特開2018-104556(P2018-104556A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-104556マスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法
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  • 特開2018104556-マスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-104556(P2018-104556A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】マスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/18 20060101AFI20180608BHJP
   C08C 1/14 20060101ALI20180608BHJP
   C08L 21/02 20060101ALI20180608BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20180608BHJP
   B29B 7/42 20060101ALI20180608BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20180608BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180608BHJP
【FI】
   C08J3/18CEQ
   C08C1/14
   C08L21/02
   C08J3/20 Z
   B29B7/42
   B29B9/12
   B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-252602(P2016-252602)
(22)【出願日】2016年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 亮人
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AC04
4F070AC05
4F070AC13
4F070AC40
4F070AC50
4F070AE01
4F070AE03
4F070AE08
4F070AE30
4F070EA04
4F070FB06
4F070FC05
4F201AA45
4F201AB03
4F201AB07
4F201AC08
4F201AH20
4F201AR17
4F201BA01
4F201BK13
4F201BK25
4F201BL43
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002DA036
4J002DA040
4J002DE100
4J002DE146
4J002DE266
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002EF050
4J002EV037
4J002EV047
4J002FD016
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD207
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ムーニー粘度を低減可能なマスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】充てん剤を含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、凝固物を脱水する工程と、脱水後の凝固物を押出機で乾燥させながら可塑化する工程とを含み、脱水後の凝固物を乾燥させながら可塑化する工程において、凝固物がしゃく解剤を含むマスターバッチの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充てん剤を含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、
前記凝固物を脱水する工程と、
脱水後の前記凝固物を押出機で乾燥させながら可塑化する工程と
を含み、
脱水後の前記凝固物を乾燥させながら可塑化する前記工程において、前記凝固物がしゃく解剤を含んでいる、
マスターバッチの製造方法。
【請求項2】
脱水後の前記凝固物を乾燥させながら可塑化する前記工程において、前記しゃく解剤の量は、前記凝固物中のゴム100質量部に対して0.05質量部〜3質量部である、請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法を含む、タイヤの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスターバッチの製造方法およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエットマスターバッチは、たとえば、天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとを混合し、凝固させ、凝固物を、押出機で脱水し、乾燥させながら可塑化させるという手順(以下、「従来手順」という。)で製造される。
【0003】
このような手順で製造されたウエットマスターバッチは、ドライマスターバッチと比べて、加硫ゴムの発熱性が低いものの、ムーニー粘度が高い傾向がある。ドライマスターバッチとは、ゴムにカーボンブラックを乾式で練り込んだものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−147574号公報
【特許文献2】特表2011−511148号公報
【特許文献3】特開2010−65126号公報
【特許文献4】特開2016−22618号公報
【特許文献5】特開2010−270200号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、充てん剤を含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、凝固物を脱水する工程と、脱水後の凝固物を押出機で乾燥させながら可塑化する工程とを含み、脱水後の凝固物を乾燥させながら可塑化する工程において、凝固物がしゃく解剤を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1で使用する押出機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、従来手順と比べてムーニー粘度を低減可能なマスターバッチの製造方法を提供する。さらに本開示は、タイヤの製造方法を提供する。
【0008】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、充てん剤を含む凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程と、凝固物を脱水する工程と、脱水後の凝固物を押出機で乾燥させながら可塑化する工程とを含み、脱水後の凝固物を乾燥させながら可塑化する工程において、凝固物がしゃく解剤を含んでいる。
