【解決手段】ボイラ群2により出力される蒸気量である一定の出力蒸気量を予め設定する出力蒸気量設定部40と、一定の出力蒸気量を出力するためにボイラ群2に含まれる各ボイラ20に均等に燃焼率を割り振った場合に、各ボイラ20の燃焼率がそれぞれエコ運転ゾーンの範囲内に収まるように燃焼台数を算出する燃焼台数算出部41と、燃焼台数算出部41により算出された燃焼台数分のボイラを制御対象ボイラとして設定する制御対象ボイラ設定部42と、一定の出力蒸気量の蒸気を生成するように、制御対象ボイラ設定部42により設定された制御対象ボイラの燃焼状態を制御する第1制御部43と、を備えるボイラシステム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態は、一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限定されない。
【0015】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係るボイラシステム1の全体構成につき、
図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、ボイラシステム1は、例えば、5台の連続制御ボイラ20により構成されるボイラ群2と、これら複数のボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ6と、この蒸気ヘッダ6の内部の圧力を測定する蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部4を有する台数制御装置3と、を備える。
以下、特に断らない限り、ボイラ20は連続制御ボイラを指すものとする。
【0016】
ボイラ20は、
図1に示すように、燃焼が行われるボイラ本体21と、ボイラ20の燃焼状態を制御するローカル制御部22と、ボイラ20のボイラ本体へ供給される給水の温度である給水温度を測定する給水温度測定部23と、ボイラ20から発生する蒸気圧力であるボイラ圧力を測定するボイラ圧力測定部としての蒸気圧センサ24と、を備える。
【0017】
ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼状態を制御する。また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼状態、ボイラ20のボイラ圧力値、ボイラ本体21へ供給される給水の温度、及びその他のデータ等が挙げられる。
【0018】
ボイラ群2は、蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
蒸気ヘッダ6は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数のボイラ20に接続されている。この蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留することにより、複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
また、蒸気ヘッダ6はボイラ群2とは別に、水管ボイラ等の大規模ボイラシステム(図示せず)に接続されており、通常時は当該大規模ボイラシステムが蒸気ヘッダ6の蒸気出力の大半を賄い、その不足分をボイラ群2が補う運用形態をとる。
【0019】
ヘッダ圧力測定手段としての蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧値(以下「ヘッダ圧力値」という)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0020】
台数制御装置3は、信号線16を介して、複数のボイラ20と電気的に接続されている。この台数制御装置3は、一定の出力蒸気量の蒸気を生成するように各ボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0021】
