【解決手段】表示ドライバが、第1画像データに対してサブピクセルレンダリング処理を行って第2画像データを生成するサブピクセルレンダリング処理回路と、第2画像データに対して8色処理を行って第3画像データを生成する8色処理回路と、第3画像データに応じて表示パネルを駆動する駆動回路とを具備する。8色処理回路は、ディザテーブルを記憶する記憶回路を備えており、表示パネルの注目画素に対応する第3画像データの生成において、ディザテーブルの要素から注目画素の位置を示すアドレスに応じて選択されたディザ値を用いたディザ処理を第2画像データに対して行って第3画像データを生成するように構成されている。ディザテーブルの要素の値の度数分布は、不均一である。
【背景技術】
【0002】
サブピクセルレンダリングとは、元画像の画像データに対して画像データ処理を行うことにより、表示デバイス(例えば、OLED(organic light emitting diode)表示パネルや液晶表示パネル)の本来の解像度より高い解像度で画像を表示する技術である。以下では、サブピクセルレンダリングを実現するための画像データ処理をサブピクセルレンダリング処理と呼ぶ。サブピクセルレンダリング処理においては、最も典型的には、元画像のN個の画素の画像データから出力画像(即ち、サブピクセルレンダリング処理によって得られる画像)のM個の画素の画像データを生成する処理が行われる。ここで、N、Mは、N>Mなる自然数である。
【0003】
発明者は、サブピクセルレンダリング処理に加えて、“8色処理”を行うことを検討している。ここでいう“8色処理”とは、元画像の画像データを、各画素の色数が8色、即ち、各画素のR副画素、G副画素、B副画素の階調数がそれぞれ2であるような画像データに変換する処理をいう。8色処理が行われる場合、8色処理によって得られた画像データは、各画素のR副画素、G副画素、B副画素それぞれの「点灯(turn-on)」、「消灯(turn-off)」を指定する3ビットデータとして生成される。ここで、「点灯」とは、当該副画素を最高階調に対応する駆動電圧で駆動することをいい、「消灯」とは、当該副画素を最低階調に対応する駆動電圧で駆動することをいう。
【0004】
8色処理は、表示画像の画質をある程度確保しながら、表示装置の消費電力を低減するために有効である。8色処理によって生成された画像データに応答して表示デバイスを駆動する場合、表示ドライバの内部では、最高階調値及び最低階調値に対応する駆動電圧の生成が必要であるが、中間階調値(最高階調値と最低階調値の間の階調値)に対応する駆動電圧を生成する必要はない。これは、8色処理を行う場合には、中間階調値に対応する駆動電圧を生成する回路要素(例えば、中間階調の生成に用いられる演算増幅器)の動作を停止することができることを意味している。8色処理を行うと共に、中間階調値に対応する駆動電圧を生成する回路要素の動作を停止することで、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0005】
発明者の検討によれば、サブピクセルレンダリング処理と8色処理の両方を行うためには、8色処理に工夫が必要である。8色処理として最も簡便な処理は、各副画素の階調値を指定するデータの最上位ビットにより、該副画素の「点灯」、「消灯」を決定することである。この場合、8色処理において、画像データは、注目画素の各副画素の階調値を指定するデータの最上位ビットが“1”である場合に該副画素を「点灯」し、最上位ビットが“0”である場合に該副画素を「消灯」するように生成される。しかしながら、このような8色処理は、サブピクセルレンダリング処理と両立しない。
【0006】
図1は、元画像の画像データに8色処理を行い、更にサブピクセルレンダリング処理を行うことによって得られる画像データを示す図である。サブピクセルレンダリング処理は、基本的には、元画像の複数の画素の画像データについて、各画素の輝度が平均化されるように出力画像の各画素の画像データを算出するものであるから、出力画像の各画素の副画素の階調値として、中間階調値が許容されなければならない。よって、8色処理の後にサブピクセルレンダリング処理を行うと、得られた画像データは、中間階調値を指定するものとなり得る。このような処理では、8色処理の本来の目的を達成することができない。
