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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-113345(P2018-113345A)
(43)【公開日】2018年7月19日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20180622BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20180622BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20180622BHJP
   H01L 27/115 20170101ALI20180622BHJP
【FI】
   H01L29/78 371
   H01L27/10 434
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-3023(P2017-3023)
(22)【出願日】2017年1月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】北原 宏良
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP03
5F083EP08
5F083EP23
5F083EP42
5F083EP56
5F083ER03
5F083ER05
5F083ER11
5F083ER21
5F083GA01
5F083GA11
5F083JA05
5F083ZA12
5F101BA15
5F101BB05
5F101BC03
5F101BD02
5F101BD22
5F101BE05
5F101BE07
(57)【要約】
【課題】メモリセルのデータ書き込み時及びデータ消去時の動作速度を向上しつつデータ
保持能力を維持することのできる半導体装置の提供。
【解決手段】実施形態の半導体装置はメモリセルを有する。メモリセルのゲート絶縁膜は
、第1の窪み部と第2の窪み部とを有する。ソース領域からドレイン領域に向かう第1方
向において、前記第1の窪み部は、前記ドレイン領域側の第1の端と前記第1の端に対向
する第2の端とを有し、前記第2の窪み部は、前記ドレイン領域側の第3の端と前記第3
の端に対向する第4の端とを有する。前記第1の端と前記第2の端との距離は、前記第3
の端と前記第4の端との距離より長い。前記第1の端は、前記第3の端よりも前記第1の
方向において前記ソース領域側に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性半導体メモリとロジック回路を有する半導体装置において、前記不揮発性半導
体メモリを構成するメモリセルは、
第1導電形のウエル領域と、
前記ウエル領域内に設けられた第2導電形のソース領域と、
前記ウエル領域内に設けられ前記ソース領域と離間する前記第2導電形のドレイン領域
と、
前記ウエル領域内の前記ソース領域と前記ドレイン領域との間のチャネル領域上に設け
られたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記チャネル領域上に設けられ周囲から絶縁されたフローテ
ィングゲートと、
前記フローティングゲート上に設けられたゲート間絶縁膜と、
前記ゲート間絶縁膜を介して前記フローティングゲート上に設けられたコントロールゲ
ートと、
を備え、
前記ゲート絶縁膜は前記フローティングゲートに面する第1の窪み部と第2の窪み部と
を有し、
前記ソース領域から前記ドレイン領域に向かう第1方向において、前記第1の窪み部は
、前記ドレイン領域側の第1の端と前記第1の端に対向する第2の端とを有し、前記第2
の窪み部は、前記ドレイン領域側の第3の端と前記第3の端に対向する第4の端とを有し

前記第1の端と前記第2の端との距離は、前記第3の端と前記第4の端との距離より長
く、
前記第1の端は前記第3の端よりも前記第1の方向において前記ソース領域側に配置さ
れ、
前記第2の端は前記第1の方向において前記チャネル領域内に配置される半導体装置。
【請求項2】
前記第3の端は前記ドレイン領域上にあり、
前記第4の端は前記チャネル領域上にある請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の方向において、前記第4の端は前記第1の端と前記第2の端との間に配置さ
