【課題】保管する環境の温度に左右されることなく低分子量の有機化合物の非吸着性に優れるとともに、基材層との密着性に優れ、また厚みが薄いシーラント層を形成することができる環状オレフィン樹脂材料を提供する。
酸変性環状オレフィン樹脂100質量部に対し、架橋剤、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の添加剤を、0.1〜100質量部含有することを特徴とする請求項1記載のコート液。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のコート液は、酸価が1〜150mgKOH/gである酸変性環状オレフィン樹脂を含む。
【0010】
本発明において、環状オレフィン樹脂とは、重合体の主鎖または側鎖に脂肪族炭化水素環構造を有する非結晶性の樹脂であり、その具体例としては、特開昭63−264646号公報、特開昭64−1705号公報、特開平1−168724号公報、特開平1−168725号公報などに開示されるノルボルネン環を有するモノマーの開環重合体およびその水素添加物、特開昭60−168708号公報などに開示されるノルボルネン環を有するモノマーとα−オレフィン類との付加重合体、特開平6−136057号公報、特開平7−258362号公報などに開示されている環状オレフィンや環状ジエンの付加重合体およびその水素添加物などが挙げられる。これらのなかでも、非吸着性、耐薬品性などの観点から、ノルボルネン環を有するモノマーの開環重合体およびその水素添加物が好ましい。
【0011】
ノルボルネン環を有するモノマーとしては、エチレンとシクロペンタジエンの付加体である2環式オレフィンのノルボルネン、さらにシクロペンタジエンが付加した4環式オレフィンであるテトラシクロドデセン、シクロペンタジエンの2量体で3環式ジエンであるトリシクロデカジエン(ジシクロペンタジエン)、その不飽和結合の一部を水素添加により飽和させた3環式オレフィンであるトリシクロデセン、シクロペンタジエンの3量体で5環式ジエンであるペンタシクロペンタデカジエン、その不飽和結合の一部を水素添加により飽和させた5環式オレフィンであるペンタシクロペンタデセン(2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン);およびこれらの置換体;などが例示される。置換体としては、アルキル基、アルキリデン基または芳香族基などの、極性基をもたない基により置換された、誘導体または水素添加誘導体またはそれらから脱水素して得られる誘導体(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−オクタデシル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどのノルボルネン誘導体、1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−2,3−シクロペンタジエノオクタヒドロナフタレン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4:5,10:6,9−トリメタノ−1,2,3,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a−ドデカヒドロ−2,3−シクロペンタジエノアントラセンなどのテトラシクロドデセン誘導体など);ハロゲン、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基などの極性基により置換された置換体(例えば、5−メトキシ−カルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなど);等が挙げられる。
ノルボルネン環を有するモノマーと付加共重合されるα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1などの狭義のオレフィンに加え、これらの一部をハロゲンなどの極性基で置換したオレフィン性モノマーが挙げられる。
【0012】
環状オレフィン樹脂は市販されており、市販品の具体例として、日本ゼオン社製ZEONEX、ZEONOR(ゼオノア)、三井化学社製APEL、APO、ポリプラスチック社製TOPAS、JSR社製アートンなどが挙げられる。
【0013】
本発明のコート液を構成する酸変性環状オレフィン樹脂は、上記環状オレフィン樹脂が酸変性されたものであり、酸変性環状オレフィン樹脂の酸価は、1〜150mgKOH/gであることが必要である。
本発明のコート液から形成されたシーラント層は、高温保管においては、酸変性環状オレフィン樹脂の酸価が低い方が低分子量有機化合物の吸着を抑制できるという点で、酸変性環状オレフィン樹脂の酸価は、100mgKOH/g以下であることが好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。一方、低温保管においては、酸変性環状オレフィン樹脂の酸価が高い方が低分子量有機化合物の吸着を抑制できるという点から、酸変性環状オレフィン樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、酸価が上記の範囲にあることで、コート液は、安定性に優れ、シーラント層は、十分なヒートシール強度を得やすいという効果も奏する。
酸変性環状オレフィン樹脂の酸価が1mgKOH/g未満であると、コート液から形成されるシーラント層は、基材層や易接着層との密着性が不十分となる場合があり、特に、低温保管においてひび割れが生じる可能性があり、低分子量有機化合物の非吸着性に劣り密着性にも劣る場合がある。一方、酸変性環状オレフィン樹脂は、酸価が150mgKOH/gを超えると、極性基が多いため、低分子量有機化合物の非吸着性に劣る場合がある。
【0014】
環状オレフィン樹脂の酸変性は、たとえば、環状オレフィン樹脂に不飽和カルボン酸成分を導入することによっておこなうことができる。
【0015】
環状オレフィン樹脂に導入される不飽和カルボン酸成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物が挙げられる。中でも環状オレフィン樹脂への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、環状オレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0016】
不飽和カルボン酸成分を環状オレフィン樹脂へ導入する方法は、特に限定されない。例えば、ラジカル発生剤存在下、環状オレフィン樹脂と不飽和カルボン酸とを、環状オレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、環状オレフィン樹脂と不飽和カルボン酸とを有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、環状オレフィン樹脂に不飽和カルボン酸をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0017】
本発明において、酸変性環状オレフィン樹脂の数平均分子量は、7,000〜200,000であることが好ましく、9,000〜160,000であることがより好ましく、12,000〜120,000であることがさらに好ましい。酸変性環状オレフィン樹脂の数平均分子量が7,000未満であると、形成されたシーラント層は、非吸着性が低下するおそれがあるだけでなく、十分なヒートシール強度を得られないことがある。一方、酸変性環状オレフィン樹脂は、数平均分子量が200,000を超えると、安定なコート液を得ることが困難となるだけでなく、十分なヒートシール強度が得られないことがある。