【0007】
一方、
図2は、元画像の画像データにサブピクセルレンダリング処理を行い、更に8色処理を行うことによって得られる画像データを示す図である。このような処理においては、8色の画像データ、即ち、各画素のR副画素、G副画素、B副画素それぞれの「点灯(turn-on)」、「消灯(turn-off)」を指定する画像データが得られる。しかしながら、8色処理において、各副画素の階調値を指定するデータの最上位ビットにより、該副画素の「点灯」、「消灯」を決定すると、画質の劣化が大きい。
【0008】
例えば、元画像の画像データに対するサブピクセルレンダリング処理において、隣接する2つの画素が注目画素であり、該2つの画素の一方の画素の各副画素(R副画素、G副画素、B副画素)の階調値がいずれも最低階調値“0”であり、他方の画素の各副画素の階調値がいずれも最高階調値“255”である場合を考える。サブピクセルレンダリング処理においては、注目画素に対応する出力画像の画素の各画素の階調値が、中間階調値、例えば、“186”として算出される。この場合、更に8色処理を行うと、該対応する画素の各副画素の階調値が、最高階調値“255”として算出される。
【0009】
このような処理では、画像における階調値の空間的変化が十分に表現できないので、画質が大きく劣化してしまう。例えば、
図3に図示されているように、元画像の画像データとして、各副画素(R副画素、G副画素、B副画素)の階調値が最低階調値“0”である画素と、最高階調値“255”である画素とが交互に配置されている画像データが与えられたとしよう。この場合、元画像の画像データに対してサブピクセルレンダリング処理と8色処理とを行うと、階調値の空間的な変化が表現されず、全ての画素の各副画素の階調値が最高階調値“255”である画像データが得られることになる。得られた画像データが、元画像の階調値の空間的変化を全く反映しないものであることは、容易に理解されよう。
【0010】
以上に議論されているように、
図1、
図2のいずれの場合も、適正なサブピクセルレンダリング処理と8色処理を行うことができない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図4は、一実施形態における表示装置10の構成を示すブロック図である。表示装置10は、
図1の表示装置10は、表示パネル1と、表示ドライバ2とを備えている。表示パネル1としては、例えば、OLED(Organic Light Emitting Diode)表示パネルや液晶表示パネルが使用され得る。
【0019】
表示パネル1は、ゲート線4とデータ線5と画素回路6とゲート線駆動回路7とを備えている。画素回路6のそれぞれは、ゲート線4とデータ線5とが交差する位置に設けられており、赤、緑、青のいずれかの色を表示するように構成されている。赤を表示する画素回路6は、R副画素として用いられる。同様に、緑を表示する画素回路6はG副画素として用いられ、青を表示する画素回路6はB副画素として用いられる。表示パネル1としてOLED表示パネルが用いられる場合、赤を表示する画素回路6が赤色の光を発光する発光素子を備えており、緑を表示する画素回路6が緑色の光を発光する発光素子を備えており、青を表示する画素回路6が青色の光を発光する発光素子を備えている。
図5に図示されているように、表示パネル1の各画素8は、1つのR副画素、1つのG副画素及び1つのB副画素で構成される。ここで、
図5において、R副画素(赤を表示する画素回路6)は、符号“6R”によって参照されている。同様に、G副画素(緑を表示する画素回路6)は、符号“6G”によって参照され、B副画素(青を表示する画素回路6)は、符号“6B”によって参照されている。
【0020】
図4に戻り、ゲート線駆動回路7は、表示ドライバ2から受け取ったゲート制御信号11に応答してゲート線4を駆動する。本実施形態では、一対のゲート線駆動回路7が設けられており、一方のゲート線駆動回路7は、奇数番目のゲート線4を駆動し、他方のゲート線駆動回路7は、偶数番目のゲート線4を駆動する。本実施形態では、ゲート線駆動回路7は、GIP(gate-in-panel)技術を用いて表示パネル1に集積化されている。このようなゲート線駆動回路7は、GIP回路と呼ばれることがある。
