【課題】カッターヘッドの回転を停止させることなくドレンカッターによってドレン材を切断することができ、地中にドレン材が埋め込まれた地帯において高い作業効率での地山の掘削を可能にするシールド掘進機を提供する。
【解決手段】掘進機本体2と、掘進機本体2の掘削方向前部に設けられて地山を掘削するメインカッター11及びサブカッター14と、掘進機本体2の上縁部であって掘削方向から臨んでメインカッター11及びサブカッター14と重複しない領域に、メインカッター11及びサブカッター14より掘削方向に突出して設けられ、地山に埋め込まれたドレン材Dを切断するドレンカッター19と、を備えるシールド掘進機1。
前記保護ルーフは、その掘削方向前端部が、前記掘進機本体の外側から内側に臨んで前記掘進機本体からの突出長さが短くなるように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシールド掘進機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(第一実施形態に係るシールド掘進機)
まず、本発明の第一実施形態に係るシールド掘進機の構成について説明する。
図1及び
図2は、本発明の第一実施形態に係るシールド掘進機1を示す図であって、
図1は概略縦断面図、
図2は正面側から見た模式図である。
【0016】
シールド掘進機1は、
図1及び
図2に示すように、中空の掘進機本体2と、掘進機本体2の掘削方向前部に設けられたメインカッターユニット3と、正面視で掘進機本体2の四隅それぞれに設けられた4個のサブカッターユニット4と、掘進機本体2の上縁部に設けられた保護ルーフ5と、この保護ルーフ5の内部に格納されたドレン切断装置6と、掘進機本体2の内部に傾斜して延びるスクリューコンベア7と、掘進機本体2の内部における掘削方向後部に設けられたエレクタ8と、掘進機本体2の内周面に沿って設けられた複数のシールドジャッキ9と、を備えている。なお、本発明において「掘削方向」とは、
図1に矢印で示すシールド掘進機1の進行方向を意味している。
【0017】
掘進機本体2は、掘削した地山の壁面を一時的に支持する役割を果たす。この掘進機本体2は、
図1及び
図2に示すように、断面略矩形の外形を有する筒状の部材である。この掘進機本体2は、その内部における掘削方向前端部から所定距離の位置に、土砂の流入を防止するための隔壁10を有している。
【0018】
メインカッターユニット3は、
図1に示すように、掘進機本体2の内部であって掘削方向前部に配置されたメインカッター11(特許請求の範囲に言う「カッター」)と、このメインカッター11を回転駆動するメインモータ13と、を有している。
【0019】
メインカッター11は、
図1及び
図2に示すように、断面円形の外形を有するメインカッターヘッド111と、このメインカッターヘッド111の掘削方向前面から突出するように設けられた複数のメインカッタービット112(
図2では図示を省略)と、を有している。このように構成されるメインカッター11は、掘進機本体2の掘削方向前部に配置され、掘削方向に平行する軸周りに回転可能または揺動可能となっている。
【0020】
サブカッターユニット4は、
図1及び
図2に示すように、断面円形の外形を有するサブカッター14(特許請求の範囲に言う「カッター」)と、このサブカッター14を回転駆動するサブモータ15と、を有している。
【0021】
サブカッター14は、
図1及び
図2に示すように、断面円形の外形を有するサブカッターヘッド141と、このサブカッターヘッド141の掘削方向前面から突出するように設けられた複数のサブカッタービット142(
図2では図示を省略)と、を有している。このように構成されるサブカッター14は、断面矩形の掘進機本体2の四隅それぞれに配置され、掘削方向に平行する軸周りに回転可能または揺動可能となっている。
【0022】
保護ルーフ5は、ドレンカッター19を土砂から保護すると共に、土砂の流れを制御する役割を果たす。この保護ルーフ5は、
図1及び
図2に示すように、細長い断面形状を有する筐体である。この保護ルーフ5は、掘進機本体2の上縁部であって、掘削方向から臨んでメインカッター11及びサブカッター14の何れとも重複しない領域に、掘削方向に延びるように設けられている。より詳細には、保護ルーフ5は、断面略矩形の掘進機本体2の上辺及び上部左右の隅部に相当する範囲に亘って設けられている。そして、この保護ルーフ5の掘削方向前端部は、メインカッターユニット3よりも掘削方向に突出し、掘進機本体2の外側から内側に向かってメインカッターユニット3からの突出長さが徐々に短くなるように傾斜して形成されており、この傾斜角度は略45°に設定されている。
