特開2018-118922(P2018-118922A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-118922害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、及び害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-118922(P2018-118922A)
(43)【公開日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、及び害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20180706BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20180706BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20180706BHJP
   A01N 47/16 20060101ALI20180706BHJP
   A01N 37/18 20060101ALI20180706BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20180706BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20180706BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20180706BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20180706BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20180706BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20180706BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180706BHJP
   A61Q 17/02 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
   A01N25/00 102
   A01P17/00
   A01N37/46
   A01N47/16 A
   A01N37/18 Z
   A01N31/06
   A01N25/02
   A01N37/10
   A61K8/19
   A61K8/49
   A61K8/42
   A61K8/34
   A61Q17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-11102(P2017-11102)
(22)【出願日】2017年1月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋子
(72)【発明者】
【氏名】六川 彩子
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
4C083
4H011
【Fターム(参考)】
4C083AA161
4C083AA162
4C083AB051
4C083AB052
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC372
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC20
4C083EE09
4H011AC06
4H011BA07
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB13
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】害虫忌避成分を含有する水性の人体用害虫忌避剤において、害虫忌避成分の皮膚への浸透を抑制し、害虫忌避成分の配合量を無闇に増やすことなく害虫忌避効果の持続性を向上させ得る、害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、及び害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法の提供。
【課題の解決手段】害虫忌避成分を含有する人体用害虫忌避剤に配合され、かつ、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/mの天然ミネラル水である、前記害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤。前記天然ミネラル水としては、脱塩された海洋深層水を含む水が好ましく、また、前記害虫忌避成分としては、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫忌避成分を含有する人体用害虫忌避剤に配合され、かつ、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/mの天然ミネラル水である、前記害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤。
【請求項2】
前記天然ミネラル水は、脱塩された海洋深層水を含む水である請求項1に記載の皮膚への浸透抑制剤。
【請求項3】
前記害虫忌避成分は、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピル、3−(N−n−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、ディート、及びp−メンタン−3,8−ジオールから選ばれた1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の皮膚への浸透抑制剤。
【請求項4】
前記害虫忌避成分は、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルである請求項3に記載の皮膚への浸透抑制剤。
【請求項5】
前記人体用害虫忌避剤は、更に、炭素数が2ないし6のアルコール系化合物及び/又はグリコール系化合物から選ばれた1種又は2種以上を含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の皮膚への浸透抑制剤。