【0018】
本発明のコート液は、酸変性環状オレフィン樹脂を含むものであり、酸変性環状オレフィン樹脂は媒体に分散または溶解されており、媒体としては、水性媒体および/または有機溶剤が挙げられる。
【0019】
酸変性環状オレフィン樹脂を分散または溶解する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチルなどのエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられ、必要に応じて、これらの有機溶剤を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明のコート液は、酸変性環状オレフィン樹脂が水性媒体中に分散された水性分散体でもよい。酸変性環状オレフィン樹脂は、水性媒体中に分散もしくは一部溶解している。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、酸変性環状オレフィン樹脂の水性化促進のため、後述する塩基性化合物や有機溶剤を配合することが好ましい。
【0021】
塩基性化合物は、塗膜形成時に揮発するアンモニアまたは有機アミン化合物が塗膜の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30〜250℃、さらには50〜200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
塩基性化合物の配合量は、酸変性環状オレフィン樹脂の酸価に対して0.1〜10倍当量であることが好ましく、0.3〜7.5倍当量がより好ましく、0.5〜5倍当量が特に好ましい。0.1倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、10倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下したりすることがある。
【0022】
本発明においては、酸変性環状オレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に親水性有機溶剤を配合することが好ましい。親水性有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、3〜35質量%が特に好ましい。親水性有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、実質的に水性媒体と見なせなくなり、使用する親水性有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下することがある。
親水性有機溶剤は、分散安定性良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
親水性有機溶剤は、製膜の過程で効率よく塗膜から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、塗膜から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の塗膜の耐水性や基材との接着性等が低下することがある。
【0023】
好ましい親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、酸変性環状オレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
【0024】
酸変性環状オレフィン樹脂の水性化をより促進させるために、疎水性有機溶剤をさらに添加してもよい。疎水性有機溶剤としては、20℃の水に対する溶解性が10g/L未満であり、上記と同じ理由で、沸点が150℃以下であるものが好ましい。このような疎水性有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等のオレフィン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤等が挙げられる。これらの疎水性有機溶剤の添加量は、水性分散体に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。添加量が15質量%を超えると、ゲル化等を引き起こすことがある。
【0025】
本発明のコート液は、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、不揮発性水性化助剤の使用を排除するものではないが、水性化助剤を用いずとも、酸変性環状オレフィン樹脂を重量平均粒子径0.15μm以下の範囲で媒体中に安定的に分散することができる。
【0026】
ここで、「水性化助剤」とは、コート液の製造、特に水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時(樹脂の水性化時)に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性化助剤は、水性分散体から形成されるシーラント層同士のシール性や、シーラント層と基材との密着性の観点から、全く含まれていないことが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、酸変性環状オレフィン樹脂に対して0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
【0027】
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
【0028】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0029】
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類及びその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマー及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0030】
次に、本発明のコート液を製造する方法について説明する。
本発明のコート液を製造する方法としては、酸変性環状オレフィン樹脂が媒体中に均一に混合し、分散または溶解される方法であれば、限定されない。例えば、密閉可能な容器に、酸変性環状オレフィン樹脂、上記有機溶剤、または、上記水性媒体を構成する親水性有機溶剤、塩基性化合物、水などの原料を投入し、槽内の温度を40〜150℃程度の温度に保ちつつ撹拌を行うことにより、酸変性環状オレフィン樹脂を分散または溶解する方法などが挙げられる。
【0031】
本発明のコート液における、酸変性環状オレフィン樹脂の含有率は、成膜条件、目的とするシーラント層の厚さや性能等により適宜調整され、特に限定されるものではないが、コート液の粘性を適度に保ち、かつ良好なシーラント層を得るために、1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。
【0032】
本発明のコート液は、基材との密着性やシール強度を向上させるために、酸変性環状オレフィン樹脂以外の樹脂(以下、「他の樹脂」と称すことがある)等を含有することや、一方、非吸着性を向上させるために、架橋剤等を含有することができる。
【0033】
