(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-110852(P2018-110852A)
(43)【公開日】2018年7月19日
(54)【発明の名称】電気解剖学的マップ上での点の選択
(51)【国際特許分類】
A61B 5/044 20060101AFI20180622BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20180622BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20180622BHJP
【FI】
A61B5/04 314K
G06T19/00 A
G06T1/00 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-252884(P2017-252884)
(22)【出願日】2017年12月28日
(31)【優先権主張番号】15/394,980
(32)【優先日】2016年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ファディ・マサルウィ
(72)【発明者】
【氏名】イド・イラン
【テーマコード(参考)】
4C127
5B050
5B057
【Fターム(参考)】
4C127AA01
4C127HH11
4C127HH13
5B050AA02
5B050BA03
5B050BA09
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5B057DB03
5B057DC16
(57)【要約】
【課題】 コンピュータでレンダリングされたモデルとやり取りするための方法及びインタフェースを提供すること。
【解決手段】 記載された実施形態は、ディスプレイ及びプロセッサを含むシステムを備える。プロセッサは、ユーザーからの位置決め入力に応答して、ディスプレイに表示され、かつ対応のデータ点を印付ける複数のマーカーが表示される三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にインジケータを位置付けるように構成されている。プロセッサは、続いて、ユーザーからの選択入力の継続中に、輪郭上の全点が、マップの表面に対して増加する測地的距離で、特定の点から等距離を維持するように表面に沿って輪郭を拡張し、輪郭の内側にあるマーカーのうちの対応する1つによって印付けされる各データ点の1つ又は2つ以上の特性をディスプレイに表示するように更に構成されている。他の実施形態も記載する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
ユーザーからの位置決め入力に応答して、前記ディスプレイに表示され、かつ対応のデータ点を印付ける複数のマーカーが表示される三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にインジケータを位置付け、
続いて、前記ユーザーからの選択入力の継続中に、輪郭上の全点が、前記マップの表面に対して増加する測地的距離で、前記特定の点から等距離を維持するように、前記表面に沿って輪郭を拡張し、
前記輪郭の内側にある前記マーカーのうちの対応する1つによって印付けられる各前記データ点の1つ又は2つ以上の特性を前記ディスプレイに表示するように構成されている、プロセッサと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記インジケータがカーソルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記選択入力が、マウスボタンのクリックを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記輪郭の拡張中に前記ディスプレイに前記輪郭を表示するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電気解剖学的マップが、心臓表面の電気解剖学的マップを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ又は2つ以上の特性が、1つ又は2つ以上の電気特性を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記ユーザーからの速度指示入力に応答して前記輪郭の拡張速度を設定するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、可変拡張速度で前記輪郭を拡張するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内にあるいくつかの前記マーカーに応じて前記拡張速度を変動させるように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内にある前記マーカーの密度に応じて前記拡張速度を変動させるように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
方法であって、
プロセッサを使用し、ユーザーからの位置決め入力に応答して、対応のデータ点を印付ける複数のマーカーが表示される、表示された三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にインジケータを位置決めすることと、
