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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-119613(P2018-119613A)
(43)【公開日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20180706BHJP
   F16K 31/50 20060101ALI20180706BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
   F16K31/04 A
   F16K31/50 B
   F25B41/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-11529(P2017-11529)
(22)【出願日】2017年1月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】石黒 元康
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【テーマコード(参考)】
3H062
3H063
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB33
3H062EE06
3H062HH09
3H063AA01
3H063BB03
3H063BB45
3H063DB02
3H063GG14
(57)【要約】
【課題】高い作動性と耐久性を維持しながら作動音や接触音を抑制することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、前記ロータ、前記雄ネジ部材、および前記弁体を含み、前記ロータの回転に伴って駆動する回転駆動部と、前記雌ネジ部材を含み前記ロータの回転に伴って駆動することのない固定駆動部と、前記回転駆動部と前記固定駆動部の何れか一方に配置され、前記回転駆動部または前記固定駆動部と接触する接触部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記ロータ、前記雄ネジ部材、および前記弁体を含み、前記ロータの回転に伴って駆動する回転駆動部と、
前記雌ネジ部材を含み前記ロータの回転に伴って駆動することのない固定駆動部と、
前記回転駆動部と前記固定駆動部の何れか一方に配置され、前記回転駆動部または前記固定駆動部と接触する接触部と
を備えることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記接触部は、前記ロータの内周に配置され、
前記ロータの回転時に前記雌ネジ部材の外周と接触する摺動部材であることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項3】
前記接触部は、前記雌ネジ部材の外周に配置され、
前記ロータの回転時に前記ロータの内周と接触する摺動部材であることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項4】
前記雄ネジ部材に前記雌ネジ部材と緩衝する緩衝部を備え、
前記接触部は、前記緩衝部の外周に設けられ、前記ロータの回転時において、前記雌ネジ部材の内周と接触する摺動部分であることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項5】
前記接触部は、前記ロータの内周に配置され、
前記ロータの回転時に前記雌ネジ部材の外周と接触する弾性部材であることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項6】
前記回転駆動部は、前記雄ネジ部材の直線運動を前記弁体に伝達する筒状の弁ガイドを含み、
前記接触部は、前記雌ネジ部材の外周に配置され、
前記ロータの回転時に前記弁ガイドの外周と接触する弾性部材であることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項7】
前記雌ネジ部材は、樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項8】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1〜7の何れか一項に記載の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パッケージエアコン、ルームエアコン、冷凍機などに用いられる電動弁が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この電動弁100においては、図6に示すように、ステッピングモータが駆動してロータ103が回転すると、雌ネジ131aと雄ネジ121aのネジ送り作用により、弁体114が中心軸L方向に移動する。これにより、弁ポート121を開閉する調整がなされ、管継手111から流入して管継手112から流出する冷媒の流量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2015−45411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の電動弁100において、雄ネジ121a、雌ネジ131aの山径、谷径、有効径などのネジ寸法は、使用環境の温度変化によって寸法変化を生じるおそれがある。このため、電動弁100の作動性を確保するためには、寸法変化を考慮し、図7に示すように、雄ネジ121aと雌ネジ131aとの間にクリアランス150(ネジ間隙間)を設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、ネジ間隙間150を大きくすると、電動弁100の作動時に弁軸141(雌ネジ部材)が上下左右方向に動くため、作動時の振動による作動音(以下、作動音という。)が発生しやすくなるという問題があった。
