【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 前澤給装工業株式会社 平成28年07月29日貸与 〔刊行物等〕 前澤化成工業株式会社 平成28年08月08日貸与
【構成】 サドルクランプ装置10は、本管100の外周面に分岐サドル継手110を電気融着接合するときに用いられる固定具であって、サドル部112の軸方向両端部を押さえる一対のサドル押え30を有する押え部20と、押え部と共に本管の周方向に延びる環状体を形成する連結部22と、連結部の長さを変更可能な長さ調整部24とを備える。また、サドル押えは、サドル部に形成される位置決め嵌合部122と嵌合して、サドル部と押え部とを少なくとも本管の周方向に対して位置決めする位置決め部36を有する。
前記押え部は、一対の前記サドル押え間の距離を変更可能に、当該サドル押え同士を前記本管の軸方向に連結する連結支持部を有する、請求項1または2記載のサドルクランプ装置。
前記サドル押えは、前記位置決め部として前記位置決め嵌合部が挿通される嵌合孔部を有し、前記本管の軸方向における前記位置決め嵌合部の両側において、前記サドル部を押さえる、請求項1ないし3のいずれかに記載のサドルクランプ装置。
前記サドル押えの前記サドル部に対する当接面は、前記サドル部の外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する湾曲面とされる、請求項1ないし4のいずれかに記載のサドルクランプ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、サドルを本管の所定位置に取り付け難く、本管に対して分岐サドル継手を固定するときに、サドル部が所定位置からずれてしまう場合がある。また、特許文献1の技術では、サドル部の軸方向両端部を引っ張るようにして固定するので、チェーンを締め込み過ぎると、サドル部の軸方向両端部が局所的に変形してしまい、本管の外周面とサドル部の内周面とを適切に密着できない恐れがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、サドルクランプ装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、本管に対して分岐サドル継手を適切に固定することができる、サドルクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、合成樹脂製の本管の外周面に分岐サドル継手を電気融着接合するときに用いるサドルクランプ装置であって、分岐サドル継手のサドル部の軸方向両端部を押さえる一対のサドル押えを有する押え部、両端部が押え部に接続されて、当該押え部と共に本管の周方向に延びる環状体を形成する連結部、および連結部に設けられて、当該連結部の長さを変更可能な長さ調整部を備え、サドル押えは、サドル部に形成される位置決め嵌合部と嵌合して、当該サドル部と押え部とを少なくとも本管の周方向に対して位置決めする位置決め部を有する、サドルクランプ装置である。
【0009】
第1の発明では、サドルクランプ装置は、合成樹脂製の本管の外周面に分岐サドル継手を電気融着接合するときに、分岐サドル継手を本管に固定するために用いられる。サドルクランプ装置は、一対のサドル押えを有する押え部と、押え部と共に本管の周方向に延びる環状体を形成する連結部と、連結部の長さを変更可能な長さ調整部を備える。また、サドル押えは、分岐サドル継手のサドル部に形成される位置決め嵌合部と嵌合して、サドル部と押え部とを少なくとも本管の周方向に対して位置決めする位置決め部を有する。
【0010】
このようなサドルクランプ装置を用いて分岐サドル継手を本管に固定するときには、サドル押えの位置決め部とサドル部の位置決め嵌合部とを嵌合させた状態で、一対のサドル押えをサドル部の両端部上に載置すると共に、押え部と連結部とで形成される環状体によって本管およびサドル部を抱き込むようにする。その後、長さ調整部を用いて、押え部と連結部とによって形成される環状体を縮径させる。これにより、サドル部の外周面が一対のサドル押えによって上から押さえ付けられ、本管の外周面とサドル部の内周面とが適切に密着した状態で、分岐サドル継手が本管に固定される。この際、押え部とサドル部とが本管の周方向に位置決めされているので、サドル部を本管の所定位置に取り付け易く、また、サドル押えの押圧力をサドル部に対して確実に作用させることができる。また、サドル押えがサドル部を上から押さえ付けるので、たとえばサドル部の内径が本管の外径よりも小さい分岐サドル継手であっても、本管に対して適切に密着させて固定させることができる。
【0011】