以上のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気使用設備18に供給可能とされている。
【0022】
[連続制御ボイラ20]
連続制御ボイラ20は、少なくとも、最小燃焼状態S1(例えば、最大燃焼率の20%の燃焼量における燃焼状態)から最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼量が連続的に制御可能とされているボイラである。ボイラ20は、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度(燃焼比)を制御することにより、燃焼量を調整するようになっている。
【0023】
また、燃焼量を連続的に制御するとは、ローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼量)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
【0024】
本実施形態では、ボイラ20の燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更は、ボイラ20(バーナ)の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、燃焼量が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、複数のボイラ20それぞれには、変動可能な蒸気量の単位である単位蒸気量Uが設定されている。これにより、ボイラ20は、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、単位蒸気量U単位で、蒸気量を変更可能となっている。
【0025】
単位蒸気量Uは、ボイラ20の最大燃焼状態S2における蒸気量(最大蒸気量)に応じて適宜設定できるが、ボイラシステム1における出力蒸気量の必要蒸気量に対する追従性を向上させる観点から、連続制御ボイラ20の最大蒸気量の0.1%〜20%に設定されることが好ましく、1%〜10%に設定されることがより好ましい。
【0026】
(エコ運転ゾーン)
ボイラ20には、ボイラ効率が高い燃焼率の範囲(「エコ運転ゾーン」という)及びボイラ効率が最も高くなる燃焼率(「エコ運転ポイント」という)が設定されている。ボイラ20をこのエコ運転ゾーン又はエコ運転ポイントで燃焼させ続けることで、ボイラ20を効率的に燃焼させることができる。
本実施形態のボイラシステム1においては、ボイラ群2の出力蒸気量の合計値が一定の値となるように制御する出力蒸気量一定制御モードにおいて、燃焼ボイラをエコ運転ゾーン又はエコ運転ポイントで燃焼させ続けるように制御することが好ましい。
【0027】
(優先順位)
また、ボイラ20にはそれぞれ優先順位が設定されている。例えば、優先順位の高いボイラの燃焼を優先させる。燃焼を開始させるボイラ20を選択する場合には、優先順位の高いボイラ20から順に燃焼を開始させる。
優先順位の高いボイラ20の稼動時間が長くなり、優先順位の低いボイラの稼動時間が短くなるため、複数のボイラ20の稼動状態に偏りが生じてしまう。そのため、ボイラシステム1においては、優先順位を定期的に(例えば、24時間毎に)変更して、複数のボイラ20の稼動状態の均一化を図っている。
【0028】
次に、台数制御装置3の構成について詳細に説明する。台数制御装置3は、
図1に示すように、制御部4と記憶部5とを備える。
【0029】
制御部4は、信号線16を介してボイラ20に各種の指示を送信したり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、ボイラ20の燃焼状態及び運転台数の制御を実行する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って該当するボイラ20の燃焼量を制御する。制御部4の詳細な構成については後述する。
【0030】
