【解決手段】ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを含む塗料組成物で道路を塗装する方法であって、主剤と硬化剤のそれぞれを50〜70℃に加温し、それぞれの粘度を100〜300cPとする工程と、その主剤と硬化剤とを別々に塗装ガンへ送り込み、主剤:硬化剤の体積比が1.00:1.05〜1.00:0.95の範囲で塗装ガン内にて衝突混合させて、得られた混合物が該塗装ガンの先端部に取り付けられたスタティック混合機を通って、道路に吹き付けられ、道路の塗装が行われる工程とを含むことを特徴とする方法である。
【背景技術】
【0002】
主剤と硬化剤から構成されるような2液型塗料組成物を用いて道路を塗装する方法としては、塗装ガンを用いるスプレー塗装が好適に利用される。そして、このような塗装手段は、主剤と硬化剤とを混合するタイミングによって分類できる。まず、「衝突混合方式」と呼ばれる手法が知られている。この手法は、主剤と硬化剤とを別々に塗装ガンへ送り込み、塗装ガン中において両液を衝突により混合させ、混合物を調製し、これを道路へ吹き付ける手法である。また、「スタティック混合方式」と呼ばれる手法も知られている。この手法は、塗装ガンへ送り込む前に、例えば塗装ガンの数メートル手前で、スタティックミキサーを用いて主剤と硬化剤とのプレミックスを行い、この予備混合物を塗装ガンの直前で再混合を行い、混合物を調製し、該混合物を塗装ガンを介して道路へ吹き付ける手法である。
【0003】
例えば、特開平11−226456号公報(特許文献1)には、「衝突混合方式」の塗装手段に利用できるスプレーガンが記載されている。「衝突混合方式」の塗装手段では、スプレーガンの混合室で主剤と硬化剤とを混合するため、送液ホース内での硬化詰まりを生じないという利点があるものの、主剤と硬化剤が十分に混ざり合わず、本来の塗膜強度が発揮されない弱い塗膜に仕上がるという課題がある。
【0004】
一方、特開2005−296896号公報(特許文献2)には、「スタティック混合方式」の塗装手段に利用できる噴霧装置が記載されている。「スタティック混合方式」の塗装手段では、主剤と硬化剤を十分に混合できるため、理論的には混合性が良いという利点があるものの、実塗装環境では混合機内で塗料が固まる不具合が起こり易いため、主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)のバランスが崩れやすく、塗装後の硬化不良を起こし易いという課題がある。
「スタティック混合方式」は、塗装作業中に体積比のバランスを管理することは非常に困難であり、塗装後の塗膜が硬化不良のため汚れが付着しやすい等の不具合が発生することにより、塗装作業時の問題が顕在化するという状況に陥り易い方式である。
【0005】
このように、従来の「衝突混合方式」の塗装手段や「スタティック混合方式」の塗装手段にはそれぞれ一長一短がある。
【0006】
また、特開2006−43524号公報(特許文献3)には、主剤および硬化剤を衝突させて混合する混合室に通じるオリフィスが形成されたミキシングモジュールを備えた、二液硬化型ウレタン塗料を噴出するための衝突混合スプレーガンが提案されており、かかるスプレーガンの使用により、主剤と硬化剤の混合性を改善できることが記載されている。また、特開2009−72690号公報(特許文献4)には、第1原料と第2原料とを混合して噴霧する噴霧器と、供給ホースと、ホースヒータと、ホース温度調節器とを備える噴霧装置が提案されており、かかる噴霧装置の使用により、ビニルエステル樹脂系の被覆膜を作製できることが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の道路の塗装方法について詳細に説明する。本発明の道路の塗装方法は、ポリオール樹脂及びアミンを含む主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを含む塗料組成物で道路を塗装する方法であって、主剤と硬化剤のそれぞれを50〜70℃に加温し、それぞれの粘度を100〜300cPとする工程と、前記工程により温度及び粘度が調整された主剤と硬化剤とを別々に塗装ガンへ送り込み、主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が1.00:1.05〜1.00:0.95の範囲で塗装ガン内にて衝突混合させて、得られた混合物が該塗装ガンの先端部に取り付けられたスタティック混合機を通って、道路に吹き付けられ、道路の塗装が行われる工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の塗装方法において被塗装物である道路には、特に制限されず、一般道路、高速道路、歩道等が挙げられるが、塗膜の密着性の観点からアスファルト舗装道路が好ましい。