(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-110133(P2018-110133A)
(43)【公開日】2018年7月12日
(54)【発明の名称】粒子ビームの強度の制御
(51)【国際特許分類】
H05H 13/02 20060101AFI20180615BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20180615BHJP
G21K 5/04 20060101ALI20180615BHJP
H05H 7/12 20060101ALI20180615BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20180615BHJP
【FI】
H05H13/02
H05H1/24
G21K5/04 A
H05H7/12
A61N5/10 H
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2018-72427(P2018-72427)
(22)【出願日】2018年4月4日
(62)【分割の表示】特願2015-534721(P2015-534721)の分割
【原出願日】2013年9月27日
(31)【優先権主張番号】61/707,466
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】508147706
【氏名又は名称】メビオン・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ピー・ガル
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット・タウンゼント・ズワート
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ファン・デル・ラーン
(72)【発明者】
【氏名】アダム・シー・モルツァン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ディー・オニール・サード
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シー・ソブジンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・クーリー
【テーマコード(参考)】
2G084
2G085
4C082
【Fターム(参考)】
2G084AA12
2G084CC05
2G084CC08
2G084CC17
2G084CC32
2G084DD01
2G085AA11
2G085BA02
2G085BA05
2G085BA13
2G085BA17
2G085BA19
2G085BB07
2G085BC04
2G085BC18
2G085BE04
2G085BE06
2G085CA05
2G085CA13
2G085CA15
2G085CA17
2G085CA22
2G085CA26
2G085EA07
4C082AA01
4C082AC05
4C082AE03
4C082AG02
4C082AG12
4C082AG44
(57)【要約】
【課題】粒子治療システムで使用される陽子またはイオンビームなどの、粒子ビームの強度の制御を提供する。
【解決手段】一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加してプラズマ柱から粒子を外部に加速するための電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備える。粒子源は、粒子ビームの強度を制御するために電離プラズマのパルス幅を制御するように構成される。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備え、
前記粒子源は、前記粒子ビームの強度を制御するために前記電離プラズマのパルス幅を制御するように構成される、シンクロサイクロトロン。
【請求項2】
前記粒子源は、制御信号に応答して一定期間にわたって作動するように構成され、前記粒子源は、作動すると電離プラズマのパルスを発生する、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項3】
前記粒子源は、電離プラズマのパルスを周期的に発生するように構成される、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項4】
前記粒子ビームは、約0.1μsから100μsの持続時間で出力される、請求項3に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項5】
前記粒子ビームは、約2ms毎に約0.1μsから100μsの持続時間で出力される、請求項3に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項6】
前記粒子源は、電圧を加えて水素を電離し、前記電離プラズマを発生する陰極を備え、前記陰極は外部源によって非加熱状態にされる、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項7】
請求項1に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項8】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源であって、電圧を加えて水素を電離し、前記電離プラズマを発生する陰極を備える粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備え、
前記陰極に関連する電圧は制御可能であり、これにより前記粒子ビームの強度を制御する、シンクロサイクロトロン。
【請求項9】
前記陰極は、外部源によって非加熱状態にされる、請求項8に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項10】
前記電圧は、前記電圧を上げると前記粒子ビームの強度が高くなるように、また前記電圧を下げると前記粒子ビームの強度が低くなるように制御可能である、請求項8に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項11】
請求項8に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項12】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源であって、電圧を加えて水素を電離し、前記電離プラズマを発生する陰極を備える粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備え、
前記粒子源は、前記粒子ビームの強度を制御するために前記陰極間の前記水素の量を調整するように制御可能である、シンクロサイクロトロン。
【請求項13】
前記陰極は、外部源によって非加熱状態にされる、請求項12に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項14】
水素の量は、水素の前記量を増やすと前記粒子ビームの強度が高くなるように、また水素の前記量を減らすと前記粒子ビームの強度が低くなるように調整可能である、請求項12に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項15】
請求項12に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項16】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備え、
前記電圧源は、前記粒子ビームの強度を制御するためにRF電圧率を制御するように制御可能である、シンクロサイクロトロン。
【請求項17】
前記粒子源は、電圧を加えて水素を電離し、前記電離プラズマを発生する陰極を備え、前記陰極は外部源によって非加熱状態にされる、請求項16に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項18】
前記RF電圧の高さは、前記高さを高くすると前記粒子ビームの強度が高くなるように、また前記高さを低くすると前記粒子ビームの強度が低くなるように調整可能である、請求項16に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項19】
請求項16に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項20】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源であって、前記RF電圧は最高周波数と最低周波数との間で掃引する、電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備え、
前記粒子源は、前記RF電圧の前記最高周波数から前記RF電圧の前記最低周波数までの減少に近い特定の周波数における前記電離プラズマのパルスを供給するように制御可能である、シンクロサイクロトロン。
【請求項21】
前記粒子加速器は、約135MHzのRF電圧の最高周波数より低い132MHzの前記RF電圧と131MHzの前記RF電圧との間の前記電離プラズマのパルスを供給するように制御可能である、請求項20に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項22】
前記粒子源は、電圧を加えて水素を電離し、前記電離プラズマを発生する陰極を備え、前記陰極は外部源によって非加熱状態にされる、請求項21に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項23】
請求項20に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項24】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備え、
前記粒子源は、前記粒子ビームの強度を制御するために前記電離プラズマのパルスを選択的に出力するように構成される、シンクロサイクロトロン。
【請求項25】
前記RF電圧は、最高周波数から最低周波数まで周期的に掃引し、
前記パルスを選択的に出力するステップは、前記RF電圧の掃引の幾つかではパルスを出力し、前記RF電圧の掃引の他の幾つかではパルスを出力しないステップを含む、請求項24に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項26】
前記RF電圧は、最高周波数から最低周波数まで周期的に掃引し、
前記パルスを選択的に出力するステップは、N(N>1)回の掃引ごとにパルス出力をスキップするステップを含む、請求項24に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項27】
コントローラをさらに備え、前記コントローラは
前記粒子ビームの強度を決定するステップと、
前記決定された強度に基づき前記パルスを選択的に出力するステップとを含む動作を実行する、請求項24に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項28】
請求項24に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項29】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備え、
前記電圧源は、前記粒子ビームの強度を制御するために前記RF電圧の勾配を変化させるように構成可能である、シンクロサイクロトロン。
【請求項30】
請求項29に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項31】
電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源であって、前記電圧源は第1のディーと第2のディーとを備え、前記第1のディー及び前記第2のディーのうちの少なくとも1つは、バイアス電圧が印加される、電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備える、シンクロサイクロトロン。
【請求項32】
前記第1のディーは、第1のバイアス電圧が印加され、前記第2のディーは、第2のバイアス電圧が印加され、前記第1のバイアス電圧は前記第2のバイアス電圧と異なる、請求項31に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項33】
前記第1のディーは、前記バイアス電圧が印加され、前記第2のディーは、電気的に接地される、請求項31に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項34】
請求項31に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
陽子は、実質的に前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に直接出力される、陽子治療システム。
【請求項35】
パルスからなる粒子ビームを出力するシンクロサイクロトロンと、
前記粒子ビームを照射ターゲットの少なくとも一部に走査する前記シンクロサイクロトロン用の走査システムであって、前記走査システムは前記粒子ビームを前記粒子ビームの長手方向に対して角度を付けた2次元内で走査するように構成され、前記粒子ビームは前記照射ターゲットにスポットを形成する走査システムとを備え、
前記シンクロサイクロトロンは、走査時に前記パルスの幅を変化させて前記照射ターゲット上の異なるスポットの間で前記粒子ビームの強度を変化させるように制御可能である、粒子治療システム。
【請求項36】
前記シンクロサイクロトロンは、粒子源を備え、前記粒子源は、幾つかの期間にわけて作動させることで幅が変化するパルスを発生するように制御可能である、請求項35に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項37】