記憶部5は、各ボイラ20に送信された指示に関する情報、各ボイラ20から受信した燃焼状態、ボイラ20のボイラ圧力値、及びボイラ本体21へ供給される給水の温度等に関する情報、各ボイラ20の単位蒸気量Uの設定に関する情報、複数のボイラ20の優先順位の設定に関する情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報、各ボイラ20のエコ運転ゾーン(ボイラ効率が高い燃焼率の範囲)に関する情報、並びに後述するヘッダ圧力範囲設定部46により設定されるヘッダ圧力値の上限及び下限等を記憶する。
【0031】
次に、制御部4の構成についてさらに詳細に説明する。
本実施形態に係る制御部4は、ユーザのニーズに応じて、ボイラ群2の出力蒸気量の合計値が一定の値となるように制御する出力蒸気量一定制御モード及びヘッダ圧力が所定範囲内を外れた場合に、各ボイラの燃焼量を補正するバックアップ制御モードを備える。
このような出力蒸気量一定制御モードを実現するため、
図2に示すように、制御部4は、出力蒸気量設定部40と、燃焼台数算出部41と、制御対象ボイラ設定部42と、第1制御部43と、燃焼率算出部44と、優先順位設定部45と、を含んで構成される。
また、バックアップ制御モードを実現するため、制御部4は、ヘッダ圧力範囲設定部46と、必要蒸気量算出部47と、第2制御部48と、制御切換部49と、を備える。
【0032】
出力蒸気量設定部40は、ボイラ群2により出力される蒸気量である一定の出力蒸気量を予め設定する。
【0033】
燃焼台数算出部41は、一定の出力蒸気量を出力するためにボイラ群2に含まれる各ボイラ20に均等に燃焼率を割り振った場合に、各ボイラ20の燃焼率がそれぞれエコ運転ゾーンの範囲内に収まるように燃焼台数を算出する。
また、燃焼台数算出部41は、燃焼台数を抑制するか、又は過剰にするかを指定する燃焼台数前提条件を予め設定しておき、燃焼台数の算出に際して、複数の選択肢が存在する場合又は選択肢が存在しない場合に、燃焼台数前提条件に基づいて燃焼台数を算出する。
これにより、燃焼台数を最小限にしたい場合には、燃焼台数前提条件に対して燃焼台数を抑制するように指定し、逆に各ボイラの燃焼率を抑えたい場合には燃焼台数前提条件に対して燃焼台数を増加するように指定することで、ユーザのニーズに対応することができる。
【0034】
制御対象ボイラ設定部42は、燃焼台数算出部41により算出された燃焼台数分のボイラ20を制御対象ボイラとして設定する。具体的には、制御対象ボイラ設定部42は、優先順位の高いボイラから順番に制御対象ボイラとして設定する。
【0035】
第1制御部43は、出力蒸気量設定部40により予め設定された一定の出力蒸気量の蒸気を生成するように、制御対象ボイラ設定部42により設定された制御対象ボイラ20の燃焼状態を制御する。なお、出力蒸気量分の蒸気出力を確保するために、第1制御部43は、実際蒸発量レベルで出力するように、制御対象ボイラ20の燃焼状態を制御する。
より具体的には、第1制御部43は、制御対象ボイラ20毎にボイラ圧力と給水温度に基づいて後述の燃焼率算出部44により算出された燃焼率に基づいて、制御対象ボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0036】
燃焼率算出部44は、制御対象ボイラ20のボイラ本体21へ供給される給水の温度と制御対象ボイラ20の内部のボイラ圧力値とに基づいて、制御対象ボイラ20からの実際に出力される出力蒸気量(「実際蒸発量」ともいう)が制御対象ボイラ20に設定された出力蒸気量と一致するように、制御対象ボイラ20の燃焼率を算出する。
次に制御対象ボイラ20のボイラ圧力と給水温度に基づく燃焼率の算出(補正)について説明する。
【0037】
まず、相当蒸発量と実際蒸発量について説明する。相当蒸発量とは、基準蒸発量又は換算蒸発量ともいい、大気圧下で100℃の水を100℃の蒸気にする能力を表し、換算ボイラの能力標記に利用される。例えば、相当蒸発量が1000kg/hであれば、1000kgの100℃の水を1時間に100℃の蒸気にする能力を有していることを表す。これに対して、実際に水を蒸発させる場合には、給水する水の温度(給水温度)から使用する圧力の飽和温度まで顕熱変化(温度上昇)させ、その後潜熱変化(蒸発)させるため、実際蒸発量は給水温度が低ければ低いほど、また蒸気圧力が高ければ高いほど、相当蒸発量よりも少なくなる。
