(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-105840(P2018-105840A)
(43)【公開日】2018年7月5日
(54)【発明の名称】距離測定器
(51)【国際特許分類】
G01B 5/02 20060101AFI20180608BHJP
G01B 3/12 20060101ALI20180608BHJP
G01C 22/00 20060101ALI20180608BHJP
【FI】
G01B5/02 101
G01B3/12
G01C22/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-256079(P2016-256079)
(22)【出願日】2016年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】514013945
【氏名又は名称】福美建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 正弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 英洋
【テーマコード(参考)】
2F061
2F062
【Fターム(参考)】
2F061AA17
2F061DD10
2F061DD22
2F061FF08
2F061GG01
2F061HH04
2F061JJ06
2F061JJ74
2F061MM03
2F061MM13
2F062AA22
2F062CC10
2F062CC22
2F062EE01
2F062EE26
2F062GG21
2F062GG71
2F062JJ04
2F062KK01
2F062LL09
2F062LL18
(57)【要約】
【課題】測定対象の表面状態に拘わらずに当該表面上の移動距離を正確に測定することの可能な距離測定器を提供する。
【解決手段】測定対象の表面上を転動する車輪13の回転に基づいて当該表面上の移動距離を測定する距離測定器10であって、車輪13の当該表面に対する接触面13cの摩擦係数を高めるための粉状又は粒状の材料が接触面13cに付着している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の表面上を転動する車輪の回転に基づいて前記表面上の移動距離を測定する距離測定器であって、
前記車輪の前記表面に対する接触面の摩擦係数を高めるための粉状又は粒状の材料が前記接触面に付着している、
距離測定器。
【請求項2】
前記粉状又は粒状の材料はダイヤモンドを含む、請求項1に記載の距離測定器。
【請求項3】
光を通過させるための少なくとも1つの孔が前記車輪の側面の円周に沿って設けられている、請求項1又は2に記載の距離測定器。
【請求項4】
透明部材が前記少なくとも1つの孔に埋設されている、請求項3に記載の距離測定器。
【請求項5】
前記車輪の回転軸を支持する支持部を備え、
前記支持部の前記測定対象の表面側の端部は、前記表面に向かって凸となるように形成されている、請求項1〜4の何れかに記載の距離測定器。
【請求項6】
前記車輪の回転軸を支持する支持部を備え、
前記支持部は、前記車輪の接触面及び側面の少なくとも一方に摺接する摺接部を備える、請求項1〜5の何れかに記載の距離測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の表面上を転動する車輪の回転に基づいて当該表面上の移動距離を測定する距離測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
主に地面や道路、線路、地図等における所望の二点間の距離を測定するために、例えばロードメジャー、ホイールカウンタ、キルビメータ等と呼ばれる車輪型距離測定器が普及している。一般に、このような車輪型距離測定器は、一端に把持部が設けられた棒状の測定器本体の先端に測定用車輪を取り付けた構成を有し、把持部を握った状態で、この車輪を測定対象となる二点間で転動させることにより、車輪の回転動作から二点間の距離を算出し、アナログ又はデジタル方式で当該距離を表示するものである。特許文献1には、測定器本体の下端側に測長用車輪が取り付けられ、磁気を用いて車輪の移動距離を計測してデジタル表示するロードメジャーが開示されている。
【0003】
このような距離測定器は、地面のみならず、壁面や天井面における距離の測定にも適用することができる。例えばビルや橋桁等のコンクリート建造物には、経年劣化により壁面や天井面等にクラックが入ることがあり、当該クラックの補修のためにクラックの位置特定を行うと共にクラックの長さを測定することがある。特許文献2には、そのような壁や天井等に生じたクラックの長さを測定する車輪型のクラック測定器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−026816号公報
