特開2018-108662(P2018-108662A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-108662(P2018-108662A)
(43)【公開日】2018年7月12日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20180615BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20180615BHJP
   B43K 25/02 20060101ALI20180615BHJP
【FI】
   B43K29/02 F
   B43K24/08 110
   B43K24/08 150
   B43K25/02 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-256651(P2016-256651)
(22)【出願日】2016年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正史
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 孝司
【テーマコード(参考)】
2C041
2C353
【Fターム(参考)】
2C041AA01
2C041BB03
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HG04
2C353HJ05
2C353HL03
2C353MA06
(57)【要約】
【課題】摩擦操作する際、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部の前後方向の移動を確実に阻止できる熱変色性筆記具を提供する。
【解決手段】ノック部材7の側壁外面に、前方に延び且つ径方向に弾性変形可能なクリップ71が設けられ、クリップ71の内面に、径方向内方に突出する凸部74が設けられ、軸筒2の側壁に、前記凸部74と係合可能な凹部22が設けられ、摩擦部8を用いて摩擦操作しないとき、クリップ71の凸部74が軸筒2側壁の凹部22に非係合状態にあり、摩擦部8を用いて摩擦操作するとき、クリップ71が径方向内方に押圧されることにより、クリップ71が径方向内方に変位され、クリップ71の凸部74が軸筒2側壁の凹部22に係合され、軸筒2に対する摩擦部8の後方移動が阻止される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒の後端部にノック部材を設け、前記ノック部材を前方に押圧することによりペン先を軸筒の前端孔から突出状態にし、再度、前記ノック部材を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先を軸筒の前端孔より軸筒内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部を設けた熱変色性筆記具であって、
前記ノック部材の側壁外面に、前方に延び且つ径方向に弾性変形可能なクリップが設けられ、前記クリップの内面に、径方向内方に突出する凸部が設けられ、前記軸筒の側壁に、前記凸部と係合可能な凹部が設けられ、前記摩擦部を用いて摩擦操作しないとき、前記クリップの凸部が前記軸筒側壁の凹部に非係合状態にあり、前記摩擦部を用いて摩擦操作するとき、前記クリップが径方向内方に押圧されることにより、前記クリップが径方向内方に変位され、前記クリップの凸部が前記軸筒側壁の凹部に係合され、前記軸筒に対する前記摩擦部の後方移動が阻止されることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記凹部が前記軸筒側壁に前後に少なくとも2か所に形成され、ペン先突出状態において前記摩擦部を用いて摩擦操作する時、前記前側の凹部と前記凸部とが係合され、ペン先没入状態において前記摩擦部を用いて摩擦操作する時、前記後側の凹部と前記凸部とが係合される請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記凸部の前後方向の移動範囲において、軸筒の側壁外面に複数の凹部が鋸刃状に連続して設けられる請求項1または2に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒の後端部にノック部材を設け、前記ノック部材を前方に押圧することによりペン先を軸筒の前端孔から突出状態にし、再度、前記ノック部材を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先を軸筒の前端孔より軸筒内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部を設けた熱変色性筆記具であって、前記軸筒側壁に、径方向内方に押圧操作可能な操作部を設け、前記操作部の径方向内面に規制部を設け、前記摩擦部を用いた摩擦操作の際、前記操作部を径方向内方に押圧操作することにより、前記操作部を径方向内方に変位させ、前記操作部の径方向内方の規制部が前記ノック部材または前記摩擦部に接触し、前記軸筒に対する前記摩擦部の後方移動を阻止してなる熱変色性筆記具が開示されている。
【0003】
