【解決手段】液分測定装置1は、液媒を貯留するタンク部10と、タンク部10に配置されて被対象物との間で液媒を授受する多孔質カップ20と、タンク部10の開口16を封止する封止装置30と、タンク部10内の圧力を計測する圧力センサ26を備える。封止装置30は、開口16に当接して該開口16の周縁を密閉する密閉栓32と、タンク部10の内部と外部の大気空間とを連通する連通孔34と、連通孔34を開閉する弁体52と、を有するようにした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
土壌が乾燥している場合、水タンクの中の圧力は、−1気圧近傍まで下がる。ゴム栓によって水タンクを封止する構造のテンシオメータの場合、ゴム栓の密閉性が優れていることから、計測精度は高いものの、内部の負圧によってゴム栓が水タンク内に強く押し込まれてしまい、補水時にゴム栓が抜けなくなるという問題があった。この問題を解消する為に、利用者は、ゴム栓を緩く押し込む傾向にあり、水タンクの密閉性が低下して、測定誤差が生じやすいという問題があった。
【0009】
一方、ねじ締結によって水タンクに注水コックを設けたテンシオメータの場合、注水コックが、水タンクの内部の負圧に耐えられずに空気が流入し、測定誤差が生じやすいという問題があった。また、ねじ部分の密閉性が低下しやすく、そこから空気が流入するという問題があった。同時に、水タンクの内部を洗浄する際に、ねじ締結を緩めて注水コックを取り外す必要があるため、作業負担が大きいという問題があった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、高い密閉性を維持しながらも、ゴム栓等の着脱が容易な液分測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明は、被対象物の液分を測定する液分測定装置であって、液媒を貯留するタンク部と、前記タンク部に配置され、前記被対象物と接触して前記被対象物との間で前記液媒を授受する液媒授受部と、前記タンク部に形成され、前記液媒を当該タンク部に供給する開口と、前記開口を封止する封止装置と、前記タンク部内の圧力を計測する圧力計側部と、を備え、前記封止装置は、前記開口に当接して該開口の周縁を密閉する密閉栓と、前記タンク部の内部と外部の大気空間とを連通する連通孔と、前記連通孔を開閉する弁体と、を有することを特徴とする液分測定装置である。
【0012】
上記液分測定装置に関連して、前記密閉栓は、前記開口と当接する環状の当接面を有し、前記連通孔は、前記密閉栓における前記当接面の内側に形成されることを特徴とする。
【0013】
上記液分測定装置に関連して、前記密閉栓は、前記開口に圧入されており、前記弁体は、前記密閉栓の内部に移動自在に配置されることを特徴とする。
【0014】
上記液分測定装置に関連して、前記弁体が前記連通孔を塞ぐ状態における前記弁体の位置を閉位置、前記弁体が前記連通孔を開放する状態における前記弁体の位置を開位置と定義した場合に、前記閉位置は、前記開位置と比較して、前記タンク部の内側となることを特徴とする。
【0015】
上記液分測定装置に関連して、前記封止装置は、使用者の手によって操作される操作部と、前記操作部の動力を、前記弁体に伝達する伝達機構と、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記液分測定装置に関連して、前記伝達機構は、前記操作部によって回動される軸部と、前記軸部の回動運動を、往復直線運動に変換する動力変換部と、を有してなり、前記伝達機構の往復直線運動により、前記弁体が前記連通孔に対して接近・離反することを特徴とする。
【0017】
上記液分測定装置に関連して、前記動力変換部は、ねじ又はカムを有することを特徴とする。
【0018】
上記液分測定装置に関連して、前記封止装置は、前記弁体を前記連通孔に当接させる方向に付勢する弾性部材を備えることを特徴とする。
【0019】
