(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-112002(P2018-112002A)
(43)【公開日】2018年7月19日
(54)【発明の名称】モルタル外壁の接合構造および接合用押え材
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20180622BHJP
【FI】
E04G23/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-3499(P2017-3499)
(22)【出願日】2017年1月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 悦宏
(72)【発明者】
【氏名】根元 央希
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176BB25
2E176BB34
(57)【要約】
【課題】下地板の状態に関わらず既存モルタル外壁と新設モルタル外壁との止水性を確保する。
【解決手段】下地板11と、端面15に沿って設けられたシーリング材21と、シーリング材21に沿って延在して下地板11上に敷設されるとともにシーリング材21を端面15に向けて押える接合用押え材30と、下地板11上に敷設される防水シート22およびラス網23と、防水シート22を接合用押え材30上に固着させる固着手段(防水テープ25)と、シーリング材21、接合用押え材30、防水テープ25、防水シート22およびラス網23が埋設されるように塗り込まれた新たなモルタル層24とを備えており、接合用押え材30は、下地板11上に敷設される受板部31とシーリング材を押える押板部32とを備えており、防水シート22の縁部およびラス網23の縁部は、受板部31上に重なるように積層配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存モルタル外壁と新設モルタル外壁とを接続するモルタル外壁の接続構造であって、
前記新設モルタル外壁は、前記既存モルタル外壁の端面から突出する下地板と、前記既存モルタル外壁の端面に沿って設けられたシーリング材と、前記シーリング材に沿って延在して前記下地板上に敷設されるとともに前記シーリング材を前記端面に向けて押える接合用押え材と、前記下地板上に敷設される防水シートおよびラス網と、前記防水シートを前記接合用押え材上に固着させる固着手段と、前記シーリング材、前記接合用押え材、前記固着手段、前記防水シートおよび前記ラス網が埋設されるように塗り込まれた新たなモルタル層とを備えており、
前記接合用押え材は、前記下地板上に敷設される受板部と前記シーリング材を押える押板部とを備えており、
前記防水シートの縁部および前記ラス網の縁部は、前記受板部上に重なるように積層配置されている
ことを特徴とするモルタル外壁の接続構造。
【請求項2】
前記接合用押え材は、断面L字形状を呈しており、
前記押板部は、前記受板部の端部から屈曲して立ち上がっている
ことを特徴とする請求項1に記載のモルタル外壁の接続構造。
【請求項3】
前記押板部の前記シーリング材側の面には、防水性の弾性部材が敷設されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモルタル外壁の接続構造。
【請求項4】
既存モルタル外壁と新設モルタル外壁とを接続するモルタル外壁の接続構造に用いられる接合用押え材であって、
前記接合用押え材は、前記既存モルタル外壁の端面から突出する下地板上に敷設される受板部と、前記既存モルタル外壁の端面に沿って設けられたシーリング材を前記端面に向けて押える押板部とを備えており、
前記押板部は、前記受板部の端部から屈曲して立ち上がっている
ことを特徴とするモルタル外壁の接続用押え材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設モルタルと新設モルタルとを接合するモルタル外壁の接合構造および接合用押え材に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタル外壁を用いた建築物において、モルタル外壁の劣化やクラック、雨漏りやサッシ付け替えなどの改修工事を行うには、たとえば非特許文献1に示すような施工方法があった。この施工方法では、まず、損傷部分のモルタル、ラスおよび防水紙を除去した後、モルタルの端部をケレン等で除去して既存ラスと既存防水紙を30mm程度露出させる。そして、新たな防水紙を除去した部分に被せて、新設の防水紙の周縁部を既設の防水紙に重ねる。新設の防水紙の周囲に防水テープを張り付けた後、新設の防水紙上にラスを張り付け、その上にモルタルを塗り付ける。
【0003】