アスファルト舗装は、通常、様々な粒度の骨材とアスファルトを混合させたアスファルト混合物を表層に用いており、使用する骨材の粒度や施工方法によって区分される。例えば、耐摩耗性等に優れる密粒度アスファルトや透水性に優れる開粒度アスファルト等がある。
【0020】
本発明の塗装方法に用いる塗料組成物(以下、2液型塗料組成物ともいう)は、主剤と硬化剤とから構成されており、塗装時に主剤と硬化剤とを混合することで使用される。上記塗料組成物の塗装によって得られる塗膜は、イソシアネートとポリオール樹脂の反応やイソシアネートとアミンの反応によって合成されるウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を含む。かかる樹脂は、ウレア結合を有するため、ウレタン樹脂と比較しても耐久性に優れる。
【0021】
上記2液型塗料組成物において、主剤及び硬化剤は、それぞれが無溶剤タイプであることが好ましい。「無溶剤タイプ」とは、水や有機溶剤等の溶媒を含まないものを意味するが、実際には、主剤や硬化剤に含まれる配合剤には溶媒を含んだ状態で市販されているものもあり、主剤や硬化剤の調製時にかかる溶媒を完全に除去することが困難な場合もある。このため、本発明において、無溶剤主剤及び無溶剤硬化剤とは、水や有機溶剤等の溶媒の含有量が5質量%以下、好ましくは0質量%の主剤及び硬化剤を意味する。
【0022】
上記2液型塗料組成物において、主剤はポリオール樹脂及びアミンを含み、硬化剤はイソシアネートを含むが、ここで、ポリオール樹脂とイソシアネートのSP値はいずれも10〜13の範囲内にあることが好ましく、10.5〜12.5の範囲内にあることが更に好ましい。ポリオール樹脂とイソシアネートのSP値が上記特定した範囲内にあれば、主剤と硬化剤の混合性を更に向上できると共に、道路との密着性を向上させることができる。舗装の目的から道路表面にはアスファルト等が存在しているが、上記特定した範囲のSP値を有するポリオール樹脂とイソシアネートであれば、アスファルトを溶かして溶け込み、道路との密着性が向上するものと考えられる。
【0023】
なお、SP値(溶解パラメータ)とは、各単位官能基当たりの凝集エネルギーと分子体積をもとに決定される、溶解力を示す指標であり、本発明においては、Fedorsの式を用いて算出した。Fedorsの式の詳細については、R.F.Fedorsにより、Polymer Engineering and Science,14,(2),1974,p.147に記載されている。
【0024】
本発明の塗装方法においては、塗装時に主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が1.00:1.05〜1.00:0.95の範囲内で混合されることが好ましい。主剤と硬化剤の体積比が上記特定した範囲内にあれば、塗装や保管時の管理が容易になる。例えば、体積比が上記特定した範囲内にある主剤と硬化剤を想定し、この主剤中に含まれるポリオール樹脂の水酸基とアミンのアミノ基の合計を1当量とした場合に、硬化剤中に含まれるイソシアネート基の量が0.5〜1.5当量となるように、ポリオール樹脂、アミン及びイソシアネートの配合量を調整することで、実際に使用可能な塗料組成物を調製することができる。
【0025】
上記主剤に用いるポリオール樹脂は、水酸基を2個以上有する樹脂であり、イソシアネート基と反応することでウレタン結合を形成する。ここで、ポリオール樹脂は、分子量が350〜800の範囲内にあることが好ましい。なお、本発明において、ポリオール樹脂の分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
【0026】