【0021】
表示ドライバ2は、ホスト3から受け取った画像データ12及び制御データ13に応じて表示パネル1を駆動して表示パネル1に画像を表示する。画像データ12は、表示すべき画像(元画像)の各画素の各副画素の階調値を記述している。制御データ13は、表示ドライバ2を制御するためのコマンド及びパラメータを含んでいる。ホスト3としては、例えば、アプリケーションプロセッサ、CPU(central processing unit)、DSP(digital signal processor)などが使用され得る。
【0022】
図6は、一実施形態における表示ドライバ2の構成を示すブロック図である。表示ドライバ2は、インターフェース制御回路21と、画像処理回路22と、階調電圧生成回路23と、データ線駆動回路24と、タイミング制御回路25と、パネルインタフェース回路26とを備えている。
【0023】
表示ドライバ2の各回路は、下記のように動作する。インターフェース制御回路21は、ホスト3から受け取った画像データ12を画像処理回路22に転送する。加えて、インターフェース制御回路21は、制御データ13に含まれる制御パラメータ及びコマンドに応答して表示ドライバ2の各回路を制御する。画像処理回路22は、インターフェース制御回路21から受け取った画像データ12に対して画像データ処理を行って表示パネル1の駆動に用いられる表示データ14を生成する。階調電圧生成回路23は、表示データ14に記述されている階調値がとり得る値のそれぞれに対応する一組の階調電圧V
0〜V
Mを生成する。データ線駆動回路24は、表示データ14に記述されている階調値に対応する階調電圧で各データ線5を駆動する。詳細には、データ線駆動回路24は、各データ線5について階調電圧生成回路23から供給された階調電圧V
0〜V
Mのうちから表示データ14の階調値に対応する階調電圧を選択し、選択した階調電圧になるように各データ線5を駆動する。タイミング制御回路25は、インターフェース制御回路21から受け取った制御信号に応じて表示ドライバ2の各回路のタイミング制御を行う。パネルインタフェース回路26は、ゲート制御信号を表示パネル1のゲート線駆動回路7に供給し、これにより、ゲート線駆動回路7を制御する。
【0024】
また、階調電圧生成回路23は、中間階調値に対応する階調電圧(即ち、最低階調値及び最高階調値に対応する階調電圧以外の階調電圧)の生成を停止可能であるように構成されている。以下では、階調電圧V
0〜V
Mのうち、最低階調値に対応する階調電圧をV
0、最高階調値に対応する階調電圧をV
Mと記載する。即ち、言い換えれば、階調電圧V
1〜V
M−1は、中間階調値に対応する階調電圧である。インターフェース制御回路21から供給される階調電圧制御信号による指示に応じて、階調電圧生成回路23は、中間階調値に対応する階調電圧V
1〜V
M−1の生成を停止する。
【0025】
ここで、データ線駆動回路24のガンマ特性が、階調電圧生成回路23から供給された階調電圧V
0〜V
Mの電圧レベルの分布によって決定されることに留意されたい。データ線駆動回路24を所望のガンマ特性に設定するためには、階調電圧V
0〜V
Mの電圧レベルの分布を、該所望のガンマ特性に合わせて決めればよい。階調電圧生成回路23によって生成される階調電圧V
0〜V
Mは、インターフェース制御回路21から供給される階調電圧制御信号によって制御される。
【0026】
表示ドライバ2全体としてのガンマ特性は、画像処理回路22において行われる画像処理のガンマ特性と、データ線駆動回路24のガンマ特性の重ね合わせとして決定される。適正な輝度で画像を表示するためには、表示ドライバ2全体としてのガンマ特性を、表示パネル1のガンマ特性に合わせて設定することが望ましい。
【0027】
本実施形態では、画像処理回路22が、サブピクセルレンダリング処理と8色処理とを実行できるように構成されている。詳細には、本実施形態では、画像処理回路22が、サブピクセルレンダリング処理回路27と、8色処理回路28と、セレクタ29とを備えている。