【特許文献2】特開2009−174950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地面や道路上で距離を測定するのに用いられる距離測定器の車輪は例えばゴム等で構成されており、地図上で距離を測定するのに用いられる距離測定器の車輪は例えばプラスチック等の合成樹脂で構成されている。しかしながら、測定対象の表面上に埃や塵等のゴミや水分等が存在している状態において、このような距離測定器を用いて距離計測を行う場合には、例えば車輪がゴミや水分の上を回転せずに滑る等して車輪の回転が抑制される可能性があるので、当該表面上の移動距離を正確に測定することが困難になる虞があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、測定対象の表面状態に拘わらずに当該表面上の移動距離を正確に測定することの可能な距離測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、測定対象の表面上を転動する車輪の回転に基づいて前記表面上の移動距離を測定する距離測定器であって、前記車輪の前記表面に対する接触面の摩擦係数を高めるための粉状又は粒状の材料が前記接触面に付着している、距離測定器を提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、車輪の接触面の摩擦係数を高めるための粉状又は粒状の材料が接触面に付着しているので、当該材料が接触面に付着していない場合と比較して接触面が滑り難くなることから、例えば測定対象の表面上に埃や塵等のゴミや水分等が存在している場合であっても、車輪を滑らせずに回転させることが可能になる。したがって、測定対象の表面状態に拘わらずに当該表面上の移動距離を正確に測定することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記粉状又は粒状の材料はダイヤモンドを含むことが好ましい(発明2)。
【0010】
かかる発明(発明2)によれば、高い硬度を有するダイヤモンドが車輪の接触面に付着しているので、車輪の接触面の耐摩耗性を高めることができる。
【0011】
上記発明(発明1〜2)においては、光を通過させるための少なくとも1つの孔が前記車輪の側面の円周に沿って設けられていることが好ましい(発明3)。
【0012】
かかる発明(発明3)によれば、車輪の回転に伴って孔が移動するので、当該孔を通過した光を検出することによって車輪の回転を検出し、検出した車輪の回転に基づいて測定対象の表面上の移動距離を測定することができる。
【0013】
上記発明(発明3)においては、透明部材が前記少なくとも1つの孔に埋設されていることが好ましい(発明4)。
【0014】
例えば測定対象の表面上に存在するゴミ等が孔内に入り込んだ場合には、当該ゴミ等が光の通過を遮ることによって車輪の回転を検出ことができず、結果として測定対象の表面上の移動距離を正確に測定することが困難になる虞がある。かかる発明(発明4)によれば、ゴミ等が孔内に入り込むのを透明部材によって抑制することができるので、測定対象の表面上の移動距離を、孔を通過した光を検出することによって正確に測定することが可能になる。
【0015】
上記発明(発明1〜4)においては、前記車輪の回転軸を支持する支持部を備え、前記支持部の前記測定対象の表面側の端部は、前記表面に向かって凸となるように形成されていることが好ましい(発明5)。
【0016】
かかる発明(発明5)によれば、例えば測定対象の表面上の測定開始位置及び測定終了位置等を支持部の端部によって指し示すことができるので、移動距離の測定を容易に行うことが可能になる。
【0017】
上記発明(発明1〜5)においては、前記車輪の回転軸を支持する支持部を備え、前記支持部は、前記車輪の接触面及び側面の少なくとも一方に摺接する摺接部を備えることが好ましい(発明6)。
【0018】
例えば測定対象の表面上に存在するゴミ等が車輪に付着した場合には、当該ゴミ等が車輪と支持部との間に介在することによって車輪の回転が抑制される虞がある。かかる発明(発明6)によれば、車輪の接触面及び側面の少なくとも一方に付着したゴミ等を、摺接部が車輪の接触面及び側面の少なくとも一方に摺接することによって取り除くことができるので、車輪を円滑に回転させることができる。これにより、測定対象の表面上の移動距離を正確に測定することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の距離測定器によれば、測定対象の表面状態に拘わらずに当該表面上の移動距離を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る距離測定器の基本構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る距離測定器10の基本構成を概略的に示す図であり、
