【解決手段】洗浄装置(10)は、液体の噴流(21)を生成する少なくとも1つのノズル(2)が設けられたノズルブロック(11)と、ノズルブロックに設けられ、ノズルブロックに液体を供給する導管(7)と、第1の直線方向(84)に沿って、導管を介してノズルブロックを移動させる第1の移動機構(53)と、噴流(21)の反力をノズルブロックの背面側で受け止め、ノズルブロックを第1の直線方向に沿って移動できるように支持する支持機構(3)と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図に従って、本発明の非限定的な実施形態を複数挙げて説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1を参照して、本実施形態の洗浄装置10は、ノズルブロック11と、ノズル2と、支持機構3と、導管7と、ガイドブッシュ(ガイド装置)9と、移動機構5と、制御装置67と、液体供給装置61とを備えている。移動機構5は、導管7を介してノズルブロック11をX軸方向(第2の直線方向)83、及びY軸方向(第1の直線方向)84に移動できる。ここで、Y軸方向84は、重力方向であり、
図1の下側が重力方向の下側である。制御装置67は、数値制御装置を含んでも良い。制御装置67は、噴流21が洗浄対象物(以下、「ワーク8」という。)の所定の部位に衝突するように移動機構5を制御する。液体供給装置61は、導管7およびノズルブロック11を通して、液体をノズル2へ供給する。ノズル2は、Z軸方向(軸線方向)85に沿って、液体を噴出する。ノズル2は、ノズルブロック11に少なくとも1つ設けられている。支持機構3は、液体の噴流21の反力F21を受け止め、ノズルブロック11を支持する。ワーク8」は、洗浄装置10の図示しない載置台に支持される。載置台は、制御装置67の指令に応じて、ワーク8を旋回又は回転しても良い。
【0010】
移動機構5について説明する。移動機構5は、X軸移動機構(第2の移動機構)54と、Y軸移動機構(第1の移動機構)53とを含む。
【0011】
X軸移動機構54は、ベース54dと、X軸直線ガイド54a(第2のガイド)と、X軸サドル(第2のサドル)54bと、X軸駆動装置(第2の駆動装置)54cとを含む。ベース54dは、洗浄装置10に固定されている。2本のX軸直線ガイド54aは、X軸に平行に、間隔をあけてベース54dに固定されている。X軸サドル54bは、X軸直線ガイド54a上に移動可能に設けられている。X軸駆動装置54cは、ベース54dに固定されたX軸サーボモータ54c2と、ベース54dに回転可能に支持されたX軸ボールねじ54c1とで構成される。なお、X軸駆動装置54cは、上述の構成に替えて、空気圧シリンダ、油圧シリンダその他の流体シリンダを利用できる。
【0012】
Y軸移動機構53は、Y軸直線ガイド(第1のガイド)53aと、Y軸サドル(第1のサドル)53bと、Y軸駆動装置(第1の駆動装置)53cとで構成される。2本のY軸直線ガイド53aは、X軸サドル54b上に、Y軸方向84に沿って設けられる。Y軸駆動装置53cは、Y軸ボールねじ53c1とY軸サーボモータ53c2とを含む。
【0013】
なお、Y軸駆動装置53cは、上述の構成に替えて、空気圧シリンダ、油圧シリンダその他の流体シリンダを利用できる。この場合において、ガイドブッシュ9及びY軸直線ガイド53aのいずれかを省いても良い。
【0014】
なお、移動機構5は、上述の直交軸形の機構に替えて、水平多関節機構、パラレルリンク機構を用いても良い。
【0015】
ガイドブッシュ9は、X軸サドル54bにY軸方向84に沿って固定されている。ガイドブッシュ9は、中空円筒状である。ガイドブッシュ9は、導管7をY軸方向84に沿って摺動可能に支持する。
【0016】
