【解決手段】エマルジョン燃料を燃焼装置70に供給する装置1である。乳化性の水及び燃料油を供給する供給手段と、燃料油供給手段30,32からの燃料油と、加工水供給手段20,22からの加工水を合流させる手段と、合流した燃料油と加工水との混合物から、エマルジョン燃料を生成する手段50と、エマルジョン燃料を燃焼装置70に供給する手段と、余剰のエマルジョン燃料を回収する余剰エマルジョン燃料回収手段72,80と、回収された余剰のエマルジョン燃料を加熱し、乳化性の水と燃料油への分離を促進する加熱手段95と、分離された燃料油を燃料油供給手段に回収する回収手段83と、を備える。
前記コントローラは、前記余剰エマルジョン燃料の流量が多い場合に、前記余剰エマルジョン燃料の流量が少ない場合よりも前記加熱手段の加熱温度を高くするように制御することを特徴とする請求項4に記載のエマルジョン燃料供給装置。
前記乳化性の水は、イオンクロマトグラフ法により、Naイオンが検出されると共にMgイオン及びCaイオンが検出されず、26℃における表面張力が、50mN/m以上であり、油性液体と混合して撹拌したときに乳化する性質を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載のエマルジョン燃料供給装置。
前記加工水生成工程では、原水から、Caイオン及びMgイオンのうち、前記原水に含まれているものを除去し、Naイオンを残留させ又は添加し、水温26℃で測定された前記乳化性の水の表面張力が、50mN/m以上になるように調整することを特徴とする請求項8乃至11いずれか1項に記載のエマルジョン燃料供給方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、乳化性の水とは、イオンクロマトグラフ法により、Naイオンが検出されると共にMgイオン及びCaイオンが検出されず、26℃における表面張力が、50mN/m以上であり、油性液体と混合して撹拌したときに乳化する性質を有する水のことをいう。
本明細書において、エマルジョン燃料とは、水性液体と油性液体とが分散してエマルジョン様になった系からなる燃料をいい、乳化剤を含むものも含まないものも含む。また、エマルジョン燃料には、水性液体と油性液体とが分散してエマルジョン化した完全なエマルジョンも、水性液体と油性液体とが混合して部分的に分散し、部分的に分散していない不完全エマルジョンも含まれる。
本実施形態のエマルジョン燃料としては、乳化剤を用いずに水性液体と油性液体のみで構成された不完全エマルジョンが好適に用いられる。
また、「不完全エマルジョン」の状態と「融和」の状態は同義であり、「不完全エマルジョン燃料」と「融和燃料」と同義である。
なお、本明細書の実施形態は、不完全エマルジョン燃料を供給する例を記載しているが、水性液体と油性液体が完全に又はほぼ完全に分散した完全エマルジョン燃料又はエマルジョン燃料にも適用可能である。
本明細書において、「混合手段」「混合燃料」は、「融和手段」「融和燃料」の上位概念であって、エマルジョン生成手段、エマルジョン燃料を含む意味で用いる。
以下、本発明の一実施形態に係るエマルジョン燃料供給装置及びその供給方法について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
<エマルジョン燃料供給装置>
図1は、本実施形態に係るエマルジョン燃料供給装置1を示す概略構成図である。
エマルジョン燃料供給装置1は、水と燃料油からエマルジョン燃料を生成し、燃焼装置としてのディーゼルエンジン70にエマルジョン燃料と酸素を供給する装置であって、水道水からエマルジョン燃料の原料となる加工水を製造する加工水処理器10と、乳化性の水である加工水を貯留する加工水タンク20と、燃料油を貯留する燃料油タンク30と、加工水と燃料水を合流した混合液をエマルジョン生成器50に輸送する送液部40と、加工水と燃料水の混合液からエマルジョン燃料を生成すると共に、エマルジョン燃料をディーゼルエンジン70に供給するエマルジョン生成器50と、ディーゼルエンジン70に導入される空気に酸素ガスを混合するための酸素ガスボンベ60と、分離タンク80と、ヒータ95と、を主要構成要素とする。
【0025】
本実施形態のエマルジョン燃料供給装置1が適用される燃焼装置としては、燃料をシリンダー内で爆発燃焼させ、その熱エネルギーによって仕事をする内燃機関であれば、どのようなものであっても適用可能であるが、例えば、ディーゼルエンジン、特に、船舶用のディーゼルエンジンに好適に適用できる。また、ボイラーにも適用できる。
燃料油としては、各種の燃料油を使用できるが、例えば、A重油,B重油,C重油,軽油,灯油,ガソリン,バイオ燃料等のエマルジョン燃料に用いられる公知の燃料油を用いることができる。
【0026】
加工水タンク20は、加工水処理器10で生成された乳化性の水である加工水を貯留するタンクであって、加工水処理器10から加工水を加工水タンク20に導入する導入管21と、加工水タンク20内の加工水を送液部40に供給するための水供給管22と、加工水タンク20内の加工水の高さを予め設定された水位に維持するためのボールタップ23と、を備えている。
ボールタップ23は、導入管21の弁に取り付けられた支持シャフトの先端に浮き玉が固定されてなる公知のボールタップからなり、液面で浮く浮き玉が、液面の上下変動に伴って上下に変位して、所定位置より下がったときに、導入管21の弁を開放して、導入管21から加工水タンク20内に給水されるように構成されている。
水供給管22には、不図示の操作盤から操作可能な電磁弁25と、水供給管22からの加工水の流量を調整する流量調整バルブ27、流量センサ28を備えている。
本実施形態において、加工水タンク20及び水供給管22が、加工水供給手段を構成している。
【0027】
燃料油タンク30は、原油タンク34から供給される燃料油を貯留するタンクであって、原油タンク34から燃料油を燃料油タンク30に導入する導入管31と、燃料油タンク30内の燃料油を送液部40に供給するための油供給管32と、燃料油タンク30内の燃料油の高さを予め設定された液位に維持するためのボールタップ33と、を備えている。
ボールタップ33の構成は、ボールタップ23と同様であり、ボールタップ23,33により、加工水タンク20と燃料油タンク30の液高が同じ高さに維持されるように構成されている。
【0028】
油供給管32には、燃料油中の汚れ等を除去するためのフィルタ36と、油供給管32からの燃料油の流量を調整する流量調整バルブ37、流量センサ38を備えている。
加工水タンク20と燃料油タンク30とは、ディーゼルエンジン70よりも、高い位置に配置されている。このように構成することにより、加工水タンク20及び燃料油タンク30からの重力と、ディーゼルエンジン70が元々備えているポンプ76の圧力のみで、加工水と燃料油が、送液部40及びエマルジョン生成器50を通ってディーゼルエンジン70へ供給可能となり、送液部40に別途ポンプを設ける必要がない。
本実施形態において、燃料油タンク30及び油供給管32が、燃料油供給手段を構成している。
【0029】
送液部40は、水供給管22からの加工水と油供給管32からの燃料油とを一本の送液管41に合流させてエマルジョン生成器50に送液する部分であり、上流側が水供給管22と油供給管32に連結され、下流側がエマルジョン生成器50に連結された送液管41と、送液管41を通る液体の汚れ等を除去するフィルタ42と、送液管41に沿って配置され、1cm及び1mm単位の目盛が表示されたスケール43と、を備えている。
送液管41は、透明チューブからなり、外部から、内部を流れる流体が視認可能になっている。送液管41では、加工水と燃料油とが分離して、交互に配置された縞状の状態で流れる。従って、スケール43に表示された目盛により、加工水の部分と燃料油の部分との長さを読み取ることにより、加工水と燃料油の混合比率を知ることができる。混合比率は、目視で読取って算出してもよいし、デジタルカメラで撮影した画像をコンピュータで解析することにより算出してもよい。