特許文献1の熱変色性筆記具は、具体的には、前記操作部が、前記軸筒の側壁に設けられる、径方向に弾性変形可能な弾性壁部よりなり、前記弾性壁部の径方向内面に前記規制部を設けた構成(特許文献1の図1)、及び前記軸筒の側壁外面にクリップを設け、前記クリップの基部より後方に操作部を突出させ、前記操作部を径方向外方に付勢することによって前記クリップの前端部を軸筒側壁に圧接させ、前記操作部の径方向内面に前記規制部を設けた構成(特許文献1の図4)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−91473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の熱変色性筆記具は、操作部の操作部分が小さく、操作部分を確認してから押圧操作するため、摩擦操作を迅速に開始できない。また、前記特許文献1の熱変色性筆記具は、規制部を径方向内方に押圧操作する際に、径方向外方への付勢に抗して押圧しなければならず、比較的大きな把持力が必要であり、小さい押圧力では摩擦部の前後方向の移動を十分に阻止できないおそれがある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、摩擦操作する際、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部の前後方向の移動を確実に阻止できる熱変色性筆記具を提供しようとするものである。
【0007】
尚、本発明において、「前」とはペン体側を指し、「後」とはその反対側を指す。本発明で、「ペン先没入状態」とは、ペン先が軸筒内に没入した状態をいい、「ペン先突出状態」とは、ペン先が軸筒の前端より外部に突出した状態をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明に係る熱変色性筆記具は、筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体3の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先31を設け、前記筆記体3を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒2の後端部にノック部材7を設け、前記ノック部材7を前方に押圧することによりペン先31を軸筒2の前端孔21から突出状態にし、再度、前記ノック部材7を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先31を軸筒2の前端孔21より軸筒2内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材7の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部8を設けた熱変色性筆記具であって、前記ノック部材7の側壁外面に、前方に延び且つ径方向に弾性変形可能なクリップ71が設けられ、前記クリップ71の内面に、径方向内方に突出する凸部74が設けられ、前記軸筒2の側壁に、前記凸部74と係合可能な凹部22が設けられ、前記摩擦部8を用いて摩擦操作しないとき、前記クリップ71の凸部74が前記軸筒2側壁の凹部22に非係合状態にあり、前記摩擦部8を用いて摩擦操作するとき、前記クリップ71が径方向内方に押圧されることにより、前記クリップ71が径方向内方に変位され、前記クリップ71の凸部74が前記軸筒2側壁の凹部22に係合され、前記軸筒2に対する前記摩擦部8の後方移動が阻止されることを要件とする。
【0009】
前記第1の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記構成により、摩擦部8を用いて摩擦操作する際、クリップ71とともに軸筒2側壁を握るだけで、クリップ71が径方向内方に押圧され、クリップ71が径方向内方に変位され、クリップ71の凸部74が軸筒2側壁の凹部22に係合される。それにより、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することを不要にし、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【0010】
本願の第2の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記第1の発明に係る熱変色性筆記具において、前記凹部22が前記軸筒2側壁に前後に少なくとも2か所に形成され、ペン先突出状態において前記摩擦部8を用いて摩擦操作する時、前記前側の凹部22aと前記凸部74とが係合され、ペン先没入状態において前記摩擦部8を用いて摩擦操作する時、前記後側の凹部22bと前記凸部74とが係合されることを要件とする。
【0011】
前記第2の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記構成により、ペン先突出状態、ペン先没入状態の何れの状態においても、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【0012】
本願の第3の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記第1または第2の発明に係る熱変色性筆記具において、前記凸部74の前後方向の移動範囲において、軸筒2の側壁外面に複数の凹部22が鋸刃状に連続して設けられることを要件とする。
【0013】
前記第3の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記構成により、前記凸部74の前後方向の移動範囲における任意の位置で、凸部74と凹部22が係合される。その結果、軸筒2に対するクリップ71の前後方向の位置が何れの状態であっても、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱変色性筆記具は、摩擦部を用いて摩擦操作する際、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図2図1のペン先突出状態を示す縦断面図である。
図3図1の要部拡大縦断面図である。
図4図1の出没機構を示す分解図である。