前記シンクロサイクロトロンは、低い電圧と高い電圧との間で掃引するように構成され、前記電圧の掃引の速度は、前記パルスの幅を変化させるように制御可能である、請求項35に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項38】
前記シンクロサイクロトロンは、ガスからプラズマ流を発生するための第1及び第2の陰極を備える粒子源を具備し、粒子ビームの前記パルスは前記プラズマ流から引き出すことができ、
前記ガスは、水素と25%未満の希ガスとの組み合わせを含む、請求項35に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項39】
ガスは、水素と10%未満の希ガスとの組み合わせを含む、請求項35に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項40】
ガスは、水素とヘリウムとの組み合わせを含む、請求項35に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項41】
前記ヘリウムは、ガスの組成の25%未満を構成する、請求項40に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項42】
前記ヘリウムは、ガスの組成の10%未満を構成する、請求項41に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項43】
前記走査システムは、
前記粒子ビームを前記照射ターゲットの少なくとも一部の2次元内で走査するように前記粒子ビームの方向に影響を及ぼす磁石と、
前記粒子ビームを前記照射ターゲットに出力する前に前記ビームのエネルギーを変えるデグレーダであって、前記シンクロサイクロトロンに対して前記磁石のビーム下流にある、デグレーダとを備える、請求項35に記載の粒子治療システム。
【請求項44】
前記シンクロサイクロトロンは、
高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から加速するための電圧源であって、前記空洞は前記プラズマ柱から加速された粒子が前記空洞内で軌道上を移動させる磁場を有する、電圧源と、
前記プラズマ柱から加速された前記粒子を受け取り、前記受け取った粒子を前記空洞から出力する引き出しチャネルと、
前記空洞内に磁場バンプを設け、それにより前記プラズマ柱から加速される前記粒子の連続的な軌道を変化させ、最終的に、粒子が前記引き出しチャネルに出力されるようにする、再生器とを備え、
前記磁場は、4テスラ(T)から20Tの間であり、磁場バンプは、最大で2テスラである、請求項35に記載の粒子治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本明細書では、2012年9月28日に出願した米国仮出願第61/707466号明細書の優先権が主張される。米国仮出願第61/707466号明細書の内容は、参照により本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的に、粒子治療システムで使用される陽子またはイオンビームなどの、粒子ビームの強度の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
粒子治療システムは、加速器を使用して、腫瘍などの苦痛を治療するための粒子ビームを発生する。動作時に、粒子ビームは、粒子加速器の空洞内で加速され、引き出しチャネルを通して空洞から取り出される。粒子ビームを集束し、患者の適切な領域に照射するために様々な要素が使用される。
【0004】
患者が異なれば、粒子の必要な線量及び線量率も異なり得る。患者に照射される線量及び線量率は、粒子ビームの強度の関数である。したがって、粒子ビームの強度を制御することで、線量及び線量率の制御が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第13/907601号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/948662号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/948359号明細書
【特許文献4】米国特許第7728311号明細書
【特許文献5】米国特許出願第12/275103号明細書
【特許文献6】米国特許出願第13/916401号明細書
【特許文献7】米国仮出願第60/760788号明細書
【特許文献8】米国特許出願第11/463402号明細書
【特許文献9】米国仮出願第60/850565号明細書
【特許文献10】米国仮出願第61/707515号明細書、名称「ADJUSTING ENERGY OF A PARTICLE BEAM」
【特許文献11】米国仮出願第61/707548号明細書、名称「ADJUSTING COIL POSITION」
【特許文献12】米国仮出願第61/707572号明細書、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM USING MAGNETIC FIELD FLUTTER」
【特許文献13】米国仮出願第61/707590号明細書、名称「MAGNETIC FIELD REGENERATOR」
【特許文献14】米国仮出願第61/707704号明細書、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM」
【特許文献15】米国仮出願第61/707624号明細書、名称「CONTROLLING PARTICLE THERAPY」
【特許文献16】米国仮出願第61/707645号明細書、名称「CONTROL SYSTEM FOR A PARTICLE ACCELERATOR」
【特許文献17】米国仮出願第60/991454号明細書
【特許文献18】米国特許第8003964号明細書
【特許文献19】米国特許第7208748号明細書
【特許文献20】米国特許第7402963号明細書
【特許文献21】米国特許出願第13/148000号明細書
【特許文献22】米国特許出願第11/937573号明細書
【特許文献23】米国特許出願第11/187633号明細書
【特許文献24】米国仮出願第60/590089号明細書
【特許文献25】米国特許出願第10/949734号明細書
【特許文献26】米国仮出願第60/590088号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。粒子源は、粒子ビームの強度を制御するために電離プラズマのパルス幅を制御するように構成される。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0007】
粒子源は、制御信号に応答して一定期間作動するように構成されるものとしてよく、粒子源は、作動すると電離プラズマのパルスを発生する。粒子源は、電離プラズマのパルスを周期的に発生するように構成され得る。粒子ビームは、約0.1μsから100μs(例えば、1μsから10μs)の持続時間で出力され得る。粒子ビームは、約2ms毎に約0.1μsから100μs(例えば、1μsから10μs)の持続時間で出力され得る。粒子源は、電圧を加えて水素を電離し、電離プラズマを発生するための陰極を含み得る。陰極は、外部源によって非加熱状態にされ得る。
【0008】
一例において、陽子治療システムは前述のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンが取り付けられたガントリーを含み、ガントリーは、患者の位置に関して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0009】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源であって、電圧を加えて水素を電離し、電離プラズマを発生するための陰極を含む粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。陰極に関連する電圧は、粒子ビームの強度を制御できるように制御することができる。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0010】
陰極は、外部源によって非加熱状態にされ得る。電圧は、電圧を上げると粒子ビームの強度が高くなるように、また電圧を下げると粒子ビームの強度が低くなるように制御可能であるものとしてよい。
【0011】
一例において、陽子治療システムは前述のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンが取り付けられたガントリーを含む。ガントリーは、患者の位置に対して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0012】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源であって、電圧を加えて水素を電離し、電離プラズマを発生するための陰極を含む粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。粒子源は、粒子ビームの強度を制御するために陰極間の水素の量を調整するように制御可能である。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0013】
陰極は、外部源によって非加熱状態にされ得る。水素の量は、水素の量を増やすと粒子ビームの強度が高くなるように、また水素の量を減らすと粒子ビームの強度が低くなるように調整可能であるものとしてよい。
【0014】
一例において、陽子治療システムは前述のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンが取り付けられたガントリーを含む。ガントリーは、患者の位置に対して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0015】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。電圧源は、粒子ビームの強度を制御するために、RF電圧率を制御するように制御可能である。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0016】
粒子源は、電圧を加えて水素を電離し、電離プラズマを発生させるための陰極を含むことができ、陰極は、外部源によって非加熱状態にされる。RF電圧の高さは、高くすると粒子ビームの強度が高くなるように、また高さを低くすると粒子ビームの強度が低くなるように調整可能であるものとしてよい。
【0017】
一例において、陽子治療システムは前述のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンが取り付けられたガントリーを含む。ガントリーは、患者の位置に対して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0018】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源であって、RF電圧は最高周波数と最低周波数との間で掃引する、電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。粒子源は、RF電圧の最高周波数からRF電圧の最低周波数までの減少に近い特定の周波数において、電離プラズマのパルスを供給するように制御可能である。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0019】
粒子加速器は、約135MHzのRF電圧の最高周波数より低い132MHzのRF電圧と131MHzのRF電圧との間の電離プラズマのパルスを供給するように制御可能であるものとしてよい。粒子源は、電圧を加えて水素を電離し、電離プラズマを発生するための陰極を含むことができる。陰極は、外部源によって非加熱状態にされ得る。
【0020】
一例において、陽子治療システムは前述のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンが取り付けられたガントリーを含む。ガントリーは、患者の位置に対して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0021】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。粒子源は、粒子ビームの強度を制御するために電離プラズマのパルスを選択的に出力するように構成される。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0022】
RF電圧は、最高周波数から最低周波数まで周期的に掃引し得る。パルスを選択的に出力するステップは、RF電圧掃引の幾つかではパルスを出力し、RF電圧掃引の他の幾つかではパルスを出力しない、ステップを含み得る。パルスを選択的に出力するステップは、N(N>1)回の掃引ごとにパルス出力をスキップするステップを含み得る。
【0023】
シンクロサイクロトロンは、粒子ビームの強度を決定するステップと、決定された強度に基づきパルスを選択的に出力するステップとを含む動作を実行するためのコントローラを含み得る。
【0024】
一例において、陽子治療システムは前述のシンクロサイクロトロン、及びシンクロサイクロトロンが取り付けられたガントリーを含む。ガントリーは、患者の位置に対して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0025】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。電圧源は、粒子ビームの強度を制御するためにRF電圧の勾配を変化させるように構成可能である。