【0023】
ドレン切断装置6は、地山に埋め込まれたドレン材を切断する役割を果たす。ここで、
図3は、
図2におけるドレン切断装置6の周辺を拡大した部分拡大図、
図4はドレン切断装置6を示す概略平面図である。ドレン切断装置6は、
図3及び
図4に示すように、1個の伸縮ジャッキ17と、伸縮ジャッキ17に接続されたスライダー18と、スライダー18を案内するガイド12と、スライダー18に固定された3個のドレンカッター19と、ドレンカッター19をそれぞれ支持する3個の軸受ユニット20(
図4では断面を図示)と、を有している。
【0024】
伸縮ジャッキ17は、
図3及び
図4に示すように、中空のシリンダー21と、油圧等によってシリンダー21から外部へ突出しまたはシリンダー21の内部へ没入するように設けられたピストンロッド22と、を有している。このように構成される伸縮ジャッキ17は、そのシリンダー21が保護ルーフ5の内側面に固定して設けられている。
【0025】
スライダー18は、保護ルーフ5を形成する材料との間の摩擦係数が比較的小さい材料からなる板状の部材である。このスライダー18は、
図3に示すように、伸縮ジャッキ17を構成するピストンロッド22の先端に固定され、保護ルーフ5の内側面に取り付けられたガイド12に沿って移動可能に設けられている。
【0026】
ドレンカッター19は、超音波で振動させた刃物で対象物を切断する、いわゆる超音波カッターである。なお、本明細書における「超音波」とは、高周波の一種であって周波数が略20kHz以上の音波を意味している。このドレンカッター19は、先端部に装備された刃物191と、この刃物191を超音波で振動させる振動子(不図示)と、を有している。このように構成される3個のドレンカッター19は、
図4に示すように、所定間隔で互いに平行した状態でその基端部が一体化されている。このように構成される3個のドレンカッター19は、3個の軸受ユニット20にそれぞれ挿通されると共に、一体化された基端部がねじ等によりスライダー18に固定されている。そして、各ドレンカッター19は、
図1に示すように、縦断面視で掘進機本体2の軸方向に延びるように、且つ、
図2に示すように、正面視で掘進機本体2の外縁に略平行に延びるように、それぞれ配置されている。なお、各ドレンカッター19の配置方向は、本実施形態に限定されず任意の方向とすることが可能である。
【0027】
軸受ユニット20は、
図3及び
図4に示すように、挿通穴231が形成されたケーシング23と、挿通穴231の内周面に設けられてドレンカッター19を支持するすべり軸受24と、ケーシング23とドレンカッター19との間の隙間であってすべり軸受24より掘削方向後方の位置に設けられた止水シール25と、同じくケーシング23とドレンカッター19との間の隙間であってすべり軸受24より掘削方向前方の位置に設けられたダストシール26と、を有している。止水シール25は、保護ルーフ5の内部への水の浸入を阻止する役割を果たす。ダストシール26は、保護ルーフ5の内部への埃の浸入を阻止する役割を果たす。このように構成される軸受ユニット20は、そのケーシング23が保護ルーフ5の内側面に固定されると共に、ケーシング23の挿通穴231に対してドレンカッター19がそれぞれ挿通される。
【0028】
このように構成されるドレン切断装置6によれば、
図3(a)に示すように、伸縮ジャッキ17を構成するピストンロッド22がシリンダー21から外部へ突出すると、ピストンロッド22に固定されたスライダー18が掘削方向へスライドすることにより、一体化された3個のドレンカッター19が掘削方向へそれぞれ変位する。これにより、
図1に示すように、ドレンカッター19の掘削方向先端は、掘削方向に向かって最も前方に位置するメインカッタービット112、本実施形態では正面視で高さ方向中央部に位置するメインカッタービット112と比較して、突出量L1だけ掘削方向に突出した状態となる。
【0029】
一方、
