特開2018-105462(P2018-105462A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-105462(P2018-105462A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】ダンパーとダンパーの製法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20180608BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20180608BHJP
   F16F 7/08 20060101ALI20180608BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20180608BHJP
【FI】
   F16F15/02 K
   F16F7/00 B
   F16F7/08
   B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-254553(P2016-254553)
(22)【出願日】2016年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】517001387
【氏名又は名称】岡田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140408
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英城
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
4F206
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AC01
3J048BD04
3J048BE12
3J048CB21
3J048EA31
3J066AA27
3J066BA01
3J066BB04
3J066BC01
3J066BD05
3J066BE06
4F206AA13
4F206AA23
4F206AA28
4F206AA45
4F206AH05
4F206JA07
4F206JB28
4F206JC02
(57)【要約】
【課題】設計の自由度が高く、製造コストが削減可能なダンパーを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)を含む熱可塑性樹脂を2種類用いて2色・異材質成形されたダンパー。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)を含む熱可塑性樹脂を2種類用いて2色・異材質成形されたダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパーにおいて、
前記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)を用いたことを特徴とするダンパー
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のダンパーにおいて、
前記ダンパーは、内側に円状の空間を有する外部部材と、前記円状の空間に合わせた大きさの内部部材とを備えて構成されることを特徴とするダンパー
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のダンパーにおいて、
前記ダンパーは、内側に筒状の空間を有する外部部材と、前記筒状の空間に合わせた大きさの内部部材とを備えて構成されることを特徴とするダンパー
【請求項5】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)を含む熱可塑性樹脂を2種類用いて2色・異材質成形するダンパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパーとダンパーの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンパーは運動エネルギーを減衰させるという効果を持つものである。この数年、市場では、このダンパーを有する製品が多く見かけられるようになった。例えば、車の助手席前にある収納ボックスで収納ボックスが開くときにスムーズに開くもの、家具引き出しがスムーズに開くものなどに使われてきている。
【0003】
このダンパーによって、開閉部などがスムーズに開閉・収納されることが可能になり、耐久性の向上や、高級感の演出が可能になり、商品価値を高めている。現在、ダンパーは、油圧や空圧を利用したものが主流として作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐306827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油圧や空圧を利用するためには、油や気体が漏れないようにするために、密閉しなければならないなど、製造難易度が高く、製造コストも高くなる。また、油圧や空圧を利用したダンパー機能を発揮させるために、一定の大きさが必要となり、さらに、形状が制限されてしまう。
【0006】
このため、大きさや形状の設計の自由度が高く、製造コストが削減可能なダンパーが求められてきた。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために設計の自由度が高く、製造コストが削減可能なダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)を含む熱可塑性樹脂を2種類用いて2色・異材質成形されたダンパー。
【0009】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)を含む熱可塑性樹脂を2種類用いて2色・異材質成形することによって、設計の自由度が上昇する。さらに、これらの熱可塑性樹脂の組み合わせは十分なトルクを発生し、ダンパー効果を発揮する。このため、大きさや形状の設計の自由度が高く、製造コストが削減可能なダンパーが提供できる。