【0038】
相当蒸発量と実際蒸発量とが、式1を満たすことは当業者にとって公知である。
実際蒸発量=(相当蒸発量×539)/(蒸気の全熱−給水の顕熱) (式1)
ここで、「539」は、大気圧で100℃の水を100℃の蒸気にする熱量(kcal/kg)を、「蒸気の全熱」は蒸気圧力によって決定される飽和蒸気(乾き度100%)が保有する熱量(kcal/kg)を、「給水の顕熱」は給水温度(℃)と同じ値の熱量(kcal/kg)を意味する。また、相当蒸発量は、ボイラ容量に燃焼率を積算した値に等しい。
本実施形態において、「蒸気の全熱」は、「蒸気テーブル」(仮称)によって管理されているものとする。
例えば、7000kg/hのボイラ容量を有するボイラを燃焼率32%で燃焼させた場合、相当蒸発量は、2240(=7000×0.32)kg/hとなる。
そして、蒸気圧力が0.7MPa、給水温度60℃、相当蒸発量2240kg/hとした場合、「蒸気の全熱」は660kcal/kg、「給水の顕熱」は60kcal/kgであることから、実際蒸発量は式1により次の値となる。
実際蒸発量=(2240×539)/(660−60)=2012kg/h
以上のように、燃焼率算出部44は、実際蒸発量(kg/h)を、相当蒸発量(又は燃焼率)、ボイラ圧力値、給水温度に基づいて算出する。
【0039】
図3Aは、ボイラ圧力値が変化した場合に、実際蒸発量の合計が設定された出力蒸気量を維持するように、制御対象ボイラ20の燃焼率を変更する場合の一例を示す。
図3Bは、給水温度が変化した場合に、実際蒸発量の合計が設定された出力蒸気量を維持するように、制御対象ボイラ20の燃焼率を変更する場合の一例を示す。
図3A及び
図3Bを参照しながら、燃焼率算出部44の処理内容を説明する。
図3A及び
図3Bにおいて、各ボイラ20のボイラ容量は7000kg/h、出力蒸気量は6000kg/h、制御対象ボイラ台数は3台とする。3台を1号機、2号機、3号機とする。
【0040】
図3Aを参照すると、時刻t
0において各ボイラのボイラ圧力値は0.70MPa、時刻t
1において各ボイラのボイラ圧力値は0.90MPaに変化し、さらに時刻t
2において各ボイラのボイラ圧力値は1.20MPaに変化する様子を示す。
図3Aを参照すると、時刻t
0及び時刻t
1において1号機及び2号機の相当蒸発量を2240kg/h(燃焼率32%)のまま、3号機の相当蒸発量を2170kg/h(燃焼率31%)のままとしても実際蒸発量の合計は、6000kg/hに近い値を維持することがわかる。これに対して、時刻t
2においては、3号機の燃焼率を1%あげることで、実際蒸発量の合計を、6000kg/hに近い値に維持できることがわかる。
【0041】
図3Bを参照すると、時刻t
0において各ボイラの給水温度は60℃、時刻t
1において各ボイラの給水温度は50℃に変化する様子を示す。
図3Bを参照すると、時刻t
0において1号機〜3号機の相当蒸発量を2240kg/h(燃焼率32%)とすると、各ボイラ20の実際蒸発量は1996kg/hとなり、実際蒸発量の合計が5987kg/hとなり、6000kg/hに近い値を維持することがわかる。これに対して、時刻t
1において、1号機〜3号機の相当蒸発量を2240kg/h(燃焼率32%)とした場合、実際蒸発量の合計は、5890kg/hとなり、設定された出力蒸気量6000kg/hに対して110kg/h不足することがわかる。このため、1号機及び2号機の燃焼率を1%あげて、33%とすることで、実際蒸発量の合計が6012kg/hとなり、6000kg/hに近い値を維持できることがわかる。
以上のように、燃焼率算出部44により、制御対象ボイラ20のボイラ圧力、給水温度に基づいて、制御対象ボイラ20の燃焼率(又は出力蒸気量)を補正することにより、制御対象ボイラ20の給水温度、ボイラ圧力に影響されずに、出力蒸気量設定部40により設定された固定の出力蒸気量を出力することが可能となる。
