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特開2018-109279トンネル内構造およびトンネル内構造の築造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-109279(P2018-109279A)
(43)【公開日】2018年7月12日
(54)【発明の名称】トンネル内構造およびトンネル内構造の築造方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20180615BHJP
【FI】
   E21D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-256780(P2016-256780)
(22)【出願日】2016年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
【テーマコード(参考)】
2D055
【Fターム(参考)】
2D055BA01
2D055BB01
2D055CA08
2D055CA10
2D055GC01
2D055GD00
2D055LA07
2D055LA17
(57)【要約】
【課題】柔構造を有すると共に、施工を簡略化することができるトンネル内構造および築造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、下方に垂下した脚部と、脚部に支持された天板とを備える一対のL型ブロックと、一対の脚部の下端部を支持する一対の溝部を有するインバートブロックと、を備え、溝部は、下端部を、トンネル軸方向を軸として回転自在に支持する、トンネル内構造である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に垂下した脚部と、前記脚部に支持された天板とを備える一対のL型ブロックと、
一対の前記脚部の下端部を支持する一対の溝部を有するインバートブロックと、を備え、
前記溝部は、前記下端部を、トンネル軸方向を軸として回転自在に支持する、
トンネル内構造。
【請求項2】
前記溝部と前記下端部とによりヒンジ構造を形成する、
請求項1に記載のトンネル内構造。
【請求項3】
前記溝部と前記下端部とにより回転ばね構造を形成する、
請求項1に記載のトンネル内構造。
【請求項4】
互いに隣接する前記L型ブロックの間に充填される緩衝材を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のトンネル内構造。
【請求項5】
下方に垂下した脚部と、前記脚部に支持された天板とを備える一対のL型ブロックと、
一対の前記脚部の下端部を支持する一対の溝部を有するインバートブロックと、を備えるトンネル内構造の築造方法であって、
前記インバートブロックをトンネル内に設置する第1工程と、
前記インバートブロック上に前記一対のL型ブロックを載置する第2工程と、を有し、
前記第2工程において前記L型ブロックは、前記下端部が前記溝部によってトンネル軸方向を軸として回転自在に支持されるように載置される、
トンネル内構造の築造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に形成される床面を支持するためのトンネル内構造およびトンネル内構造の築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルは、シールドマシンで掘削されたトンネル開口部を掘削に従ってセグメントで覆って構築される。シールドトンネルが構築された後、トンネル内の底部に床面が形成される。特許文献1には、トンネル断面方向に開口するボックスカルバートをトンネル底部の中央に設置し、その両側にボックスカルバートを拘束するためのコンクリートブロックを設置する、トンネル内の床面構造が記載されている。特許文献2には、トンネルの底部に底板となるインバートブロックを設置し、その上に一対の側板と天板をそれぞれピン結合して組み立てられるボックスカルバートによるトンネル内の床面構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5492342号公報
【特許文献2】特開2009−150165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された床面構造は、剛構造のボックスカルバートを用いており、地震動や経年変化等の外力によって生じる地盤の変形に対して追従性が低下する可能性がある。また、特許文献2に記載された床面構造は、分割された底板、一対の側板、天板をそれぞれ結合してボックスカルバートを構築するため、施工の手間が増加して工期が延びる可能性がある。
【0005】