上記ポリオール樹脂は、水酸基価が200〜400の範囲内にあることが好ましい。特に、上記ポリオール樹脂は、粘度や硬化時間のバランスを取る上で、水酸基価が300以上で且つ400以下であるポリオール樹脂(a)と、水酸基価が200以上で且つ300未満であるポリオール樹脂(b)という水酸基価の異なる2種類のポリオール樹脂を含むことが好ましく、該ポリオール樹脂(a)と該ポリオール樹脂(b)の質量比(a:b)が9:1〜5:5の範囲内であることが好ましい。本発明の塗装方法においては主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が1.00:1.05〜1.00:0.95の範囲内で混合されることから、水酸基価の高いポリオール樹脂(a)を用いなければイソシアネート基が過剰になってしまう。また、水酸基価の高いポリオール樹脂(a)を用いることで、硬化速度が上昇し、硬い塗膜が形成される傾向にある。一方、ポリオール樹脂の水酸基価が高くなるほど、粘度も高くなるため、粘度や硬化時間のバランスを取る上では、水酸基価の高いポリオール樹脂(a)と水酸基価の低いポリオール樹脂(b)の併用が好ましい。ポリオール樹脂(a)の水酸基価は300以上で且つ350以下であることが好ましく、ポリオール樹脂(b)の水酸基価は250以上で且つ300未満であることが好ましい。ここで、水酸基価とは、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。
【0027】
ポリオール樹脂としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。アクリルポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと重合性不飽和基を有する化合物を共重合して得られる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを除く重合性不飽和基を有する化合物としては、スチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これら重合性不飽和基を有する化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリエステルポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の多塩基カルボン酸とを脱水縮合反応して得られる。また、この脱水縮合反応の際に、大豆油、亜麻仁油、米ぬか油、綿実油、桐油、ひまし油、やし油等の天然油を多価アルコールで分解して得られる水酸基含有脂肪酸エステルを多価アルコールの全部又は一部として使用することもできる。ポリウレタンポリオールは、上記多価アルコールと、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のポリイソシアネートとをアルコール過剰の条件で反応して得られる。また、上記水酸基含有脂肪酸エステルを多価アルコールの全部又は一部としてポリウレタンポリオールの合成にも使用できる。ポリエーテルポリオールは、例えば、上記多価アルコールや水酸基含有脂肪酸エステルに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させて得られる。なお、これらポリオール樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記2液型塗料組成物において、ポリオール樹脂の含有量は、後述するように、アミンやイソシアネートの官能基の量に応じて適宜調整されるが、例えば、主剤中におけるポリオール樹脂の含有量は、50〜85質量%であることが好ましい。
【0029】
上記主剤に用いるアミンは、ポリオール樹脂より速くイソシアネートと反応するので、ポリオール樹脂を単独で使用する場合と比べて硬化完了までの時間を短くしたり、硬化中の塗料の粘性を調整したりすることができる。
【0030】
アミンは、アミノ基を複数有する化合物が好ましく、具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアルキレンポリアミン;ノルボルナンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;ジエチルジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジエチルメチルベンゼンジアミン(1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン等)、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。なお、これらアミンは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記2液型塗料組成物において、アミンの含有量は、後述するように、ポリオール樹脂やイソシアネートの官能基の量に応じて適宜調整されるが、例えば、主剤中におけるアミンの含有量は、10〜30質量%であることが好ましい。
