【解決手段】低放射性折板1は、少なくとも一方の側端部に、他の折板への取り付けに用いられる相互取付け箇所Aを有する金属板6を備える。折板1では、金属板6のうち取付け時に屋内側となる面に断熱材14(断熱層)が接着され、さらにこれの屋内側面に低放射性シート15(遮熱層)が接着されている。低放射性シート15は、伸展性を有する合成樹脂フィルムの一面に低放射性素材からなる放射層(アルミ箔17)が形成されたものとし、放射層は、施工された折板1の屋内側の最表面となる配置で設けられる。低放射性シート15は、断熱材14の屋内側面のうち、相互取付け箇所Aに重なる部分を除いた残りの部分に接着される。
少なくとも一方の側端部に、他の折板への取り付けに用いられる相互取付け箇所を有する金属板を備える低放射性折板であって、前記金属板のうち取付け時に屋内側となる面に断熱材が貼り付けられており、
前記断熱材の屋内側面に、伸展性を有する合成樹脂フィルムの一面に低放射性素材からなる放射層が形成された低放射性シートを前記放射層が屋内側の最表面となる配置で設けられており、
前記低放射性シートは、前記断熱材の屋内側面のうち、前記相互取付け箇所を除いた残りの部分に設けられていることを特徴とした低放射性折板。
前記伸展性を有する合成樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレートを素材としたフィルムであり、前記低放射性素材はアルミ箔であることを特徴とした請求項1または2に記載の低放射性折板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の遮熱板材は、基材の一面に空気層や断熱材を介することなく遮熱層(アルミ箔などによる)を設けることで遮熱板材を薄く維持し、曲げ加工をし易くしている。また、特許文献2の野地板は低放射層(塗料、アルミ箔などによる)を室内側に向けて使用し、屋内側への放射を抑制している。
しかし、いずれも断熱材を使用していないので、基材から遮熱材ないし低放射層への伝熱が大きく、遮熱材や低放射層そのものが高温となる。このため、これらの層が遮熱機能、低放射機能を有していても、これらが高温となることによる屋内側への熱対流を抑制することが出来ず、また、断熱材を使用しないため、冬季に室内側で結露を生じる可能性がある。
結局、遮熱板材としては基材と遮熱層との間に断熱層を設けることが好ましい。
【0007】
一方、基材と遮熱層との間に断熱層を配置すると、ハゼ締めタイプや嵌合タイプの折板のように両側の辺縁部で細かな屈曲が連なる形態へ加工する場合、遮熱板材そのものの厚さが大きくなった分、山折りや谷折りの箇所で被覆材の部分的な変位が大きくなって、屋内側表面の遮熱層(アルミ箔のことが多い)が引き裂かれたり、皺の発生やズレによって破損したりする。このため、前記の被覆層として断熱層と共に遮熱層を有する折板の生産が困難であった。
この発明は、断熱層と共に遮熱層を有し、遮熱層に破損が生じにくい低放射性折板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の低放射性折板は、少なくとも一方の側端部に、他の折板への取り付けに用いられる相互取付け箇所を有する金属板を備える折板であって、前記金属板のうち取付け時に屋内側となる面に断熱材(断熱層)が貼り付けられている。
さらに、前記断熱材の屋内側面に低放射性シート(遮熱層)が接着されている。
低放射性シートは、伸展性を有する合成樹脂フィルムの一面に低放射性素材からなる放射層(アルミ箔などによる)を形成したものである。
前記放射層は、施工された折板の屋内側最表面となる配置で設けられている。
また、前記低放射性シートは、前記断熱材の屋内側面のうち、前記相互取付け箇所に重なる部分を除いた残りの部分に設けられたものとする。
【0009】
前記伸展性を有する合成樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレートを素材としたフィルムであり、低放射性素材は、アルミ箔が好ましい。
なお、低放射性素材は、放射に対して低い放射率を有する素材であって、放射率が0.5以下あればよく、放射率が0.3以下のものが好ましい。
前記断熱材はガラス繊維を厚さ寸法5〜8mm程度のフェルト状としたものが好ましい。
本願の低放射性折板の製造方法は、少なくとも一方の側端部に、他の折板への取り付けに用いられる相互取付け箇所を備える折板を製造する方法である。本願の低放射性折板は、次のように製造される。
