特開2018-105827(P2018-105827A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 2018105827-圧力分布検知装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-105827(P2018-105827A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】圧力分布検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/26 20060101AFI20180608BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20180608BHJP
【FI】
   G01L1/26 D
   G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-255587(P2016-255587)
(22)【出願日】2016年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000150774
【氏名又は名称】株式会社槌屋
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽久
(72)【発明者】
【氏名】江島 充晃
(72)【発明者】
【氏名】水野 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 健二
(72)【発明者】
【氏名】榎堀 優
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA16
2F051AB06
2F051AC03
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】圧力分布検知エリアにおける圧力分布をより高い精度で検知できる圧力分布検知装置の提供。
【解決手段】圧力分布検知装置10は、圧力分布検知エリア10Aに広がる織物11(本体)と圧力分布検知エリア10Aにかかる圧力分布を検知する検知装置12とを備える。織物11は、圧力分布検知エリア10Aに位置される部分に受ける荷重に応じて静電容量が変化する感圧セル11Iを有する。検知装置12は、感圧セル11Iと電気的に接続された対照セル11Jと、感圧セル11Iの静電容量の変化に対照セル11Jにおける混線信号の補正をかける補正手段とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の圧力分布検知エリアにおける圧力分布の検知を行うことが可能な圧力分布検知装置において、
前記圧力分布検知エリアの全域にわたって広がるように配設される本体と、
前記本体において前記圧力分布検知エリアに位置される部分にかかる圧力分布を検知する検知装置と、
を備え、
前記本体において前記圧力分布検知エリアに位置される部分には、受ける荷重に応じて静電容量が変化するコンデンサである感圧セルが形成され、
前記検知装置は、前記感圧セルと電気的に接続されたコンデンサである対照セルと、前記感圧セルにおける静電容量の変化量に、前記対照セルにおける静電容量の変化量として検出される混線信号の補正をかける補正手段とを有する、
圧力分布検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載された圧力分布検知装置であって、
前記対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサであり、かつ、前記対照セルのひずみを抑制するコーティングによって前記本体上に固められた状態に設けられている、
圧力分布検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載された圧力分布検知装置であって、
前記対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサであり、かつ、前記対照セルが受ける荷重を抑えるカバーによって覆われた状態で前記本体上に設けられている、
圧力分布検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載された圧力分布検知装置であって、
前記対照セルが、前記本体に外付けされたコンデンサである、
圧力分布検知装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載された圧力分布検知装置であって、
前記本体は、経糸と緯糸とを互いに織り合わせて構成された織物であり、かつ、前記圧力分布検知エリアの全域および当該圧力分布検知エリアから隔離された隔離エリアの両方にわたって広がるように配設され、
前記織物において緯方向に並ぶ経糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の経糸である導電経糸が緯方向に並ぶ導電経糸領域と、絶縁体からなる経糸である絶縁経糸が緯方向に並ぶ絶縁経糸領域と、が緯方向に交互に並べられた構造を呈し、