送液管41は、全長に亘って、送液管41の軸方向が水平になるように、配置されている。
【0030】
このように構成しているため、加工水と燃料油のディーゼルエンジン70への供給を停止後、再開したときに、ディーゼルエンジン70が失火し易くなることを防止できる。
つまり、加工水は燃料油よりも比重が重いため、送液管41に、送液管41の軸方向が水平に対して傾斜している箇所があると、ディーゼルエンジン70への加工水と燃料油の供給を停止したときに、低い側に加工水、高い側に燃料油が位置してしまう。ディーゼルエンジン70への供給を再開したときに、低い側に集まった加工水の部分がエマルジョン生成器50を介してディーゼルエンジン70に到達すると、エマルジョン中の燃料油の比率が一時的に低下するため、ディーゼルエンジン70が失火するおそれがあるのである。
また、送液管41が、全長に亘って、送液管41の軸方向が水平になるように、配置されていると、加工水と燃料油の供給停止中に、送液管41内の各箇所における加工水と燃料油との比率が変化し難いため、供給再開前に、ディーゼルエンジン70の失火防止のために送液管41から加工水を抜き取る等の作業を行う必要がなくなり、作業性が向上する。
【0031】
送液管41の全長は、50cm以下、好適には30cm以下、さらに好適には、20cm以下とするとよい。このように、送液管41の全長を短めにすることで、加工水と燃料油との比率が、送液管41内を進む間に変化することや、ディーゼルエンジン70への供給停止後再開までの間に変化することを抑制できる。
【0032】
エマルジョン生成器50は、送液部40から送られた加工水と燃料水の混合物を、細孔から太い径の空間に噴出させることによりエマルジョン化する装置であり、本実施形態におけるエマルジョン生成手段に相当する。
エマルジョン生成器50は、
図2に示すように、ハウジング51,54,57が直列に連結された略筒状長尺体からなる。
ハウジング51は、略円筒体からなり、上流側の軸方向端部に、送液管41に連結されるための筒状の連結部51aが形成され、下流側の軸方向端部に、端部を閉塞する閉塞部53と、閉塞部53を軸方向に対して斜めに貫通する貫通孔及び細孔部としての一対の細孔53aが形成されている。
【0033】
細孔53aは、ハウジング51の軸方向に対して垂直な幅方向において、隣り合って一対形成され、下流側が相互に近くなるように、傾斜して形成されている。このように、下流側が相互に近くなるように傾斜して形成されているため、細孔53aを通って大径空間52に噴出する2本の液体の流れが、相互にぶつかり合い、液体の拡散がより促進される。
一対の細孔53aは、ハウジング51の中心軸を通る面を中心として、相互に対称になるように形成されている。
なお、細孔53aは、一対に限られず、4つなど、3つ以上の複数設けられていてもよい。
連結部51aと閉塞部53との間は、細孔53aよりも大径筒状の大径部としての大径空間52が形成されている。
【0034】
ハウジング54は、連結部54aが閉塞部53の外周に連結可能に形成されていることを除いては、ハウジング51と同じ形状からなる。
ハウジング57は、下流側の軸方向端部に、ディーゼルエンジン70にエマルジョン燃料を供給する供給管71が連結される連結部58bを備えることを除いては、ハウジング54と同じ形状からなる。
【0035】
エマルジョン生成器50は、ディーゼルエンジン70に設けられ供給管71に連結されたポンプ76によって、連結部51aから大径空間52に、加工水と燃料油の混合物が供給され、細孔53aを通って大径空間55に噴射される。細孔53aから大径空間55に噴射されて拡散されることによって、エマルジョン化される。また、同様の拡散が、細孔56aから大径空間58に噴射されたときに生じ、再度エマルジョン化が促進される。その後、生成したエマルジョン燃料が、連結部58b及び供給管71を通って、ディーゼルエンジン70に供給される。
【0036】
エマルジョン生成器50によって生成されるエマルジョン燃料は、完全に乳化した状態ではなく、不完全なエマルジョンからなる。
【0037】
ディーゼルエンジン70は、公知の船舶用のディーゼルエンジンからなり、供給管71から供給されるエマルジョン燃料をディーゼルエンジン70に送り込むポンプ76と、ディーゼルエンジン70で余剰となったエマルジョン燃料を排出する余剰エマルジョン排出管72と、フィルタ79を介して、ディーゼルエンジン70が配置される不図示のエンジン室の外の外気から空気を導入する空気吸入口73と、排気ガスを排気する排気口74を備えている。本実施形態において、供給管71及びポンプ76が供給手段を構成している。
空気吸入口73には、空気の導入量を0から所望の量まで調整するためのバルブ78が設けられている。また、酸素導入管61を介して酸素ガスボンベ60が連結されており、酸素導入管61に設けられた流量測定器63の測定値に基づき、不図示の操作盤から、酸素導入管61に設けられた電磁弁62を制御することにより、ディーゼルエンジン70に導入される空気に、酸素ガスを混合可能に構成されている。
【0038】
本実施形態では、
図1に示すように、ディーゼルエンジン70から戻る余剰のエマルジョン燃料を、余剰エマルジョン排出管72を通して余剰エマルジョンを加工水と燃料油に分離する分離タンク80に戻すように構成している。本実施形態において、余剰エマルジョン排出管72及び分離タンク80が余剰エマルジョン燃料回収手段を構成している。
分離タンク80は、余剰エマルジョン排出管72から供給された余剰のエマルジョン燃料を貯蔵し、静置することによって加工水と燃料油に分離するタンクであって、余剰エマルジョン排出管72の下流側の端部が、分離タンク80の液面上に位置するように配置されている。
分離タンク80の底面には、分離タンク80の底部付近に吸入口となる開口が位置するよう、本実施形態における加工水回収手段としての水供給管82の上流側の端部が連結されている。
分離タンク80内に、加工水と燃料油が貯留されたときには、比重の大きい加工水がタンク底面近傍に貯留されて水相Wとなり、比重の小さい燃料油がタンクの液面近傍に貯留されて油相Oとなって、水相Wと油相Oとが分離した二相となる。従って、水供給管82の上流側の端部の開口は、分離タンク80の底面近傍に貯留される加工水を排出可能となる。
【0039】
分離タンク80の上方には、本実施形態における燃料油回収手段としての油供給管83の上流側の部分が配置され、上流側の端部の吸入口が、
図1に示すように公知の材料からなるフロート81に固定されている。フロート81に固定された油供給管83の上流側の吸入口となる開口は、油相O内に位置し、分離タンク80の液面近傍に貯留される燃料油を排出可能となる。
水供給管82及び油供給管83には、電磁弁84,85がそれぞれ設けられている。
【0040】
余剰エマルジョン排出管72は、流量センサ75を備えている。流量センサ75は、分離タンク80へと供給される余剰のエマルジョン燃料の流量を測定及び表示するものである。
また、分離タンク80には、透明なチューブで形成されたスケール86が設けられており、分離タンク80内の加工水と燃料油の量を、スケール86における水相Wと油相Oの界面の位置を計測して知ることができる。
【0041】
ここで、
図1及び
図3に示すように、水供給管82と加工水タンク20との間には、電磁弁84、手動コック93、戻し水タンク90、ポンプ91、フィルタ92が設けられている。
分離タンク80内には、本実施形態における加熱手段としてのヒータ95が設置されている。
図3及び