本発明は、柔構造を有すると共に、施工を簡略化することができるトンネル内構造およびトンネル内構造の築造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかるトンネル内構造は、下方に垂下した脚部と、前記脚部に支持された天板とを備える一対のL型ブロックと、一対の前記脚部の下端部を支持する一対の溝部を有するインバートブロックと、を備え、前記溝部は、前記下端部を、トンネル軸方向を軸として回転自在に支持する。
【0007】
本発明は、このような構成により、L型ブロックをインバートブロックに設置する際に、脚部の下端部が溝部に位置決めされ施工性が向上すると共に下端部と溝部が回転機構を形成し、柔構造とすることができる。
【0008】
トンネル内構造は、前記溝部と前記下端部とによりヒンジ構造を形成してもよい。
【0009】
また、トンネル内構造は、前記溝部と前記下端部とにより回転ばね構造を形成してもよい。
【0010】
本発明は、このような構成により、L型ブロックの脚部が溝部を中心に回転することができる。
【0011】
トンネル内構造は、互いに隣接する前記L型ブロックの間に充填される緩衝材を更に備えるよう構成されていてもよい。
【0012】
本発明は、このような構成により、互いに隣接するL型ブロックが衝突して門型ブロックが破損することを防止することができる。
【0013】
本発明の一態様に係るトンネル内構造の築造方法は、下方に垂下した脚部と、前記脚部に支持された天板とを備える一対のL型ブロックと、
一対の前記脚部の下端部を支持する一対の溝部を有するインバートブロックと、を備えるトンネル内構造の築造方法であって、
前記インバートブロックをトンネル内に設置する第1工程と、
前記インバートブロック上に前記一対のL型ブロックを載置する第2工程と、を有し、
前記第2工程において前記L型ブロックは、前記下端部が前記溝部によってトンネル軸方向を軸として回転自在に支持されるように載置される。
【0014】
本発明はこのような構成により、L型ブロックをインバートブロックに設置する際に、脚部の下端部が溝部に位置決めされ施工性が向上する。
【0015】
本発明は、このような構成により、L型ブロックをインバートブロックに設置する際に、脚部の下端部が溝部に位置決めされ施工性が向上すると共に下端部と溝部が回転機構を形成し、柔構造とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るトンネル内構造およびトンネル内構造の築造方法によると、柔構造を有すると共に施工を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るトンネル内構造を示す斜視図である。
図2】天板と端部構造との接続部分を説明する図である。
図3】ヒンジ構造の動作を説明する図である。
図4】ヒンジ構造の動作を説明する図である。
図5】ヒンジ構造の動作を説明する図である。
図6】回転バネ構造の動作を説明する図である。
図7】回転バネ構造の動作を説明する図である。
図8】回転バネ構造の動作を説明する図である。
図9】トンネル内構造の築造方法を示すフローチャートである。
図10】シールドトンネルを示す断面斜視図である。
図11】シールドトンネルにインバートブロックを設置した状態を示す図である。
図12】インバートブロックの両端に端部構造を設置する状態を示す図である。
図13】インバートブロックと端部構造にL型ブロックを設置した状態を示す図である。
図14】第2実施形態に係るトンネル内構造を示す図である。
図15】第3実施形態に係るトンネル内構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るトンネル内構造1について説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1に示されるように、トンネル内構造1は、シールドトンネル10内に構築される構造物である。トンネル内構造1は、シールドトンネル10の底部に設置されるインバートブロック20と、インバートブロック20に載置される一対のL型ブロック30と、一対のL型ブロック30の両側に設置される一対の端部構造40とによって構成される。
【0020】
インバートブロック20は、例えばプレキャストで成型されているコンクリート製のブロックである。プレキャストとは、工場で予め製造されることをいう。プレキャストで形成されたコンクリート部材を組み立てることにより、現場でコンクリートを打設する工法より工期を短縮することができる。インバートブロック20は、例えば鉄筋コンクリート構造で形成されている。インバートブロック20は、一体で形成されていてもよいし分割されて形成されていてもよい。
【0021】
インバートブロック20の底面21は、シールドトンネル10の底部に設置された際に、シールドトンネル10の内壁11の形状に合致するように下側に突出する欠円形状に形成されている。インバートブロック20の上面22は、シールドトンネル10の内壁11の形状に合わせて傾斜面22aが形成されている。
【0022】
