中に移行することによる血中Mg値の上昇を認めた。
【0019】
実施例2
(i)試験方法
8週齢のSD系雄ラットに通常餌を与えた。またラットには酸化マグネシウム200 mg/kgを経口投与した。一方シスプラチン7.0mg/kgを腹腔内投与し、採血して腎機能を評価した。投与する酸化マグネシウムは、酸化マグネシウム錠500mgを0.5% CMC-Naに懸濁し40 mg/mLとした後、5 mL/kgをラットへ1日1回経口投与した。酸化マグネシウムの経口投与はシスプラチン投与3日前から投与1日後まで継続した。採血時点はシスプラチン投与前、投与後1、3、5、7、14、21、28日目とし、腎機能評価項目はクレアチニン(Cre)および血中尿素窒素(BUN)とした。
(ii)使用した酸化マグネシウム
本評価には酸化マグネシウム製剤として1錠あたり500mgの酸化マグネシウムを含有する錠剤の形状の酸化マグネシウム製剤を使用し、ラットに投与するにあたり懸濁崩壊させたものを使用した。使用した酸化マグネシウムは0.5〜10μmの平均2次粒子径をもつ酸化マグネシウム粒子からなる。
【0020】
参照例2:
前記実施例2において、酸化マグネシウムを経口投与しない以外は実施例2と同様にして腎機能を評価した。
以下実施例2および参照例2の結果をまとめて下記表3および4に示した。
【0023】
実施例2と参照例2の評価の対比
実施例2では、参照例2と比較し、クレアチニンの上昇および血中尿素窒素の上昇が抑制され、シスプラチンによる腎障害を軽減することが示された。また、酸化マグネシウムの経口投与に伴う血中マグネシウム値の上昇も認められず、酸化マグネシウム経口投与の有効性が示された。
一方参照例2では腎機能低下に伴い、クレアチニン及び血中尿素窒素は著しく上昇した。