【解決手段】本開示の一態様は、内燃機関の排気ガス浄化装置である。排気ガス浄化装置は、排気ガス浄化部と還元部と還元剤供給部と排気ガス管路と旋回流発生部とを備える。還元部は、排気ガス浄化部の下流側に設けられ、排気ガスを還元剤の存在下で還元する。還元剤供給部は還元部よりも上流側で還元剤を供給する。排気ガス管路は排気ガス浄化部と還元部とを連通する。旋回流発生部は、排気ガス管路内に設置され、第1遮蔽部と、第1遮蔽部の下流側に配置される第2遮蔽部とを有する。第1遮蔽部は、排気ガス管路の中心軸方向の流れを遮蔽する本体と、本体の中心軸よりも外側に設けられ、排気ガスを通過させる第1通過孔とを有する。第2遮蔽部は、中心軸方向及び半径方向の流れを遮蔽する本体と、排気ガスを半径方向内側に通過させる第2通過孔とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の排気ガス浄化装置によれば、旋回流によって還元剤を拡散できる。しかし、この排気ガス浄化装置では、旋回流の向きが単一方向であるため、還元剤の拡散が偏る可能性がある。また、この排気ガス浄化装置では、圧損の低減が十分に検討されていない。そのため、排気ガス中の還元剤の拡散効果については改善の余地がある。
【0009】
本開示の一局面は、還元剤の拡散効果の向上により、排気ガスの浄化効率に優れる排気ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、内燃機関の排気ガス浄化装置である。排気ガス浄化装置は、排気ガス浄化部と、還元部と、還元剤供給部と、排気ガス管路と、旋回流発生部と、を備える。排気ガス浄化部は、排気ガス中の環境汚染物質を改質又は捕集する。還元部は、排気ガスの流れ方向において排気ガス浄化部の下流側に設けられ、排気ガスを還元剤の存在下で還元する。還元剤供給部は、排気ガスの流れ方向において還元部よりも上流側で排気ガスに還元剤を供給する。排気ガス管路は、排気ガス浄化部の排出口と還元部の導入口とを連通する。旋回流発生部は、排気ガス管路内に設置される。また、旋回流発生部は、第1遮蔽部と、第1遮蔽部の下流側に配置される第2遮蔽部と、を有する。第1遮蔽部は、排気ガス管路の中心軸方向の流れを遮蔽する本体と、本体の排気ガス管路の中心軸よりも外側に設けられ、排気ガスを中心軸方向に通過させる少なくとも1つの第1通過孔と、を有する。第2遮蔽部は、中心軸方向及び排気ガス管路の半径方向の流れを遮蔽する本体と、本体に設けられ、少なくとも1つの第1通過孔を通過した排気ガスを半径方向内側に通過させる少なくとも1つの第2通過孔と、を有する。
【0011】
このような構成によれば、まず、排気ガス管路の中心軸方向(以下、「第1方向」ともいう。)で排気ガスの流れを部分的に遮蔽する第1遮蔽部によって、排気ガス管路の半径方向と平行な旋回軸を有する旋回流(以下、「第1旋回流」ともいう。)が生じる。次に、第1方向の排気ガスの流れを遮蔽し、排気ガスを排気ガス管路の半径方向(以下、「第2方向」ともいう。)に誘導する第2遮蔽部によって、第1方向と平行な旋回軸を有する旋回流(以下、「第2旋回流」ともいう。)が生じる。また、第1遮蔽部を通過する際、及び第2遮蔽部を通過する際それぞれにおいて、排気ガスの流路が狭くなることで排気ガスの流速が上昇する。さらに、上記構成によれば、圧損の上昇も抑制される。
【0012】
したがって、上記構成によれば、旋回方向の異なる旋回流の組み合わせと、排気ガスの流速上昇とによって、排気ガス内に供給される還元剤が効果的に拡散される。その結果、還元部における排気ガスの浄化効率が高められる。
【0013】
本開示の一態様では、少なくとも1つの第1通過孔は、排気ガス管路の中心軸方向から視て、少なくとも1つの第2通過孔と排気ガス管路の周方向に重ならない領域を有してもよい。このような構成によれば、旋回流発生部における排気ガスの流路が長くなり、旋回流をより確実に発生させることができる。