【0009】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、従来手順と比べてムーニー粘度を低減できる。本開示では、脱水後の凝固物を押出機で乾燥させながら可塑化する工程において、凝固物がしゃく解剤を含んでいるため、この工程における加熱とせん断とによってゴムの分子量を低下させ、ムーニー粘度を低下させることができるからである。
【0010】
凝固物を脱水する工程においては、凝固物がしゃく解剤を含んでいることが可能であるものの、しゃく解剤を含んでいないことが好ましい。凝固物が、この工程でしゃく解剤を含んでいる場合、しゃく解剤が水相に溶出し、ムーニー粘度の低減効果が落ちるからである。
【0011】
脱水後の凝固物を乾燥させながら可塑化する工程において、しゃく解剤の量は、凝固物中のゴム100質量部に対して0.05質量部〜3質量部であることが好ましい。0.05質量部未満は、ムーニー粘度の低減効果が小さすぎる傾向がある。3質量部をこえると、加硫ゴムの発熱性が悪化する傾向がある。
【0012】
本開示におけるマスターバッチの製造方法を、本開示におけるタイヤの製造方法は含む。
【0013】
本開示において、充てん剤とは、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、ゴム工業において通常使用される無機充てん剤を意味する。
【0014】
実施形態1
ここからは、実施形態1で本開示を説明する。実施形態1は、充てん剤としてカーボンブラックを使用する。
【0015】
実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックとゴムラテックスとを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含む。カーボンブラックとゴムラテックスとを混合することによって、カーボンブラックの再凝集を防止できる。カーボンブラックの表面の一部または全部に極薄いラテックス相が生成し、ラテックス相がカーボンブラックの再凝集を抑制すると考えられるからである。カーボンブラックとしては、たとえばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックのほか、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックスラリーをつくる工程のゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、たとえば200万以上である。合成ゴムラテックスは、たとえばスチレン−ブタジエンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスである。ゴムラテックスの固形分(ゴム)濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。固形分濃度の上限は、たとえば5質量%、好ましくは2質量%、さらに好ましくは1質量%である。カーボンブラックとゴムラテックスとは、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。
【0016】
カーボンブラックスラリーでは、カーボンブラックが水中に分散している。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラックの量は、カーボンブラックスラリー100質量%において、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラック量の上限は、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%である。
【0017】
カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し、凝固処理前ゴムラテックスを得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、カーボンブラックスラリーをつくる工程におけるゴムラテックスの固形分濃度よりも高いことが好ましい。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。ゴムラテックスにおける固形分濃度の上限は、たとえば60質量%、好ましくは40質量%、さらに好ましくは30質量%である。カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとは、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。
【0018】
凝固処理前ゴムラテックスでは、ゴム粒子、カーボンブラックなどが水中に分散している。凝固処理前ゴムラテックスは、しゃく解剤を含んでいない。
【0019】
凝固処理前ゴムラテックスを凝固し、凝固物を得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。凝固を起こすために、凝固処理前ゴムラテックスに凝固剤を添加できる。凝固剤は、たとえば酸である。酸としてギ酸、硫酸などを挙げることができる。凝固処理前ゴムラテックスを凝固することで得られた凝固物は水を含む。
【0020】
図1に示す押出機20で凝固物を脱水する工程と、脱水後の凝固物を押出機20で乾燥させながら可塑化する工程とを、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。脱水後における凝固物の水分量は、好ましくは15%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0021】
押出機20は、単軸押出機であり、スクリュー23と外筒27とを備える。外筒27は、第一外筒25と第二外筒26とを含む。第二外筒26は、第一外筒25の下流に位置する。第一外筒25には、スリット24が設けられている。第一外筒25は、押出機20の脱水領域21を構成する。第二外筒26は、押出機20の乾燥領域22を構成する。押出機20は、ジャケット28をさらに備えることができる。第一外筒25の供給口29から投入された凝固物は、脱水領域21において圧搾・蒸発で脱水され、乾燥領域22で乾燥されつつ可塑化され、排出口30から排出される。
【0022】
脱水後の凝固物を乾燥させながら可塑化する工程において、凝固物にしゃく解剤を添加する。しゃく解剤としては、たとえば、2,2’−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)、2−ベンズアミドチオフェノールの亜鉛塩、キシリルメルカプタン、β−ナフチルメルカプタン、ペンタクロロチオフェノール(PCTP)などを挙げることができる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。しゃく解剤は、ベルトフィーダーで添加できる。しゃく解剤 添加時における凝固物中の水分量は、好ましくは15%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0023】