図3(b)に示すように、伸縮ジャッキ17を構成するピストンロッド22がシリンダー21の内部へ没入すると、ピストンロッド22に固定されたスライダー18が掘削方向と逆方向へスライドすることにより、一体化された3個のドレンカッター19が掘削方向と逆方向へそれぞれ変位する。これにより、ドレンカッター19は、その全体が保護ルーフ5の内部に格納された状態となる。
【0030】
なお、前述のようにドレンカッター19がすべり軸受24によって支持されているので、ドレンカッター19が掘削方向及びその逆方向へ変位する際、滑らかな変位が可能となる。更に、ドレンカッター19とケーシング23との間の隙間が止水シール25及びダストシール26によって封止されているので、ドレンカッター19の変位時に土砂中の水分や埃が保護ルーフ5の内部に浸入するのを防止することができる。
【0031】
そして、このように構成されるドレン切断装置6は、保護ルーフ5の内部に、所定間隔で複数個が設けられている。本実施形態では、
図2に示すように、掘進機本体2の上辺に沿って8個のドレン切断装置6が、掘進機本体2の上部左右の隅部に沿って2個ずつのドレン切断装置6が、それぞれ設けられている。なお、ドレン切断装置6の個数や配置位置は、本実施形態に限られず、地山においてドレン材が埋め込まれた地帯の水平方向幅や、地表からドレン材最下端までの深さ等に応じて、適宜設計変更が可能である。
【0032】
スクリューコンベア7は、メインカッター11やサブカッター14によって掘削された土砂を掘削方向後方へ搬送する役割を果たす。このスクリューコンベア7は、
図1に示すように、前端部に土砂取り込み口271が設けられると共に後端部に土砂排出口272が設けられた円筒状のケーシング27と、ケーシング23の内部に設けられて軸回りに回転駆動されるスクリュー28と、を有している。このように構成されるスクリューコンベア7は、掘進機本体2の内部に、掘削方向の前方から下方に向かって斜め上方に傾斜するように配置され、掘進機本体2の隔壁10の下部に形成された排土口101に対し、ケーシング27の土砂取り込み口271が接続されている。このように構成されるスクリューコンベア7によれば、メインカッター11やサブカッター14によって掘削された土砂は、排土口101を通して土砂取り込み口271からケーシング27の内部に取り込まれ、スクリュー28によってケーシング23の後端側へ搬送され、土砂排出口272から排出される。そして、この土砂は、不図示の土砂搬送装置により、更に掘削方向後方へ搬送される。なお、本実施形態のスクリューコンベア7以外の公知の排土装置によって、掘削された土砂を掘削方向後方へ搬送してもよい。
【0033】
エレクタ8は、トンネルの壁面となるセグメントSを掘進機本体2の内周面に沿って組み立てる役割を果たす。このエレクタ8は、
図1に示すように、掘進機本体2によって回転可能に支持された複数のローラ29と、これら複数のローラ29によってトンネル周方向に回転可能に支持された回転リング30と、回転リング30に固定された支持ブロック31によってトンネル径方向に移動可能に支持された吊りビーム32と、吊りビーム32によってトンネル軸方向に移動可能に支持された把持部33と、を有している。このように構成されるエレクタ8によれば、把持部33で把持したセグメントSをトンネル軸方向、トンネル径方向、トンネル周方向に適宜移動させることにより、掘進機本体2の内周面に沿ってセグメントSをリング状に組み立てることができる。なお、エレクタ8は本実施形態に限定されず、例えば、トンネル軸周りに回転可能に設けた把持部を、鉛直方向に延びるガイドレール及びそれに直交してトンネル径方向に延びるガイドレールに沿って移動自在に設けることにより、エレクタ8を構成してもよい。
【0034】
シールドジャッキ9は、組み立てられたセグメントSから反力を得ることによってシールド掘進機1を掘削方向に前進させる役割を果たす。このシールドジャッキ9は、
図1に示すように、中空のシリンダー34と、油圧等によってシリンダー34から外部へ突出しまたはシリンダー34の内部へ没入するように設けられたピストンロッド35と、を有している。このシールドジャッキ9は、そのシリンダー34が掘進機本体2に固定して設けられている。このように構成されるシールドジャッキ9によれば、ピストンロッド35をシリンダー34から突出させてその先端部で既設のセグメントSを押圧することにより、セグメントSから反力を取ることができる。
【0035】