続いて、前記ユーザーからの選択入力の継続中に、輪郭上の全点が、前記マップの表面に対して増加する測地的距離で、前記特定の点から等距離を維持するように、前記表面に沿って前記輪郭を拡張することと、
前記輪郭の内側にある前記マーカーのうちの対応する1つによって印付けられる各前記データ点の1つ又は2つ以上の特性を表示することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記インジケータがカーソルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記選択入力がマウスボタンのクリックを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記輪郭の拡張中に、前記輪郭を表示することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記電気解剖学的マップが心臓表面の電気解剖学的マップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は2つ以上の特性が、1つ又は2つ以上の電気特性を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ユーザーからの速度指示入力に応答して前記輪郭の拡張速度を設定することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記輪郭を拡張することが、可変拡張速度で前記輪郭を拡張することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記拡張速度が、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内にあるいくつかの前記マーカーに応じて変動する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記拡張速度が、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内の前記マーカーの密度に応じて変動する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータでレンダリングされた、解剖学的表面のモデルなどコンピュータでレンダリングされたモデルとやり取りするための方法及びインタフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元表面は、コンピュータメモリにおいて、タイル(例えば三角形タイル)の隣接する収集物によって表されることが多い。このような表現は、「テッセレーション」又は「メッシュ」と言われることがある。
【0003】
所定の表面に関して、表面に位置する2点間の「測地的距離」は、この表面に沿った、2点をつなぐ最短経路の長さである。曲面上に位置する点では、この距離は、これらの点間のユークリッド距離と異なることが多い。例えば、2つの丘の頂上間の測地的距離は地面に沿った、2つの丘の頂上間に伸びる最短経路の長さである。この距離は、空中で丘の頂上間を通る直線経路の長さである、丘の頂上間のユークリッド距離よりも大きい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの実施形態に従い、電気的インタフェース及びプロセッサを含むシステムが提供される。プロセッサは、ユーザーからの位置決め入力に応答して、ディスプレイに表示され、かつ対応のデータ点を印付ける複数のマーカーが表示される三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にインジケータを位置付けるように構成されている。プロセッサは、続いて、ユーザーからの選択入力の継続中に、輪郭上の全点が、マップの表面に対して増加する測地的距離で、特定の点から等距離を維持するように表面に沿って輪郭を拡張し、輪郭の内側にあるマーカーのうちの対応する1つによって印付けされる各データ点の1つ又は2つ以上の特性をディスプレイに表示するように更に構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、インジケータはカーソルを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、選択入力は、マウスボタンのクリックを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、輪郭の拡張中に、ディスプレイに輪郭を表示するように更に構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、電気解剖学的マップは、心臓表面の電気解剖学的マップを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の特性は、1つ又は2つ以上の電気特性を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、ユーザーからの速度指示入力に応答して輪郭の拡張速度を設定するように更に構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、可変拡張速度で輪郭を拡張するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、輪郭の先方に位置する所定の領域内にあるいくつかのマーカーに応じて拡張速度を変動させるように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、輪郭の先方に位置する所定の領域内にあるマーカーの密度に応じて拡張速度を変動させるように構成されている。