第1の発明によれば、位置決め部が分岐サドル継手の位置決め嵌合部と嵌合することによって、押え部とサドル部とが本管の周方向に位置決めされるので、サドル部を本管の所定位置に取り付け易い。また、押え部とサドル部とが位置決めされることで、サドル押えの押圧力をサドル部に対して確実に作用させることができる。したがって、本管に対して分岐サドル継手を適切に固定することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、位置決め嵌合部として端子カバーを用いる。
【0013】
第2の発明では、サドル押えの位置決め部と嵌合する位置決め嵌合部として、分岐サドル継手のサドル部に形成される端子カバーが用いられる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、押え部は、一対のサドル押え間の距離を変更可能に、当該サドル押え同士を本管の軸方向に連結する連結支持部を有する。
【0015】
第3の発明では、押え部は、一対のサドル押え部と、サドル押え同士を本管の軸方向に連結する連結支持部とを有し、一対のサドル押え間の距離は、変更可能とされる。
【0016】
第3の発明によれば、一対のサドル押え間の距離が変更可能であるので、分岐サドル継手に対して押え部を取り付け易い。また、端子カバー間の距離が異なる複数の分岐サドル継手にサドルクランプ装置を適用できる。
【0017】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、サドル押えは、位置決め部として位置決め嵌合部が挿通される嵌合孔部を有し、本管の軸方向における位置決め嵌合部の両側において、サドル部を押さえる。
【0018】
第4の発明では、サドル押えに形成される位置決め部は、端子カバー等の位置決め嵌合部が挿通される嵌合孔部であって、サドル押えは、本管の軸方向における位置決め嵌合部の両側においてサドル部を押さえる。
【0019】
第4の発明によれば、電熱線が埋め込まれる部分に対してサドル押えの押圧力を適切に作用させることができる。
【0020】
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、サドル押えのサドル部に対する当接面は、サドル部の外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する湾曲面とされる。
【0021】
第5の発明では、サドル押えの当接面は湾曲面とされ、この湾曲面の曲率半径は、サドル部の外周面の曲率半径よりも大きくなるように設定される。ただし、ここで言うサドル部の外周面の曲率半径とは、本管の外周面に対してサドル部の内周面全体を当接させたときの曲率半径を言う。
【0022】
第5の発明によれば、サドル押えがサドル部の周方向中央部(頂点)を押え易くなり、本管に対してサドル部を適切に密着させることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、位置決め部が分岐サドル継手の位置決め嵌合部と嵌合することによって、押え部とサドル部とが本管の周方向に位置決めされるので、サドル部を本管の所定位置に取り付け易い。また、押え部とサドル部とが位置決めされることで、サドル押えの押圧力をサドル部に対して確実に作用させることができる。したがって、本管に対して分岐サドル継手を適切に固定することができる。
【0024】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、この発明の一実施例であるサドルクランプ装置10は、ポリエチレン等の合成樹脂製の本管100の外周面に対して分岐サドル継手110を電気融着接合するときに用いられる固定具である。詳細は後述するように、このサドルクランプ装置10は、サドル部112の内径が本管100の外径よりも小さい分岐サドル継手110を本管100に取り付ける場合に、特に有用なものである。
【0027】
先ず、サドルクランプ装置10の具体的な説明の前に、
図2−
図4を参照して、この実施例で用いる分岐サドル継手110の構成について簡単に説明しておく。この分岐サドル継手110は、基本的には水道配水管を不断水分岐するための継手であるが、不断水分岐に用いることに限定されず、たとえば、新規に敷設する水道配水管の断水状態での分岐、或いは、下水管およびガス管などの分岐に用いることも可能である。また、以下で説明する分岐サドル継手110は、単なる一例であり、その具体的構成は、適宜変更され得る。
【0028】
図2−
図4に示すように、分岐サドル継手110は、EF(エレクトロフュージョン)サドル継手であって、本管100と同種の熱融着可能な合成樹脂によって一体的に形成されるサドル部112および分岐管部114を備える。この実施例では、サドル部112および分岐管部114のそれぞれは、ポリエチレンによって形成される。
【0029】