【0032】
上記2液型塗料組成物において、主剤は、更に、シリコーン系表面調整剤を含むことが好ましい。シリコーン系表面調整剤を配合することで、塗料組成物の分散安定性が向上し、塗装ムラにより生じる白いまだら模様の発生を防ぐことができ、美観性に優れる塗膜が得られる。シリコーン系表面調整剤としては、特に限定されず、市販品を好適に使用できるが、具体的には、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。主剤中におけるシリコーン系表面調整剤の含有量は、例えば、0.1〜0.5質量%であることが好ましい。
【0033】
上記2液型塗料組成物は、各種顔料を含むことができるが、道路を塗装する観点から、遮熱性顔料を含むことが好ましい。遮熱性顔料とは、近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光を吸収しない又は近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光の吸収率が小さい顔料を指す。遮熱性顔料としては、例えば、黒色遮熱性顔料、白色遮熱性顔料、赤色遮熱性塗料、青色遮熱性顔料、黄色遮熱性顔料等が挙げられる。黒色遮熱性顔料としては、例えば、アゾメチアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アニリン系顔料、複合酸化物焼成顔料等が挙げられ、白色遮熱性顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。これら遮熱性顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記2液型塗料組成物において、顔料は、主剤と硬化剤のどちらに配合されていてもよいが、通常、主剤に配合される。例えば、主剤中における顔料の含有量は、5〜25質量%であることが好ましい。
【0035】
上記硬化剤に用いるイソシアネートは、イソシアネート基(NCO基)を複数有する化合物であるが、例えば、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族のポリイソシアネートが含まれ、具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他、これらポリイソシアネートの変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートの各種変性体やイソホロンジイソシアネートの各種変性体が、硬化性や耐候性の観点から好ましい。これらポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、硬化剤中におけるイソシアネートの含有量は、80〜100質量%であることが好ましい。
【0036】
上記2液型塗料組成物において、イソシアネートの含有量は、ポリオール樹脂の水酸基とアミンのアミノ基の合計を1当量とした場合にイソシアネート基が0.5〜1.5当量であることが好ましい。
【0037】
上記2液型塗料組成物には、硬化触媒、分散剤、消泡剤、脱水剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0038】
上記2液型塗料組成物において、主剤及び硬化剤は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【0039】
上記2液型塗料組成物においては、主剤及び硬化剤は、それぞれ60℃における粘度が100cP〜300cPの範囲内にあることが好ましい。主剤と硬化剤の粘度が上記特定した範囲内にあれば、混合性を向上させることができる。本発明において粘度はB型粘度計(塗料液温60℃、回転数60rpm)によって、測定される値である。
【0040】