(シールド掘進機の使用方法)
次に、本発明の第一実施形態に係るシールド掘進機1の使用方法について説明する。シールド掘進機1を使用する作業者は、地山の掘削開始時においてドレン材が埋め込まれていない地帯を掘削する場合、
図3(b)に示すように、伸縮ジャッキ17のピストンロッド22をシリンダー21の内部へ没入させることにより、ドレンカッター19を保護ルーフ5の内部に格納させる。これにより、ドレン材の切断作業を行わない時には、土砂からドレンカッター19が保護される。
【0036】
次に、作業者は、
図5(a)に示すように、地山においてドレン材Dが埋め込まれた地帯にシールド掘進機1が到達する前に、ドレンカッター19を構成する振動子(不図示)を作動させることにより、刃物191を超音波振動させる。そして、シールド掘進機1がドレン材に到達する前に、伸縮ジャッキ17のピストンロッド22をシリンダー21の外部へ突出させることにより、ドレンカッター19を保護ルーフ5の外部へ突出させる。この時、ドレンカッター19は、その刃物191の全体がメインカッター11及びサブカッター14(
図1を参照)よりも掘削方向前方に位置するまで、突出した状態となる。
【0037】
またこの時、ドレンカッター19を構成する刃物191は、その全体が保護ルーフ5よりも掘削方向前方に位置していることが好適である。これは、ドレンカッター19をドレン材Dに貫通させる際には、
図5(b)に点線で示すように、ドレン材Dが掘削方向へある程度変形する。従って、ドレンカッター19の突出量が小さく、ドレンカッター19がドレン材Dを貫通する前に保護ルーフ5の掘削方向先端がドレン材Dに接触すると、ドレンカッター19のドレン材Dへの貫通が阻害される恐れがあるためである。
【0038】
なお、本実施形態では、ドレンカッター19を超音波振動させた後に、当該ドレンカッター19を保護ルーフ5の外部へ突出させた。しかし、これとは逆に、ドレンカッター19を保護ルーフ5の外部へ突出させた後に、ドレンカッター19の刃物191を超音波振動させてもよい。
【0039】
そして、作業者は、ドレンカッター19を保護ルーフ5の外部へ突出させた状態において、メインカッター11、サブカッター14、及びシールドジャッキ9を作動させることにより、シールド掘進機1を掘削方向へ前進させる。そうすると、
図5(a)に示すように、ドレンカッター19を構成する刃物191の先端がドレン材Dに接触した後、
図5(b)に示すように、刃物191に押圧されたドレン材Dが掘削方向前方へ突出するように変形する。そして、その状態から更にシールド掘進機1を前進させると、
図5(b)に示すように刃物191がドレン材Dを貫通することにより、ドレン材Dがその位置で切断される。
【0040】
その後、作業者は、ドレンカッター19によるドレンの切断作業が完了し、ドレン材Dが埋め込まれていない地帯にシールド掘進機1が再び到達すると、前述と同様にして、ドレン切断装置6を再び保護ルーフ5の内部へ格納する。
【0041】
(作用効果)
本実施形態に係るシールド掘進機1によれば、掘削方向から臨んでメインカッター11及びサブカッター14と重複しない領域に、ドレンカッター19が出没可能に設けられている。従って、ドレン材Dの切断作業を行う際に、メインカッター11やサブカッター14の回転を一旦停止させることなく、すなわちシールド掘進機1による地山の掘削を中止することなく、ドレンカッター19を掘削方向に突出させることでドレン材Dを切断することができる。従って、地山の掘削作業の作業効率を低下させることなく、ドレン材Dの切断作業を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係るシールド掘進機1によれば、掘進機本体2の上縁部に掘削方向に延びるようにして、保護ルーフ5が設けられている。従って、
図3(a)に示すようにドレンカッター19を突出させた場合にも、ドレンカッター19の大部分は保護ルーフ5によって上方を覆われているので、ドレンカッター19を上方から作用する土圧から保護することができる。また、