インバートブロック20の上面22には、シールドトンネル10のトンネル軸Lの方向に沿って一対の溝部23が形成されている。一対の溝部23は、上面22の略中央に形成されている。一対の溝部23のそれぞれは、例えば断面が欠円状に凹んで形成されている。一対の溝部23のそれぞれには、後述するようにL型ブロック30の脚部32の下端部32aが当接する。
【0023】
インバートブロック20のトンネル軸Lに直交する方向の両側には、一対の端部構造40が載置される。例えば、端部構造40の上面41の高さは、後述のL型ブロック30の天板31の高さと同一に形成される。端部構造40は、中空のブロックである。端部構造40には、トンネル軸L方向に沿って空間42が形成されている。空間42は、設置後に例えばモルタルや流動化処理土によって充填される。端部構造40をシールドトンネル10の内壁11に設置した後、空間42から内壁11に向かって例えば複数のアンカー(不図示)を打って端部構造40とシールドトンネル10とを固定する。
【0024】
端部構造40の上面41の隅角部43には、L型ブロック30の他端31bを載置するための溝部44が形成されている。溝部44は、矩形断面で形成されている。端部構造40が内壁11に載置された後、L型ブロック30がインバートブロック20および端部構造40に載置される。
【0025】
L型ブロック30は、例えばプレキャストで成型されたコンクリート製のブロックである。L型ブロック30は、例えば鉄筋コンクリート構造で形成されている。一対のL型ブロック30は、トンネル軸Lに直交する方向のトンネル断面に沿って互いに対称になるように連続して配置される。L型ブロック30は、方形の板状体の天板31を有する。天板31のトンネル断面方向の幅は、例えば車道の1車線分を包含するよう設定される。
【0026】
これにより、車両が走行した際に右輪と左輪との間に段差が無く高低差が少なくなり、車両の走行性を向上させることができる。天板31のトンネル軸Lに沿った両側の一端31aには、下方に垂下して方形の板状の脚部32が設けられている。天板31の他端31bは、トンネル断面の水平方向に突出している。
【0027】
天板31は、脚部32と端部構造40に載置された他端31bによって支持される。天板31と脚部32とは剛結されている。脚部32の下端部32aは、断面が下方に突出した欠円形状に形成されている。下端部32aの断面形状は、溝部23の断面形状に嵌るように形成されている。L型ブロック30をインバートブロック20の上方から載置する際、L型ブロック30の脚部32の下端部32aは、インバートブロック20の溝部23に嵌り、L型ブロック30が位置決めされる。
【0028】
溝部23の断面の欠円状の形状は下端部32aの断面の欠円状の形状に合致しているため、下端部32aが溝部23に嵌ると、下端部32aは、溝部23に対して回転可能となる。これにより、下端部32aと溝部23によって回転機構R1が形成される。回転機構R1は、下端部32aと溝部23によって構成されるヒンジ構造である。回転機構R1において、溝部23は、下端部32aを、トンネル軸方向を軸として回転自在に支持する。
【0029】
図2に示されるように、天板31の他端31bと端部構造40の溝部44とは、単純に載置される場合の他、例えばアンカーV等の連結部材によって連結されていてもよい。アンカーVは、溝部44に設けられた孔44aと他端31bに設けられた孔31cに挿入される。アンカーVと孔31c及び孔44aとの間の隙間には、例えばモルタルが充填される。他端31bと溝部44との鉛直方向の間には、例えば緩衝材W1が挟み込まれている。他端31bと溝部44との水平方向の間には、例えば支承材W2が挟み込まれている。連結部材によってL型ブロック30が地震時に脱落することが防止される。
【0030】
これにより、天板31の他端31bは、溝部44によって回転自在に支持される。連結部材と上記回転機構R1とにより、天板31は、トンネル断面に沿った水平方向に変位することができる。天板31が水平方向に変位した場合、脚部32の下端部32aは、溝部23に拘束され、下端部32aはトンネル断面に沿った水平方向の変位が規制される。
【0031】
この状態で脚部32は、トンネル軸L方向を軸とした溝部23を中心に回転自在に支持される。天板31が変位した状態では、脚部32は撓むように弾性変形する。そして、脚部32の変形が元に戻るのに従って天板31が元の位置に戻る。回転機構R1により、L型ブロック30は、柔構造となる。回転機構R1の動作については後に詳述する。
【0032】
インバートブロック20及び端部構造40にL型ブロック30が載置されると、トンネル軸Lに沿って連続した開口部Pが形成される。開口部Pは、路面が形成された後に、例えば災害時の避難通路として用いられる。開口部Pは、避難通路の他、例えば換気口、通信や電力ケーブル等を敷設するための共同溝として用いられてもよい。開口部Pは、用途に合わせて断面積が決定される。そのため一対のL型ブロック30は必ずしも対称の形状とは限らない。
【0033】
