(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-117575(P2018-117575A)
(43)【公開日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】釣竿固着解除器
(51)【国際特許分類】
A01K 97/00 20060101AFI20180706BHJP
A01K 87/00 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
A01K97/00 Z
A01K87/00 640Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-11492(P2017-11492)
(22)【出願日】2017年1月25日
(71)【出願人】
【識別番号】513165492
【氏名又は名称】有限会社佐藤木型製作所
(71)【出願人】
【識別番号】513165506
【氏名又は名称】有限会社ヨネプラ金型
(71)【出願人】
【識別番号】505458876
【氏名又は名称】株式会社ティーエヌ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 和明
(72)【発明者】
【氏名】坂元 翔
(72)【発明者】
【氏名】野田 二郎
(72)【発明者】
【氏名】野村 信治
(72)【発明者】
【氏名】小山 由朗
【テーマコード(参考)】
2B019
2B109
【Fターム(参考)】
2B019AF10
2B109FA07
2B109FA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】釣竿の継ぎ目の固着を簡単に解除するのに適した器具を提供する。
【解決手段】実質的にC字状の断面形状を有した円柱体の形態を有する固着解除器本体1からなり、当該固着解除器本体1の材質が、ゴム弾性を有するエラストマーであり、しかも、当該固着解除器本体1の中心軸の位置には、竿を嵌め入れ可能な内径の空洞2が形成されており、当該空洞2を形成している内壁面に、切欠き溝3が軸方向に沿って設けられている。この際、切欠き溝3は、空洞2を形成している内壁面の、固着解除器本体1の開口と対向する位置に設けられていることが好ましい。固着解除器本体1を構成するエラストマーの硬度(JIS K6253にて測定されたショア硬度A)は30〜50であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿の継ぎ目の固着を解除するための器具であって、実質的にC字状の断面形状を有し、一方向が軸方向に沿って開口した円柱体の形態を有する固着解除器本体からなり、当該固着解除器本体の材質が、ゴム弾性を有するエラストマーであり、しかも、当該固着解除器本体の中心軸の位置には、竿を嵌め入れ可能な内径の空洞が形成されており、当該空洞を形成している内壁面に、切欠き溝が軸方向に沿って設けられていることを特徴とする釣竿固着解除器。
【請求項2】
前記空洞を形成している内壁面の、前記固着解除器本体の開口と対向する位置に、前記切欠き溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿固着解除器。
【請求項3】
前記固着解除器本体を構成するエラストマーの、JIS K6253にて測定されたショア硬度Aが30〜50であることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿固着解除器。
【請求項4】
前記エラストマーが、ポリスチレンブロックと、ポリオレフィン構造のエラストマーブロックから構成されたブロック共重合体であることを特徴とする請求項3に記載の釣竿固着解除器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿の継ぎ目の固着を解除する際に使用する器具(釣竿固着解除器)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣竿においては、継ぎ目に侵入した水や撒き餌などで継ぎ目が固まって外せなくなることが多々あり、このような継ぎ目での固着は、並継竿の場合においても振出竿の場合においても発生する。
特に振出竿においては、魚がかかると、釣竿全体が竿先側に引っ張られ、竿の各節の継ぎ目において、竿先側に位置する節の外周面と、竿元側に位置する節の内周面とが密着する力が働く。そして、このような継ぎ目を密着させる力が働き続けると、竿先側の節の外周面と竿元側の節の内周面とが互いに食い込んで、継ぎ目が強固に密着し、互いに動かない状態となって固着が生じる。特に、竿先に近い方の各節においては、竿が水に浸かったりして継ぎ目に水が侵入した状態で力がかかると、継ぎ目の両接触面の間が滑りやすくなるため、食い込みがより生じやすくなり、継ぎ目の強固な固着が一層起こり易く、真夏の炎天下では、海水や撒き餌などで継ぎ目が固まって外せなくなることが良くある。