上記液分測定装置に関連して、前記封止装置は、前記密閉栓を保持すると共に、前記タンク部と機械的に係合する係合部を有するベースを備え、前記密閉栓を前記開口に圧入した状態で、前記ベースを特定方向に回動させると前記係合部と前記タンク部が互いに係合して圧入方向の移動が規制され、且つ、前記ベースを前記特定方向と反対方向に回動させると前記係合部と前記タンク部の係合状態が開放されることを特徴とする。
【0020】
上記液分測定装置に関連して、前記封止装置は、前記密閉栓を保持すると共に、前記タンク部と機械的に係合する係合部を有するベースを備え、前記密閉栓を前記開口に圧入した状態で、前記ベースを特定方向に回動させると前記係合部と前記タンク部が互いに係合して圧入方向の移動が規制され、且つ、前記ベースを前記特定方向と反対方向に回動させると前記係合部と前記タンク部の係合状態が開放され、前記軸部の軸方向は、前記密閉栓の軸方向と略同じ方向となっており、前記操作部及び前記軸部を前記特定方向に回動させると、前記弁体が前記連通孔を閉じると共に、前記操作部及び前記軸部を前記特定方向と反対方向に回動させると、前記弁体が前記連通孔を開くことを特徴とする。
【0021】
上記液分測定装置に関連して、前記封止装置は、前記ベースにおける前記密閉栓と反対方向に凸設されて、操作者の手で握られる把持部を有し、前記操作部は、前記ベースにおける前記密閉栓と反対側に配置され、且つ、前記把持部の凸設高さよりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い密閉性を維持しながらも、ゴム栓等の着脱が容易にできるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1に、本実施形態にかかる液分測定装置1の全体構成を示す。この液分測定装置1は、被対象物となる土壌の水分を測定するテンシオメータであり、液媒を貯留するタンク部10と、タンク部10の下端近傍に配置され、土壌と接触して水を授受する多孔質カップ(液媒授受部)20と、タンク部10の上端近傍に形成され、水をタンク部10に供給するための開口16と、この開口16に設置されて該開口を封止する封止装置30と、タンク部10内の水圧を計測する圧力センサ(圧力計側部)26と、タンク部10内の水位を計測する水位センサ24と、電源ボタン72や外部通信ボタン74、ステータスランプ76等が設けられる操作インタフェース70と、各種制御を実行する制御装置80と、電源(ここでは単三電池×2本)85と、これらを内部に収容する筐体90を備える。
【0027】
筐体90は、上端側に底面を有する筒形状となっており、ヒンジ96によって接続される上側筐体94と下側筐体92を備える。
図1(B)に示すように、上側筐体94を、ヒンジ96を介して下側筐体92の側方に回動させると、筐体90の内部空間が露呈され、封止装置30を着脱できるようになる。
【0028】
下側筐体92の内部には、タンク部10の一部が収容される。なお、タンク部10は、円筒状となる大径筒部12と、大径筒部12の下端に同軸状態でねじ結合される小径筒部14を有する。下側筐体92は、主として大径筒部12を内部に収容しており、小径筒部14は、下側筐体92の下端から更に下側に突出している。
【0029】
多孔質カップ20は、セラミック製の多孔質材で構成されており、小径筒部14の下端に配置される。この多孔質カップ20は、外周面において土壌と接触し、毛管現象を利用して、タンク部10に貯留される水と土壌中の水分を連続させる。
【0030】
操作インタフェース70の電源ボタン72は、操作者による電源ON・OFFの操作を受け付ける。外部通信ボタン74は、無線通信の送受信指示の操作を受け付ける。送受信指示を受け付けると、制御装置80を利用して、無線又は有線により、各種データを外部端末(図示省略)との間で交換する。ここでは、近距離無線通信規格の1つであるBluetooth(登録商標)により、外部端末との間で無線により情報交換する。ステータスランプ76は、電源のON・OFFの状態や、信号の通信状態や、水位センサ24によって検知された水位低下アラームなどを表示する。
【0031】