図2は、距離測定器10の正面図であり、
図3は、距離測定器10の側面図であり、
図4は、車輪13の接触面13cを示す図である。本実施形態に係る距離測定器10は、測定対象の表面上を転動する車輪13の回転に基づいて当該表面上の移動距離を測定する装置であり、測定器本体11と、測定器本体11の先端部に取り付けられた支持部12と、回転軸が支持部12に支持された車輪13と、距離測定の開始・終了等の操作を行う操作部14と、測定結果等の情報を表示するための表示部15と、から構成されている。
【0023】
なお、本実施形態では、距離測定器10を用いて、例えばビルや橋桁等のコンクリート建造物の壁面や天井面に生じたクラック(亀裂)Cの長さを測定する場合を一例として説明する。この場合において、コンクリート建造物の壁や天井は、本発明の「測定対象」の一例である。
【0024】
測定器本体11は、例えばプラスチック等の合成樹脂で構成された、上下方向(図中Z方向)に延在する棒状部材であり、その内部には、操作部14の入力内容に応じた測定処理を行い、測定結果を表示部15に表示する処理を行う制御回路(例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置等を含む)と、当該制御回路等の駆動電源である電池と、が設けられている。また、測定器本体11には、測定者が把持するためのグリップが装着されていてもよい。
【0025】
支持部12は、前後方向(図中Y方向)に対向する一対の板状部材であって、上下方向(図中Z方向)に延在するように形成されている。支持部12は、例えばプラスチック等の合成樹脂で構成されてもよい。支持部12には、
図2に示すように、車輪13の回転軸を回転自在に支持するための軸受部12aが設けられている。なお、軸受部12aは、車輪13の回転軸の回転時の摩擦を軽減するために、例えばボールベアリング構造を有していてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、支持部12の先端部12b(壁面や天井面側の端部)が、壁面や天井面に向かって凸となるように形成されている。例えば、支持部12の先端部12bは、
図2に示すように、凸の頂点が測定器本体11の幅方向(図中X方向)中央部及び軸受部12aを通る直線L上に存在するように形成されてもよい。これにより、例えば壁面や天井面におけるクラックCの測定開始位置S及び測定終了位置E等を支持部12の先端部12bによって指し示すことができるので、移動距離の測定を容易に行うことが可能になる。
【0027】
ところで、例えば壁面や天井面に存在するゴミ等が車輪13に付着した場合には、当該ゴミ等が車輪13と支持部12との間に介在することによって車輪13の回転が抑制される虞がある。そこで、本実施形態では、
図2に示すように、車輪13の側面13aに摺接する摺接部12cが、支持部12の幅方向(図中X方向)両端側に設けられている。摺接部12cは、例えば、ブラシやポリウレタンフォーム等で構成されてもよい。これにより、車輪13の側面13aに付着したゴミ等を、摺接部12cが車輪13の側面13aに摺接することによって取り除くことができるので、車輪13を円滑に回転させることができる。したがって、壁面や天井面における移動距離を正確に測定することが可能になる。
【0028】
なお、ここでは、摺接部12cが車輪13の側面13aに摺接する場合を一例として説明しているが、摺接部12cは、車輪13の接触面13cに摺接するように形成されてもよい。この場合、車輪13の接触面13cに付着したゴミ等を、摺接部12cが車輪13の接触面13cに摺接することによって取り除くことができる。
【0029】
また、支持部12には、例えば発光ダイオード等の発光素子(図示省略)と、例えばフォトダイオード等の受光素子(図示省略)とが、車輪13を前後方向(図中Y方向)に挟むように設けられている。発光素子及び受光素子はフォトセンサを構成しており、後述するように、車輪13が両素子間で回転する場合に、発光素子から発光された光を受光素子で検出することによって、車輪の回転を検出するようになっている。なお、受光素子から出力された検出信号は、例えば、増幅器で増幅された後に、測定器本体11内の制御回路に送信されてもよい。
【0030】
車輪13は、壁面や天井面に接する接触面13cが例えばステンレスやアルミニウム等の金属で構成された円盤形状の部材である。車輪13は、回転軸を中心に回転可能な円盤形状を有するものであれば特にその構造が限定されず、例えば円盤形状のゴムや合成樹脂(例えばプラスチック等)等の中心に回転軸が取り付けられているだけのものでもよいし、ステンレスやアルミニウム製のホイールの外周にタイヤ状のゴムや合成樹脂を取り付け、ホイールの中心に回転軸が取り付けられたものであってもよい。