本発明の道路の塗装方法は、上述した塗料組成物で道路を塗装する方法であるが、まず、主剤と硬化剤のそれぞれを50〜70℃に加温し、それぞれの粘度を100〜300cPとする工程(第1の工程)を含む。上記特定した範囲の温度にある主剤と硬化剤の粘度が上記特定した範囲内にあれば、主剤と硬化剤の混合性を向上させることができる。なお、主剤と硬化剤を50〜70℃に加温する理由は、スプレー噴霧に適した流動性にし、かつ主剤と硬化剤の混合性を向上させるためである。
【0041】
本発明の道路の塗装方法においては、次に、上記第1の工程において温度及び粘度が調整された主剤と硬化剤とを別々に塗装ガンへ送り込み、主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が1.00:1.05〜1.00:0.95の範囲で塗装ガン内にて衝突混合させて、得られた混合物が該塗装ガンの先端部に取り付けられたスタティック混合機を通って、道路に吹き付けられ、道路の塗装が行われる(第2の工程)。本発明の道路の塗装方法によれば、上記混合物が、塗装ガン内での衝突混合と、その後のスタティック混合機内での混合とを順番に受けることによって、主剤と硬化剤とを十分に混合させることができると共に、塗装装置内での塗料の硬化による不具合を防止することができる。衝突混合により得られた混合物がスタティック混合機内で混合される時間は、塗装装置内での塗料の硬化による不具合を防止する観点からあまり長くないことが好ましく、例えば、0.002秒〜2秒の範囲内であることが好ましく、0.002秒〜1秒の範囲内であることが更に好ましい。本願明細書においては、衝突混合により得られた混合物がスタティック混合機内に移動してから、スタティック混合機内を通過し、スタティック混合機よりも先端に設けられる吐出部から吐出されるまでの時間を「スタティック混合機内での混合時間」とする。
【0042】
本発明の道路の塗装方法においては、塗装ガン内にて衝突混合させる際の主剤(A)と硬化剤(B)の体積比(A:B)が1.00:1.05〜1.00:0.95の範囲内である。主剤と硬化剤の体積比が上記特定した範囲内にあれば、塗装ガンへの送液の管理が容易になる。
【0043】
本発明の道路の塗装方法においては、主剤と硬化剤との衝突混合を塗装ガン内において行うが、ここで、塗装ガンとしては、スプレー塗装に通常使用される塗装ガンのうち、衝突混合用のスプレーガンが使用できる。ここで、衝突混合は、塗装ガン内部にて圧力によってミスト化された主剤と硬化剤が衝突することによって行われる。
【0044】
本発明の道路の塗装方法においては、塗装ガン内にて衝突混合させて得られる混合物をスタティック混合機に供給することになるが、本発明においては、衝突混合の際にかける圧力により該混合物をスタティック混合機に供給し、更にはスタティック混合機よりも先端に設けられる吐出部から吐出させることが可能である。当然、上記混合物は、スタティック混合機内を通過する際にも、混合されている。ここで、スタティック混合機としては、後述する
図3に示されるようなスタティック混合機を使用できる。
【0045】
本発明の道路の塗装方法において、塗装ガン内にて衝突混合させて得られる混合物がスタティック混合機内を通過する際の流速は100〜1500cm/秒であることが好ましい。混合物の流速を上記特定した範囲内に調整することで、主剤と硬化剤の混合性が良好となり、外観や機械的強度が優れた塗膜となる。本発明の道路の塗装方法において、混合物の流速は、主剤および硬化剤の液温を調整することで容易に調整できる。
【0046】
また、本発明の道路の塗装方法において、塗装ガン内にて衝突混合させて得られる混合物がスタティック混合機内を通過する距離は、3〜10cmであることが好ましい。混合物が通過する距離が上記特定した範囲内であればスタティック混合機内で塗料が硬化し、ガン詰まりが発生することなく十分な混合性が得られる。
【0047】
本発明の道路の塗装方法において、塗装ガンとスタティック混合機の合計質量が2kg未満であることが好ましい。なお、塗装ガンとスタティック混合機の合計質量の下限は、特に限定されるものではないが、例えば1kg以上である。
【0048】
本発明の道路の塗装方法においては、スタティック混合機を通過する混合物を道路に吹き付けることで、道路の塗装が行われるが、本発明においては、衝突混合用のスプレーガンの先端に通常取り付けられている吐出部をスタティック混合機に取り付け、衝突混合の際にかける圧力を利用して該吐出部から吹き付けることができる。
【0049】