伸展性を有する合成樹脂フィルムにアルミ箔を接着して低放射性シートを形成する。これを断熱材の一面のうち、側端部を除いた残りの部分に接着して被覆材とする。
さらに、これをアルミ箔が最表面となる配置で金属板に接着する。
次いで、金属板のうち低放射性シートが重ならない部分に、相互取付け箇所が形成されるように、被覆材を接着した金属板を専用のロール成形機で折板形状に成形加工する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の折板は、断熱材により金属板から遮熱層である低放射性シートへの伝熱が大きく遮断され、その上で、低放射性シートにおける放射層により金属板からの放射が室内に向けて低減されるから、低放射性シートから屋内側への放射はわずかなものとなり、屋内の温熱環境が改善される。
放射層は屋内側の最表面となる配置であっても、伸展性を有する合成樹脂フィルムで補強されており、また、低放射性シートは、他の折板への取り付けに用いられる相互取付け箇所には存在しないので、両側の辺縁部で細かな屈曲が連なる形態へ加工する場合でも、専用のロール成形機によって低放射性シートが狭い領域を強く圧迫されたり、小さく屈曲されたりすることがないので、破損が生じにくい。
したがって、金属板に前記の被覆材(断熱材+低放射性シート)を接着したものをそのまま専用のロール成形機にかけて折板へ成形することができる。
また、成形された折板は従来の折板と同じ工程で施工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本願の低放射性折板1(以下「折板1」と記載する)により構成された屋根2であって、梁3の上面に固定された、複数の台形が連なった形状のタイトフレーム4に設けられた吊り子40によって建物躯体5に固定されている。タイトフレーム4の台形の部分は、頂部41と、頂部41の両側端部から外側方の斜め下方に突出する一対の脚部42とで構成されている。吊り子40は、頂部41の上に、例えばボルトとナット等の固定具で取り付けられている。
折板1は、金属板6と被覆体7とからなる(
図2イ,ロ)。
金属板6は、ハゼ締めタイプであって、1個の逆台形谷部8を構成する底部9と左斜面部10および右斜面部11を主体として、左斜面部10の上端部から外側(左側)へ水平に突出する平坦な頂部20と、この頂部20に対して屈曲するとともに他の屈曲部分をさらに有するハゼ掛け部12(ハゼ部21)と、右斜面部11の上端部から外側(右側)へ水平に突出する平坦な頂部20と、この頂部20に対して屈曲するとともに他の屈曲部分をさらに有するハゼ受け部13(ハゼ部21)とを備える。この形態は、平板状の金属板18を被覆体7(後述)と共に専用のロール成形機に通過させることで、ロールによって少しずつ成形され、最終的に
図2イの形態とされる。
前記の左側の頂部20とハゼ部21(ハゼ掛け部12)と、右側の頂部20とハゼ部21(ハゼ受け部13)(
図2イにおいて破線で囲んだ部分)は、他の折板への取り付けに用いられる相互取付け箇所Aである。相互取付け箇所Aは、金属板6のうち、脚部42に重なる部分よりも外側の部分全体である。
【0013】
金属板18は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これに限定されない。金属板18の厚みは、例えば、0.6〜1.0mmである。
被覆体7は、断熱材14(断熱層)と低放射性シート15(遮熱層)とからなり(
図3イ,ロ)、低放射性シート15はさらにポリエチレンテレフタレートの合成樹脂フィルム16(PETフィルム16)とアルミ箔17(低放射性素材からなる放射層)とからなる。
PETフィルム16にアルミ箔17を接着して低放射性シート15を構成し、これを断熱材14の一面に接着して被覆体7を構成する。このとき、アルミ箔17を表面側とする。そして、被覆体7は、前記金属板6のうち、取付時に屋内側となる面に、アルミ箔17を最表面側として、接着してある。
【0014】
断熱材14は、防湿、防火の観点からグラスウールの他にロックウールなどの無機繊維系のフェルト状成形品が好ましい。いずれにしても、やわらかく、層間の結合力の強いものがよい。断熱材14を無機繊維系のフェルト状成形品とすることで、気温変化による収縮が少ないため、特に、寒冷地での利用に効果的である。
合成樹脂フィルム16は、他にポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどであってもよい。いずれにしても、伸展性があって薄く丈夫なものがよい。