導管7は、中空円筒状をなしている。導管7の一方の端部は、Y軸サドル53bに固定される。導管7の他方の端部は、ノズルブロック11に固定されている。導管7は、ノズルブロック11に、導管7に設けられた図示しないフランジで固定できる。導管7は、ガイドブッシュ9に挿入されている。導管7は、液体をノズルブロック11へ送液する。Y軸サドル53bには、ロータリージョイント64が取付けられる。ロータリージョイント64は、導管7に連通している。ロータリージョイント64には、逆U字状に設けられたホース63が設けられている。ホース63は、液体供給装置61に連通している。ホース63は、両端に口金具が固定されたゴムホースが利用できる。つまり、液体は、液体供給装置61から、ホース63、ロータリージョイント64、導管7、ノズルブロック11を通り、ノズル2から噴出する。
【0017】
液体供給装置61は、ピストンポンプ、渦巻きポンプその他のポンプが利用できる。液体供給装置61は、2MPaないし60MPaの圧力および50L/minないし500L/minの流量を吐き出してもよい。
【0018】
図2は、ノズルブロック11及びスライダ32を、ノズル2の反対面から見た斜視図である。
図1及び
図2を参照して、ノズルブロック11は、直方体状をなしている。ノズルブロック11は、液体導入口12と、液体導入口12と連通する連通路13と、連通路13と連通するノズル取り付け口14とを含む。液体導入口12は、導管7と接続する。
【0019】
少なくとも1つのノズル2は、それぞれのノズル取り付け口14に設けられる。全てのノズル2は、液体導入口12と連通している。全てのノズル2は同時に噴流21を生成する。ノズル2は、棒状の直線噴流を生成する。ワーク8の形状および要求される洗浄程度に応じてノズル2の噴口の直径および個数が定められる。
【0020】
なお、ノズル2は、平面上で扇形に広がる噴流を生成するフラットスプレーノズルを採用できる。この場合、噴流が形成する扇面は、例えばX軸方向83に対して45°傾くように、ノズル2が設けられても良い。
【0021】
本実施形態の支持機構3は、スライド板(ガイド部材)31とスライダ(スライド装置)32を含む。スライダ32は、Y軸方向84のみならず、X軸方向83にスライド板31上を摺動する。
【0022】
スライド板31は、ノズル2によって生成される噴流21の反力F21を受け止める。ガイド面31aは、スライド板31のノズルブロック側の表面である。ガイド面31aは摺動範囲全域にわたって、非常に平滑に製作されている。ガイド面31aは、耐摩耗性を有する。ガイド面31aは、例えば窒化チタン被膜、結晶性カーボン被膜その他のセラミックス被膜が形成されている。ガイド面31aは、摺動面32aと全面で接触し、スライダ32をガイドする。
【0023】
スライダ32は、ノズルブロック11のノズル2から見て背面側に設けられる。スライダ32は、摺動面32aを含む。摺動面32aは、ガイド面31aと摺動する。
【0024】
スライダ32は、ガイド面31aより軟質の材料で形成される。また、スライダ32には、炭素、雲母その他の固体潤滑剤が埋め込まれても良い。固体潤滑剤が埋め込まれていれば、摺動面32aとスライド板との摩擦力を低減できる。スライダ32がガイド面31aより軟質であるため、スライダ32の摺動によってガイド面31aが摩耗しない。そして、交換の容易なスライダ32が摩耗する。
【0025】
望ましくは、摺動面32aの周囲には、面取り32bが設けられる。面取り32bは、摺動面32aに対して、例えば10°ないし30°のような浅い角度で設けてもよい。面取り32bが設けられた場合、スライダ32は滑らかに移動しやすい。
【0026】
摺動面32aには、異物を排出するための排出溝32fが一つ以上設けられても良い。排出溝32fは、摺動面32aの全幅にわたって、摺動面32aからわずかにZ軸方向85に向けて掘り込まれるように設けられている。排出溝32fは、Z軸方向85から見て斜めに設けられている。排出溝32fの個数は多いことが望ましい。排出溝32fが傾斜して設けられているため、ノズルブロック11がY軸方向84又はX軸方向83に沿って移動したときに、異物が排出されやすい。
【0027】