本発明のコート液が含有する他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。
【0034】
基材との密着性およびシール強度の観点から、他の樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂の含有量は、酸変性環状オレフィン樹脂100質量部に対し、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.5〜50質量部であることがより好ましく、1〜30質量部であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明のコート液に好ましく含有されるポリエチレン樹脂は、酸変性ポリエチレン樹脂であることがより好ましく、酸価が5〜50mgKOH/gである酸変性ポリエチレン樹脂であることが特に好ましい。酸変性ポリエチレン樹脂の具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0036】
本発明のコート液に好ましく含有されるポリプロピレン樹脂は、酸変性ポリプロピレン樹脂であることがより好ましく、酸価が5〜50mgKOH/gである酸変性ポリプロピレン樹脂であることが特に好ましい。酸変性ポリプロピレン樹脂の具体例としては、エチレン−プロピレン−ブテン−(無水)マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0037】
本発明のコート液に好ましく含有されるポリウレタン樹脂は、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。
ポリウレタン樹脂としては、基材との密着性の観点から、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂、ポリエステル型ポリウレタン樹脂が好ましく、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂がより好ましく、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
なお、本発明におけるポリウレタン樹脂は、2液型、1液型のいずれであってもよい。しかし、ポットライフが長く使用時の作業性に優れる観点から1液型であることが好ましい。2液型のポリウレタン樹脂とは、ポットライフの観点から、使用直前(およそ使用の12時間前まで)に、主にポリオール成分からなる主剤と、主にイソシアネート成分からなる硬化剤とを混合してから使用するポリウレタン樹脂のことであり、媒体の蒸発と共に主剤中のポリオール成分と硬化剤中のイソシアネート成分が反応し造膜するタイプである。1液型のポリウレタン樹脂とは、長期のポットライフを有し、使用直前に複数の成分を混合する必要がないポリウレタン樹脂のことであり、媒体の蒸発のみであっても造膜するタイプである。
【0038】
本発明のコート液に好ましく含有されるポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを主成分とする高分子である。ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよい。
【0039】
本発明のコート液に含有される架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤、多価の配位座を有する金属錯体などが挙げられる。具体的には、オキサゾリン系、イソシアネート系(ブロック型を含む)、アミン系、カルボジイミド系、メラミン系、尿素系、エポキシ系などの架橋剤、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、有機過酸化物などが挙げられる。中でも、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤がより好ましい。このような架橋剤としては、オキサゾリン系、カルボジイミド系、エポキシ系、イソシアネート系、アミン系、メラミン系の架橋剤などが挙げられる。これらは複数を組み合わせて使用してもよい。中でも、有機成分の吸着を抑制する観点から、架橋剤は、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤であることが好ましい。
架橋剤の含有量は、酸変性環状オレフィン樹脂100質量部に対し、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。
【0040】
以上のような添加剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また添加剤は、水性分散体への添加、混合のしやすさの観点から、水溶性または水性分散性のものを用いることが好ましい。
【0041】
次に、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、少なくとも基材層とシーラント層とを含有する積層体であり、基材層とシーラント層の間に易接着層を設けてよく、シーラント層が積層体の一方の最表面層を構成する。
【0042】
本発明の積層体における基材層としては、金属材料などのバリア材料、熱可塑性樹脂、紙、ゴム、不織布、織編物などが挙げられ、本発明のコート液を塗布できるものであればよい。中でも包装材料を構成する基材層としては、バリア材料や熱可塑性樹脂が好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、およびこれらの混合物などのポリエステル;ポリカプロンアミド(Ny6)、ポリへキサメチレンアジパミド、ポリ−p−キシリレンアジパミド、およびこれらの混合物などのポリアミド;ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの混和物などのポリオレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、包装材料としたときの力学特性に優れるPET、Ny6、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。本発明のコート液により形成されるシーラント層の厚みを薄くすることができるという観点で、シーラント性を有するポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィンがより好ましい。
【0044】
ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体、さらにはエチレン−アクリル酸鋸重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でもシール性、易引き裂き性とのバランスが良好なことからVLDPE、LDPE、LLDPE、MLDPEが好ましい。
【0045】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0046】
基材層として熱可塑性樹脂を用いる場合は、フィルムの形態が好ましい。フィルムとしては、通常公知の方法で製造されたものを用いることができ、無延伸フィルムまたは延伸フィルムのどちらであってもよいが、透明性や光沢性付与の点から、一軸または二軸延伸フィルムが好ましい。フィルムの厚みは特に限定されないが、通常5〜500μmのものが用いられる。
【0047】