【0031】
車輪13の側面13aの周縁部には、支持部12に設けられた発光素子から発光された光を通過させるための複数の孔13bが、側面13aの円周に沿って所定間隔をおいて設けられている。ここで、車輪13が発光素子及び受光素子間で回転する場合には、車輪13の回転に伴って各孔13bが側面13aの円周方向に移動する。このとき、発光素子から発光された光が受光素子に入射される状態が両素子間の孔13bの有無に応じて変化することから、両素子間に孔13bが存在する場合に当該孔13bを通過した光を受光素子で検出することによって車輪13の回転を検出することができ、検出した車輪の回転に基づいて壁面や天井面における移動距離を測定することができる。
【0032】
また、例えば壁面や天井面に存在するゴミ等が孔13b内に入り込んだ場合には、当該ゴミ等が光の通過を遮ることによって車輪13の回転を検出ことができず、結果として壁面や天井面における移動距離を正確に測定することが困難になる虞がある。そこで、各孔13bには、例えばアクリル樹脂等の透明樹脂やガラス等の透明部材(図示省略)が埋設されてもよい。この場合、ゴミ等が孔13b内に入り込むのを透明部材によって抑制することができるので、壁面や天井面における移動距離を、孔13bを通過した光を検出することによって正確に測定することが可能になる。
【0033】
なお、孔13bの数は、距離測定器10に要求される分解能に応じて任意に設定されてもよく、例えば、1つであってもよいし、2つ以上(例えば50)であってもよい。
【0034】
また、車輪13のサイズについても任意に設定することができるが、例えば、測定対象の表面上に存在する段差や凹凸を乗り越えるためには余り小さすぎず、且つ、当該段差や凹凸を飛び越さないためには余り大きすぎないことが好ましい。また、距離測定器10は、壁面や天井面での測定に利用し得る可搬性を有することが好ましい。このような観点から、車輪13の直径は、例えば、20mm以上であることが好ましく、40mm以下であることが好ましい。
【0035】
車輪13の接触面13cには、
図4に示すように、粉粒状材料13dが付着している。粉粒状材料13dは、接触面13cの摩擦係数を高めるための粉状又は粒状の材料であって、例えば電着や蒸着等の周知の付着方法を用いることによって接触面13cに付着してもよい。また、粉粒状材料13dは、少なくとも一部が接触面13cから外部に突出するように接触面13cから車輪13内に埋設されることによって、接触面13cに付着してもよい。接触面13cに粉粒状材料13dが付着していることによって接触面13cが粗くなることから、粉粒状材料13dが接触面13cに付着していない場合と比較して接触面13cの摩擦係数を高めることができる。なお、粉粒状材料13dは、接触面13cの摩擦係数を高めるためのものであれば如何なる材料を用いてもよいが、例えば、接触面13cの構成物質(例えばステンレスやアルミニウム等の金属)よりも摩擦係数の高い材料であってもよいし、耐摩耗性を有する材料であってもよい。例えば、粉粒状材料13dは、ダイヤモンドを含んでもよい。この場合、高い硬度を有するダイヤモンドが車輪13の接触面13cに付着しているので、車輪13の接触面13cの耐摩耗性を高めることができる。
【0036】
さらに、粉粒状材料13dのサイズは任意に設定することができるが、例えば、接触面13cの摩擦係数を高めるためには余り小さすぎず、且つ、車輪13の回転に基づく距離計測を正確に行うためには余り大きすぎないことが好ましい。このような観点から、粉粒状材料13dの表示粒度は、例えば、100以上であることが好ましく400以下であることが好ましい。また、粉粒状材料13dの平均粒径は、0.06mm以上であることが好ましく、0.19mm以下であることが好ましい。
【0037】
操作部14は、測定を開始するときに押下する測定開始ボタン14aと、測定を終了するときに押下する測定終了ボタン14bと、測定した距離を積算していくときに押下する積算ボタン14cと、測定した距離データをリセットするときに押下するクリアボタン14dとを備えている。また、操作部14には、電源のオンオフを行う電源スイッチ(図示省略)が設けられていてもよい。表示部15は、例えば測定した距離が二段に表示されるディスプレイであって、上段には一回の測定で測定された距離が表示され、下段には積算ボタンを押して積算された距離の総計が表示される。
【0038】
本実施形態に係る距離測定器10は、以上に説明した構成を有することにより、車輪13の接触面13cの摩擦係数を高めるための粉粒状材料13dが接触面13cに付着しているので、粉粒状材料13dが接触面13cに付着していない場合と比較して接触面13cが滑り難くなることから、例えば壁面や天井面に埃や塵等のゴミや水分等が存在している場合であっても、車輪13を滑らせずに回転させることが可能になる。したがって、壁面や天井面の表面状態に拘わらずに壁面や天井面における移動距離を正確に測定することができる。