従って一対のL型ブロック30は、それぞれの開口部Pの形状が異なるように非対称に形成されてもよい。一対のL型ブロック30は、互いに所定の間隔で離間して配置されている。これにより、一対のL型ブロック30の間には隙間Sが形成される。隙間Sの所定の間隔は例えば数センチから十数センチである。
【0034】
隙間Sには、緩衝材Qが充填される。緩衝材Qは、例えば土や軽量土が充填されることにより形成される。緩衝材Qは、土や軽量土以外のものを用いてもよい。緩衝材QによってL型ブロック30がトンネル断面方向に変位した場合、一対のL型ブロック30同士が互いに衝突して破損することが防止される。
【0035】
また、L型ブロック30の他端31bを受ける端部構造40は、L型ブロック30が水平方向に変位した際、溝部44によってL型ブロック30に対して変位と反対方向の反力を与える。このとき、緩衝材W1及び端部構造40が弾性変形してL型ブロック30の変位によって生じる運動エネルギーを吸収し、端部構造40は、L型ブロック30の変位に対するダンパーとなる。従って、端部構造40は、L型ブロック30に生じる振動を収束させる。
【0036】
一対のL型ブロック30を設置した後、L型ブロック30の天板31と端部構造40との上方には、例えば土層50が敷かれて路面が形成される。天板31の上方には、土層の他、例えば床板を載置してその上に路面を形成してもよい。
【0037】
次に、回転機構R1の動作について説明する。
【0038】
図3に示されるように、L型ブロック30に矢印Aの方向の変位が生じた場合、脚部32は、下端部32aが溝部23に拘束される。これにより、脚部32には溝部23を中心にトンネル軸Lに沿った方向を軸とした矢印B方向の回転が生じる。下端部32aは、溝部23の断面を形成する壁を滑りながら回転する。
【0039】
このように、溝部23の断面の欠円状の形状は下端部32aの断面の欠円状の形状に回転可能に合致しているため、下端部32aと溝部23とからなる回転機構R2は、回転自在なヒンジ構造とみなしてよい。
【0040】
図4に示されるように、L型ブロック30に互いに離間する矢印A1,A2の方向の変位が生じた場合、一対の脚部32には溝部23を中心にトンネル軸Lに沿った方向を軸とした互いに離間する矢印B1,B2方向の回転が生じる。緩衝材Qは、回転しないように図示されているが、一対の脚部32のいずれかの壁面に付着して、一対の脚部32のいずれかと共に回転し得る。
【0041】
図5に示されるように、L型ブロック30に互いに接近する矢印A1,A2の方向の変位が生じた場合、一対の脚部32は、緩衝材Qを介して互いに反力を与えるため回転しない。この場合、緩衝材Qによって一対のL型ブロック30が互いに衝突して破損することを防止する。
【0042】
上記例で回転機構R1をヒンジ構造として説明したが、回転機構R1には他の構造を用いてもよい。図6図8に示されるように、例えば、回転機構R1に回転バネ構造を用いてもよい。回転バネ構造は、例えば、階段状に下方に突出して形成された脚部32の下端部32aと、階段状に下方に凹んで形成された溝部23とによって構成される(図8参照)。脚部32の下端部32aと、溝部23も同様に階段状に形成される。
【0043】
回転バネ構造は、L型ブロック30の設置時にはヒンジ構造と同様にL型ブロック30の位置決め用のガイドとなる。回転バネ構造を有する回転機構R1は、端部32aと溝部23とが例えばボルトやアンカーなどの連結部材によって連結されていてもよい。この場合、端部32aと溝部23との間には弾性体からなる支承材を挟んでもよい。
【0044】
回転バネ構造は、脚部32の回転時に下端部32aが溝部23滑らずに回転する。この時、下端部32aは、溝部23によって回転の動きが規制され、下端部32aの接触面には弾性変形が生じる。
【0045】
また、端部32aと溝部23とが連結部材で連結されている場合に脚部32が回転した場合は、連結部材の弾性変形も生じ、連結部材や支承材の復元力が生じる。従って回転バネ構造は、ヒンジ構造よりも回転抵抗があるが、復元力も生じる。
【0046】
次に、トンネル内構造1の築造方法について説明する。
【0047】
図9は、トンネル内構造1を築造する処理を示すフローチャートである。図10に示されるように、セグメント12が組まれてシールドトンネル10が築造される。図11に示されるように、シールドトンネル10内の底部にインバートブロック20を設置する:第1工程(S10)。インバートブロック20は、例えば地上からシールドマシンの発進立坑に搬入される。その後、インバートブロック20は、シールドトンネル10の入り口から内部を通って設置点まで運搬され、例えばクレーンで設置される。
【0048】
図12に示されるように、インバートブロック20の両側に一対の端部構造40を設置する(S11)。端部構造40は、例えばクレーンで設置される。図13に示されるように、インバートブロック20及び端部構造40の上方から一対のL型ブロック30を設置する:第2工程(S12)。この際、L型ブロック30の脚部32の下端部32aを溝部23に嵌め、天板31の他端31bを溝部44に載置する。これにより、L型ブロック30は、確実に設計位置に位置決めされる。