前記織物において経方向に並ぶ緯糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の緯糸である導電緯糸が経方向に並ぶ導電緯糸領域と、絶縁体からなる緯糸である絶縁緯糸が経方向に並ぶ絶縁緯糸領域と、が経方向に交互に並べられた構造を呈し、
前記織物において前記圧力分布検知エリアに位置される部分には、前記導電経糸領域と前記導電緯糸領域とが交差される複数箇所に、前記導電経糸と前記導電緯糸とが織り合わされたコンデンサが前記感圧セルとして形成され、
前記織物において前記隔離エリアに位置される部分には、前記導電経糸領域と前記導電緯糸領域とが交差される少なくとも1箇所に、前記導電経糸と前記導電緯糸とが織り合わされたコンデンサが前記対照セルとして形成され、
前記感圧セルは、当該感圧セルにおける前記導電経糸と前記導電緯糸との距離の変化に応じて静電容量を変化させる、
圧力分布検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載された圧力分布検知装置であって、
前記織物は、タッチによる圧力が所定の一方側からかかるように配設され、
前記圧力分布検知エリアは、前記隔離エリアと比して前記一方側に張り出した位置に設定されている、
圧力分布検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力分布検知エリアにおける圧力分布の検知を行う圧力分布検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力分布の検知を行うことが可能な圧力分布検知装置において、圧力分布検知エリアに配された織物を用いるものが存在する(例えば特許文献1を参照)。ここで、特許文献1の技術では、絶縁糸を織り合わせた織物の中に導電糸が経緯に配されて、これらの導電糸が交差される複数箇所がコンデンサとされた構成を有する。そして、圧力分布検知装置は、その織物の各コンデンサにかかる圧力の分布を、その各導電糸間の静電容量に基づいて検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/053624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された圧力分布検知装置は、その織物の各コンデンサが互いに隣り合って電気的につながった状態に並んでいるため、各コンデンサに混線が生じてこれらのコンデンサの静電容量を正確に求めることができないものであった。これには、織物の各コンデンサにかかる圧力分布の情報を正確に求めることができなくなるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、織物のコンデンサの並びにおける各コンデンサの静電容量から圧力分布を検知する際に補正処理を行うことで、圧力分布検知エリアにおける圧力分布をより高い精度で検知することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における1つの特徴によると、所定の圧力分布検知エリアにおける圧力分布の検知を行うことが可能な圧力分布検知装置が提供される。この圧力分布検知装置は、圧力分布検知エリアの全域にわたって広がるように配設される本体と、本体において圧力分布検知エリアに位置される部分にかかる圧力分布を検知する検知装置とを備える。本体において圧力分布検知エリアに位置される部分には、受ける荷重に応じて静電容量が変化するコンデンサである感圧セルが形成される。検知装置は、感圧セルと電気的に接続されたコンデンサである対照セルと、感圧セルにおける静電容量の変化量に、対照セルにおける静電容量の変化量として検出される混線信号の補正をかける補正手段とを有する。
【0007】
本発明の圧力分布検知装置は、圧力分布検知エリアにおける圧力分布を検知する際に、圧力分布検知エリアに形成されたコンデンサである感圧セルの静電容量の変化量を求める。ここで、感圧セルと電気的に接続されたコンデンサである対照セルは、この対照セルに圧力がかからない場合でも、感圧セルからの混線信号のために見かけ上の静電容量が変化する。その上で、圧力分布検知装置は、感圧セルの静電容量の変化量に含まれる混線信号の誤差を、対照セルにおける見かけ上の静電容量の変化量に基づいて補正することができる。このように、圧力分布検知エリアにおける圧力分布の情報を感圧セルの静電容量から求める際に補正処理を行うことで、圧力分布検知エリアにおける圧力分布をより高い精度で検知することが可能となる。
【0008】
上記圧力分布検知装置における態様の1つにおいては、対照セルは、荷重を受けてひずむと静電容量が変化するコンデンサである。この態様における好ましい実施形態の1つにおいては、対照セルは、この対照セルのひずみを抑制するコーティングによって本体上に固められた状態に設けられている。この構成によれば、対照セルを固めるコーティングにより対照セルのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。