【0014】
本開示の一態様では、第1遮蔽部は、複数の第1通過孔を有してもよい。また、第2遮蔽部は、複数の第2通過孔を有してもよい。このような構成によれば、複数の第1旋回流及び複数の第2旋回流を発生させることができる。その結果、還元剤の拡散効果が促進される。
【0015】
本開示の一態様では、排気ガス管路の中心軸方向から視て、排気ガス管路の周方向に複数の第1通過孔と複数の第2通過孔とが交互に配置されてもよい。また、排気ガス管路の周方向において隣接する第1通過孔と第2通過孔との重心間の距離は一定であってもよい。このような構成によれば、複数の第1旋回流及び複数の第2旋回流を排気ガス管路内で一様に分布させることができるので、還元剤の拡散効果がさらに向上する。
【0016】
本開示の一態様では、還元剤供給部は、排気ガスの流れ方向において第2遮蔽部よりも上流側で排気ガスに還元剤を噴霧してもよい。このような構成によれば、旋回流中に還元剤が供給されるので、還元剤の拡散効果が促進される。また、少なくとも第2遮蔽部によって還元剤が供給された排気ガスの流路が延長される。その結果、還元剤の混合が促進され、還元剤の供給点から還元触媒までの管路を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1A,1Bに示す排気ガス浄化装置(以下、単に「浄化装置」ともいう。)1は、内燃機関の排気ガス流路内に設けられ、排気ガス中の環境汚染物質を低減する。浄化装置1は、排気ガス浄化部2と、還元部3と、還元剤供給部4と、排気ガス管路5と、旋回流発生部6と、を備える。
【0019】
浄化装置1が設けられる内燃機関は、特に限定されないが、浄化装置1はディーゼル機関の排気ガス浄化装置として特に好適に使用できる。ディーゼル機関としては、自動車、鉄道、船舶、建機等の輸送機器、発電施設などで駆動用又は発電用として用いられるものが挙げられる。
【0020】
<排気ガス浄化部>
排気ガス浄化部2は、排気ガス中の環境汚染物質を改質又は捕集する。ここで、「環境汚染物質」とは、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒状物質(PM)、硫黄酸化物(SOx)、炭化水素類(HC)等を意味する。
【0021】
排気ガス浄化部2は、
図1Bに示すように、排気ガスを浄化するための浄化用部材21と、浄化用部材21を収納した筒状のケーシング22とを有する。排気ガスは、ケーシング22の内部で浄化用部材21に接触しながら、ケーシング22の中心軸方向に沿って流れる。
【0022】
浄化用部材21としては、例えばディーゼル酸化触媒(DOC)、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)、NOx吸着剤等が挙げられる。DOCは、排気ガスに含まれるPM中の可溶有機成分(SOF)、CO及びHCを酸化させる触媒である。DPFは、排気ガスに含まれるPMを捕集するフィルターである。NOx吸着剤は、NOxを吸着除去する物質である。
【0023】
浄化用部材21は、一般にハニカム構造を有する筒状体が用いられる。排気ガスがハニカム構造内部を通過することで、排気ガス中の環境汚染物質は、浄化用部材21が含む触媒金属によって改質されたり、浄化用部材21に捕捉されたりする。
【0024】
図1A,1Bでは、排気ガス浄化部2は、内部での排気ガスの流れ方向が鉛直方向となるように、つまり筒状のケーシング22の中心軸が鉛直方向となる向きに配置されている。また、排気ガス浄化部2の排気ガスの排出口2Aは、排気ガスが鉛直方向に排出されるように形成されている。ただし、排気ガス浄化部2における排気ガスの流れ方向は鉛直方向に限定されず、水平方向でもよいし、水平方向に対し傾斜した方向であってもよい。