図5】本発明の第2の実施の形態のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図6図5のペン先突出状態を示す縦断面図である。
図7図5の要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の筆記具の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1乃至図4に示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構とを備える。軸筒2は、円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端に連結される円筒状の後軸2bとからなる。後軸2bの側壁には、後軸2bの後端より後方に開放され且つ前後方向に延びるスライド孔23が形成される。
【0018】
筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。
【0019】
ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンのみからなる構成、またはボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓を取り付けてもよい。
【0020】
出没機構(図4)は、回転カム機構を用いたノック式出没機構であり、軸筒2内面(後軸2b内面)に形成されたカム部4と係合し且つ筆記体3の後端と当接する回転部材5と、回転部材5及びカム部4と係合するカム部材6と、カム部材6と連結されるノック部材7と、軸筒2内に収容され且つ筆記体3を後方に付勢する弾発体(例えば圧縮コイルスプリング・図示せず)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがノック部材7を前方に押圧する操作のダブルノック式である。
【0021】
カム部4は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯41と、該カム歯41間に形成され、回転部材5が係合するカム溝42とを備える。回転部材5は、その外面に長手方向に延びる3本の突条51を備え、該突条51が、カム部4のカム溝42と係合される。カム部材6は、その前端部に、カム部4のカム溝内を摺動するガイド突条61と、回転部材5の突条51の後端と係合するカム歯62とを備える。
【0022】
・ノック部材
ノック部材7は、前後方向に延びるクリップ71と、クリップ71の後部に一体に連設されたクリップ基部72(突出部)と、クリップ基部72が一体に連設された有底の筒状の本体部73とを備え、合成樹脂から形成される。クリップ71の内面には、径方向内方に突出する凸部74が一体に形成される。クリップ71は、径方向に弾性変形可能である。クリップ71は、非使用時及びノック部材7の前後方向の操作時、軸筒2外面と非係合状態または軸筒2外面と非接触状態にある。
【0023】
軸筒2の側壁に、二つの凹部(前側の凹部22a、後側の凹部22b)が、前後に離れた位置に形成される。前側の凹部22a及び後側の凹部22bは、互いに同一の形状を有し且つ凸部74と係合可能な形状を有する。ペン先突出状態において、凸部74と前側の凹部22aとが係合可能であり、ペン先没入状態において、凸部74と後側の凹部22bと係合可能である。
【0024】
クリップ基部72は軸筒2のスライド孔23に挿入可能である。ペン先没入状態からペン先突出状態にする際、ノック部材7を前方に押圧操作すると、クリップ基部72がスライド孔23に挿入される。
【0025】
ノック部材7の本体部73の後端部には、弾性材料(例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂等)からなる摩擦部8が取り付けられる。ノック部材7の本体部73の後端面には後方に突出する棒状凸部75が形成される。棒状凸部75の外面には環状の外向突起が形成される。棒状凸部75の外面に、筒状の弾性材料からなる摩擦部8が圧入により取り付けられる。棒状凸部75に摩擦部8が取り付けられた状態において、棒状凸部75の外面の環状の外向突起が、摩擦部8の内面の環状の内向突起と乗り越え係止され、摩擦操作時に摩擦部8が棒状凸部75から脱落することを防止できる。棒状凸部75の後端は、摩擦部8の後端面より前方に位置される。即ち、棒状凸部75の後端は、摩擦部8の後端面より後方に突出されていない。それにより、ノック部材7を出没操作する際、指が棒状凸部75に接触せず、指と摩擦部8後端面との滑りの無い安定した接触が可能となる。なお、摩擦部8の取付構造は、これに限らない。
【0026】
摩擦部8を用いた摩擦操作の際、クリップ71が径方向内方に押圧されることにより、クリップ71が径方向内方に変位され、クリップ71の凸部74が軸筒2側壁の前側の凹部22a、または後側の凹部22bに係合され、軸筒2に対する摩擦部8の後方移動が阻止される。
【0027】