【請求項6】
害虫忌避成分を含有する人体用害虫忌避剤に、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/mの天然ミネラル水を配合する、前記害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法。
【請求項7】
前記天然ミネラル水は、脱塩された海洋深層水を含む水である請求項6に記載の皮膚への浸透抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、ナンキンムシ等の害虫から人体を守るための人体用害虫忌避剤に関し、具体的には、この人体用害虫忌避剤に配合される害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、及び害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体用害虫忌避剤について、従来より、使用感の改善、刺激性の軽減を目的とした様々な特許が出願されている。人体用害虫忌避剤は基本的に腕、足、首筋等、人体の露出した肌、即ち、外的な刺激を受けやすい部分に塗布するものであり、近年では害虫忌避成分とともに、皮膚を保護する目的で化粧品原料に用いられている紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合し、害虫忌避と日焼け防止を目的とした特許文献1(特開平5−92915号公報)及び特許文献2(特開平8−183720号公報)が、また、保湿効果が期待できる成分、例えばアロエエキスやモモエキスを配合し、ディートの異臭の軽減を目的とした特許文献3(特開2003−160413号公報)などが出願されている。
【0003】
一方、組成物中に水を配合することによって、使用感の改善や刺激性の軽減を目指した水性の人体用害虫忌避剤もいくつか提案されている。例えば、害虫忌避成分、水溶性溶剤及び水を配合し、水溶性溶剤と水の配合比率を規定することにより、皮膚感触と臭気を改善した特許文献4(特開2003−192503号公報)や、害虫忌避成分、アルコール系化合物又はグリコール系化合物、界面活性剤及び水を配合し、害虫忌避成分の安定化と更に敏感な皮膚に対する乾燥及び刺激の軽減を目的とした特許文献5(特開平11−349409号公報)が挙げられる。更に、特許文献6(特開2005−132780号公報)は、配合する水として天然ミネラル水を選択し、刺激性が一層軽減された有用な人体用害虫忌避剤を開示している。
【0004】
ところで、皮膚に塗布された害虫忌避成分が害虫忌避効果を持続して発揮するためには、害虫忌避成分をできるだけ皮膚上に留まらせ皮膚下に浸透させないことも重要である。従来、害虫忌避成分の配合量を増やして害虫忌避効果の持続性を高める方策がしばしば採られてきたが、害虫忌避成分の配合量を無闇に増やしてよいと言うわけではない。
例えば、天然ミネラル水を配合した特許文献6の水性の人体用害虫忌避剤は、使用感の改善や刺激性の軽減の点で有用なものであるが、害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制や、害虫忌避効果の持続性に関しては何ら言及されておらず、更なる検討が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−92915号公報
【特許文献2】特開平8−183720号公報
【特許文献3】特開2003−160413号公報
【特許文献4】特開2003−192503号公報
【特許文献5】特開平11−349409号公報
【特許文献6】特開2005−132780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる現状に鑑みなされたもので、害虫忌避成分を含有する水性の人体用害虫忌避剤において、害虫忌避成分の皮膚への浸透を抑制し、害虫忌避成分の配合量を無闇に増やすことなく害虫忌避効果の持続性を向上させ得る、害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、及び害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
(1)害虫忌避成分を含有する人体用害虫忌避剤に配合され、かつ、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/mの天然ミネラル水である、前記害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤。
(2)前記天然ミネラル水は、脱塩された海洋深層水を含む水である(1)に記載の皮膚への浸透抑制剤。
(3)前記害虫忌避成分は、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピル、3−(N−n−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、ディート、及びp−メンタン−3,8−ジオールから選ばれた1種又は2種以上である(1)又は(2)に記載の皮膚への浸透抑制剤。
(4)前記害虫忌避成分は、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルである(3)に記載の皮膚への浸透抑制剤。
(5)前記人体用害虫忌避剤は、更に、炭素数が2ないし6のアルコール系化合物及び/又はグリコール系化合物から選ばれた1種又は2種以上を含有する(1)ないし(4)のいずれか一に記載の皮膚への浸透抑制剤。
(6)害虫忌避成分を含有する人体用害虫忌避剤に、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/mの天然ミネラル水を配合する、前記害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法。
