(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-117594(P2018-117594A)
(43)【公開日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】地下茎作物の掘り取り装置
(51)【国際特許分類】
A01D 17/00 20060101AFI20180706BHJP
A01D 33/10 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
A01D17/00
A01D33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-12811(P2017-12811)
(22)【出願日】2017年1月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】保土澤 定廣
【テーマコード(参考)】
2B072
【Fターム(参考)】
2B072AA10
2B072BA03
2B072BA28
2B072CA03
2B072CA23
2B072EA06
2B072EA07
2B072EA18
(57)【要約】
【課題】掘削刃によって掘り上げられたニンニク等の収穫物を、土を篩い落としながら搬送するコンベア部を有した地下茎作物の掘り取り装置において、収穫物の収納容器に収穫物が偏ることがなく収納される地下茎作物の堀り取り装置を提供する。
【解決手段】地下茎作物を掘り上げる掘削刃部2と、掘削刃部2後方に位置して掘り上げた地下茎作物を斜め上後方に搬送しながら土を振るい落とす搬送体を有するコンベア部と、コンベア部終端部下方に掘り上げた地下茎作物の貯留部7を有した地下茎作物の掘り取り装置において、コンベア部終端部には、落下した地下茎作物を受けて落下方向を変更させる案内板8が設けられ、案内板8は、左右水平方向の回動軸80を中心にコンベア部駆動部6と連動して前後に揺動駆動される地下茎作物の掘り取り装置による。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下茎作物の下方部を通過させて掘り上げる掘削刃部と、
掘削刃部後方に位置して掘り上げた地下茎作物を斜め上後方に搬送しながら土を振るい落とす搬送体を有するコンベア部と、該コンベア部終端部下方に掘り上げた地下茎作物を貯留させる貯留部を有したトラクタ等の走行車に装着されて使用される地下茎作物の掘り取り装置において、
前記コンベア部終端部には、
コンベア部から落下した地下茎作物を受けて落下方向を変更させる案内板が設けられ、該案内板は、進行方向と直交する水平方向の回動軸を中心に前後方向に回動自在であり、コンベア部駆動部と連動して前後に揺動駆動されることを特徴とした地下茎作物の掘り取り装置。
【請求項2】
前記案内板の揺動角度を変更可能に設けられていることを特徴とした請求項1に記載の地下茎作物の掘り取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下茎作物を掘り取る掘削刃を有し、この掘削刃によって掘り上げられたニンニク等の収穫物を、土を篩い落としながら搬送するコンベア部を有した地下茎作物の掘り取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の掘り取り装置の従来技術として例えば実開平5−68217号公報(従来技術1)の「掘り取り装置」や特開2006−288277号公報(従来技術2)の「収納物搬入装置、農産物収穫機」が開示されている。
【0003】
従来技術1には、「機枠と、掘削刃と、後方に傾斜した搬送コンベヤとからなる掘り取り装置において、搬送コンベヤの後端部に垂下した補助板と前部が解放した断面U字状の収納容器とからなるドロッパーを形成し、この収納容器を支軸によって吊持し、収納容器の前部が前記した補助板に常に当接するように構成したことを特徴とした掘り取り装置。」であり、収納容器に収穫物が一定量になったところで収納容器を後方へ傾斜させて収穫物を一気に放出させる掘り取り装置の開示がされている。
また、従来技術2には「収納容器内に収納物を搬入する収納物搬入装置であって、前記収納容器の投入口に終端位置が臨み、エンドレスの搬送体を備えたコンベヤを備え、前記搬送体を移動させる回転伝動要素の周速度に速度ムラを生じさせることを特徴とする収納物搬入装置。」であり、これによって、収納容器内に投入される収容物の投げ入れ速度にばらつきが生じ、収納容器内での偏った堆積を解消することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−68217号公報(従来技術1)