【0039】
距離測定器10を用いて壁面や天井面におけるクラックCの長さを測定する手順を以下に説明する。測定者は、先ず、電源スイッチ(図示省略)を押下して電源をオンにし、車輪13の接触面13cがクラックCに接した状態で支持部12の先端部12bがクラックCの起点(測定開始点S)を指すように、距離測定器10を構える。そして、測定者は、測定開始ボタン14aを押下し、クラックCの起点から終点(測定終了点E)まで車輪13でなぞるように距離測定器10を動かしていく。
【0040】
ここで、車輪13が回転すると、車輪13の側面13aの各孔13bが側面13aの円周方向に移動する。このとき、支持部12の発光素子からの光は、孔13bが発光素子及び受光素子間に位置するタイミングでは受光素子に入射され、孔13bが発光素子及び受光素子間に位置しないタイミングでは車輪13に遮られて受光素子に入射しない。そして、受光素子における光のオンオフをカウントすることによって車輪13の回転数を検出することができるので、距離測定器10の移動距離を測定することが可能になる。
【0041】
測定終了点Eまで車輪13でなぞってクラックCの長さの測定が終わったら、測定者は、測定終了ボタン14bを押下し、表示部15の上段に表示されている測定距離を記録等して、他のクラック(図示省略)を同様に測定していく。
【0042】
ここで、測定者は、複数のクラックの測定結果を積算したい場合には、1つのクラックの測定が終了する毎に積算ボタン14cを押下する。積算ボタン14cが押下されると、表示部15の上段に表示されている測定距離が下段に表示される積算距離に積算される。
【0043】
他のクラックの測定を始める前にクリアボタン14dが押下されると、測定距離がゼロに戻る。また、例えば、クリアボタン14dと積算ボタン14cとが同時に押下された場合には、積算距離がクリアされてもよい。
【0044】
以上、本発明に係る距離測定器について図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態においては、距離測定器10がクラックCの起点(測定開始点S)から終点(測定終了点E)への一方向の移動距離を測定していたが、これに限られるものではなく、例えば、当該一方向とは逆の方向の移動距離も測定してよい。この場合、支持部12には、発光素子及び受光素子の組が2つ設けられており、各組は、受光素子で検出される光の位相が各組間で1/4周期ずれるように配置されてもよい。また、車輪13が逆回転した分だけ移動距離を減算してもよい。これにより、例えば車輪13の位置がクラックCからずれた場合であっても、クラックCからずれる直前の位置まで車輪13を逆回転させることによって、車輪13の位置がずれた分の移動距離を測定距離から除外することができる。したがって、移動距離の測定を最初からやり直す必要がないので、利便性を向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、車輪13を挟むように設けられた発光素子及び受光素子を用いて車輪13の回転数を検出しているが、車輪13の回転数を検出する手段として周知のロータリーエンコーダやギヤ式のメカニカルカウンタを用いてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では、測定距離が表示部15に表示される場合を一例として説明したが、測定距離データは、例えば無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式を用いて、外部の装置に送信されてもよい。また、測定器本体11には、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェース用のコネクタが設けられていてもよく、測定距離データは、当該コネクタを介して外部の記憶装置(例えば、USBメモリ等)に記憶されてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態では説明を省略したが、車輪13が必要以上に回転するのを抑制するために、例えばボールブランジャ等の回転抵抗を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の距離測定器は、測定対象の表面状態に拘わらずに当該表面上の移動距離を正確に測定することの可能な距離測定器として、例えばキルビメータやロードメジャー等の車輪型距離測定器等に好適に利用することができるので、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0050】
10…距離測定器
11…測定器本体
12…支持部
12a…軸受部
12b…先端部
12c…摺接部
13…車輪
13a…側面
13b…孔
13c…接触面
13d…粉粒状材料
C…クラック