【0009】
上記態様における別の好ましい実施形態の1つにおいては、対照セルは、この対照セルが受ける荷重を抑えるカバーによって覆われた状態で本体上に設けられている。この構成によれば、対照セルを覆うカバーにより対照セルにかかる荷重を抑えてこの対照セルのひずみを抑えることで、このひずみが混線信号を変動させることによる荷重の分布の誤差を抑えることができる。
【0010】
上記圧力分布検知装置における他の実施形態の1つでは、対照セルは、本体に外付けされたコンデンサである。この構成によれば、圧力分布検知装置の織物に対する対照セルの配置を適宜に変更することができる。
【0011】
上記圧力分布検知装置における好ましい実施形態の1つにおいては、本体を、経糸と緯糸とを互いに織り合わせて構成された織物とすることができる。この場合、織物は、圧力分布検知エリアの全域およびこの圧力分布検知エリアから隔離された隔離エリアの両方にわたって広がるように配設される。織物において緯方向に並ぶ経糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電経糸が緯方向に並ぶ導電経糸領域と、絶縁体からなる経糸である絶縁経糸が緯方向に並ぶ絶縁経糸領域と、が緯方向に交互に並べられた構造を呈する。織物において経方向に並ぶ緯糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電緯糸が経方向に並ぶ導電緯糸領域と、絶縁体からなる緯糸である絶縁緯糸が経方向に並ぶ絶縁緯糸領域と、が経方向に交互に並べられた構造を呈する。織物において圧力分布検知エリアに位置される部分には、導電経糸領域と導電緯糸領域とが交差される複数箇所に、導電経糸と導電緯糸とが織り合わされたコンデンサが感圧セルとして形成される。織物において隔離エリアに位置される部分には、導電経糸領域と導電緯糸領域とが交差される少なくとも1箇所に、導電経糸と導電緯糸とが織り合わされたコンデンサが対照セルとして形成される。感圧セルは、この感圧セルにおける導電経糸と導電緯糸との距離の変化に応じて静電容量を変化させる。
【0012】
上記実施形態の1つにおいては、圧力分布検知装置の織物は、タッチによる圧力が所定の一方側からかかるように配設される。また、圧力分布検知エリアは、隔離エリアと比して上記一方側に張り出した位置に設定される。この場合、圧力分布検知エリアへのタッチに際してあやまって対照セルにタッチしてしまうことを減らして、圧力分布検知エリアにおける圧力分布を検知する精度が低下されることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態にかかる圧力分布検知装置を表した正面図である。
図2図1の圧力分布検知装置から絶縁糸を透過させた透過図である。
図3図1の検知装置の構成を表したブロック図である。
図4図3の処理装置の処理を表したフローチャートである。
図5】圧力分布を検知する第1の実験において、感圧セルの補正前の静電容量から求めた荷重の分布を表した強度グラフの部分拡大図である。
図6】圧力分布を検知する第1の実験において、感圧セルの補正後の静電容量から求めた荷重の分布を表した強度グラフの部分拡大図である。
図7】圧力分布を検知する第2の実験において、感圧セルの補正前の静電容量から求めた荷重の分布を表した強度グラフである。
図8】圧力分布を検知する第2の実験において、感圧セルの補正後の静電容量から求めた荷重の分布を表した強度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。一実施形態にかかる圧力分布検知装置10は、図1に示すように、経方向に延びる経糸と緯方向に延びる緯糸とを互いに織り合わせて構成した織物11を本体として備えている。また、圧力分布検知装置10は、織物11に接続された検知装置12を備えて、この検知装置12によって織物11上で経緯に広がる圧力分布検知エリア10Aにおける圧力分布の検知を行う。
【0015】
織物11は、例えば床(図示せず)などの平らな面の上に広げられることで、圧力分布検知エリア10Aの全域およびこの圧力分布検知エリア10Aから隔離された隔離エリア10Bの両方にわたって広がるように配設される。ただし、織物11は、その端縁を張り枠(図示せず)に固定してこの張り枠に張設してもよい。この場合、圧力分布検知エリア10Aを空中に設定して織物11の表裏両側からタッチによる圧力をかけることができる。なお、本実施形態においては、織物11は、成人がその上で横になることが可能なサイズに形成されている。また、織物11において、圧力分布検知エリア10Aは織物11の経方向および緯方向に広がる長方形状のエリアであり、隔離エリア10Bは圧力分布検知エリア10Aの経緯の辺に沿って延びるL字状のエリアである。
【0016】