れる請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜と前記フローティングゲートとの接触面に平行で前記第1の方向に垂
直な第2の方向において、前記第1の窪み部と前記第2の窪み部とは離間する請求項1か
ら3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ソース領域は前記第2の方向において離間する第1領域と第2領域とからなり、
前記ドレイン領域は前記第2の方向において離間する第3領域と第4領域とからなり、
前記第1の窪み部は前記第1領域と前記第3領域との間に配置され、
前記第2の窪み部は前記第2領域と前記第4領域との間、又は、前記第4領域上に配置
される請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の窪み部の一部と前記第2の窪み部の一部は重なっている請求項3記載の半導
体装置。
【請求項7】
前記第1の方向において、前記第1の端と前記第2の端は、前記チャネル領域中の中央
より前記ドレイン領域側に配置される請求項1から6いずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロジック回路と不揮発性メモリを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロジック回路と不揮発性メモリを有する半導体装置においては、不揮発性メモリを構成
するメモリセルは、nチャネルMOSトランジスタ構造を有する。ソース領域とドレイン
領域との間のチャネル領域上にゲート絶縁膜を介してフローティングゲートが設けられる
。コントロールゲートがゲート間絶縁膜を介してフローティングゲート上に設けられる。
【0003】
メモリセルへのデータの書き込みは、フローティングゲートにホットエレクトロンを注
入することにより実行される。メモリセルからのデータ消去は、フローティングゲートに
ホットホールを注入することにより実行される。ホットエレクトロン及びホットホールの
フローティングゲートへの注入の効率を上げるために、ゲート絶縁膜を薄くすることが実
行される。しかしながら、ゲート絶縁膜を薄くするほど、メモリセルのデータ保持能力が
劣化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−229683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置中の不揮発性メモリを構成するメモリセルのデータ書き込み時及びデータ消
去時の動作速度を向上しつつデータ保持能力を維持する半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、不揮発性半導体メモリとロジック回路を有する。前記不揮発
性メモリはメモリセルを有する。メモリセルは、第1導電形のウエル領域と、第2導電形
のソース領域と、第2導電形のドレイン領域と、ゲート絶縁膜と、フローティングゲート
と、ゲート間絶縁膜と、コントロールゲートと、を備える。第2導電形のソース領域は、
前記ウエル領域内に設けられる。 第2導電形のドレイン領域は、前記ウエル領域内に設
けられ前記ソース領域と離間する。ゲート絶縁膜は、前記ウエル領域内の前記ソース領域
と前記ドレイン領域との間のチャネル領域上に設けられる。フローティングゲートは、前
記ゲート絶縁膜を介して前記チャネル領域上に設けられ周囲から絶縁される。ゲート間絶
縁膜は、前記フローティングゲート上に設けられる。コントロールゲートは、前記ゲート
間絶縁膜を介して前記フローティングゲート上に設けられる。前記ゲート絶縁膜は、前記
フローティングゲートに面する第1の窪み部と第2の窪み部とを有する。前記ソース領域
から前記ドレイン領域に向かう第1方向において、前記第1の窪み部は、前記ドレイン領
域側の第1の端と前記第1の端に対向する第2の端とを有し、前記第2の窪み部は、前記
ドレイン領域側の第3の端と前記第3の端に対向する第4の端とを有する。前記第1の端
と前記第2の端との距離は、前記第3の端と前記第4の端との距離より長い。前記第1の
端は、前記第3の端よりも前記第1の方向において前記ソース領域側に配置される。前記
第2の端は前記第1の方向において前記チャネル領域内に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の、(a)平面図、(b)図(a)のA−A‘線に沿った断面図、(c)図(a)のB―B‘線に沿った断面図。
図2】従来の不揮発性メモリセルのデータ書込み動作を説明するための図。