スライダ32には、一つ以上の清掃用ノズル32cを設けても良い。清掃用ノズル32cは、例えば面取り32bに設けられる。清掃用ノズル32cは、連通路13と清掃用通路32dによって連通している。清掃用ノズル32cは、ノズル2と同時に噴流を生成する。清掃用ノズル32cの開口を、ノズル2の開口よりも小さい範囲で設けられる。すると、清掃用ノズル32cから生成する噴流の反力F32が、ノズル2から生成する噴流21の反力F21を打ち消す。すると、摺動面32aとスライド板31との間の摩擦力を低減できる。なお、清掃用ノズル32cは、排出溝32fに、Z軸方向85に沿って設けられても良い。
【0028】
スライダ32の周囲には、スクレーパ32eが設けられても良い。スクレーパ32eは、弾性体で形成された板材である。スクレーパ32eは、例えば天然ゴム若しくは、ニトリルゴム(NBR),エチレンプロピレンゴム(EPDM),フッ素ゴムその他の合成ゴム、又は、テトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)その他のエンジニアリングプラスチックで製造できる。スクレーパ32eは、摺動面32aとスライド板31との間に切りくず、繊維くずその他の異物が噛み込むことを防止できる。スクレーパ32eは、ノズルブロック11の側面に、取外し可能に取り付けできる。
【0029】
なお、スクレーパ32eに替えて、スライド板31に向けて植毛されたブラシを利用できる。このブラシは、プラスチック繊維の植毛材を利用できる。この場合、望ましくは清掃用ノズル32cを併用する。清掃用ノズル32cはブラシに向けて噴流を生成できる。
【0030】
本実施形態の洗浄装置10は、ノズル2から生成された噴流21の反力F21を、ノズルブロック11の背面側でスライダ32を介してスライド板31によって受け止められる。そして、支持機構3のスライダ32は、スライド板31上を摺動する。スライダ32がスライド板31上を摺動するため、ノズルブロック11は、Y軸方向84に正確に沿って移動できる。そのため、導管7に噴流21の反力による曲げモーメントが発生しない。導管7の剛性を低くでき、導管7の肉厚を薄くできる。結果として、導管7の質量を低減でき、移動機構5の可搬質量及びイナーシャを小さくできる。移動機構5のサイズも小型化できる。また、ガイドブロック9とノズルブロック11の間の距離を長くできる。さらに、導管7に大きな曲げモーメントが発生しないため、導管7が曲がらず、ノズル2の噴射方向は、正確にZ軸方向85に沿う。従って、移動機構5によってノズルブロック11を運動させたときに、ノズル2から生成される噴流21は、正確に延びる。そのため洗浄装置10は、高い洗浄性能を発揮できる。
【0031】
噴流21の反力F21は、噴流の噴射圧力の1/2乗に比例し、噴流21の流量に比例する。噴流21による洗浄を行う場合、一般的に噴流の圧力、流量が大きくなれば、除去能力が大きくなる。しかし、噴流21の流量および圧力が大きくなると共に、反力が大きくなる。洗浄装置10は、大容量の噴流21をノズルブロック11から生成するときに特に効果を奏する。
【0032】
導管7をガイドブッシュ9でガイドし、導管7の端部をY軸サドル53bで移動させる。導管7がガイドブッシュ9でガイドされているため、導管7がY軸方向84に対して傾斜することが防止される。このため、Y軸移動機構53は、導管7を介してノズルブロック11の位置を正確に位置決めできる。
【0033】
移動機構5は、X軸方向83およびY軸方向84に自在に移動できる。そのため、洗浄装置10内に投入したワーク8の形状に合わせて、ノズルブロック11の位置を制御できる。そして、洗浄順序、洗浄方法を自在に制御できる。
【0034】
Y軸移動機構53は、Y軸直線ガイド53aと、Y軸直線ガイド53aに移動自在に設けられたY軸サドル53bと、Y軸駆動装置53cとを含む。そのため、Y軸移動機構は、Y軸サドル53bをスムーズにかつ、直線からのずれが少ない軌跡で移動できる。そしてノズルブロック11を直線である軌跡に沿って制御できる。X軸移動機構54も同様である。