【0025】
<還元部>
還元部3は、排気ガスを還元剤の存在下で還元する。具体的には、還元部3は、アンモニアと還元触媒とによって、排気ガス中のNOxを還元し、無害な窒素に改質する。還元剤であるアンモニアは、一般に尿素水を排気ガス中に噴射し、この尿素水中の尿素を加水分解することで生成される。
【0026】
還元部3は、還元触媒31と、還元触媒31を収納した筒状のケーシング32とを有する。還元触媒31は、セラミック等の母材と、この母材に担持された金属触媒とから構成される。排気ガスは、ケーシング32の内部で還元触媒31に接触しながら、ケーシング32の中心軸方向に沿って流れる。
【0027】
還元部3は、排気ガスの流れ方向において排気ガス浄化部2の下流側に排気ガス管路5を介して連結される。還元部3は、内部での排気ガスの流れ方向が排気ガス浄化部2と同じ方向となるように、つまり還元部3のケーシング32の中心軸は、排気ガス浄化部2のケーシング22の中心軸と一致する向きに配置される。
【0028】
<還元剤供給部>
還元剤供給部4は、排気ガスの流れ方向において還元部3よりも上流側で排気ガスに還元剤を供給する。本実施形態では
図1A,1Bに示すように、還元剤供給部4は、排気ガス管路5の内部に還元剤を噴霧するように構成されている。具体的には、還元剤供給部4は、排気ガスの流れ方向において旋回流発生部6の第2遮蔽部8よりも上流側かつ第1遮蔽部7よりも下流側、つまり、
図3A,3Bに示す第1遮蔽部7の本体7Aと、第2遮蔽部8の第1本体8Aとの間に還元剤を噴霧するインジェクタを有する。このインジェクタは、排気ガス管路5の周面から、排気ガス管路5の中心軸に向かって還元剤である尿素水を噴霧する。
【0029】
なお、還元剤供給部4のインジェクタは、公知のものを用いることができる。また、
図1A,1Bでは、還元剤供給部4として、排気ガス管路5との接続管のみを図示しており、インジェクタ等の部材は図示を省略している。
【0030】
<排気ガス管路>
排気ガス管路5は、排気ガス浄化部2の排出口2Aと還元部3の導入口3Aとを連通する管体である。つまり、排気ガス浄化部2から排出された排気ガスは、排気ガス管路5を通って還元部3に導入される。排気ガス管路5の内部には、旋回流発生部6が配置される。また、排気ガス管路5の周面には、還元剤供給部4が接続される。
【0031】
排気ガス管路5の中心軸方向は、排気ガス浄化部2のケーシング22及び還元部3のケーシング32の中心軸方向と一致する。つまり、排気ガス管路5は、排気ガス浄化部2と還元部3との間に曲がりのないストレートな排気ガスの流路を形成する。
【0032】
なお、本実施形態では、排気ガス管路5は直管であり、排気ガス浄化部2の排出口2Aと還元部3の導入口3Aとは同じ直径を有する。ただし、必ずしも排気ガス浄化部2の排出口2Aと還元部3の導入口3Aとは同径でなくてもよい。
【0033】
<旋回流発生部>
旋回流発生部6は、排気ガス管路5内に設置され、排気ガスに複数の旋回流を発生させる。旋回流発生部6は、
図2A,2Bに示すように、第1遮蔽部7と、第2遮蔽部8と、を有する。
【0034】
(第1遮蔽部)
第1遮蔽部7は、排気ガス管路5内を流れる排気ガスに対し、排気ガス管路5の中心軸方向である第1方向D1の流れを部分的に遮蔽する。
【0035】
第1遮蔽部7は、
図3Aに示すように、本体7Aと、本体7Aに設けられた複数の第1通過孔7Bとを有する。第1遮蔽部7は、本体7Aによって、排気ガスの第1方向D1の流れを遮蔽して、複数の第1通過孔7Bのみによって第1方向D1に排気ガスを通過させる。
【0036】