図3】従来の不揮発性メモリセルのデータ消去動作を説明するための図。
図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の平面図。
図5】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。実施例中の説明で使用す
る図は、説明を容易にするための模式的なものであり、図中の各要素の形状、寸法、大小
関係などは、実際の実施においては必ずしも図に示されたとおりとは限らず、本発明の効
果が得られる範囲内で適宜変更可能である。同様な性質、機能、又は特徴を有する要素は
、同一参照番号又は同一参照記号を用い説明は省略する。
【0009】
(実施形態1)
図1を用いて、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を説明する。図1(a)は、
第1の実施形態に係る半導体装置の半導体メモリを構成するメモリセルの平面図である。
図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体装置の半導体メモリを構成するメモリセルの
図1(a)におけるA−A‘線に沿った断面図である。図1(c)は、第1の実施形態に
係る半導体装置の半導体メモリを構成するメモリセルの図(a)におけるB−B‘線に沿
った断面図である。なお、図にはメモリセルの構造を説明するために必要最小限のものだ
けを表し、保護絶縁膜等は省略してある。
【0010】
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1は、ロジック回路及び不揮発性半導体メモ
リを有する。不揮発性半導体メモリはメモリセル100を有し、メモリセル100は、図
1に示すように、第1導電形のウエル領域10と、第2導電形のソース領域20と、第2
導電形のドレイン領域30と、ゲート絶縁膜50と、フローティングゲート60と、ゲー
ト間絶縁膜70と、コントロールゲート80と、を備える。ここで、第1導電形はp形で
あり、第2導電形はn形として、説明する。また、ウエル領域10はシリコン基板に設け
られたp形ウエル領域として、ソース領域20及びドレイン領域30は、p形ウエル領域
10に形成されたn形不純物拡散領域として説明するが、これは一例であり、発明の実施
形態はこれに限定されない。
【0011】
n形ソース領域20は、p形ウエル領域10内に形成される。n形ソース領域20は、
p形ウエル領域10の表面からp形ウエル領域10中に延伸して設けられる。n形ソース
領域20は、p形ウエル領域10の表面からn形不純物の拡散により形成されたn形不純
物拡散領域である。
【0012】
n形ドレイン領域30は、p形ウエル領域10内に形成される。n形ドレイン領域30
は、p形ウエル領域10の表面からp形ウエル領域10中に延伸して設けられる。n形ド
レイン領域30は、p形ウエル領域10の表面からn形不純物の拡散により形成されたn
形不純物拡散領域である。n形ドレイン領域30は、n型ソース領域と第1方向において
離間して設けられる。p形ウエル領域10のうち、n形ソース領域20とn形ドレイン領
域30とで挟まれた領域は、チャネル領域である。チャネル領域は、後述のコントロール
ゲートに閾値以上の電圧が印加されると、n形チャネルを形成する。
【0013】
ゲート絶縁膜50は、チャネル領域の上に設けられる。ゲート絶縁膜50は、p形ウエ
ル領域10のチャネル領域上にソース領域20の一端からドレイン領域30の一端に跨っ
て設けられる。ゲート絶縁膜50は、絶縁体であればよく、例えば、酸化シリコンである
。ゲート絶縁膜50は、窒化シリコン又は酸窒化シリコンでも可能である。
【0014】
フローティングゲート60がゲート絶縁膜50上に設けられる。フローティングゲート
60は、例えばポリシリコンにより構成されるが、これに限定されることはない。ゲート
絶縁膜50は、フローティングゲート60と接する第1の面上に第1の窪み部55と第2
の窪み部56とを有する。
【0015】
第1の窪み部55及び第2の窪み部56は、ゲート絶縁膜50の第1の面上からpウエ
ル領域10に向かってゲート絶縁膜50中を延伸する。第1の窪み部55及び第2の窪み
部56では、それ以外の部分よりゲート絶縁膜50の膜厚が薄い。
【0016】
第1の窪み部55は、第1の方向において第1の端とこれに対向する第2の端とを有す
る。第1の面と垂直な方向から見た場合、第1の端は、ソース領域20及とドレイン領域
30との間のチャネル領域内に設けられる。第2の端は、ソース領域20及とドレイン領