すなわち、脱水後の凝固物を乾燥させながら可塑化する工程において、凝固物がしゃく解剤を含んでいる。この工程におけるしゃく解剤の量は、凝固物中のゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上である。0.05質量部未満であると、ムーニー粘度の低減効果が小さい傾向がある。しゃく解剤量の上限は、凝固物中のゴム100質量部に対して、好ましくは3質量部である。3質量部をこえると、発熱性が悪化する傾向がある。
【0024】
可塑化後の凝固物を必要に応じて成型し、マスターバッチを得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。
【0025】
マスターバッチは、ゴムを含む。ゴムは、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどである。マスターバッチにおける天然ゴムの量は、ゴム100質量%において、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0026】
マスターバッチは、カーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0027】
マスターバッチと、配合剤と、必要に応じてマスターバッチ由来のゴム以外のゴムとを混合機で乾式混合し、混合物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。配合剤は、たとえばステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤などである。老化防止剤として、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などを挙げることができる。マスターバッチ由来のゴム以外のゴムとして、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。混合機として密閉式混合機、オープンロールなどを挙げることができる。密閉式混合機としてバンバリーミキサー、ニーダーなどを挙げることができる。
【0028】
混合物に加硫系配合剤を添加し、加硫系配合剤を混合物に練り込み、ゴム組成物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。加硫系配合剤として硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などを挙げることができる。硫黄として粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを挙げることができる。加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを挙げることができる。
【0029】
ゴム組成物はゴム成分を含む。ゴム成分として、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。天然ゴムの量は、ゴム成分100質量%において、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。天然ゴム量の上限は、たとえば100質量%である。
【0030】
ゴム組成物は、カーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0031】
ゴム組成物は、ステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などをさらに含むことができる。硫黄の量は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分換算で好ましくは0.5質量部〜5質量部である。加硫促進剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜5質量部である。
【0032】
ゴム組成物の用途は、トレッド、サイドウォール、チェーハー、ビードフィラーなどのタイヤ部材用途である。
【0033】
ゴム組成物からなるタイヤ部材を備える生タイヤをつくる工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法は含む。生タイヤを加熱する工程を実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。実施形態1の方法で得られたタイヤは、空気入りタイヤであることができる。
【0034】
実施形態1の変形例1をここで説明する。実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックとゴムラテックスとを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含むものの、実施形態1の変形例は、この工程の代わりに、カーボンブラックと水とを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含む。
【0035】
実施形態1の変形例2をここで説明する。実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、凝固物の脱水・乾燥・可塑化を押出機20でおこなうものの、実施形態1の変形例2は、脱水用の押出機を用いて圧搾・蒸発で凝固物を脱水し、脱水後の凝固物を、乾燥・可塑化用の押出機で乾燥させながら可塑化する。
【0036】
実施形態1の変形例3をここで説明する。実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、脱水後の凝固物を乾燥させながら可塑化する工程において、凝固物にしゃく解剤を添加するものの、実施形態1の変形例3は、凝固物を押出機で脱水する工程において、凝固物にしゃく解剤を添加する。
【実施例】
【0037】
以下に、本開示の実施例を説明する。
【0038】
原料・薬品を次に示す。
天然ゴムラテックス(Dry Rubber Content=31.2% Mw=23.2万) Golden Hope社製
凝固剤 ギ酸(一級85%)ナカライテスク社製 (10%溶液を希釈し、pH1.2に調整し、使用した)
カーボンブラック 「シースト3」(N330)東海カーボン社製
天然ゴム 「RSS#3」タイ製
亜鉛華 「1号亜鉛華」三井金属社製
ステアリン酸 「ルナックS−20」花王社製
老化防止剤A 「ノクラック6C」大内新興化学工業社製
老化防止剤B 「RD」大内新興化学工業社製
しゃく解剤 「ノクタイザーSZ」大内新興化学工業社製
しゃく解剤 「ノクタイザーSD」大内新興化学工業社製
ワックス 「OZOACE0355」日本精蝋社製
硫黄 「粉末硫黄」鶴見化学工業社製
加硫促進剤 「ノクセラーNS−P」大内新興化学工業社製
