特開2018-119855(P2018-119855A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナガセインテグレックスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-119855(P2018-119855A)
(43)【公開日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】起立面測定装置及び起立面測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/28 20060101AFI20180706BHJP
   G01C 9/34 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
   G01C9/28
   G01C9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-11303(P2017-11303)
(22)【出願日】2017年1月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】郷 泰幸
(57)【要約】
【課題】起立面の傾斜角度を起立状態で測定できる起立面測定装置を提供すること。
【解決手段】基台12上にバネ70を介して弾性的な浮動状態でトレープレート72が支持される。このトレープレート72に水準器91が搭載される。トレープレート72には起立する被測定面に当接可能にした測定面951とその測定面951に対して異なる角度の規制面952とを側面に有する当接ブロック95が支持される。測定面951が起立面に当てられて測定動作が行われ、規制面952が起立面と隣接する他の起立面に当てられて、角度規制される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上にバネ手段を介して弾性的な浮動状態で支持され、水準器を搭載可能にした水準器搭載部と、
その水準器搭載部に固定され、起立する被測定面に当接可能にした測定面を側面に有する当接ブロックと
を備えた起立面測定装置。
【請求項2】
前記当接ブロックは、前記測定面と隣接してその測定面と異なる角度を向く規制面を有する請求項1に記載の起立面測定装置。
【請求項3】
基台と、その基台上にスライド機構を介して同一面上において異なる2方向及びその2方向の合成方向に移動可能にした支持部材と、その支持部材を原位置において弾性的に保持する保持手段とを備え、前記水準器搭載部を前記支持部材上に弾性的な浮動状態で設けた請求項1または2に記載の起立面測定装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前記支持部材を異なる2方向に付勢する付勢手段と、前記水準器搭載部を前記支持部材に対して傾動可能に連結する連結手段とを備えた請求項3に記載の起立面測定装置。
【請求項5】
前記基台には支点ピンを設けるとともに、前記当接ブロックには、前記支持部材の移動によって前記支点ピンの先端に係合する支点部を設け、前記支点ピンと前記支点部との係合部を中心に前記当接ブロックが傾動されるようにした請求項4に記載の起立面測定装置。
【請求項6】
前記保持手段は、当接ブロックが被測定面に当接していないときに、前記支点ピンと当接ブロックとを離間した状態に保持する請求項5に記載の起立面測定装置。
【請求項7】
前記支点ピンと基台の間に、支点ピンに作用する力を緩衝するための緩衝手段を設けた請求項5または6に記載の起立面測定装置。
【請求項8】
前記水準器搭載部は2台の水準器を異なる方向で搭載できるようにした請求項1または2に記載の起立面測定装置。
【請求項9】
前記基台には、工作機械の主軸に接続される接続部を設けた請求項3〜8のうちのいずれか一項に記載の起立面測定装置。
【請求項10】
請求項2〜9のうちのいずれか一項に記載の起立面測定装置を用い、異なる角度の2箇所の起立面に対して、前記当接ブロックの規制部及び測定部をそれぞれ当接させて、一方の起立面と規制部との当接により、当接ブロックを位置規制した状態で、前記測定部を他方の起立面に沿わせて、その他方の起立面の傾斜角度を測定する起立面測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のコラムのガイド面などの起立面の傾斜角度を倒伏させることなく測定できるようにした起立面測定装置及び起立面測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、特許文献1や特許文献2に示されているように、工作機械のコラムのガイド面やテーブルなどの被測定面の傾斜角度の測定は、被測定面を倒伏させた状態で行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−333712号公報
【特許文献2】特開2016−183887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、起立面を検出する場合は、その起立面を有する部材を倒伏させたり、測定後に起立状態に戻したりする手間がかかる。加えて、前記の起立面を有する部材を倒伏させることにより、重量バランスが変化したり、自重によって変形したりするおそれがあり、このような状態における測定は正確な測定値を得ることができないおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、起立面を起立状態で測定できる起立面測定装置及び起立面測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の起立面測定装置においては、基台上にバネ手段を介して弾性的な浮動状態で支持され、水準器を搭載可能にした水準器搭載部と、その水準器搭載部に固定され、起立する被測定面に当接可能にした測定面を側面に有する当接ブロックとを設けたことを特徴とする。
【0007】
以上の構成においては、起立した被測定面の傾斜角度が当接ブロックの測定面によって測定される。
本発明の起立面測定方法においては、前記当接ブロックに前記測定面に加えて規制面を設けた起立面測定装置を用い、異なる角度の2箇所の起立面に対して、前記当接ブロックの規制部及び測定部をそれぞれ当接させて、一方の起立面と規制部との当接により、当接ブロックを位置規制した状態で、前記測定部を他方の起立面に沿わせて、その他方の起立面の傾斜角度を測定することを特徴とする。
【0008】