ところで、織物11は、それぞれが経糸と緯糸とを織り合わせた構成を有する表裏2枚の組織を、これらの各組織間で経糸および緯糸を点で交錯させる結節点を複数設定することで一体化した構造をなす二重織の織物である。織物11において、二重織を構成する2つの組織のうち表側の組織は、絶縁体からなる絶縁糸を地糸とし、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸を緯糸の一部として埋め込んだ組織とされる。また、上記2つの組織のうち裏側の組織は、絶縁体からなる絶縁糸を地糸とし、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸を経糸の一部として埋め込んだ組織とされる。
【0017】
すなわち、織物11の表側(図1でみて紙面手前側)の組織において、緯糸は、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電緯糸11Eと、絶縁体からなる絶縁糸である絶縁緯糸11Gと、の2種類の緯糸からなる。ここで、導電緯糸11Eおよび絶縁緯糸11Gの2種類の緯糸は、織物11の経方向に並ぶ。
【0018】
また、織物11の裏側(図2でみて紙面奥側)の組織において、経糸は、図2に示すように、導体の繊維を絶縁体で覆った構成の導電糸である導電経糸11Aと、絶縁体からなる絶縁糸である絶縁経糸11Cと、の2種類の経糸からなる。ここで、導電経糸11Aおよび絶縁経糸11Cの2種類の経糸は、織物11の緯方向に並ぶ。なお、織物11を表側から見た場合、導電経糸11Aは絶縁経糸11Cの間に列をなして並ぶ二重織の結節点として視認される(図1参照)。
【0019】
ところで、織物11の裏側(図2でみて紙面奥側)の組織において、経糸の並びは、導電経糸11Aのみが緯方向に並ぶ導電経糸領域11Bと、絶縁経糸11Cのみが緯方向に並ぶ絶縁経糸領域11Dと、が緯方向に交互に並べられた構造を呈している。また、織物11の表側(図1でみて紙面手前側)の組織において、緯糸の並びは、導電緯糸11Eのみが経方向に並ぶ導電緯糸領域11Fと、絶縁緯糸11Gのみが経方向に並ぶ絶縁緯糸領域11Hと、が経方向に交互に並べられた構造を呈している。このため、導電経糸領域11Bと導電緯糸領域11Fとが交差される複数箇所には、それぞれ導電経糸領域11Bと導電緯糸領域11Fとが対向されて導電緯糸11Eと導電経糸11Aとが織り合わされたコンデンサ(図2参照)が形成される。
【0020】
ここで、織物11において、導電経糸領域11Bおよび導電緯糸領域11Fは、隔離エリア10Bに位置される部分に1本ずつ配設され、圧力分布検知エリア10Aに位置される部分に多数本が密に配設されるように並べられている。このため、上記複数のコンデンサの一部は、図2に示すように、織物11において圧力分布検知エリア10Aに位置される部分に経緯に並んだ状態に配されて、圧力分布検知エリア10Aにかかる圧力分布を検知するための感圧セル11Iとされる。また、上記複数のコンデンサの一部は、織物11において隔離エリア10Bに位置される部分にL字状の列をなして配されて、感圧セル11Iから隔離された対照セル11Jとされる。これらの対照セル11Jは、各対照セル11Jをなす導電経糸領域11Bの導電経糸11Aおよび導電緯糸領域11Fの導電緯糸11Eと電気的に接続される。
【0021】
さて、検知装置12は、図3に示すように、それぞれが互いに異なる周期信号を発振する発振回路12Aを、織物11における導電経糸領域11Bの本数と同じ数だけ備えている。また、検知装置12は、複数の経路からの出力を分離した状態で取り出すマルチプレクサ12Cを備えている。また、検知装置12は、マルチプレクサ12Cが取り出した出力に基づいて前もって設定された処理を実行する処理装置12Dを備えている。また、検知装置12は、処理装置12Dの処理結果を外部に表示するディスプレイ12Eを備えている。また、検知装置12は、発振回路12A、マルチプレクサ12C、処理装置12D、および、ディスプレイ12Eを収納するきょう体12Fを備えている。
【0022】
各発振回路12Aは、きょう体12Fにきょう体接地された状態で、所定の周波数の矩形波交流電流を持続的に作り、この矩形波交流電流を周期信号として発振する。これらの周期信号は、織物11の各導電経糸領域11Bにそれぞれ別個に印加される。この際、上記周期信号は、圧力分布検知エリア10Aを通る各導電経糸領域11Bにはとめ接続されたフレキシブルフラットケーブル10Cまたは隔離エリア10Bを通る導電経糸領域11Bにはとめ接続された被膜線10E(図2参照)を介して印加される。ここで、図2においては、フレキシブルフラットケーブル10Cおよび被膜線10Eは、織物11において対照セル11Jよりも圧力分布検知エリア10A寄りとなる部分ではとめ接続されている。ただし、フレキシブルフラットケーブル10Cおよび被膜線10Eは、織物11において対照セル11Jよりも縁部寄りとなる部分ではとめ接続されていてもよい。なお、フレキシブルフラットケーブル10Cは、その内部に複数の電流経路を互いに絶縁された状態に備えているため、図3においては複数本に分割して描いている。
【0023】