基材層として熱可塑性樹脂フィルムを用いる場合は、密着性の向上のために、シーラント層を設ける面に表面活性化処理がなされていることが好ましい。表面活性化処理としては、例えば、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理などが挙げられ、簡便さと密着効果のバランスから、コロナ放電処理が好ましい。
【0048】
バリア材料は、液体や気体を遮断できる材料であればどのような材料から構成されていてもよい。たとえば、アルミニウムなどの軟質金属や、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着膜などからなる金属材料、塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア材料などを用いることができる。基材層としてバリア材料を用いる際は、金属箔、フィルム、蒸着膜などの薄膜形態であることが好ましい。
【0049】
バリア材料として金属箔を用いる場合には、アルミニウム箔が安価で加工性に優れているため好ましい。金属箔の厚みは3〜50μmの範囲が好ましい。
バリア材料として金属箔を適用する場合には、金属箔を有するフィルムを使用することが簡便であり好ましい。金属箔を有するフィルムとしては、金属箔と、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などからなるフィルムとを接着剤で貼り合せたものを使用することができる。接着剤としては、たとえば、ポリウレタン系のものを使用することができる。
【0050】
バリア材料として蒸着膜を適用する場合においても、蒸着層を有するフィルムを使用することが簡便であり好ましい。蒸着層を有するフィルムとしては、例えば、大日本印刷社製の「IBシリーズ」、凸版印刷社製の「GL、GXシリーズ」、東レフィルム加工社製の「バリアロックス」「VM−PET」「YM−CPP」「VM−OPP」、三菱樹脂社製の「テックバリア」、東セロ社製の「メタライン」、尾池工業社製の「MOS」「テトライト」「ビーブライト」、麗光社製の「ダイアラスター」「サンミラー」「ハイラスター」「ファインバリアー」などが挙げられる。これらは蒸着層膜の表面上に保護コート層が設けられていてもよい。
【0051】
バリア材料として有機バリア材料を適用する場合には、有機バリア材料からなるフィルムや有機バリア材料からなる層(以下、有機バリア層という)を有する積層フィルムを使用することが簡便であり好ましい。有機バリア層を有する積層フィルムの場合、バリア性を有する樹脂を含む塗剤をフィルムにコーティングしたもの、前記樹脂を共押出し法により積層したものなどを用いることができる。また、有機バリア層を有する市販フィルムとしては、クラレ社製の「クラリスタ」「エバール」、三菱樹脂社製の「スーパーニール」、興人社製の「コーバリア」、ユニチカ社製の「エンブロンM」「エンブロンE」「エンブレムDC」「エンブレットDC」「エンブレムNV」「セービックス」、三井化学東セロ社製の「A−OP」、ダイセル社製の「セネシ」などが挙げられ、これらを使用することが簡便であり好ましい。
【0052】
バリア材料におけるバリア性については、包装する内容物や保存期間などに応じて最適範囲を適宜選択すればよい。中でも、40℃、90%RH条件下での水蒸気透過度として、100g/m
2・day以下が好ましく、20g/m
2・day以下がより好ましく、10g/m
2・day以下がさらに好ましく、1g/m
2・day以下が特に好ましい。また、20℃、90%RH条件下での酸素透過度として、100ml/m
2・day・MPa以下が好ましく、20ml/m
2・day・MPa以下がより好ましく、10ml/m
2・day・MPa以下がさらに好ましく、1ml/m
2・day・MPa以下が特に好ましい。
【0053】
バリア材料のシーラント層を設ける側の面には、接着性向上のため、表面活性化処理が施されていてもよい。表面活性化処理としては、例えば、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理、化成化処理などが挙げられる。
また、バリア材料が熱可塑性樹脂フィルム上に積層されたものである場合は、フィルムをポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂で構成し、これらの樹脂からなるフィルム上にシーラント層を設けてもよい。
【0054】
本発明の積層体は、基材層とシーラント層との間に易接着層を含有することが好ましい。易接着層を、基材層とシーラント層との間に設けることによって、基材層とシーラント層との密着性が向上し、積層体のヒートシール強度が向上する。
易接着層は、酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する水性分散体により形成された層であることが好ましい。
【0055】
酸変性ポリオレフィン樹脂、それを含有する水性分散体、易接着層形成方法、易接着層厚み等については、前述の特開2014−240174号公報に記載されたプライマー層形成用の酸変性ポリオレフィン樹脂、その水性分散体、プライマー層形成方法、プライマー層厚み等を適用することができる。
【0056】
本発明の積層体を構成するシーラント層は、本発明のコート液により形成されたものである。
シーラント層の厚みは薄いほど経済的に有利となり、10μm以下であることが好ましく、7.5μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。シーラント層の厚みが薄いほど経済的に有利となるが、貼り合わせた際のシール強度が低下する場合がある。シーラント層の厚みを薄くする場合は、基材として、シーラント性を有するポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を含有する基材を用いて、その上に前記シーラント層を設けることで、シール強度低下を抑制することができる。コート液により形成されたシーラント層の厚みは、低分子量の有機化合物の非吸着性の観点で、0.1μm以上が好ましい。
【0057】
本発明の積層体において、シーラント層を形成する方法としては、基材層もしくは易接着層にコート液を塗布して媒体を乾燥させる方法等が挙げられる。
【0058】
塗布方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。これらの方法により基材層表面もしくは易接着層表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供することにより、均一なシーラント層を基材層表面もしくは易接着層表面に密着させて形成することができる。
【0059】
本発明の包装材料は、上記積層体を用いたものであり、製袋する時の形態は、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋など種々あり、最内層のシーラント層にチャックを設けて、チャック付き包装袋とすることもできる。
【0060】
本発明の包装材料は、良好な非吸着性を有していることから、特に、揮発性を有する内容物の包装材料として好適である。具体的には、芳香剤、香料、入浴剤、湿布剤、医薬品、トイレタリー製品、界面活性剤、シャンプー、リンス、洗剤、防虫剤、殺虫剤、消臭剤、育毛剤、歯磨き剤、化粧品の包装材料に好適に使用される。また、本発明の積層体は、食品向け包装材料としても好適であり、例えばポテトチップス、クッキー、ビスケット、チョコスナック、せんべい、あられ、ポップコーンのようなスナック菓子類、お茶、かつお節、昆布粉末スープなどの乾燥物、ケチャップ、香辛料、ソース、醤油、食酢、味噌、スープなどの調味料、冷凍食品やレトルト食品のような食品類、サラダ油、食用油、ごま油、オリーブオイル、マーガリン、バターなどの油脂類を内容物とする包装材料に好適である。この他、本発明の積層体は、二次電池、電解液、電子部品、IC、機械部品のような産業部材などを内容物とする包装材料にも好適である。