本体7Aは、厚み方向が第1方向D1と一致する向きに配置された板状の部材である。本体7Aの外形は、排気ガス管路5の内周面に沿った形状(つまり円盤形)である。つまり、本体7Aは、複数の第1通過孔7B以外の部分で排気ガス管路5を閉塞し、排気ガスの流れを遮蔽する。
【0037】
なお、
図3Aの第1遮蔽部7では、本体7Aは、排気ガス管路5の中心軸を含む中央部分に、上流側に向かって突出した円柱状の突起7Cを有する。換言すると、本体7Aは、中央部分の下流側の面に円柱状の凹部が形成されている。この凹部は、第2遮蔽部8を第1遮蔽部7に組み付けるためのものなので省略することができる。つまり、本体7Aは、凹凸のない平板状であってもよい。
【0038】
本実施形態では、第1遮蔽部7は、2つの第1通過孔7Bを有する。2つの第1通過孔7Bは、本体7Aの排気ガス管路5の中心軸よりも外側に設けられ、本体7Aを厚み方向(つまり第1方向D1)に貫通する。2つの第1通過孔7Bは、本体7Aに到達した排気ガスを第1方向D1に通過させる。
【0039】
2つの第1通過孔7Bは、それぞれ、長手方向が排気ガス管路5の周方向に沿うスリット状の貫通孔である。2つの第1通過孔7Bの長さ及び幅は互いに同じである。また、2つの第1通過孔7Bは、第1方向D1から視て、排気ガス管路5の中心軸を挟んで対向する位置に配置されている。したがって、2つの第1通過孔7Bは、排気ガス管路5の周方向において、一定距離離間して配置されている。
【0040】
(第2遮蔽部)
第2遮蔽部8は、第1遮蔽部7の2つの第1通過孔7Bを通過した排気ガスに対し、第1方向D1の流れを完全に遮蔽すると共に、排気ガスを排気ガス管路5の半径方向である第2方向D2に誘導し、排気ガスの流れの向きを変える。
【0041】
第2遮蔽部8は、
図3Bに示すように、板状の第1本体8Aと、筒状の第2本体8Bと、第2本体8Bに設けられた複数の第2通過孔8Cとを有する。第2遮蔽部8は、第1本体8A及び第2本体8Bによって排気ガスの第1方向D1の流れを完全に遮蔽する。また、第2遮蔽部8は、第2本体8Bによって排気ガスの第2方向D2の流れを遮蔽し、複数の第2通過孔8Cのみによって第2方向D2内側に排気ガスを通過させる。
【0042】
第1本体8Aは、厚み方向が第1方向D1と一致する向きに配置された板状の部材である。第1本体8Aの外形は、第1遮蔽部7の本体7Aと同様、排気ガス管路5の内周面に沿った形状である。また、第1本体8Aは、排気ガス管路5の中心軸を含む中央部分に開口を有する。第1本体8Aの上流側の面には、この開口を塞ぐように第2本体8Bが連結されている。
【0043】
第2本体8Bは、上流側が塞がれ、下流側が開口した筒状体である。なお、
図3Bの第2遮蔽部8では、第2本体8Bは上流側も開口しているように見えるが、第1遮蔽部7との結合状態において、第2本体8Bの上流側は第1遮蔽部7の本体7Aの下流側の面によって閉塞される。また、第2本体8Bの下流側の端部は、第1本体8Aの開口に接続される。
【0044】
本実施形態では、第2遮蔽部8は、2つの第2通過孔8Cを有する。2つの第2通過孔8Cは、第2本体8Bの周面に設けられ、第2本体8Bを半径方向(つまり第2方向D2)に貫通する。2つの第2通過孔8Cは、第1本体8Aに衝突した排気ガスを第2方向D2、つまり第2本体8B内部に通過させる。
【0045】
2つの第2通過孔8Cは、それぞれ、長手方向が排気ガス管路5の周方向に沿うスリット状の貫通孔である。2つの第2通過孔8Cの長さ及び幅は互いに同じである。また、2つの第2通過孔8Cは、第1方向D1から視て、排気ガス管路5の中心軸を挟んで対向する位置に配置されている。したがって、2つの第2通過孔8Cは、排気ガス管路5の周方向において、一定距離離間して配置されている。
【0046】
(第1通過孔と第2通過孔との位置関係)