制御装置80は、CPU、メモリ、無線通信部、バス配線などを有しており、圧力センサ26、水位センサ24、操作インタフェース70、電源85等と接続される。メモリに保持される測定プログラムがCPUで実行されることにより、定期的に圧力センサ26による水圧のロギングを行う。また、水位センサ24による水位低下を監視する。さらに、ロギングされてメモリに蓄積される信号を、まとめて外部端末に送信する。また、外部端末からの初期設定信号を受信することで、ロギングの方法(計測回数、計測間隔等)を更新できるようになっている。
【0032】
なお、測定前又は測定途中において、タンク部10に水を溜める場合、
図1(C)に示すように、タンク部10の開口16から封止装置30を取り外す。その後、水を溢れさせながら、封止装置30を開口16に圧入すればよい。
【0033】
次に、
図2〜
図6により、封止装置30について詳細に説明する。
【0034】
図2に示すように、封止装置30は、主として、タンク部10の開口16に当接して開口16の周縁を密閉する密閉栓32と、密閉栓32を保持する台座40と、弁装置50を有する。密閉栓32は、ゴム等の弾性樹脂によって円柱形状に構成されており、タンク部10の開口16の内部に圧入される。密閉栓32の外周には、同軸状態のリング状の二重の突起32A、32Bが形成される。圧入時は、突起32A、32Bのリップが積極的に押しつぶされて、きわめて高い密閉特性が得られるようになっている。密閉栓32の軸方向の先端側は、突端が小径となるような部分円錐形状となっており、開口16に挿入しやすい配慮がなされている。
【0035】
密閉栓32は、
図3(B)に示すように、軸心方向に沿って、(圧入時における)大気側からタンク部10側に向かって、結合孔33、連通孔34、先端孔35が連続形成されており、これらが連なることで一つの貫通孔となっている。なお、結合孔33と先端孔35の内径は略同一に設定されており、連通孔34の内径は、結合孔33(及び先端孔35)の内径と比較して小径に設定される。従って、結合孔33と連通孔34の境界は、段差(括れ)34Aが形成される。
【0036】
したがって、密閉栓32の突起32A、32Bのリップ及び/又は密閉栓32の外周面全体を、タンク部10の開口16と当接する環状の「当接面」と定義した場合に、連通孔34や結合孔32は、密閉栓32における上記「当接面」の内側に形成される。また、密閉栓32の内部に、台座40の一部や弁装置50の一部が収容される。
【0037】
図4に示すように、結合孔33には、台座40の円筒状の結合部42が挿入される。結合孔33の途中には、径方向外側に孔が拡張する環状の溝部33Aが形成され、この溝部33Aが、結合部42の外周面に凸設される鋸刃状のくさび42Aと軸方向に係合する。従って、密閉栓32の結合孔33に対して、台座40の結合部42を一旦挿入すると、溝部33Aとくさび42Aとの係合によって、密閉栓32が台座40から離脱し難い構造となる。
【0038】
連通孔34は、タンク部10の内部空間と外部の大気空間とを連通すると同時に、この連通状態を閉鎖する役割を担う。具体的にこの連通孔34には、弁装置50における弁体52における棒状の凸部52Aが挿入される。凸部52Aの外径は、連通孔34の内径と比較して少しだけ大きく設定される。従って、凸部52Aが連通孔34に挿入されると、連通孔34が少しだけ押し広げられるように弾性変形し、その復元力によって、きわめて高い密閉状態(閉状態)となる(
図4(A)参照)。一方で、凸部52Aが連通孔34から離れると、タンク部10の内部空間と外部の大気空間とが連通される(
図4(B)参照)。
【0039】
台座40は、タンク部10の開口16を覆うキャップ形状となるベース41と、ベース41の一方の面(内側面41A)の中央から軸方向に延びる円筒状の結合部42と、ベース41の他方の面(外側面41B)において軸方向に延びるように凸設される一対の把持部43と、ベース41の中央に形成される保持孔42Aを備える。
【0040】
一対の把持部43は、ベース41の中央(保持孔42A)を回避するように半径方向外側に配置され、操作者の手によって握られる。操作者は、ベース41(密閉栓32)をタンク部10の開口16に対して着脱する際に、把持部43を握りながら、ベース41を回転させたり、軸方向に押し込んだり、引っ張ったりする。
【0041】
