特開2018-108238(P2018-108238A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-108238いちどの給湯だけでハンドドリップと変わらない本格抽出が再現できるコーヒードリッパー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-108238(P2018-108238A)
(43)【公開日】2018年7月12日
(54)【発明の名称】いちどの給湯だけでハンドドリップと変わらない本格抽出が再現できるコーヒードリッパー
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20180615BHJP
   A47J 31/02 20060101ALI20180615BHJP
   A47J 31/46 20060101ALI20180615BHJP
   A47J 31/44 20060101ALI20180615BHJP
【FI】
   A47J31/06 150
   A47J31/02
   A47J31/46
   A47J31/44 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-257467(P2016-257467)
(22)【出願日】2016年12月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515237267
【氏名又は名称】岸本 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】713013032
【氏名又は名称】岸本 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】岸本幸夫
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA02
4B104BA43
4B104EA20
4B104EA30
(57)【要約】
【課題】コーヒーを透過法で丁寧にハンドドリップする際の難しさや煩雑さを解消し、コーヒー専門店が本格的に行うハンドドリップの味わいを誰もが簡単に再現できるコーヒードリッパーを提供する。
【解決手段】フィルターFを支えるドリッパー本体Dと、その上に載せるお湯を溜める給湯タンクTの2つのパーツで構成し、ドリッパー本体Dと給湯タンクTの当接箇所Aを密着させてフィルターFを挟み込んで落下しないように保持した上でフィルターF内に密閉空間を作り、コーヒー豆から放出される炭酸ガスの圧力でコーヒー抽出の原理である浸透圧を高め、給湯タンクTの底部にハンドドリップの丁寧な注湯を再現するためのお湯の流れを整える整流バルブVを設けた構造でコーヒーの抽出精度を上げ、給湯タンクTはコーヒー抽出に必要なお湯の全量を溜められる容量とし、いちどの給湯だけでハンドドリップと変わらない本格抽出の再現を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターFを支えるドリッパー本体Dと、その上に載せるお湯を溜めるお湯タンクTの2つのパーツで構成されるコーヒードリッパーであって、ドリッパー本体Dとお湯タンクTの当接箇所Aを密着させてフィルターFを挟み込んで落下しないように保持できる仕組みで、同時にフィルターF内を密閉空間にする構造を有し、お湯タンクTの底部にはハンドドリップの丁寧な注湯を再現するためのお湯の流れを整える整流バルブVを有していることを特徴とする、合成樹脂又はステンレス又はガラス又は陶器製のコーヒードリッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、コーヒーをハンドドリップ式で本格的に抽出するための器具に関するものである。従来の器具に無かった大きな特長は、コーヒーの抽出に関する知識と経験が不要で誰が淹れても精度の高い抽出が可能なことである。また、抽出作業の過程においても従来のようにポットで丁寧に注湯する必要がなく、適量分のお湯をドリッパーの給湯タンク部Tに一度に注ぐだけで、手で丁寧に注ぐような注湯が再現され抽出開始時の蒸らし作業も自然と行われるため、コーヒーの抽出が終わるまでの間に人が手を加えることなく放置しているだけで最後まで完了するものであり、煩雑さや専門性がなく使い勝手が向上している。
【背景技術】
【0002】
コーヒーを抽出する原理は、コーヒー液の濃度差による浸透圧にある。コーヒー豆にお湯が触れると、豆の外側から内部にお湯が浸透し、豆内部のコーヒー成分がお湯に溶出して豆全体が濃いコーヒー液で満たされる。この状態にする工程が蒸らしと呼ばれるものである。さらにお湯を加えて行くと、浸透圧によりコーヒー成分が豆からお湯に移動して行く。これがコーヒー抽出の原理であり、蒸らしの工程は浸透圧を最大限に働かせるために有効なものである。
【0003】
コーヒーをドリップする方法には大きく分けて浸漬法と透過法の2種類がある。浸漬法とは溜めた状態のお湯にコーヒー豆を漬けて抽出する方法で、浸透圧が釣り合うと抽出は止まる。一方、透過法はコーヒー豆に対して少しずつお湯を透過させながら抽出する方法で、抽出の間は豆内のコーヒー液とお湯の間で常に浸透圧が生じてコーヒーが抽出され続ける。
【0004】