【0035】
移動機構5は、導管7を介してノズルブロック11を移動できるため、洗浄装置10を簡単に構成できる。導管7が重力方向下側を向いているため、導管7に重力による大きな曲げモーメントが発生しない。導管7に大きな曲げモーメントが発生しないため、導管7が曲がらず、ノズル2の噴射方向は、正確にZ軸方向85に沿う。
【0036】
(第2実施形態)
図3を参照して、第2実施形態の洗浄装置について説明する。本実施形態の洗浄装置は、支持機構3の構成が上述の第2実施形態の洗浄装置10と異なるが、その他の部位の構造は同一である。以下の説明においては、支持機構3について詳細に説明する。上述の実施形態と同一の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0037】
本実施形態の支持機構3は、ボール支持装置33とスライド板31(
図1参照)とを含む。
【0038】
ボール支持装置(スライド装置)33は、ノズル2から見て、ノズルブロック11の背面側に少なくとも1つ設けられている。ボール支持装置33は、それぞれのノズル2が生成する噴流の反力F21を均等に受けるように設置される。
図3においては、ノズル2が均等にノズルブロック11に設けられているため、2つのボール支持装置33が両端部に設けられている。ノズルブロック11が受ける反力F21の大きさに応じて、ボール支持装置33の設置数が決められる。
【0039】
ボール支持装置33は、ハウジング(回転体支持体)33aと、支持ローラ33bと、転動ボール(回転体)33cを含む。転動ボール33cは、ガイド面31aを転動する。ボール支持装置33は、ノズル21が生成する噴流21の反力F21に抗して、スライド板31にガイドされながらノズルブロック11を支持する。
【0040】
ハウジング33aは、内部に空洞部を有し、略円錐台形状をなす。ハウジング33aは、その底面がノズルブロック11に面するように固定される。ハウジング33aは、支持ローラ33bおよび転動ボール33cを回転可能に保持し、転動ボール33cの飛び出しを抑える。
【0041】
3本の支持ローラ33bは、ハウジング33aの内部に設けられる。それぞれの支持ローラ33bは、その重心がハウジングの中心軸を通り、XY平面(平面)にある正3角形の各辺に沿って、その辺の中央に設けられる。支持ローラ33bは、それぞれが自在に回転できるように設けられている。なお、支持ローラ33bの数量は4本としても良い。
【0042】
転動ボール33cは、3本の支持ローラ33bとハウジング33aとの間に挟まって保持される。転動ボール33cは、3本の支持ローラ33bとそれぞれ1点で接触している。そのため、転動ボール33cは自在に回転できる。
【0043】
支持ローラ33b及び転動ボール33cに向けて、連通路13と連通する洗浄ノズル33dを設けても良い。洗浄ノズル33dから噴出した液体は、支持ローラ33bと転動ボール33cとの間及びハウジング33aと転動ボール33cとの間に切りくず、繊維くずその他の異物が噛み込むことを防止する。洗浄ノズル33cは、ガイド面31aの内、台車の近傍部を洗浄できる。洗浄ノズル33dは、ノズル21の噴射反力F21の一部を相殺する機能を備えている。なお、ガイド面31aを洗浄する図示しない別のノズルを設けても良い。また、これらの洗浄ノズルと併せて、異物の噛み込みを防止するスクレーパ又はブラシを更に設けても良い。
【0044】
ボール支持装置33は、転動ボール33cがガイド面31aを転動するため、摩擦抵抗を低減できる。
【0045】
(第3実施形態)
図4を参照して、第3実施形態の洗浄装置について説明する。本実施形態の洗浄装置は、支持機構3の構成が上述の実施形態1の洗浄装置10と異なるが、その他の部位の構造は同一である。以下の説明においては、支持機構3について詳細に説明する。上述の実施形態と同一の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