把持部43における、ベース41の外側面41Bからの凸設高さL1は、弁装置50における弁体52を開閉する際に操作される操作部60の外側面41Bからの凸設高さL2よりも高くなるように設定される。これにより、把持部43を握る際に、操作部60が邪魔にならない。また、把持部43を握る際に、操作者が操作部60を強く握ってしまい、操作部60が損傷することを抑止できる。
【0042】
保持孔42Aには、弁装置50における操作部60の力を伝達するための軸部55が挿入され、この軸部55を回動自在に保持している。なお、保持孔42Aは、円筒状の結合部42と同軸状となっており、その内部空間と連通する。結合部42の内部空間の直径は、保持孔42Aの直径よりも大きいことから、その境界に段部42Bが形成される。この段部42Bによって、弾性部材となる圧縮ばね65の一端が係止される。
【0043】
図5に示すように、台座40のベース41における外側面41Bには、保持孔42Aの周囲近傍に、一対の第一端面カム44Aが凸設される。この第一端面カム44Aは、保持孔42Aを取り囲む筒状部材の一部となっており、操作部60に形成される第一カムフォロア63と当接する。第一端面カム44Aは、周方向に移動するに連れて、軸方向の高さが変化する傾斜面となる。従って、操作部60を往復回動させることにより、第一カムフォロア63が、第一端面カム44Aに沿って移動すると、操作部60が、軸方向に往復直線運動する。
【0044】
図6に示すように、台座40の結合部42の突端には、第二端面カム44Bと、突端から軸方向に退避する方向に延びる通気用スリット45とが形成される。この第二端面カム44Bは、弁体52の拡径部52Bの周縁に形成される第二カムフォロア52Cと当接する。第二端面カム44Bは、周方向に移動するに連れて、軸方向の高さが変化する傾斜面となる。従って、弁体52が往復回動することで、第二カムフォロア52Cが、第二端面カム44Bに沿って移動すると、弁体52が、軸方向に往復直線運動する。
【0045】
なお、第一端面カム44Aと第一カムフォロア63による第一カム機構56A(
図5参照)の動作タイミングと、第二端面カム44Bと第二カムフォロア52Cによる第二カム機構56B(
図6参照)の動作タイミングは、完全に一致している。従って、本質的には、第一カム機構56Aと第二カム機構56Bのいずれか一方で、回転運動を直線運動に変換することが可能であるが、このように、軸方向に離れた位置に第一及び第二カム機構56A、56Bを設けることで、カム機構に作用する負荷を分散しつつ、安定した動作を実現している。
【0046】
図2(C)に戻って、ベース41の内周壁41Cには、鉤(かぎ)状又はL字フック状の溝となる一対のベース側軸方向係合部46が凹設される。また、ベース41の内側面41Aの周縁近傍には、一対のベース側周方向係合部47が軸方向に凸設される。
【0047】
一方、
図3(A)及び(B)に示すように、タンク部10の開口16(大径筒部12)の外周壁には、半径方向外側に凸となる一対のタンク側軸方向係合部12Aが形成される。
図3(C)及び(D)に示すように、このタンク側軸方向係合部12Aは、ベース41のベース側軸方向係合部46に挿入されてL字方向に案内される。結果、タンク側軸方向係合部12Aとベース側軸方向係合部46が軸方向に機械的に係合し、互いに軸方向に離反できなくなる。
【0048】
タンク部10の開口16(大径筒部12)の突端には、一対のタンク側周方向係合部12Bが軸方向に凸設される。
図3(C)及び(D)に示すように、このタンク側周方向係合部12Bは、ベース側周方向係合部47と周方向に係合する。タンク側周方向係合部12Bとベース側周方向係合部47の周方向係合タイミングと、タンク側軸方向係合部12Aとベース側軸方向係合部46の軸方向係合タイミングが互いに一致している。
【0049】
操作者は、把持部43を握って、ベース41(密閉栓32)をタンク部10の開口16方向Aに押し込み(
図3(C)参照)、その後、ベース41(密閉栓32)とタンク部10を特定方向(ここでは右回り方向)Bに相対回転させると(
図3(D)参照)、周方向と軸方向の双方に係合する。この状態になると、ベース41とタンク部10が、周方向に相対回転が抑止された状態で、軸方向に係合して、封止装置30とタンク部10の装着が完了する。操作者が、上記A、Bと反対方向に操作すれば、封止装置30とタンク部10の離脱が完了する。