【0028】
サブピクセルレンダリング処理回路27は、インターフェース制御回路21から受け取った画像データ12に対してサブピクセルレンダリング処理を行ってSPR(sub-pixel rendering)処理後画像データ15を生成し、生成したSPR処理後画像データ15を8色処理回路28とセレクタ29に供給する。以下では、SPR処理後画像データ15に対応する画像を、SPR処理後画像と呼ぶ。サブピクセルレンダリング処理回路27は、SPR処理後画像データ15を8色処理回路28に供給すると共に、SPR処理後画像における各画素の位置を示すアドレスを8色処理回路28に供給する。ある画素に対応するSPR処理後画像データ15を8色処理回路28に供給するとき、サブピクセルレンダリング処理回路27は、このSPR処理後画像データ15の供給に同期して、該画素のアドレスを8色処理回路28に供給する。
【0029】
8色処理回路28は、SPR処理後画像データ15に対して8色処理を行って2値画像データ16を生成する。
【0030】
セレクタ29は、サブピクセルレンダリング処理回路27から受け取ったSPR処理後画像データ15と8色処理回路28から受け取った2値画像データ16のいずれかを選択し、選択した画像データを表示データ14としてデータ線駆動回路24に出力する。データ線駆動回路24は、セレクタ29から受け取った表示データ14に応じて表示パネル1を駆動する。
【0031】
画像処理回路22において8色処理を行う場合、インターフェース制御回路21は、8色処理を行うことを指示する画像処理制御信号を画像処理回路22に供給する。セレクタ29は、該画像処理制御信号に応じて2値画像データ16を選択する。加えて、インターフェース制御回路21は、中間階調値に対応する階調電圧V
1〜V
M−1の生成を停止することを指示する階調電圧制御信号を階調電圧生成回路23に供給する。階調電圧生成回路23は、階調電圧制御信号に応じて中間階調値に対応する階調電圧V
1〜V
M−1の生成を停止する。これにより、階調電圧生成回路23の消費電力が低減される。なお、中間階調値に対応する階調電圧V
1〜V
M−1の生成が停止される場合も、最高階調値及び最低階調値に対応する階調電圧V
0、V
Mの生成は継続される。
【0032】
なお、
図6においては、サブピクセルレンダリング処理回路27が、インターフェース制御回路21から受け取った画像データ12に対してサブピクセルレンダリング処理を行う構成が図示されているが、サブピクセルレンダリング処理回路27は、画像データ12に対して何らかの画像データ処理を行って生成される画像データに対してサブピクセルレンダリング処理を行ってもよい。また、
図6においては、サブピクセルレンダリング処理回路27から出力されたSPR処理後画像データ15がセレクタ29に入力される構成が図示されているが、SPR処理後画像データ15の代わりに、SPR処理後画像データ15に対して何らかの画像データ処理を行って生成される画像データが入力されてもよい。
【0033】
続いて、8色処理回路28において行われる8色処理について説明する。一般に、多階調の画像データ(なお、上記のSPR処理後画像データ15は多階調の画像データである。)に対して8色処理を実現する最も単純な方法は、各副画素の階調を示すデータの最上位ビットにより、該副画素の「点灯」、「消灯」を決定することである。注目画素の各副画素の階調を示すデータの最上位ビットが“1”である場合に該副画素を「点灯」し、最上位ビットが“0”である場合に該副画素を「消灯」することで、各画素の色数が8であるような画像を表示することができる。しかしながら、このような8色処理では、画像における階調値の空間的な変化が十分に表現できないので、画質が大きく劣化してしまう。このことは、
図3を参照して説明した通りである。
【0034】