しかしながら、前記の施工方法では、既存の防水紙が経年劣化している場合が多く、既設の防水紙と新たな防水紙を重ねて防水層を形成すると防水性能を確保できないこともあるので、現在ではあまり採用されていない。近年では、たとえば特許文献1に示すような接合方法が採用されている。特許文献1の接合方法は、まず、既設モルタルのうち、下地板となるラス板を除く既設モルタルを切断して、ラス板を露出させる。既設モルタルの切断面近傍のラス板上に防水テープを張着し、既設モルタルの切断面とラス板との入隅部にシーリング材を塗る。そして、ラス板上に防水テープを覆うように防水シートを敷設した後、ラス網を敷設する。その後、シーリング材を覆うように樹脂モルタルを塗り、この樹脂モルタルを覆うようにモルタルを塗る。このような接合方法によれば、既設のモルタルと新設のモルタル間での止水性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−58169号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「外壁モルタル仕上げの改修マニュアル−木造住宅編−」日本建築仕上材工業会、平成18年10月、p40−41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、モルタル壁の下地板となるラス板は、通常狭い隙間をあけて敷設されているが、既存のモルタル外壁では、ラス板間の隙間が大きくなっている場合もある。特許文献1の接合方法において、ラス板間の隙間が大きいと、シーリング材や防水シートを安定して受けることができず、止水性が低下してしまう問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、下地板の状態に関わらず止水性を確保できるモルタル外壁の接合構造および接合用押え材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第一の本発明は、既存モルタル外壁と新設モルタル外壁とを接続するモルタル外壁の接続構造であって、前記新設モルタル外壁は、前記既存モルタル外壁の端面から突出する下地板と、前記既存モルタル外壁の端面に沿って設けられたシーリング材と、前記シーリング材に沿って延在して前記下地板上に敷設されるとともに前記シーリング材を前記端面に向けて押える接合用押え材と、前記下地板上に敷設される防水シートおよびラス網と、前記防水シートを前記接合用押え材上に固着させる固着手段と、前記シーリング材、前記接合用押え材、前記固着手段、前記防水シートおよび前記ラス網が埋設されるように塗り込まれた新たなモルタル層とを備えており、前記接合用押え材は、前記下地板上に敷設される受板部と前記シーリング材を押える押板部とを備えており、前記防水シートの縁部および前記ラス網の縁部は、前記受板部上に重なるように積層配置されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、接合用押え材と既存モルタル外壁の端面とでシーリング材を挟んでいるので、接合用押え材と既存モルタル外壁間で止水性を確保できる。また、接合用押え材の受板部で固着手段を介して防水シートを受けるので、隣り合う下地板間に大きい隙間がある場合でも接合用押え材に隙間なく防水シートを張り付けることができる。したがって、接合用押え材と防水シート間で止水性を固着手段で確保でき、ひいては既存モルタル外壁と新設モルタル外壁との間で止水性を確保することができる。
【0010】
本発明のモルタル外壁の接続構造では、前記接合用押え材は、断面L字形状を呈しており、前記押板部は、前記受板部の端部から屈曲して立ち上がっていることが好ましい。このような構成によれば、受板部の厚さ寸法を小さくしつつ、押板部の高さ寸法を大きくすることができる。よって、受板部と下地板の段差を小さくできるので、ラス網を平らに近い状態で設置できる。
【0011】
本発明のモルタル外壁の接続構造では、前記押板部の前記シーリング材側の面には、防水性の弾性部材が敷設されていることが好ましい。このような構成によれば、弾性部材は、圧縮された状態で、シーリング材を押圧するので、シーリング材と切断端面との止水性をさらに高くすることができる。また、切断端面に凹凸がある場合には、弾性部材の変形量が変わることで、凹凸を吸収することができる。
【0012】
前記課題を解決するための第二の本発明は、既存モルタル外壁と新設モルタル外壁とを接続するモルタル外壁の接続構造に用いられる接合用押え材であって、前記接合用押え材は、前記既存モルタル外壁の端面から突出する下地板上に敷設される受板部と、前記既存モルタル外壁の端面に沿って設けられたシーリング材を前記端面に向けて押える押板部とを備えており、前記押板部は、前記受板部の端部から屈曲して立ち上がっていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、接合用押え材と既存モルタル外壁の端面とで容易にシーリング材を挟むことができるので、接合用押え材と既存モルタル外壁間で止水性を確保できる。また、接合用押え材の受板部で固着手段を介して防水シートを受けるようにすれば、隣り合う下地板間に大きい隙間がある場合でも接合用押え材に隙間なく防水シートを張り付けることができる。