【0050】
図4に示すように、弁装置50は、使用者の手によって操作される操作部60と、連通孔34を開閉する弁体52と、操作部60の動力を弁体52に伝達する伝達機構を備える。
【0051】
伝達機構は、操作部60によって回動される軸部55と、軸部55の回動運動を、往復直線運動に変換する動力変換部を有する。動力変換部は、第一カム機構56A(
図5参照)と第二カム機構56B(
図6参照)となる。動力変換部による往復直線運動により、弁体52が連通孔34に対して接近・離反することで、連通孔34の開閉を行う。
【0052】
軸部55は、一方の端部に弁体52が一体的に形成され(
図6参照)、他方の端部には、操作部60が固定される。この軸部55は、台座40の結合部42の内周にその一部が収容される。結果、軸部55の軸方向は、密閉栓32の軸方向と略同じ方向且つ略同軸状態となる。
【0053】
また、軸部55の外周には、圧縮ばね65を係止するための段部55Aが形成される。結合部42内に収容される圧縮ばね65は、ベース41側の段部42Bと、軸部55側の段部55Aとの間において圧縮状態で挟持される。圧縮ばね65の付勢力により、軸部55は、弁体52方向(或いは、装着状態におけるタンク部10の内側方向)に付勢される。結果、圧縮ばね65によって、弁体52が、連通孔34に当接する方向に常に付勢される。
【0054】
軸部55の外周には、圧縮ばね65よりも突端側(弁体52側)において、通気用凹部55Bが形成される。また、軸部55の内側には、一端が操作部60側の端面側(大気側)に開口すると同時に、他端が通気用凹部55Bに開口する通気路55Cが形成される。
図6に示すように、この通気用凹部55Bは、結合部42の通気用スリット45を経て、弁体52の周囲に繋がる。従って、通気路55C、通気用凹部55B、通気用スリット45により、大気側と連通孔34を連通させる脱気経路が形成される。
【0055】
従って、
図6(A)に示すように、弁体52が、連通孔34に当接している時は、大気とタンク部10の内部空間は遮断されているが、
図6(B)に示すように、弁体52が、連通孔34から離反している時は、上記脱気経路によって、大気とタンク部10の内部空間がつながり、タンク部10の内部が大気開放状態となる。
【0056】
なお、本実施形態では、軸部55と結合部42を組み合わせて、脱気経路を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、軸部55のみで全ての脱気経路を形成したり、結合部42のみで全ての脱気経路を形成したりすることができる。また、密閉栓32の結合孔33側に、スリット等を形成して脱気経路を形成することも可能である。
【0057】
弁体52は、軸方向に延びて連通孔34に圧入される凸部52Aと、凸部24Aの基端側に形成されて凸部52Aよりも半径方向外側に広がる円盤形状の拡径部52Bと、拡径部52Bの周縁に半径方向外側に突設される一対の第二カムフォロア52Cを備える。
【0058】
凸部52Aを連通孔34に圧入すると、連通孔34が完全に密閉される。なお、補助的な目的となるが、連通孔34の周囲に形成される段差34Aに対して、拡径部52Bを押し付けることによって、連通孔34の気密性を一層高めることができる。
【0059】
なお、弁体52が連通孔34を塞ぐ状態(
図6(A)参照)における弁体52の位置を「閉位置」と定義し、弁体52が連通孔34を開放する状態(
図6(B)参照)における弁体52の位置を「開位置」と定義した場合に、閉位置は、開位置と比較して、タンク部10の内側方向となる。このようにすると、「閉位置」において、タンク部10の内部空間が負圧になるほど、自ずと、その負圧によって弁体52の密閉性が高められる。
【0060】
図4に示すように、軸部55の端部に固定される操作部60は、半径方向に延びるレバー62を有する。レバー62は、把持部43と周方向に当接してレバー62の回動範囲を画定する閉位置当接面62A、開位置当接面62Bを有する。閉位置当接面62Aは、弁体52が閉位置となる際に把持部43と当接する。開位置当接面62Bは、弁体52が開位置となる際に把持部43と当接する。このようにレバー62の回動範囲を規制することで、レバー62を回し過ぎて軸部55等を破損させることを抑止する。