【0042】
優先順位設定部45は、ボイラ群2に含まれる各ボイラ20の優先順位の設定及び変更を行う。複数のボイラの稼動状態に偏りが生じないように、優先順位設定部46は、ボイラシステム1において、優先順位を定期的に(例えば、24時間毎に)変更して、複数のボイラの稼動状態の均一化を図っている。
台数制御部4は、優先順位設定部45によりボイラ20の優先順位が変更されると、燃焼停止状態にあるボイラ20のうち、優先順位の高いボイラ20の燃焼を開始させ、その後、当該ボイラ20が所定の蒸気量を出力すると、優先順位の低いボイラの燃焼を停止させる。
これにより、ボイラ20を均等に燃焼させることができ、ボイラ20の故障率を低減させることができる。
【0043】
ヘッダ圧力範囲設定部46は、ヘッダ圧力値の上限及び下限を予め設定する。ヘッダ圧力値の上限値及び下限値は、後述の制御切換部49がメインボイラである水管ボイラ等の大規模ボイラシステムに何らかの異常が発生したと判定するための閾値とする。
【0044】
必要蒸気量算出部47は、ヘッダ圧力値に基づいて必要蒸気量を算出する。具体的には、必要蒸気量算出部47は、ヘッダ圧力値が予め設定された目標圧力値を維持するように(又は、ヘッダ圧力値が予め設定された目標圧力値範囲に収まるように)、所定周期毎に、例えば公知の位置形PID(又は位置形PI)アルゴリズム又は速度形PID(又は速度形PI)アルゴリズムにより算出される現時点の必要蒸気量MV
nを算出する。
【0045】
第2制御部48は、必要蒸気量算出部47により算出された必要蒸気量の蒸気を生成するようにボイラ群2の燃焼状態を制御する。すなわち、第2制御部48は、ヘッダ圧力値が予め設定された目標圧力値を上回った場合、設定された出力蒸気量を無視して、全ての制御対象ボイラ20の出力蒸気量を少しずつ減少させる。逆に、ヘッダ圧力値が予め設定された目標圧力値を下回った場合、第2制御部48は、設定された出力蒸気量を無視して、全ての制御対象ボイラ20の出力蒸気量を少しずつ増加させる。そうすることで、ボイラシステム全体の圧力安定性を確保することができる。
【0046】
制御切換部49は、ヘッダ圧力値が、ヘッダ圧力範囲設定部46により予め設定されたヘッダ圧力値の上限を上回った場合、又はヘッダ圧力範囲設定部46により予め設定されたヘッダ圧力値の下限を下回った場合に、第1制御部43によるボイラ群2の燃焼状態の制御を停止させて、第2制御部48によるボイラ群2の燃焼状態の制御を実行させる。
これにより、ヘッダ圧力が所定範囲内を外れた場合、出力蒸気量をヘッダ圧力に基づく圧力制御に切り換えることにより、直ちにボイラシステム全体の圧力安定性を確保することができる。
【0047】
次に、本実施形態における制御部4による制御の一連の流れについて
図4A〜
図4Cを参照しながら説明する。
図4A〜
図4Cは、制御部4の処理内容を示すフローチャート図である。
【0048】
<出力蒸気量の設定>
図4Aを参照しながら制御対象ボイラの設定処理について説明する。
なお、優先順位設定部45により、ボイラ群2に含まれる各ボイラ20の優先順位が予め設定されているものとする。また、ヘッダ圧力範囲設定部46により、ヘッダ圧力値の上限及び下限が予め設定されているものとする。
ステップST1において、制御部4(出力蒸気量設定部40)は、ボイラ群2により出力される蒸気量である一定の出力蒸気量を予め設定する。
【0049】
ステップST2において、制御部4(燃焼台数算出部41)は、各ボイラ20の燃焼率がそれぞれエコ運転ゾーンの範囲内に収まる条件を満たすボイラ20の燃焼台数を算出する。
【0050】
ステップST3において、制御部4(燃焼台数算出部41)は、各ボイラ20の燃焼率がそれぞれエコ運転ゾーンの範囲内に収まる条件を満たす台数の選択肢が存在するか否か判定する。存在する場合(Yes)、ステップST4に進む。存在しない場合(No)、ステップST5に移る。
【0051】
ステップST4において、制御部4(燃焼台数算出部41)は、台数の選択肢が複数か否か判定する。台数の選択肢が複数の場合(Yes)、ステップST5に移る。台数の選択肢が複数ない場合(No)、ステップST6に移る。