域30との間のチャネル領域内に設けられる。第1の端は、第2の端よりもドレイン領域
30側に設けられる。また、第2の端は、第1の方向においてソース領域20とドレイン
領域30との中間よりもドレイン領域30側にあることが好ましい(後述)。
【0017】
第2の窪み部56は、第1の方向において第3の端とこれに対向する第4の端とを有す
る。第3の端は、ソース領域20及とドレイン領域30との間のチャネル領域内のドレイ
ン領域30の近傍上に設けられる。又は、第3の端は、ドレイン領域30上に設けられる
。第4の端は、ソース領域20及とドレイン領域30との間のチャネル領域上に設けられ
る。好ましくは、第3の端と第4の端は、ドレイン領域とチャネル領域の境界を跨ぐよう
に設けられる。第1の方向において、第1の端と第2の端の距離は、第3の端と第4の端
との距離よりも長い。
【0018】
ゲート間絶縁膜70は、フローティングゲート60上に設けられる。ゲート絶縁膜70
を介して、コントロールゲート80がフローティングゲート上に設けられる。ゲート間絶
縁膜70が、フローティングゲート60とコントロールゲート80との間を絶縁する。ゲ
ート間絶縁膜70は、ゲート絶縁膜50と同様に絶縁体であればよく、例えば、酸化シリ
コンであるが、窒化シリコン又は酸窒化シリコンでもよい。コントロールゲート80は、
フローティングゲート60と同様に、例えばポリシリコンである。
【0019】
ゲート絶縁膜50、フローティングゲート60、ゲート間絶縁膜70、及びコントロー
ルゲート80の側壁には側壁絶縁膜90が設けられる。フローティングゲート60、及び
コントロールゲート80は、側壁絶縁膜90により、周囲から絶縁される。
【0020】
上記メモリセル100を選択する選択トランジスタ101がp形ウエル領域10上に設
けられる。選択トランジスタ101は、ソース領域30、ドレイン領域40、ゲート絶縁
膜51、ゲート81、及び側壁絶縁膜91を有する。選択トランジスタ101のソース領
域30は、メモリセル100のドレイン領域30と共通である。
【0021】
選択トランジスタ101のドレイン領域40は、p形ウエル領域10内に第1の方向に
沿ってソース領域30と離間して設けられる。ドレイン領域40は、例えばソース領域3
0と同様にn形不純物拡散層である。p形ウエル領域のうち、ソース領域30とドレイン
領域40とで挟まれた領域は、チャネル領域であり、ゲートに閾値以上の電圧が印加され
るとチャネルが形成される。
【0022】
ゲート絶縁膜51が、p形ウエル領域10のチャネル領域上にソース領域30からドレ
イン領域40に跨って設けられる。ゲート絶縁膜51は、メモリセルのゲート絶縁膜50
と同様に絶縁体であればよく、例えば、酸化シリコンであり、窒化シリコン又は酸窒化シ
リコンも可能である。
【0023】
ゲート81がゲート絶縁膜51を介してソース領域30とドレイン領域40との間のp
形ウエル領域10のチャネル領域上に設けれる。ゲート81は、メモリセル100のゲー
ト80と同様に例えばポリシリコンである。ゲート絶縁膜51とゲート81との側壁に、
側壁絶縁膜91が設けられる。ゲート81は、側壁絶縁膜91により周囲から絶縁される
【0024】
ソース電極5がメモリセル100のソース領域20に電気的に接続するように設けられ
る。ドレイン電極6が、選択トランジスタ101のドレイン領域40に電気的に接続する
ように設けられる。ゲート電極7が、メモリセル100のゲート80に電気的に接続する
ように設けられる。ゲート電極8が、選択トランジスタ101のゲート81に電気的に接
続するように設けられる。
【0025】
選択トランジスタ101は、メモリセル100を選択するために設けられる。選択トラ
ンジスタ101のゲート81に閾値以上の電圧を印加することにより、メモリセル100
が選択される。本実施形態では、説明を簡単にするために、選択トランジスタ101は、
1つのメモリセルを選択するように設けられている例を示ししているが、これに限定され
ない。例えば、複数のメモリセル100が直列に接続されたストリングを選択するように
、選択トランジスタ101が設けられてもよい。
【0026】
次に本実施形態に係る半導体装置のメモリセルの動作を説明する前に、従来のメモリセ
ルの動作を図2及び図3を用いて説明する。図2及び図3は、説明を容易にするために必
要最小限の構成しか示していない。ゲート絶縁膜、ゲート間絶縁膜、側壁膜、及び保護膜
等は省略した。
【0027】
図2は、メモリセルにデータを書き込む動作を示す。pウェル領域は、例えば基板電位
subが印加される。ソース領域には、ソース電位Vが印加される。ドレイン領域に