したがって、接合用押え材と防水シート間で止水性を固着手段で確保でき、ひいては既存モルタル外壁と新設モルタル外壁との間で止水性を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るモルタル外壁の接合構造および接合用押え材によれば、下地板間の隙間が大きい場合などであっても、下地板の状態に関わらず止水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造の既存モルタル外壁を示した一部破断斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造を示した断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造を説明するための図であって、既存モルタル外壁の一部を切除した状態を示した斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造を説明するための図であって、既存モルタル外壁の端面に沿ってシーリング材を設けた状態を示した斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造を説明するための図であって、シーリング材を接合用押え材で押さえた状態を示した斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造を説明するための図であって、他の方向に延在するシーリング材を他の接合用押え材で押さえた状態を示した斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造を説明するための図であって、防水シートを敷設した状態を示した斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造を説明するための図であって、ラス網を敷設した状態を示した斜視図である。
【
図9】接合用押え材の変形例を説明するための図であって、(a)は折り曲げ前の状態を示した斜視図、(b)は折り曲げ後の状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るモルタル外壁の接合構造および接合用押え材について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、既存モルタル外壁にクラック等の破損が発生した際に、破損箇所を切除して新設モルタル外壁を構築する場合を例に挙げて、既存モルタル外壁と新設モルタル外壁との接続構造を説明する。
【0017】
図1に示すように、既存モルタル外壁10は、下地板11と防水シート12とラス網13とモルタル層14とを備えてなる。下地板11は、木製の長尺板材(木摺板)からなり、間柱(図示せず)間に架け渡されている。下地板11は、複数設けられており、隙間16をあけて互いに平行になるように並列されている。防水シート12は、複数の下地板11,11・・と隙間16も含んで外壁面全体を覆うように敷設されている。ラス網13は、防水シート12を覆うように敷設されている。防水シート12はステープル等で下地板11および防水シート12に固定されている。モルタル層14は、防水シート12上に、ラス網を埋め込むようにモルタルを塗り付けて形成されている。
【0018】
図2に示すように、新設モルタル外壁20は、既存モルタル外壁10の切断端面15から突出する下地板11と、既存モルタル外壁10の切断端面15に沿って設けられたシーリング材21と、シーリング材21を切断端面15に向けて押える接合用押え材30と、下地板11上に敷設される防水シート22およびラス網23と、防水シート22を接合用押え材30上に固着させる防水テープ25(固着手段)と、シーリング材21、接合用押え材30、防水テープ25、防水シート22およびラス網23が埋設されるように塗り込まれた新たなモルタル層24とを備えている。なお、
図2は、下地板11間の隙間16の位置で、隙間16に沿って切断した断面図である。
【0019】
下地板11は、既存モルタル外壁10を切除した際に残置されたものであって、既設の木摺板が利用されている。下地板11は、既存モルタル外壁10の切断端面15の建物内側から切除部分側に突出している(
図3参照)。下地板11上に張り付けられていた既設の防水シートとラス網は撤去されている。
【0020】
シーリング材21は、公知のシーリング材、たとえば、JIS A 5758:2004による建築用シーリング材、またはアスファルト系のシーリング材、接着剤などからなり、弾性を有する止水材にて構成されている。シーリング材21は、既存モルタル外壁10の切断端面15の下地板11側の端部に沿って設けられている。シーリング材21は、接合用押え材30によって切断端面15に付勢されており、切断端面15と接合用押え材30の両面に密着している。シーリング材21は、切断端面15の厚さ寸法よりも小さい寸法で切断端面15に密着していて、シーリング材21がモルタル外壁の表面からはみ出さないようになっている。本実施形態では、シーリング材21の高さ寸法(モルタル外壁の厚さ方向寸法)は、切断端面15の厚さ寸法の略半分になっている。シーリング材15の端部は、下地板11の表面に当接するか、または隙間16に対向している。
【0021】