図3(b)に示すようにドレンカッター19を没入させることによって土中にドレンカッター19の分の空隙が生じても、その空隙の上方は保護ルーフ5によって覆われるので、空隙上方の土砂が崩落することが防止される。更に、保護ルーフ5の掘削方向前端部が略45°の角度で傾斜して設けられているので、掘削方向前方の土砂の流れを保護ルーフ5で制御することができる。より詳細には、掘削方向前方の土砂を掘進機本体2の径方向外側から径方向内側に向かって流すことができる。これにより、ドレンカッター19の掘削方向前方に位置する土砂を、メインカッター11またはサブカッター14の側へ案内することにより、地山の確実な掘削が可能となる。
【0043】
(変形例)
以上、本発明の第一実施形態を詳細に述べたが、本発明の第一実施形態としては以下に示すような変形例も考えられる。
【0044】
(1) 本実施形態では、地山においてドレン材Dが埋め込まれた地帯にシールド掘進機1が到達する前に、ドレンカッター19の掘削方向先端部を、掘削方向に向かって最も前方に位置するメインカッタービット112よりも突出量L1だけ掘削方向に突出させた。しかし、シールド掘進機1の掘削方向によっては、この突出量を適宜変更することが好適である。例えば、
図6に示すように、シールド掘進機1の掘削方向が水平方向と角度α°を成して斜め上方を向いている場合、掘削方向に向かって最も前方に位置するメインカッタービット112は、正面視で高さ方向最下部のメインカッタービット112になる。この場合、ドレンカッター19がドレン材Dを切断する前に高さ方向最下部のメインカッタービット112がドレン材Dを巻き込むと、ドレン材Dが引っ張られることによって地表付近の土砂が崩落する恐れがある。従って、高さ方向最下部のメインカッタービット112がドレン材Dに接触する前にドレンカッター19がドレン材Dを切断するように、ドレンカッター19のメインカッタービット112に対する突出量を、掘削方向が水平方向である場合の突出量L1より大きい突出量L2に設定したドレン切断装置6を用いればよい。
【0045】
(2) 本実施形態では、保護ルーフ5の掘削方向前端部の傾斜角度を略45°に設定した。これは、掘削対象である土砂の安息角(一定の高さから土砂を落下させた時に自発的に崩れることなく安定を保ち得る限界における、土砂の斜面と水平面とがなす角度)を考慮し、保護ルーフ5で土砂の流れを制御できるように設定した角度である。しかし、この傾斜角度の大きさは、本実施形態に限定されず、掘削対象である土砂の安息角の大きさに応じて任意の大きさとすることができる。また、掘進機本体2の上縁において保護ルーフ5を設ける範囲は、本実施形態に限定されず、地山においてドレン材Dが埋め込まれた地帯の水平方向幅や、地表からドレン材Dの最下端までの深さ等に応じて、適宜設計変更が可能である。
【0046】
(3) 本実施形態では、3個のドレンカッター19を一体化して1つの伸縮ジャッキ17によって変位させるように構成した。これによれば、伸縮ジャッキ17の個数を減らしてコストダウンを図ることができる。しかし、ドレン切断装置6の構成は本実施形態に限定されず、例えばより多くの個数のドレンカッター19を一体化して1つの伸縮ジャッキ17で作動させてもよいし、或いはドレンカッター19ごとに専用の伸縮ジャッキ17を設けてもよい。
【0047】
(4) 本実施形態では、伸縮ジャッキ17によってドレンカッター19を保護ルーフ5から出没可能に構成することにより、地山においてドレン材Dが埋め込まれていない地帯では、ドレンカッター19を保護ルーフ5の内部に格納可能とした。しかし、地山においてドレン材Dが埋め込まれている地帯だけを掘削すればよい場合には、
図7に示すようにドレンカッター19を掘進機本体2に移動不能に固定することにより、ドレンカッター19を保護ルーフ5から掘削方向前方へ常に突出させた状態のまま保持してもよい。
【0048】
(5) 本実施形態では、ドレンカッター19としていわゆる超音波カッターを用いた。しかし、ドレンカッター19としては、例えば、図に詳細は示さないが、超音波以外の高周波で振動させた刃物でドレン材Dを切断する高周波カッターや、単純な刃物で物理的にドレン材Dを切断するカッターや、加熱した刃物でドレン材Dを溶融させることで切断するカッターを使用してもよい。
【0049】
(第二実施形態に係るシールド掘進機の構成)
次に、本発明の第二実施形態に係るシールド掘進機の構成について説明する。
図8及び
図9は、本発明の第二実施形態に係るシールド掘進機50を示す図であって、
図8は正面側から見た模式図、
図9は概略縦断面図である。
【0050】
シールド掘進機50は、
図8及び