8色処理は、減らされるビット数が多い減色処理と考えてもよい。よって、画質の劣化を軽減する減色処理の一つとして公知であるディザ処理は、有力な8色処理の候補の一つである。ディザ処理を行うことにより、画像における階調値の空間的な変化を表現し、画質の劣化を軽減することができる。一般的には、ディザ処理は、ランダムに決められたディザ値を画像データに加算した上で下位ビットを切り捨てることで行われる。ここでいう「ランダム」とは、ディザ値がとり得る各値について、ディザ値が当該値を取る確率が同一のであることを意味する。例えば、各副画素の階調を8ビットで表す画像データについての8色処理は、8ビットのディザ値を各副画素の画像データに加算し(結果として得られる値は9ビットである)、最上位ビットのみを取り出す(即ち、下位8ビットを切り捨てる)処理により実現することができる。
【0035】
ディザ処理に用いられるディザ値の生成は、最も典型的には、ディザ値を要素として記述したディザテーブルから注目画素のアドレスに応じてディザ値を読み出すことによって行われる。
図7は、16×16の要素を含み、各要素として8ビットのディザ値が記述されているディザテーブルの一例を示している。
図7に図示されているディザテーブルは、255個の要素を含んでおり、各要素に記述されているディザ値は、0〜255の互いに異なる値に設定されている。即ち、
図7に図示されているディザテーブルは、0〜255の各値を有する要素が1つずつであるように決定されている。例えば、注目画素のXアドレス(表示パネル1の水平方向(ゲート線方向)の位置を示すアドレス)及びYアドレス(表示パネルの垂直方向(データ線方向)の位置を示すアドレス)の下位4ビットに応じて、
図7に図示されているディザテーブルの256個の要素からディザ値を選択することにより、ランダムなディザ値を生成することができる。
【0036】
ここで、留意すべきことは、8色処理によって得られた画像データに基づいて画像を表示した場合には最高階調値の副画素と最低階調値の副画素しか存在しないために、階調電圧V
0〜V
Mの電圧レベルの設定によるデータ線駆動回路24のガンマ特性の設定が機能しないことである。8色処理が行われる場合、中間階調値に対応する階調電圧V
1〜V
M−1が使用されず、よって、階調電圧V
0〜V
Mをどのように設定しても、データ線駆動回路24のガンマ特性には影響しない。
【0037】
その一方で、ランダムに決められたディザ値を用いたディザ処理による8色処理は、ガンマ値γが1であるような画像処理に相当することにも留意すべきである。
図8は、ランダムに決められたディザ値を用いたディザ処理による8色処理のガンマ特性について示す図である。ここで、各副画素の階調は8ビットの値(0〜255)で表されるとしている。
図8において、実線は、ランダムに決められたディザ値を用いたディザ処理による8色処理のガンマ特性を示しており、破線は、ガンマ値が2.2であるようなガンマ特性を示している。
【0038】
ランダムに決められたディザ値を用いてある副画素の画像データについてディザ処理を行う場合、当該副画素が「点灯」される確率は、当該副画素について画像データで指定された階調値に比例して増加する。例えば、ある副画素について指定された階調値が0である場合には、該副画素が「点灯」する確率は0%であり、階調値が255である場合には、100%の確率で「消灯」する。階調値が128である場合には、ディザ値が0〜127である場合に該副画素が「点灯」し、ディザ値が128〜255である場合に「消灯」する。言い換えれば、階調値が128である場合には、50%の確率で該副画素が「点灯」し、50%の確率で該副画素が「消灯」する。よって、表示される画像における該副画素の輝度は、実質的に、最高輝度の50%になる。このように、副画素が「点灯」される確率は、該副画素について指定された階調値に比例して増加し、実際に表示される画面における該副画素の実質的な輝度も、該副画素について指定された階調値に比例して増加することになる。これは、ランダムに決められたディザ値を用いたディザ処理のガンマ値が1であることを意味している。
【0039】
したがって、ランダムに決められたディザ値を用いたディザ処理による8色処理を行うと、画像における階調値の空間的な変化を表現することができるものの、表示ドライバ2全体のガンマ特性が表示パネル1のガンマ特性に整合せず、表示される画像の輝度が適正に表現されない。
【0040】