このようにして竿の継ぎ目で固着が生じた場合、釣りをした後に、各節を縮めようとするときに、継ぎ目が動かずに竿を収納できなくなるという問題が起こり、その場合、固着を解除するために、継ぎ目に大きな力を加えているが、力を加えた際に竿やガイドを痛めることがあり、どうしても解除できない時には、釣り道具屋に竿を持ち込んでいるのが現状である。
【0003】
これまで、釣竿の継ぎ目の固着を解除する方法として、各節の継ぎ目において内側に配置される各節の後端部の外周面に、周方向に沿って円周溝を設けることが提案されてきている。この円周溝は、継ぎ目に水が侵入した際の水の逃げ場となるので、継ぎ目の両接触面間の滑りを抑制し、継ぎ目における内外周面の接触面積が減るため、継ぎ目の固着が生じたとしても小さな力で解除できる効果をもたらすが、このような円周溝を設けた場合であっても、実際の釣りに使用した際、継ぎ目に大きな引っ張り力が加わると、強固な密着が生じてしまうという問題点があった。
【0004】
釣竿の固着を解除するのに使用される器具としては、例えば下記の特許文献1に、竿の外周に巻き付け可能な、柔軟で竿表面との摩擦係数の高い材料からなる複数のベルトと、該複数のベルト間に配設された、弾性率の高い糸状体と、を具備する振出竿固着解除器が開示されている。しかしながら、この解除器の場合、竿先側に位置する節の外径の方が、竿元側に位置する節の外径よりも小さいために、解除器のベルトを節の継ぎ目部分に密接させた状態で巻き付けることが難しく、竿先側に位置する節側の巻き付けが緩くなるという問題点があった。又、この解除器の場合には、ゴム製の2枚のベルトを同時に節の外周に沿って巻き付けなければならず、大きな捩じりモーメントを生じさせるには、ベルトの巻き付け回数を増やして、巻き付け径を大きくする必要があった。
上記のような現状から、竿に簡単に取り付けることができ、竿やガイドを痛めることなく、簡単に且つ確実に継ぎ目の固着を一人で解除できる器具が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−111014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来技術における問題点を解決し、竿の継ぎ目を挟む両側位置をそれぞれ滑らない状態で確実に挟持することができ、竿の継ぎ目の位置を、指や手で互いに逆方向に捩じるだけで、簡単に竿の固着を解除することが可能な釣竿固着解除器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
釣竿の継ぎ目の固着を解除する際に使用される本発明の釣竿固着解除器は、実質的にC字状の断面形状を有し、一方向が軸方向に沿って開口した円柱体の形態を有する固着解除器本体からなり、当該固着解除器本体の材質が、ゴム弾性を有するエラストマーであり、しかも、当該固着解除器本体の中心軸の位置には、竿を嵌め入れ可能な内径の空洞が形成されており、当該空洞を形成している内壁面に、切欠き溝が軸方向に沿って設けられていることを特徴とする。
【0008】
又、本発明は、上記の特徴を有した釣竿固着解除器において、前記空洞を形成している内壁面の、前記固着解除器本体の開口と対向する位置に、前記切欠き溝が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
又、本発明は、上記の特徴を有した釣竿固着解除器において、前記固着解除器本体を構成するエラストマーの、JIS K6253にて測定されたショア硬度Aが30〜50であることを特徴とするものである。
【0010】
更に、本発明は、上記の特徴を有した釣竿固着解除器において、前記エラストマーが、ポリスチレンブロックと、ポリオレフィン構造のエラストマーブロックから構成されたブロック共重合体であることを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の釣竿固着解除器を用いた場合には、竿やガイドを痛めることなく、確実に一人で簡単に竿の固着を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る釣竿固着解除器を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は正面図であり、(c)は斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1に例示した本発明の釣竿固着解除器を竿4に取り付けた際の状態を示す図であり、(b)は、本発明の釣竿固着解除器の使用方法を示す図であり、竿の継ぎ目を挟む両側位置に本発明の釣竿固着解除器をそれぞれ取り付け、手で握って互いに逆方向に捩じることにより、竿の固着を解除する際の様子が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。