図4に示すように、ヒータ95はリード線96を介してコントローラ97に接続されている。このヒータ95は、分離タンク80内の余剰エマルジョンを加熱することで、加工水及び燃料油への分離を促進する、余剰エマルジョンの分離促進手段として機能する。
【0042】
ヒータ95は、分離タンク80の鉛直方向の中央付近の位置に配置されている。具体的に、分離タンク80の鉛直方向の中央付近の位置とは、水相Wと油相Oとが分離した二相の界面よりも鉛直方向上側の位置であり、油相O内にヒータ95が位置するように配置される。このような位置にヒータ95が配置されていることで、油相Oが効率的に加熱され、油相O内に存在する加工水の分離が促進される。
【0043】
図3及び
図4に示すように、コントローラ97には、流量センサ75及びヒータ95が電気的に接続されている。流量センサ75で測定された余剰エマルジョン燃料の流量が、コントローラ97に入力されるように構成されている。コントローラ97は、流量センサ75で測定された余剰エマルジョン燃料の流量に応じて、ヒータ95の加熱温度を制御する。具体的には、コントローラ97は、余剰エマルジョン燃料の流量が多い場合にはヒータ95の加熱温度を高くし、余剰エマルジョン燃料の流量が少ない場合にはヒータ95の加熱温度を低くするように制御する。
【0044】
ここで、ヒータ95の加熱温度とは、分離タンク80内の、ヒータ95から離れた位置に設けられた不図示の温度計によって測定される分離タンク内の水相W及び油相Oの温度のことである。
【0045】
また、使用する燃料油の種類によって好適なヒータ95の加熱温度は異なるが、余剰エマルジョン燃料の加工水及び燃料油への分離が促進される範囲内であって、加工水が蒸発しない範囲内であればよく、好ましくは30〜90℃、より好ましくは35〜70℃、特に好ましくは40〜65℃である。
【0046】
分離タンク80には、ディーゼルエンジン70の運転開始時には燃料油のみが入れられている。ディーゼルエンジン70の運転が開始すると、余剰エマルジョン排出管72から余剰エマルジョン燃料が分離タンク80へと供給される。分離タンク80に供給された余剰エマルジョン燃料は、ヒータ95によって加熱される。スケール86を読み取り、水相Wと油相Oとが分離した二相に分かれたことが確認できた後に、手動コック93を開き、分離された加工水が戻し水タンク90へと供給されるようにする。
【0047】
戻し水タンク90に供給された分離後の加工水は、ポンプ91によりフィルタ92へと流入し、燃料油や不純物が除去され、水供給管82を通って加工水タンク20へと供給される。
フィルタ92は、公知のフィルタを用いることが可能であり、油性成分を除去するフィルタ、微粒子などの不純物を除去するフィルタ等のフィルタを単独または組み合わせて用いることができる。
なお、分離タンク80で分離された加工水、燃料油をそれぞれ加工水タンク20、燃料油タンク30に回収しているが、分離された加工水は、加工水タンク20に戻さずに排水してもよい。
【0048】
<加工水処理器10による加工水の製造>
本実施形態で用いられる加工水は、イオンクロマトグラフ法により、Naイオンが検出されると共にMgイオン及びCaイオンが検出されず、26℃における表面張力が、50mN/m以上であり、油性液体と混合して撹拌したときに乳化する性質を有する乳化性の水である。
本実施形態では、乳化性の水として、
図5で示す加工水処理器10で生成した加工水を用いると好適である。
【0049】
加工水処理器10は、
図5に示すように、第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112とイオン生成器114と黒曜石収納器116とが、連絡管118a,118b,118cを介して、順に直列に連結された軟水製造装置100と、軟水製造装置100の下流に接続された表面張力向上器140と、からなる。
軟水製造装置100は、原水から軟水を製造する装置である。
軟水とは、硬度が100mg/l未満の水をいう。硬度とは、水に含まれるCa濃度及びMg濃度で表される指標であり、硬度=Ca濃度(mg/l)×2.5+Mg濃度(mg/l)×4.1で算出される。
【0050】
本実施形態では、硬度が100mg/l未満の水であって、Caイオン,Mgイオン,Feイオンが除去された水を用いると好適である。
第1の軟水生成器110には、例えば水道のような圧力のある原水が水供給管120から連絡管122を介して内部に導入される。
但し、原水として、湧き水、井戸水、雨水、川の水を、公知の水浄化用の濾過フィルタ,殺菌装置等により浄化,消毒処理を施したものや、清浄な湧き水、井戸水を用い、不図示のポンプで水供給管120、連絡管122を介して第1の軟水生成器110に導入してもよい。
水供給管120と連絡管122との間には、蛇口のような入口用開閉弁124が備えられ、連絡管122の途中には逆止弁126が備えられる。黒曜石収納器116の出口側には吐出管128aが取り付けられ、吐出管128aの先端または途中に出口用開閉弁130aが備えられる。
【0051】
第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112の内部には、粒状のイオン交換樹脂132が充填されている。なお、2つの軟水生成器110,112を1つにまとめて、1つの軟水生成器にすることも可能である。
【0052】
イオン交換樹脂132は、原水に含まれているCa
2+やMg
2+やFe
2+等の金属イオンを除去して、原水を軟水にするためのものであり、特に原水の硬度をゼロに近い程度に低くするためのものである。イオン交換樹脂132としては、例えば、スチレン・ジビニルベンゼンの球状の共重合体を均一にスルホン化した強酸性カチオン交換樹脂(RzSO
3Na)を用いる。
【0053】
RzSO
3Naを用いた場合のイオン交換樹脂132によるイオン交換反応は、次の通りである。
2RzSO
3Na + Ca
2+ → (RzSO
3)
2Ca + 2Na
+
2RzSO
3Na + Mg
2+ → (RzSO
3)
2Mg + 2Na
+
2RzSO
3Na + Fe
2+ → (RzSO
3)
2Fe + 2Na
+
即ち、イオン交換樹脂132を通すことによって、原水に含まれているCa
2+やMg
2+やFe
2+等が除去され、Na
+が発生する。
【0054】
一方、原水は、イオン交換樹脂132を通ることによって、以下のように、水酸化イオン(OH
−)とヒドロニウムイオン(H
3O
+)が発生する。
H
2O → H
+ + OH
−
H
2O + H
+ → H
3O
+
【0055】
このように、原水が硬水であった場合に、イオン交換樹脂132を通過することによって、原水からCa
2+やMg
2+やFe
2+等の金属イオンが除去されて軟水となる。また、原水の中にNa
+とOH
−とヒドロニウムイオン(H
3O
+)とが発生する。しかし、水道水に含まれている塩素はイオン化しないでそのまま通過する。
【0056】
イオン生成器114は、不図示のカートリッジに、平均粒径5〜15μmのトルマリン粉末又はトルマリン粉末を他のセラミック材料と混合して焼成したペレット状のトルマリンペレットを充填し、複数個同じ配置で上下に連続して直列に連結したものである。なお、トルマリン粉末又は粒状のトルマリンに、金属板を混合したものを、カートリッジに充填してもよい。
トルマリンは、プラスの電極とマイナスの電極とを有し、このプラスの電極とマイナスの電極によって、水に4〜14ミクロンの波長の電磁波を持たせ、かつ水のクラスターを切断してヒドロニウムイオン(H
3O
+)を発生させる。4〜14ミクロンの波長の電磁波が持つエネルギーは、約0.004watt/cm
2である。
【0057】