【実施例】
【0061】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0062】
酸変性環状オレフィン樹脂、コート液、積層体の特性は下記の方法で測定した。
(1)酸変性環状オレフィン樹脂の酸価
酸変性環状オレフィン樹脂0.5gを精秤し、50mlの水/1,4−ジオキサン=1/9(体積比)に溶解して、クレゾールレッドを指示薬として0.1モル/Lの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数を、酸変性環状オレフィン樹脂のg数で割った値を酸価とした。
【0063】
(2)数平均分子量
GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から数平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合は、オルトジクロロベンゼンで溶解した。
【0064】
(3)固形分濃度
水性分散化した酸変性環状オレフィン樹脂を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0065】
(4)酸変性環状オレフィン樹脂の重量平均粒子径
日機装社製、Nanotrac Wave−UZ152粒度分布測定装置を用いて、重量均粒子径を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
【0066】
(5)l−メントール吸着性試験
実施例および比較例の積層体を10cm×10cm四方に10枚切り取り、10枚合計の初期重量を測定した。容積10リットルのステンレス容器内にl−メントール固体(純正化学社製)10gを入れ、蓋をして容器内をl−メントール蒸気で満たし、その中に初期重量を測定した積層体10枚を吊り下げて、40℃で7日間保管した。保管後、積層体を取り出して10枚の合計重量を測定し、初期重量との差から、l−メントールの吸着量を1m
2当たりに換算して算出した。実用上の性能として、40℃での吸着量は100mg/m
2以下であることが好ましく、50mg/m
2以下がより好ましく、20mg/m
2以下がさらに好ましい。
上記保管条件(40℃で7日間)を、0℃で7日間に変更して保管した以外は同様の方法で、1−メントールの吸着量を算出した。実用上の性能として、0℃での吸着量についても100mg/m
2以下であることが好ましく、50mg/m
2以下がより好ましく、20mg/m
2以下がさらに好ましい。
【0067】
(6)酢酸dl−α−トコフェロール吸着性試験
実施例および比較例の積層体を、シーラント層側の面が向かい合うように重ねて、圧力0.2MPa、時間1秒、温度230℃でヒートシールし、三方を閉じた袋を作製した。作製した三方を閉じた袋に、酢酸dl−α−トコフェロールのメチルエチルケトン溶液(濃度10質量%)20mLを充填後、袋の開口部を同様にヒートシールして密封し、溶液接触面積が200cm
2である包装袋サンプルを作製した。包装袋サンプルを40℃で7日間保管した後に開封し、メチルエチルケトン溶液中の酢酸dl−α−トコフェロールの残存量を、高速液体クロマトグラフィ法で定量し、前記残存量をもとに酢酸dl−α−トコフェロールの残存率を算出した。実用上の性能として、40℃での残存率は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
上記保管条件(40℃で7日間)を、0℃で7日間に変更して保管した以外は同様の方法で酢酸dl−α−トコフェロールの吸着性試験を実施した。実用上の性能として、0℃での残存率も80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0068】
(7)シール強度試験
実施例および比較例の積層体を、シーラント層を内側にして重ね合せ、ヒートシーラー(テスター産業社製、TP−701S HEAT SEAL TESTER)で、180℃で1秒間、圧力1kgf/cm
2でヒートシールした。次いで、ヒートシールされた積層体を幅15mmの短冊状に切り出し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度300mm/分の条件で、剥離強度を、T型剥離試験により測定した。測定はサンプル数10で行い、その平均値をシール強度とした。
【0069】
(8)引き裂き性試験
上記(6)において、酢酸dl−α−トコフェロールを40℃で7日間保管した後、開封した包装体サンプルを、試験用積層体とした。試験用積層体を幅15mm、長さ10cmに切り出し、短辺の中心部に長さ2.5cmの切込みを入れて、試験片を作成した。試験片を、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、室温下、引張り速度50mm/分の条件にて引き裂き強度を測定した。得られた引き裂き強度から、引き裂き性を評価した。実用上の引き裂き性として、引き裂き強度は0.5N/15mm以下であることが好ましく、0.2N/15mm以下であることがより好ましい。
【0070】
コート液、積層体の原料として、下記のもの、または下記の方法で合成や製造、作製したものを使用した。
<酸変性環状オレフィン樹脂の合成>
合成例1:酸変性環状オレフィン樹脂P−1
環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製、ZEONOR 1060R)100gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン400gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、無水マレイン酸25gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド15gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥して、酸変性環状オレフィン樹脂P−1を合成した。P−1の数平均分子量は31,000であった。
【0071】
合成例2:酸変性環状オレフィン樹脂P−2
合成例1において、無水マレイン酸の量を12g、ジクミルパーオキサイドの量を5gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性環状オレフィン樹脂P−2を合成した。P−2の数平均分子量は110,000であった。
【0072】
合成例3:酸変性環状オレフィン樹脂P−3
合成例1において、無水マレイン酸の量を8g、ジクミルパーオキサイドの量を3gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性環状オレフィン樹脂P−3を合成した。P−3の数平均分子量は150,000であった。
【0073】
合成例4:酸変性環状オレフィン樹脂P−4
合成例1において、無水マレイン酸の量を6g、ジクミルパーオキサイドの量を3gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性環状オレフィン樹脂P−4を合成した。
P−4の数平均分子量は180,000であった。