【0049】
L型ブロック30は、下端部32aが溝部23によってトンネル軸L方向を軸として回転自在に支持されるようにインバートブロック20に載置される。L型ブロック30の搬入経路はインバートブロック20と同様である。一対のL型ブロック30の間の隙間Sには、緩衝材Qが充填される。
【0050】
その後、一対のL型ブロック30と一対の端部構造40の上面に路面(不図示)を形成する(S13)。上記の工程を繰り返し行って、トンネル内構造1をシールドトンネル10のトンネル軸Lに沿って順次築造することにより、シールドトンネル10内に路面が形成される。シールドトンネル10内に連続して築造されたトンネル内構造1は、土層50の下に構築されるため、トンネル軸L方向に隣接したトンネル構造1の各ブロック同士は、必ずしも継手、ボルト及びPC鋼材等の連結部材によって連結されていなくてもよいが、連結されていてもよい。
【0051】
上述したようにトンネル内構造1によると、回転機構R1を有することにより、外力が加わった際に変形し、外力に対して追従する柔構造とすることができる。トンネル内構造1は、柔構造を有するように各ブロックを薄肉化したり軽量化したりして運搬性を向上し、コストも低減することができる。一対の端部構造40は、シールドトンネル10の内壁11の傾斜部に載置されるため、一対の端部構造40がインバートブロック20を両側から押し付け、インバートブロック20がずれることを防止することができる。
【0052】
トンネル内構造1によると、天板31のトンネル断面方向の幅は、車道の1車線分を包含するよう設定され、車両が走行した際に右輪と左輪との間に段差が無く高低差が少なくなり、車両の走行性を向上させることができる。また、トンネル内構造1は、溝部23を有することにより、L型ブロック30の位置決めを容易にし、施工性を向上させることができる。さらに、トンネル内構造1は、L型ブロック30が取り外し容易な構造であるため、トンネル完工後に、L型ブロック30を1つずつ取り外して補修または交換することができる。
【0053】
[第2実施形態]
第1実施形態では、トンネル内構造1のL型ブロック30の天板31の他端31bは、天板31の切り落とし形状で形成されていた。第2実施形態では、L型ブロック30Aの天板31の他端31bの変形例を示す。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、同様の説明については省略する。
【0054】
図14に示されるように、L型ブロック30Aの天板31の他端31bは、下方に突出する隅角部35を有する。隅角部35を有することにより、L型ブロック30が水平方向に移動した場合、L型ブロック30Aの水平方向の荷重を端部構造40Aの溝部44に、第1実施形態に比して分散することができる。
【0055】
トンネル内構造2によると、L型ブロック30Aの天板31の他端31bが隅角部35を有することにより、L型ブロック30の水平方向の荷重を分散させ、より安定な状態にすることができる。
【0056】
[第3実施形態]
第1実施形態では、トンネル内構造1の端部構造40は、中空のブロックで形成した。第3実施形態では、端部構造40Bは、より簡略化されたブロックで形成される例を示す。
【0057】
図15に示されるように、トンネル内構造3は、柱状のブロックで形成された一対の端部構造40Bを有する。端部構造40Bは、第1実施形態の端部構造40の一部を切断し、単純化した柱状のブロックである。一対の端部構造40Bが設置され、一対のL型ブロック30が載置された後、一対の端部構造40Bの両側には、例えば流動化処理土が充填される。
【0058】
トンネル内構造3によると、単純化された端部構造40Bを用いることにより、搬入及び設置が容易となる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。例えば、上記実施形態は左右対称に例示したが、トンネル内構造1〜3の片側をそれぞれ組み合わせて非対称の構造を築造してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…トンネル内構造、2…トンネル内構造、3…トンネル内構造、10…シールドトンネル、11…内壁、12…セグメント、20…インバートブロック、21…底面、22…上面、22a…傾斜面、23…溝部、24…溝部、30…L型ブロック、30A…L型ブロック、31…天板、31a…一端、31b…他端、32…脚部、32a…下端部、35…隅角部、40…端部構造、40A…端部構造、40B…端部構造、41…上面、42…開口部、43…隅角部、44…溝部、50…土層、P…開口部、Q…緩衝材、R1…回転機構、S…隙間
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