【0014】
更に、本発明のいくつかの実施形態により、プロセッサを使用し、ユーザーからの位置決め入力に応答して、対応のデータ点を印付ける複数のマーカーが表示される、表示された三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にインジケータを位置決めすることと、を含む方法が更に提供される。この方法は、続いて、ユーザーからの選択入力の継続中に、輪郭上の全点が、マップの表面に対して増加する測地的距離で、特定の点から等距離を維持するように表面に沿って輪郭を拡張することと、輪郭の内側にあるマーカーのうちの対応する1つによって印付けされる各データ点の1つ又は2つ以上の特性を表示することと、を更に含む。
【0015】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と併せ読むことによってより深い理解がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、三次元電気解剖学的マップ内のデータ点を選択するためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、三次元電気解剖学的マップ内のデータ点を選択するためにプロセッサによって実行される方法の概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、輪郭が配置される電気解剖学的マップの表面を通る概略断面である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、プロセッサによって実行されるデータ点を選択するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概説
いくつかの実施形態では、被検者の心臓の電気解剖学的マップが構成される。用語「電気解剖学的」が意味するように、このようなマップは、心臓の構造に関係する解剖学的情報を心臓の電気的活動に関係する情報と組み合わせている。例えば、マップは、局所興奮時間(LAT)、電位、及び/又は表面の様々な位置で測定された他の特性によって着色された(又は、他の方法で注釈を施した)心臓表面を示す三次元メッシュを含んでよい。かかるメッシュは、通常、多数のデータ点で構成され、これらの各データ点は、対象特性が測定された心臓表面の特定の位置に対応する。メッシュは、データ点の対応の位置を示す複数のマーカーでスクリーン上にレンダリングされてよい。
【0018】
場合によって、ユーザーは、特定の対象領域に位置するデータ点群の調査、廃棄、編集、又は他の方法での処理を希望することがある。これを行うためには、ユーザーは、最初に、スクリーン上で対応するマーカーを選択することにより、関連するデータ点を選択する必要がある。しかしながら、かかる選択を実行することは、とりわけ対象領域に多数のデータ点が含まれている場合、面倒であり得る。例えば、従来の「ポイント&クリック」技法では、ユーザーは、対象データ点に対応する各マーカーをいちいちクリックする必要がある。
【0019】
したがって、本発明の実施形態は、電気解剖学的マップに属するデータ点を選択するための改良された技法を提供する。いくつかの実施形態では、ユーザーは拡張マウスクリックを実行する。すなわち、ユーザーは、マップの特定の対象点上でマウスボタンをクリック位置に保つ。クリックが保持されているため、輪郭は、輪郭上の全点が、増加する測地的距離で、特定の点から等距離を保つように、特定の点から外向きに拡張する。輪郭が拡張するとき、輪郭は、交差するあらゆるマーカーを包含する。したがって、対応するデータ点を選択する。ユーザーがマウスボタンを放すと、輪郭は拡張を停止し、選択した全データ点の特性が表示される。この方法では、多数のデータ点を比較的迅速に選択できてよい。
【0020】
更に、輪郭上の全点が対象点から測地的に(geodesically)等距離であるおかげで、上記のデータ点の選択は正確である。すなわち、この選択により、ユーザーがユーザーの対象領域内で全マーカーを手動でクリックしたときに達成したであろう結果と同様の結果を概ね達成するであろう。これは、心臓表面上の2点間の測地的距離が、生体電気信号が2点間を伝搬するのに必要な時間に概ね関連する(かかる信号は心臓の表面に沿って移動するため)ためである。通常、ユーザー(電気生理学者など)は、対象点の特定の伝搬時間内にあるデータ群を選択したいと考えるため、対象点からの測地的距離によりデータ点を選択することは、ユーザーの目的を達成する。
【0021】
他の実施形態では、ユーザーは仮想ブラシを提供され、ユーザーは、例えばマウスを使用して、このブラシをディスプレイ全体で移動させてよい。このブラシはマップ上に表示されるマーカーの上を移動するため、対応するデータ点が選択される。
【0022】
本明細書に記載の実施形態は、スクリーン上にレンダリングされるあらゆる種類の三次元モデルに属する、あらゆる種類の点の選択に適用されてよいことに留意されたい。あるいは、本明細書に記載の実施形態は、いずれの点選択も行う必要なく、対象点の特定の測地的距離内にあるモデル領域を識別するために使用されてよい。
【0023】