【0074】
合成例5:酸変性環状オレフィン樹脂P−5
合成例1において、無水マレイン酸の量を50g、ジクミルパーオキサイドの量を25gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性環状オレフィン樹脂P−5を合成した。P−5の数平均分子量は7,000であった。
【0075】
合成例6:酸変性環状オレフィン樹脂P−6
窒素ガスで置換した反応容器内に、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物100gと、分子量調節剤である1−ヘキセン1gを、クロロベンゼン300gに溶解し、この溶液を60℃に加熱した。次いで、この反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのクロロベンゼン溶液(1.5mol/L)0.25gと、六塩化タングステンのクロロベンゼン溶液(0.1mol/L)0.7gとを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱撹拌することにより開環重合反応を行った。反応終了後、得られた反応物を多量のメタノール中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂を減圧乾燥して、酸変性環状オレフィン樹脂P−6を合成した。P−6の数平均分子量は6,000であった。
【0076】
合成例7:酸変性環状オレフィン樹脂P−7
合成例1において、無水マレイン酸の量を2g、ジクミルパーオキサイドの量を2.5gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性環状オレフィン樹脂P−7を合成した。P−7の数平均分子量は250,000であった。
【0077】
<環状オレフィン樹脂P−8>
環状オレフィン樹脂P−8として、日本ゼオン社製「ZEONOR 1060R」を用いた。
【0078】
<酸変性ポリオレフィン樹脂P−9>
酸変性ポリオレフィン樹脂P−9として、「ボンダインHX8290」(アルケマ社製、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸=80/18/2質量%)を用いた。
【0079】
<酸変性ポリオレフィン樹脂P−10の合成>
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン=64.8/23.9/11.3質量%)280gを、4つ口フラスコ中において、窒素雰囲気下で加熱溶融させた。その後、系内温度を170℃に保って、攪拌下、不飽和カルボン酸としての無水マレイン酸32.0gとラジカル発生剤としてのジクミルパーオキサイド6.0gとをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂P−10を得た。
【0080】
<酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体A−1の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂P−9、60gのイソプロパノール、2.7gのトリエチルアミンおよび162.3gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。この状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱し、系内温度を130℃に保って60分間撹拌した。その後、空冷にて撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、108.2gの蒸留水および2.0gのジメチルアミノエタノールを添加した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、60℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、110.2gの水性媒体を留去した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、酸変性オレフィン樹脂水性分散体A−1を得た。
【0081】
<酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体A−2の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1Lガラス容器を備えた攪拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂P−10、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、6.9gのジメチルアミノエタノール及び188.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、攪拌浴の回転速度を300rpmとして攪拌した。この状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱し、系内温度を140℃に保って60分間攪拌した。その後、空冷にて、攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、108gの蒸留水を添加した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、60℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、108gの水性媒体を留去した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、酸変性オレフィン樹脂水性分散体A−2を得た。
【0082】
<バリア基材F−1の作製>
厚さ30μmの両面コロナ処理を施した二軸延伸低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製、TUXシリーズ FC−S)を使用し、グラビアコート機を用いて低密度ポリエチレンフィルムに二液硬化型のポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製)を乾燥後の厚みが5μmになるように塗布、乾燥し、この接着層上にバリア層として厚さ7μmのアルミニウム箔を貼り合わせ、バリア性基材F−1を得た。
【0083】
<バリア性基材F−2の作製>
厚さ30μmの両面コロナ処理を施した無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、CPシリーズ SC)を使用し、グラビアコート機を用いてポリプロピレンフィルムに二液硬化型のポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製)を乾燥後の厚みが5μmになるように塗布、乾燥し、この接着層上にバリア層として厚さ7μmのアルミニウム箔を貼り合わせ、バリア性基材F−2を得た。
【0084】
実施例1
<コート液の製造>