本実施形態の支持機構3は、以下に説明する台車支持装置(スライド装置)34と、ガイド面31aを持つスライド板31(
図1参照)を含む。台車支持装置34は、ノズル2から見て、ノズルブロック11の背面側に設けられている。台車支持装置34は、回転台34aと、台車(回転体支持体)34bと、車輪(回転体)34dとを含む。車輪34dは、ガイド面31aを転動する。台車支持装置34は、ノズル21が生成する噴流21の反力F21に抗して、スライド板31にガイドされながらノズルブロック11を支持する。
【0047】
回転台34aは、ノズル21の噴射方向から見て、ノズルブロック11の背面に設けられている。回転台34aは、台車34bをZ軸方向85のまわりに回転可能に支持する。回転台34aは、スラスト力を受ける軸受を含んでも良い。
【0048】
台車34bは、略U字状に形成されている。即ち、台車34bの先端側に空洞となっている切欠き部34b1が、Y軸方向84に沿って設けられている。台車34bの底部が回転台34aに回転可能に設けられている。台車34bは、切欠き部34b1を貫通するように、車軸34cを保持している。
【0049】
車軸34cは、X軸方向83に沿って設けられている。車輪34dは、車軸34cに回転可能に設けられている。車輪34dは、台車34bの切欠き部34b1に納められる。車輪34dは、車軸34cと一体となって回転しても良い。
【0050】
ノズルブロック11の台車支持装置34の近傍には、洗浄ノズル34eが設けられても良い。洗浄ノズル34eは、台車支持装置34を洗浄する。洗浄ノズル34eは、ガイド面31aの内、台車の近傍部を洗浄できる。洗浄ノズル34eは、連通路13と連通している。洗浄ノズル34eは、ノズル21の噴射反力F21の一部を相殺する機能を備えている。なお、ガイド面31aを洗浄する図示しない別のノズルを設けても良い。
【0051】
台車支持装置34は、台車34bがZ軸方向85のまわりに回転しながら、車輪34dがガイド面31aを転動するため、台車支持装置(スライド装置)34とスライド板(ガイド部材)31との摩擦抵抗を低減できる。
【0052】
(第4実施形態)
図5及び
図6を参照して、本実施形態の洗浄装置200について説明する。洗浄装置200は、主としてノズルブロック211、支持機構3、導管7、Y軸移動機構53が第1実施形態の洗浄装置10と異なる。以下の説明では上述の実施形態と異なる部分について詳細に説明する。上述の実施形態と同一の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
ノズルブロック211は、X軸方向83に沿って延びる横長の矩形状をなしている。ノズルブロックの中央部に、4つのノズル群23〜26に分けて、多数のノズル2が設けられている。全てのノズル群は同じ構成である。以下、ノズル群23についてのみ詳細に説明する。ノズル群24〜26およびそれらに接続する流路構成については、詳細な説明を省略する。
【0054】
ノズル群23に属するノズル2は、Z軸方向(軸線方向)85から見て、1列に配列している。これらのノズル2の配列方向は、X軸方向83から傾いている。同じノズル群に属するノズル2は、X軸方向83において等しい間隔81で配置できる。ノズル2は、直線棒状流の噴流21を生成する。ノズル群23に属する全てのノズル2は、連通路133に連通している。なお、ノズル2は千鳥状に、又は格子状に配列しても良い。
【0055】
ここで、隣り合うノズル群に属し、かつ隣り合うノズル2のX軸方向83の間隔82は、間隔81と異なっても良い。具体的には、間隔82は間隔81よりも広くできる。このように構成すれば、連通路133を配列しやすい。制御装置67は、それぞれのノズル群に属するノズル2が生成する噴流21の衝突範囲に合わせて、X軸移動機構54を制御する。
【0056】
好ましくは、ノズル2の噴口の直径が、間隔81の60%から120%で設けられる。このように設計されれば、噴流21はノズル2からの距離が離れるにしたがって若干広がるため、全面にわたってほぼ均一に噴流がワーク8に衝突する。