【0052】
ステップST5において、制御部4(燃焼台数算出部43)は、予め指定される燃焼台数前提条件に基づいて、1つの選択肢を選択する。
【0053】
ステップST6において、制御部4(制御対象ボイラ設定部42)は、燃焼台数算出部43により算出された燃焼台数分のボイラ20を制御対象ボイラとして設定する。
【0054】
次に
図4Bを参照しながら出力蒸気量一定制御の処理について説明する。
<出力蒸気量一定制御>
【0055】
ステップST7において、制御部4(燃焼率算出部44)は、ボイラ20の給水温度とボイラ20のボイラ圧力値に基づいて、ボイラ20の出力する実際蒸発量の合計が一定の出力蒸気量の値に最も近い値となるように、ボイラ20の燃焼率を算出する。
【0056】
ステップST8において、制御部4(第1制御部43)は、燃焼率算出部44により算出された燃焼率で燃焼制御ボイラ20を燃焼させる。
【0057】
ステップ9において、制御部4(制御切換部49)は、ヘッダ圧力値がヘッダ圧力範囲設定部46により設定された上限と下限の範囲内にあるか否かを判定する。上限と下限の範囲内にある場合(Yes)、ステップST10に進む。上限と下限の範囲内にない場合(No)、ステップST11に移る。
【0058】
ステップST10において、制御部4(燃焼率算出部44)は、ボイラ20に供給される給水の温度とボイラ20の内部のボイラ圧力値に変化があったか否かを判定する。変化があった場合(Yes)、ステップST7に戻る。変化がなかった場合(No)、ステップST8に戻る。
【0059】
次に
図4Cを参照しながらバックアップ制御モードの処理について説明する。
ステップST11において、制御部4(制御切換部49)は、第1制御部43による燃焼制御を停止させ、第2制御部48によるボイラ群2の燃焼状態の制御を実行させる。
【0060】
ステップST12において、制御部4(第2制御部48)は、必要蒸気量算出部47により算出された必要蒸気量の蒸気を生成するようにボイラ群2の燃焼状態を制御する。
【0061】
以上説明した本実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0062】
本実施形態のボイラシステム1に係る制御部4は、ボイラ群2により出力される蒸気量である一定の出力蒸気量を予め設定する出力蒸気量設定部40と、一定の出力蒸気量を出力するためにボイラ群2に含まれる各ボイラ20に均等に燃焼率を割り振った場合に、各ボイラ20の燃焼率がそれぞれエコ運転ゾーンの範囲内に収まるように燃焼台数を算出する燃焼台数算出部41と、燃焼台数算出部41により算出された燃焼台数分のボイラを制御対象ボイラとして設定する制御対象ボイラ設定部42と、一定の出力蒸気量の蒸気を生成するように、制御対象ボイラ設定部42により設定された制御対象ボイラの燃焼状態を制御する第1制御部43と、を備える。
これにより、ヘッダ圧力やボイラ圧力に影響されない出力量一定制御を実現することができる。例えば、水管ボイラ等の大規模ボイラシステムをメインボイラ群とし、本実施形態のボイラシステム1をサブボイラ群とするボイラシステムにおいて、メインボイラ群による圧力制御がなされている場合に、本実施形態のボイラシステム1はサブボイラ群として圧力制御を行わずに、一定出力で固定燃焼させることが可能となる。
【0063】
また、燃焼率算出部44は、ボイラ20のボイラ本体21へ供給される給水の温度と各ボイラ20の内部のボイラ圧力値とに基づいて、ボイラ20からの実際に出力される出力蒸気量が各ボイラに設定された出力蒸気量と一致するように、ボイラ20の燃焼率を算出する
これにより、出力蒸気量を給水温度、ボイラ圧力に影響されずに、出力蒸気量設定部40により設定された固定の出力蒸気量を出力することができる。
【0064】
また燃焼台数算出部41は、燃焼台数を抑制するか、又は過剰にするかを指定する燃焼台数前提条件を予め設定しておき、燃焼台数の算出に際して、複数の選択肢が存在する場合又は選択肢が存在しない場合に、燃焼台数前提条件に基づいて燃焼台数を算出する。