【0026】
一例において、陽子治療システムは、前述のシンクロサイクロトロンと、シンクロサイクロトロンが取り付けられているガントリーとを含む。ガントリーは、患者の位置に対して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0027】
一例において、シンクロサイクロトロンは、電離プラズマのパルスを空洞に送り込むための粒子源と、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から外部に加速するための電圧源であって、電圧源は、第1のディーと第2のディーとを含み、第1のディー及び第2のディーのうちの少なくとも1つは、バイアス電圧が印加される、電圧源と、空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを含む。この例示的なシンクロサイクロトロンは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0028】
第1のディーは、第1のバイアス電圧が印加され、第2のディーは、第2のバイアス電圧が印加されるものとしてよく、第1のバイアス電圧は、第2のバイアス電圧とは異なる。第1のディーは、バイアス電圧が印加され、第2のディーは、電気的に接地されるものとしてよい。
【0029】
一例において、陽子治療システムは、前述のシンクロサイクロトロンと、シンクロサイクロトロンが取り付けられているガントリーとを含む。ガントリーは、患者の位置に対して回転可能である。陽子は、実質的にシンクロサイクロトロンから患者の位置に直接出力される。
【0030】
一例において、粒子治療システムは、パルスからなる粒子ビームを出力するシンクロサイクロトロンと、粒子ビームを照射ターゲットの少なくとも一部に走査するシンクロサイクロトロン用の走査システムとを含み得る。走査システムは、粒子ビームを粒子ビームの長手方向に対して角度を付けた(例えば、垂直な)2次元内で走査するように構成され得る。粒子ビームは、照射ターゲットにスポットを形成する。シンクロサイクロトロンは、走査時にパルスの幅を変化させて照射ターゲット上の異なるスポットの間で粒子ビームの強度を変化させるように制御可能である。粒子治療システムの実施例は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0031】
シンクロサイクロトロンは、粒子源を含むことができ、粒子源は、幾つかの期間にわけて作動させることで幅が変化する粒子ビームのパルスを発生するように制御可能であるものとしてよい。シンクロサイクロトロンは、低電圧と高電圧との間で掃引するように構成され、電圧掃引率(または掃引速度)は、パルスの幅を変化させるように制御可能であるものとしてよい。粒子源は、ガスからプラズマ流を生成するための第1及び第2の陰極を含むことができる。粒子ビームのパルスは、プラズマ流から引き出すことができる。ガスは、水素と25%未満の希ガスとの組み合わせまたは水素と10%未満の希ガスとの組み合わせとすることができる。ガスは、水素とヘリウムとの組み合わせであってもよい。ヘリウムは、ガスの組成のうちの25%未満であってもよい。別の例では、ヘリウムは、ガスの組成のうちの10%未満であってもよい。
【0032】
走査システムは、粒子ビームを照射ターゲットの少なくとも一部に渡って2次元内で走査するように粒子ビームの方向に影響を及ぼす磁石と、粒子ビームを照射ターゲットに出力する前にビームのエネルギーを変えるデグレーダとを含み得る。デグレーダは、シンクロサイクロトロンに対して磁石のビーム下流にあるものとしてよい。
【0033】
シンクロサイクロトロンは、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から加速するための電圧源であって、空洞は、プラズマ柱から加速された粒子に、空洞内で軌道上を移動させる磁場を有する、電圧源と、プラズマ柱から加速された粒子を受け取り、受け取った粒子を空洞から出力する引き出しチャネルと、空洞内に磁場バンプを設け、それによりプラズマ柱から加速される粒子の連続的な軌道を変化させ、最終的に、粒子が引き出しチャネルに出力されるようにする、再生器とを備えることができる。磁場は、4テスラ(T)から20Tの間(または6Tから20Tの間)とすることができ、また磁場バンプは、最大で2テスラであってよい。
【0034】
発明の概要の節で説明されているものを含む、本開示で説明されている特徴のうちの2つまたはそれ以上(例えば、粒子ビームの強度を制御する2つまたはそれ以上の方法)を組み合わせることで、本明細書では具体的に説明されていない実施例を形成することができる。
【0035】
本明細書で説明されている様々なシステム、またはその一部の制御は、1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体に格納され、1つまたは複数の処理デバイス上で実行可能である命令を含むコンピュータプログラム製品を介して実装され得る。本明細書で説明されているシステム、またはその一部は、1つまたは複数の処理デバイス及び述べられている機能の制御を実装する実行可能命令を格納するためのメモリを含み得る装置、方法、または電子システムとして実装され得る。
【0036】
1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付した図面及び以下の説明で記述される。他の特徴、目的、及び利点は、説明と図面、さらには特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】例示的なシンクロサイクロトロンの構成要素の分解斜視図である。
【
図3】例示的なシンクロサイクロトロンの断面図である。
【
図4】例示的なシンクロサイクロトロンの断面図である。
【
図5】例示的なシンクロサイクロトロンの断面図である。
【
図6】例示的なシンクロサイクロトロンの斜視図である。
【
図7】例示的なリバースボビン及び巻線の一部の断面図である。
【
図8】例示的なケーブルインチャネル複合導体の断面図である。
【
図10】例示的なディープレート及び例示的なダミーディーの斜視図である。
【
図12】ボールトを備える例示的な治療室の斜視図である。
【
図13】例示的な粒子加速器に対して位置決めされた患者を示す図である。
【
図14】治療室内の例示的な内部ガントリーの中に位置決めされた患者を示す図である。
【
図17】例示的な電圧掃引、引き出し窓、及び粒子源パルス幅を示すグラフである。
【
図18】本明細書で説明されている粒子治療システムと共に使用され得る例示的な能動的及びダミーディーの斜視図である。
【
図21】例示的な走査システムにおいて使用され得る例示的な走査磁石の正面図である。
【
図22】例示的な走査システムにおいて使用され得る例示的な走査磁石の斜視図である。
【
図23】例示的な走査システムにおいて使用され得る例示的な飛程変調装置の斜視図である。
【
図24】飛程変調装置からビーム経路の中に入る/外に出るプレートの運動を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
様々な図面内の類似の参照符号は、類似の要素を示す。
【0039】
[概要]
本明細書では、陽子またはイオン治療システムなどの、例示的なシステムにおいて使用するための粒子加速器の一例について説明する。システムは、ガントリー上に取り付けられた粒子加速器−−この例では、シンクロサイクロトロン−−を含む。ガントリーは、以下に詳述するように、加速器を患者の位置の周りに回転させることを可能にする。幾つかの実施例では、ガントリーは鋼製であり、患者の両側に配設された2つの軸受それぞれに回転するように取り付けられた2つの脚部を有する。粒子加速器は、患者が横たわる治療領域を跨設するに十分に長い鉄骨トラスによって支持されており、鉄骨トラスは、その両端においてガントリーの回転式脚部に安定して取り付けられている。患者の周りをガントリーが回転する結果、粒子加速器も回転する。
【0040】
例示的な一実施例において、粒子加速器(例えば、シンクロサイクロトロン)は、磁場(B)を発生する電流を伝導するための超電導コイルを保持する低温保持装置を含む。この例では、低温保持装置は、コイルを超電導温度、例えば4ケルビン(K)に維持するために液体ヘリウム(He)を使用する。磁気ヨークは、低温保持装置に隣接し(例えば、その周囲にあり)、粒子が加速される空洞を画成する。低温保持装置は、ストラップなどを通じて磁気ヨークに取り付けられる。
【0041】
例示的な一実施例において、粒子加速器は、プラズマ柱を空洞に供給するために粒子源(例えば、ペニングイオンゲージ−−PIG源)を含む。水素ガスは電離されてプラズマ柱を生成する。電圧源は、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から加速する。指摘されているように、この例では、粒子加速器はシンクロサイクロトロンである。したがって、粒子の速度が加速中に増加するにつれて、粒子に対する相対論的効果(例えば、粒子質量が増加する)を考慮してRF電圧が一定範囲の周波数にわたって掃引され、粒子の軸方向集束を維持するために、発生する磁場を減少させる。コイルによって発生した磁場により、プラズマ柱から加速された粒子は空洞内の軌道上で加速する。磁場再生器は、空洞の外縁の近くに位置し、この配置で既存の磁場を調整するために使用することができ、これにより、プラズマ柱から加速された粒子の連続的な軌道の位置を変更し、最終的に、粒子がヨークを通る引き出しチャネルに出力され得る。引き出しチャネルは、プラズマ柱から加速された粒子を受け取り、受け取った粒子を空洞から出力する。引き出しチャネルの内側と外側の両方の要素は粒子ビームを成形し、集束する。
【0042】
粒子ビームの強度を選択するために制御システムが使用され得る。例えば、粒子加速器の1つまたは複数のパラメータまたは特徴は、選択された強度を有する粒子ビームを出力するように制御されるか、または他の何らかの形で調整され得る。選択された強度は、一定でも可変でもよい。本明細書で説明されている例示的なシステムは、粒子ビームの強度を制御する、例えば、患者に照射される粒子ビームの線量及び線量率を変化させるための技術を使用する。これらの技術の説明を以下で行い、その後、これらの技術が実装され得る例示的な粒子治療システムについて説明する。
【0043】
例示的な一技術において、粒子ビームの強度は、プラズマ柱から引き出された粒子パルスのパルス持続時間を変化させることによって制御され得る。より詳しくは、RF電圧は開始(例えば、最高)周波数(例えば、135MHz)から終了(例えば、最低)周波数(例えば、90MHz)まで掃引する。粒子源は、RF掃引において一定期間作動されて、プラズマ柱を発生する。例えば、幾つかの実施例では、粒子源は、一定期間にわたって132MHzで作動する。その期間に、粒子は、RF電圧によって生じる電場によってプラズマ柱から引き出される。引き出された粒子は、RF電圧周波数が低下するにつれ軌道内で外向きに加速し、減少する磁場と歩調を合わせ、粒子がある時間(例えば、約600マイクロ秒)経過した後に掃引されるまで相対論的質量を増やす。粒子源が作動されている持続時間を変えることで、周波数掃引においてプラズマ柱から引き出される粒子のパルスの幅が変化する。パルス幅を増やすと、引き出される粒子の量が増加し、したがって、粒子ビームの強度が増大する。パルス幅を減らすと、引き出される粒子の量が減少し、したがって、粒子ビームの強度が減少する。
【0044】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、粒子源内の陰極に印加される電圧の変化させることによって制御され得る。この点で、プラズマ柱は、粒子源の2つの陰極に電圧を印加することによって、また陰極の付近に水素(H
2)などのガスを出力することによって、生成される。陰極に電圧を印加すると、水素が電離し、背景磁場が電離された水素をコリメートして、それによりプラズマ柱が生成される。陰極電圧を上げると、プラズマ柱内のイオンの量が増加し、陰極電圧を下げると、プラズマ柱内のイオンの量が減少する。プラズマ柱内に存在するイオンが多いと、RF電圧掃引で引き出されるイオンが多くなり、これにより、粒子ビームの強度が増大し得る。プラズマ柱内に存在するイオンが少ないと、RF電圧掃引で引き出されるイオンが少なくなり、これにより、粒子ビームの強度が減少し得る。
【0045】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、粒子源に供給される水素の量を変化させることによって制御され得る。例えば、粒子源に供給される水素の量を増やすと、陰極電圧に応答してプラズマ柱内に電離が生じる機会が増える。逆に、粒子源に供給される水素の量を減らすと、陰極電圧に応答してプラズマ柱内に電離が生じる機会が少なくなる。上で指摘されているように、プラズマ柱内に存在する粒子が多いと、RF電圧掃引で引き出される粒子が多くなり、これにより、粒子ビームの強度が増大し得る。プラズマ柱内に存在する粒子が少ないと、RF電圧掃引で引き出される粒子が少なくなり、これにより、粒子ビームの強度が減少し得る。
【0046】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、プラズマ柱から粒子を引き出すために使用されるRF電圧の高さを変化させることによって制御され得る。例えば、RF電圧の高さを高くすると、プラズマ柱から引き出される粒子が多くなる。逆に、RF電圧の高さを低くすると、プラズマ柱から引き出される粒子が少なくなる。引き出される粒子が多いと、粒子ビームは強度を増す。逆に、引き出される粒子が少ないと、粒子ビームは強度を減らす。