放射層は、金や銀など、他の金属箔であってもよい。なお、アルミ蒸着フィルムも使用可能であるが、遠赤外線など電磁波の透過を防止するために蒸着層を通常よりも厚くすることが好ましい。
【0015】
本願の折板1は次のように製造される(
図4)。なお、
図4では厚さや大きさは模式的に示している。
まず、所定寸法に形取りされた金属板18、断熱材14、低放射性シート15が準備される。
低放射性シート15は、PETフィルム16の一方の面全体にアルミ箔17を接着して準備される。
断熱材14に低放射性シート15を、アルミ箔17が表面となるようにして接着し、被覆体7を準備する。
【0016】
このとき、断熱材14の幅は、金属板18の全幅から両側端部のハゼ部21が形成される部分の幅を除いた長さとし、断熱材14の長さは金属板18と同じにする。低放射性シート15は、断熱材14の一面のうち、両側端部(つまり相互取付け箇所Aに重なる部分)を除いた残りの部分に接着される。
金属板18に被覆体7を、アルミ箔17が最表面となるようにして接着する。このとき、被覆体7は、金属板18のうち、ハゼ部21の形成部分を除く残りの部分全体に、断熱材14が重なり、相互取付け箇所A(つまり頂部20とハゼ部21)の形成部分を除く残りの部分全体に、低放射性シート15が重なるように、金属板18に接着される。ここで、金属板18への被覆体7の接着は、例えば、接着剤を50〜80g/m
2の塗布量で塗布することによって行われる。
ついで、被覆体7が接着された金属板18を専用のロール成形機(図示していない)にかける。
ロール成形機は、基本的に相互取付け箇所Aの形成部分と底部9の形成部分を上下で一対のローラーで挟みつけた状態で送り出す構造である。上下で一対のローラーは、被覆体7が接着された金属板18の進行方向に複数組、幅方向と上下方向に所定の変位を持って配置されている。これらの間を被覆体7が接着された金属板18が移動することで、折板1が成形される。
被覆体7が接着された金属板18は、例えば、金属板18が上側に位置し、被覆体7が下側に位置する姿勢で、ロール成形機に供給される。なお、被覆体7が接着された金属板18は、金属板18が下側に位置し、被覆体7が上側に位置する姿勢で、ロール成形機に供給されてもよい。
【0017】
このタイプの折板1は、前記タイトフレーム4の吊り子40に、前記のハゼ掛け部12と、隣接した他の折板1nのハゼ受け部13とを重ねてハゼ締めすることにより順次組み付けていく(
図2ロ)。このようにして屋根2を構成したとき、複数の折板1は横につながって、タイトフレーム4の複数の台形の箇所のそれぞれの上方で台形山部19が形成され、逆台形谷部8と台形山部19が交互に連続した、いわゆる台形波形の屋根2となる(
図1)。
【0018】
前記折板1による屋根2の屋内側面は、ハゼ部21を除いた残りの部分が、断熱材14で覆われ、さらに、相互取付け箇所A(つまり頂部20とハゼ部21)を除いた部分がアルミ箔17を最表面とした低放射性シート15で覆われるので、折板1の金属板6が吸収した太陽熱は、まず、断熱材14によって屋内側への伝熱が遮断され、高温となった金属板6からの放射はアルミ箔17の屋外側面で大部分が屋外側へ反射される。このため、アルミ箔17から屋内側への放射、すなわち折板1から屋内側への放射が低減される。これは低放射性シート15の機能である。このとき、アルミ箔17による放射層が屋内側の最表面にあることが重要で、PETフィルム16を最表面とした場合は、低放射性能(放射率ε)が例えば、0.12から0.80程度へ大きく減退する。
【0019】
なお、本願の折板1では、低放射性シート15のアルミ箔17がPETフィルム16によって補強されていること、相互取付け箇所Aに低放射性シート15を配置していないことから、ロール成形の際に、アルミ箔17の破損が生じにくい。また、
図2イに示す形態とすることで、ハゼ部21以外の部分において屈曲部分の間隔が広いため、これによっても、ロール成形の際に、ハゼ部21以外の部分におけるアルミ箔17の破損が生じにくい。
【0020】
なお、前記の相互取付け箇所Aは、本来、屋内側への放射を抑制することに関しては面積が小さく影響の少ない部分である。
また、台形波形の屋根2を形成する折板1の取付け方式には、代表的なものとして他に重ねタイプ(
図5イ)や嵌合タイプ(
図5ロ)がある。図において丸囲みの部分はいずれも相互取付け箇所Aである。本願の折板1はこれらのタイプにおいても前記同様の効果を期待できる。
図5イ,ロには、ハゼ締めタイプの折板1と同様の構成については、同じ符号を付している。