【特許文献2】特開2006−288277号公報(従来技術2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の掘り取り装置で掘り上げられた収穫物は、搬送コンベアで斜め上方に移送され、搬送コンベヤの後端部から放出され、下方部に設けた収納容器に収容される。しかし、放出されて落下する位置が同一なために、落下位置のところが盛り上げ状態に収容され、偏った状態となり、収納容器の容積を効率的に利用できなく、効率よい作業が行えない問題があった。従来技術1の掘り取り装置においては、同じ問題が発生する。
【0006】
従来技術2の場合、搬送するコンベヤの搬送速度にムラを生じさせて、落下方向を変更させている。しかし、掘削刃によって掘り上げられたニンニク等の収穫物を、土を篩い落としながら搬送するコンベア部を有した地下茎作物の掘り取り装置の場合、搬送速度にムラが生じると、土落し性能や搬送性能に影響が生じるため適正な一定の速度を確保する必要があり、このような構成とすることができないという問題がある。
【0007】
このため本発明の目的は、掘削刃によって掘り上げられたニンニク等の収穫物を、土を篩い落としながら搬送するコンベア部を有した地下茎作物の掘り取り装置において、収穫物の収納容器に収穫物が偏ることがなく収納される地下茎作物の掘り取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、地下茎作物の下方部を通過させて掘り上げる掘削刃部と、
掘削刃部後方に位置して掘り上げた地下茎作物を斜め上後方に搬送しながら土を振るい落とす搬送体を有するコンベア部と、該コンベア部終端部下方に掘り上げた地下茎作物を貯留させる貯留部を有したトラクタ等の走行車に装着されて使用される地下茎作物の掘り取り装置において、
前記コンベア部終端部には、
コンベア部から落下した地下茎作物を受けて落下方向を変更させる案内板が設けられ、該案内板は、進行方向と直交する水平方向の回動軸を中心に前後方向に回動自在であり、コンベア部駆動部と連動して前後に揺動駆動されることを特徴とした地下茎作物の掘り取り装置を提案する。
【0009】
また、前記案内板の揺動角度を変更可能に設けられている前記の地下茎作物の掘り取り装置を提案する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、コンベア部から落下した地下茎作物を受けて落下方向を変更させる案内板がコンベア部駆動部と連動して前後に揺動駆動されるため、貯留部に落下した収穫物が前後に均等に収納され、収納部の容積を効率よく使用できる。このため、収納部の入れ替えが効率よく行なえ、掘り取り作業効率が向上する効果がある。また、案内板の揺動角度を変更できる構成とすることで、作物の条件で変化する落下位置を多様に調整できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を実施した地下茎作物の掘り取り装置の側面図である。
【
図2】本発明を実施した地下茎作物の掘り取り装置の正面図である。
【
図3】本発明を実施した地下茎作物の掘り取り装置の後面図である。
【
図4】本発明を実施した地下茎作物の掘り取り装置のコンベア部駆動部を示した保護カバーを外した状態の側面図である。
【
図7】本発明の案内板部の一部断面した後面図である。
【
図8】本発明の案内板部の別実施例を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例をトラクタに装着して使用される地下茎作物の掘り取り装置の一例を
図1乃至
図8に基いて説明する。本説明においては、
図1に示す左側を進行方向前方側として説明する。
【0013】
この発明の実施形態である地下茎作物の掘り取り装置は、トラクタなどの走行装置に装着して進行しながらニンニク等の地下茎作物を掘り上げる。この発明の実施形態である地下茎作物の掘り取り装置は、地下茎作物Cが栽培されている畝の両側の2つの畝間の地面をそり状のシュー12によって接地させ高さを一定にして進行しつつ、走行方向と直角方向に設けられる掘削刃部2によって畝の土中に栽培されているニンニク等の地下茎作物Cの球根部を掘り起こす。そして、掘削刃部2に近接した後方に設けられた搬送体であるコンベア部3によって後方に搬送する。コンベア部3は、後方斜め上方に向け設けられていて、搬送途中の掘り上げられた地下茎作物Cに付着した土を払落しながら後方に搬送する。搬送された地下茎作物Cは、コンベア部3の後端から下方に落下し、下方に設けた貯留部7のバケット70内に貯留される。
【0014】