これにより、燃焼台数を最小限にしたい場合には、燃焼台数前提条件に対して燃焼台数を抑制するように指定し、逆に各ボイラの燃焼率を抑えたい場合には燃焼台数前提条件に対して燃焼台数を増加するように指定することで、ユーザのニーズに対応することができる。
【0065】
また、優先順位設定部45は、ボイラ群2に含まれる各ボイラ20の優先順位の設定及び変更を行う。台数制御部4は、優先順位設定部45によりボイラ20の優先順位が変更されると、燃焼停止状態にあるボイラ20のうち、優先順位の高いボイラ20の燃焼を開始させ、その後、当該ボイラ20が所定の蒸気量を出力すると、優先順位の低いボイラの燃焼を停止させる。
これにより、ボイラ20を均等に燃焼させることができ、ボイラ20の故障率を低減させることができる。
【0066】
また、本実施形態のボイラシステム1に係る制御部4は、ヘッダ圧力値に基づいて算出された必要蒸気量の蒸気を生成するようにボイラ群2の燃焼状態を制御する第2制御部48と、ヘッダ圧力値が予め設定されたヘッダ圧力値の上限を上回った場合、又は予め設定されたヘッダ圧力値の下限を下回った場合に、第1制御部43によるボイラ群2の燃焼状態の制御を停止させて、第2制御部48によるボイラ群2の燃焼状態の制御を実行させる制御切換部49と、を備える。
これにより、例えば、メインボイラである水管ボイラ等の大規模ボイラシステムに何らかの異常が発生したことでヘッダ圧力が所定範囲内を外れた場合、出力蒸気量をヘッダ圧力に基づく圧力制御に切り換えることにより、ボイラシステム全体の圧力安定性を確保することができる。
【0067】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0068】
[変形例1]
上記実施形態では、制御切換部49は、ヘッダ圧力値が、ヘッダ圧力範囲設定部46により予め設定された上限と下限の範囲を外れた場合に、第1制御部43によるボイラ群2の燃焼状態の制御を停止させて、第2制御部48によるボイラ群2の燃焼状態の制御を実行させたが、これに限らない。制御切換部49は、ヘッダ圧力値が、ヘッダ圧力範囲設定部46により予め設定された上限と下限の範囲を外れた場合に、全てのボイラ20を手動運転に切り替えるようにしてもよい。
【0069】
[変形例2]
例えば、上記実施形態では、連続制御ボイラ20を、全て同一のボイラ容量としたが、これに限らない。すなわち、ボイラ20毎にその最小燃焼量、単位蒸気量、最大燃焼量としての燃焼能力が異なる場合にも適用可能である。
【0070】
[変形例3]
また、上記実施形態では、本発明を3台の連続制御ボイラ20からなるボイラ群2を備えるボイラシステムに適用したが、これに限らない。すなわち、本発明を、2台、又は4台以上のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよい。また、1台のボイラ単体に適用してもよい。
【0071】
[変形例4]
また、上記実施形態では、必要蒸気量算出部47において、蒸気ヘッダ6の蒸気圧力値(物理量)に基づいてPID(比例+積分+微分)アルゴリズムにより必要蒸気量(指示蒸気量)を算出する例について説明した。これに限らず、本発明は、PI(比例+積分)アルゴリズム又はP(比例)アルゴリズムにより必要蒸気量(指示蒸気量)を算出する制御にも適用することができる。
【0072】
[変形例5]
上記実施形態において、制御部4は、出力蒸気量一定制御モードに加えて、ヘッダ圧力値が予め設定される目標値を維持するように燃焼制御する圧力制御モードを備えるようにしてもよい。
この場合、制御部4は例えば外部信号等により、出力蒸気量一定制御モードから圧力制御モードに、また逆に、圧力制御モードから出力蒸気量一定制御モードに変更するように構成してもよい。
これにより、ボイラシステム1を例えば水管ボイラ等のメインボイラの補助用途として、使用している場合にメインボイラの障害等により蒸気供給が必要となったとき、外部信号等で制御モードを出力蒸気量一定制御から圧力制御に変更することで、短時間で蒸気システムを復旧させることが可能となる。