接合用押え材30は、シーリング材21に沿って延在しており、下地板11上に敷設されている。接合用押え材30は、シーリング材21を圧縮した状態で、切断端面15との間で挟持する。接合用押え材30は、金属製または樹脂製の板材からなり、受板部31と押板部32とを備えている。接合用押え材30は、断面L字形状を呈している。押板部32と受板部31は、直交して連続している。
【0022】
受板部31は、下地板11上に敷設される平板状部分であって、複数の下地板11,11・・と下地板11,11間の隙間16を覆って配置されている。受板部31の表面には、防水シート22を接着するための防水テープ25が張り付けられている。受板部31は、防水テープ25、防水シート22の受材の役目を果たす。受板部31の幅寸法(切断端面15側からの突出寸法)は、防水テープ25の幅よりやや広い。防水テープ25を張るタイミングは、防水シート22を敷設する前であればいつでもよく、受板部31に予め張られていてもよいし、防水シート22を張る直前に張り付けてもよい。防水テープ25の幅寸法は、受板部31に張付可能なように受板部31の幅寸法より小さい。防水テープ25の幅寸法は、大きい方が高い止水性を得られる。接合用押え材30の長手方向端部の受板部31は、先端側の角部が面取りされている(
図5参照)。接合用押え材30を直角に交差して配置した際に、受板部31の長手方向端部の一部が重なり合う。
なお、防水シート22を接合用押え材30上に固着させる固着手段は、防水テープ25に限定されるものではない。防水テープ25の他に、各種シーリング材や接着剤などの不定形材料も代用でき、防水テープ25と不定形材料との組み合わせも可能である。
【0023】
押板部32は、シーリング材21を押える平板状部分であって、受板部31の既存モルタル外壁10側の端部から直角に屈曲して外側に立ち上がっている。押板部32の立ち上がり寸法は、シーリング材21の立ち上がり寸法と同等である。押板部32のシーリング材21側の面には、防水性の弾性部材33が敷設されている。弾性部材33は、合成ゴム、プラスチックまたはこれらの発泡体にて構成されている。弾性部材33は、圧縮された状態で、シーリング材21を押圧する。
【0024】
防水シート22は、切除部分を覆う形状である。防水シート22は、縁部が受板部31上に重なるように配置されて、受板部31上の防水テープ25にて受板部31に固定されている。
【0025】
ラス網23は、切除部分を覆う形状であって、防水シート22上に敷設されている。ラス網23は、ステープル等で下地板11および防水シート22に固定されている。
【0026】
モルタル層24は、防水シート22上に、ラス網23を埋め込むようにモルタルを塗り付けて形成されている。モルタル層24は、シーリング材21、接合用押え材30、防水テープ25、防水シート22およびラス網23の全てが埋設されるように形成されている。モルタル層24は、表面が既存モルタル外壁10のモルタル層14の表面と面一になっている。
【0027】
次に、既存モルタル外壁10の破損箇所を改修する工程を説明する。既存モルタル外壁10の破損箇所を改修するに際しては、まず、
図3に示すように、破損箇所を含む部分を切除する。既存モルタル外壁10の切除は、ディスクグラインダーや丸のこ等の工具を用いて、下地板11以外の部分、つまり、防水シート12とラス網13とモルタル層14を切除して剥がす。このとき、下地板11の長手方向に沿った切断面は、隙間16ではなく下地板11上に位置するようにする。これによって、下地板11は、既存モルタル外壁10の切断端面15の建物内側から切除部分側に突出している状態となる。以降、既存モルタル外壁10を切除した部分に新設モルタル外壁20を形成する。
【0028】
新設モルタル外壁20を形成するには、まず、
図4に示すように、既存モルタル外壁10の切断端面15に沿ってシーリング材21を設ける。シーリング材21は、切断端面15の下地板11側の端部に沿って敷設する。シーリング材21は、切除部分の周縁部全周に渡って設ける。
【0029】
その後、
図5に示すように、接合用押え材30をシーリング材21に沿わせて下地板11,11上に敷設する。具体的には、押板部32が切断端面15に平行になるように、接合用押え材30を設置する。このとき押板部32をシーリング材21に押し当てて、シーリング材21を圧縮した状態となる位置で、接合用押え材30を下地板11に固定する。接合用押え材30は、両面テープ、釘やビス等で下地板11に固定する。これによって、シーリング材21が、切断端面15および押板部32の両方と密着することになるので、切断端面15とシーリング材21と接合用押え材30との間で止水性を確保できる。その後、受板部31の表面に防水テープ25を張り付ける。
【0030】
切除部分の角部では、
図6に示すように、互いに交差する接合用押え材30,30の受板部31,31の端部同士を重ねる。以上のように接合用押え材30を設けることで、切除部分の周縁部全周に渡って受板部31が下地板11,11間の隙間16を覆うこととなる。これによって、切除部分の周縁部全周に渡って連続する下地が形成されることとなる。
【0031】
次に、
図7に示すように、防水シート22を、切除部分を覆うように敷設する。防水シート22の縁部は、接合用押え材30の受板部31上に配置し、防水テープ25によって張り付ける。その後、