この浸透圧を生じさせ続ける透過法の抽出は、注湯を丁寧にゆっくり行うと効率よく浸透圧を働かせることができることに加えて、お湯の流れによる豆の撹拌が最小限に留められることから、コーヒーの味が良質と感じられるコクと甘みがしっかりと表現された透明感のある味に仕上がるが、注湯の技量により出来上がりの味に差が生じやすくなる。豆をお湯に漬けてしまう浸漬法では注湯の技量による差は出にくいが、浸透圧が途中で釣り合って抽出が止まることから十分に良質な味が出にくくなり、さらには長時間お湯に浸し続けるとエグ味成分が豆がら溶けだしてしまう問題が発生する。
【0005】
本発明品のドリッパーは、ドリップ方法の中で透過法による抽出を精度の高い注湯方法で簡単に実現できるようにするためのもので、従来のように注湯の技量を必要とせずにコーヒー専門店が行うような精度の高いハンドドリップによる抽出を誰もが出来るようになるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005ー296598
【特許文献2】実用新案登録第3203459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明品は、コーヒーを透過法で丁寧にハンドドリップする際の難しさや煩雑さを解消するためのもので、コーヒー専門店が本格的に行うハンドドリップの味わいを誰もが簡単に再現できるようになるものである。
【0008】
ハンドドリップとは、ドリッパーにセットしたフィルターに入れたコーヒー豆に対して、手で持ったポットでお湯を丁寧に注いでコーヒーを抽出する方法で、重要なポイントは、沸騰直後の熱湯ではエグ味の原因となるタンニン等が抽出されやすいため湯温を90℃前後に下げることと、ポットの先端を出来るだけコーヒー豆に近づけてお湯の落下衝撃を和らげながら少しづつ注ぐことである。
【0009】
さらに透過法の場合は、お湯がフィルター内に溜まってコーヒー豆の上面より高い位置まで浸かってしまわないようにするため、より注意深くゆっくり丁寧に注ぐ必要があり、一連の作業には専門性が必要となる。
【0010】
本発明品は、沸騰直後の必要量のお湯をいちどにドリッパーの給湯タンクT部に給湯するだけで、給湯タンクT底部の整流バルブVを通過したお湯は自然と適温に下がり、豆に対して低い位置から手で丁寧に注ぐような穏やかな流れに整えられ、ハンドドリップの丁寧な注湯を再現しながらコーヒー豆にお湯を滴下するものである。
【0011】
また、ドリッパー本体DにセットしたフィルターFの上側に給湯タンクTを載せてフィルターFを挟んで止める構造により底側の受け部が不要となり、一般的なドリッパーのような構造に存在するフィルターの支えがなく、透過法で理想とされる布フィルターを手で保持するネルドリップと同じようにフィルターFが宙に浮いた形態となる。
【0012】
この時、フィルターFを挟み込む構造によりフィルターF内に密閉空間が作られ、この中で豆がお湯に触れて発生する炭酸ガスの圧力によりコーヒーの抽出原理である浸透圧が高められるため、一般的なドリッパーでは作り出せない密閉による本発明特有の抽出効果が加わる。
【0013】
密閉によるもう一つの効果として、密閉状態の中で抽出されたコーヒー液がフィルターFを通過して外側へ滴下するとフィルターF内の気圧が下がり、そのバランスを保つために給湯タンクT内のお湯が整流バルブVを通過してフィルターF内に引き込まれながら供給される形になる。
【0014】
この現象により、フィルターF内のコーヒー豆Cに対してお湯が滞留せず緩やかな速度でスムーズに流れ、手で丁寧に行うハンドドリップの抽出の際の注湯の動作に近づけることが可能となり、密閉の効果とあいまって本格的なハンドドリップと変わらない精度の高い抽出が再現できる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明品は、円錐台又は円筒形の形状のお湯を溜める給湯タンクTとフィルターFを受けるドリッパー本体Dの2つのパーツで構成される。ドリッパー本体DをサーバーSの上に設置し、ドリッパー本体D上部のフィルター受けにフィルターFをセットする。フィルターは一般の円錐型ペーパーフィルターを使用し、適量のコーヒー豆Cを投入してフィルターFの上側に給湯タンクTをかぶせるように載せ、給湯タンクTとドリッパー本体Dの当接箇所AでフィルターFを挟み込む。
【0016】
給湯タンクTはコーヒーを抽出するのに必要な湯量が一度に溜められる大きさとし、底にはお湯の流れを調整する整流バルブVを取り付け、お湯は整流バルブVを通過してフィルターF内のコーヒー豆Cに少しづつ注がれてゆく構造である。
【0017】
整流バルブVは三方向に0.2mm程度のわずかな段差を付けた平板で、給湯タンクTの底に中央に開けた約4mmの排出穴Hに合わせて密着させる形で配置し、給湯タンクT底面に0.2mm程度の隙間を作る構造である。給湯タンクTに注がれた熱湯は排出穴Hから流出するが、お湯の流れはこの隙間で絞られ速度が低下してお湯は緩やかに整流され、手に持ったポットでゆっくりと丁寧にお湯を注ぐ状況に近づけるためのものである。
【0018】
整流バルブの基本的な役割は0.2mm程度の隙間によりお湯の流れを整えることであるが、保守性と機能の向上のために、入口バルブV1と出口バルブV2とバルブ座V3の3つの部品の構成とする。給湯タンクTの底の内面側の中央に入口バルブV1、給湯タンクTの外側の中央に出口バルブV2を配置し、給湯タンクTの外側と出口バルブV2の間にバルブ座V3を挟む。