図5イに示す重ねタイプの折板1では、金属板6は、ハゼ部21の代わりに、左側の頂部20の左端から左下方に突出した端縁部22と、右側の頂部20の右端から右下方に突出した端縁部23を備える。重ねタイプの折板1では、右側の頂部20と端縁部22と、左側の頂部20と端縁部23が、他の折板1nへの取り付けに用いられる相互取付け箇所Aである。相互取付け箇所Aでは、金属板6のその他の箇所に比べて、屈曲部分の間隔が狭い。
重ねタイプの折板1においても、低放射性シート15は、断熱材14の屋内側面のうち、相互取付け箇所Aに重なる部分を除いた残りの部分に設けられている。断熱材14は、金属板6のうち、底部9、左斜面部10、右斜面部11、右側の頂部20、及び右側の端縁部23の屋内側面に接着されている。左側の頂部20及び左側の端縁部22の屋内側面には、断熱材14が接着されていない。なお、左側の頂部20及び左側の端縁部22の屋内側面にも、断熱材14を接着してもよい。
左右に隣接する2枚の重ねタイプの折板1は、左側の折板1の右側の頂部20を、タイトフレーム4の頂部41に載せ、その上に、右側の折板1の左側の頂部20を載せ、頂部41から上方に突出したボルト43に、2つの頂部20のそれぞれを挿通させた状態で、このボルト43にナット44を締めることで、タイトフレーム4に対して取り付けられる。
重ねタイプの折板1においても、ロール成形の際に、低放射性シート15のアルミ箔17が、金属板18のうち屈曲部分の間隔が狭い相互取付け箇所Aを除いた残りの部分に位置するため、アルミ箔17の破損が生じにくい。
また、
図5ロに示す嵌合タイプの折板1では、金属板6は、ハゼ部21の代わりに、左側の頂部20に対して屈曲するとともに他の屈曲部分をさらに有する嵌合部24と、右側の頂部20に対して屈曲するとともに他の屈曲部分をさらに有する嵌合部25とを備える。嵌合タイプの折板1では、右側の頂部20と嵌合部24と、左側の頂部20と嵌合部25が、他の折板1nへの取り付けに用いられる相互取付け箇所Aである。相互取付け箇所Aでは、金属板6のその他の箇所に比べて、屈曲部分の間隔が狭い。
嵌合タイプの折板1においても、低放射性シート15は、断熱材14の屋内側面のうち、相互取付け箇所Aに重なる部分を除いた残りの部分に設けられている。断熱材14は、金属板6のうち、底部9、左斜面部10、右斜面部11、右側の頂部20、及び右側の頂部20の屋内側面に接着されている。左右の嵌合部24,25の屋内側面には、断熱材14が接着されていない。
左右に隣接する2枚の嵌合タイプの折板1は、左側の折板1の右側の頂部20を、タイトフレーム4の頂部41の左半部に載せ、右側の折板1の左側の頂部20を、頂部41の右半部に載せ、頂部41から上方に突出したボルト43に、ハット型の固定具45を挿通し、ボルト43にナット44を締めることで、固定具45のフランジ部分と頂部41との間に、2つの嵌合部24,25が挟み込まれた状態で、タイトフレーム4に対して取り付けられる。固定具45と2つの嵌合部24,25との嵌合箇所には、その上からキャップ46が取り付けられて覆われる。
嵌合タイプの折板1においても、ロール成形の際に、低放射性シート15のアルミ箔17が、金属板18のうち屈曲部分の間隔が狭い相互取付け箇所Aを除いた残りの部分に位置するため、アルミ箔17の破損が生じにくい。
【0021】
〔実施例〕
厚さ0.8mmの形取りされた亜鉛めっき鋼板(金属板18)に被覆体7を接着し、被覆体7を接着した金属板18を折板専用のロール成形機にて折板1に成形した。
被覆体7は、市販の断熱材14である「スーパーフェルトン」(登録商標)と、PETフィルム16にアルミ箔17を接着した低放射性シート15を用い、スーパーフェルトン(登録商標)の屋内側となる面に低放射性シート15を接着した。低放射性シート15は、折板1のうち、相互取付け箇所Aを除いた残りの部分に接着した。スーパーフェルトン(登録商標)は、ガラス長繊維の積層体の表面をポリエステル不織布で被覆したものである。スーパーフェルトン(登録商標)は、その厚さ=5mm、幅=800mm、長さ=50mのロール巻きされたものから切り出した(形取りした)。
【0022】
ガラス長繊維の積層体は、密度=120kg/m
3、熱伝導率=0.037W/m・Kであって、前記のガラス長繊維を合成樹脂バインダーで軽く結合させてフェルト状に成形したものである。
スーパーフェルトン(登録商標)は、せん断耐力=65.6N(25mm×25mm、JIS K6850)、180°引っ張り耐力=21.5N(25mm×350mm JIS K6854−2)であって、層間剥離耐力(繊維材剥離耐力)に優れる。