図8に示すように、ラス網23を、切除部分を覆うように敷設する。ラス網23は、防水シート22上に敷設し、ステープル(図示せず)にて、下地板11および防水シート22に固定する。これによって、防水シート22の縁部およびラス網23の縁部は、受板部31上に重なるように積層配置される。
【0032】
その後、切除部分にモルタルを塗り付けてモルタル層24を形成する。モルタルは、防水シート22上に、ラス網23を埋め込むように塗り付ける。モルタルは、切断端面15の表面まで塗り付けて、シーリング材21、接合用押え材30、防水テープ25、防水シート22およびラス網23の全てを埋設させる。以上の工程で、新設モルタル外壁20(
図2参照)が完成する。
【0033】
本実施形態のモルタル外壁の接合構造1によれば、接合用押え材30と既存モルタル外壁10の切断端面15とでシーリング材21を圧縮した状態で挟んでいるので、シーリング材21と接合用押え材30と既存モルタル外壁10間で止水性を確保できる。 シーリング材21は、切断端面15と接合用押え材30の押板部32とで挟まれているので、下地板11,11間の隙間16がある場合であっても、シーリング材21の全周に渡って止水性が得られる。したがって、仮に、モルタル層14とモルタル層24との間(切断端面15の部分)に水みちが発生して水が浸入したとしても、シーリング材21で確実に止水することができる。よって、シーリング材21の周囲から下地板11側に水が浸入することを防止できる。
【0034】
また、接合用押え材30の受板部31で、防水テープ25、防水シート22を受けるので、隣り合う下地板間に大きい隙間16がある場合でも、新設モルタル外壁20の全周に渡って受け部が存在することになる。よって、接合用押え材30側に水が浸入したとしても、接合用押え材30と防水シート22との間で防水テープ25が設けられていて、防水シート22を接合用押え材30に固着しているので確実に止水できる。したがって、接合用押え材30と防水シート22との間から下地板11側に水が浸入することを防止できる。
【0035】
つまり、本実施形態によれば、既存モルタル外壁10と新設モルタル外壁20との間で高い止水性を確保することができる。
【0036】
さらに、本実施形態の接合用押え材30は、断面L字形状を呈しており、押板部32は、受板部31の端部から屈曲して立ち上がっているので、受板部31の厚さ寸法を小さくしつつ、押板部32の立上り寸法をモルタル外壁の厚さに応じて大きくすることができる。よって、受板部31と下地板11の段差を小さくできるので、ラス網23を平らに近い状態で設置できる。さらに、押板部32の立上り寸法を大きくできるので、シーリング材21のシール面を大きく確保できる。よって、シーリング材21回りの止水性を高くすることができる。さらに、接合用押え材30は、比較的簡単な構造であるので、容易に製造できる。
【0037】
押板部32のシーリング材21側の面に弾性部材33が敷設されていて、弾性部材33は、圧縮された状態で、シーリング材21を押圧するので、シーリング材21と切断端面15との止水性をさらに高くすることができる。また、切断端面15に凹凸がある場合には、弾性部材33の変形量が変わることで、凹凸を吸収することができるので、シーリング材21の全長に渡って高い止水性を確保することができる。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、既存モルタル外壁の破損箇所を切除して新設モルタル外壁を構築する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係るモルタル外壁の接続構造および接合用押え材は、たとえば、サッシを交換する場合のサッシ周りのモルタル外壁の改修や、モルタル外壁の耐震性を向上させるためにモルタル外壁を新設する耐震改修などの工事にも適用することができる。
【0039】
また、前記実施形態では、接合用押え材30が断面L字形状を呈しているがこれに限定されるものではない。たとえば、下地板に接する面とシーリング材に接する面が直交する断面直角三角形状や、断面台形形状などの他の形状であってもよい。
【0040】
さらに、前記実施形態では、接合用押え材30が直角に交差する部分では、別途の接合用押え材30,30を重ねるようにしたが、これに限定されるものではない。
図9に示すように、一枚の接合用押え材130を折り曲げるようにしてもよい。接合用押え材130を折り曲げる際には、
図9の(a)に示すように、受板部31に切欠き部131を形成する。切欠き部131は、押板部32との折り曲げ部分が頂点となる三角形状に切り欠かれる。そして、切欠き部131の頂点部分の押板部32を直角に折り曲げる。このとき、切欠き部131の両側の受板部31の一部が重なり合う。このように構成すれば、押板部32が連続するので、止水性能がより一層向上する。
【符号の説明】
【0041】
1 接合構造
10 既存モルタル外壁
11 下地板
12 防水シート
13 ラス網
14 モルタル層
15 切断端面(端面)
20 新設モルタル外壁
21 シーリング材
22 防水シート
23 ラス網
24 モルタル層
25 防水テープ
30 接合用押え材
31 受板部
32 押板部
33 弾性部材
130 接合用押え材