【0061】
なお、圧縮ばね65によって、弁体52は閉位置側に付勢されていることから、操作部60は常に
図6(A)の状態(閉状態)となる。操作者は、圧縮ばね65の付勢力に抗して、操作部60を回動させると、
図6(B)の状態(開状態)とすることができる。操作部60を手から解放するだけで、
図6(A)の状態(閉状態)に復帰する。なお、ここでは、操作部60を把持部43に係止させて、操作部60の操作範囲を画定する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、専用のストッパ等を設けることで操作部60の操作範囲を画定してもよい。
【0062】
本実施形態では、操作部60による弁体52の操作方向R2と、把持部43を利用して封止装置30をタンク部10に係止させる操作方向R1が、同軸状態の回動操作となっている。従って、操作者が、把持部43を把持して、封止装置30をタンク部10に対して着脱する際に、誤って操作部60を同時に握ってしまっても、操作方向が同じなので、弁装置50の損傷が抑制される。
【0063】
また、操作部60による弁体52の閉位置への操作方向R2−Aと、把持部43による封止装置30のタンク部10への操作方向R1−Aが同一方向となっており、操作部60による弁体52の開位置の操作方向R2−Bと、把持部43による封止装置30のタンク部10からの操作方向R1−Bが同一方向となっている。封止装置30を装着する際は、弁体52を閉位置とするのが好ましく、封止装置30を脱着する際は、弁体52を開位置にして内部の負圧を開放するのが好ましいことから、操作者の操作ミスを自然と抑制できることになる。
【0065】
次に、液分測定装置1の使用手順について説明する。まず、
図1(C)に示すように、上側筐体94を開放した状態で、タンク部10の開口16から封止装置30を取り外し、タンク部10内に水を満たしてから、
図1(B)に示すように封止装置30を装着する。装着手順は、
図3(C)に示すように、封止装置30の把持部43を軸方向Aに押し込んで、密閉栓32をタンク部10内に圧入してから、
図3(D)に示すように、封止装置30の把持部43を、右回り方向Bに回転させて、封止装置30とタンク部10を軸方向及び周方向に係合させる。
【0066】
なお、把持部43を軸方向に押し込む際、時々、
図4(B)に示すように、操作部60を指先で回動させて弁体52を開位置に移動させて、密閉栓32の連通孔34を開放してもよい。このようにすると、余分な水や空気が、連通孔34を経由して、外部に排出されるので、滑らかに密閉栓32を押し込むことが可能となる。
【0067】
その後、
図1(A)に示すように、上側筐体94を閉じてから、操作インタフェース70の電源ボタン72を押してONにすると、測定が開始される。
【0068】
測定を継続すると、タンク部10内が負圧になり、その負圧によって、密閉栓32が更に内部に引き込まれる。同時に、
図7(A)に示すように、タンク部10内の水が減少して、水位センサ24によって水位低下が検知され、計測が一時停止する。水位低下が検知されると、ステータスランプ76が点灯して操作者に知らせる。この際、制御装置80は、近距離無線通信によって、携帯端末に水位低下アラームを知らせるようにしてもよい。
【0069】
操作者は、
図7(B)に示すように、上側筐体94を開放してから、封止装置30を取り外す。具体的には、
図4(A)から(B)に示すように、操作部60を指先で回動させて弁体52を開位置に移動させることで、密閉栓32の連通孔34を開放し、タンク部10の負圧状態を大気開放状態とする。その後、操作部60から指先を離せば、弁体52は、
図4(A)の閉位置に自動的に復帰する。次いで、
図3(D)に示す方向Bと反対となるように、封止装置30の把持部43を、左回り方向に回転させて封止装置30とタンク部10を軸方向及び周方向の係合状態を解除する。さらに、