(対象点が対応する解剖学的表面の位置から特定の測地的距離にある解剖学的表面の位置にそれぞれ対応するマップ上の一連の点に輪郭が重ね合わされる場合、輪郭は、解剖学的表面のマップ上の対象点から特定の測地的距離にあるとされることに留意されたい)。
【0024】
システムの説明
最初に
図1を参照すると、これは、本発明のいくつかの実施形態による、三次元電気解剖学的マップ内のデータ点を選択するためのシステム20の概略図である。システム20は、プロセッサ22と、ディスプレイ24と、を備え、マウス26及び/又はキーボード28など1つ又は2つ以上の入力装置を更に備えてよい。
【0025】
図1に示すように、プロセッサ22は、被検者の心臓表面のマップなど三次元電気解剖学的マップ30をディスプレイ24に表示してよい。上述したように、電気解剖学的マップ30は、複数のデータ点で構成されてよく、各データ点は、電気解剖学的マップの上に表示される対応のマーカー32によって印付けられてよい。以下で詳述するように、ユーザーは、ディスプレイ24、マウス26、キーボード28、及び/又は任意の他の入力装置を使用して電気解剖学的マップとやり取りしてよい。例えば、以下に記載するように、ユーザーはマウスを使用して、電気解剖学的マップの両面に沿って輪郭34を拡張してよい。したがって、複数のデータ点を選択してよい。
【0026】
概して、プロセッサ22は、単一プロセッサとして、又は協調ネットワーク化若しくはクラスター化されたプロセッサセットとして具現化されてよい。プロセッサ22は、通常、プログラムされたデジタルコンピューティングデバイスであり、このデバイスは、中央演算処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性の二次記憶装置、例えばハードドライブ又はCD ROMドライブ、ネットワークインターフェース、及び/又は周辺デバイスを備える。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、当該技術分野で知られているように、CPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信、又は格納のために結果が生成される。プログラムコード及び/又はデータをプロセッサに、電子フォームで、例えばネットワークを介してダウンロードしてもよく、又は、その代わりに若しくはそれに加えて、非一時的な有形媒体(例えば、磁気、光学、又は電子メモリ)上に提供及び又は記憶してもよい。かかるプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載するタスクを行うように構成された、機械若しくは専用コンピュータを作り出す。
【0027】
ここで
図2を参照すると、これは、本発明のいくつかの実施形態による、三次元電気解剖学的マップ内のデータ点を選択するためにプロセッサ22によって実行される方法の概略図である。
【0028】
最初に、
図2の左側部分に示すように、プロセッサ22は、ユーザーから位置決め入力36を受信する。例えば、
図2に示すように、位置決め入力36は、マウス26の移動を含んでよい。位置決め入力36に応答して、プロセッサは、位置決め入力ごとに、表示された三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にカーソル39を位置付ける。あるいは、プロセッサは、任意の他の好適な種類の位置決め入力(例えば、キーボード28の矢印キーを押すこと、又はディスプレイ24のタッチスクリーンで実行される好適なジェスチャ)を受信し、それに応答して、位置決め入力によって示された特定の点の上にカーソル39又は任意の他の好適なインジケータを位置付けてよい。
【0029】
続いて、ユーザーは、例えば、マウス26のボタンをクリックすることにより、又はキーボード28のキーを押すことにより、選択入力38を開始する。次いで、
図2の中間部分に示すように、選択入力38の継続中(例えば、マウスボタンのクリック&ホールド中)に、プロセッサは、輪郭上の全点が、電気解剖学的マップの表面に対して増加する測地的距離D
Gで、カーソルが位置付けられた特定の点40から等距離を維持するように、表面に沿って輪郭34を拡張する。通常、プロセッサは、輪郭の拡張中に輪郭を表示する。いくつかの実施形態では、輪郭の拡張中に、ユーザーは、電気解剖学的マップの回転、電気解剖学的マップの拡大若しくは縮小、又は電気解剖学的マップのビューの他の方法での調整を行ってよい。
【0030】
選択入力は保持されているため、プロセッサは、対象点からの増加した測地的距離で輪郭を繰り返し再計算する。測地的距離は、ダイクストラ法(Dijksta's algorithm)又は参照により本明細書に援用される、SETHIAN,James A.,「A fast marching level set method for monotonically advancing fronts」,Proceedings of the National Academy of Sciences 93.4(1996):1591〜1595に記載の高速マーチング法など当該技術分野において周知の任意の好適な技法を使用して計算されてよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、輪郭の拡張中、輪郭34の拡張速度は一定に維持される。この速度は、ユーザーからの速度指示入力に応答してプロセッサによって設定されてよい。例えば、ユーザーは、キーボード28を使用して、所望の輪郭拡張速度を入力してよい。他の実施形態では、拡張速度は、輪郭の拡張中に変動する。例えば、拡張速度は、輪郭がより大きくなると増加してよい、並びに/又は輪郭の先方に位置する所定の領域内のマーカー数及び/若しくはその密度に応じて変動してよい。したがって、例えば、輪郭は、比較的少数のマーカーを含むマップの領域へはより迅速に拡張してよく、より多くのマーカーを含むマップの領域へはより低速で拡張してよい。かかる実施形態では、初期拡張速度、拡張加速度、及び/又は拡張の任意の他の関連パラメータは、ユーザーからの入力に応答してプロセッサによって設定されてよい。