イオン交換樹脂132を通過させて水を硬度がゼロに近い軟水にして、その軟水の中でトルマリン同士をこすり合わせる。硬度がゼロに近い軟水では、トルマリンのマイナスの電極にMgイオンやCaイオンが付着するのを防ぐことができ、トルマリンのプラスとマイナスの電極としての働きを低下させることを防ぐことができる。
【0058】
金属板としては、アルミニウム、ステンレス、銀の少なくとも1種類の金属を用いる。この金属としては、水中で錆を発生させたり水に溶けたりしない金属が望ましい。アルミニウムは殺菌作用や抗菌作用と共に漂白作用を有しており、ステンレスは殺菌作用や抗菌作用と共に洗浄向上作用を有しており、銀は殺菌作用や抗菌作用を有している。
トルマリンと金属板との重量比は、10:1〜1:10が望ましい。その範囲を超えると、一方の素材が多くなりすぎ、両方の素材の効果を同時に発揮することができない。
【0059】
イオン生成器114の各カートリッジにおいては、底面の多数の穴を通過した水が、下から上に向けてトルマリン粉末又はトルマリンペレットに噴射するように設定されている。ここで、水道水は高い水圧を有するので、その水圧を有する水がカートリッジ内のトルマリン粉末又はトルマリンペレットに勢いよく衝突し、その水の勢いでトルマリン粉末又はトルマリンペレットがカートリッジ内で攪拌されるように、穴の大きさ並びに個数を設定する。水をトルマリンに噴射してトルマリンを攪拌するのは、その攪拌によってトルマリンと水とに摩擦を生じさせ、トルマリンからプラスとマイナスの電極が水に溶け出して水のクラスターを切断し、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)を大量に発生させるためである。
【0060】
トルマリン同士がこすり合うことでプラスの電極とマイナスの電極が生成し、その電極に水が接触することで、水中のマイナスイオンが増加する。なお、水のクラスターを切断し、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)を大量に発生させたい場合には、カートリッジ内にトルマリンのみを充填しても良い。
【0061】
トルマリンは、プラス電極とマイナス電極とを有するため、トルマリンが水で攪拌されると、水は水素イオンと水酸化イオンに解離する。
H
2O → H
+ + OH
−
更に、水素イオンと水とによって、界面活性作用を有するヒドロニウムイオン(H
3O
+)が発生する。イオン生成器114におけるヒドロニウムイオンの発生量は、イオン交換樹脂132によって発生する量よりはるかに多い。
H
2O + H
+ → H
3O
+
発生したヒドロニウムイオンの一部は、水と結びついてヒドロキシルイオン(H
3O
2−)と水素イオンになる。
H
3O
+ + H
2O → H
3O
2− + 2H
+
【0062】
イオン交換樹脂132を通過した水を、イオン生成器114を通過させることによって、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)とヒドロキシルイオン(H
3O
2−)とH
+とOH
−とが発生する。なお、イオン交換樹脂132を通過した塩素、イオン交換樹脂132で発生したNa
+は、そのままイオン生成器114を通過する。
【0063】
イオン生成器114を通過した水を、次に、粒径5mm〜50mm程度の黒曜石を収納する黒曜石収納器116の内部を通過させる。黒曜石は、産地を問わない。
【0064】
この黒曜石収納器116に、イオン生成器114を通過した水を通過させると、水にe
−(マイナス電子)が加えられる。この結果、水道水に含まれている塩素はマイナス電子によって、塩素イオンとなる。
Cl
2 + 2e
− → 2Cl
−
このCl
−と前記Na
+とはイオンとして安定した状態になる。安定した状態とは、イオン状態が長期間保たれることを意味する。また、ヒドロキシルイオンもイオンとして安定した状態になる。水が黒曜石を通過することによって、イオン生成器114を通過した水と比べて、ヒドロニウムイオンが更に発生し、かつヒドロキシルイオンも水素イオンも更に発生する。
【0065】
H
2O + H
+ → H
3O
+
H
3O
+ + H
2O → H
3O
2− + 2H
+
水が黒曜石を通過することによって、その他に、以下の反応も発生する。
OH
− + H
+ → H
2O
2H
+ + 2e
− → 2H
2
更に、水が黒曜石収納器116を通過すると、黒曜石のマイナス電子によって、水の酸化還元電位が+340mVから−20〜−240mVになる。更に、黒曜石を通過した水は、溶存酸素や活性水素を大量に含む。
【0066】
本実施形態の軟水製造装置100は、第1の軟水生成器110、第2の軟水生成器112、イオン生成器114、黒曜石収納器116を備えているが、これに限定されるものではなく、原水からCaイオン,Mgイオン,Feイオンを除去する装置であればよい。
また、水を、イオン生成器114、黒曜石収納器116に通過させる順序を逆にして、黒曜石収納器116に通過した後の水をイオン生成器114に通過させてもよい。
【0067】
軟水製造装置100の下流には、軟水製造装置100の吐出管128aの出口用開閉弁130a連絡管118dが連結されることにより、表面張力向上器140が連結されている。
表面張力向上器140は、軟水製造装置100で原水から生成された軟水を、トルマリン粉末又はトルマリンペレット及び/又は黒曜石収納器116を通過させることにより、軟水の表面張力を向上させると共に、軟水中の原子状水素の量を増加させる装置である。
【0068】
本実施形態の表面張力向上器140は、
図5に示すように、黒曜石収納器116を直列に連結されてなるが、これに限定されるものでなく、複数のイオン生成器114を直列に連結して構成してもよいし、イオン生成器114と黒曜石収納器116を直列に連結して構成してもよい。
表面張力向上器140を構成するイオン生成器114及び/又は黒曜石収納器116の構成は、軟水製造装置100に含まれるものと同様である。
もっとも下流の黒曜石収納器116の出口側には吐出管128bが取り付けられ、吐出管12bの先端または途中に出口用開閉弁130bが備えられており、表面張力向上器140で生成された加工水を
図1に示す加工水タンク20に供給するための導入管21が連結される。
【0069】
原水が、軟水製造装置100を通過した後、表面張力向上器140を通過したものが加工水である。
加工水には、Na
+と、Cl
−と、H
+と、OH
−と、H
2と、ヒドロニウムイオン(H
3O
+)と、ヒドロキシルイオン(H
3O
2−)と、活性水素(原子状水素)と、溶存酸素とを多く含む。
但し、原水が、軟水製造装置100を通過した軟水であって、表面張力向上器140を通過していないものを、加工水として用いてもよい。
【0070】
軟水製造装置100を通過後に表面張力向上器140を通過した加工水は、軟水製造装置100を通過したが表面張力向上器140を通過していないものよりも、高エネルギーな活性の原子状水素の量が多くなり、エネルギーが高い。つまり、燃焼させたときにより多くのエネルギーを発生する。
軟水製造装置100を通過後に表面張力向上器140を通過した加工水に多く含まれるヒドロキシルイオン(H
3O
2−)は、燃焼時において、イオン中に含まれる2つのOがO
2となり、3つのHが活性な原子状水素となり、これがHガスとなって燃焼する。
【0071】
軟水製造装置100で原水(水道水)が軟水化された後、表面張力向上器140を用いて、トルマリン及び黒曜石の少なくとも一方を通過させる処理を、30分以上数時間繰り返して行うことによって得た本実施形態の加工水は、Mgイオン、Caイオン、Feイオンの量が、イオンクロマトグラフ法の検出下限値以下であり、Naイオン濃度が、原水の3倍以上、好ましくは、3.5倍以上に高められている。