【0047】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、粒子源が作動される周波数掃引において、したがって粒子が引き出される期間に、開始時間を変化させることによって制御され得る。より具体的には、粒子がプラズマ柱から引き出され得る周波数掃引の期間に有限な窓がある。例示的な一実施例において、周波数は実質的に一定の速度で約135MHzから約90MHzまで掃引する。この例では、粒子は、それぞれ、開始周波数から終了周波数まで、例えば、132MHzから131MHzまでの下向きの勾配のほぼ始まりの時点で引き出され、粒子源は、一定期間、例えば、約0.1μsから100μsまで(または例えば、1〜10μsから、約40μsまで)の期間にわたって作動され得る。粒子源が作動される周波数を変えるステップは、粒子ビームから引き出される粒子の量、したがって粒子ビームの強度に影響を及ぼす。
【0048】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度を制御するためにパルスブランキングが使用され得る。この点で、周波数掃引は、1秒間に何回も(例えば、500回/秒)繰り返される。粒子源は、それぞれの周波数掃引(例えば、2ms毎)に作動させることが可能である。パルスブランキングは、周波数掃引毎に粒子源を作動させないことによって粒子ビームから引き出される粒子の数を減らす。最大のビーム強度を達成するために、粒子源は、周波数掃引毎に作動され得る。ビーム強度を低減するために、粒子源は、頻度を下げて、例えば、掃引2回、3回、100回に1回の割合で作動され得る。
【0049】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、RF電圧を粒子加速器空洞に印加するために使用される1つまたは複数のディーにDCバイアス電圧を印加することによって制御され得る。この点で、粒子加速器は、磁石構造体によって囲まれている空間の周りで回転しているときに陽子が加速される空洞を囲む2つの半円面を有する中空金属構造体である能動的ディープレート(または単に「ディー」)を含む。能動的ディーは、高周波伝送路の終端部に印加されるRF信号によって駆動され、電場を空洞内に発生させる。RF場は、加速された粒子ビームが幾何学的中心からの距離を増大させるにつれ時間的に変化させられる。「ダミー」ディーは、能動的ディーの露出された縁の近くに間隔をあけて置かれるビームに対するスロットを持つ矩形の金属壁を備える。幾つかの実施例では、ダミーディーは、真空槽及び磁気ヨークに接地される。
【0050】
強磁場の存在下でRF電圧を印加すると、マルチパクタリングが引き起こされ、RF場の大きさが低下し、場合によっては、電気的短絡が生じ得る。マルチパクタリングの量を低減し、それによって、RF場を維持するために、DCバイアス電圧が能動的ディーに印加され、幾つかの実施例では、ダミーディーにも印加され得る。幾つかの実施例では、能動的ディーとダミーディーとの間のバイアス電圧差は、マルチパクタリングを低減し、それによってビーム強度を高めるように制御され得る。例えば、幾つかの実施例では、能動的ディーにかかるDCバイアス電圧とダミーディーにかかるDCバイアス電圧との間に50%の差異があり得る(例えば、−1.9KVのDCバイアス電圧がダミーディーに印加され、−1.5KVのDCバイアス電圧が能動的ディーに印加され得る)。
【0051】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、RF電圧が掃引される速度(例えば減少の勾配)を制御することによって制御され得る。勾配を減少させることによって、粒子がプラズマ柱から引き出され得る時間を増やすことが可能である。その結果、引き出され得る粒子が多くなり、それにより、粒子ビームの強度が増大し得る。この逆も成り立ち、例えば勾配を大きくすることによって、粒子がプラズマ柱から引き出され得る時間の長さは短縮され、その結果、粒子ビーム強度が低下し得る。
【0052】
粒子加速器内の粒子ビームの強度を制御するための前述の技術は、単一の粒子加速器において個別に使用され得るか、またはこれらの技術のうちの2つまたはそれ以上が、単一の粒子加速器において適切に組み合わせて使用され得る。これらの技術は、粒子治療システムと共に使用することに限定されず、むしろ、任意の適切な粒子加速器で使用され得る。
【0053】
前述の技術が使用され得る粒子治療システムの一例を以下に提示する。
【0054】
[例示的な粒子治療システム]
図1に表すように、荷電粒子線治療システム500は、ビーム発生粒子加速器502を備えており、ビーム発生粒子加速器502の重量及び大きさは、ビーム発生粒子加速器502の出力が加速器ハウジングから患者50に向かう直線方向に(すなわち、実質的に実質的に直接)方向づけられている状態において、向けられた出力を有する回転式ガントリー504に取り付け可能とされる大きさである。
【0055】
幾つかの実施例では、鋼製ガントリー504は、2つの脚部508、510を有しており、2つの脚部508、510は、患者の両側に配設された2つの軸受512、514それぞれに回転するように取り付けられている。ビーム発生粒子加速器502は、患者が横たわる治療領域518を跨設するに十分に長い(患者の所望のターゲット領域をビームライン上に維持した状態で空間内において背の高いヒトを完全に回転させることができるように、例えば当該背の高いヒトの身長の2倍の長さとされる)鉄骨トラス516によって支持されており、その両端においてガントリーの回転式脚部に安定に取り付けられている。
【0056】
幾つかの実施例では、ガントリー504の回転が360°未満の範囲520、例えば、約180°に制限され、これにより、治療システムを収納するボールト524の壁から患者治療領域内部に至るまで床522を延在させることができる。また、ガントリー504の回転範囲520が制限されることによって、患者治療領域の外側に居る人々を放射線から遮蔽するための壁のうち幾つかの壁の必要な厚さを薄くすることができる。ガントリー504の回転範囲520をの180°とすれば、すべての治療アプローチ角に対応するのに十分であるが、移動範囲を拡大することは優位である。例えば、回転範囲520は、180°〜330°としても、依然として治療のための床面積に対するクリアランスを確保することができる。
【0057】
ガントリー504の水平回転軸線532は、患者と療法士とが治療システムをインタラクティブに操作する場所の床より公称1メートル上方に配置されている。この床は、荷電粒子線治療システム500を遮蔽しているボールト524の最下床より約3メートル上方に位置決めされている。ビーム発生粒子加速器502は、治療ビームを回転軸線の下方から照射するために高床の下方において旋回可能とされる。患者用カウチは、ガントリー504の回転軸線532に対して略平行とされる水平面内において移動及び回転する。カウチは、このような構成によって水平面内において約270°の範囲534にわたって回転可能とされる。ガントリー504及び患者の回転範囲520、534と自由度との組み合わせによって、療法士は、ビームについての任意のアプローチ角を実質的に選択することができる。必要に応じて、患者を反対の向きでカウチに載置することによって、想定しうるすべての角度が利用可能となる。
【0058】
幾つかの実施例では、ビーム発生粒子加速器502は、超高磁界超電導電磁構造体を有しているシンクロサイクロトロンを利用する。所定の運動エネルギーを具備する荷電粒子の曲率半径は、当該荷電粒子に印加される磁場の増大に正比例して小さくなるので、超高磁界磁場超電導磁気構造体を利用することによって、加速器を小型かつ軽量にすることができる。シンクロサイクロトロンは、回転角度が一様とされる磁場であって、半径が大きくなるに従って強度が低下する磁場を利用する。このような磁場形状は、磁場の規模に関係なく実現されるので、シンクロサイクロトロン内で利用可能とされる磁場の強度(ひいては、固定された半径において結果として得られる粒子エネルギー)についての上限は理論上存在しない。
【0059】
非常に高い磁場の存在下において、超電導体はその超電導特性を失う。非常に高い磁場を実現するために、高性能な超電導線からなる巻線が利用される。
【0060】
超電導体は、一般に、その超電導特性が得られる低温状態に至るまで冷却される必要がある。本明細書で説明されている幾つかの実施例では、超電導コイル巻線を絶対零度近傍の温度に冷却するために、冷凍機が利用される。冷凍機を利用することによって、複雑性及びコストが低減される。
【0061】
シンクロサイクロトロンは、ビームが患者に対して直接生成されるようにガントリーに支持されている。ガントリーは、患者の体内の点または患者の近傍の点(アイソセンター540)を含む水平回転軸線を中心としてサイクロトロンを回転させることができる。水平回転軸線に対して平行とされる分割式トラスが、サイクロトロンをその両側で支持している。
【0062】
ガントリーの回転範囲は、制限されているので、アイソセンターを中心とする広い領域内に患者支持領域を収容することができる。アイソセンターを中心として広範囲にわたって床を延在させることができるので、患者支持台は、アイソセンターを通過する垂直軸線542に対して相対的に移動するように、かつ垂直軸線542を中心として回転するように位置決めされ、ガントリーの回転と患者支持台の移動及び回転との組み合わせによって、患者の任意の部位に向けて任意の角度でビームを方向づけることができる。2つのガントリーアームは、背の高い患者の身長の2倍を超える長さで離隔されているので、高床の上方に位置する水平面内において、患者を乗せたカウチを回転及び並進運動させることができる。
【0063】
ガントリーの回転角度を制限することによって、治療室を囲む壁のうちの少なくとも1つの壁の厚さを低減することができる。一般にコンクリートから構成された厚肉の壁によって、治療室の外に居るヒトは放射線から防護される。陽子ビームを阻止するための下流側の壁は、同等のレベルの防護を実現するために、治療室の反対側の壁の約2倍の厚さとされる場合がある。ガントリーの回転を制限することによって、治療室を3つの側面においてアースグレード(earth grade)より低く設定することができる一方、占有領域を最も薄肉の壁に隣接させることができるので、治療室を建築するコストを低減することができる。
【0064】
図1に示されている例示的な実施例において、超電導シンクロサイクロトロン502は、シンクロサイクロトロンの磁極間隙において8.8テスラのピーク磁場で動作する。シンクロサイクロトロンは、250MeVのエネルギーを有する陽子ビームを発生する。他の実施例では、場の強度は、6から20テスラまたは4から20テスラの範囲内とすることが可能であり、陽子エネルギーは、150から300MeVの範囲内とすることが可能である。
【0065】
この例で説明されている放射線治療システムは陽子放射線治療に使用されるが、同じ原理及び詳細は、重イオン(イオン)治療システムで使用するための類似のシステムにおいて適用され得る。
【0066】
図2、
図3、
図4、
図5、及び
図6に示されているように、例示的なシンクロサイクロトロン10(例えば、
図1の502)は、粒子源90を収容する磁石システム12、高周波駆動システム91、及びビーム引き出しシステム38を含む。磁石システムによって確立される磁場は、環状超電導コイル40、42の分割されたペアと成形された強磁性(例えば、低炭素鋼)磁極面44、46のペアとの組み合わせを使用して、内部に存在する陽子ビームの集束を維持するのに適切な形状を有する。
【0067】
2つの超電導磁気コイルは、共通軸47を中心とし、この軸に沿って相隔てて並ぶ。
図7及び
図8に示されているように、コイルは、撚り合わせたケーブルインチャネル導体形態で配設される直径0.8mmのNb
3Sn系超電導線48(最初に、銅シースによって囲まれているニオブスズコアを備える)から形成される。7本の個別の線がまとめられてケーブルにされた後、これらは加熱され、ワイヤ状の最終(脆い)超電導体を形成する反応を引き起こす。材料が反応した後、ワイヤは銅チャネル(外径3.18×2.54mm及び内径2.08×2.08mm)内にハンダ付けされ、絶縁体52(この例では、ガラス繊維織布)で覆われる。次いで、ワイヤ53を収容する銅チャネルがコイル状に巻き取られ、これは8.55cm×19.02cmの矩形の断面を有し、26の層を有し、層毎に49回の巻き数を有する。次いで、この巻きコイルは、エポキシ化合物で真空含浸される。完成したコイルは、環状ステンレスリバースボビン56上に取り付けられる。ヒーターブランケット55は間隔をあけて巻線の層内に入れられ、磁石クエンチが生じた場合にアセンブリを保護する。
【0068】
次いで、コイル全体を銅板で覆って熱伝導性及び機械的安定性を付与し、次いで、追加エポキシ層内に収容する。コイルの事前圧縮は、ステンレス製リバースボビンを加熱し、コイルをリバースボビン内に嵌め込むことによって行われ得る。リバースボビンの内径は、質量全体が4Kまで冷却されたときに、リバースボビンがコイルと接触したままになり、ある程度の圧縮をもたらすように選択される。ステンレス製のリバースボビンを約50℃に加熱し、コイルを100ケルビンで嵌合すると、これが達成され得る。
【0069】
コイルの幾何学的形状は、コイルを矩形リバースボビン56内に取り付けて、コイルが通電されたときに発生する歪みを起こす力に抗して作用する復元力60を与えることによって維持される。
図5に示されているように、コイル位置は、一組の高温−低温支持ストラップ402、404、406を使用して磁石ヨーク及び低温保持装置に対して維持される。低温質量を細いストラップで支持することにより、剛体支持システムによって低温質量に与えられる熱漏洩が低減される。ストラップは、磁石が搭載された状態でガントリーを回転するときにコイルにかかる変化する重力に耐えるように構成される。これらは、重力と、磁気ヨークに対して完全対称位置から摂動したときにコイルによって生じる大きな偏心力との複合効果に耐える。それに加えて、リンクは、位置が変わった場合にガントリーが加減速する際にコイルに与えられる動的な力を低減する働きをする。それぞれの高温−低温支持体は、1つのS2ガラス繊維リンクと1つの炭素繊維リンクとを含む。炭素繊維リンクは、高温のヨークと中間温度(50〜70K)との間のピン上で支持され、S2ガラス繊維リンク408は、中間温度ピン及び低温質量に取り付けられたピン上で支持される。それぞれのリンクは長さ5cm(ピン中心からピン中心までの間)、幅17mmである。リンクの厚さは、9mmである。それぞれのピンは、高張力ステンレス鋼から作られ、直径は40mmである。