第1の実施の形態の熱変色性筆記具1は、筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体3の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先31を設け、前記筆記体3を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒2の後端部にノック部材7を設け、前記ノック部材7を前方に押圧することによりペン先31を軸筒2の前端孔21から突出状態にし、再度、前記ノック部材7を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先31を軸筒2の前端孔21より軸筒2内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材7の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部8を設けた熱変色性筆記具であって、前記ノック部材7の側壁外面に、前方に延び且つ径方向に弾性変形可能なクリップ71が設けられ、前記クリップ71の内面に、径方向内方に突出する凸部74が設けられ、前記軸筒2の側壁に、前記凸部74と係合可能な凹部22が設けられ、前記摩擦部8を用いて摩擦操作しないとき、前記クリップ71の凸部74が前記軸筒2側壁の凹部22に非係合状態にあり、前記摩擦部8を用いて摩擦操作するとき、前記クリップ71が径方向内方に押圧されることにより、前記クリップ71が径方向内方に変位され、前記クリップ71の凸部74が前記軸筒2側壁の凹部22に係合され、前記軸筒2に対する前記摩擦部8の後方移動が阻止される。
【0028】
前記第1の実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記構成により、摩擦部8を用いて摩擦操作する際、クリップ71とともに軸筒2側壁を握るだけで、クリップ71が径方向内方に押圧され、クリップ71が径方向内方に変位され、クリップ71の凸部74が軸筒2側壁の凹部22に係合される。それにより、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することを不要にし、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【0029】
また、第1の実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記凹部22が前記軸筒2側壁に前後に少なくとも2か所に形成され、ペン先突出状態において前記摩擦部8を用いて摩擦操作する時、前記前側の凹部22aと前記凸部74とが係合され、ペン先没入状態において前記摩擦部8を用いて摩擦操作する時、前記後側の凹部22bと前記凸部74とが係合される。それにより、ペン先突出状態、ペン先没入状態の何れの状態においても、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【0030】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図5乃至図7に示す(出没機構は図4と同様である)。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構とを備える。軸筒2は、円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端に連結される円筒状の後軸2bとからなる。後軸2bの側壁には、後軸2bの後端より後方に開放され且つ前後方向に延びるスライド孔23が形成される。
【0031】
筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。
【0032】
ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンのみからなる構成、またはボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓を取り付けてもよい。
【0033】
出没機構(図4)は、回転カム機構を用いたノック式出没機構であり、軸筒2内面(後軸2b内面)に形成されたカム部4と係合し且つ筆記体3の後端と当接する回転部材5と、回転部材5及びカム部4と係合するカム部材6と、カム部材6と連結されるノック部材7と、軸筒2内に収容され且つ筆記体3を後方に付勢する弾発体(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがノック部材7を前方に押圧する操作のダブルノック式である。
【0034】
カム部4は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯41と、該カム歯41間に形成され、回転部材5が係合するカム溝42とを備える。回転部材5は、その外面に長手方向に延びる3本の突条51を備え、該突条51が、カム部4のカム溝42と係合される。カム部材6は、その前端部に、カム部4のカム溝42内を摺動するガイド突条61と、回転部材5の突条51の後端と係合するカム歯62とを備える。
【0035】
・ノック部材
ノック部材7は、前後方向に延びるクリップ71と、クリップ71の後部に一体に連設されたクリップ基部72(突出部)と、クリップ基部72が一体に連設された有底の筒状の本体部73とを備え、合成樹脂から形成される。クリップ71の内面には、径方向内方に突出する二山状の凸部74が一体に形成される。クリップ71は、径方向に弾性変形可能である。クリップ71は、非使用時及びノック部材7の前後方向の操作時、軸筒2外面と非係合状態または軸筒2外面と非接触状態にある。
【0036】
軸筒2の側壁外面に、凸部74の前後方向に移動する全範囲(ノック部材7のノックストロークの対応する範囲)において、複数の凹部22が鋸刃状に連続的に設けられる。鋸刃状の複数の凹部22に、二山状の凸部74が係合可能である。二山状の凸部74の前後方向の移動範囲における軸筒2側壁に対する任意の位置で、二山状の凸部74が鋸刃状の複数の凹部22の何れかと係合される。その結果、軸筒2に対するクリップ71の前後方向の位置が何れの状態であっても、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【0037】