は、ドレイン電位Vが印加される。コントロールゲートCGには、ゲート電位Vが印
加される。フローティングゲートFGには、電荷が蓄積されていない状態であり電気的に
中性である。
【0028】
書込み動作のときは、基板電位Vsubは例えば接地電位である。ソース電位Vは基
板電位Vsubと同電位又は基板電位Vsubより少し高い電位である。ドレイン電位V
は、ソース電V位よりも高く例えば5Vである。ゲート電位Vは、フローティング
ゲートFGの電位がドレイン電位Vとほぼ同電位になるように印加される。コントロー
ルゲートCGとフローティングゲートFGのカップリング比が例えば0.55の場合は、
ゲート電位Vは約10V程度である。
【0029】
フローティングゲートFGの電位とドレイン電位Vが同電位の場合、ソースからドレ
インに向かって電子がチャネル中を走行する。電子はドレイン−ソース間の電圧により加
速され高エネルギー状態となり、ドレイン近傍で原子に衝突し電子(エレクトロン)−正
孔(ホール)対を発生させる。そのうち正孔はソース−ドレイン間の高電界により加速さ
れてチャネルのある領域で原子に衝突しホットエレクトロンとホットホールを発生させる
。ホットエレクトロンはゲート絶縁膜の障壁を乗り越えるだけの高エネルギーを有しフロ
ーティングゲートFGに注入される。ホットホールは、ソース領域又はバックゲートから
排出される。このフローティングゲートに電子が蓄積された状態が、メモリセルがデータ
を保持している状態である。
【0030】
次に図3を用いてメモリセルのデータを消去する動作を説明する。基板電位Vsub
びソース電位Vは接地電位(GND)が印加される。ドレイン電位Vは、書込み時と
同様に例えば5Vが印加される。フローティングゲートFGの電位はドレイン電位V
比べてはるかに小さい1V程度となるように、コントロールゲートにゲート電位が印加さ
れる。コントロールゲートとフローティングゲートのカップリング比が0.55であれば
、ゲート電位は約2Vである。フローティングゲートには、電子が蓄積された状態である
【0031】
書き込み動作時と同様に、ソース−ドレイン間の電圧により電子がドレイン近傍で高エ
ネルギー状態で原子に衝突してホットエレクトロンとホットホールを発生させる。発生し
たホットホールは、ゲート絶縁膜の障壁を乗り越えてフローティングゲートに注入される
。フローティングゲートにホールが注入されることで、蓄積された電子と再結合し、電子
が消滅する。これにより、メモリセルのデータが消去されたことになる。一方発生したホ
ットエレクトロンはドレイン領域から排出される。
【0032】
ホットエレクトロンをフローティングゲートFGに注入することで、メモリセルにデー
タが書き込まれ、ホットホールをフローティングゲートFGに注入することによりデータ
が消去される上記方法では、書込み動作及び消去動作の速度を上げるためにはゲート絶縁
膜を薄くする必要がある。
【0033】
しかしながら、ゲート絶縁膜を薄くすると、フローティングゲートに蓄積された電荷が
ゲート絶縁膜を介して抜けやすくなるため、データを保持する能力が低下する問題が生じ
る。
【0034】
本実施形態では、図1に示したように、ゲート絶縁膜50中に第1の窪み部55及び第
2の窪み部56を有する。この第1の窪み部55及び第2の窪み部56は、ゲート絶縁膜
50のこれら以外の部分より薄い。
【0035】
図2に示したように、書込み動作時はホットエレクトロンがフローティングゲート60
に注入される。フローティングゲート60に注入されるホットエレクトロンは、チャネル
領域内の第1の方向においてドレイン領域30とpウェル領域10との境界からソース領
域20側に掛けて分布し、ソース領域20近傍にはほとんど分布しないことに発明者は注
目した。ホットエレクトロンのフローティングゲート60への注入効率を上げるために、
ゲート絶縁膜60を全て一様に薄くする必要がないことに発明者は気がついた。
【0036】
本実施形態の第1の窪み部55は、ホットエレクトロンがフローティングゲート60へ
注入される際に用いられる。すなわち、基板電位よりもソース領域20の電位を高くし、
さらにフローティングゲート60の電位とドレイン領域30の電位をいずれもソース領域
20の電位よりも高く、例えば5V以上とすると、ホットエレクトロンは第1の窪み部5
5を介してフローティングゲート60に注入される。このときのホットエレクトロンは、
チャネル領域のドレイン領域30とpウェル領域10との境界からチャネル領域のほぼ中
央にかけて分布する。
【0037】