【0070】
図3を参照すると、半径の関数としての場の強度プロファイルは、大部分がコイルの幾何学的形状及び磁極面の形状の選択によって決定され、透磁性ヨーク材料の磁極面44、46は、磁場の形状を微調整して加速時に粒子ビームの収束を確実に保つように、起伏が付けられ得る。
【0071】
超電導コイルは、限定された一組の支持点71、73を除き、コイル構造体の周りに自由空間を設ける真空にされた環状アルミニウムまたはステンレス製低温保持槽70の内側にコイルアセンブリ(コイル及びボビン)を封じ込めることによって絶対零度近くの温度(例えば、約4ケルビン)に維持される。代替的バージョン(
図4)において、低温保持装置の外壁は、低炭素鋼で作られ、磁場に対する追加の帰還磁路をもたらすことができる。
【0072】
幾つかの実施例では、絶対零度近くの温度は、1つの単段ギフォードマクマホン冷凍機と3つの2段ギフォードマクマホン冷凍機とを使用して達成され、維持される。それぞれの2段冷凍機は、ヘリウム蒸気を液体ヘリウムに再凝縮する凝縮器に取り付けられた第2段低温端部を有する。冷凍機のヘッドには、圧縮機から圧縮ヘリウムが供給される。単段ギフォードマクマホン冷凍機は、電流を超電導巻線に供給する高温(例えば、50〜70ケルビン)のリード線を冷却するように構成される。
【0073】
幾つかの実施例では、絶対零度近くの温度は、コイルアセンブリ上の異なる位置に配置された2つのギフォードマクマホン冷凍機72、74を使用して達成され、維持される。それぞれの冷凍機は、コイルアセンブリと接触する低温端部76を有する。冷凍機のヘッド78には、圧縮機80から圧縮ヘリウムが供給される。他の2つのギフォードマクマホン冷凍機77、79は、電流を超電導巻線に供給する高温(例えば、60〜80ケルビン)のリード線を冷却するように構成される。
【0074】
コイルアセンブリ及び低温保持槽は、ピルボックス形状の磁石ヨーク82の2つの半分81、83内に取り付けられ、完全に封じ込められる。この例では、コイルアセンブリの内径は、約74.6cmである。鉄ヨーク82は、帰還磁束84に対する経路となり、磁極面44、46の間の容積部86を磁気遮蔽して外部からの磁気的影響がその容積部内の磁場の形状を摂動するのを防ぐ。ヨークは、加速器の付近の漂遊磁場を減少させる働きもする。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、漂遊磁場を低減する能動的帰還システムを有するものとしてよい。能動的帰還システムの一例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、2013年5月31日に出願した米国特許出願第13/907,601号で説明されている。能動的帰還システムにおいて、本明細書で説明されている比較的大きな磁気ヨークは、磁極片と称される、より小さな磁気構造体で置き換えられる。超電導コイルは、本明細書で説明されている主コイルの反対側に電流を流し、磁気帰還をもたらし、それによって、漂遊磁場を低減する。
【0075】
図3及び
図9に示されているように、シンクロサイクロトロンは、磁気構造体82の幾何学的中心92の近くに配置されているペニングイオンゲージ形態の粒子源90を含む。粒子源は、以下に説明されている通りであるか、または粒子源は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/948,662号で説明されている種類のものであってよい。
【0076】
粒子源90は、水素の供給部99からガス管路101及び気体水素を送達する管194を通して供給される。電気ケーブル94は電流源95から電流を運び、磁場200の方向に揃えられた陰極192、190からの電子の放出を刺激する。
【0077】
この例では、放出される電子は、管194から小さな穴を通して出て来るガスを電離し、磁石構造体と1つのダミーディープレート102とによって囲まれた空間の半分にかかる1つの半円形(ディー形状)高周波プレート100によって加速する陽イオン(陽子)の供給部を形成する。遮断された粒子源の場合(その一例は、米国特許出願第11/948,662号で説明されている)、プラズマを収容する管の全部(または実質的な部分)が加速領域で取り除かれ、これにより、比較的高い磁場内でイオンをより高速に加速することができる。
【0078】
図10に示されているように、ディープレート100は、磁石構造体によって囲まれた空間の周りの回転の半分において陽子が加速される空間107を囲む2つの半円形表面103、105を有する中空金属構造体である。空間107内に開いているダクト109は、ヨークを通り、真空ポンプ111が取り付けられ得る外部の場所に延在し、これにより、空間107及び、加速が行われる真空槽119内の空間の残り部分を真空にする。ダミーディー102は、ディープレートの露出されている縁の近くに間隔をあけて並ぶ矩形の金属リングを備える。ダミーディーは、真空槽及び磁気ヨークに接地される。ディープレート100は、高周波伝送路の終端部に印加される高周波信号によって駆動され、電場を空間107内に発生させる。高周波電場は、加速された粒子ビームが幾何学的中心からの距離を増やすにつれ時間に関して変化させられる。高周波電場は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/948,359号、名称「Matching A Resonant Frequency Of A Resonant Cavity To A Frequency Of An Input Voltage」で説明されているように制御され得る。
【0079】
ビームが中央に配置された粒子源から現れて粒子源構造体をクリアし、外向きに螺旋を描き始めると、高い電圧差が高周波プレート上に必要になる。高周波プレートに20,000Vが印加される。幾つかのバージョンでは、8,000から20,000ボルトが高周波プレートに印加され得る。この高い電圧を駆動するために必要な電力を低減するために、磁石構造体は、高周波プレートと接地との間の静電容量を減らすように構成される。これは、高周波構造から外側ヨーク及び低温保持装置ハウジングまで十分な間隔をあけて穴を形成し、磁極面の間に十分な空間を確保することによって行われる。
【0080】
ディープレートを駆動するこの高電圧の交流電位は加速サイクルにおいて、陽子の増大する相対論的質量と減少する磁場とを考慮して、周波数が低くなるように掃引される。ダミーディーは、真空槽壁と共に接地電位にあるので、中空半円筒形構造体を必要としない。基本周波数の異なる位相または倍数の周波数で駆動される加速電極の複数のペアなどの、他のプレート構成も使用することが可能である。RF構造は、例えば、互いにかみ合う回転及び静止ブレードを有する回転コンデンサを使用することによって、必要な周波数掃引においてQを高く保つように調整することができる。ブレードのかみ合い毎に、静電容量が増加し、したがって、RF構造の共振周波数が下がる。ブレードは、必要な正確な周波数掃引がもたらされる形状に成形され得る。回転コンデンサ用の駆動モータは、正確な制御を行うためにRF発生器に位相固定され得る。一群の粒子が、回転コンデンサのブレードのかみ合い毎に加速される。
【0081】
加速が行われる真空槽119は、中央が薄く、縁が厚い、一般的に円筒形の容器である。真空槽は、RFプレート及び粒子源を封じ込め、真空ポンプ111によって真空にされる。高真空を維持することで、加速するイオンが気体分子との衝突で失われないことが保証され、アーク地絡を生じることなくRF電圧をより高いレベルに保つことが可能になる。
【0082】
陽子は、粒子源から始まる一般的に螺旋状の軌道経路を横断する。螺旋経路のそれぞれのループの半分において、陽子は、空間107内のRF電場を通過するときにエネルギーを獲得する。イオンがエネルギーを獲得すると、螺旋経路のそれぞれの連続するループの中心軌道の半径は、ループ半径が磁極面の最大半径に達するまで前のループより大きくなる。その位置で、磁場及び電場摂動はイオンを磁場が急速に減少する領域内に導き、イオンは高い磁場の領域から出て、本明細書では引き出しチャネルと称される真空管38に通され、サイクロトロンのヨークから出る。磁場摂動を変えてイオンの向きを決めるために磁気再生器が使用され得る。サイクロトロンから出たイオンは、サイクロトロンの周りの空間内に存在する著しく減少する磁場の領域に入ると分散する傾向を有する。引き出しチャネル38内のビーム成形要素107、109は、イオンが空間的広がりを制限された真っ直ぐなビーム状態を保つようにイオンの向きを変える。
【0083】
磁極間隙内の磁場は、加速するときに真空槽内にビームを維持する幾つかの特性を有している必要がある。磁場指数nは、式
n=−(r/B)dB/dr
で表され、この「弱い」集束を維持するように正に保たれなければならない。ここで、rはビームの半径であり、Bは磁場である。それに加えて、幾つかの実施例では、磁場指数は、0.2未満に維持される必要があるが、それは、この値では、ビームの径方向振動及び鉛直方向振動の周期がvr=2v
zの共振で一致するからである。ベータトロン周波数は、v
r=(1−n)
1/2及びv
z=n
1/2によって定義される。強磁性磁極面は、磁場指数nが所定の磁場内で250MeVのビームと一致する最小の直径において正に維持され、0.2未満となるようにコイルによって生成される磁場を成形するように設計される。
【0084】
ビームが引き出しチャネルから出ると、ビームに対する走査、散乱、及び/または飛程変調の所望の組み合わせを形成するようにプログラム可能に制御され得るビーム形成システム125(
図5)に、ビームが通される。ビーム形成システム125は、ビームを患者に導くために内側ガントリー601(
図14)と共に使用され得る。
【0085】
動作時に、プレートは、プレートの表面に沿った導通抵抗の結果として、印加される高周波場からエネルギーを吸収する。このエネルギーは、熱として現れ、熱交換器113(
図3)内に熱を放出する水冷管路108を使用してプレートから取り出される。
【0086】
サイクロトロンから出る漂遊磁場は、ピルボックス磁石ヨーク(シールドとしても働く)と別の磁気シールド114の両方によって制限される。別の磁気シールドは、空間116によって隔てられる、ピルボックスヨークを囲む強磁性体(例えば、鋼または鉄)の層117を含む。ヨーク、空間、及びシールドのサンドイッチを含むこの構成は、より低い重量で所定の漏れ磁場に対する適切な遮蔽を形成する。
【0087】
上述のように、ガントリー504は、シンクロサイクロトロンを水平回転軸線532を中心として回転させる。トラス構造体516は、2つの略平行なスパン580、582を有する。シンクロサイクロトロンは、脚部508、510同士の間における略中央にかつスパン580、582同士の間に配設されている。ガントリーは、トラスの反対側に位置する脚部508、510の端部に取り付けられた釣合いおもり122、124を利用することによって軸受512、514を中心として回転するようにバランスされている。
【0088】
ガントリー504は電気モータによって回転駆動され、電気モータはガントリー504の少なくとも1つの脚部に取り付けられており、駆動歯車を介して軸受ハウジングに接続されている。ガントリー504の回転位置は、ガントリー504の駆動モータ及び駆動歯車に組み込まれた軸角エンコーダによって付与される信号から導き出される。
【0089】
イオンビームがサイクロトロンから出る位置において、ビーム形成システム125は、患者の治療に適した特性をイオンビームに付与するようにイオンビームに作用する。例えば、ビームを拡散させ、当該ビームの貫入深さを変化させることによって、所定の目標体積に対して均一に放射することができる。ビーム形成システムは、能動的走査要素に加えて、受動的散乱要素を備えている場合がある。
【0090】
シンクロサイクロトロンの能動的システムのすべて(例えば、電流駆動式超電導コイル、RF駆動式プレート、真空加速室のための真空ポンプ、超電導コイル冷却室のための真空ポンプ、電流駆動式粒子源、水素ガス源、及びRFプレート冷却装置)が、例えば制御を効果的に実施するために適切なプログラムでプログラムされた1つ以上のコンピュータを含む、適切なシンクロサイクロトロンを制御するための電子機器(図示しない)によって制御される。
【0091】
ガントリー、患者支持体、能動的ビーム成形要素、及びシンクロサイクロトロンは、適切な治療を制御するための電子機器(図示しない)によって、治療セッションを実施するために制御される。
【0092】
図1、
図11、及び
図12に表すように、ガントリー504の軸受512、514は、サイクロトロンのボールト524の壁によって支持されている。ガントリー504は、患者の上方位置、側方位置、及び下方位置を含む180°(または180°以上)の回転範囲520にわたって、サイクロトロンを旋回させることができる。ボールト524は、ガントリー504の運動の上端及び下端点においてガントリー504が通過可能とされるのに十分な高さを有している。壁148、150を側面とする迷路146は、療法士及び患者のための出入り口経路とされる。少なくとも1つの壁152は、サイクロトロンからの直接的な陽子ビームの照射範囲に存在しないので、当該壁は、比較的薄くすることができ、依然として遮蔽機能を発揮させることができる。治療室の他の3つの側壁154、156、150/148は、遮蔽を比較的厳重にする必要があり、盛り土(図示しない)に埋設されている。土自体が必要な遮蔽の一部分を果たすことができるので、側壁154、156、158の必要な厚さは低減される。
【0093】
図12及び