本実施形態の8色処理回路28は、ディザ処理による8色処理を行う一方で、このような問題に対応する構成を有している。以下では、本実施形態における8色処理回路28の構成及び動作について説明する。
【0041】
図9は、8色処理回路28の構成を示すブロック図である。本実施形態では、8色処理回路28は、ディザ値を用いたディザ処理を行うように構成されており、LUT(lookup table)回路31と、加算回路32とを備えている。
【0042】
LUT回路31は、ディザテーブル33を格納する記憶回路である。LUT回路31は、サブピクセルレンダリング処理回路27から供給される注目画素のXアドレス及びYアドレスに応じてディザテーブル33の要素からディザ値D
DITHERを選択し、選択したディザ値D
DITHERを加算回路32に供給する。
図9においては、Xアドレス、Yアドレスは、“(X,Y)”と記載されている。なお、ここでいう注目画素のXアドレスとは、SPR処理後画像(SPR処理後画像データ15に対応する画像)における水平方向(表示パネル1のゲート線方向に対応する方向)の位置を示すアドレスであり、Yアドレスとは、SPR処理後画像における垂直方向(表示パネル1のデータ線方向に対応する方向)の位置を示すアドレスである。SPR処理後画像データ15において各画素のR副画素、G副画素、B副画素の階調値D
SPRR、D
SPRG、D
SPRBがmビットで記述されている場合には(mは、2以上の整数)、ディザテーブル33の各要素もmビットの値を有しており、ディザ値D
DITHTERもmビットの値を有している。この場合、ディザテーブル33の要素の数は、2
m個である。
【0043】
SPR処理後画像データ15においてR副画素、G副画素、B副画素の階調値D
SPRR、D
SPRG、D
SPRBが8ビットの値として記述される本実施形態では、ディザテーブル33の各要素が8ビットの値であり、“0”から“255”の値をとる。ディザテーブル33は、16行16列の要素を有している。ただし、後述のように、
図9の8色処理回路28のディザテーブル33は、2以上の要素が同一の値をとり得ることに留意されたい。ディザテーブル33が16行16列の要素を有している本実施形態では、LUT回路31は、注目画素のXアドレス及びYアドレスの下位4ビットに応じて、ディザテーブル33の256個の要素からディザ値D
DITHERを選択する。
【0044】
加算回路32は、サブピクセルレンダリング処理回路27からSPR処理後画像データ15を受け取り、SPR処理後画像データ15に記述された各画素の各副画素の階調値と、LUT回路31から供給されるディザ値とを加算する。詳細には、加算回路32は、SPR処理後画像データ15に記述された、注目画素のR副画素、G副画素、B副画素について、それぞれ、和SUM
R、SUM
G、SUM
Bを下記式(1a)〜(1c)に従って算出する:
SUM
R=D
SPRR+D
DITHER ・・・(1a)
SUM
G=D
SPRG+D
DITHER ・・・(1b)
SUM
B=D
SPRB+D
DITHER ・・・(1c)
ここで、D
SPRRは、SPR処理後画像データ15に記述された注目画素のR副画素の階調値であり、D
SPRGは、該注目画素のG副画素の階調値であり、D
SPRBは、該注目画素のB副画素の階調値である。和SUM
R、SUM
G、SUM
Bの最上位ビットが、2値画像データ16として出力される。なお、SPR処理後画像データ15に記述されたR副画素、G副画素、B副画素D
SPRR、D
SPRG、D
SPRBが8ビットの値であり、ディザ値D
DITHTERも8ビットの値である本実施形態では、和SUM
R、SUM
G、SUM
Bは、9ビットの値である。2値画像データ16は、各画素のR副画素、G副画素、B副画素のそれぞれについて「点灯」「消灯」を1ビットで指定するデータであり、注目画素のR副画素、G副画素、B副画素に対応するビットを、それぞれ、D
BNR、D
BNG、D
BNBとすると、下記式(2a)(2c)として表される:
D
BNR=MSB[SUM
R] ・・・(2a)
D
BNG=MSB[SUM
G] ・・・(2b)
D
BNB=MSB[SUM
B] ・・・(2c)
【0045】