サドル部112は、所定の内径(曲率半径)を有する断面円弧状の湾曲板状体であり、その中央部には、平面視略真円形の分岐孔116が形成される。サドル部112の軸方向の長さは、たとえば160mmであり、その厚さは、たとえば10mmである。また、この実施例におけるサドル部112は、取り付けられる本管100の外径よりも小さい内径を有する。つまり、サドル部112の内周面の曲率半径は、本管100の外周面の曲率半径よりも小さい。この実施例では、本管100の外径が250mmであるのに対して、サドル部112の内径が180mmである場合を想定している。さらに、本管100の外周面に密着させたときのサドル部112の内周面の中心角は、45度以上110度以下の範囲に設定されることが好ましく、この実施例では、71度である。
【0030】
サドル部112の内周面側、すなわち本管100との接合面側には、分岐孔116を中心にして渦巻き状または葛折り状などの任意の形状に配置された電熱線118が埋設される。電熱線118の両端部は、サドル部112の外周面から突出して形成される電源接続端子120に接続される。電源接続端子120は、サドル部112の軸方向両端部に配置されており、この電源接続端子120を電源に接続して、電熱線118に電流を流すことによって、サドル部112および本管100の接合面の樹脂が加熱溶融される。また、電源接続端子120の周囲は、サドル部112から突出する円筒状の端子カバー122によって覆われている。この実施例では、この端子カバー122が、後述するサドルクランプ装置10のサドル押え30の位置決め部36と嵌合する位置決め嵌合部として用いられる。さらに、サドル部112の外周面には、本管100の軸方向における電源接続端子120の内側(分岐管部114側)に、サドル部112および本管100の融着面同士が融着したことを示すインジケータ124が形成される。
【0031】
また、分岐孔116の周縁部には、サドル部112の径方向外側に向かって立ち上がる分岐管部114が形成される。分岐管部114は、サドル部112から突出する短管状の分岐部本体126と、分岐部本体126の軸方向中央部から側方に突出する短管状の分岐管接続部128とを含む。この分岐管接続部128に継手などを介して分岐管(図示せず)が接続される。
【0032】
分岐部本体126の上端部には、その上端開口を封止するためのキャップ130が装着される。また、分岐部本体126の内周面には、その略全体に雌ねじ部が形成され、分岐部本体126の内部には、穿孔カッタ132が軸方向(上下方向)に移動可能に設けられる。
【0033】
サドルクランプ装置10は、このような分岐サドル継手110のサドル部112と本管100とを電気融着接合するときに、本管100の外周面に対して分岐サドル継手110のサドル部112の内周面を密着させて固定するために用いられる。以下、サドルクランプ装置10の構成について具体的に説明する。
【0034】
図1および
図5を参照して、サドルクランプ装置10は、一対のサドル押え30を有する押え部20と、押え部20と共に本管100の周方向に延びる環状体を形成する連結部22と、連結部22の長さを変更可能な長さ調整部24とを備える。この実施例では、これら押え部20、連結部22および長さ調整部24を備えるサドルクランプ装置10は、大別して2つの部品、すなわち、着脱可能に接続されるサドル押え部品12とクランプ部品14とによって構成される。
【0035】
図6および
図7に示すように、サドル押え部品12は、矩形枠状の押え部20と、連結部22の一部を構成する連結爪26とを含む。サドル押え部品12は、ステンレス鋼などによって形成される。
【0036】
押え部20は、分岐サドル継手110のサドル部112の軸方向両端部を上から押さえる一対のサドル押え30を備え、一対のサドル押え30の両端部同士は、一対の連結支持部32によって本管100の軸方向に連結される。具体的には、サドル押え30は、本管100の軸方向と直交する方向に延びる矩形板状に形成され、サドル押え30の両端部には、本管100の軸方向に延びる取付孔が形成される。一方、連結支持部32は、棒状に形成される。そして、連結支持部32の両端部がサドル押え30の取付孔に差し込まれることで、サドル押え30と連結支持部32とが一体化された矩形枠状の押え部20が形成される。
【0037】
ここで、サドル押え30の一方は、連結支持部32に対して固定ピン等を用いて固定される。これに対して、サドル押え30の他方は、連結支持部32に対して摺動可能かつ着脱可能となっており、ノブ螺子34を締め込むことで連結支持部32の所望位置に固定可能となっている。すなわち、連結支持部32は、一対のサドル押え30間の距離を変更可能に、サドル押え30同士を連結している。このように、サドル押え30間の距離を変更可能としておくことで、分岐サドル継手110に対して押え部20を取り付け易くなり、また、端子カバー122間の距離が異なる複数の分岐サドル継手110に対してサドルクランプ装置10を適用可能となる。