本発明の道路の塗装方法は、以下の図面に示されるようにして実施することができる。
図1は、本発明の道路の塗装方法の一例を説明するための図面であり、主剤及び硬化剤の加温から塗装ガンへの供給を詳細に説明する。
図2は、本発明の道路の塗装方法の一例を説明するための図面であり、塗装ガン内での衝突混合及びスタティック混合機内での混合、並びに吹き付けを詳細に説明する。
図3は、本発明の道路の塗装方法に使用できるスタティック混合機の一例を示す。
【0050】
図1に示されるように、主剤及び硬化剤は、別々のタンク中に置かれており、加温装置によって吸い上げられ、それぞれを独立して循環させながら、加温装置内のヒーターにより主剤及び硬化剤の加温を行う。なお、主剤及び硬化剤は、50〜70℃での粘度が100〜300cPとなるように調製されている。所定の温度まで主剤及び硬化剤を上昇させた後、それらを別々のライン(例えばホース)で衝突混合ガンに送液し、衝突混合ガン内部で衝突混合させる。
図1に示される工程には、通常の衝突混合方式の塗装装置が使用可能であるが、市販される塗装装置においては、加温装置を塗装機と称する場合もある。
【0051】
図2に示されるように、主剤及び硬化剤は、別々のラインから衝突混合ガンに供給され、衝突混合ガンの内部で衝突混合が行われる。また、
図2に示されるように、衝突混合ガンの先端にはスタティック混合機が取り付けられており、衝突混合により得られる混合物は、衝突混合の際にかける圧力により、スタティック混合機を通って更に混合され、噴霧される。なお、図示しないが、スタティック混合機の先端には吐出部が取り付けられている。
【0052】
図3は、本発明の道路の塗装方法に使用できるスタティック混合機の一例を示す。図示例のスタティック混合機は、金属製のミキサーケースと、該ミキサーケースの内部に挿入されたプラスチック製スタティックミキサーとを備えており、該ミキサーケースの一方の端部を衝突混合ガンに取り付けて使用され、他方の端部には吐出部が取り付けられる。なお、図示例のプラスチック製スタティックミキサーは着脱可能であり、容易に交換可能である。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1〜9)
表1に示す配合処方と塗装条件に従って実施例1〜9の塗装試験を行った。
実施例1〜9の塗装試験に用いた塗装装置は、
図1〜
図2において説明したような構成を備えており、その詳細は以下の通りである。なお、この構成の塗装装置を用いた塗装方式を「衝突スタティック」と表記する。
加温装置(塗装機):ReactorE−XP2、グラコ製
衝突混合形エアレスガン:ProblerP−2、グラコ製
スタティックミキサーキット:スタティック径6mm、エレメント数8、ミキサー長さ5cm、グラコ製
スプレーチップ型番:751、グラコ製
スタティックミキサーキットを取り付けた衝突混合形エアレスガンの重量:1kg
【0055】
【表1】
【0056】
表1及び表2中の主剤に用いた配合剤を以下に示す。
ポリオール樹脂A・・・ひまし油変性ポリオール(商品名:URIC−H420、伊藤製油株式会社製)分子量:550、水酸基価:320
ポリオール樹脂B・・・ひまし油変性ポリオール(商品名:URIC−H62、伊藤製油株式会社製)分子量:450、水酸基価:260
芳香族ジアミン・・・ジエチルメチルベンゼンジアミン(商品名:ETHACURE100、ALBEMARLE社製)
遮熱性顔料A・・・酸化チタン系白色顔料(商品名:タイペークCR−97、石原産業株式会社製)
遮熱性顔料B・・・アゾメチアゾ系黒色顔料(商品名:クロモファインA−1103、大日精化株式会社製)
硬化触媒・・・ビスマストリス(2−ヘキサノエート)と2−エチルヘキサン酸亜鉛の混合触媒(商品名:BorchiKAt0244、OMG Borchers GMB社製)
ポリイソシアネート・・・脂肪族ポリイソシアネートビウレット変性体(商品名:デスモジュールN3200A、住化コベストロウレタン株式会社製)
溶剤・・・キシレン(住友化学工業株式会社製)
【0057】
(比較例1〜5)
表2に示す配合処方と塗装条件に従って比較例1〜5の塗装試験を行った。
比較例1の塗装試験に用いた塗装装置は、スタティック混合機を備えていない衝突混合方式の塗装装置である。具体的には、以下に示される加温装置と、該加温装置にホースを介して取り付けた衝突混合形エアレスガンと、該衝突混合形エアレスガンの先端に取り付けたスプレーチップとを備える塗装装置である。この構成の塗装装置を用いた塗装方式を「衝突混合」と表記する。