図9に示すように、中空の掘進機本体51と、掘進機本体51の内部における掘削方向前部に設けられたメインカッターユニット52と、掘進機本体51の上縁部に設けられた保護ルーフ53と、この保護ルーフ53の内部に格納されたドレン切断装置6と、掘進機本体51の内部に傾斜して延びるスクリューコンベア7と、掘進機本体51の内部における掘削方向後部に設けられたエレクタ8と、掘進機本体51の内周面に沿って複数設けられたシールドジャッキ9と、を備えている。なお、スクリューコンベア7、エレクタ8、及びシールドジャッキ9については、第一実施形態に係るシールド掘進機1と同様の構成であるため、第一実施形態と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0051】
掘進機本体51は、
図8及び
図9に示すように、断面略円形の外形を有する筒状の部材である。この掘進機本体51は、その内部における掘削方向前端部から所定距離の位置に、土砂の流入を防止するための隔壁55を有している。
【0052】
メインカッターユニット52は、
図8及び
図9に示すように、掘進機本体51の内部であって掘削方向前部に配置されたメインカッター56(特許請求の範囲に言う「カッター」)と、このメインカッター56を回転駆動するメインモータ58と、メインカッター56から径方向へ出没可能に設けられたコピーカッター59と、を有している。
【0053】
メインカッター56は、
図8及び
図9に示すように、断面円形の外形を有するメインカッターヘッド60と、このメインカッターヘッド60の掘削方向前面から突出するように設けられた複数のメインカッタービット61(
図8では図示を省略)と、を有している。このように構成されるメインカッター56は、掘進機本体51の掘削方向前部に配置され、掘削方向に平行する軸周りに回転可能または揺動可能となっている。
【0054】
メインカッターヘッド60は、
図8に示すように、回転軸57から放射状に延びる複数の第一カッタースポーク62と、これら第一カッタースポーク62の長手方向中間部を互いに連結する円弧状の第一連結部材63と、この第一連結部材63における隣接する第一カッタースポーク62の間の位置から放射状に延びる複数の第二カッタースポーク64と、これら第一カッタースポーク62及び第二カッタースポーク64の先端同士を互いに連結する円弧状の第二連結部材65と、を備えている。
【0055】
コピーカッター59は、シールド掘進機50がカーブを描いて掘進する時に地山をいわゆる余掘りする役割を果たす。このコピーカッター59は、メインカッターヘッド60を構成する第一カッタースポーク62それぞれの先端部に格納可能に、また第一カッタースポーク62の外部へ突出可能に設けられている。
【0056】
保護ルーフ53は、
図8及び
図9に示すように、細長い横断面形状を有する筐体である。この保護ルーフ53は、掘進機本体51の上縁部であって、掘削方向から臨んでメインカッター56と重複しない領域に、掘削方向に延びるように設けられている。より詳細には、保護ルーフ53は、断面略円形の掘進機本体51の上縁であって、周方向に略180°の角度範囲に亘って設けられている。そして、この保護ルーフ53の掘削方向前端部は、メインカッターユニット52よりも掘削方向に突出し、掘進機本体51の外側から内側に向かってメインカッターユニット52からの突出高さが徐々に低くなるように傾斜して形成されており、この傾斜角度は略45°に設定されている。
【0057】
ドレン切断装置6は、
図8に示すように、保護ルーフ53の内部に、所定間隔で複数個が設けられている。なお、ドレン切断装置6の個数や配置位置は、本実施形態に限られず、地山においてドレン材Dが埋め込まれた地帯の水平方向幅や、地表からドレン材Dの最下端までの深さ等に応じて、適宜設計変更が可能である。ドレン切断装置6を構成する複数のドレンカッター19は、
図9に示すように、縦断面視で掘進機本体51の軸方向に延びるように、且つ、
図8に示すように、正面視で掘進機本体51の外縁に略平行に延びるように、それぞれ配置されている。なお、各ドレンカッター19の配置方向は、本実施形態に限定されず任意の方向とすることが可能である。
【0058】
なお、第二実施形態に係るシールド掘進機50の使用方法、作用効果、及び変形例については、第一実施形態に係るシールド掘進機1と同様であるため、ここでは説明を省略する。