ヒーター付の密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた攪拌機を用いて、45.0gの酸変性環状オレフィン樹脂P−1(酸価70.2mgKOH/g)、91.5gのテトラヒドロフラン、4.2gのトリエチルアミンおよび159.3gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、攪拌浴の回転速度を300rpmとして攪拌した。この状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱し、系内温度を130℃に保って60分間攪拌した。その後、水浴につけて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、49.1gの蒸留水および4.0gのジメチルアミノエタノールを添加した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、60℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、128.1gの水性分散体を留去した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、黄色透明の均一な酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。水性分散体E−1における酸変性環状オレフィン樹脂の重量平均粒子径は、0.070μmであった。
得られた酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1の固形分濃度を10質量%に調整してコート液を得た。
<積層体の製造>
バリア性基材F−1の低密度ポリエチレン面に、上記コート液を、乾燥後の塗膜厚みが1μmとなるように塗布し、乾燥させ、バリア性基材にシーラント層を形成させた積層体を得た。
【0085】
実施例2
酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1に、ポリウレタン樹脂からなる添加剤として、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂の水性分散体(アデカ社製、アデカボンタイターHUX350、固形分濃度30質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず)を、酸変性環状オレフィン樹脂100質量部に対して、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂の水性分散体の固形分が20質量部となるように添加し、混合して、固形分濃度を10質量%に調整し、添加剤としてポリウレタン樹脂を含有するコート液を得た。
得られたコート液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って積層体を得た。
【0086】
実施例3〜6
添加剤の種類と含有量を表1に記載のように変更した以外は、実施例2と同様の操作を行って、コート液と積層体を得た。
なお、実施例3においては、ポリエステル樹脂からなる添加剤として、ポリエステル樹脂の水性分散体(ユニチカ社製、エリーテルKT−9204、固形分濃度30質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず)を使用し、実施例4においては、オキサゾリン化合物からなる添加剤として、オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製、エポクロスWS700、固形分濃度25質量%、不揮発性水性分散化助剤含有せず)を使用し、実施例5においては、ポリエチレン樹脂からなる添加剤として、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体A−1を使用し、実施例6においては、ポリプロピレン樹脂からなる添加剤として、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体A−2を使用した。
【0087】
実施例7
酸変性環状オレフィン樹脂P−1をP−2(酸価41.2mgKOH/g)へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、黄色透明の均一な酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。水性分散体E−2における酸変性環状オレフィン樹脂の重量平均粒子径は、0.095μmであった。
酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1をE−2に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、コート液および積層体を得た。
【0088】
実施例8
バリア性基材F−1の低密度ポリエチレン面に、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体A−1を、乾燥後の塗膜厚みが2μmとなるように塗布し、乾燥させ、易接着層を形成した。さらに、易接着層の上に実施例7の酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−2を、コート液として乾燥後の塗膜厚みが1μmとなるように塗布し、乾燥させ、易接着層上にシーラント層を形成し、バリア性基材/易接着層/シーラント層からなる構成の積層体を得た。
【0089】
実施例9〜13
添加剤の種類と含有量を表1記載のように変更した以外は、実施例7と同様の操作を行って、コート液と積層体を得た。
【0090】
実施例14
酸変性環状オレフィン樹脂P−2を濃度10質量%になるように混合有機溶剤(メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=8/2(質量比))に溶解し、酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−1からなるコート液を得た。
コート液を酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−1に変更した以外は、実施例7と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0091】
実施例15
コート液を酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−2から酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−1へ変更した以外は、実施例8と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0092】
実施例16
バリア性基材F−2のポリプロピレン面に、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体A−2を、乾燥後の塗膜厚みが2μmとなるように塗布し、乾燥させ、易接着層を形成した。さらに、易接着層の上に酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−1からなるコート液を、乾燥後の塗膜厚みが1μmとなるように塗布し、乾燥させ、易接着層上にシーラント層を形成して積層体を得た。
【0093】
実施例17
酸変性環状オレフィン樹脂P−1をP−3(酸価11.0mgKOH/g)へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、黄色透明の均一な酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−3のコート液を得た。水性分散体E−3における酸変性環状オレフィン樹脂の重量平均粒子径は、0.12μmであった。
酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1をE−3へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0094】
実施例18
酸変性環状オレフィン樹脂P−1をP−4(酸価5.0mgKOH/g)へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、黄色透明の均一な酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−4のコート液を得た。水性分散体E−4における酸変性環状オレフィン樹脂の重量平均粒子径は、0.15μmであった。
酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1をE−4へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0095】
実施例19
酸変性環状オレフィン樹脂P−1をP−5(酸価141.7mgKOH/g)へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、黄色透明の均一な酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−5のコート液を得た。水性分散体E−5における酸変性環状オレフィン樹脂の重量平均粒子径は、0.045μmであった。
酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1をE−5へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0096】
比較例1
酸変性環状オレフィン樹脂P−1をP−6(酸価583.2mgKOH/g)へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、黄色透明の均一な酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−6のコート液を得た。水性分散体E−6における酸変性環状オレフィン樹脂の重量平均粒子径は、0.010μmであった。
酸変性環状オレフィン樹脂水性分散体E−1をE−6へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0097】
比較例2
酸変性環状オレフィン樹脂P−6を濃度10質量%になるように混合有機溶剤(メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=8/2(質量比))に溶解し、酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−2からなるコート液を得た。
コート液を酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−2に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0098】
比較例3
酸変性環状オレフィン樹脂P−7(酸価0.8mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったが、多量の樹脂の存在が目視で観察され、実質的に酸変性環状オレフィン樹脂P−7の水性分散体は得られなかった。
【0099】
比較例4
酸変性環状オレフィン樹脂P−7を濃度10質量%になるように混合有機溶剤(メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=8/2(質量比))に溶解し、酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−3からなるコート液を得た。
コート液を酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−3へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0100】
比較例5
環状オレフィン樹脂P−8を濃度5質量%になるように混合有機溶剤(トルエン/シクロヘキサン=7/3(質量比))に溶解し、環状オレフィン樹脂溶液O−4からなるコート液を得た。
コート液を酸変性環状オレフィン樹脂溶液O−4へ変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、積層体を得た。
【0101】
比較例6
バリア性基材F−1の低密度ポリエチレン面に、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体A−1を、乾燥後の厚みが1μmになるよう塗布し、乾燥させて、積層体を得た。
【0102】
比較例7
環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製、ZEONOR 1060R)を、押出成形により、厚さ30μmのフィルム状に成形してシーラントフィルムを得た。
バリア性基材F−1の低密度ポリエチレン面に、ドライラミネート用接着剤(DIC社製ディックドライLX−901/KW−75)を乾燥膜厚3μmになるように塗布し、環状オレフィン樹脂からなるシーラントフィルムとドライラミネートにより貼り合わせて積層体を得た。
【0103】
実施例および比較例で得られたコート液と積層体の特性を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1〜19においては、本発明で規定する範囲の酸価を有する酸変性環状オレフィン樹脂を使用することにより、水性分散体もしくは溶液からなるコート液が得られ、このコート液を用いて形成されたシーラント層を有する積層体は、低分子量の有機化合物であるl−メントールや酢酸dl−α−トコフェロールの吸着量が低く、高い非吸着性を示した。酸変性環状オレフィン樹脂に酸価が10〜50mgKOH/gのものを使用している積層体(実施例7〜17)は、低温保管した後の非吸着性も良好であった。特に、基材とシーラント層の間に易接着層を設けた積層体(実施例8、15、16)は、良好な非吸着性に加え、高いシール強度を示した。中でも、酸変性環状オレフィン樹脂を有機溶剤に溶解した酸変性環状オレフィン溶液(実施例14〜16)を用いた場合、非吸着性が最も良好であった。
比較例1、2の積層体は、酸価が本発明で規定する範囲を超える酸変性環状オレフィン樹脂を用いてシーラント層を形成したため、低分子量の有機化合物の非吸着性に劣るものであった。
酸価が1mgKOH/g未満である酸変性環状オレフィン樹脂を使用した比較例3は、水性分散体を得ることができず、有機溶剤に溶かしたコート液を用いてシーラント層を形成した比較例4の積層体や、未変性の環状オレフィン樹脂を使用した比較例5の積層体は、40℃保管した後の非吸着性は良好であったが、0℃保管後の非吸着性が著しく劣っていた。
比較例6の積層体は、環状構造を含有しない酸変性オレフィン樹脂を使用してシーラント層を形成したため、l−メントールや酢酸dl−α−トコフェロールの非吸着性に劣るものであった。
比較例7の積層体は、l−メントールや酢酸dl−α−トコフェロールの40℃保管した後の非吸着性は示すものの、未変性の環状オレフィン樹脂を使用してシーラント層を形成したため、0℃保管した後の非吸着性が乏しく、また、形成されたシーラント層は基材層との密着性が低く、シール強度に劣り、さらには引き裂き性にも劣るものであった。