【0006】
この作動音が発生しやすくなるという問題の解決策としては、バネ等で弁軸141に軸方向の負荷を加えて振動を抑制する方法が考えられる。しかしこの場合、電動弁100の作動時に軸方向の負荷や、弁体114と弁ポート121との間に形成されたクリアランスを通過する流体の圧力差による負荷がネジに付与されるため、電動弁100の耐久性が損なわれるおそれが生じる。
【0007】
また、上述の電動弁100において、ロータ103を回転させるトルクは、コイルのステータとロータ103との間の間隔が狭いほど大きくなるため、コイルのステータとロータ103との間の間隔は狭いことが望ましい。しかし、ネジ間の隙間等の影響により、ロータ103の回転軸に芯ズレが発生した場合、ケース160の内周とロータ103が接触して接触音が発生するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、高い作動性と耐久性を維持しながら作動音や接触音を抑制することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動弁は、
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記ロータ、前記雄ネジ部材、および前記弁体を含み、前記ロータの回転に伴って駆動する回転駆動部と、
前記雌ネジ部材を含み前記ロータの回転に伴って駆動することのない固定駆動部と、
前記回転駆動部と前記固定駆動部の何れか一方に配置され、前記回転駆動部または前記固定駆動部と接触する接触部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
このように、回転駆動部と固定駆動部との間に接触部を介在させることにより、雄ネジ、雌ネジ間の隙間を原因とする振動が吸収されるため、ロータの回転時に雄ネジ部材が上下左右方向に動いて作動音が発生することを防止することや、ロータの回転時にケースの内周とロータが接触して接触音が発生することも防止することができる。また、雄ネジ、雌ネジ間に軸方向の圧力を掛けることもないため、電動弁の耐久性を損なうこともない。したがって、高い作動性と耐久性を維持しながら作動音や接触音を抑制することができる電動弁を提供することができる。
【0011】
また、本発明の電動弁は、
前記接触部が、前記ロータの内周に配置され、
前記ロータの回転時に前記雌ネジ部材の外周と接触する摺動部材であることを特徴とする。
【0012】
この場合、ロータの回転時に摺動部材が雌ネジ部材の外周を摺動することにより、ロータの回転軸に芯ズレが発生することもないため、ケースの内周とロータが接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0013】
また、本発明の電動弁は、
前記接触部が、前記雌ネジ部材の外周に配置され、
前記ロータの回転時に前記ロータの内周と接触する摺動部材であることを特徴とする。
【0014】
この場合、ロータの回転時に摺動部材がロータの内周を摺動することにより、ロータの回転軸に芯ズレが発生することもないため、ケースの内周とロータが接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0015】
また、本発明の電動弁は、
前記雄ネジ部材に前記雌ネジ部材と緩衝する緩衝部を備え、
前記接触部が、前記緩衝部の外周に設けられ、前記ロータの回転時において、前記雌ネジ部材の内周と接触する摺動部分であることを特徴とする。
【0016】
このように、緩衝部の外周に摺動部分を設け、ロータの回転時に摺動部分を雌ネジ部材の内周と摺動させることにより、雄ネジ部材(回転駆動部)がぐらつくことを抑制し、雄ネジ部材が上下左右方向に動いて作動音が発生することやケースの内周とロータが接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0017】
また、本発明の電動弁は、
前記接触部が、前記ロータの内周に配置され、
前記ロータの回転時に前記雌ネジ部材の外周と接触する弾性部材であることを特徴とする。
【0018】
このように、ロータの内周に弾性部材を配置することにより、雄ネジ、雌ネジ間の隙間を原因とするロータの回転時の振動が弾性部材の弾性力によって吸収されるため、雄ネジ部材が上下左右方向に動いて作動音が発生することやケースの内周とロータが接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0019】
また、本発明の電動弁は、
前記回転駆動部が、前記雄ネジ部材の直線運動を前記弁体に伝達する筒状の弁ガイドを含み、
前記接触部は、前記雌ネジ部材の外周に配置され、
前記ロータの回転時に前記弁ガイドの外周と接触する弾性部材であることを特徴とする。
【0020】
このように、弁軸ホルダの下方に弾性部材を配置することにより、雄ネジ、雌ネジ間の隙間を原因とするロータの回転時の振動が弾性部材の弾性力によって吸収されるため、雄ネジ部材が上下左右方向に動いて作動音が発生することやケースの内周とロータが接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0021】
また、本発明の電動弁は、
前記雌ネジ部材が、樹脂で形成されていることを特徴とする。
これにより、ネジの耐久性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等を含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る発明によれば、高い作動性と耐久性を維持しながら作動音や接触音を抑制することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図2】第1の実施の形態に係る電動弁に取付けられた摺動部材を説明する断面図である。