図13に表すように、安全上及び美観上の理由から、治療室160は、ボールト524の内部に構成されている。治療室160は、旋回するガントリーが通過可能とされるように、かつ、治療室の床面積164の範囲を最大限に拡張するように、壁154、156、150及び収容室の基部162からガントリー504の脚部508、510同士の間に形成された空間の内部に向かって片持ち梁として形成されている。ビーム発生粒子加速器502の定期的整備は、高床の下方の空間内で実施可能とされる。ビーム発生粒子加速器502がガントリー504の下方位置に至るまで回転された場合、治療領域から離隔された空間内において、加速器全体に対してアクセス可能とされる。電源、冷却機器、真空ポンプ、及び他の支援機器は、当該離隔された空間内において高床の下方に配置されている。患者支持体170は、支持体を上下動させると共に患者を様々な位置及び向きに回転及び移動させることができる様々な態様で、治療室160の内部に取り付け可能とされる。
【0094】
図14に表すシステム602では、本明細書で説明されているタイプのビーム発生粒子加速器が、当該実施例ではシンクロサイクロトロン604が回転式ガントリー605に取り付けられている。回転式ガントリー605は、本明細書で説明されているタイプのものであり、患者支持体606の周りで角度的に回転することができる。この特徴によって、シンクロサイクロトロン604は、様々な角度から粒子ビームを患者に直接照射することができる。例えば、
図14に表すように、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の上方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって下方に方向づけられている。代替的には、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の下方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって上方に方向づけられている。中間ビーム経路指定機構が必要ないという意味では、粒子ビームは患者に直接印加される。本発明では、成形またはサイズ決定機構がビームの経路変更をするのではなく、同一かつ一般的なビーム軌道を維持しつつビームのサイズ及び/または形状を決定するという点において、中間ビーム経路指定機構は成形またはサイズ決定機構と相違する。
【0095】
上述のシステムの例示的な実施例に関するさらなる詳細は、米国特許第7728311号明細書及び米国特許出願第12/275103号に開示されている。これら特許文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0096】
幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、米国特許出願第13/916401号明細書で説明されている可変エネルギーデバイスとされる場合がある。当該特許文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0097】
[例示的な実施例]
図3を参照すると、粒子源90は、粒子がシンクロサイクロトロンの中間面に存在し、そこでRF電圧場の作用を受け得るようにシンクロサイクロトロン10の磁気中心の近くに配設される。上述のように、粒子源は、ペニングイオンゲージ(PIG)形態を有するものとしてよい。PIG形態では、2つの高電圧陰極が、直線上に揃うように互いにほぼ対向する形で配置される。例えば、一方の陰極は、加速領域の片側にあり、もう一方の陰極は、加速領域の他方の側にあり、磁力線と一致するものとしてよい。ガス管101は、粒子源の近くの加速領域に向かって延在する。比較的少量のガス(例えば、水素/H
2)が陰極の間の管内の領域を占有する場合、電圧を陰極に印加することによってプラズマ柱がガスから形成され得る。印加された電圧により、電子は、実質的に管壁に平行な磁力線に沿って流れ、管の内側に集中している気体分子を電離する。背景磁場は、電離ガス粒子の散乱を妨げ、陰極の間にプラズマ柱を生成する。
【0098】
幾つかの実施例では、ガス管101内のガスは、水素と1つまたは複数の種類の他のガスとの混合物を含み得る。例えば、混合物は、水素と希ガス、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、及び/またはラドンのうちの1つまたは複数を含み得る(混合物は希ガスとの使用に制限されない)。幾つかの実施例では、混合物は、水素とヘリウムとの混合物であってもよい。例えば、混合物は、水素を約75%以上、ヘリウムを約25%以下(残留ガスが含まれ得る)含有することができる。別の例では、混合物は、水素を約90%以上、ヘリウムを約10%以下(残留ガスが含まれ得る)含有することができる。幾つかの例では、水素/ヘリウム混合物は、>95%/<5%、>90%/<10%、>85%/<15%、>80%/<20%、>75%/<20%などのうちのどれかであってよい。
【0099】
粒子源中で希ガス(または他のガス)を水素と組み合わせて使用する利点として考えられるのは、ビーム強度の増大、陰極の寿命の増加、及びビーム出力の定常性の増大である。
【0100】
シンクロサイクロトロン10で使用され得るPIG形態粒子源700の一例は、
図15及び
図16に示されている。
図15を参照すると、粒子源700は、ガス(例えば、水素(H
2))を受けるためのガス供給部702を収容する放射体側701、及び反射体側704を含む。ハウジング、または管706は、ガスを保持する。
図16は、ダミーディー710を通過し、能動的(RF)ディー711に隣接する粒子源700を示している。動作時に、能動的ディー711とダミーディー710との間の磁場により、粒子(例えば、陽子)は外向きに加速する。加速は螺旋状であり、プラズマ柱の周りに軌道を描き、粒子−プラズマ−柱の半径は徐々に増大する。これらの螺旋の曲率半径は、粒子の質量、RF場によって粒子に与えられるエネルギー、及び磁場の強度に依存する。
【0101】
磁場が高いときには、加速時に最初の回転で粒子源の物理的ハウジングをクリアするため十分に大きな曲率半径を有するように十分なエネルギーを粒子に与えることは困難な場合がある。磁場は、粒子源の領域内で比較的高い、例えば、2テスラ(T)以上(例えば、4T、5T、6T、8T、8.8T、8.9T、9T、10.5T、またはそれ以上)のオーダーとなる。この比較的高い磁場の結果、初期粒子−イオン源半径は、低エネルギー粒子については比較的小さく、低エネルギー粒子は、プラズマ柱から最初に引き出される粒子を含む。例えば、そのような半径は、1mmのオーダーであってよい。半径は非常に小さいので、少なくとも最初には、幾つかの粒子が粒子源のハウジング領域と接触し、それによって、そのような粒子のさらなる外向きの加速が妨げられ得る。したがって、粒子源700のハウジングは、
図16に示されているように、遮断されるか、または分離されて2つの部分を形成する。すなわち、粒子源のハウジングの一部は、加速領域714で、例えば、粒子が粒子源から引き出されるおおよその地点で完全に取り除かれ得る。この遮断は、
図16にラベル715を付けて示されている。ハウジングは、加速領域の上、及び下の距離についても取り除かれ得る。代替的実施例において、PIG源ハウジングの全部ではなく実質的部分(例えば、30%、40%、50%以上)が取り除かれ、プラズマビームは部分的に露出されたままとなる。したがって、PIGハウジングの一部分は、対となる一方の部分から分離されるが、上記の場合と同様に完全な分離はない。
【0102】
明細書で説明されているシンクロサイクロトロンにおいて、粒子ビームは、共振抽出システムを使用して引き出される。すなわち、ビームの径方向振動は、これらの振動の共振を確立する、加速器の内側の磁気摂動によって引き起こされる。共振抽出システムが使用される場合、抽出効率は、内部ビームの位相空間の範囲を制限することによって改善される。磁場及びRF場発生構造の設計に注意すると、引き出し時のビームの位相空間範囲は、加速開始時(例えば、粒子源からの出現時)の位相空間範囲によって決定される。その結果、引き出しチャネルの入口で失われるビームは比較的小さく、加速器からの背景放射線が低減され得る。
【0103】
陰極717は、「冷」陰極であってよい。冷陰極は、外部熱源によって加熱されない陰極であるものとしてよい。また、陰極はパルス動作し得る、すなわち、プラズマバーストを連続的にではなく周期的に出力する。陰極が冷たく、パルス動作する場合、陰極は損耗の影響を受けにくく、したがって、比較的長く持ちこたえることができる。さらに、陰極をパルス動作させることで、陰極を水冷する必要がなくなる。一実施例において、陰極717は、比較的高い電圧で、例えば、約1kVから約4kVでパルス動作し、約50mAから約200mAのピーク陰極放電電流を約0.1%から約1%または2%の範囲のデューティサイクル、約200Hzから約1KHzの範囲の繰り返し率に抑える。しかし、粒子源は、これらの値に限定されない。
【0104】
本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムの様々な態様は、コンピュータ制御され得る。コンピュータ制御は、コンピュータから粒子治療システム上の様々な電子機器に出力される1つまたは複数の信号を通じて行うことができる。例えば、粒子治療システムによって生成される粒子ビームの強度が測定され、粒子治療システムは、粒子ビームの強度を制御するように調整され得る。測定及び調整は、1回だけ、粒子治療システムの使用毎に、リアルタイムで(例えば、治療中に)、または他の頻度で実施することができる。幾つかの実施例では、以下で説明されている粒子加速器の様々なパラメータまたは他の特徴は、変えることができ、適切な結果が得られたかどうかを判定するために結果として得られる粒子ビームの強度が測定され得る。適切な結果が得られなかった場合、これらのパラメータまたは他の特徴は、再び変えられ、適切な結果が得られるまで結果の測定が行われ得る。
【0105】
例示的な一実施例において、粒子源によって出力されるパルスの時間幅を変化させて、粒子ビームの強度を制御することができる。言い換えると、粒子源が間欠的に(例えば、周期的に)作動される時間の長さを変え、それによって、異なる期間に対するプラズマ柱をもたらし、異なる数の粒子の引き出しを可能にする。例えば、パルス幅を増やした場合、引き出される粒子の数は増加し、パルス幅を減らした場合、引き出される粒子の数は減少する。幾つかの実施例では、粒子源がオンになっている時間と粒子ビームの強度との間に直線関係がある。例えば、この関係は、1対1とオフセットであるものとしてよい。例示的な一実施例において、粒子源は、約135MHzの最高周波数から約95MHzまたは90MHzの最低周波数までの間の周波数掃引において出現する周波数窓内でパルス動作し得る。例えば、粒子源は、一定期間、132MHzから131MHzまでの間でパルス動作し得る。一実施例において、この期間は約40μsであるが、これらの値は、他の実施例では変化するか、または異なることがある。この周波数窓を外れて粒子源をパルス動作することはできないので、プラズマ柱から粒子を引き出すことは抑制され得る。
【0106】
図17は、最高周波数(例えば、135MHz)から最低周波数(例えば、90MHzまたは95MHz)までの時間の経過に関する空洞共振器内の電圧掃引を示すグラフである。引き出し窓720は、この例では、132MHzから131MHzの間で出現する。パルス721の幅を変化させて、粒子加速器によって出力される粒子ビームの強度を制御することができる。
【0107】
他の実施例では、陰極717の電圧は、プラズマ柱内の電離の量を制御し、それによって、加速器から出力される粒子ビームの強度を制御するために調整され得る。冷陰極の電圧を変化させることで、特に鋭いパルスエッジを発生することができる。
【0108】
他の実施例では、管101内のガス流を調整して、プラズマ柱内の水素の量を増減することができる。上で説明されているように、水素をこのように増減することで、抽出に利用可能なプラズマ柱内の粒子の量を増減することができる。したがって、粒子源によって供給される水素の量/流量を変化させることによって、抽出に利用可能な粒子の量を、したがってその結果得られる粒子ビームの強度を制御することが可能である。例えば、上で説明されているように、プラズマ柱内に存在する粒子が多いと、RF電圧掃引で引き出される粒子が多くなり、これにより、粒子ビームの強度が増大し得る。プラズマ柱内に存在する粒子が少ないと、RF電圧掃引で引き出される粒子が少なくなり、これにより、粒子ビームの強度が減少し得る。
【0109】
他の実施例では、引き出し期間にRF電圧の高さを高くすると、引き出される粒子の量が増加し、それによって、粒子ビームの強度を高めることができる。この点で、RF電圧の高さは、RF掃引の期間全体にわたって変化させることができるか、または粒子がプラズマ柱から引き出し可能である期間のみにおいて変化させることができる。例えば、幾つかの実施例では、粒子は、132MHzから131MHzまで掃引期間内にプラズマ柱から引き出される。RF電圧の高さは、その期間のみ、または場合によっては、引き出し期間の前及び後の期間に、増大させることができる。幾つかの例示的な実施例では、この高さを増大させられる期間は、20〜40μsであるものとしてよい。特に、これらの値は、1つの例示的な粒子加速器に特有であり、周波数窓及び期間を含む、これらの値は、システムが異なれば異なり得る。
【0110】
他の実施例では、粒子源700は、電圧掃引における最高RF周波数から最低RF周波数までの減少に近い特定の周波数における電離プラズマのパルスを供給するように制御可能である。例えば、
図17を参照すると、パルス幅721は、開始(例えば、最高)周波数722から終了(例えば、最低)周波数723までの間の任意の点において出現するように制御され得る。様々な周波数で引き出される粒子の量が測定され、それにより最良の配置が決定され得る。
【0111】
幾つかの実施例では、パルス幅は、RF掃引速度を制御することによって変化させることができる。例えば、より遅いRF掃引では、結果としてパルスが長くなり、したがって1パルス当たりの粒子(強度)は増える可能性がある。
【0112】