【0038】
また、サドル押え30の中央部には、位置決め部36が形成される。この位置決め部36は、分岐サドル継手110の端子カバー(位置決め嵌合部)122と嵌合することによって、押え部20に対して分岐サドル継手110のサドル部112を少なくとも本管100の周方向に位置決めするものである。この実施例では、サドル押え30は、位置決め部36としてサドル押え30を厚み方向に貫通する嵌合孔部を有し、位置決め部36には、端子カバー122とインジケータ124とが挿通される(
図9参照)。すなわち、この実施例の位置決め部(嵌合孔部)36は、端子カバー122およびインジケータ124を囲繞するように形成される長孔であって、サドル押え30は、本管100の軸方向における端子カバー122の両側において、サドル部112を押さえる。また、この実施例の位置決め部36は、押え部20に対してサドル部112を本管100の軸方向にも位置決めする。
【0039】
また、サドル押え30のサドル部112に対する当接面(内面)30aは、湾曲面とされる。この当接面30aの曲率半径は、サドル部112の外周面の曲率半径よりも0.5−10.0%の範囲で大きく設定されることが好ましく、0.5−5.0%の範囲で大きく設定されることがより好ましい。これにより、後述のように分岐サドル継手110のサドル部112を適切に押さえ付けることができるからである。ただし、この場合のサドル部112の外周面の曲率半径とは、本管100の外周面に対してサドル部112の内周面全体を当接させたときの曲率半径を言う。この実施例では、本管100の外径が250mm(つまり曲率半径が125mm)であって、サドル部112の厚みが10mmであるので、本管100の外周面に対してサドル部112の内周面全体を当接させたときのサドル部112の外周面の曲率半径は、135mmである。これに対して、サドル押え30の当接面30aの曲率半径は、140mmであり、サドル部112の外周面の曲率半径よりも3.7%大きく設定されている。
【0040】
さらに、サドル押え30の両端部には、連結爪26が回動可能に設けられる。連結爪26は、平棒状のアーム部40とL字状の爪部42とを有する。アーム部40の一方端部は、サドル押え30の端部に設けられた支軸44に連結され、この支軸44を支点として、アーム部40がサドル押え30に対して回動可能とされる。また、爪部42の一方端部は、アーム部40の他端部に設けられた支軸46に連結され、この支軸46を支点として、爪部42がアーム部40に対して回動可能とされる。さらに、爪部42の中央部分の屈曲部には、ローラ48が設けられる。後述のようにサドルクランプ装置10を締め込むときには、本管100に対してこのローラ48が当接することで、本管100を傷付けることなく締込み作業を円滑に行うことができる。
【0041】
一方、
図8に示すように、クランプ部品14は、サドル押え30の一方の爪部42と着脱可能に接続される第1接続部50と、他方の爪部42と着脱可能に接続される第2接続部52と、第1接続部50および第2接続部52を連結するチェーン54とを備える。これら第1接続部50、第2接続部52およびチェーン54は、連結部22の一部を構成するものである。また、第1接続部50には、連結部22の長さを変更可能(つまり締付可能)な長さ調整部24が設けられる。
【0042】
クランプ部品14としては、特開2010−60039号公報に開示されるような公知のチェーンクランプと同様のものを用いることができる。したがって、ここでは簡単な説明に留める。
【0043】
チェーン54は、ローラチェーンである。チェーン54の所定箇所には、個々のチェーン要素を連結するピンに代えて、チェーン54の長さを本管100の外周長に対応した長さに調整するための複数の係合ピン54aが突設されている。そして、チェーン54の一方端部側は、第2接続部52の連結棒56に固定的に連結され、チェーン54の他端部側は、いずれかの係合ピン54aが選択されて、第1接続部50の連結棒62に対して着脱可能に連結される。
【0044】
第2接続部52は、枠状体であって、チェーン54が連結固定される連結棒56と、サドル押え30の爪部42に係止される係止部58とを備える。連結棒56および係止部58の端部同士のそれぞれは、プレート60によって連結固定される。
【0045】
一方、第1接続部50は、端部同士のそれぞれがプレート66で連結固定された連結棒62と支持棒64とを備える。支持棒64には、これと直交する方向にねじ棒68が螺合されており、このねじ棒68の下端部には、サドル押え30の爪部42に係止される可動係止部70が設けられる。ねじ棒68の上端部に設けられるハンドル72を回動させると、支持棒64に対してねじ棒68が上下動し、これに伴って、可動係止部70が連結棒62と支持棒64との間で上下動する。すなわち、支持棒64、ねじ棒68および可動係止部70等によって長さ調整部24が構成され、可動係止部70が連結棒62側に移動してチェーン54が緊張することで、押え部20と連結部22とによって形成される環状体が縮径される。