図3】第2の実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図4】第3の実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図5】第4の実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図6】従来の電動弁の断面図である。
図7】従来の電動弁のネジ間隙間を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、第1の実施の形態に係る電動弁について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る電動弁2を示した断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。
【0026】
この電動弁2では、非磁性体の金属により筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
【0027】
ここで、弁本体30は、ステンレス等の金属から成り、内部に弁室11を有している。また、弁本体30には、弁室11に直接連通するステンレス製や銅製の第1の管継手12が固定装着されている。さらに、弁本体30の下方内側には、断面円形の弁ポート16aが形成された弁座部材16が組み込まれている。弁座部材16には、弁ポート16aを介して弁室11に連通するステンレス製や銅製の第2の管継手15が固定装着されている。
【0028】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。なお、ロータ4は、磁性粉を含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料やフェライト磁石等の磁性を有する素材で形成されている。ブッシュ部材33と弁軸41は、共にステンレス等の金属で形成されており、ブッシュ部材33で結合された弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。
【0029】
本実施の形態の電動弁2において、ロータ4、ブッシュ部材33、弁軸41、弁体17、後述する弁ガイド18等を含む右上がりの斜線でハッチングされた部分は、ロータ4の回転に伴って駆動する回転駆動部Xを構成している。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。
【0030】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
弁軸41のブッシュ部材33より下方には、後述するように弁軸41との間でネジ結合Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0031】
弁軸ホルダ6は、ロータ4の回転に伴って駆動することのない固定駆動部Yを構成する部品である。弁軸ホルダ6は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料で形成されており、摩擦係数を低減させるため添加剤が含有されている。添加材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂やカーボンファイバー等が用いられる。
【0032】
この弁軸ホルダ6は、上部側の第1筒状部6aと下部側の第2筒状部6bと弁本体30の内周部側に収容される嵌合部6cとリング状のフランジ部6fとからなる。そして、弁軸ホルダ6のフランジ部6fは、弁本体30の上端に溶接などで固定されている。また、弁軸ホルダ6の内部には、後述する弁ガイド18を収容する収容室6hが形成されている。
【0033】
また、この弁軸ホルダ6の第1筒状部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。このため、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能している。そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の第1筒状部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ結合Aが構成されている。
【0034】
さらに、弁軸ホルダ6の第2筒状部6bの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、第2筒状部6b内の弁軸ホルダ室83と、ロータ収容室67(第2の背圧室)との間が連通している。このように均圧孔51を設けることにより、ケース60のロータ4を収容する空間と、弁軸ホルダ6内の空間とを連通することにより、弁軸ホルダ6の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0035】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の収容室6hに対して摺動可能に配置されている。この弁ガイド18は天井部21側がプレス成形により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0036】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0037】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性が得られる。
【0038】
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間には、中央部には貫通孔が形成されたワッシャ70が設置されている。ワッシャ70は、高滑性表面の金属製ワッシャ、フッ素樹脂等の高滑性樹脂ワッシャあるいは高滑性樹脂コーティングの金属製ワッシャ、高滑性樹脂を含有する各種樹脂ワッシャなどであることが好ましい。