【0019】
入口バルブV1の役目は給湯タンクT内のお湯が抽出最後に底に残ってしまうのを防ぐことで、約1mmの入口バルブ隙間V1Cを設けることによりお湯が引き込まれるように残らず下のサーバーSに落ちる。整流バルブVの主機能である出口バルブV2は給湯タンクT底の排出穴Hを覆うように配置して0.2mmの出口バルブ隙間V2Cを構成するが、給湯タンクTの底面に直接取り付けた場合に底面自体の平面が変形すると隙間寸法が変わってしまい抽出速度に影響するため、変形の影響を軽減する目的と、万が一変形しても給湯タンクTを交換することなくバルブ座V3のみを交換すればよい構造とする。
【0020】
お湯の流れを整える方法としては、出口バルブV2の0.2mmの隙間V2Cにお湯を通すのではなく、「特許文献1」「特許文献2」のように給湯する役割のタンクの底部に小さな穴を複数個設けて湯の流れを調整する方法も考えられるが、その場合タンク底の板厚によって湯の流れ方が変わってくる。プラスチックやステンレス等、タンクの材質が異なると最適な材料の厚みが変化してそれに伴い必要な穴径が変わってしまうため、底板の厚みに影響されない汎用性を確保するためにも整流バルブVを底板に付ける方式とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明品は、手でお湯を丁寧に注ぐ代わりに整流バルブVでお湯の流れを調整し、既存のハンドドリップ用のドリッパーでは実現できない密閉による自然の力を活用したもので、汎用的なペーパーフィルターを使いながらネルドリップを行った際に得られるコクや甘みや透明感を感じさせる良質な味のコーヒーを、ハンドドリップの知識や経験を必要とせずに誰もが再現性をもって抽出できるようにするためのものである。
【0022】
また、抽出作業がいちどにお湯を注ぐだけで誰でも簡単に行えるため、従来のような専門性が不要で知識を持っていなくても本格ドリップの再現が可能となる上に、同時並行でドリップ作業が複数杯行えるため、個人が家で使用するのはもちろん、コーヒー専門店で専用スタッフの抽出作業を補助する活用も可能となる。さらに、専門のスタッフや設備がない店舗でも、本格的なハンドドリップコーヒーが提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明品の構成部品の断面図である。
図2】本発明品の構成部品である整流バルブVの詳細断面図(a)と、入口バルブV1及び出口バルブV2の平面図(b)とバルブ座V3の平面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明品のドリッパーは、底面にお湯の流れを人工的に整える整流バルブVを取り付けた給湯タンクTと、フィルターFをセットするドリッパー本体Dの2つのパーツで構成される。抽出したコーヒーを受けるサーバーSの上にドリッパー本体Dを載せ、ドリッパー本体D上部に円錐型のペーパーフィルターをセットしコーヒー豆Cを入れ、その上から蓋をするように給湯タンクTをかぶせる。給湯タンクTとサーバー本体Dとの当接箇所Aは密着する構造とし、給湯タンクTをドリッパー本体Dにかぶせた際にフィルターFを挟み込み、抽出の最中にフィルターFが下に落ちてしまわないようにする。
【実施例】
【0025】
コーヒーを抽出するにあたり、ドリッパー本体Dと給湯タンクTをセットした状態で沸騰直後の熱湯を給湯タンクTに一杯になるように給湯する。給湯タンクTの容量はコーヒーを抽出する必要量がいちどに入る量を確保する大きさとする。
【0026】
給湯タンクTに給湯した熱湯は、整流バルブVを通過する際に緩やかな流れに整流され温度が適温に下がってコーヒー豆Cに滴下される。緩やかな流れのお湯は徐々にコーヒー豆Cに浸透して豆を蒸らして行き、浸透圧によりコーヒー成分を抽出しながらコーヒー液がサーバーSに落ちて行く。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明品により、専門的な知識や経験が不要で誰もが本格的ハンドドリップコーヒーを簡単に淹れることが可能となり、個人が自宅で楽しむこともコーヒー専門店が店舗で業務ツールとして活用することも出来る。専門店では、コーヒー専門のスタッフでなくても精度の高いドリップが可能となることに加えて、いちどにお湯を注ぐだけでよい機能性のため、ハンドドリップメニューであってもコーヒーの抽出業務に付きっきりにならず他の業務が行え、繁忙時間帯においてもドリップの精度を落とすこと無く複数杯を同時に淹れることが可能となる。
【0028】
海外のエスプレッソを中心とした合理的なコーヒー文化では、人の手で時間をかけてハンドドリップコーヒーを淹れる業務形態は受け入れられにくいが、本発明品により本格的ハンドドリップコーヒーが手軽で合理的なものとなれば、日本の古くからの喫茶文化である丁寧に淹れるハンドドリップコーヒーの味を今まで以上に海外マーケットに提案可能となる。
【符号の説明】
【0029】
T 給湯タンク
D ドリッパー本体
H 排出穴
V 整流バルブ
V1 入口バルブ
V1C 入口バルブ隙間
V2 出口バルブ
V2C 出口バルブ隙間
V3 バルブ座
V4 バルブ止めネジ
V5 バルブ止めナット
F フィルター
A 給湯タンクとドリッパー本体の当接箇所
C コーヒー豆
S サーバー
図1
図2