(7)前記天然ミネラル水は、脱塩された海洋深層水を含む水である(6)に記載の皮膚への浸透抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤は、害虫忌避成分を含有する水性の人体用害虫忌避剤において、害虫忌避成分の皮膚への浸透を抑制し、害虫忌避成分の配合量を無闇に増やすことなく害虫忌避効果の持続性を向上させ得るので非常に有用なものである。そして、これを用いた害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法の実用性も極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる害虫忌避成分としては、害虫に対して忌避作用あるいは吸血阻害作用を有する合成あるいは天然の各種化合物が挙げられる。例えば、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピル[以降、イカリジンと称す]、3−(N−n−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル[以降、IR3535と称す]、ディート、p−メンタン−3,8−ジオール、ヘキシレングリコール、ユーカリプトール、α―ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、カランー3,4−ジオールなどを例示できる。更に天然物としては、桂皮、シトロネラ、レモングラス、クローバ、ベルガモット、月桂樹、ユーカリなどから採れる精油、抽出液などを例示でき、これらの1種または2種以上を選択して用いることができる。上記化合物及び天然物のなかでは、特に、イカリジン、IR3535、ディート、及びp−メンタン−3,8−ジオールが好ましく、なかんずくイカリジンが好ましい。
害虫忌避成分は各薬剤の害虫忌避効果等により異なるが、本発明の人体用害虫忌避剤全体量に対して1〜50質量%、好ましくは3〜30質量%配合される。
【0010】
本発明は、害虫忌避成分を含有する人体用害虫忌避剤に、前記害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤として、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/m、好ましくは、2.5mS/m〜15mS/mの天然ミネラル水を配合することを特徴とする。
天然ミネラル水としては、山麓の涌き水、地下深層水、海洋表層水、海洋深層水等が挙げられ、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン等の金属イオンを含むことから、その用途が各方面で注目されている。例えば、逆浸透膜法等により濾過、脱塩処理を行い硬度を100〜1000程度に調整したものは、人体に不足しがちなミネラル成分を補給する目的で飲料水として販売されている。
【0011】
このようなミネラル水を含む人体用害虫忌避剤を皮膚に直接塗布したときに、ミネラル成分による保湿感、さっぱり感を付与できることは知られていたが、ミネラル成分が害虫忌避成分の皮膚への浸透にどのように影響するかについてはこれまで全く言及されていなかった。これは、汗成分によって害虫忌避成分が皮膚から流失しやすくなることを考慮すると、ミネラル成分による害虫忌避成分の皮膚浸透抑制作用は期待できないと考えられていたためと推測される。
しかるに、本発明者らは、人体用害虫忌避剤におけるミネラル成分の作用について鋭意検討を重ねたところ、驚くべきことに、特定の電気伝導率を有する天然ミネラル水を配合することによって、この天然ミネラル水が害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤として機能することを知見した。そして、害虫忌避効果の持続性を向上させ得ることを検証し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
本発明は、配合される天然ミネラル水の電気伝導率を1.5mS/m〜30mS/m、好ましくは、2.5mS/m〜15mS/mの範囲に規定するが、この電気伝導率は、金属イオン濃度と関連するものの、通常よく用いられる硬度とは別異の指標である。
電気伝導率が1.5mS/m未満であると、害虫忌避成分の皮膚浸透抑制作用は期待できず、一方、30mS/mを超えると、相応の皮膚浸透抑制作用が得られないばかりか、人体用害虫忌避剤組成物の安定性に支障を来たす恐れがあるので好ましくない。
なお、本発明では、天然ミネラル水由来であれば、これを脱イオン水や精製水で希釈した水をも含めて「天然ミネラル水」と定義し、その配合量は人体用害虫忌避剤全体量に対して20〜60質量%が適当である。
上記の天然ミネラル水のうち、水深200m以上の無光層より採取された海洋深層水は、ミネラル成分のバランスが良く、清浄性、安定性が良好である。そして、この原水に脱塩行程を施し、必要ならばこれを脱イオン水や精製水で希釈し、その電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/mの範囲に調整されたものは本発明に特に適したものとなる。
【0013】
本発明の人体用害虫忌避剤には、水に不溶の害虫忌避成分を可溶化するために、通常、炭素数が2ないし6のアルコール系化合物及び/又はグリコール系化合物から選ばれた1種又は2種以上が配合される。
かかるアルコール系化合物やグリコール系化合物としては、炭素数が2ないし3の低級一価アルコールであるエタノール、イソプロパノールや、グリコール系化合物であるエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられ、これらを単独でまたは混合して使用することができる。なお、エタノールを用いる場合、肌への作用が緩和で、かつ食品用として一般的な醸造エタノールが好ましい。
本発明においては、アルコール系化合物やグリコール系化合物の配合量を、人体用害虫忌避剤全体量に対して30〜70質量%に設定すれば、製剤として良好な性状を保持することが可能となる。
【0014】
本発明では、本発明の趣旨に支障を来たさない限りにおいて、上記成分以外に、人体用害虫忌避剤組成物の安定性を確保するために界面活性剤を配合してもよい。このような界面活性剤としては、特にHLBが11〜16のノニオン系界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエーテル{HLB=12.4}、ポリオキシエチレン(20モル)オレイルエーテル{HLB=15.1}、ポリオキシエチレン(9モル)ラウリルエーテル{HLB=13.6}、ポリオキシエチレン(10モル)セチルエーテル{HLB=12.9}、ポリオキシエチレン(15モル)ステアリルエーテル{HLB=14.2}、ポリオキシエチレン(15モル)イソステアリルエーテル{HLB=14.2}等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレエート{HLB=15.7}、ポリオキシエチレン(10モル)ソルビタンモノラウレート{HLB=14.9}、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノステアレート{HLB=15.7}等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(14モル)モノオレエート{HLB=13.7}、ポリオキシエチレン(9モル)モノラウレート{HLB=13.3}、ポリオキシエチレン(14モル)ミリステート{HLB=14.6}等のポリオキシエチレンアルキルエステル類等が挙げられ、これらを単独でまたは混合して使用することができる。