さらに、弁ガイド18内には、圧縮された弁バネ27とバネ受け35とが収容されている。
【0039】
次に、第1の実施の形態における電動弁2の要部について説明する。図1に示すように、回転駆動部Xの一部を構成するロータ4の内周の下方には、摺動部材91(接触部)が取付けられている。この摺動部材91は、ロータ4の回転時に固定駆動部Yを構成する弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)の第2筒状部6bの外周と接触する。また、摺動部材91は、弁軸ホルダ6と同様に、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料で形成されており、摩擦係数を低減させるため添加剤が含有されている。添加材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂やカーボンファイバー等が用いられる。また、弁軸ホルダ6と接触する側の面が低摩擦となるように構成されている。
【0040】
なお、摺動部材91は、図2(a)に示すように、ロータ4の内周を一周する環状の部材であってもよいが、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、図2(b)に示すように、ロータ4の内周に一対の円弧状の摺動部材91が取付けられていてもよい。また、図2(c)に示すように、ロータ4の内周に複数の摺動部材91を個々設けるようにしてもよい。
【0041】
この第1の実施の形態における電動弁2によれば、雄ネジ41a、雌ネジ6d間の隙間を原因とするロータ4の回転時の振動が摺動部材91によって吸収されるため、弁軸41が上下左右方向に動いて作動音が発生することを防止することができる。
【0042】
また、ロータ4の回転時に摺動部材91が弁軸ホルダ6の外周を摺動することにより、ロータ4の回転軸に芯ズレが発生することもないため、ケース60の内周とロータ4が接触して接触音が発生することも防止することができる。さらに、雄ネジ41a、雌ネジ6d間に軸方向の圧力を掛けることもないため、電動弁2の耐久性を損なうこともない。
したがって、高い作動性と耐久性を維持しながら作動音や接触音を抑制することができる電動弁2を提供することができる。
【0043】
なお、第1の実施の形態の電動弁2において、摺動部材91が弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)の第2筒状部6bの外周に取付けられていてもよい。この場合、ロータ4の回転時に摺動部材91がロータ4の内周と摺動し、摺動部材91をロータ4に取付けた場合と同様の効果を得ることができる。
【0044】
次に、第2の実施の形態に係る電動弁について、第1の実施の形態と重複する部分の説明を適宜省略して説明する。なお、第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態に係る電動弁2の構成と同一の構成には、第1の実施の形態の説明で用いたのと同一の符号を用いて説明を行なう。
【0045】
図3は、第2の実施の形態に係る電動弁102を示す図である。図3に示すように、弁軸41の雄ネジ41aと鍔部41bとの間に、雄ネジ41aが形成された部分よりも径を太くし、弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)と緩衝する緩衝部41jが備えられている。この緩衝部41jは、弁軸41と同様にステンレス等の金属で形成され、緩衝部41jの外周には、ロータ4の回転時に弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)の第2筒状部6bと接触する摺動部分93(接触部)が設けられている。なお、摺動部分93の外周面は、低摩擦となるように表面処理を施してもよい。
【0046】
この第2の実施の形態における電動弁2によれば、弁軸41に設けられた緩衝部41jの外周に摺動部分93を設け、ロータ4の回転時に摺動部分93を固定駆動部Yを構成する弁軸ホルダ6の内周面と摺動させることにより、回転駆動部Xがぐらつくことを抑制し、弁軸41が上下左右方向に動いて作動音が発生することやケース60の内周とロータ4が接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0047】
また、摺動部分93を、上述のような摩擦係数を低減させた樹脂材料から成る弁軸ホルダ6の内周面と摺動させることができるため、電動弁102の作動性を低下させないようにすることができる。
【0048】
次に、第3の実施の形態に係る電動弁について、第1の実施の形態と重複する部分の説明を適宜省略して説明する。なお、第3の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態に係る電動弁2の構成と同一の構成には、第1の実施の形態の説明で用いたのと同一の符号を用いて説明を行なう。
【0049】
図4は、第3の実施の形態に係る電動弁104を示す図である。図4に示すように、回転駆動部Xの一部を構成するロータ4の内周の下方には、ロータ4の内周に沿って下方に延び、弁軸ホルダ6側に屈曲して上方に立ち上がる断面視略U字形状の弾性部材95(接触部)が取付けられている。
【0050】
この弾性部材95は、例えばステンレス等の金属で形成され、弾性によってロータ4の径方向に伸縮可能なバネ部分95aが、ロータ4の回転時に固定駆動部Yを構成する弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)の第2筒状部6bと接触する。
【0051】
なお、電動弁104においては、弾性部材95によって弁軸ホルダ6に加えられる負荷が弁体17と弁ポート16aとの間に形成されたクリアランス22を通過する流体の圧力差による負荷よりも小さくなるように構成されている。