そのため、これに応じて、第1の窪み55の第1の端は、ドレイン領域30とpウェル
領域10の境界上、又は、チャネル領域中のその境界の近傍に配置される。第1の窪み5
5の第2の端は、第1の端よりもソース領域20側に配置される。第2の端は、チャネル
領域中のソース領域20とドレイン領域30との間の中間よりもドレイン領域30側に配
置される。第1方向においては、ホットエレクトロンは前述のとおりソース領域側に向か
うほど分布しなくなるからである。
【0038】
上記のようにゲート絶縁膜50中に第1の窪み55を設けることにより、ゲート絶縁膜
50のうちホットエレクトロンがフローティングゲート60に注入される際に用いられる
ゲート絶縁膜50の部分だけ薄くして、ホットエレクトロンの注入に用いられないゲート
絶縁膜50の部分を厚くする。このような構成とすることで、フローティングゲートのゲ
ート絶縁膜の薄い領域が狭いため、ゲート絶縁膜を通した電荷のリークを抑制することが
できる。このため、本実施形態のメモリセルトランジスタ100では、書込み動作の速度
を高めつつ、データ保持能力を維持することが可能となる。
【0039】
次に、図3に示したよう消去動作時は、ホットホールがフローティングゲート60に注
入される。フローティングゲート60に注入されるホットホールは、チャネル領域内の第
1の方向においてドレイン領域30とpウェル領域10との境界付近に分布する。すなわ
ち、ドレイン領域30からチャネル領域にかけてpウェル領域10とドレイン領域30と
の境界付近にホットホールは分布することに発明者は注目した。ホットホールのフローテ
ィングゲート60への注入効率を上げるために、ゲート絶縁膜60を全て一様に薄くする
必要がないことに発明者は気がついた。
【0040】
本実施形態の第2の窪み部56は、ホットホールがフローティングゲート60へ注入さ
れる際に用いられる。すなわち、ドレイン電位Vが、例えば5Vが印加され、フローテ
ィングゲートFGの電位がドレイン電位Vに比べてはるかに小さい1V程度となるよう
に、コントロールゲートにゲート電位が印加されると、ホットホールは第2の窪み部56
を介してフローティングゲート60に注入される。このときのホットホールは、ドレイン
領域30からチャネル領域にかけてpウェル領域10とドレイン領域30との境界付近に
分布する。
【0041】
そのため、これに応じて、第2の窪み56の第3の端は、ドレイン領域30からチャネ
ル領域にかけてpウェル領域10とドレイン領域30との境界付近に配置される。第2の
窪みの第4の端は、第1の端よりもソース領域20側に配置される。なお、第1の方向に
おけるホットホールの分布する幅は、ホットエレクトロンの分布する幅に比べて狭い。ま
た、ホットホールの方がホットエレクトロンよりもドレイン領域側に分布する。このため
、第3の端と第4の端との距離は、第1の端と第2の端との距離より短い。さらに、第3
の端は、第1の端よりも第1の方向においてドレイン領域30側に配置される。
【0042】
上記のようにゲート絶縁膜50中に第2の窪み56を設けることにより、ホットホール
がフローティングゲート60に注入される際に用いられるゲート絶縁膜50の部分だけ薄
くして、ホットホールの注入に用いられないゲート絶縁膜50の部分を厚くする。このよ
うな構成とすることで、フローティングゲートのゲート絶縁膜の薄い領域が狭いため、ゲ
ート絶縁膜を通した電荷のリークを抑制することができる。このため、消去動作の速度を
高めつつ、メモリセルのデータ保持能力を維持することが可能となる。
【0043】
なお、第1の窪み部55及び第2の窪み部56は、それらの平面積の合計がチャネル領
域上を覆うゲート絶縁膜50の平面積に比べて小さく、メモリセルトランジスタ100の
閾値への影響は小さい。
【0044】
上記の構成を有することにより、本実施形態に係る半導体装置の半導体メモリを構成す
るメモリセルは、データ保持能力を維持しつつ、書込み動作及び消去動作の速度を高める
ことが可能である。
【0045】
上述のとおり、本実施形態では、ゲート絶縁膜50中に第1の窪み部55と第2の窪み
部56とが設けられる。図1(a)に示したように、第1の窪み部55と第2の窪み部5
6とは、フローティングゲート60とゲート絶縁膜50との接触面と平行な面において第
1の方向と垂直な第2の方向において、少なくとも離間している。
【0046】
(実施形態2)
図4を用いて、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を説明する。第1の実施形態
と異なる点を中心に説明する。図4は、本実施形態に係る半導体装置の半導体メモリを構