【0010】
(2) (1)に記載のダンパーにおいて、前記熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)を用いたことを特徴とするダンパー
【0011】
熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)の2種類を用いて2色・異材質成形すると、製品として使いやすいダンパー効果が得られる。大きさや形状の設計の自由度が高く、製造コストが削減可能なダンパーが提供できる。
【0012】
(3) (1)または(2)に記載のダンパーにおいて、前記ダンパーは、内側に円状の空間を有する外部部材と、前記円状の空間に合わせた大きさの内部部材とを備えて構成されることを特徴とするダンパー
【0013】
2色・異材質成形によって、いわゆるロータリーダンパーのように、内側に円状の空間を有する外部部材と、円状の空間に合わさせた内部部材を備えたダンパーを様々な形状で製造可能になり、製造コストを下げることが可能になる。
【0014】
(4) (1)または(2)に記載のダンパーにおいて、前記ダンパーは、内側に筒状の空間を有する外部部材と、前記筒状の空間に合わせた大きさの内部部材とを備えて構成されることを特徴とするダンパー
【0015】
2色・異材質成形によって、いわゆるシリンダー状のダンパーのように、内側に筒状の空間を有する外部部材と、筒状の空間に合わさせた内部部材を備えたダンパーを様々な形状で製造可能になり、製造コストを下げることが可能になる。
【0016】
(5) ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)を含む熱可塑性樹脂を2種類用いて2色・異材質成形するダンパーの製造方法。
【0017】
上記によれば、二種類の熱可塑性樹脂の摩擦を利用して、衝撃を吸収することで、空圧や油圧によるダンパーと比べ、密閉する必要がないため設計の自由度が高くなる。また、2色・異材質成形するため、ダンパーの部品をそれぞれ作るよりも製造工程が少なくなり、製造コストを低下できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設計の自由度が高く、製造コストが削減可能なダンパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかるダンパー効果確認手法を説明する説明図である。
図2】本発明にかかるトルク測定方法を説明する説明図である。
図3】本発明にかかる生産されたダンパーを説明する説明図である。
図4】本発明にかかるダンパー効果確認の結果を説明する説明図である。
図5】本発明にかかるダンパー効果確認の結果を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
熱可塑性樹脂を利用して、弾性変形を利用し、多用な素材・部品を接合・実装することで、力学特性の機能を発揮させることに成功した。
【0021】
2色・異材質成形とは、一般的に、二種類の異なる熱可塑性樹脂材料を射出成形し、溶着し、一つの製品を作り出す手法である。
【0022】
しかし、出願人は、全く逆の発想で、溶着しづらい二種類の材料を使用し、その材料特性の違いによる摩擦特性を利用したダンパーを開発した。
【0023】
ダンパーの製造方法
本発明にかかるダンパーは、日精樹脂工業株式会社の2色成形機(DCE140-9E)を使用して製造された。製造方法は、以下の通りである。
【0024】
第1の工程は、2色成形機に金型を設置する工程である。図3に示すように、いわゆるロータリーダンパーのように、内側に円状の空間を有する外部部材と、円状の空間に合わさせた内部部材を備えたダンパーを作成するための金型を設置した。
【0025】
第2の工程は、2色成形機の2つのタンクに二種類の異なる熱可塑性樹脂材料を投入する工程である。今回用いた熱可塑性樹脂材料は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)である。
【0026】
第3の工程は、一次側の成形を行う工程である。上記に挙げられた熱可塑性樹脂材料の一つを一次側の金型に射出し、ロータリーダンパーの内部部材を保圧・冷却し固め成形する。
【0027】
第4の工程は、2色成形機の特徴である金型をロータリー回転する工程である。一次側で成形された内部部材を金型とともに回転移動する。
【0028】
第5の工程は、一次側の成形品の上に二次側を成形する工程である。一次側の成形品である内部部材の周りに、熱可塑性樹脂材料の一つを二次側の金型に射出し、二次側の成形品であるロータリーダンパーの外部部材を保圧・冷却し固め成形する。
【0029】
第6の工程は、固まった後の成形品を取り出す工程である。2色成形機から成形されたロータリーダンパーを取り出す。
【0030】
通常、2色成形機は2種類以上の異なる材質(樹脂などの材料)を組み合わせて一体成形するために使われる。例えば、着色アクリルと一般透明アクリルを組み合わせて作るカメラフィルターや、メッキ部品や、グリップ部分など2種類の材料によって一体の製品を作るために使われる。つまり、2種類の材料によって一つの部品を作ることを目的として使われており、本発明のように、2種類以上の異なる材質による別個の部材を作り、例えば、材質の違いによる摩擦を利用するダンパーを作ることは行われていなかった。
【0031】
ダンパー効果の確認器具
図1は、ダンパー効果を測定するための治具である。図1の(1)の矢印に示すように2色・異材質成形した開発ダンパー1を挿入する。図1の(2)に示すように、ネジでフタをする。図1の左下の写真に示すように、バーを持ち上げ、手を離すとバーが落ちる(図1の右下の写真参照)。
【0032】
測定方法
図2は測定方法を示す写真である。図2の(1)に示すように、図3に示す14種類のダンパーを治具に挿入する。図2の(2)に示すようにトルク測定器を準備する。図2の(3)に示すようにトルク測定器を治具のトルク測定箇所に挿入する。図2の(4)に示すように、トルク測定器を右に180度の位置まで回して(図2の(5)参照)、トルクを測定する。