機体前方の中央部には、上方部にトップリンクピン11と下方左右にはロアリンピン10が設けられていて、トラクタの3点リンク機構部に連結するためのものである。トップリンクピン11は、トラクタの3点リンク機構部のトップリンクに、ロアリンクピン10はロアリンクに連結される。トラクタの3点リンク機構は、連結された掘り取り装置を昇降可能である。機体前方の中央部には、ギヤボックス5が設けられていて、ギヤボックス5からは前方に向け突設された入力軸4が備えられている。図示していないがトラクタPTO軸とユニバーサルジョイントにて入力軸4が連結され、ギヤボックス5にトラクタの動力が伝動される。
【0015】
機体前方下方端部には掘削刃部2の掘削刃23が設けられている。掘削刃23は、前方端縁に側面視鋭角の刃を設けた左右方向の平板状で、後方後ろ上がりに傾斜している。また、後端縁には、後方に延設された丸棒状の案内棒が左右方向に複数設けられ、地下茎作物Cを後方に誘導する。掘削刃23の左右端部は、前方に端面を向けた平板状の掘削刃側部アーム20が固着され保持されている。掘削刃側部アーム20は、掘削刃23から上方に立ち上げられ、上方端部はさらに左右水平方向に設けたパイプ状の掘削刃フレーム21に固着されている。掘削刃フレーム21は、掘削刃フレーム21の前方側に設けた左右水平方向の掘削刃フレーム揺動軸22を中心に下方端側、即ち、掘削刃23部が前後方向に揺動自在である。掘削刃フレーム21の中央部には、後方に向けて設けられたアームが設けられ、アーム端部と、ギヤボックス5前方部の入力軸4に設けたクランク部とロッドで回動自在に連結される。クランク部の偏心部により、掘削刃フレーム21を前後に揺動振動させ、掘削刃フレーム21に固定される掘削刃23も同時に前後に揺動振動させる。掘削刃23は進行方向と直行する方向に掛け渡され、地下茎作物Cの下方部を通過して根を切断するとともに、土壌を膨軟にして地下茎作物Cを浮き上がらせ、後方のコンベア部3に地下茎作物Cが走行と共に移動される。
【0016】
本例の搬送体であるコンベア部3は、星形のフィンガーロール30を左右水平に複数設けた搬送軸32を後方斜め上方に向け複数設け、それぞれコンベア部3の上面に載せられた地下茎作物Cが上方に移動する方向に回転させて構成されている。コンベア部3の上面に載せられた地下茎作物Cは、回転するフィンガーロール30によって跳ね上げられながら後方に移動し、地下茎作物Cに付着した土が払い落とされ後方に移動する。
【0017】
搬送軸32は、左右に立設させた側板31の下方側にそれぞれ左右端部を軸受によって回転自在に保持されていて、本例においては、側板31の左側外側に突設させた軸端部にそれぞれスプロケット60を固着させ、隣り合うスプロケット60間にそれぞれローラチェーン62を巻着させ、それぞれの搬送軸32は一体に回転するようになっている。入力軸4に入力された動力はギヤボックス5内のベベルギヤによって、ギヤボックス5の左右に固着して設けたパイプフレーム50の左側内を通る出力軸51に伝動され、出力軸51の左端部の側板31の外側に固着させた出力軸スプロケット52を回転させる。出力軸スプロケット52と前記搬送軸32の最前列のスプロケット60とローラチェーンを介して連動されていて、入力軸4が回転するとコンベア部3が回転駆動されるようにコンベア部駆動部6が構成されている。
【0018】
コンベア部3によって後方に搬送された地下茎作物Cは、コンベア部3の後端部から下方に落下して、下方部の貯留部7のバケット70に貯留される。バケット70がバケット70上方に設けた
図6に示す進行方向と直行する水平軸の回動支点軸71を中心に後方に回動可能で、回動することによりバケット70前方側から収容された地下茎作物Cをまとめて排出することができる。バケット70の回動は、バケット開放駆動部72によって引上げられ行われる。
【0019】
コンベア部3の後方終端部には、落下する地下茎作物Cを一旦受けて下方に落下させる案内板8が設けられている。案内板8は、コンベア部3の幅と同幅程度に設けた平板状で、前方端縁部をコンベア部3の後方終端部の搬送上面より下方位置に左右水平方向に設けた回動軸80によって保持され、後方側を回動自在に設けている。案内板8は、コンベア部駆動部6と連動して前後に揺動駆動される。
【0020】
本例の案内板8の左側端部には、案内板8を前後に揺動させる駆動部が設けられている。側板31には、コンベア部3の後端部に位置する搬送軸32に固着されたスプロケット60と揺動駆動ローラチェーン83が巻着され回転動力が伝達される揺動駆動スプロケット82がコンベア部3下方側に設けられる。揺動駆動スプロケット82には、回転軸から半径方向に偏心した位置に、回転軸と平行な偏心軸84が外方向に固着して設けられる。また、案内板8の左右端部からは、側方に突設させた回動軸80が設けられ、本体の側板31側に回動自在に保持される。そして、左側端部の回動軸80より回動端側に位置する左右方向の連結用の孔が設けられている。揺動駆動スプロケット82と案内板8は、前記揺動駆動スプロケット82の偏心軸84と案内板8の連結用の孔に係合させた揺動ロッド81によって連動されている。