界面活性剤は肌への刺激性を考えると極力低減するのが好ましいが、HLBが11〜16のノニオン系界面活性剤は少量の配合で人体用害虫忌避剤組成物の安定化に効果を有することが知られている。
また、分子量が200〜5000程度のポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールは、害虫忌避成分の皮膚への浸透を抑制し皮膚に対する刺激を軽減でき得るとの報告もあり、これらを少量添加してもよい。
【0015】
また、使用感(塗布面のさらさら感等)の改善のため、無水ケイ酸、タルク、カオリン等の無機粉末及び変性デンプン、シルク繊維粉末等の有機粉末を配合してもよい。更に、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、酢酸トコフェロール、カンフル等の消炎剤、パラアミノ安息香酸、アミルサリシネート、オクチルシンナメート、メトキシ桂皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤や紫外線散乱剤、あるいは硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛等の制汗剤、安定剤、香料等を人体用害虫忌避剤組成物の安定性に影響のない範囲で配合することも可能である。
【0016】
こうして調製された人体用害虫忌避剤は、水ベースで火気に対する安全性が高く、人体への刺激性をほとんど有さない。その使用形態については特に制限はないが、具体的な使用例としては、非エアゾール型スプレー剤やロールオンタイプの容器に充填する形態、不織布等のシート基材に含浸させる形態などの他、液化石油ガス、ジメチルエーテル、圧縮ガス(窒素ガスや圧縮空気等)等を噴射剤に用いてエアゾール剤とすることももちろん可能であり、適用範囲は極めて広い。
【0017】
本発明の害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤は、かかる人体用害虫忌避剤に配合されるが、害虫忌避成分の皮膚への浸透を抑制し、蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、ナンキンムシ等に対する害虫忌避効果の持続性を向上させ得るので、刺咬被害防除に非常に有用なものである。そして、これを用いた害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法の実用性も極めて高い。
【0018】
次に具体的な実施例ならびに試験例に基づき、本発明の害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、及び害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
害虫忌避成分としてイカリジン5.0gを醸造エタノール55.0gに均一に溶解させた後、脱塩処理した海洋深層水(電気伝導率:3.8mS/m)40.0gを加え、人体用害虫忌避剤を得た。
この人体用害虫忌避剤組成物は、5℃及び40℃の恒温槽に1ヶ月間保存しても均一澄明であった。次に、本人体用害虫忌避剤を蓄圧式のポンプ容器に充填して使用した。手の甲に約1mL塗布し塗り延ばした後、1分経過後の塗布面の状態を観察したところ、べたつきはなく、さっぱりとした感触であった。また、本人体用害虫忌避剤は害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤を含むため、塗布部の害虫忌避効果は約10時間まで持続し、その間、蚊などの害虫に悩まされることはなかった。
【実施例2】
【0020】
実施例1に準じて表1に示す各種人体用害虫忌避剤を調製し、下記に示す試験を行った。
(1)使用感
手の甲に約1mL塗布し塗り延ばした後、1分経過後の塗布面に指先で触れ、感触を評価した。表1にその結果を、〇(さっぱり感あり)、△(ややべたつきあり)、×(べたつく、肌がざらざらする)で示した。
(2)害虫忌避効果試験
試験者の手の腕に約3mL塗布し、ヤブカが多数生息する屋外の試験地に佇み、蚊が腕に止まるまでの時間を計った。試験は試験者を替えて4連行い、平均の害虫忌避効果持続時間を求めた。表1にその結果を、◎(9時間以上)、○(7〜9時間)、
△(6〜7時間)、×(6時間未満)で示した。
【0021】
【表1】
【0022】
試験の結果、本発明の害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、即ち、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/m、好ましくは2.5mS/m〜15mS/mの天然ミネラル水を配合した人体用害虫忌避剤は、手の甲に塗布して実用に供したところ、ベタツキが無くさっぱりとした使用感で、害虫忌避成分の皮膚への浸透が抑制され皮膚上に残留する割合が増えたことに起因して害虫忌避効果の持続性にも優れることが確認された。
なお、天然ミネラル水としては、脱塩された海洋深層水を含む水が好ましく、また、害虫忌避成分としては、天然ミネラル水との組合せを考慮すると、IR3535、ディートやp−メンタン−3,8−ジオールよりもイカリジンが本発明の趣旨により適合することも明らかとなった。
これに対し、比較例1ないし5(脱イオン水や、電気伝導率が1.5mS/m〜30mS/mの範囲から外れる水を含む害虫忌避剤)は、使用感や害虫忌避効果の持続性の点で幾分劣った。
更に、本発明品10と比較例6との対比から、脱イオン水を用いた場合でも、害虫忌避成分の配合量を増やし害虫忌避効果の持続性を高めることは可能であるが、使用感の低下に繋がる場合があり、必ずしも有効な方法とは言えないことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制剤、及び害虫忌避成分の皮膚への浸透抑制方法は、人体用以外の害虫忌避分野に適用できる可能性がある。