図3(C)に示す方向Aと反対となるように、封止装置30の把持部43を軸方向に引っ張って、密閉栓32をタンク部10から引き抜く。この際、タンク部10の内部は大気圧状態となっていることから、簡単に、密閉栓32を引き抜くことが可能となる。
【0070】
その後、
図7(C)に示すように、タンク部10内に水を補充すれば、
図1(C)の状態となるので、
図1(B)に示すように封止装置30を装着し、
図1(A)に示すように、上側筐体94を閉じてから、操作インタフェース70の電源ボタン72を押してONにすると、測定が再開される。
【0071】
本実施形態の液分測定装置1によれば、タンク部10に水を供給するための開口16に対して、封止装置30が設けられている。この封止装置30の密閉栓32には、連通孔34が形成されており、そこに弁体52が開閉自在に配置されていることから、封止装置30をタンク部10から取り出す際に、事前に、連通孔34を開放して、タンク部10内の負圧を大気開放することが可能となる。結果、封止装置30をタンク部10から簡単に離脱できる。
【0072】
更に本封止装置30の連通孔34は、密閉栓32における開口16と当接する環状の当接面(突起32A、32Bのリップ及び/又は密閉栓32の外周面全体)よりも内側に形成される。結果、弁体52が、圧入される密閉栓32の内部に収容され、さらには、弁体52が軸方向に移動自在に配置となっている。結果、封止装置30をコンパクトに構成できる。
【0073】
また、本封止装置30では、連通孔34を閉じる際に、弁体52がタンク部10の内側(密閉栓32における突端側)に向かって移動し、連通孔34を開く際に、弁体52がタンク部10の外側(密閉栓32における突端と反対側)に向かって移動する。このようにすると、タンク部10内の負圧によって、弁体52がタンク部10の内側に付勢されると、一層、連通孔34の密着度が向上するので、密閉性を高めることが可能となる。
【0074】
本封止装置30は、弁体52を操作する操作部60と、操作部60の動力を弁体52に伝達する伝達機構を有しており、この伝達機構の一部が、密閉栓32内に収容される。特にここでは、操作部60の回動運動を、伝達機構によって直線運動に変換する動力変換部を備えており、その直線運動によって弁体52を開閉する。
【0075】
タンク部10の内部は、時々、正圧(大気圧よりも高い状態)となる場合がある。この際、この正圧によって弁体52が、閉位置から開位置に簡単に移動してしまうと、正圧が大気開放されてしまい、正しい計測ができない。一方、弁体52を付勢する圧縮ばね65等の弾性部材の付勢力を強くしすぎると、弁体52を開位置に移動させる際に、操作者や部品に作用する負荷が大きくなる。そこで本実施形態では、回転運動を直線運動に変換する動力変換部を設けることで、回転運動を直線運動に変換する際の外力を小さくし、反対に、直線運動を回転運動に変換する際に大きな抵抗を生み出すようにしている。例えば、本実施形態の第一及び第二カム機構56A、56Bの場合、操作部60を回動させれば、弁体52を簡単に直線運動させることができるが、タンク部10内の正圧を、弁体52に印加しても、動力変換機構の摺動抵抗や弾性部材の反発力によって、弁体52は退避できない。なお、カム機構56A、56Bのテーパ角度(軸線方向に対する角度)を大きくする程、上記抵抗が大きくなるので好ましい。本実施形態では、
図5に示すように、テーパ角度αを30度以上、好ましくは45度以上にすることで、抵抗を大きくしている。なお、本実施形態では、動力変換部においてカム機構を採用したが、テーパ角度がより大きくなる(リード角がより小さくなる)ねじ機構等を採用してもよい。
【0076】
更に本封止装置30は、ベース41が、ベース側軸方向係合部46を有しており、タンク部10のタンク側軸方向係合部12Aと軸方向に係合可能となっている。従って、タンク部10の内部に正圧(大気圧よりも高い状態)が生じても、その圧力によって、本封止装置30がタンク部10から離脱しない。この密閉力により、タンク部10の内部の正圧が更に高まったとしても、弁体52が開放されないようになっている。
【0077】