加温装置(塗装機):ReactorE−XP2、グラコ製
衝突混合形エアレスガン:ProblerP−2、グラコ製
スプレーチップ型番:751、グラコ製
比較例2の塗装試験に用いた塗装装置は、衝突混合ガンを備えていないスタティック混合方式の塗装装置である。具体的には、以下に示される加温装置と、該加温装置にホースを介して取り付けたスタティック混合機と、該スタティック混合機にホースを介して取り付けたエアレスガンと、該エアレスガンの先端に取り付けたスプレーチップとを備える塗装装置である。この構成の塗装装置を用いた塗装方式を「スタティック」と表記する。
加温装置(塗装機):ReactorE−XP2、グラコ製
スタティック混合機:スタティックミキサー径6mm、エレメント数32
エアレスガン:SG3、グラコ製
スプレーチップ型番:XHP851、グラコ製
比較例3の塗装試験に用いた塗装装置は、衝突混合ガンを備えていないスタティック混合方式の塗装装置である。具体的には、以下に示される加温装置と、該加温装置にホースを介して取り付けたスタティック混合機と、該スタティック混合機にホースを介して取り付けたエアレスガンと、該エアレスガンの先端に取り付けたスプレーチップとを備える塗装装置である。この構成の塗装装置を用いた塗装方式も、比較例2と同様に「スタティック」と表記する。
加温装置(塗装機):ハイドラキャットHP、グラコ製
スタティック混合機:スタティックミキサー径6mm、エレメント数18
エアレスガン:SG3、グラコ製
スプレーチップ型番:回転チップ429、グラコ製
比較例4及び5の塗装試験に用いた塗装装置は、実施例の塗装試験に用いた塗装装置と同じである。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例1〜9および比較例1〜5について各種評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。なお、塗膜強度の評価を除き、被塗装物として透水性アスファルト(ポーラスアスファルト)を用いた。
【0060】
(外観の評価)
塗装2時間後の塗膜外観を目視によって評価した。主剤と硬化剤の混合性が悪い場合、塗膜の白濁、色別れが発生し外観不良となる。評価の基準は以下の通りである。
○:塗膜外観に異常無し。
△:色別れなどの不具合が部分的に観察される。
×:色別れなどの不具合が塗膜全体に観察される。
【0061】
(汚染性の評価)
塗装から24時間後の塗膜にカーボン粉を散布した後、水洗し、ふき取った後の汚染状態を評価した。主剤と硬化剤の混合性が悪く、主剤と硬化剤が適正でない比率で混合された場合、十分な硬化時間が経過した場合においても塗膜に粘着性が残存し、汚れが付着しやすくなる。評価の基準は以下に示す。
○:カーボンによる汚染無し
△:部分的にカーボンによる汚染有り
×:全面的にカーボンによる汚染有り
【0062】
(低温環境下での乾燥性の評価)
外気温度5℃の環境下において塗装から2時間後の塗膜表面に触れたときの乾燥状態を評価した。主剤と硬化剤の混合性が悪い場合、塗膜の硬化速度が遅くなる。評価の基準を以下に示す。
○:塗膜に触れたときタックを感じない
△:塗膜に触れたときわずかにタックが残った状態
×:未硬化の状態
【0063】
(塗膜強度の評価)
JIS K 5600−5−9塗膜の機械的性質−耐摩耗性(摩耗輪法)に規定される方法に従って、塗膜硬度を評価した。具体的には、直径6.35mm中心孔をもった直径100mmの円盤状試験板に試験塗料を塗装し、十分乾燥させた後、以下の条件によって試験を行い、試験前と試験後の塗膜の摩耗減量を測定した。主剤と硬化剤の混合性が良好であると塗膜強度が向上する。ここで、塗膜減耗量が200mg以下であるとき、特に優れた塗膜強度を発揮している。なお、表中には塗膜減耗量(mg)を示す。
試験条件:
摩耗輪の種類:CS−17
荷重:1kg
回転数:5000回転
【0064】
(塗装作業性の評価)
以下の基準によって塗装作業性を評価した。
○:塗装作業を支障なく行うことが可能
×:塗装作業困難な不具合が発生
ここで、塗装作業困難な不具合とは、塗装ラインやガン内部などで硬化が起こり、塗装作業を直ちに継続することが困難な状況を示す。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】