【0033】
測定結果
図4は、図1に示す測定治具のレバーを135度の位置に持ち上げ、手を離したときの結果である。開発ダンパーなしで、135度の位置からバーを離すと0.2秒でバーが下端に達する。一方、開発ダンパー1を入れて、135度の位置からバーを離すと46秒で下端に達する。この結果、ダンパー効果が確認された。
【0034】
図5は、開発したダンパーの回転トルクを測定した結果である。
【0035】
第1の組み合わせは、一次側が、ポリアセタール(POM)(AW-01高性能高摺動・特殊潤滑剤 などの用途に使われる)であり、二次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(8221標準)で、トルクの測定結果は、0.6kgf・cmであった。
【0036】
第2の組み合わせは、一次側が、ポリアセタール(POM)(AW-01高性能高摺動・特殊潤滑剤 などの用途に使われる)であり、二次側が、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)(TM-25標準 スイッチ類等に使用)で、トルクの測定結果は、11.5kgf・cmであった。
【0037】
第3の組み合わせは、一次側が、ポリアセタール(POM)(AW-01高性能高摺動・特殊潤滑剤 などの用途に使われる)であり、二次側が、ポリカーボネート(PC)(S3000標準)で、トルクの測定結果は、不動であった。
【0038】
第4の組み合わせは、一次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(8221標準)であり、二次側が、ポリアセタール(POM)(AW-01高性能高摺動・特殊潤滑剤 )で、トルクの測定結果は、3.2kgf・cmであった。
【0039】
第5の組み合わせは、一次側が、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)(TM-25標準 スイッチ類等に使用)であり、二次側が、ポリアセタール(POM)(AW-01高性能高摺動・特殊潤滑剤 )で、トルクの測定結果は、0.7kgf・cmであった。
【0040】
第6の組み合わせは、一次側が、ポリカーボネート(PC)(S3000標準)であり、二次側が、ポリアセタール(POM)(AW-01高性能高摺動・特殊潤滑剤 )で、トルクの測定結果は、13.0kgf・cmであった。
【0041】
第7の組み合わせは、一次側が、ポリアセタール(POM)(M90-44標準)であり、二次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(8221標準)で、トルクの測定結果は、0.9kgf・cmであった。
【0042】
第8の組み合わせは、一次側が、ポリアセタール(POM)(M90-44標準)であり、二次側が、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)(TM-25標準 スイッチ類等に使用)で、トルクの測定結果は、2.7kgf・cmであった。
【0043】
第9の組み合わせは、一次側が、ポリアセタール(POM)(M90-44標準)であり、二次側が、ポリカーボネート(PC)(S3000標準)で、トルクの測定結果は、不動であった。
【0044】
第10の組み合わせは、一次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(8221標準)であり、二次側が、ポリアセタール(POM)(M90-44標準)で、トルクの測定結果は、2.9kgf・cmであった。
【0045】
第11の組み合わせは、一次側が、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)(TM-25標準 スイッチ類等に使用)であり、二次側が、ポリアセタール(POM)(M90-44標準)で、トルクの測定結果は、13.0kgf・cmであった。
【0046】
第12の組み合わせは、一次側が、ポリカーボネート(PC)(S3000標準)であり、二次側が、ポリアセタール(POM)(M90-44標準)で、トルクの測定結果は、不動であった。
【0047】
第13の組み合わせは、一次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(8221標準)であり、二次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(7247W標準)で、トルクの測定結果は、2.3kgf・cmであった。
【0048】
第14の組み合わせは、一次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(7247W標準)であり、二次側が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)(8221標準)で、トルクの測定結果は、0.5kgf・cmであった。
【0049】
これらの組み合わせのうち、特に、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)と、ポリアセタール(POM)との組み合わせのトルク特性が、様々な製品に応用しやすいことがわかった。
【0050】
また、本実施形態では、いわゆるロータリー型のダンパーを用いたが、本発明はこれに限定されず、内側に筒状の空間を有する外部部材と、この筒状の空間に合わせた大きさの内部部材とを備えて構成されるいわゆるシリンダー型のダンパーや、楕円状など二つの材料が移動できる形状であれば、どのような形状のダンパーでも良い。このため、設計の自由度が高いダンパーを提供できる。
【0051】
本発明にかかるダンパー及びダンパーの製法は、2種類の材料の摩擦特性を使用するため、このため、油圧や空圧を利用したダンパーのように油や気体を密閉し、一定の大きさや一定の形状で設計するなどの制限がない。このように、本発明にかかるダンパー及びダンパーの製法は、設計の自由度が高く、製造難易度が低下するなど製造コストも削減できる。
図1
図2
図3
図4
図5