図9の8色処理回路28では、ディザテーブル33の要素の値の度数分布が工夫され、これにより、所望のガンマ値のガンマ特性を実現するような8色処理回路28が実現されている。発明者の一つの発見は、ディザ処理に用いられるディザテーブルの度数分布を適正に決めることにより、様々なガンマ特性を有するディザ処理を実現できるということである。ここで、本明細書においてディザテーブルの要素の値の度数分布とは、ディザテーブルにおける、値pを有する要素の個数N(p)の分布をいう。一般的には、ディザ処理において用いられるディザテーブルは、各値をとる要素が1つずつである(即ち、pに関わらず、N(p)=1である)ように決定される。
図7は、このような16×16ディザテーブルを図示しており、
図7に図示されているディザテーブルを用いたディザ処理は、ガンマ値が1であるようなガンマ特性を有していることは上述のとおりである。一方、度数分布が不均一である(即ち、値pを有する要素の個数N(p)がpに依存する)ディザテーブルを用いれば、ディザ処理と同時に様々な画像演算を行うことができる。なお、度数分布が不均一である場合、ディザテーブルにおける値p
1、p
2を有する要素の個数N(p
1)、N(p
2)が同一でないような0以上2
k−1以下の整数p
1、p
2が存在することになる。
【0046】
例えば、R副画素、G副画素、B副画素の階調値D
SPRR、D
SPRG、D
SPRBをそれぞれmビットで表すSPR処理後画像データ15に対してmビットのディザ値D
DITHERを用いてディザ処理による8色処理を行う場合を考える。即ち、2値画像データ16のビットB
BNkを、和D
SRRk+D
DITHERの最上位ビットとして算出する場合を考える。ただし、kは、“R”、“G”、又は“B”のいずれかである。この場合、各副画素の階調値D
SPRkの取り得る値pに対し、ディザテーブルの2
m個の要素のうちq個が(2
m−p)以上であるようにディザテーブル33の各要素の値を決定すれば、実効的には、表示される画像における副画素の輝度を最大輝度の(q/2
m)倍にすることができる。これを利用すれば、8色処理において、所望のガンマ特性を実現できる。例えば、qを下記式(3):
【数1】
により定義すれば、ガンマ値γのガンマ特性を有する8色処理を実現できる。ここで、floor(x)は、床関数であり、x以下の最大の整数である。値0.5の加算及び床関数floor(x)は、単に整数化のために導入されているものであり、他の手法による整数化が行われてもよい。
【0047】
例えば、mが8であり、ある副画素の階調値D
SPRkの値が186である場合、ガンマ値2.2のガンマ特性を実現するためには、当該副画素の輝度が、最大輝度の0.5倍(=128/256)であるべきである。この場合、p=186、q=128として、ディザテーブルの256個の要素のうちの128個が70以上であるようにディザテーブルを決定すれば、該副画素について所望の輝度を実現できる。
【0048】
図10は、ガンマ値γが2.2であるようなガンマ特性を有する8色処理を行う場合のディザテーブル33の各要素の値の一例を示している。
図10に図示されているディザテーブル33は、下記式(4):
【数2】
でqを定義した場合に、各副画素の階調値D
SPRkの取り得る値pに対し、ディザテーブルの2
m個の要素のうちq個が(2
m−p)以上であるように決定されている。
【0049】
より具体的には、
図10に図示されたディザテーブル33は、
図7に図示されているディザテーブルに対し下記式(5)の変換を行うことで得られている:
【数3】
ここで、α(i,j)は、
図7に図示されているディザテーブルのi行j列の要素の値であり、β(i,j)は、
図10に図示されているディザテーブル33のi行j列の要素の値である。また、floor(x)は、床関数であり、x以下の最大の整数を示している。
図10に図示された内容のディザテーブル33を用いることにより、
図9に図示された8色処理回路28は、ガンマ値γが2.2であるディザ処理を行うことができる。
【0050】
一般に、SPR処理後画像データ15の各副画素の階調値D
