(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-111889(P2018-111889A)
(43)【公開日】2018年7月19日
(54)【発明の名称】紡糸フィルタ、紡糸パック及び紡糸方法
(51)【国際特許分類】
D01D 1/10 20060101AFI20180622BHJP
D01D 4/00 20060101ALI20180622BHJP
【FI】
D01D1/10 104
D01D4/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-1145(P2017-1145)
(22)【出願日】2017年1月6日
(11)【特許番号】特許第6108585号(P6108585)
(45)【特許公報発行日】2017年4月5日
(71)【出願人】
【識別番号】510096658
【氏名又は名称】渡邊 武
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 武
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045CA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱可塑性樹脂の原料を濾過する際に、濾過材の周囲に設けられた金属リムから原料が漏れ難いようにする紡糸フィルタの提供。
【解決手段】平面視矩形の濾過材13と、濾過材13の周囲に設けられた平面視矩形の金属リム15と、を備え、濾過材13は、波形断面を有し、その波線方向Xが、金属リム15の一辺15aに対して、所定の角度θ好ましくは30〜60°で、より好ましくは45°で傾斜しており、金属リム15は、濾過材13の両面から濾過材13を挟持しており、更に、角度θが、30°〜60°である紡糸フィルタ7。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸パックに対して着脱可能な紡糸フィルタであって、
前記紡糸フィルタは、平面視矩形の濾過材と、前記濾過材の周囲に設けられた平面視矩形の金属リムと、を備え、
前記濾過材は、波形断面を有し、その波線方向が、前記金属リムの一辺に対して、所定の角度で傾斜しており、
前記金属リムは、前記濾過材の両面から前記濾過材を挟持している
ことを特徴とする紡糸フィルタ。
【請求項2】
前記角度は、30°〜60°である
ことを特徴とする請求項1に記載の紡糸フィルタ。
【請求項3】
前記角度は、45°である
ことを特徴とする請求項2に記載の紡糸フィルタ。
【請求項4】
前記濾過材は、金属線不織布を備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紡糸フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の紡糸フィルタを備える
ことを特徴とする紡糸パック。
【請求項6】
請求項5に記載の紡糸パックを用いて紡糸する
ことを特徴とする紡糸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の原料を濾過するための紡糸フィルタ、紡糸パック及び紡糸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紡糸パックは、熱可塑性樹脂の原料を整流及び濾過して、合成繊維を紡糸する(例えば、特許文献1)。紡糸パックは、導入ブロックが収容されたパックケースを備え、原料が、導入ブロックを通過して、パックケースに導入される。紡糸パックは、さらに、パックケース内の導入ブロックの下方に配置された濾材を備え、原料は、濾材を通過して、濾過及び整流される。
【0003】
紡糸パックは、さらに、パックケース内の濾材の下方に配置された紡糸フィルタを備え、原料は、紡糸フィルタを通過して濾過される。紡糸パックは、パックケース内の紡糸フィルタの下方に配置された口金を備え、原料は、口金を通じて紡糸される。
【0004】
従来の紡糸フィルタは、原料中の添加物(ゲル化物、異物、含有金属、顔料、染料等)を取り除くために金属不織布からなり、微小間隙を有する平板の濾過材を備える。原料は、紡糸フィルタの濾過材を通過して濾過される。
【0005】
所定回数の紡糸が行われると、紡糸フィルタは詰まって、濾過性能が低下するので、定期的に新たな紡糸フィルタに交換する必要がある。原料中の添加物の量が多い場合、紡糸フィルタは詰まりやすく、紡糸フィルタの交換頻度が多くなるので、製造工程の停止回数、工数及び材料費等が増加する問題がある。
【0006】
そこで、紡糸フィルタの形状を波形断面として、濾過面の表面積を2倍以上にすることで、紡糸フィルタが詰まりにくく、紡糸フィルタの交換頻度を少なくする紡糸パックが提案されている(例えば、特許文献2の
図2)。
【0007】
図3の通り、紡糸フィルタ7は、濾過材13と、濾過材13の周囲に設けられた金属リム15と、を備える。金属リム15は、濾過材13の形状を保持すると共に、溶融した原料の漏れを防ぐために、濾過材13の両面を挟持するように取り付けられる。濾過材13に対する金属リム15の取り付け工程では、所定の挟力で濾過材13の両面側から金属リム15が濾過材13を挟む。このとき、挟力は一定である。
【0008】
従来の紡糸フィルタ7では、紡糸フィルタ7が平面視矩形で(
図3(A))、かつ、濾過材13が波形断面を有する(