他の実施例では、電圧源は、粒子ビームの強度を制御するためにRF電圧を変化させるように構成可能である。例えば、RF電圧は、高い値から低い値まで時間スケールにわたって掃引され得る。最初に、RF電圧は高い値にある(例えば、一定期間一定である)ものとしてよい。そこで、電圧が初期期間(例えば、20〜40μs)において印加される。次いで、電圧は、その振幅が調整され粒子ビームの強度を制御するように掃引において、例えば20μs毎に下げられる。減少する磁場の勾配(時間に対する)は、引き出される粒子の量を変化させるために増減することができる。幾つかの実施例では、電圧は、粒子ビーム出力を制御するために段階的に印加され得る。
【0113】
他の実施例では、粒子ビームの強度を制御するためにパルスブランキングが使用され得る。例えば、粒子源700は、電離プラズマのパルスを選択的に出力するように制御され得る。例えば、パルスは、電圧掃引毎に一定期間にわたって出力され得るが、パルス出力は、N(N>1)回の掃引ごとにスキップすることができる。したがって、例えば、制御システムは、1%多すぎるビームがあることを検出することができ、その場合、パルス100回に1回がスキップされ得る。他の実施例では、パルスは、より頻繁にスキップすることができ、例えば、2回に1回、3回に1回、10回に1回、または他の適切な番号を付けられたパルスをスキップすることができる。
【0114】
他の実施例では、バイアス電圧が、能動的ディー及び/またはダミーディーに印加され、これにより、マルチパクタリングの効果を低減し、それにより、粒子ビームの強度を高めることができる。この点で、マルチパクタリングは、ディープレートの間で電子が跳ね返るときに生じ、衝突後に追加の電子がディープレートから解き放たれる。この結果は、ディープレートを短絡するまでディープレートの動作に悪影響を及ぼし得る。
【0115】
マルチパクタリングの効果を低減するために、DCバイアス電圧を能動的ディー及び/またはダミーディーに印加することができる。これにより、背景RF電圧は接地からそうでない場合よりもさらに大きく離れて振動し、それにより、ディーの間の電子移動が低減される。一実施例において、DCバイアス電圧は、ダミーディーのみに印加され、ダミーディーは、接地から絶縁される。他の実施例では、差動DCバイアス電圧がダミーディーと能動的ディーとに印加される。例えば、より高いDCバイアス電圧をダミーディーに印加し、より低いDCバイアス電圧を能動的ディーに印加することができる。幾つかの実施例では、
図18のDCバイアスプレート800、801がダミーディー102に追加され得る。この図では、能動的ディーは100とラベル付けされている。
【0116】
幾つかの実施例では、DCバイアス電圧差(すなわち、能動的及びダミーディーに印加されるバイアス電圧の差)は、±50%の範囲内であるものとしてよい。DCバイアス電圧の特定の量は、RF電圧のレベルに基づき変化し得る。例えば、2.1KVのDC電圧をダミーディーに印加し、1.7KVのDC電圧を能動的ディーに印加することができる。別の例では、1.5KVのDC電圧をダミーディーに印加し、1.0KVのDC電圧を能動的ディーに印加することができる。別の例では、1.9KVのDC電圧をダミーディーに印加し、1.5KVのDC電圧を能動的ディーに印加することができる。他の実施例では、異なるDCバイアス電圧を使用することもできる。
【0117】
図19を参照すると、粒子加速器(
図1及び
図2に示されている構成を有するものとしてよい)の引き出しチャネル802の出力のところに、ビーム形成システム125などのビーム形成システムがあることがわかる。ビーム形成システムは、走査システムであってよい。例示的な走査システム806が
図19に示されており、これは粒子ビームを照射ターゲットの少なくとも一部に走査するために使用され得る。
図20は、走査磁石808、イオンチャンバー809、及びエネルギーデグレーダ810を備える走査システムの構成要素の例も示している。走査システムの他の構成要素は、
図20に示されていない。
【0118】
動作例において、走査磁石808は、2次元内で制御可能であり(例えば、直交座標のXY次元)、これにより、粒子ビームを照射ターゲットの一部(例えば、断面)に導く。イオンチャンバー809では、ビームの線量を検出し、その情報を制御システムにフィードバックする。エネルギーデグレーダ810は、材料を粒子ビームの経路内に出し入れして、粒子ビームのエネルギー、したがって粒子ビームが照射ターゲットを貫通する深さを変化させるように制御可能である。
【0119】
図21及び
図22は、例示的な走査磁石808の図である。走査磁石808は、X方向の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル811と、Y方向の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル812とを含む。制御は、幾つかの実施例では、一方のコイルの組または両方の組を通る電流を変化させ、それによって、発生する磁場を変化させることによって達成される。磁場を適切に変化させることによって、粒子ビームは、照射ターゲット上をX及び/またはY方向に移動することができる。幾つかの実施例では、走査磁石は、粒子加速器に対して物理的に移動可能でない。他の実施例では、走査磁石は、加速器に対して移動可能であるものとしてよい(例えば、ガントリーによってもたらされる移動に加えて)。
【0120】
この例では、イオンチャンバー809は、入射放射線によって引き起こされるガス内に形成されるイオン対の数を検出することによって、粒子ビームによって印加される線量を検出する。イオン対の数は、粒子ビームによってもたらされる線量に対応する。その情報は、粒子治療システムの動作を制御するコンピュータシステムにフィードバックされる。コンピュータシステム(図示しない)は、メモリ及び1つまたは複数の処理デバイスを含むものとしてよく、イオンチャンバーによって検出された線量が意図された線量であるかどうかを判定する。その線量が意図された通りでない場合、コンピュータシステムは、加速器を制御して、粒子ビームの発生及び/または出力を中断し、及び/または走査磁石を制御して照射ターゲットへの粒子ビームの出力を妨げることができる。
【0121】
図23は、エネルギーデグレーダ810の例示的な一実施例である、飛程変調装置815を示している。
図23に示されているような幾つかのそのような実施例において、飛程変調装置は、一連のプレート816を含む。これらのプレートは1つまたは複数のエネルギー吸収材料で作ることができる。
【0122】
これらのプレートのうちの1つまたは複数は、ビーム経路内に出入りすることができ、それによって、粒子ビームのエネルギーに、したがって照射ターゲット内への粒子ビームの貫入深さに影響を及ぼす。例えば、粒子ビームの経路内に入るプレートが多ければ多いほど、プレートによって吸収されるエネルギーが大きくなり、粒子ビームが有するエネルギーは小さくなる。逆に、粒子ビームの経路内に入るプレートが少なければ少ないほど、プレートによって吸収されるエネルギーは小さくなり、粒子ビームが有するエネルギーは大きくなる。エネルギーが高い粒子ビームは、エネルギーが低い粒子ビームよりも照射ターゲット内により深く貫入する。この記述において、「より高い」及び「より低い」は、相対語としての意味であり、特定の数値的な含意を有するわけではない。
【0123】
プレートは、粒子ビームの経路内に物理的に入り、そして出る。例えば、
図24に示されているように、プレート816aは、粒子ビームの経路内の位置と粒子ビームの経路外の位置との間を矢印817の方向に沿って移動する。プレートは、コンピュータ制御される。一般的に、粒子ビームの経路内に入るプレートの数は、照射ターゲットの走査が行われるべき深さに対応する。例えば、照射ターゲットは、幾つかの断面に分割され、それぞれの断面は照射深さに対応するものとしてよい。飛程変調装置の1つまたは複数のプレートは、照射ターゲットへのビーム経路内を出入りすることができ、これにより、照射ターゲットの断面のそれぞれを照射する適切なエネルギーを得ることができる。
【0124】
幾つかの実施例では、走査を使用して照射ターゲットを治療する前に治療計画が立てられる。治療計画では、特定の照射ターゲットに対し走査をどのように実行すべきかを指定することができる。幾つかの実施例では、治療計画で指定する情報は、走査の種類(例えば、スポット走査またはラスタ走査)、走査配置(例えば、走査すべきスポットの配置)、走査配置当たりの磁石電流、スポット当たりの線量、照射ターゲット断面の配置(例えば、深さ)、断面当たりの粒子ビームエネルギー、それぞれの粒子ビームエネルギーに対するビーム経路内に入るプレートまたは他の種類の片、などである。一般的に、スポット走査は、照射ターゲット上の飛び飛びのスポットに照射を行うことを伴い、ラスタ走査は、照射ターゲットの端から端まで照射スポットを移動することを伴う。したがって、スポットサイズのコンセプトは、ラスタ走査とスポット走査の両方に適用される。
【0125】
幾つかの実施例では、走査システム内のスポットの強度は、スポット毎に異なり得る。本明細書で説明されている技術はどれも、スポット毎に粒子ビームの強度を変化させるために使用することができる。例えば、粒子ビームの強度は、個別のスポットから個別のスポットまで、またはスポットの一方のグループからスポットの別のグループへ、などに対して変化させることができる。
【0126】
粒子ビームのパルスのパルス幅を変化させる(これにより、パルス毎の粒子の個数、すなわち、パルス強度を変化させる)本明細書で説明されているパルス幅変調技術(PWM)は、走査システムにおけるスポット毎に強度を変化させる場合に特に有用であり得る。PWM技術は、スポット強度をかなり速く、例えば、1秒以下の時間枠で変化させることを可能にし、比較的広いダイナミックレンジを有しているので走査の場面において特に有用と思われる(それでも非PWM技術も使用可能である)。
【0127】
前述の実施例のうちのさらにいずれか2つを、引き出しチャネル内の粒子ビームのエネルギーに影響を及ぼすために適切な組み合わせで使用することができる。同様に、前述の実施例のうちのさらにいずれか2つの個別の特徴は、同じ目的のために適切な組み合わせで使用され得る。
【0128】
本明細書で説明されている異なる実施例の要素は、特に上で述べていない他の実施例を形成するように組み合わせることもできる。要素は、その動作に悪影響を及ぼすことなく本明細書で説明されているプロセス、システム、装置などから外してもよい。本明細書で説明されている機能を実行するために、様々な別々の要素を1つまたは複数の個別の要素に組み合わせることができる。
【0129】
本明細書で説明されている例示的な実施例は、粒子治療システムと共に使用すること、または本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムと共に使用することに限定されない。むしろ、例示的な実施例は、加速された粒子を出力に導く適切なシステム内で使用され得る。
【0130】
本明細書で説明されているようなシステム内で使用され得る粒子加速器の例示的な実施例の設計に関する追加の情報は、参照によりその全てが本明細書に組み込まれている2006年1月20日に出願した米国仮出願第60/760,788号、名称「High−Field Superconducting Synchrocyclotron」、2006年8月9日に出願した米国特許出願第11/463,402号、名称「Magnet Structure For Particle Acceleration」、及び2006年10月10日に出願した米国仮出願第60/850,565号、名称「Cryogenic Vacuum Break Pneumatic Thermal Coupler」に記載されている。
【0131】
以下の出願はすべて本出願(名称「CONTROLLING INTENSITY OF A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,466号))と同じ日付で出願されており、参照により本出願に組み込まれている。米国仮出願、名称「ADJUSTING ENERGY OF A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,515号)、米国仮出願、名称「ADJUSTING COIL POSITION」(出願第61/707,548号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM USING MAGNETIC FIELD FLUTTER」(出願第61/707,572号)、米国仮出願、名称「MAGNETIC FIELD REGENERATOR」(出願第61/707,590号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,704号)、米国仮出願、名称「CONTROLLING PARTICLE THERAPY」(出願第61/707,624号)、米国仮出願、名称「CONTROL SYSTEM FOR A PARTICLE ACCELERATOR」(出願第61/707,645号)。
【0132】
以下の参考文献も、参照により本出願に組み込まれている。2010年6月1日に発行された米国特許第7,728,311号、2007年11月30日に発行された米国特許出願第11/948,359号、2008年11月20日に出願した米国特許出願第12/275,103号、2007年11月30日に出願した米国特許出願第11/948,662号、2007年11月30日に出願した米国仮出願第60/991,454号、2011年8月23日に発行された米国特許第8,003,964号、2007年4月24日に発行された米国特許第7,208,748号、2008年7月22日に発行された米国特許第7,402,963号、2010年2月9日に出願した米国特許出願第13/148,000号、2007年11月9日に出願した米国特許出願第11/937,573号、2005年7月21日に出願した米国特許出願第11/187,633号、名称「A Programmable Radio Frequency Waveform Generator for a Synchrocyclotron」、2004年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,089号、2004年9月24日に出願した米国特許出願第10/949,734号、名称「A Programmable Particle Scatterer for Radiation Therapy Beam Formation」、及び2005年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,088号。