また、表面張力は、原水(水道水)よりも高く、超純水と同等の水準まで高められている。
このように、本実施形態の加工水処理器10で処理された加工水は、Mgイオン、Caイオン、Feイオンを含有せず、Naイオン濃度が高いため、油と加工水を混合して撹拌すると、Naイオンと油に含まれるトリグリセライドが加水分解して脂肪酸を遊離し、Naイオンと化合して、界面活性剤である脂肪酸ナトリウムを生成する。従って、本実施形態の加工水は、乳化剤を用いることなく、燃料油と混合して撹拌することにより、エマルジョン化可能である。
【0072】
従って、本実施形態の加工水と燃料油がエマルジョン化して得られる不完全エマルジョンは、エマルジョン燃料として利用される。
本実施形態のエマルジョン燃料は、乳化剤無添加で、本実施形態の加工水と燃料油をエマルジョン化したものであり、表面張力向上器140によって表面張力が高められ、原子状水素を含む加工水を用いていることから、原料となる燃料油よりも、燃焼による発熱量が多く、燃焼効率がよい。
【0073】
また、本発明者の鋭意研究により、完全に水相と油相が乳化した完全なエマルジョン状態よりも、水と燃料油が部分的に分散した不完全エマルジョン燃料の方が、燃焼装置における出力効率が上がることが明らかとなったため、本実施形態では、水と燃料油が部分的に分散した不完全燃料を生成するエマルジョン生成手段を用いることにより、燃焼装置に供給される不完全エマルジョン燃料が完全なエマルジョンになることを抑制して、出力効率のよい不完全エマルジョン燃料を供給可能としたものである。
【0074】
本実施形態の加工水は、乳化剤を含まず、イオンクロマトグラフ法により、Naイオンが検出されると共にMgイオン及びCaイオンが検出されず、26℃における表面張力が、50mN/m以上であり、油性液体と混合して撹拌したときに乳化する性質を有する乳化性の水であるため、エマルジョン燃料を、高活性の原子状水素を含む加工水を用いて生成でき、エネルギー効率の高いエマルジョン燃料を供給可能となる。
また、加工水を用いているため、乳化剤を用いなくても燃料油と混合可能であり、乳化剤無添加の混合燃料を達成できる。
更に、混合燃料は、Caイオン及びMgイオンが除去された軟水である加工水を原料とし、かつ、乳化剤を含まないため、燃焼装置における酸化、錆や腐食が抑制され、混合燃料による燃焼装置の劣化が抑制できる。
【0075】
本実施形態のエマルジョン燃料は、乳化剤を含まないので、加工水と燃料油とに分離することが可能であり、分離後の加工水及び燃料油を再利用することができる。
【0076】
<エマルジョン燃料供給方法>
本実施形態のエマルジョン燃料は、以下のエマルジョン燃料供給方法により、製造され、ディーゼルエンジン70に供給される。
具体的には、本実施形態に係るエマルジョン燃料供給方法は、
図6に示すように、水相と燃料油からなる油相とを有するエマルジョン燃料を燃焼装置に供給する方法であって、乳化性の水を生成する加工水生成工程と、該加工水生成工程で生成された前記乳化性の水を供給する加工水供給手段から供給される前記乳化性の水と、前記燃料油を供給する燃料油供給手段から供給される前記燃料油とを、所定の流量比率で合流させる合流工程と、該合流工程で合流した前記乳化性の水と前記燃料油の混合物を、エマルジョン生成手段に供給して、前記エマルジョン燃料を生成するエマルジョン生成工程と、該エマルジョン生成工程で生成された前記エマルジョン燃料を、前記燃焼装置に供給する供給工程と、該供給工程で前記燃焼装置に供給されたエマルジョン燃料のうち、前記燃焼装置で消費されなかった余剰エマルジョン燃料を加熱処理する余剰エマルジョン燃料処理工程と、を順次行うことを特徴とする。
以下、各工程について
図6を参照して詳細に説明する。
【0077】
(加工水生成工程)
まず、原水から乳化性の水である加工水を調整する加工水生成工程を行う(ステップS1)。但し、エマルジョン燃料供給方法には、加工水生成工程を含めなくてもよく、予め調製された加工水を用いてもよい。
加工水生成工程では、
図5の加工水処理器10に、水道のような圧力のある原水を供給する。
第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112の強酸性カチオン交換樹脂等からなるイオン交換樹脂132を通過させて、原水に含まれているCa
2+やMg
2+やFe
2+等の金属イオンを除去して、原水を軟水にすると共に、原水の中にNa
+とOH
−とヒドロニウムイオン(H
3O
+)とを発生させる。
【0078】
次いで、第1の軟水生成器110と第2の軟水生成器112を通過した水を、イオン生成器114に供給し、平均粒径5〜15μmのトルマリン粉末又はトルマリン粉末を他のセラミック材料と混合して焼成したトルマリンペレット中を通過させる。これにより、水に4〜14ミクロンの波長の電磁波を持たせ、かつ水のクラスターを切断してヒドロニウムイオン(H
3O
+)とヒドロキシルイオン(H
3O
2−)とH
+とOH
−とを発生させる。
【0079】
水を、粒径5mm〜50mm程度の黒曜石を収納する黒曜石収納器116の内部を通過させる。水が黒曜石を通過することによって、イオン生成器114を通過した水と比べて、ヒドロニウムイオンが更に発生し、かつヒドロキシルイオンも水素イオンも更に発生する。以上の処理で、軟水が生成される。
その後、軟水を、イオン生成器114及び黒曜石収納器116の少なくとも一方を、通過させて、加工水を生成する。つまり、イオン生成器114のみ、又は黒曜石収納器116のみ、又はイオン生成器114及び黒曜石収納器116の双方の循環時間は、30分以上とする。
【0080】
その後、加工水を、導入管21から加工水タンク20に供給する。また、原油タンク34から、燃料油を導入管31から燃料油タンク30に供給する。このとき、加工水タンク20及び燃料油タンク30の液高、つまり、水量及び油量は、ボールタップ23,33によりそれぞれ、予め設定された所定の高さに保持される。
加工水タンク20及び燃料油タンク30液高は、相互の液高の差が3cm以下、好ましくは、1cm以下となるよう、ほぼ同じ高さとする。このように構成することで、送液部40に、加工水と燃料油を、適当な比率で送液可能となる。
加工水タンク20と燃料油タンク30の液高を制御しない場合、加工水タンク20の液高と燃料油タンク30の液高とのどちらが高いかによって、送液管41に送られる加工水と燃料油との比率が変動してしまい、好ましくない。例えば、加工水タンク20の液高が燃料油タンク30の液高よりも高いタイミングでは、送液管41に、加工水のみが送られ、加工水と燃料油との間の界面張力により、送液管41に燃料油が混入されなくなり、逆に、燃料油タンク30の液高が加工水タンク20の液高よりも高いタイミングでは、送液管41に、燃料油のみが送られ、加工水と燃料油との間の界面張力により、送液管41に加工水が混入されなくなる。
【0081】
分離タンク80には、予め燃料油を入れておき、ヒータ95で加熱をしておく。後述する余剰エマルジョン燃料処理工程におけるヒータ95の加熱温度と同程度の温度に燃料油を加熱しておくことで、余剰エマルジョンが分離タンク80に供給されたときに、所望の温度に素早く加熱することが可能となる。このように、分離タンク80内に予め燃料油が存在する場合、ヒータ95が空焚き状態になってしまうことを防止できる。さらに、分離タンク80内に燃料油が存在しない状態で、余剰エマルジョンが供給されると、ヒータ95による加熱が安定せず、分離タンク80内の水相W及び油相Oの温度が不均一となってしまうが、そのような事態を防止することもできる。
【0082】
次いで、電磁弁25を閉じたままディーゼルエンジン70のポンプ76を駆動し、燃料油だけを、燃料油タンク30から、油供給管32を介してポンプ76の圧力により、送液管41に送液する。