図1(a)〜(c)に例示されるように、本発明の釣竿固着解除器は、実質的にC字状の断面形状を有した円柱体の形態を有する固着解除器本体1からなり、この固着解除器本体1の中心軸の位置には、竿を嵌め入れ可能な内径の空洞2が形成されており、中心軸の位置に竿が嵌め入れられるように、一方向が軸方向に沿って開口している。この空洞2の内径は、竿を嵌め入れた際に竿の外周と密着して接するように、取り付ける竿の外径寸法に応じて大きさが選択され、一方(竿先側)の空洞2の内径(d
0)の方が、他方(竿元側)の空洞2の内径(d
1)よりも小さくなっていることが好ましい。
【0014】
本発明の釣竿固着解除器を構成する固着解除器本体1は、ゴム弾性を有するエラストマーから構成されているために、固着解除器本体1に設けられた、軸方向に伸びる空洞2の内径よりも軸径が細い竿の部分の固着を解除する際には、固着解除器本体1の軸方向に伸びる開口側の2つの対向する面a,a’の間に竿を位置させ、開口側を閉じる方向に力を加えることによって、面a,a’間にて竿を動かないように固定した状態で挟むことができ、この状態で竿を逆方向に捩じることで固着の解除が簡単に行える。
又、本発明では、空洞2の内径よりも軸径が太い竿の部分の固着を解除する際、ゴム弾性を有するエラストマーからなる固着解除器本体1の開口側を、竿の軸径よりも大きく広げることができ、これにより、軸径の大きな竿部分の少なくとも直径方向の2箇所の位置を確実に固定した状態で、竿を逆方向に捩じることができる。
【0015】
そして、本発明の釣竿固着解除器においては、この空洞2を形成している内壁面に、切欠き溝3が軸方向に沿って設けられており、切欠き溝3が存在することによって、外周面に水が付着した使用後の竿であっても、竿を嵌め入れた際に付着した水が切欠き溝3の内部に移動し、当該溝を通って水が固着解除器本体1の外部に排出され、嵌め入れられた竿の外周と固着解除器本体1との密着性が一層高められる。この切欠き溝3の断面形状としては、実質的にV字状又はU字状のものが一般的であるが、これに限定されるものではない。
本発明では、
図1に例示した本発明の釣竿固着解除器のように、固着解除器本体1の開口している側と対向する(反対側)の内壁面の位置に切欠き溝3が設けられていることが好ましく、この位置に切欠き溝3が存在することによって、竿を空洞2に嵌め込む際、固着解除器本体1の開口部分が開きやすくなり、又、空洞2の内径よりも軸径が太い竿の部分を挟む際には、ゴム弾性を有するエラストマーからなる固着解除器本体1に設けられた切欠き溝3により、固着解除器本体1の軸方向に伸びて存在する開口部分の開口幅を容易に大きく広げることができ、竿が挟み易くなる。尚、この切欠き溝3は、固着解除器本体1の空洞2の内壁面に1か所だけ設けられても良いが、軸方向に沿って内壁面の他の位置に追加して設けられても良い。
【0016】
本発明における固着解除器本体1は、指先で挟んで掴むか、あるいは、片手で握るのに適した大きさを有していれば良いが、円柱体の外径(直径)としては20〜40mm程度が一般的であり、25〜35mmが好ましい。又、円柱体の長さとしては50〜100mm程度が一般的であり、70〜90mmが好ましい。更に、固着解除器本体1の中心軸の位置に形成されている空洞2の内径についても、使用する竿の外径寸法に応じて適宜選択できるが、一般的な竿を嵌め入れるのに適した内径は6〜16mm程度である。
又、空洞2の内壁面に設けられる切欠き溝3の深さ方向の寸法も適宜選択できるが、一般的には1〜3mm程度である。
上記の大きさを有した固着解除器本体1は、指先で挟んで掴み易く、又、手で力を入れて握り易いので、固着した竿を解除するのに好適であり、この固着解除器本体1の外周面には、滑り防止のための小突起が多数設けられていても良く、あるいは、握った際に掌と良く密着するように、外周面全体が、握った時の手の形状に対応する凹凸形状を有していても良い。
【0017】
本発明における釣竿固着解除器を構成する固着解除器本体1は、中心軸の位置に形成された空洞2に竿を嵌め入れることができるように適度なクッション性(柔軟性)を有し、かつ、嵌め入れられた竿の外周と密着し、確実に保持できる粘着性を有する樹脂素材からなることが好ましい。