図3(B))とき、濾過材13の波線方向Xは、矩形の金属リム15の一辺15aと平行に配置され、かつ、金属リム15の他辺15bと直角に配置される。
【0009】
図3(C)の通り、金属リム15の一辺15aは、濾過材13の波線方向Xと平行なので、金属リム15の一辺15aは、複数の波部13aを挟まない。それに対し、
図3(D)の通り、金属リム15の他辺15bは、濾過材13の波線方向Xと直角なので、金属リム15の他辺15bは、複数の波部13aを挟む。
【0010】
隣接する複数の波部13aが金属リム15で挟まれると、濾過材13の金属リム15で挟まれた部分では、隣接する波部13aが重なり合って厚くなる。そのため、金属リム15の他辺15bに挟まれた濾過材13の厚さt2は、金属リム15の一辺15aに挟まれた濾過材13の厚さt1に比べて、厚くなる(t1<t2)。一方、上記の通り、濾過材13に対する金属リム15の取り付け工程において、金属リム15に対する挟力は一定であるので、金属リム15の一辺15aと他辺15bとの厚さHは略同一である。
【0011】
従って、金属リム15の他辺15bと濾過材13とは密着しているが、金属リム15の一辺15aと濾過材13とは密着せずに隙間Sが形成されることがあり、その隙間Sから原料が漏れる(シール不良)問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−90515号公報
【特許文献2】特開2002−266152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、紡糸フィルタが平面視矩形で、かつ、濾過材が波形断面を有し、金属リムから原料が漏れ難い紡糸フィルタ、紡糸パック及び紡糸方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明に係る紡糸フィルタは、
紡糸パックに対して着脱可能な紡糸フィルタであって、
紡糸フィルタは、平面視矩形の濾過材と、濾過材の周囲に設けられた平面視矩形の金属リムと、を備え、
濾過材は、波形断面を有し、その波線方向が、金属リムの一辺に対して、所定の角度で傾斜しており、
金属リムは、濾過材の両面から濾過材を挟持している。
【0015】
好ましくは、
角度は、30°〜60°である。
【0016】
好ましくは、
角度は、45°である。
【0017】
好ましくは、
濾過材は、金属線不織布を備える。
【0018】
本発明に係る紡糸パックは、
上記のいずれかに記載の紡糸フィルタを備える。
【0019】
本発明に係る紡糸方法は、
上記に記載の紡糸パックを用いて紡糸する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る紡糸フィルタ、紡糸パック及び紡糸方法は、原料を濾過する際に、金属リムから原料が漏れ難いようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】紡糸フィルタを示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線拡大断面図、(D)は(A)のD−D線拡大断面図。
【
図3】従来の紡糸フィルタを示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線拡大断面図、(D)は(A)のD−D線拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明に係る紡糸フィルタ、紡糸パック及び紡糸方法の一実施形態を説明する。
【0023】
図1の通り、紡糸パックでは、導入ブロック1を収納するパックケース2を備える。原料となる熱可塑性樹脂の熱可塑性ポリマーが、導入ブロック1を通り、パックケース2に導入される。さらに、パックケース2内において、整流板3が導入ブロック1の下方に配置され、整流板3によって原料が濾過され、整流される。
【0024】
パックケース2は、本体4と上蓋5からなり、本体4は、座面6を有する。整流板3は、板状のもので、本体4に挿入され、座面6に載置される。
【0025】
導入ブロック1は、本体4に挿入され、本体4と導入ブロック1との間に空隙9が形成される。さらに、導入ブロック1及び整流板3が、座面6に支持される。上蓋5が、本体4に重ね合わされ、上蓋5によって本体4が閉じられる。
【0026】
上蓋5の上部に導入口11が形成されており、原料が、ポンプによって送られて、導入口11を通じて導入される。原料は、導入ブロック1に沿って流れ、空隙9を通り、本体4に導入される。原料は、整流板3を通り、整流板3によって濾過及び整流される。
【0027】
整流板3は、例えば、緊密に積層及び焼結されたステンレスファイバからなる。その空隙率は、60〜70%である。ステンレスファイバは、三角柱状である。整流板3は、1〜2mmの厚さである。ステンレスファイバは、直線状で、かつ、1〜4mmの長さであり、その断面は、略正三角形をなし、一辺が30〜100μmの長さである。
【0028】
パックケース2内において、濾材20が整流板3の下方に配置され、濾材5によって原料が濾過される。濾材5は、例えば、メタルサンド、ガラスビーズ、金属粒子、ケイ石粒子等の無機粒子等で構成される。
【0029】
パックケース2内において、紡糸フィルタ7が濾材20の下方に配置され、紡糸フィルタ7によって原料が濾過される。さらに、パックケース2内において、口金8が紡糸フィルタ7の下方に配置され、口金8から合成繊維が排出される。これによって紡糸される。