【0057】
なお、間隔81は、ワーク8に設けられているタップ穴、通し穴、油穴等の間隔に対応して、ノズル2の直径の数倍を超えて設けても良い。この場合においては、X軸移動機構54に加えて、Y軸移動機構53にもサーボモータ送りによる送り機構が採用される。なお、X軸方向83、Y軸方向84の送りの両者をサーボモータにすれば、ノズルブロック211の位置を自在に制御できるため、ノズル2の配置が等間隔・均質でなくても良い。
【0058】
また、ノズル2は、フラットスプレーノズルを利用できる。この場合、間隔81は、噴流の噴角およびノズル2とワーク8との距離に応じて広くできる。
【0059】
連通路133は、ノズルブロック211の一面(
図5の上側)に設けられた液体導入口123に連通している。導管73の一方端は、液体導入口123に接続している。導管73の一方端は、ノズルブロック211に固定されている。導管73の他方端は、ソレノイド弁623に接続されている。ソレノイド弁623は、液体供給装置61と接続する。
【0060】
ソレノイド弁623の開弁によって、ノズル群23に属する全てのノズル2に液体が供給され、これらのノズル2は噴流21を生成する。そしてソレノイド弁623の閉弁によって、ノズル群23に属する全てのノズル2は、液体の供給が停止され、噴流21の生成を停止する。
【0061】
洗浄装置200は、液体分配装置62を備えている。液体分配装置62は、ノズル群23〜26の数と同数のソレノイド弁623〜626で構成されている。制御装置67は、それぞれのソレノイド弁623〜626を独立して開弁し又は閉弁する。例えば、制御装置67は、数値制御プログラムに沿って、ノズルブロック211の運動と連動して、ソレノイド弁を一つのみ開弁できる。このとき、制御装置67は、開弁するソレノイド弁を順次切り替えられる。複数のソレノイド弁623〜626のうち、一つずつを順次開弁することにより、同時に噴射する流量を低減できる。そして液体供給装置61の容量を低減できる。
【0062】
なお、液体分配装置は、上述の構成に替えて、複数の2方向切替え弁とカム装置で構成できる。この場合、カム装置は、2方向切替え弁の内、いずれか一つのみを開弁するよう構成できる。このような液体分配装置として、例えば特許3812979号を利用できる。
【0063】
導管73〜76の他方端は、連結板78で連結されている。複数の導管の内、両端の導管73、76は、ガイドブッシュ93、96に摺動するように挿入されている。中間の導管74、75は、後述の貫通穴94内を貫通している。ガイドブッシュ93、96は、ガイドブッシュ9と同様の構成である。
【0064】
X軸サドル254bは、第1実施形態のX軸サドル54bと同様であるが、次の点で異なる。X軸サドル254bは、Y軸直線ガイドを含まない。X軸サドル254bは、2つのガイドブッシュ93、96及び2つの貫通穴94を含む。貫通穴94は、導管74、75との間に十分な隙間があるよう、導管74より一回り大きく設けられている。ガイドブッシュ93、96、及び貫通穴94は、Y軸方向84に沿って設けられ、それぞれがX軸方向83に沿って一列に等間隔で配列している。
【0065】
複数の導管73〜76の内、両端の導管73、76のみガイドブッシュ93、96内を摺動することで、ガイドブッシュの摺動抵抗を低減できる。両端の導管73、76をガイドブッシュ93、96で支持するため、支持ピッチが広い。そのため、導管73、76のY軸方向84からの傾きを効果的に低減できる。従って、上述の構成により、摺動抵抗の低減と、ノズルブロック211の位置決め精度を両立できる。
【0066】