クリップ基部72は軸筒2のスライド孔23に挿入可能である。ペン先没入状態からペン先突出状態にする際、ノック部材7を前方に押圧操作すると、クリップ基部72がスライド孔23に挿入される。
【0038】
ノック部材7の本体部73の後端面には、弾性材料(例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂等)からなる摩擦部8が取り付けられる。ノック部材7の本体部73の後端面には後方に突出する棒状凸部75が形成される。棒状凸部75の外面には環状の外向突起が形成される。棒状凸部75の外面に、筒状の弾性材料からなる摩擦部8が圧入により取り付けられる。棒状凸部75に摩擦部8が取り付けられた状態において、棒状凸部75の外面の環状の外向突起が、摩擦部8の内面の環状の内向突起と乗り越え係止され、摩擦操作時に摩擦部8が棒状凸部75から脱落することを防止できる。棒状凸部75の後端は、摩擦部8の後端面より前方に位置される。即ち、棒状凸部75の後端は、摩擦部8の後端面より後方に突出されていない。それにより、ノック部材7を出没操作する際、指が棒状凸部75に接触せず、指と摩擦部8後端面との滑りの無い安定した接触が可能となる。なお、摩擦部8の取付構造は、これに限らない。
【0039】
摩擦部8を用いた摩擦操作の際、クリップ71が径方向内方に押圧されることにより、クリップ71が径方向内方に変位され、クリップ71の二山状の凸部74が軸筒2側壁の鋸刃状の複数の凹部(前側の凹部22a、後側の凹部22bを含む)の何れかに係合され、軸筒2に対する摩擦部8の後方移動が阻止される。
【0040】
第2の実施の形態の熱変色性筆記具1は、筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体3の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先31を設け、前記筆記体3を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒2の後端部にノック部材7を設け、前記ノック部材7を前方に押圧することによりペン先31を軸筒2の前端孔21から突出状態にし、再度、前記ノック部材7を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先31を軸筒2の前端孔21より軸筒2内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材7の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部8を設けた熱変色性筆記具であって、前記ノック部材7の側壁外面に、前方に延び且つ径方向に弾性変形可能なクリップ71が設けられ、前記クリップ71の内面に、径方向内方に突出する凸部74が設けられ、前記軸筒2の側壁に、前記凸部74と係合可能な凹部22が設けられ、前記摩擦部8を用いて摩擦操作しないとき、前記クリップ71の凸部74が前記軸筒2側壁の凹部22に非係合状態にあり、前記摩擦部8を用いて摩擦操作するとき、前記クリップ71が径方向内方に押圧されることにより、前記クリップ71が径方向内方に変位され、前記クリップ71の凸部74が前記軸筒2側壁の凹部22に係合され、前記軸筒2に対する前記摩擦部8の後方移動が阻止される。
【0041】
前記第2実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記構成により、摩擦部8を用いて摩擦操作する際、クリップ71とともに軸筒2側壁を握るだけで、クリップ71が径方向内方に押圧され、クリップ71が径方向内方に変位され、クリップ71の凸部74が軸筒2側壁の凹部22に係合される。それにより、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することを不要にし、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【0042】
また、第2の実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記凹部22が前記軸筒2側壁に前後に少なくとも2か所に形成され、ペン先突出状態において前記摩擦部8を用いて摩擦操作する時、前記前側の凹部22aと前記凸部74とが係合され、ペン先没入状態において前記摩擦部8を用いて摩擦操作する時、前記後側の凹部22bと前記凸部74とが係合される。それにより、ペン先突出状態、ペン先没入状態の何れの状態においても、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【0043】
また、第2の実施の形態の熱変色性筆記具1は、凸部74の前後方向の移動範囲において、軸筒2の側壁外面に複数の凹部22が鋸刃状に連続して設けられる。それにより、凸部74の前後方向の移動範囲における任意の位置で、凸部74と凹部22が係合される。その結果、軸筒2に対するクリップ71の前後方向の位置が何れの状態であっても、摩擦操作時、押圧操作部分を確認することが不要になり、摩擦操作を迅速に開始でき、且つ、摩擦操作時、比較的小さい把持力で、摩擦部8の前後方向の移動を確実に阻止できる。
【符号の説明】
【0044】
1 熱変色性筆記具
2 軸筒
21 前端孔
22 凹部
22a 前側の凹部
22b 後側の凹部
23 スライド孔
2a 前軸
2b 後軸
3 筆記体
31 ペン先
32 インキ収容管
4 カム部
41 カム歯
42 カム溝
5 回転部材
51 突条
6 カム部材
61 ガイド突条
62 カム歯
7 ノック部材
71 クリップ
72 クリップ基部
73 本体部
74 凸部
75 棒状凸部
8 摩擦部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7