【0032】
最終的に、
図2の右側部分に示すように、選択入力38が終了する。選択入力の終了に応答して、プロセッサは、輪郭34の拡張を停止する。
【0033】
輪郭の拡張の終了後に、プロセッサは、輪郭の内側にあるマーカー32のうちの対応する1つによって印付けられる各データ点の1つ又は2つ以上の特性を表示する。あるいは、又は加えて、プロセッサは、輪郭の拡張時にこれらの特性を表示してよい。例えば、輪郭がマーカーのうちの別の1つを通る、すなわち包含するたびに、プロセッサは、新たに包含されたマーカーによって印付けられるデータ点の特性を表示してよい。
【0034】
ここで
図3を参照すると、これは、本発明のいくつかの実施形態による、輪郭34が配置される表面41を通る概略断面である。
【0035】
図3の断面は、第1輪郭点42a及び第2輪郭点42bの2点で輪郭34を「横断する」。上述したように、輪郭34上の全点は、点40から等しい測地的距離にある。したがって、第1輪郭点42a及び第2輪郭点42bは、点40から等しい測地的距離D
Gに位置して示される。混乱を避けるために、2点間の測地的距離は、点が位置する表面に沿って測定され、したがって、2点間のユークリッド距離とは異なってよいことが強調されよう。例えば、
図3では、第2輪郭点42b及び第1輪郭点42a点が点40から等しい測地的距離にあるにもかかわらず、点40と第2輪郭点42bとの間のユークリッド距離D
E1は、点40と第1輪郭点42aとの間のユークリッド距離D
E2よりも小さい。
【0036】
概して、「概説」で上述したように、生体電気信号は心臓表面に沿って移動するため、心臓表面上での2点間の測地的距離は、かかる信号が2点間を伝搬するのに必要な時間に関連する。したがって、測地的距離は、典型的なユーザー(電気生理学者など)が心臓表面上での点間の「距離」を考える方法に一致する。したがって、輪郭34を使用したデータ点の選択は、ユーザーの対象領域内の全マーカーを手動でクリックしたときに達成したであろう結果と同様の結果を概ね達成する。
【0037】
上述したように、電気解剖学的マップ30内の各データ点は、心臓表面の電気特性など様々な特性を含んでよい。データ点の選択後、プロセッサは、選択した各データ点のこれらの特性のうちの1つ又は2つ以上をディスプレイ24に表示する。例えば、プロセッサは、選択した各データ点の対応のLAT及び/又は電位を表示してよい。あるいは、又は加えて、かかる特性は、輪郭によって包含される各データ点について、輪郭の拡張中に「リアルタイム」で表示されてよい。
【0038】
ここで
図4を参照すると、これは、本発明のいくつかの実施形態による、プロセッサ22によって実行されるデータ点を選択するための方法43のフロー図である。概して、方法43の工程の大部分は既に上述しているが、それでもなお
図4を参照して以下で簡潔に説明する。
【0039】
第1に、モデル表示工程44において、プロセッサは、上記の電気解剖学的マップなど三次元モデルを表示する。次いで、位置決め入力受信工程46において、プロセッサは、ユーザーから位置決め入力を受信する。これに応答して、位置決め工程48において、プロセッサは、位置決め入力によって示された、モデル上の特定の点の上にインジケータを位置付ける。次に、選択入力受信工程50において、プロセッサは、ユーザーから選択入力を受信する。これに応答して、輪郭拡張工程52において、プロセッサは、輪郭上の全点が、増加する測地的距離で、点から等距離を維持するように、モデルの表面に沿って外向きに輪郭を拡張する。輪郭の拡張中、プロセッサは、確認工程54において、選択入力が継続中かどうかを常に確認する。継続中の場合、プロセッサは、輪郭を拡張し続ける。それ以外の場合、停止工程56において、プロセッサは、輪郭の拡張を停止する。最終的に、特性表示工程58において、プロセッサは、選択したデータ点の特性を表示する(上記のように、特性表示工程58は、輪郭の拡張中により早期に実行されてよい)。
【0040】
他の実施形態では、ユーザーに仮想ブラシが提供され、次いでユーザーは、例えば、マウス26でブラシをドラッグすることによって、ブラシにモデル上を通過させる。ブラシがモデル上を通過すると、ブラシが通過したマーカーによって印付けられたデータ点が選択される。いくつかの実施形態では、プロセッサは、ブラシが通過したモデルの一部の着色、シェーディング、若しくは別の方法での印付けを行う、及び/又はブラシが通過したマーカー32の形を拡大するか、別の方法で変更して、選択されているデータ点をユーザーに示す。ブラシがモデル上を通過する間、ユーザーは、モデルの回転、モデルの拡大若しくは縮小、又はモデルのビューの他の方法での調整を行ってよい。
【0041】