また、ベース41とタンク部10を軸方向に係合させるための把持部43の回動軸と、操作部60の回動軸が同軸となっている。結果、把持部43を操作する際に、誤って操作部60を同時に握ってしまっても、操作方向が同じなので、弁装置50の損傷が抑制される。とりわけ本実施形態では、圧縮ばね65によって、操作部60が把持部43と常に密着しており(
図4(A)参照)、把持部4と操作部60を同時に握っても、操作部60が把持部43に対して相対回転しない結果、弁装置50の損傷が抑制される。一方で、封止装置30をタンク部10に対して着脱する際には、把持部43のみを把持させるために、把持部43の方が、操作部60よりも軸方向に突出するように設定されている。
【0078】
なお、上記実施形態では、圧縮ばね65により、弁体52を一方向に付勢する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、引っ張りばね、板バネ、渦巻きばね、弾性ピン、皿ばね、ゴム等の弾性樹脂等、様々な弾性部材を採用することができる。また、操作部60は、半径方向に延びるアーム構造となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、ハンドル構造、円形・多角形のグリップ形状など、操作者が回動させやすい形状であれば様々な構造・形状を採用できる。
【0079】
更に上記実施形態では、密閉栓32の中央に結合孔33を形成し、その中に弁体52等が収容される構造を例示したが、本発明はこれに限定されず、連通孔34を密閉栓32の最も基端側(ベース41側)に形成しておき、弁体52は、ベース41側に収容されるようにしてもよい。また、密閉栓32は、全体が、弾性材によって構成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、開口16と接触する部分や、弁体52と当接する連通孔34の部分に限ってゴムやシリコン等の弾性材で構成され、残りの部分は、プラスチックや金属等の非弾性体で構成することもできる。
【0080】
更にまた、上記実施形態では、ベース側軸方向係合部46とタンク側軸方向係合部12Aが、L字状に相対移動して、軸方向に係合可能となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ねじ構造によって軸方向に締結してもよい。
【0081】
なお、上記実施形態では、タンク部10に対して水を補給する為に、一旦、封止装置30をタンク部10から離脱させる必要があるが、本発明はこれに限定されず、連通孔34を利用してタンク部10内に補水することができる。
【0082】
例えば、
図8(A)に示す変形例に係る封止装置30のように、クリップ等による固定手段99により、操作部60と把持部43を挟み込むことで、弁体52を「開位置」に固定できる。その後、
図8(B)に示すように、ベース41(又はタンク部10)に対して、筒状の補助タンク98を着脱自在に設置する。この補助タンク98に水を供給すれば、通気経路及び連通孔34を介して、補助タンク98の水を、タンク部10内に供給することができる。従って、密閉栓32を抜くことなく、簡単に、水を補充することが可能となる。
【0083】
また、上記実施形態では、タンク部10の開口16近傍の内周壁がストレート形状となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図9に係る変形例では、タンク部10の開口16近傍の内周壁が、挿入方向奥側に進むほど径が小さくなるテーパ形状としても良い。ここでは、傾斜角度βのテーパ面としている。封止装置30をタンク部10の奥側に押し込むほど、密閉栓32を弾性変形させやすくなる。更に、タンク部10の開口16の内周壁の奥側には、テーパ状に直径が更に小さくなる段差19が形成される。この段差19に対して、封止装置30の密閉栓32の先端(突起32B)近辺を当接させれば、密閉栓32が更に弾性変形しやすくなり、密封特性を一層高めることが可能となる。
【0084】
尚、本発明の液分測定装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ここでは水分の測定を行ったが、油分等の他の媒体の分量測定に用いることもできる。