燃料油が、ディーゼルエンジン70まで到達すると、ディーゼルエンジン70に着火して、燃料油の燃焼を行う。
【0083】
(合流工程)
次いで、前記加工水生成工程で生成された乳化性の水を供給する加工水供給手段から供給される乳化性の水と、燃料油を供給する燃料油供給手段から供給される燃料油とを、所定の流量比率で合流させる合流工程を行う(ステップS2)。
合流工程では、電磁弁25を開き、加工水タンク20内の加工水を、水供給管22を介して、送液管41を通る燃料油に混合させる。送液管41には、加工水の相と燃料油の相が交互に進む。
【0084】
送液管41を流れる加工水及び燃料油の比率は、スケール43で加工水の相の長さと燃料油の相の長さを計測して算出できる。加工水と燃料油との比率は、流量調整バルブ27,37で調整する。
加工水と燃料油との比率は、2:8〜5:5、好ましくは、2.5:7.5〜5:5とすると好適である。なお、加工水の比率が40%を超えると、ディーゼルエンジン70が失火し易くなるが、酸素ガスボンベ60の電磁弁62を開いて、酸素ガスを酸素導入管から空気吸入口73に混入させれば、加工水の比率が35〜50%となっても、殆ど失火しなくなる。
【0085】
(エマルジョン生成工程)
次に、前記合流工程で合流した乳化性の水と燃料油の混合物を、エマルジョン生成手段に供給して、エマルジョン燃料を生成するエマルジョン生成工程を行う(ステップS3)。
エマルジョン生成工程において、送液管41を通った加工水と燃料油の混合物は、加工水タンク20と燃料油タンク30からの重力とポンプ76の圧力により、エマルジョン生成器50に送られ、細孔53a,56aから大径空間55,58に噴出されて、加工水と燃料油が不完全にエマルジョン化されたエマルジョン燃料が生成される。
【0086】
(供給工程)
そして、前記エマルジョン生成工程で生成されたエマルジョン燃料を、燃焼装置に供給する供給工程を行う(ステップS4)。
供給工程では、燃料油だけが供給されていたディーゼルエンジン70にエマルジョン燃料が到達することで、燃料油に代わってエマルジョン燃料が、ディーゼルエンジン70で燃焼される。
加工水と燃料油の比率が3:7であるエマルジョン燃料を供給した場合のディーゼルエンジン70の周波数は、加工水を混ぜていない燃料油100%を供給した場合と同等又はそれ以上であり、加工水を分散させても、同等またはそれ以上のエネルギーが得られる。
【0087】
なお、本実施形態では、送液管41に送液される加工水と燃料油の比率を、流量調整バルブ27,37を調整することによって行ったが、これに限定されるものでなく、水供給管22に設けられた電磁弁25と、油供給管32に設けられた不図示の電磁弁を、不図示の制御盤から制御して、送液管41に、加工水と燃料油とを交互に供給してもよい。
つまり、加工水の電磁弁25が閉時には燃料油の不図示の電磁弁を開弁し、逆に、燃料油の不図示の電磁弁が閉時には加工水の電磁弁25を開弁することとし、加工水の電磁弁25と燃料油の不図示の電磁弁の開弁時間の設定秒数の比率を調整することで、送液管41に送液される加工水量と燃料油量の比率を調整する。
具体的には、
図1のエマルジョン燃料供給装置1の構成に加えて、油供給管32に不図示の電磁弁を設置し、また、この不図示の電磁弁と、電磁弁25を制御する不図示の制御盤を設置する。
【0088】
制御盤は、不図示の電磁弁及び電磁弁25への供給タイミングの設定画面を備えている。また、制御盤は、CPU,記憶手段及びタイマーを有し、不図示の電磁弁及び電磁弁25に連結された不図示の制御装置に連結されており、記憶手段に格納された制御プログラムに基づき、CPUが、不図示の電磁弁及び電磁弁25を制御可能である。
また、ディーゼルエンジン70にエマルジョン燃料を供給する際には、空気吸入口73から、空気を供給する。このときの空気量は、空気を供給しない空気量0から、水を含まない燃料油を供給したときに、不完全燃焼によりディーゼルエンジン70が失火する空気量(以下、「燃料油供給時の失火空気量」という。)までの間の量とする。
空気の供給量は、空気吸入口73に設けられた不図示の空気量表示器を見ながら、不図示のバルブを調整することにより、調整する。
【0089】
ディーゼルエンジン70に、水を含まない燃料油を供給したときには、空気吸入口73からの供給空気量が、燃料油供給時の失火空気量より少なくなると、ディーゼルエンジン70は失火する。しかし、本実施形態のエマルジョン燃料を供給したときには、本実施形態のエマルジョン燃料が、燃料油よりも高いエネルギーを有するため、燃料油空気吸入口73からの供給空気量が、燃料油供給時の失火空気量より少ない量であっても、ディーゼルエンジン70は失火しない。更に、燃料油空気吸入口73からの空気の供給がなくなった供給空気量においても、ディーゼルエンジン70は失火せず、本実施形態のエマルジョン燃料は、ディーゼルエンジン70の稼働のために、空気や酸素等の供給を必要としない。
【0090】
また、本実施形態のエマルジョン燃料を供給したときに、空気吸入口73から供給される気体は、空気、空気に酸素を混入したもの、酸素のいずれでもよい。
また、本実施形態では空気吸入口73からの空気の供給量を0とし、空気の供給を遮断した場合に、ディーゼルエンジン70が効率的に稼働する。本実施形態の加工水は、エネルギー源となる原子状水素と共に酸素を含むため、ディーゼルエンジン70での酸素及び空気の供給が、原則として不要となるのである。
【0091】
制御盤の設定画面で、燃料油の不図示の開弁時間が「n1秒」、加工水の電磁弁25の開弁時間が「n2秒」に設定されたときの制御装置による制御処理は、次の通りである。n1秒、n2秒は、例えば、それぞれ、3〜4秒と、1〜2秒等に設定される。ディーゼルエンジン70のポンプ76が駆動している状態で、制御盤の設定画面で、スタートボタンが押されると、制御処理がスタートする。制御処理は、制御装置のCPUにより実行される。
まず、タイマーを0にリセットした後、タイマーが、n1秒になったかを判定する。n1秒になっていない場合は、再度、n1秒になったかを判定する。
タイマーが、n1秒になった場合、油供給管32の電磁弁を閉じ、電磁弁25を開けて、タイマーを0にリセットする。
【0092】
その後、タイマーが、n2秒になったかを判定する。n2秒になっていない場合は、再度、n2秒になったかを判定する。
タイマーが、n2秒になった場合、水供給管22の電磁弁25を閉じ、油供給管32の電磁弁を開ける。
その後、制御盤の設定画面で、ストップボタンが押されたか判定する。ストップボタンが押されていない場合には、最初のステップに戻る。
ストップボタンが押された場合には、水供給管22の電磁弁を閉じて、処理を終了する。
【0093】
以上の処理により、設定画面で設定された秒数で、水供給管22及び油供給管32から、交互に送液管41に、加工水及び燃料油が送液され、所望の比率で加工水と燃料油が分散されたエマルジョン燃料を、エマルジョン生成器50に通過させて、撹拌して軽く乳化させた後、ディーゼルエンジン70に供給可能となる。
【0094】
(余剰エマルジョン燃料処理工程)
次に、前記供給工程で燃焼装置に供給されたエマルジョン燃料のうち、燃焼装置で消費されなかった余剰エマルジョン燃料を加熱処理する余剰エマルジョン燃料処理工程を行う(ステップS5)。
前記供給工程において、エマルジョン燃料がディーゼルエンジン70に供給されるが、ディーゼルエンジン70で消費されなかった余剰のエマルジョン燃料は、余剰エマルジョン排出管72を通して分離タンク80に回収される。
余剰エマルジョン燃料処理工程では、分離タンク80に回収された余剰エマルジョン燃料をヒータ95により加熱することで、水相Wと油相Oへの分離を促進する、分離促進処理を行うことを特徴とする。
【0095】