【0021】
揺動ロッド81は、側面視平板状で、一端に偏心軸84に挿入される嵌合孔が設けられ、他端に案内板8の連結用の孔に挿入される左右方向に向けた連結軸85が固着されている。それぞれ挿入されて連結されていることによって、コンベア部3が回転駆動されて搬送軸32が回転すると、揺動駆動スプロケット82が回転し、揺動駆動スプロケット82に固着した偏心軸84が揺動駆動スプロケット82の回転軸の回りを回転する。そして、偏心軸84に連結された揺動駆動スプロケット82の回転軸と直交する方向の揺動ロッド81が往復運動して、他端に連結された案内板8を前後に揺動させる。
【0022】
案内板8を前後に揺動させることによって、コンベア部3の後端部から落下する地下茎作物Cを案内板8によって落下方向を前後方向に変更させる。つまり、一定の速度で前後に揺動する案内板8によって地下茎作物Cは貯留部7のバケット70に前後方向に満遍なく落下して偏ることがなく効率よく貯留される。
【0023】
図8に案内板8の揺動角度を調整可能に設けた別実施例を示す。案内板8の揺動ロッド81の連結軸85を挿入する連結用の孔86を、案内板8の回動軸80に対する回動半径が異なる位置に複数設け、揺動ロッド81を差し替えできるように設けている。つまり、回動軸80に対する回動半径が小さい位置に連結すると、案内板8の揺動角度が大きくなり、回動半径が大きい位置の連結用の孔86に連結すると、揺動角度が小さくなる。揺動角度を変更することによって、地下茎作物Cの種類や大きさによって異なる落下位置の調整が行えるため、偏りをより精度よく調整できる。
【0024】
また、揺動駆動スプロケット82と搬送軸32のスプロケットを交換可能として、歯数の変更を行うと、揺動速度の変更が行え、さらに偏りを調整できる。
【0025】
次に、この発明の実施形態である地下茎作物の掘り取り装置による掘り取り作業について説明する。この発明の実施形態である地下茎作物の掘り取り装置は、トラクタなどの走行装置に装着して走行しながらニンニク等の地下茎作物を掘り取りする。
【0026】
この発明の実施形態である地下茎作物の掘り取り装置を、地下茎作物Cが栽培されている畝の両側の2つの畝間にトラクタの走行輪とそり状のシュー12を位置させ走行しつつ、掘削刃部2の掘削刃23を畝の土中に栽培されているニンニク等の地下茎作物Cの球根部の下方を通過させる。掘削刃23は前後に揺動振動して、地下茎作物Cの下方部を通過して根を切断するとともに、土壌を膨軟にして地下茎作物Cを浮き上がらせ、後方のコンベア部3に地下茎作物Cが走行と共に移動される。
【0027】
コンベア部3によって搬送されてくる地下茎作物Cは、前方から後方に斜め上方に向け多数設けた搬送軸32の星形のフィンガーロール30によって跳ね上げられながら後方に移送され、付着した土が篩い落とされ、コンベア部3の後端部から自然落下して貯留部7に収納され収穫される。
【0028】
コンベア部3の後端部から落下する際に、案内板8が落下を一旦受け止め、前後に揺動して落下方向を前後に分散し、貯留部7のバケット70に偏りがなく地下茎作物Cを貯留させる。
【0029】
バケット70に貯留された地下茎作物Cが満杯になったら、バケット開放駆動部72を可動させ、バケット70上方に設けた進行方向と直行する水平軸の回動支点軸71を中心に後方に回動させ、バケット70前方側から収容された地下茎作物Cをまとめて排出する。
【0030】
バケット70内に偏りがないように貯留させることによって、排出回数を減らすことができるため、作業効率を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、掘り取られたニンニク等の地下茎作物の貯留部を備えた掘り取り装置に利用すると効率よい作業が行える。
【符号の説明】
【0032】
2 掘削刃部
20 掘削刃側部アーム
21 掘削刃フレーム
22 掘削刃フレーム揺動軸
23 掘削刃
3 コンベア部(搬送体)
30 フィンガーロール
31 側板
32 搬送軸
34 駆動軸
4 入力軸
5 ギヤボックス
50 パイプフレーム
51 出力軸
52 出力軸スプロケット
6 コンベア部駆動部
60 スプロケット
62 ローラチェーン
7 貯留部
70 バケット
71 回動支点軸
8 案内板
80 回動軸
81 揺動ロッド
82 揺動駆動スプロケット
83 揺動駆動ローラチェーン
84 偏心軸
85 連結軸
86 連結用の孔
C 地下茎作物