本実施形態では、2つの第1通過孔7Bは、第1方向D1から視て、2つの第2通過孔8Cと排気ガス管路5の周方向に重ならない領域を有する。つまり、2つの第1通過孔7Bは、2つの第2通過孔8Cと周方向に少なくとも一部が重ならないように配置される。
【0047】
なお、
図2A,2Bに示す旋回流発生部6では、第1方向D1から視て、2つの第1通過孔7Bそれぞれにおいて、排気ガス管路5の周方向における両端部が2つの第2通過孔8Cとそれぞれ重なるように配置されている。ただし、2つの第1通過孔7Bと2つの第2通過孔8Cとは排気ガス管路5の周方向において全く重ならなくてもよいし、一方の端部のみが互いに重なるように配置されてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、2つの第1通過孔7Bの重心と2つの第2通過孔8Cの重心とは、排気ガス管路5の周方向において等間隔で配置されている。つまり、排気ガス管路5の周方向において隣接する第1通過孔7Bと第2通過孔8Cとの重心間の距離は全て一定である。
【0049】
[1−2.機能]
次に、浄化装置1における旋回流の発生メカニズムについて説明する。
浄化装置1では、排気ガス浄化部2から排出された排気ガスは、流れの向きを変えずにそのまま排気ガス管路5に進入する。
【0050】
排気ガス管路5内において、排気ガスはまず第1遮蔽部7の本体7Aによって流れが部分的に遮蔽される。つまり、排気ガスの流路が2つの第1通過孔7Bに絞られる。そのため、第1遮蔽部7において、
図4Aに矢印で示すように、第1方向D1と垂直な旋回軸を有する第1旋回流が発生する。本実施形態では、2つの第1通過孔7Bにより、複数の第1旋回流が形成される。
【0051】
次に、2つの第1通過孔7Bを通過した排気ガスは、第2遮蔽部8の第1本体8Aの板面に衝突する。その後、排気ガスは、流れを第2方向D2に変え、2つの第2通過孔8Cを通過し、第2本体8Bの内部に進入する。このとき、2つの第2通過孔8Cによって、排気ガスの流路が再び絞られる。
【0052】
第2遮蔽部8においては、
図4Bに矢印で示すように、第2方向D2と垂直な旋回軸を有する第2旋回流が発生する。本実施形態では、2つの第2通過孔8Cにより、複数の第2旋回流が形成される。
【0053】
第2遮蔽部8の第2本体8Bの内部に進入した排気ガスは、再び第1方向D1に流れ、第2本体8Bの下流側の開口から排出される。第2本体8Bの開口から排出された排気ガスは、還元部3に導入される。第2本体8Bの開口の径は、還元部3の導入口3Aの径よりも小さいので、還元部3に導入されるときに排気ガスは流速が低下する。その結果、排気ガスは還元部3内で拡散し、還元触媒31と均質に接触する。
【0054】
[1−3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1方向D1の排気ガスの流れを部分的に遮蔽する第1遮蔽部7によって、複数の第1旋回流が生じる。次に、第1方向D1の排気ガスの流れを完全に遮蔽し、排気ガスを第2方向D2に誘導する第2遮蔽部8によって、複数の第2旋回流が生じる。これらの旋回流により、排気ガス内に供給される還元剤が効果的に拡散される。
【0055】
(1b)第1遮蔽部7を通過する際、及び第2遮蔽部8を通過する際それぞれにおいて、排気ガスの流路が狭くなることで排気ガスの流速が上昇する。そのため、上述の旋回流の速度が上昇し、還元剤の拡散が促進される。
【0056】
(1c)第2遮蔽部8の下流側では、排気ガスの流路が広くなる。そのため、排気ガスの流速が低下し、還元部3に供給される排気ガスの流れが一様となるので、排気ガスの還元が効率的に行われる。
【0057】
(1d)旋回流発生部6は、排気ガスを中心軸側に向かって流動させつつ上述の旋回流を発生させる。そのため、排気ガス中に含まれる還元剤が比較的温度の低い排気ガス管路5の側面に付着することが抑制される。その結果、還元剤のデポジットを低減できる。