余剰のエマルジョン燃料の流量が、余剰エマルジョン排出管72に設けられた流量センサ75で測定され、測定された余剰のエマルジョン燃料の流量が、コントローラ97へと送信される。コントローラ97は、流量センサ75で測定された余剰のエマルジョン燃料の流量に応じて、ヒータ95の加熱温度を制御する。具体的には、コントローラ97は、余剰エマルジョン燃料の流量が多い場合にはヒータ95の加熱温度を高くし、余剰エマルジョン燃料の流量が少ない場合にはヒータ95の加熱温度を低くするように制御する。
【0096】
また、コントローラ97は、使用する燃料油の種類に応じて最適なヒータ95の加熱温度の範囲を選択するように構成されている。コントローラ97は、ヒータ95の加熱温度を余剰エマルジョン燃料の加工水及び燃料油への分離が促進される範囲内であって、加工水が蒸発しない範囲内、好ましくは30〜90℃、より好ましくは35〜70℃、特に好ましくは40〜65℃で制御する。
【0097】
ヒータ95の加熱により、分離タンク80内の余剰エマルジョンは分離が促進さる。水相Wと油相Oとが分離し、二相に分かれたことをスケール86で読み取り、手動コック93を開き、分離された加工水が戻し水タンク90へと供給されるようにする。
【0098】
戻し水タンク90に供給された、分離後の加工水は、ポンプ91によりフィルタ92へと流入し、残存する燃料油や不純物を除去する濾過処理が施され、水供給管82を通って加工水タンク20へと供給される。
【0099】
加工水タンク20に供給された加工水は、再び合流工程で燃料油と混合され、以下、エマルジョン生成工程、供給工程を経て、ディーゼルエンジン70に供給される。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を、実施例に基づき更に具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
<試験例1〜7 加工水の特性分析>
試験例1〜7では、本発明で用いられる加工水の特性分析を行った。
(試験例1 加工水の乳化安定性)
図5の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、それぞれ、30分ずつ通過させて、実施例1の加工水を得た。
実施例1の加工水と、水道水、蒸留水、及び超純水を、それぞれ、ビーカーに入れ、2.7重量%、3重量%、5重量%のA重油をそれぞれ添加し、スターラーで撹拌して、それぞれのエマルジョンを調製した。調整直後、3時間後、1日後、3日後に、それぞれのサンプルの乳化状態を観察した。
【0101】
その結果、調整直後においては、3重量%のサンプルでは、加工水のみにおいて、水相と分離した油相が観察されず、蒸留水、超純水において、水相と分離した油相が観察された。
5重量%のサンプルでは、加工水、蒸留水、超純水のすべてで、水相と分離した油相が観察されたが、油相の厚みは、蒸留水>超純水>加工水の順であった。
【0102】
2.7重量%の加工水、水道水、超純水の調整後3時間後、1日後、3日後のサンプルでは、乳化による白濁が、超純水>加工水>水道水の順で濃く観察され、超純水>加工水>水道水の順で、乳化後の安定度が高いことが分かった。
【0103】
また、実施例1の加工水と、蒸留水、及び超純水に3重量%のA重油を添加して撹拌したサンプルにおいて、調整後30分後、40分後、60分後に、粒子径測定装置を用いてエマルジョン粒子の粒径を測定した。粒子の平均径及び標準偏差を、
図7に示す。
図7の結果より、調整後1時間経過の時点では、加工水と、蒸留水、及び超純水との間で、エマルジョン粒子径のばらつきには、殆ど差がなかった。エマルジョン粒子の平均径は、加工水よりも蒸留水、超純水の方が若干小さいが、殆ど差がなかった。
【0104】
(試験例2 異なる条件で処理した加工水の表面張力)
図5の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、イオン生成器114を30分、1時間、3時間循環させた実施例2〜4の加工水と、
図5の軟水製造装置100に、水道水を供給し、軟水製造装置100を通過させた後、黒曜石収納器116を、30分、1時間、3時間、4時間、5時間循環させた実施例5〜9の加工水を得た。
実施例2〜9の加工水と、超純水について、測定時の試料温度26.0℃の表面張力を測定した。
結果を、
図8に示す。
図8の結果より、イオン生成器114を30分、1時間、3時間循環させた実施例2〜4の加工水、黒曜石収納器116を、30分、1時間、4時間循環させた実施5、6、8の加工水の表面張力は、超純水と同水準にあった。
【0105】
(試験例3 異なる条件で処理した加工水の表面張力)
図5の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、黒曜石収納器116を、5時間通過させた実施例10の加工水を得た。
【0106】
また、
図5の軟水製造装置100に、水道水を供給し、軟水製造装置100を通過させた後、イオン生成器114、黒曜石収納器116をそれぞれ通過させた実施例11の加工水を得た。
実施例10,11の加工水と、超純水、実施例10,11の調整に用いた原水(水道水)、この原水(水道水)に、界面活性剤を添加した界面活性剤添加水道水について、測定時の試料温度26.0℃の表面張力を、測定した。
結果を、
図9に示す。
図9の結果より、実施例10,11の加工水の表面張力は、原水よりも高く、超純水よりも低い値を示した。界面活性剤添加水道水は、他のサンプルよりも大幅に低い表面張力値を示し、10,11の加工水の表面張力は、界面活性剤添加水道水よりも大幅に高い、超純水、原水と同じレベルの値であった。
図8,9の結果より、実施例2〜11の加工水は、超純水に近い表面張力値を示し、極めて清浄な水であることが示された。
【0107】
(試験例4 エマルジョンのゼータ電位)
試験例1で調整した実施例1の加工水と、超純水、陰イオン交換樹脂を通過させたイオン交換水、蒸留水のそれぞれに、A重油を添加して撹拌して各サンプルのエマルジョンを得た。これらのエマルジョンのゼータ電位を、ゼータ電位測定装置を用いて測定した。
測定結果を、表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1の結果より、加工水のゼータ電位は、絶対値で33mVであり、他と対比して大きな差はなかったが、他のサンプルの粒子表面電荷が正であったのに対して、粒子表面電荷が負になっていた。このことより、加工水には、マイナスイオンが存在することが分かった。
【0110】
(試験例5 イオンクロマトグラフ)
試験例1で調整した実施例1の加工水と、この加工水の原水(水道水)を、イオンクロマトグラフィを用いて、アニオン分析用イオンクロマトグラフ法、カチオン分析用イオンクロマトグラフ法を行った。
測定結果を、
図10に示す。
図10の各グラフの上段は、加工水の測定結果、下段は、原水の測定結果を示している。
図10の測定結果より、実施例1の加工水では、原水(水道水)と対比すると、Mgイオン、Caイオンが除去され、Naイオンが4倍に増加していた。
【0111】
(試験例6 加工水の界面活性測定試験)
図5の軟水製造装置100に、水道水を供給して通過させた後、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、順次5分ずつ通過させた対比例1、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、順次15分ずつ通過させた実施例12の加工水を得た。
【0112】
準備した各試料水と水道水(原水)に、2重量%のサラダオイル(オレイン酸のトリグリセリド)を添加し、1分間震盪撹拌した後、5分間経過させてから、フーリエ変換型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製 JNM−EX−400型FT−NMR)を用いて、測定温度22℃、測定周波数400MHzにおいて、