ノズルブロック211の背面の両端部には、支持機構3であるクロス型直線ガイド37が設けられている。クロス型直線ガイド37は、2本のY軸ガイドレール(第1のブロック支持レール)37aと、クロスガイドブロック(移動ブロック)37bと、2本のX軸ガイドレール(第2のブロック支持レール)37cを含む。Y軸ガイドレール37aは、ノズルブロック211の両端部に、Y軸方向84に沿って固定されている。X軸ガイドレールは、洗浄装置200の固定部(例えば架台)に、X軸方向83に沿って固定されている。クロスガイドブロック37bは、X軸ガイドレール37c上に、X軸方向83に沿って摺動可能に設けられている。Y軸ガイドレール37aは、クロスガイドブロック37b上を、Y軸方向84に沿って摺動可能に設けられている。
【0067】
すなわち、クロス型直線ガイド37は、ノズルブロック211の背面に、Y軸方向84に沿って設けられたY軸ガイドレール37aと、X軸方向83に沿って設けられたX軸ガイドレール37cと、クロスガイドブロック37bを有する。クロスガイドブロック37bは、Y軸ガイドレール37aとX軸ガイドレール37cに挟まれるように設けられている。クロスガイドブロック37bは、Y軸ガイドレール37aに対してY軸方向84に沿って相対的に移動し、X軸ガイドレール37cに対してX軸方向83に沿って相対的に移動できる。
【0068】
クロス型直線ガイド37は、ノズルブロック211をX軸方向83及びY軸方向84に沿って自在に移動させる。そして、クロス型直線ガイド37は、ノズルブロック211を両端で支持しているため、噴流21の反力F21を受け止め、ノズルブロック211をスムーズに移動できる。
【0069】
テレスコカバー37dは、Y軸ガイドレール37aにY軸方向84に沿って伸縮可能に設けられてもよい。テレスコカバー37dは、Y軸ガイドレール37aとクロスガイドブロック37bとの間に、噴流、切りくず等の異物が侵入するのを防止する。同様に、テレスコカバー37eは、X軸ガイドレール37cにX軸方向83に沿って伸縮可能に設けられてもよい。
【0070】
なお、上述の構成に替えて、X軸ガイドレール37c、Y軸ガイドレール37aのカバーとして、ジャバラ、ロールカバーその他の伸縮カバーを設けても良い。
【0071】
Y軸移動機構53は、Y軸駆動装置である流体圧シリンダ253cを含み、Y軸直線ガイド53aを含まない。流体圧シリンダ253cは、非圧縮性流体圧シリンダである油圧シリンダ又は圧縮性流体圧シリンダである空気圧シリンダを利用できる。流体圧シリンダ253cは、X軸サドル254bに固定されている。流体圧シリンダ253cは、連結板78を駆動する。
【0072】
洗浄装置200は、例えば次のように洗浄動作を行う。ソレノイド弁623を開弁する。流体圧シリンダ253cを伸ばしながら、X方向を
図5の左側の位置X0へ位置決めする。その後、洗浄能力に応じた一定の速度vで流体圧シリンダを縮める。次に、間隔81にノズル群23に含まれるノズルの数(8)とノズル群の数(4)を乗じた幅(スライド幅X1)だけX方向を右側へスライドする。再度速度vで流体圧シリンダを伸ばす。次に、ソレノイド弁623を閉弁し、ソレノイド弁624を開弁する。続いてX座標を(スライド幅X1+幅82)だけ左側へスライドして位置決めする。流体圧シリンダを速度vで縮める。更にX座標をスライド幅X1だけ左側へスライドして位置決めした後、流体圧シリンダを速度vで伸ばす。この作業を繰返すように洗浄を行えば、ノズル群23の噴流21が掃引したY方向の帯と、ノズル群24の噴流21が掃引したY方向の帯が隣り合う。そして、広い範囲にわたって、均一な洗浄が行われる。
【0073】
洗浄装置200は、多数のノズル2を含むため、ノズルブロック211をY軸方向84に沿って移動させることで、広い面にほぼ均一に噴流21を衝突させられる。X軸移動機構54は、ボールねじ機構を用いている。X軸方向83に沿う方向については、精密に位置決めできる。このため、噴流21を衝突させる範囲(上述のY方向の帯)をX軸方向に正確に並べられる。流体圧シリンダによってY軸方向84をスライドさせることにより、構成を簡略化できる。
【0074】