マルチプレクサ12Cは、織物11の各導電緯糸領域11Fからの出力を、これらの導電緯糸領域11Fにはとめ接続されたフレキシブルフラットケーブル10Dおよび被膜線10F(図2参照)を介して取り出す。ここで、フレキシブルフラットケーブル10Dは圧力分布検知エリア10Aを通る各導電緯糸領域11Fにはとめ接続され、被膜線10Fは隔離エリア10Bを通る導電緯糸領域11Fにはとめ接続される。ここで、図2においては、フレキシブルフラットケーブル10Dおよび被膜線10Fは、織物11において対照セル11Jよりも圧力分布検知エリア10A寄りとなる部分ではとめ接続されている。ただし、フレキシブルフラットケーブル10Dおよび被膜線10Fは、織物11において対照セル11Jよりも縁部寄りとなる部分ではとめ接続されていてもよい。なお、フレキシブルフラットケーブル10Dは、その内部に複数の電流経路を互いに絶縁された状態に備えているため、図3においては複数本に分割して描いている。
【0024】
処理装置12Dは、図4のフローチャートに示す複数の処理を実行する。すなわち、処理装置12Dは、各発振回路12Aの周期信号を取得し(ステップS1)、マルチプレクサ12Cが取り出した出力を取得して(ステップS2)、これらから各感圧セル11Iおよび各対照セル11Jの見かけ上の静電容量を導出する(ステップS3)。なお、上記見かけ上の静電容量は、ステップS1で周期信号として取得した矩形波交流電流と、ステップS2で取得した出力とを、その振幅または位相で対比することによって求めることができるものである。
【0025】
ここで、感圧セル11Iおよび対照セル11Jの静電容量は、対象のセル(感圧セル11Iまたは対照セル11J)が受ける圧力に応じて、このセルを構成する導電経糸11Aと導電緯糸11E(図2参照)との距離が変化する(すなわちひずむ)ことによって変動する。また、処理装置12Dが上記ステップS3にて導出する感圧セル11Iおよび対照セル11Jの見かけ上の静電容量は、対象以外のセル(感圧セル11Iまたは対照セル11J)の静電容量が変動することにより生じる混線信号によっても変動する。
【0026】
そこで、処理装置12Dは、対照セル11Jには圧力がかかっていないものとみなして、この対照セル11Jの静電容量の変化量を上記混線信号として検出し(ステップS4)、検出した混線信号で感圧セル11Iの見かけ上の静電容量を補正する(ステップS5)。この補正は、補正対象の感圧セル11Iにおける見かけ上の静電容量から、この感圧セル11Iと導電経糸11Aまたは導電緯糸11Eを共有する対照セル11Jの各混線信号の線形和を引く処理とすることができる。そして、処理装置12Dは、補正後の感圧セル11Iの静電容量からこの感圧セル11Iが受ける圧力を導出する(ステップS6)。すなわち、処理装置12Dは、導出した各感圧セル11Iおよび各対照セル11Jの静電容量に基づいて、各感圧セル11Iが受ける圧力を導出する。この際、処理装置12Dは、本発明における「補正手段」として機能する。
【0027】
そして、処理装置12Dは、上記ステップS6の導出結果に基づいて、圧力分布検知エリア10Aにて織物11にかかる圧力分布を検知し(ステップS7)、検知結果をディスプレイ12Eに出力する(ステップS8)。このディスプレイ12Eは、処理装置12Dの出力を、圧力分布検知エリア10Aにおける圧力分布を表す強度グラフの画像として、この画像を外部に向けてリアルタイムで表示する。
【0028】
上述した各構成においては、圧力分布検知エリア10Aにおける圧力分布を検知する際に、圧力分布検知エリア10Aに並んで形成されたコンデンサである感圧セル11Iの静電容量の変化量を求める。ここで、感圧セル11Iと電気的に接続されたコンデンサである対照セル11Jは、この対照セル11Jに圧力がかからない場合でも、感圧セル11Iからの混線信号のために見かけ上の静電容量が変化する。その上で、圧力分布検知装置10は、感圧セル11Iの静電容量の変化量に含まれる混線信号の誤差を、対照セル11Jにおける見かけ上の静電容量の変化量に基づいて補正することができる。このように、織物11における圧力分布の情報を感圧セル11Iの並びにおける各感圧セル11Iの静電容量から求める際に補正処理を行うことで、圧力分布検知エリア10Aにおける圧力分布をより高い精度で検知することが可能となる。
【0029】
なお、本発明者は、本発明の有効性を実験によって確認している。以下、この実験について説明する。本発明者は、図1に示す圧力分布検知装置10と同様の各構成を有する圧力分布検知装置に、この圧力分布検知装置が処理する各種データを収集するデータロガー(図示せず)を外付けした装置を使用して、圧力分布の検知を行う第1および第2の実験を行った。この第1および第2の実験においては、処理装置が導出する感圧セルの補正前の静電容量をデータロガーにより収集し、収集した静電容量から圧力分布検知エリアにて織物にかかる圧力分布を求めた。そして、求めた圧力分布を強度グラフの画像として、この画像を圧力分布検知装置のディスプレイに表示される、感圧セルの補正後の静電容量から求められた強度グラフと比較した。
【0030】