【0052】
この第3の実施の形態における電動弁104によれば、ロータ4の内周に弾性部材95を配置することにより、雄ネジ41a、雌ネジ6d間の隙間を原因とするロータ4の回転時の振動が弾性部材95の弾性力によって吸収されるため、弁軸41が上下左右方向に動いて作動音が発生することやケース60の内周とロータ4が接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0053】
次に、第4の実施の形態に係る電動弁について、第3の実施の形態と重複する部分の説明を適宜省略して説明する。なお、第4の実施の形態の説明においては、第3の実施の形態に係る電動弁2の構成と同一の構成には、第3の実施の形態の説明で用いたのと同一の符号を用いて説明を行なう。
【0054】
図5は、第4の実施の形態に係る電動弁106を示す図である。図5に示すように、固定駆動部Yを構成する弁軸ホルダ6の嵌合部6cの外周には、嵌合部6cの外周に沿って下方に延び、バネ受け35側に屈曲して上方に立ち上がる断面視略L字形状の弾性部材97(接触部)が取付けられている。
【0055】
この弾性部材97は、例えばステンレス等の金属で形成され、弾性によって電動弁106の径方向に伸縮可能なバネ部分97aが、ロータ4の回転時に回転駆動部Xの一部を構成する弁ガイド18と接触する。
【0056】
なお、電動弁106においては、弾性部材97によって弁軸ホルダ6に加えられる負荷が弁体17と弁ポート16aとの間に形成されたクリアランス22を通過する流体の圧力差による負荷よりも小さくなるように構成されている。
【0057】
この第4の実施の形態における電動弁106によれば、弁軸ホルダ6の下方に弾性部材97を配置することにより、雄ネジ41a、雌ネジ6d間の隙間を原因とするロータ4の回転時の振動が弾性部材97の弾性力によって吸収されるため、弁軸41が上下左右方向に動いて作動音が発生することやケース60の内周とロータ4が接触して接触音が発生することを防止することができる。
【0058】
なお、上述の第1の実施の形態においては、摺動部材91がロータ4の内周に取付けられている場合を例に説明したが、摺動部材91は、ロータ4の内周下方において、ロータ4と一体的に成形されていてもよい。同様に、摺動部材91は、弁軸ホルダ2の外周下方において、弁軸ホルダ2と一体的に成形されていてもよい。
【0059】
また、上述の第1の実施の形態においては、摺動部材91が低摩擦係数となるような添加剤を添加した樹脂材料で形成されている場合を例に説明したが、このような添加剤を含有させず、低摩擦係数となるように表面処理を施してもよい。この場合、摺動部材91の材質は樹脂材料に限らず金属を用いてもよい。
【0060】
また、上述の第2の実施の形態においては、金属で形成された摺動部分93が低摩擦係数となるように表面処理を施す場合を例に説明したが、表面処理によらずに低摩擦係数としてもよい。例えば、摺動部分93を添加剤を添加した樹脂材料で形成し、摺動部分93の外周面が低摩擦係数となるようにしてもよい。
【0061】
また、上述の第3、4の実施の形態において、弾性部材95、97は、図2(a)に示すように、ロータ4の内周を一周する環状の部材であってもよいが、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、図2(b)に示すように、ロータ4の内周に一対の円弧状の弾性部材95、97が取付けられていてもよい。また、図2(c)に示すように、ロータ4の内周に複数の弾性部材95、97を個々設けるようにしてもよい。
【0062】
また、弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)は、上述したように、摩擦係数が低くなるように添加剤を含有させたポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂で形成されているため、摩擦係数が低く耐久性に優れている。一方、一般に射出成形により成形される樹脂製の部品は、射出成形によるヒケや反り等の寸法変形や、線膨張、膨潤等の樹脂成形特有の寸法変化を考慮すると、精密な成形は困難である場合が多い。
【0063】
このため、樹脂製の弁軸ホルダ6を採用した場合には、雄ネジ41aと雌ネジ6dの噛み合いに生じるクリアランスが大きくなる傾向がある。このクリアランスが大きくなると、ロータ4の回転時に弁軸ホルダ6が上下左右方向に動いて作動音が発生したり、ケース60の内周とロータ4が接触することによる接触音が発生しやすくなる。
【0064】
しかしながら、上述の各実施の形態で紹介したように、回転駆動部と固定駆動部との間に接触部を介在させることにより、雄ネジ41a、雌ネジ6d間の隙間を原因とする振動が吸収される。このため、樹脂製の弁軸ホルダ6を採用した場合であっても、ロータ4の回転時において作動音や接触音が発生することを的確に防止することができる。
【0065】
また、上述の各実施の形態の電動弁は、たとえば、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等から成る冷凍サイクルシステムにおいて、凝縮器と蒸発器との間に設けられる膨張弁として用いられる。
【符号の説明】
【0066】
2、102、104、106 電動弁
4 ロータ
6 弁軸ホルダ
6c 嵌合部
6d 雌ネジ
16a 弁ポート
17 弁体
18 弁ガイド
22 クリアランス
33 ブッシュ部材
41 弁軸
41a 雄ネジ
41b 鍔部
41j 緩衝部
60 ケース
91 摺動部材(接触部)
93 摺動部分(接触部)
95 弾性部材(接触部)
95a バネ部分
97 弾性部材(接触部)
97a バネ部分
X 回転駆動部
Y 固定駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7