固着解除器本体1を構成するのに適した樹脂素材としては、市販の各種エラストマーが種々挙げられ、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。又、ポリスチレンブロックと、ポリオレフィン構造のエラストマーブロックから構成されたブロック共重合体も好ましく、特に、ポリスチレン‐ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体や、ポリスチレン‐ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック‐ポリスチレン共重合体が好ましい。
【0018】
このようなポリスチレンブロックと、ポリオレフィン構造のエラストマーブロックから構成されたブロック共重合体としては、市販の熱可塑性エラストマーが利用でき、例えば株式会社クラレ製のセプトン(登録商標)、クラレプラスチックス株式会社製のアーネストン(登録商標)、東レ・デュポン株式会社製のハイトレル(登録商標)が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーはいずれも優れた成形性を有しており、高強度、高弾性に優れ、竿の外周を密着した状態で確実に保持し得る適度な粘着性を有している。
【0019】
本発明における固着解除器本体1は、竿に固着解除器本体1を取り付け、その外周面を手で握った際に、竿の外周を密着した状態で確実に保持するのに適したゴム弾性を有する樹脂素材から成るものであればよいが、この樹脂素材の硬度(JIS K6253にて測定されたショア硬度A)としては30〜50の範囲が好ましい。
【0020】
次に、本発明の釣竿固着解除器を使用する際の手順を、
図2を用いて説明する。
図2(a)には、
図1に例示した本発明の釣竿固着解除器(固着解除器本体1)を竿4に取り付けた際の状態が示されており、
図2(b)には、釣竿の継ぎ目を挟む両側位置(できるだけ継ぎ目に近い箇所)に固着解除器本体1をそれぞれ取り付け、手でしっかりと握り、互いに逆方向に捩じる力を加えて、竿の固着を解除する際の様子が示されている。
【0021】
本発明の釣竿固着解除器の場合、軸径の細い竿を、固着解除器本体1の軸方向に伸びて存在する開口部側の対向する2つの面a,a’の位置で挟んだ際、竿を上下方向から確実に挟持することができ、又、固着解除器本体1の空洞に対応する軸径の竿を空洞に嵌め入れた際には、竿の外周が固着解除器本体1に設けられた空洞2の内壁面と密着した状態で確実に保持することができ、更に、固着解除器本体1の空洞よりも軸径の大きな竿を、空洞2の壁面に押し当てて挟んだ際にも、竿を確実に挟持することができる。しかも、竿の継ぎ目を挟む両側位置の軸方向の一定範囲(固着解除器本体1の軸方向の長さに相当)が、柔軟性及び粘着性を有した素材からなる固着解除器本体1によって挟持された状態となるため、固着解除器本体1を互いに逆方向に捩じった時に、固着した部分に大きな捩じりモーメントが加わり、簡単に且つ確実に固着を解除することができ、誤って竿を曲げて破損したりする危険性を減らすことができる。
本発明の釣竿固着解除器は、並継竿にも振出竿にも使用でき、各種太さ(軸径)の釣竿に対応することができ、継ぎ目の固着を解除するのに非常に便利である。
以下、本発明の釣竿固着解除器の製造例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
熱可塑性エラストマーとして、ポリスチレンブロックと、ポリオレフィン構造のエラストマーブロックから構成されたブロック共重合体であるスチレン系エラストマー(JIS K6253にて測定されたショア硬度A:41)を準備し、金型を用いた射出成型法によって、
図1(a)〜(c)に示される形状を有した本発明の釣竿固着解除器(外径31mm、長さ80mm、空洞の内径8mm(竿先側)、10mm(竿元側))を作製した。
そして、釣りを行った後に継ぎ目に固着が生じた竿(並継竿)の継ぎ目を挟む両側位置にそれぞれ、上記の釣竿固着解除器(固着解除器本体1)を嵌め入れて取り付け(
図2(a))、
図2(b)に示されるようにして、左右の固着解除器本体1をそれぞれ手でしっかりと握り、互いに逆方向に捩じる力を加えると、簡単に竿の固着を解除することができた。
又、上記の本発明の釣竿固着解除器を用いることによって、振出竿の継ぎ目に生じた固着を簡単に解除することもできた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の釣竿固着解除器を用いることによって、竿やガイドを痛めることなく、簡単に且つ確実に継ぎ目の固着を一人で解除することができ、解除操作時に竿が折れ曲がって破損する危険性が低下でき、安心して釣りを楽しむことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 固着解除器本体
2 空洞
3 切欠き溝
4 竿