【0039】
実施例1・3〜5におけるマスターバッチの作製
Golden Hope社製の天然ゴムラテックスに25℃で水を加え、固形分(ゴム)濃度を25質量%に調整した。カーボンブラックを水に添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスに表1にしたがって加え、撹拌し、凝固剤をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製スクリュープレスV−02型)にかけ、凝固物の水分率が10質量%以下になるまで160℃で脱水した(第1脱水工程)。脱水後の凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機にさらにかけ、凝固物の水分率が3質量%以下になるまで160℃で凝固物を乾燥させながら可塑化し、マスターバッチを得た(第2脱水工程)。第2脱水工程では、スクイザー式1軸押出脱水機の投入口からしゃく解剤を、ベルトフィーダーを用いて一定速度で投入した。
【0040】
実施例2・6におけるマスターバッチの作製
第2脱水工程でしゃく解剤を投入せずに第1脱水工程でしゃく解剤を投入したこと以外は、実施例1と同じ手順で、マスターバッチを作製した。
【0041】
比較例5・6におけるマスターバッチの作製
第2脱水工程でしゃく解剤を投入せずに、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスにしゃく解剤を添加したこと以外は、実施例1と同じ手順で、マスターバッチを作製した。
【0042】
比較例1におけるマスターバッチの作製
しゃく解剤を投入しなかった以外は、実施例1と同じ手順で、マスターバッチを作製した。
【0043】
比較例2におけるマスターバッチの作製
天然ゴムにカーボンブラックを表1にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、マスターバッチを得た。
【0044】
比較例3・4におけるマスターバッチの作製
天然ゴムにカーボンブラックとしゃく解剤とを表1にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、マスターバッチを得た。
【0045】
各例における未加硫ゴムの作製
マスターバッチに、硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表1にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
【0046】
ムーニー粘度
JIS K6300に準じて、東洋精機製作所製のロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱した後にローターを回転させ、回転開始から4分後のトルク値をムーニー単位で記録した。比較例1のムーニー粘度を100とした指数で、各例のムーニー粘度を表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
【0047】
損失正接tanδ
未加硫ゴムを150℃で30分間加硫し、加硫ゴムの発熱性を、JIS K−6394に準じてtanδで評価した。tanδは、UBM社製レオスペクトロメーターE4000使用し、50Hz、80℃、動的歪2%の試験で求めた。比較例1のtanδを100とした指数で、各例のtanδを表示した。指数が小さいほど発熱性が低く、良好である。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例7におけるマスターバッチの作製
Golden Hope社製の天然ゴムラテックスに25℃で水を加え、固形分(ゴム)濃度0.5質量%の希薄天然ゴムラテックスと、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスとを得た。希薄天然ゴムラテックスにカーボンブラックを添加し、シルバーソン社製の攪拌機「フラッシュブレンド」を用いて3600rpm、30minで撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスに表2にしたがって加え、カワタ社製の混合器(スーパーミキサーSMV‐20)で撹拌し、凝固剤をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製スクリュープレスV−02型)にかけ、凝固物の水分率が10質量%以下になるまで160℃で脱水した(第1脱水工程)。脱水後の凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機にさらにかけ、凝固物の水分率が3質量%以下になるまで160℃で凝固物を乾燥させながら可塑化し、マスターバッチを得た(第2脱水工程)。第2脱水工程では、スクイザー式1軸押出脱水機の投入口からしゃく解剤を、ベルトフィーダーを用いて一定速度で投入した。
【0050】
比較例7におけるマスターバッチの作製
しゃく解剤を投入しなかった以外は、実施例7と同じ方法で、マスターバッチを作製した。
【0051】
各例における未加硫ゴムの作製
マスターバッチに、硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表2にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
【0052】
ムーニー粘度
JIS K6300に準じて、東洋精機製作所製のロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱した後にローターを回転させ、回転開始から4分後のトルク値をムーニー単位で記録した。比較例7のムーニー粘度を100とした指数で、実施例7のムーニー粘度を表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
【0053】
損失正接tanδ
未加硫ゴムを150℃で30分間加硫し、加硫ゴムの発熱性を、JIS K−6394に準じてtanδで評価した。tanδは、UBM社製レオスペクトロメーターE4000使用し、50Hz、80℃、動的歪2%の試験で求めた。比較例7のtanδを100とした指数で、実施例7のtanδを表示した。指数が小さいほど発熱性が低く、良好である。
【0054】
【表2】
【0055】
第2脱水工程におけるしゃく解剤の添加で、ムーニー粘度が低減した。たとえば、第2脱水工程におけるしゃく解剤0.05質量部の添加では、ムーニー粘度が8ポイント低減した(比較例1・実施例3参照)。第2脱水工程におけるしゃく解剤0.1質量部の添加では、ムーニー粘度が20ポイント低減した(比較例1・実施例4参照)。第2脱水工程におけるしゃく解剤3質量部の添加では、ムーニー粘度が19ポイント低減した(比較例1・実施例5参照)。
【0056】
第1脱水工程におけるしゃく解剤の添加でも、ムーニー粘度が低減した。第1脱水工程におけるしゃく解剤0.1質量部の添加では、ムーニー粘度が3ポイント低減した(比較例1・実施例6参照)。
図1