1H−NMRスペクトルを測定し、各試料水に溶け込んだサラダ油の量を算出した。濃度の基準物質として、1mMolのTSP−d
4(トリメチルシリルプロピオン酸)を加えた。
実施例12の加工水は、測定値が、127.0であり、水に溶け込んだサラダ油の量は、20.06mMolで、水道水に対比すると、2.5倍の量のサラダ油を溶かした。それに対し、対比例1の加工水は、測定値が、74.9であり、水に溶け込んだサラダ油の量は、11.83mMolで、水道水に対比すると、1.5倍の量のサラダ油を溶かした。
【0113】
(試験例7 溶存酸素量等の測定試験)
図5の軟水製造装置100に、水道水(日本国上田市営水道)を供給して通過させた後、イオン生成器114及び黒曜石収納器116を、それぞれ、30分ずつ循環させた実施例1の加工水と、
図5の軟水製造装置100に、水道水(上田市営水道)を供給して通過させた後、イオン生成器114を30分循環させた実施例2の加工水と、
図5の軟水製造装置100に、水道水(上田市営水道)を供給し、軟水製造装置100を通過させた後、黒曜石収納器116を30分循環させた実施例5の加工水と、
図5の軟水製造装置100に、水道水(上田市営水道)を供給して通過させた対比例2の加工水と、実施例1,2,5及び対比例2の加工水の原水である対比例3の水道水(上田市営水道)について、上水試験方法(2011年版)により、pH,溶存酸素量,Naイオン濃度,酸化還元電位を測定した。
結果を、表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
純水の飽和溶存酸素量は、1気圧、13℃の条件下では、10.2mg/L、1気圧、14℃の条件下では、9.98mg/L、1気圧、23℃の条件下では、8.38mg/L、1気圧、24℃の条件下では、8.25mg/Lである。
従って、対比例2,3では、溶存酸素量が、純水の飽和溶存酸素量より若干低い値を示した。それに対し、実施例1,2,5では、いずれも、溶存酸素量が、純水の飽和溶存酸素量より高い値を示しており、本発明の加工水が、純水の飽和溶存酸素量よりも多い酸素が溶解していることが分かった。
【0116】
(試験例1〜7の考察)
本発明の実施例に適用された加工水は、蒸留水、超純水よりも乳化し易く、ゼータ電位でマイナスの符号を示していた。また、Mgイオン、Caイオンを有さず、Naイオンが増加していた。
これらの結果より、油の成分と結合するMgイオン、Caイオンが存在しないため、加工水と油との混合時には、Naイオンと油に含まれるトリグリセライドが加水分解して脂肪酸を遊離し、Naイオンと化合して、界面活性剤である脂肪酸ナトリウムを生成することが分かった。
また、本発明の実施例に適用された加工水は、超純水に近い表面張力を有しており、高い表面張力を持ちながら、別途界面活性剤を無添加の状態で、油と混合されたときに、界面活性剤を自ら合成して、油と乳化する能力を持つという、特殊な性質を有することが分かった。
更に、本発明の実施例に適用された加工水は、純水の飽和溶存酸素量よりも多い量の酸素が溶解していることが分かった。溶存酸素は、燃料油とエマルジョン化したエマルジョン燃料の燃焼効率を向上させる要因となる。
<試験例8及び試験例9 発電機の稼働試験>
試験例8及び試験例9では、余剰エマルジョンを加熱処理するエマルジョン燃料供給装置1を用い、ディーゼル発電機の稼働試験を行った。
【0117】
(試験例8 発電機の稼働試験)
実施の形態のエマルジョン燃料供給装置1を用いて、ディーゼル発電機にエマルジョン燃料を供給し、ディーゼル発電機の稼働試験を行った。
具体的には、軽油のみで発電機を運転した場合と、試験例1で得た実施例1の加工水及び軽油を用いたエマルジョン燃料で発電機を運転した場合のデータを測定し、発電時間の増加率を算出した。
その際に、余剰エマルジョン燃料を加熱するヒータ95の加熱温度を変化させて、検討を行った。
【0118】
稼働試験は、運転回転数1800rpm、セラミックヒーターを出力器具として用い、負荷200VAC−15A相当、冷却水温度は90℃であり、十分な安定運転の条件で行った。
試験結果を
図11に示す。
図11(a)の処理なしでは、ヒータ95による加熱を行わず、分離タンク80内の温度は、28℃であった。ヒータ95の加熱温度は、分離タンク80内の温度が、
図11(b)の処理法1では43℃、
図11(c)の処理法2では58℃、
図11(d)の処理法3では65℃となるように設定した。
ここで、ヒータ95の加熱温度とは、分離タンク80内に設けた温度計で測定した、分離タンク80内の水相W及び油相Oの温度を意味する。
【0119】
図11において、1L計測時間とは、1Lの軽油が通過するのに要した時間を油供給管32に取り付けた流量センサ38で計測したものである。
発電時間増加率は、(発電時間増加率)=(エマルジョン燃料使用時の1L計測時間−軽油のみ使用時の1L計測平均時間)/(軽油のみ使用時の1L計測平均時間)×100[%]の計算式で算出した。
余剰エマルジョン燃料量とは、1L計測時間の間に、ディーゼルエンジン70の燃焼室に送られず、分離タンク80に回収された余剰エマルジョン燃料の量を流量センサ75で測定した値であり(単位はL)、余剰エマルジョン燃料は、100%再利用された。
排気ガス測定値は、乾き排気ガス値であるので、エマルジョン燃料で運転した場合には、測定された排気ガス測定値より、削減率割合分を考慮する必要がある。例えば、
図11(d)の処理法3(65℃加熱)でCOの値を見ると、(1−(353.5−158.6)/353.5)×545.8となり、乾き排気ガス値のCOの値は245rpmとなる。
【0120】
発電時間増加率は、処理なしの場合は35.3%、処理法1の場合は44.5%、処理法2の場合は118.8%、処理法3の場合は122.8%であり、ヒータ95による余剰エマルジョンの加熱温度が高くなるのに従い、発電時間増加率の値が大きくなった。
【0121】
以上より、軽油のみで発電機を運転した場合と比較して、本発明のエマルジョン燃料で発電機を運転すると、同じ燃料油の量でもより長時間運転でき、更に、余剰エマルジョン燃料の加熱温度が高くなるに従い、より長時間運転できることがわかった。
【0122】
(試験例9 発電機の連続稼働試験)
実施の形態のエマルジョン燃料供給装置1を用いて、ディーゼル発電機にエマルジョン燃料を供給し、ディーゼル発電機の連続稼働試験を行った。
具体的には、軽油のみで発電機を運転した場合と、試験例1で得た実施例1の加工水及び軽油を用いたエマルジョン燃料で発電機を連続運転した場合のデータを測定し、発電時間の増加率を算出した。
【0123】
稼働試験は、運転回転数1800rpm、セラミックヒーターを出力器具として用い、負荷200VAC−15A相当、冷却水温度は90℃であり、十分な安定運転の条件で行った。
試験結果を
図12に示す。
図12(a)は軽油のみで運転した場合の結果であり、
図12(b)はエマルジョン燃料で連続運転した場合の結果である。
1L計測時間、発電時間増加率、余剰エマルジョン燃料量、排気ガス測定値は試験例8と同様の方法で測定した値である。回数とは、連続運転を行った回数であり、タンク温度とは、ヒータ95で加熱を行った分離タンク80内の水相W及び油相Oの温度である。
【0124】
連続運転を行っても、発電機は安定して運転され、停止することはなく、発電時間増加率は、30%以上であった。
以上より、実施形態のエマルジョン燃料供給装置1を用いて、本発明のエマルジョン燃料で発電機を運転すると、同じ燃料油の量でもより長時間運転でき、更に、余剰エマルジョン燃料を再利用した場合であっても連続運転可能であることがわかった。