【0058】
(1e)複数の第1通過孔7Bは、第1方向D1から視て、複数の第2通過孔8Cと排気ガス管路5の周方向に少なくとも一部が重ならないように配置されるので、旋回流発生部6における排気ガスの流路が伸長される。これにより、複数の旋回流をより確実に発生させることができる。
【0059】
(1f)複数の第1通過孔7Bと複数の第2通過孔8Cとは、第1方向D1から視て、排気ガス管路5の周方向に交互に配置されるので、複数の第1旋回流及び複数の第2旋回流が発生する。これにより、還元剤の拡散効果が促進される。
【0060】
(1g)還元剤供給部4は、排気ガスの流れ方向において第1遮蔽部7と第2遮蔽部8との間に還元剤を噴霧するので、旋回流中に還元剤が供給される。その結果、還元剤の拡散効果がさらに促進される。また、第2遮蔽部8によって還元剤が供給された排気ガスの流路が延長される。その結果、還元剤の混合が促進され、還元剤の供給点から還元触媒までの管路を低減できる。
【0061】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0062】
(2a)上記実施形態の排気ガス浄化装置1において、第1遮蔽部7及び第2遮蔽部8は、必ずしも複数の通過孔を有する必要はなく、それぞれ少なくとも1つの通過孔を有すればよい。
【0063】
(2b)上記実施形態の排気ガス浄化装置1において、少なくとも1つの第1通過孔及び少なくとも1つの第2通過孔の位置や形状は、上述のものに限定されない。
つまり、第1方向から視て、少なくとも1つの第1通過孔に対し、少なくとも1つの第2通過孔が排気ガス管路5の周方向に重ならない領域を有さず、完全に重なっていてもよい。逆に、少なくとも1つの第2通過孔に対し、少なくとも1つの第1通過孔が排気ガス管路5の周方向に完全に重なっていてもよい。
【0064】
また、複数の第1通過孔及び複数の第2通過孔は、それぞれ等間隔で配置されなくてもよい。さらに、第1方向から視て、排気ガス管路5の周方向に複数の第1通過孔と複数の第2通過孔とが交互に配置されなくてもよい。
【0065】
(2c)上記実施形態の排気ガス浄化装置1において、旋回流発生部6は、第1遮蔽部7及び第2遮蔽部8として別々に形成された部品の組み付けにより一体化されたものであってもよいし、一体成形された一つの部材から構成されてもよい。逆に、第1遮蔽部7と第2遮蔽部8とをそれぞれ独立した部材として構成し、両者を排気ガスの流れ方向に離間して配置してもよい。
【0066】
(2d)上記実施形態の排気ガス浄化装置1において、還元剤供給部4は、必ずしも排気ガスの流れ方向において第1遮蔽部7と第2遮蔽部8との間に還元剤を噴射する必要はない。例えば、第1遮蔽部7の上流側に還元剤を供給してもよいし、第2遮蔽部8の下流側に還元剤を供給してもよい。ただし、還元剤の拡散効果の観点からは、少なくとも第2遮蔽部8よりも上流側に還元剤を供給することが好ましい。
【0067】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0068】
[3.実施例]
次に、本開示の効果を確認するために行った実施例1と比較例1との比較について説明する。
【0069】
(実施例1)
図1の排気ガス浄化装置1にガスを供給した際の旋回流発生部6における圧損を解析により求めた。
【0070】
(比較例1)
図1の排気ガス浄化装置1において、旋回流発生部6を円盤に複数の貫通孔を設けた形状の旋回流発生部に置き換え、実施例1と同様の条件で旋回流発生部における圧損を解析により求めた。
【0071】
(結果)
実施例1では、比較例1に対し、圧損が約20%低減された。つまり、実施例1では、旋回流発生部における圧損が低く、ガスの流れを一様とできることが推測される。