SPRkがmビットであり、ディザ値がmビットである場合、ガンマ値γのディザ処理を実現するディザテーブル33は、下記の手順で生成することができる。
(1)各値をとる要素が1つずつである(即ち、pに関わらず、N(p)=1である)第1のディザテーブルを一般的な手法で生成する。第1のディザテーブルは、2
m個の要素を有していることに留意されたい。
(2)生成した第1のディザテーブルに対し、下記式(6)の変換を行う:
【数4】
α(i,j)は、第1のディザテーブルのi行j列の要素の値であり、β(i,j)は、変換によって得られる第2のディザテーブルのi行j列の要素の値である。
【0051】
図11、
図12は、本実施形態の画像処理回路22において行われるサブピクセルレンダリング処理及び8色処理の一例を示す概念図である。
図11、
図12は、画像データ12として、各副画素(R副画素、G副画素、B副画素)の階調値D
SPRk(kは、“R”、“G”、“B”の任意)がいずれも最低階調値“0”である画素と、最高階調値“255”である画素とが交互に配置されている元画像の画像データが与えられた場合の例を図示している。サブピクセルレンダリング処理回路27におけるサブピクセルレンダリング処理では、元画像の隣接する2つの画素の各副画素の階調値から、輝度が平均化されるようにSPR処理後画像データ15の各画素の各副画素の階調値が算出される。結果として、SPR処理後画像データ15の各画素の各副画素の階調値が、例えば、“186”と算出されるものとする。
【0052】
更に、SPR処理後画像データ15に対して8色処理回路28により、8色処理が行われる。8色処理回路28においては、ガンマ値2.2のガンマ特性を有する8色処理が行われる。上述のように、ガンマ値2.2のガンマ特性においては、SPR処理後画像データ15に記述されている各副画素の階調値D
SPRkの値が186である場合に、該副画素の輝度が最大輝度の50%(≒128/256)になることが求められる。
【0053】
本実施形態では、LUT回路31は、
図10に図示されているディザテーブル33の要素から加算回路32に供給するディザ値D
DITHERを選択する。上述のように、
図10に図示されているディザテーブル33の各要素の値は、ガンマ値2.2のガンマ補正を実現するような度数分布となるように決定されている。加算回路32は、各副画素の階調値D
SPRkと、LUT回路31から受け取ったディザ値D
DITHERとを加算し、和SUM
kを算出する。2値画像データ16の色kの副画素に対応するビットD
BNkは、和SUM
kの最上位ビットとして決定される。
【0054】
以下では、16行16列の画素について、SPR処理後画像データ15の各副画素の階調値D
SPRkに対して上記の処理を行った場合について議論する。
図10に図示されているディザテーブル33が用いられ、且つ、各副画素の階調値D
SPRkが“186”である場合、16×16個の画素のうち128個についてビットD
BNkが値“1”と算出される。これは、ディザ値D
DITHERが
図10に図示されているディザテーブル33の要素から選択される場合、16×16個の画素のうち128個について和SUM
kの最上位ビットが“1”になるからである。よって、16行16列の画素のうち128個の画素において各色kの副画素が「点灯」する。これは、表示される画像において当該画素の色kの副画素の輝度が、実質的に、最大輝度の約50%になることを意味している。即ち、本実施形態の8色処理によれば、ガンマ値2.2のガンマ特性を実現することができる。よって、本実施形態の8色処理によれば、表示される画像における各画素の輝度を適正に表現することができる。
【0055】
以上に議論されているように、本実施形態では、サブピクセルレンダリング処理と8色処理の両方を実現する画像データ処理技術が提供される。本実施形態の8色処理によれば、画像における階調値の空間的な変化を表現することができ、更に、表示される画像における各画素の輝度を適正に表現することができる。
【0056】
以上には、本発明の実施形態が具体的に記述されているが、本発明は、上記の実施形態に限定されない。本発明が種々の変更と共に実施され得ることは、当業者には理解されよう。