洗浄装置200は、クロス型直線ガイド37を採用したため、ノズルブロック211が抵抗なくスムーズに移動できる。また、ノズルブロック211は、その姿勢が傾くことなく、移動できる。また、X軸直線ガイド54aと、X軸ガイドレール37cの設置面のみがワーク8に対して高い精度で設けられれば、精密に洗浄装置200を組立できる。このため、安価な洗浄装置200を提供できる。
【0075】
なお、洗浄装置200は、クロス型直線ガイド37を用いたが、これを2本のY軸方向84に沿って設けられた直線ガイド、スライドガイド又はボールスプラインに置き換えても良い。この場合、X軸移動機構54を取り除く。
【0076】
(第5実施形態)
図7を参照して、第5実施形態の洗浄装置300について説明する。洗浄装置300は支持機構3がY軸方向84に沿って設けられた直線ガイド35であり、X軸移動機構54を有さず、Y軸移動機構53が流体圧シリンダ253cであり、ノズルブロック311がY軸方向84から見てL字状を成している点で第1実施形態と異なる。以下、上述の実施形態と同一の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
ノズルブロック311には、Z軸方向85に沿って噴出する数多くのノズル27が設けられている。X軸方向83に沿って噴出するノズル28の数は、Z軸方向85に沿って噴出するノズル27の数よりも少ない。ノズルブロック311が受ける噴流の反力の合力は、ほぼZ軸方向85に向いている。このとき、支持機構3は、Z軸方向85のノズルブロック311の背面側に設けられる。
【0078】
ノズル27は、フラットスプレーノズルを採用している。フラットスプレーノズルを採用したため、洗浄装置300は、ワーク8のほぼ全域にわたって、噴流21を衝突できる。そしてノズルブロック311は、X軸方向83に移動させる必要がない。
【0079】
ノズルブロック311のノズル27から見て背面の両端部には、直線ガイド35が設けられている。具体的には、Y軸方向84に沿って直線ガイドレール(ガイド部材)35aが洗浄装置300に固定されている。ガイドブロック(スライド装置)35bは、直線ガイドレール35a上を移動可能に設けられている。ガイドブロック35bは、ノズルブロック311の背面に固定されている。直線ガイド35は、テレスコカバー、ジャバラその他の伸縮カバーで覆われても良い。なお、直線ガイド35に替えて、ボールスプライン、スライド棒及びスライドガイド、レール及びレール上を走行する車輪を利用できる。
【0080】
ノズルブロック311の上面には、導管7が設けられている。導管7は、ガイドブッシュ9に摺動するように挿入されている。導管7の上部は、流体圧シリンダ253cのピストンに接続されている。流体圧シリンダ253cは、L字状のブラケット301に固定されている。導管7には、逆U字状に設けられたホース63が接続される。ホース63は、液体供給装置61と接続している。液体は、液体供給装置61から、ホース63、導管7、ノズルブロック311を通じて、ノズル27、28へ供給される。
【0081】
ノズルブロック311は、直線ガイド35に沿って姿勢を保ちながら移動するため、Y軸移動機構53は、直線ガイドを設けなくても良い。ガイドブロック35bは直線ガイドレール35aにガイドされて移動する。そして、直線ガイドレール35aは、噴流21の反力を受け止める。
【0082】
なお、前述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形できる。特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記それぞれの実施形態は、好適な例を示したものである。当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現できる。例えば、第1実施形態のノズルブロック11を第4実施形態のノズルブロック211に置き換えても良い。全ての変形例および改良例は添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。