【0133】
本出願の特徴は、以下の1つまたは複数の適切な特徴と組み合わせることができる。米国仮出願、名称「ADJUSTING ENERGY OF A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,515号)、米国仮出願、名称「ADJUSTING COIL POSITION」(出願第61/707,548号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM USING MAGNETIC FIELD FLUTTER」(出願第61/707,572号)、米国仮出願、名称「MAGNETIC FIELD REGENERATOR」(出願第61/707,590号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,704号)、米国仮出願、名称「CONTROLLING PARTICLE THERAPY」(出願第61/707,624号)、及び米国仮出願、名称「CONTROL SYSTEM FOR A PARTICLE ACCELERATOR」(出願第61/707,645号)、2010年6月1日に発行された米国特許第7,728,311号、2007年11月30日に出願した米国特許出願第11/948,359号、2008年11月20日に出願した米国特許出願第12/275,103号、2007年11月30日に出願した米国特許出願第11/948,662号、2007年11月30日に出願した米国仮出願第60/991,454号、2011年8月23日に発行された米国特許第8,003,964号、2007年4月24日に発行された米国特許第7,208,748号、2008年7月22日に発行された米国特許第7,402,963号、2010年2月9日に出願した米国特許出願第13/148,000号、2007年11月9日に出願した米国特許出願第11/937,573号、2005年7月21日に出願した米国特許出願第11/187,633号、名称「A Programmable Radio Frequency Waveform Generator for a Synchrocyclotron」、2004年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,089号、2004年9月24日に出願した米国特許出願第10/949,734号、名称「A Programmable Particle Scatterer for Radiation Therapy Beam Formation」、及び2005年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,088号。
【0134】
本特許出願が優先権を主張する仮出願及び上で参照により組み込まれている文献を除き、他のいかなる文献も参照により本特許出願に組み込まれない。
【0135】
本明細書で特に説明されていない他の実施例も、以下の請求項の範囲内に収まる。
【符号の説明】
【0136】
10 シンクロサイクロトロン
12 磁石システム
38 ビーム抽出システム
40、42 環状超電導コイル
44、46 強磁性(例えば、低炭素鋼)磁極面
48 糸
52 絶縁体
56 環状ステンレスリバースボビン
60 復元力
70 真空にされた環状アルミニウムまたはステンレス製低温槽
71、73 支持点
72、74 ギフォードマクマホン冷凍機
76 低温端部
78 冷凍機のヘッド
77、79 ギフォードマクマホン冷凍機
80 圧縮機
82 ピルボックス形状の磁石ヨーク
81、83 半分
84 帰還磁束
86 容積部
90 粒子源
91 高周波駆動システム
92 幾何学的中心
94 電気ケーブル
95 電流源
99 供給部
100 半円形(ディー)高周波プレート
101 ガス管路
102 ダミーディープレート
103、105 半円形表面
107 空間
108 水冷管路
109 ダクト
111 真空ポンプ
113 熱交換器
114 磁気シールド
116 空間
117 層
119 真空槽
125 ビーム形成システム
152 壁
154、156、150/148 側壁
160 治療室
162 基部
170 患者支持体
192、190 陰極
194 管
200 磁場
500 荷電粒子放射線治療システム
502 ビーム発生粒子加速器
504 ガントリー
506 患者
508、510 脚部
512、514 軸受
516 鉄骨トラス
520 範囲
522 床
524 ボールト
532 水平回転軸
534 範囲
580、582 スパン
601 内側ガントリー
602 システム
604 シンクロサイクロトロン
605 回転式ガントリー
606 患者支持体
700 PIG形態粒子源
701 放射体側
702 ガス供給部
704 反射体側
706 ハウジング、または管
710 ダミーディー
711 能動的(RF)ディー
714 加速領域
717 陰極
720 抽出窓
721 パルス
722 開始(例えば、最高)周波数
723 終了(例えば、最低)周波数
800、801 DCバイアスプレート
802 引き出しチャネル
808 走査磁石
809 イオンチャンバー
810 エネルギーデグレーダ
811 コイル
812 コイル
815 飛程変調装置
816 一連のプレート
816a プレート
【手続補正書】
【提出日】2018年4月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が空洞に出力される電離プラズマを提供するための粒子源であって、電圧を加えてガスを電離し、前記電離プラズマを発生する陰極を備え、前記陰極が外部熱源によって加熱されない冷陰極である、粒子源と、
高周波(RF)電圧を前記空洞に印加して、前記粒子を前記電離プラズマから外部に加速するための電圧源と、
前記空洞から粒子ビームを受けて粒子加速器から出力するための引き出しチャネルとを備えた、シンクロサイクロトロンであって、
前記シンクロサイクロトロンが、
(i)前記陰極に関連する電圧は、前記粒子ビームの強度を制御することができるように制御可能であること、
(ii)前記ガスが水素を含み、前記粒子源が、前記粒子ビームの強度を制御するために前記陰極間の水素の量を調整するように制御可能であること、
(iii)前記ガスが、水素と希ガスとの組み合わせを含むこと、または
(iv)前記電圧源が、第1のディーと第2のディーとを備え、前記第1のディー及び前記第2のディーのうちの少なくとも1つは、バイアス電圧が印加されること、
の特徴のうち1つまたは複数を含む、シンクロサイクロトロン。
【請求項2】
前記粒子源は、前記粒子ビームの強度を制御するために前記電離プラズマのパルス幅を制御するように制御可能である、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項3】
前記粒子源は、制御信号に応答して一定期間にわたって作動するように構成され、前記粒子源は、作動すると電離プラズマのパルスを発生する、請求項2に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項4】
前記粒子源は、電離プラズマのパルスを周期的に発生するように構成される、請求項2に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項5】
前記粒子ビームは、0.1μsから100μsの持続時間で出力される、請求項4に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項6】
前記粒子ビームは、2ms毎に0.1μsから100μsの持続時間で出力される、請求項4に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項7】
前記RF電圧は、前記RF電圧を上げると前記粒子ビームの強度が高くなるように、また前記RF電圧を下げると前記粒子ビームの強度が低くなるように制御可能である、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項8】
請求項1に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記シンクロサイクロトロンが取り付けられ、患者の位置に対して回転可能であるガントリーとを備え、
前記粒子ビームは、前記シンクロサイクロトロンから前記患者の位置に出力される、陽子治療システム。
【請求項9】
水素の量は、水素の前記量を増やすと前記粒子ビームの強度が高くなるように、また水素の前記量を減らすと前記粒子ビームの強度が低くなるように調整可能である、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項10】
前記電圧源は、前記粒子ビームの強度を制御するために前記RF電圧の高さを制御するように制御可能である、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項11】
前記RF電圧の高さは、前記高さを高くすると前記粒子ビームの強度が高くなるように、また前記高さを低くすると前記粒子ビームの強度が低くなるように調整可能である、請求項10に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項12】
前記粒子源は、前記RF電圧の最高周波数から前記RF電圧の最低周波数までの減少の間、特定の周波数における前記電離プラズマのパルスを供給するように制御可能である、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項13】
前記粒子加速器は、135MHzのRF電圧の最高周波数より低い、132MHzの前記RF電圧と131MHzの前記RF電圧との間の前記電離プラズマのパルスを供給するように制御可能である、請求項12に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項14】
前記RF電圧は、最高周波数から最低周波数まで周期的に掃引し、
前記RF電圧の掃引の幾つかではパルスを出力し、前記RF電圧の掃引の他の幾つかではパルスを出力しない、パルスを選択的に出力するステップを含む、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項15】
前記RF電圧は、最高周波数から最低周波数まで周期的に掃引し、
N(N>1)回の掃引ごとにパルス出力をスキップする、パルスを選択的に出力するステップを含む、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項16】
コントローラをさらに備え、前記コントローラは
前記粒子ビームの強度を決定するステップと、
前記決定された強度に基づきパルスを選択的に出力するステップとを含む動作を実行する、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項17】
前記電圧源は、前記粒子ビームの強度を制御するために前記RF電圧の勾配を変化させるように構成可能である、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項18】
前記第1のディーは、第1のバイアス電圧が印加され、前記第2のディーは、第2のバイアス電圧が印加され、前記第1のバイアス電圧は前記第2のバイアス電圧と異なる、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項19】
前記第1のディーは、前記バイアス電圧が印加され、前記第2のディーは、電気的に接地される、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項20】
前記粒子ビームを出力する、請求項1に記載の前記シンクロサイクロトロンと、
前記粒子ビームを照射ターゲットの少なくとも一部に走査する前記シンクロサイクロトロン用の走査システムであって、前記走査システムは前記粒子ビームを前記粒子ビームの長手方向に対して角度を付けた2次元内で走査するように構成され、前記粒子ビームは前記照射ターゲットにスポットを形成する走査システムとを備え、
前記シンクロサイクロトロンは、走査時に前記照射ターゲット上の異なるスポットの間で前記粒子ビームの強度を変化させるように制御可能である、粒子治療システム。
【請求項21】
前記ガスは、水素と25%未満の前記希ガスとの組み合わせを含む、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項22】
前記ガスは、水素と10%未満の前記希ガスとの組み合わせを含む、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項23】
前記ガスは、水素とヘリウムとの組み合わせを含む、請求項1に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項24】
前記ヘリウムは、前記ガスの組成の25%未満を構成する、請求項23に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項25】
前記ヘリウムは、前記ガスの組成の10%未満を構成する、請求項23に記載のシンクロサイクロトロン。
【請求項26】
前記走査システムは、
前記粒子ビームを前記照射ターゲットの少なくとも一部の2次元内で走査するように前記粒子ビームの方向に影響を及ぼす磁石と、
前記粒子ビームを前記照射ターゲットに出力する前に前記粒子ビームのエネルギーを変えるデグレーダであって、前記シンクロサイクロトロンに対して前記磁石のビーム下流にある、デグレーダとを備える、請求項20に記載の粒子治療システム。
【外国語明細書】