【0023】
PETフィルム16は厚さ=25μm、アルミ箔17は厚さ=15μmのものを使用し、低放射性シート15としての厚さ=40μmとしている。
したがって、低放射性シート15を接着した断熱材14からなる被覆体7の厚さは、断熱材14そのものとほとんど変わらず、また、被覆体7の柔軟性も断熱材14とほとんど変わらない。
【0024】
〔比較例1〕
前記折板1と同様の構成であるが、被覆体7がスーパーフェルトン(登録商標)のみで低放射性シート15を備えない折板1a(
図6イ)。
【0025】
〔比較例2〕
厚さ0.8mmの形取りされた亜鉛めっき鋼板(金属板18)に被覆体7aを接着して、被覆体7aを接着した金属板18を折板専用のロール成形機にて折板1b(
図6ロ)に成形した。
被覆体7aは、断熱材14aとして市販のグラスウールを、また、低放射性シートとして前記のPETフィルム16にアルミ箔17を接着した低放射性シート15を使用し、断熱材14aの全面に低放射性シート15を接着したものである。低放射性シート15は、グラスウールの屋内側となる面に接着した。
グラスウールは、ガラス繊維を絡ませ、合成樹脂バインダーで軽く結合させてフェルト状に成形したものである。その厚さ=15mm、幅=800mm、長さ=50mのロール巻きされたものから形取りした。
【0026】
〔比較例3〕
前記折板1bと同様の構成であるが、被覆体7がグラスウールのみで低放射性シート15を備えない折板1c(
図6ハ)。
【0027】
〔実棟における外観と屋内温度〕
実施例の折板1、比較例1の折板1a、比較例2の折板1bおよび比較例3の折板1cを用いて、実験室内にそれぞれ高さ4.1m、屋根の屋内側面における低放射性シート15の面積を90m
2(9×10m)として屋根を構築し、これらを同じ条件で床面から2mの位置に設置したグローブ温度計の数値(気温+放射による上昇分)を記録した。測定時の空気温度は32.4℃であった。表1はその結果である。
【0029】
〔考察〕
以上の結果を見ると、屋内側への放射熱量(輻射量)は比較例2がもっとも少なく、ついで実施例の順となっている。しかし、グローブ温度は実施例の方が低い。これは比較例2では、断熱層が厚いことで低放射性シート15への伝熱が実施例よりも少なく、低放射性シート15の温度が低いためと、低放射性シート15が断熱材14aの全面に配置され、実施例の場合と違って、相互取付け箇所Aにも低放射性シート15が存在するためと考えられる。
また、比較例2のグローブ温度が実施例の場合と同じ程度であるのは、低放射性シート15による放射量の低減というよりも厚い断熱層による屋内側空気への伝熱量が減少したことによる効果と考えられる。
低放射性シート15を用いない比較例1や比較例3では放射熱量が実施例や比較例2に比べて明らかに高く、低放射性シート15によって屋内側への輻射量が低減されている効果が明らかである。
【0030】
なお、比較例2では厚さ15mmのグラスウールを断熱層として金属板18の全面へ接着しているため、折板1bへ成形するときに、山折り箇所、谷折り箇所において断熱層の表面における引張り力、圧縮力による変位が大きくなり、これらの箇所で低放射性シート15のアルミ箔17が破損したものと推定される。また、相互取付け箇所Aとなる領域にまで低放射性シート15を配置したため、谷折りのためにだぶつき気味のアルミ箔17が摩擦係数との関係でローラーに連れまわされる格好でアルミ箔17の破損が生じたものと推定される。
【0031】
このように見ると、実施例と比較例2とで、屋内側の温熱環境に与える影響に格別な差はないといえる。しかし、実施例では屋内側から見る屋根の外観にアルミ箔17のはがれや破れが見えないが、比較例2では断熱層が厚いために、折板1bの山折箇所に放射層としてのアルミ箔に破損が見られ、一部では垂れ下がっていたりして見栄えが悪い。
すなわち、本願の発明に相当する前記実施例が、断熱層と共に遮熱層を有して低放射性を発揮する低放射性折板であると同時に、遮熱層(アルミ箔)に破損が生じにくい低放射性折板を提供するものであって、本願発明の課題を解決するものである。
【0032】
以上、実施形態・実施例について説明した。実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされている。しかし、特に本発明を限定する旨が明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。