プロセッサは、通常、ディスプレイ24のスクリーンを見るユーザーの視点に対してモデルの上又は前にブラシを位置付ける。ユーザーがモデル全体でブラシを移動させると、プロセッサは、三次元の仮想物体がモデルの表面と交差するように、この物体をブラシからスクリーンに投影する。プロセッサは、交差が生じた表面の領域を識別し、次いで、マーカーがこの領域内にあるいずれかのデータ点を選択する。例えば、ユーザーが、スクリーン全体で円形ブラシを移動させるとき、プロセッサは、ブラシから投影された仮想円筒がモデルの表面と交差する領域を計算してよく、次いで、マーカーがこの領域内にあるいずれかのデータ点を選択してよい。
【0042】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術には見られない特徴の変形例及び改変例をも含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
ユーザーからの位置決め入力に応答して、前記ディスプレイに表示され、かつ対応のデータ点を印付ける複数のマーカーが表示される三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にインジケータを位置付け、
続いて、前記ユーザーからの選択入力の継続中に、輪郭上の全点が、前記マップの表面に対して増加する測地的距離で、前記特定の点から等距離を維持するように、前記表面に沿って輪郭を拡張し、
前記輪郭の内側にある前記マーカーのうちの対応する1つによって印付けられる各前記データ点の1つ又は2つ以上の特性を前記ディスプレイに表示するように構成されている、プロセッサと、を備えるシステム。
(2) 前記インジケータがカーソルを含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記選択入力が、マウスボタンのクリックを含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、前記輪郭の拡張中に前記ディスプレイに前記輪郭を表示するように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記電気解剖学的マップが、心臓表面の電気解剖学的マップを含む、実施態様1に記載のシステム。
【0044】
(6) 前記1つ又は2つ以上の特性が、1つ又は2つ以上の電気特性を含む、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサが、前記ユーザーからの速度指示入力に応答して前記輪郭の拡張速度を設定するように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、可変拡張速度で前記輪郭を拡張するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内にあるいくつかの前記マーカーに応じて前記拡張速度を変動させるように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサが、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内にある前記マーカーの密度に応じて前記拡張速度を変動させるように構成されている、実施態様8に記載のシステム。
【0045】
(11) 方法であって、
プロセッサを使用し、ユーザーからの位置決め入力に応答して、対応のデータ点を印付ける複数のマーカーが表示される、表示された三次元電気解剖学的マップ上の特定の点の上にインジケータを位置決めすることと、
続いて、前記ユーザーからの選択入力の継続中に、輪郭上の全点が、前記マップの表面に対して増加する測地的距離で、前記特定の点から等距離を維持するように、前記表面に沿って前記輪郭を拡張することと、
前記輪郭の内側にある前記マーカーのうちの対応する1つによって印付けられる各前記データ点の1つ又は2つ以上の特性を表示することと、を含む、方法。
(12) 前記インジケータがカーソルを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記選択入力がマウスボタンのクリックを含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記輪郭の拡張中に、前記輪郭を表示することを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記電気解剖学的マップが心臓表面の電気解剖学的マップを含む、実施態様11に記載の方法。
【0046】
(16) 前記1つ又は2つ以上の特性が、1つ又は2つ以上の電気特性を含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記ユーザーからの速度指示入力に応答して前記輪郭の拡張速度を設定することを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(18) 前記輪郭を拡張することが、可変拡張速度で前記輪郭を拡張することを含む、実施態様11に記載の方法。
(19) 前記拡張速度が、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内にあるいくつかの前記マーカーに応じて変動する、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記拡張速度が、前記輪郭の先方に位置する所定の領域内の前記マーカーの密度に応じて変動する、実施態様18に記載の方法。
【外国語明細書】