【0030】
さらに、パックケース2内において、多孔板12が紡糸フィルタ7と口金8間に配置され、紡糸フィルタ7が多孔板12に重ね合わされ、支持される。さらに、パックケース2の本体4に座面10が形成され、多孔板12は座面10に載置される。したがって、原料は、濾材20及び紡糸フィルタ7による濾過後、多孔板12及び口金8を通過する。
【0031】
図2(A)の通り、紡糸フィルタ7は、平面視矩形(長方形又は正方形)の濾過材13と、濾過材13の周囲に設けられた平面視矩形の金属リム15と、を備える。よって、紡糸フィルタ7の全体が平面視矩形である。濾過材13は、不織布状に積層された金属線(例えば、ステンレス線)からなる。金属リム15は、短辺となる一辺15aと、長辺となる他辺15bと、を備える。
【0032】
図2(B)の通り、濾過材13は、波形断面を有する。そのため、濾過材13の表面積が、平坦面に比べて2倍以上(本実施形態では約2.7倍)になるので、紡糸フィルタ7が詰まりにくく、紡糸フィルタ7の交換頻度を少なくできる。金属リム15は、濾過材13の形状を保持すると共に、溶融した原料の漏れを防ぐ。金属リム15は、濾過材13の両面を挟持して、濾過材13に取り付けられている。
【0033】
図2(A)の通り、濾過材13の波線方向Xは、矩形の金属リム15の一辺15aに対して所定の角度θで傾斜している。角度θは、30°〜60°であり、好ましくは45°である。即ち、角度θは、金属リム15の一辺15a及び他辺15bの双方が、濾過材13の複数の波部13aを挟むように構成される。
【0034】
そのため、金属リム15の一辺15a及び他辺15bの双方が、濾過材13に設けられた複数の波部13aを挟む。濾過材13に対する金属リム15の取り付け工程では、所定の挟力で、濾過材13の両面側から金属リム15が濾過材13を挟む。このとき、挟力は一定である。
【0035】
図2(C)及び(D)の通り、金属リム15の一辺15a及び他辺15bの双方が、濾過材13の複数の波部13aを挟む。即ち、紡糸フィルタ7は、従来のように、金属リム15の一辺15aは複数の波部13aを挟まない、ということはない。
【0036】
それにより、金属リム15の一辺15aに挟まれた濾過材13の厚さtと、金属リム15の他辺15bに挟まれた濾過材13の厚さtと、は略同一である。
【0037】
また、上記の通り、濾過材13に対する金属リム15の取り付け工程において、金属リム15に対する挟力は一定であるので、金属リム15の一辺15aと他辺15bとの厚さHは、略同一である。
【0038】
従って、金属リム15の一辺15a及び他辺15bの双方が濾過材13と密着するので、金属リム15と濾過材13との間に隙間S(
図3(C))が形成されず、金属リム15から原料が漏れ難い。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
7 紡糸フィルタ
13 濾過材
13a 濾過材の波部
15 金属リム
15a 金属リムの一辺
15b 金属リムの他辺
X 波線方向
θ 角度
【手続補正書】
【提出日】2017年2月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸パックに対して着脱可能な紡糸フィルタ(7)であって、
前記紡糸フィルタ(7)は、平面視矩形の濾過材(13)と、前記濾過材(13)の周囲に設けられた平面視矩形の金属リム(15)と、を備え、
前記濾過材(13)は、波形断面であって、複数の波部(13a)を有し、その波線方向(X)が、平面視において、前記金属リム(15)の一辺(15a)に対して、所定の角度(θ)で傾斜しており、
前記金属リム(15)は、前記濾過材(13)の両面から前記濾過材(13)を挟持し、前記金属リム(15)の一辺(15a)及び他辺(15b)の双方が、複数の前記波部(13a)を挟む
ことを特徴とする紡糸フィルタ。
【請求項2】
前記角度は、30°〜60°である
ことを特徴とする請求項1に記載の紡糸フィルタ。
【請求項3】
前記角度は、45°である
ことを特徴とする請求項2に記載の紡糸フィルタ。
【請求項4】
前記濾過材は、金属線不織布を備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紡糸フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の紡糸フィルタを備える
ことを特徴とする紡糸パック。
【請求項6】
請求項5に記載の紡糸パックを用いて紡糸する
ことを特徴とする紡糸方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明に係る紡糸フィルタは、
紡糸パックに対して着脱可能な紡糸フィルタ
(7)であって、
紡糸フィルタ
(7)は、平面視矩形の濾過材
(13)と、濾過材
(13)の周囲に設けられた平面視矩形の金属リム
(15)と、を備え、
濾過材
(13)は、波形断面
であって、複数の波部(13a)を有し、その波線方向
(X)が、
平面視において、金属リム
(15)の一辺
(15a)に対して、所定の角度
(θ)で傾斜しており、
金属リム
(15)は、濾過材
(13)の両面から濾過材
(13)を挟持し
、金属リム(15)の一辺(15a)及び他辺(15b)の双方が、複数の波部(13a)を挟む。