上記第1の実験では、上面が平らな台の上に圧力分布検知装置の織物を載せ、この織物上に設定された圧力分布検知エリアの3か所に木の板を載せた。これらの木の板には、それぞれ同じ重さの鉄製のおもしを載せた。この第1の実験では、図5に示すように、感圧セルの補正前の静電容量から求めた荷重の分布において、木の板が置かれた3か所とは別に、木の板が置かれていない場所にも荷重の集中が確認された。これは、圧力分布検知装置の織物上の各コンデンサに混線が生じると実際にはタッチされていない場所に見かけ上のタッチが検出されることを意味する。また、感圧セルの補正後の静電容量から求めた荷重の分布(図6参照)では、木の板が置かれた3か所のみに荷重の集中が確認された。これは、上記見かけ上のタッチは、感圧セルの静電容量の変化量に含まれる混線信号の誤差を補正することによってなくすことができることを意味する。
【0031】
上記第2の実験では、平らな床の上に圧力分布検知装置の織物を敷き、この織物上で成人が側臥位に横たわった。この第2の実験では、感圧セルの補正前の静電容量から求めた荷重の分布(図7参照)では1本の帯状に見える圧力分布を、混線信号の補正により横たわった人の姿勢を判別できる(図8参照)ほど精細にとらえることができることが分かった。
【0032】
本発明は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0033】
(1)圧力分布検知装置の織物を、例えば物品の表面を覆うように広げられて、所定の一方側からのみタッチによる圧力がかかるように配設されたものとすることができる。この場合において、上記物品に凹みがあるときには、この凹みの内部に隔離エリアを設定して、圧力分布検知エリアを隔離エリアと比して上記一方側に張り出した位置に設定することが好ましい。この設定によれば、圧力分布検知エリアへのタッチに際してあやまって隔離エリアの対照セルにタッチしてしまうことを減らして、圧力分布検知エリアにおける圧力分布を検知する精度が低下されることを抑えることができる。
【0034】
(2)図1に示す圧力分布検知装置10においては、織物11において隔離エリア10Bに位置される部分が外部に露出されている。しかしながら、圧力分布検知装置の織物は、この織物において隔離エリアに位置される部分が対照セルにかかる荷重を抑えるカバーによって覆われていてもよい。この構成によれば、隔離エリアの対照セルをカバーで覆ってこの対照セルにかかる荷重を抑えてこの対照セルのひずみを抑えることで、圧力分布検知エリアにおける圧力分布を検知する精度が低下されることを抑えることができる。
【0035】
(3)圧力分布検知装置の織物は二重織の織物に限定されず、平織およびからみ織を含む任意の製織方法で作られた織物とすることができる。ここで、圧力分布検知装置の織物が貫通孔である透き目を有する織物である場合、この透き目にリード線方式のコンデンサのリード線を挿し込んでこのコンデンサを対照セルとすることで、織物に対照セルを外付けされた状態に設けることができる。この構成によれば、圧力分布検知装置の織物に対する対照セルの配置を適宜に変更することができる。
【0036】
(4)タッチ位置検知装置の織物を、この織物に形成される感圧セルおよび対照セルが外部の湿度変化の影響を受けることを抑える防湿シートで覆われたものとすることができる。
【0037】
(5)本発明において、圧力分布検知エリアおよび隔離エリアの形状および相対位置は上述したものに限定されず、例えば隔離エリアを取り巻く環状に圧力分布検知エリアを設定してもよい。
【0038】
(6)図1に示す圧力分布検知装置10においては、織物11において隔離エリア10Bに位置される部分が外部に露出されている。しかしながら、圧力分布検知装置の織物は、この織物において隔離エリアに位置される部分が対照セルのひずみを抑制するコーティングによって固められていてもよい。この構成によれば、隔離エリアの対照セルをコーティングで固めてこの対照セルのひずみを抑えることで、圧力分布検知エリアにおける圧力分布を検知する精度が低下されることを抑えることができる。
【0039】
(7)本発明において、圧力分布検知装置の本体をなす織物を、例えば帯状の電極が縦横に配されて、これらの電極が交差される複数箇所がコンデンサとされた構成を有する網代編みのシートに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 圧力分布検知装置
10A 圧力分布検知エリア
10B 隔離エリア
10C フレキシブルフラットケーブル
10D フレキシブルフラットケーブル
10E 被膜線
10F 被膜線
11 織物(本体)
11A 導電経糸
11B 導電経糸領域
11C 絶縁経糸
11D 絶縁経糸領域
11E 導電緯糸
11F 導電緯糸領域
11G 絶縁緯糸
11H 絶縁緯糸領域
11I 感圧セル
11J 対照セル
12 検知装置
12A 発振回路
12C マルチプレクサ
12D 処理装置
12E ディスプレイ
12F きょう体
図1
図2
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図8