【0046】
続いて、このようなサドルクランプ装置10を用いて、本管100に分岐サドル継手110を固定する方法について説明する。
【0047】
図1と共に
図9を参照して、分岐サドル継手110を固定する際には、先ず、本管100の所定位置に分岐サドル継手110を載置した後、サドルクランプ装置10のサドル押え部品12を分岐サドル継手110に取り付ける。サドル押え部品12を取り付けるときには、先ず、サドル押え部品12を分割する。すなわち、サドル押え部品12のノブ螺子34を緩めて、他方側のサドル押え30を連結支持部32から取り外す。次に、分岐サドル継手110の分岐管部114を両側から挟み込むようにして、取り外しておいたサドル押え30を連結支持部32に連結してサドル押え部品12を一体化し、一対のサドル押え30をサドル部112の両端部上に載置する。このとき、各サドル押え30の位置決め部(嵌合孔部)36には、端子カバー122とインジケータ124とを挿通(嵌合)するようにしておく。これによって、サドル部112は、サドル押え30(つまり押え部20)に対して本管100の周方向および軸方向に位置決めされる。その後、ノブ螺子34を締め込むことで、連結支持部32に対して他方側のサドル押え30を固定する。
【0048】
次に、サドル押え部品12にクランプ部品14を取り付ける。すなわち、クランプ部品14を本管100に巻き回すようにして、サドル押え部品12の爪部42のそれぞれに、クランプ部品14の係止部58および可動係止部70を片方ずつ係止させる。これにより、本管100の周方向に延びる環状体が押え部20と連結部22とによって形成され、この環状体、つまりサドルクランプ装置10によって本管100とサドル部112とが抱き込まれる。
【0049】
その後、クランプ部品14のハンドル72(長さ調整部24)を締め込むことによって、押え部20と連結部22とによって形成される環状体を縮径させる。これにより、サドル部112の外周面が一対のサドル押え30によって上から押さえ付けられ、本管100の外周面とサドル部112の内周面とが密着した状態で、分岐サドル継手110が本管100に固定される。
【0050】
ここで、この実施例で用いる分岐サドル継手110のサドル部112は、本管100の外径よりも小さい内径を有する。このため、サドルクランプ装置10を締め込む前においては、
図10に示すように、本管100の外周面とサドル部112の内周面との間には隙間Sが形成される。このような状態から、サドルクランプ装置10を締め込むと、一対のサドル押え30によってサドル部112の両端部が上から押さえ付けられ、サドル部112が拡径方向に徐々に変形する。そして、サドルクランプ装置10を締め込んだ後は、
図11に示すように、隙間Sは無くなり、サドル部112の内周面の全体が本管100の外周面に対して適切に密着される。すなわち、サドルクランプ装置10を用いることによって、サドル部112の内径が本管100の外径よりも小さい分岐サドル継手110であっても、本管100に対して適切に密着させて固定することができる。
【0051】
また、この際、サドル押え30の当接面30aが、サドル部112の外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する湾曲面とされていることで、サドル押え30がサドル部112の周方向中央部(頂点)を優先的に押さえ易くなり、本管100に対してサドル部112を適切に密着させることができる。すなわち、サドルクランプ装置10の締込み時(締め込み途中)においては、サドル押え30がサドル部112の周方向中央部を押さえ付けることで、サドル部112を拡径方向にスムーズに変形させることができる。また、サドルクランプ装置10の締込み後(密着固定時)においては、電熱線118が埋め込まれる部分の押圧力が大きめとなるように、サドル部112の軸方向両端部の周方向全体をバランスよく押圧することができる。ここで、このサドルクランプ装置10の締込み時および締込み後においては、位置決め部36と端子カバー122との嵌合によって押え部20とサドル部112とが位置決めされている。つまり、サドル押え30は、サドル部112に対して周方向にずれることがないので、サドル押え30の押圧力をサドル部112に対して確実に作用させることができ、上述の効果は適切に発揮される。
【0052】
さらに、サドル押え30は、本管100の軸方向における端子カバー122の両側において、サドル部112を押さえる。つまり、サドル押え30は、端子カバー122よりも分岐管部114に近い部分においてもサドル部112を押さえるので、電熱線118が埋め込まれる部分に対して適切に押圧力を作用させることができる。