成するメモリセルの平面図であり、第1の実施形態に係る半導体装置の図1(a)に相当
する図である。
【0047】
本実施形態に係る半導体装置の半導体メモリを構成するメモリセルは、メモリセルトラ
ンジスタ100において、第2の方向において第1の窪み部55と第2の窪み部56とは
、離間せず、それぞれ、重なり合う領域を有する。すなわち、第1の窪み部55と第2の
窪み部56とは、共有部分を有する。この点で、第1の実施形態にかかる半導体装置と相
異し、それ以外は同じである。
【0048】
本実施形態に係る半導体装置においても、第1の実施形態にかかる半導体装置と同様に
、半導体装置の半導体メモリを構成するメモリセルは、データ保持能力を維持しつつ、メ
モリセルの書込み動作及び消去動作の速度を高めることが可能である。
【0049】
(実施形態3)
図5を用いて、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置を説明する。第1の実施形態
と異なる点を中心に説明する。図5は、本実施形態に係る半導体装置の半導体メモリを構
成するメモリセルの平面図であり、第1の実施形態に係る半導体装置の図1(a)に相当
する図である。
【0050】
本実施形態に係る半導体装置の半導体メモリを構成するメモリセルでは、メモリセルト
ランジスタ100のソース領域20、メモリセルトランジスタ100のドレイン領域30
、及び選択トランジスタ101のドレイン領域40は、それぞれ、第2の方向において離
間した、メモリセルトランジスタ100のソース領域20A、B、メモリセルトランジス
タ100のドレイン領域30A、B、及び選択トランジスタ101のドレイン領域40A
、Bを有する。この点で本実施形態に係る半導体装置は第1の実施形態に係る半導体装置
と相異する。
【0051】
すなわち、メモリセルトランジスタ100は、ソース領域20A及びドレイン領域30
Aで挟まれた第1のチャネル領域と、ソース領域20B及びドレイン領域30Bで挟まれ
た第2のチャネル領域とを有する。第1のチャネル領域上のゲート絶縁膜50に、第1の
窪み部55が設けられる。第2のチャネル領域上のゲート絶縁膜50上に第2の窪み部5
6が設けられる。フローティングゲート電極60及びコントロールゲート80は、第1及
び第2のチャネル領域上に共通に設けられる。
【0052】
同様に、選択トランジスタ101は、ソース領域30A及びドレイン領域40Aで挟ま
れた第1のチャネル領域と、ソース領域30B及びドレイン領域40Bで挟まれた第2の
チャネル領域とを有する。ゲート81は、第1及び第2のチャネル領域上に共通に設けら
れる。
【0053】
メモリセルトランジスタ100のソース領域20A、Bは、それぞれ、ソース電極5A
、Bを有する。選択トランジスタ101のドレイン電極40A、Bは、それぞれ、ドレイ
ン電極6A、Bを有する。
【0054】
本実施形態に係る半導体装置においても、第1の実施形態にかかる半導体装置と同様に
、半導体装置の半導体メモリを構成するメモリセルは、データ保持能力を維持しつつ、メ
モリセルの書込み動作及び消去動作の速度を高めることが可能である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その
他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の
省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や
要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる
【符号の説明】
【0056】
1 半導体装置
5、5A、5B ソース電極
6、6A、6B ドレイン電極
7 メモリセルトランジスタゲート電極
8 選択トランジスタゲート電極
10 pウエル領域
20、20A、20B メモリセルトランジスタソース領域
30、30A、30B メモリセルトランジスタドレイン領域(選択トランジスタソース
領域)
40、40A、40B 選択トランジスタドレイン領域
50 メモリセルトランジスタゲート絶縁膜
51 選択トランジスタのゲート絶縁膜
55 第1の窪み部
56 第2の窪み部
60 フローティングゲート
70 ゲート間絶縁膜
80 コントロールゲート
81 選択トランジスタのゲート
90、91 側壁絶縁膜
100 メモリセルトランジスタ
101 選択トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5