【0053】
以上のようにして、サドルクランプ装置10を用いて本管100と分岐サドル継手110とを固定した後は、この状態を維持したまま、本管100とサドル部112とを電気融着接合する。すなわち、サドル部112内に埋設した電熱線118に通電して発熱させ、本管100の外周面とサドル部112の内周面とを融着接合する。サドルクランプ装置10は、本管100と分岐サドル継手110のサドル部112との融着接合部分が十分に冷却された後、取り外して回収しておく。その後、分岐サドル継手110の分岐管接続部128に対して分岐管(図示せず)を接続すると共に、穿孔カッタ132を用いて本管100を穿孔する。これによって、本管100と分岐管とが分岐サドル継手110を介して連通される。
【0054】
以上のように、この実施例によれば、位置決め部36が分岐サドル継手110の端子カバー122と嵌合することによって、押え部20とサドル部112とが本管100の周方向に位置決めされるので、サドル部112を本管100の所定位置に取り付け易い。また、押え部20とサドル部112とが位置決めされることで、サドル押え30の押圧力をサドル部112に対して確実に作用させることができる。したがって、本管100に対して分岐サドル継手110を適切に固定することができる。
【0055】
また、この実施例によれば、サドル押え30がサドル部112を上から押さえ付けることによって、本管100の外周面とサドル部112の内周面とを密着させるので、サドル部112の内径が本管100の外径よりも小さい分岐サドル継手110であっても、本管100に対して適切に密着させて固定することができる。したがって、融着不良が発生し難い。
【0056】
さらに、サドル押え30がサドル部112を上から押さえ付けるので、サドル部112に対してサドルクランプ装置を取り付けるための係止用突起を形成する必要がない。したがって、サドル部112の形状を単純化でき、分岐サドル継手110の製造コストを低減できる。
【0057】
なお、上述の実施例では、互いに着脱可能なサドル押え部品12とクランプ部品14とによってサドルクランプ装置10を構成するようにしたが、これに限定されず、サドルクランプ装置10の具体的構成については適宜変更可能である。たとえば、サドル押え部品12の一方端部とクランプ部品14の一方端部とは、固定的に連結されていてもよい。すなわち、押え部20と連結部22とによって形成される環状体は、少なくとも周方向における任意の一ヵ所が開放可能であればよい。また、連結部22に設けられる長さ調整部24の位置および具体的機構も適宜変更可能である。
【0058】
また、上述の実施例では、サドル押え30に連結爪26を設ける、つまり押え部20のサドル押え30に連結部22を接続するようにしたが、連結部22は、押え部20の連結支持部32に接続することもできる。
【0059】
さらに、上述の実施例では、位置決め部36である嵌合孔部として、長孔をサドル押え30に形成したが、嵌合孔部は、必ずしも長孔である必要はなく、その具体的形状は適宜変更可能である。また、嵌合孔部は、必ずしも周方向に完全に閉じられた孔である必要はなく、嵌合孔部には、その周縁部に細いスリットが形成されていてもよい。
【0060】
さらにまた、上述の実施例では、サドル押え30が、本管100の軸方向における端子カバー122の両側においてサドル部112を押さえるようにしたが、必ずしも端子カバー122の両側を押さえる必要はない。つまり、本管100の軸方向に形成される位置決め部36は、本管100の軸方向に開放された切欠きであってもよい。
【0061】
また、上述の実施例では、サドルクランプ装置10によって固定する分岐サドル継手110として、サドル部112の内径が本管100の外径よりも小さいものを例示したが、サドルクランプ装置10は、サドル部112の内径が本管100の外径と同じまたは大きい分岐サドル継手110に対しても適用可能である。
【0062】
さらに、上述の実施例では、サドル押え30の位置決め部36と嵌合する位置決め嵌合部として、サドル部112に形成される端子カバー122を利用したが、端子カバー122以外のものを利用することもできる。たとえば、位置決め嵌合部は、位置決め部36との嵌合専用(位置決め専用)に、サドル部112に別途形成した突起などであってもよい。
【0063】
さらにまた、上述の実施例では、分岐サドル継手110としてEFサドル継手を例示したが、これに限定されず、分岐サドル継手110は、合成樹脂製のサドル部112に金属製の分水栓が分岐管部114として設けられた(つまり分岐管部114に分水栓を有する)、EFサドル付分水栓であってもよい。
【0064】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。