以上の方法によれば、一方の起立面と規制部との当接により、当接ブロックを位置規制した状態で、前記測定部を他方の起立面に沿わせて、その他方の起立面の傾斜角度を測定することにより、被測定面を起立状態で測定できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、起立面を起立状態で測定できて、高精度な測定を行なうことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の測定装置の斜視図。
図2】水準器及びテーパシャンクを省略した状態における測定装置の斜視図。
図3】第1実施形態の測定装置の分解側面図。
図4】第1実施形態の測定装置の下部側部分の分解斜視図。
図5】第1実施形態の測定装置の下部側部分の斜視図。
図6図5の斜視図に吊下支持プレートを加えた状態の斜視図。
図7】水準器を浮動状態に吊下する構成を示す斜視図。
図8】第1実施形態の測定装置の下部側部分の側断面図。
図9】ピボット及びその関連構成を示す側断面図。
図10】当接ブロックと支点ピンとを示す測定装置の平断面図。
図11】被測定部を有するコラムの一部破断正面図。
図12】測定されるガイド部を有するコラムの平断面図。
図13】(a)〜(d)は、ガイド部のガイド面の測定状態を示す模式図。
図14】(a),(b)は、実施形態の効果を説明するための模式図。
図15】第2実施形態の測定装置を示す分解斜視図。
図16】第2実施形態の測定装置を示す平面図。
図17】(a)〜(d)は、第2実施形態においてガイド部のガイド面の測定状態を示す模式図。
図18】第3実施形態の測定装置を示す側断面図。
図19】第3実施形態の測定装置を示す平断面図。
図20】第4実施形態の測定装置を示す側断面図。
図21】第4実施形態の測定装置を示す平断面図。
図22】第5実施形態の測定装置を示す側面図。
図23】第5実施形態の測定装置を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図14の図面に基づいて説明する。
図1図10に示す本実施形態の起立面測定装置(以下、単に測定装置という)10は、不使用時にはマシニングセンタのステーション(図示しない)上において待機状態に置かれる。そして、使用時には、マシニングセンタの主軸(図示しない)によって把持されて所要位置に移動される。そして、測定装置10は、その上部に搭載した水準器91により、後述する工作機械,例えば図11及び図12に示す研削盤のコラム110の両側のガイド部111,112の第1ガイド面113及び第2ガイド面114などの被測定面としての起立面の上下方向における傾斜角度を測定する。
【0012】
図1及び図2に示すように、実施形態の測定装置10において、前記ステーションに対する設置用の脚11を有する基台12にはブラケット13を介して接続部としてのテーパシャンク14が回転可能に支持され、測定装置10は、このテーパシャンク14において前記工作機械の主軸に把持されて、所要位置に移動される。なお、前記主軸が回転された場合、テーパシャンク14のみが空転されて、測定装置10の他の部分は回転されない。また、図1以外の図面においては、テーパシャンク14の図示を省略している。
【0013】
図2図4に示すように、前記基台12の上面には4本の支柱15が立設固定されている。その支柱15の上端には前記起立面を測定するための測定機構16が支持されている。以下に、測定機構16及びその関連構成を詳細に説明する。
【0014】
すなわち、図3図5及び図8に示すように、前記支柱15の上端のネジ孔21には段付きボルト22が螺合されており、この段付きボルト22にはウレタンゴムなどのゴム状弾性材よりなる緩衝手段としての弾性受承部材23が外嵌めされ、この弾性受承部材23はカラー24及び座金25を介して支柱15の上端面に支持されている。四角枠状の支持フレーム26には、その四隅上面に平面ほぼ三角形状の搭載部材27が固定され、その搭載部材27の下向きの装着凹部28が前記弾性受承部材23に上部側から嵌合されるとともに、装着凹部28の上端のフランジ部29が弾性受承部材23の上面に載置されている。従って、支持フレーム26は搭載部材27を介して弾性受承部材23上に搭載支持され、この支持フレーム26は弾性受承部材23の弾性変形の範囲内において一平面(例えば、水平面)内においてX軸方向,Y軸方向及び両軸方向の合成方向に移動可能である。
【0015】
図1図6及び図9に示すように、支持フレーム26には一対の吊下板31を介して前記4本の支柱15で包囲される領域に位置する受け台32が吊下状態で固定されている。図8に示すように、受け台32の上面には第1ガイド部材33が固定され、その両側が一方向(実施形態ではX軸方向とする)に延びる下部ガイド面331になっている。第1ガイド部材33には下部ガイド面331に沿ってX軸方向に移動可能な第1スライダ34が支持され、その上面には下部介装プレート35を介して第2ガイド部材36が搭載されている。第2ガイド部材36には第1ガイド部材33の下部ガイド面331と直角をなす他方向(実施形態ではY軸方向とする)に延びる上部ガイド面361が形成されている。第2ガイド部材36の上面には第2スライダ37が上部ガイド面361に沿ってY軸方向に移動可能に支持されている。
【0016】
図8及び図9に示すように、前記第2スライダ37の上面には上部介装プレート38を介して支持部材としてのピボット支持プレート39が固定され、このピボット支持プレート39には支持孔40が形成されている。従って、ピボット支持プレート39は、第1,第2ガイド部材33,36のガイド作用によって、前記支持フレーム26の移動方向と平行な一平面内においてX軸方向,Y軸方向及びその合成方向に移動可能である。前記受け台32の上側の部材,すなわち、第1ガイド部材33,第1スライダ34,下部介装プレート35,第2ガイド部材36,第2スライダ37,上部介装プレート38及びピボット支持プレート39によりスライド機構としてのガイドステージ機構85が形成されている。
【0017】
図4図5及び図10に示すように、前記支持フレーム26の隣接する2辺の各下面にはそれぞれ固定部材41及び可動部材42が対向して設けられている。両固定部材41は支持フレーム26に固定されるとともに、両可動部材42は、それぞれ保持手段及び付勢手段としてのバネ43により対向する固定部材41に向かう突出方向であるX軸方向,Y軸方向に移動付勢されている。そして、両部材41,42間に所定幅の間隔44が形成された状態において、ストップ部47により可動部材42の突出移動が阻止される。
【0018】
前記上部介装プレート38には90度の角度間隔を隔てて一対のアーム45が固定され、その先端にはそれぞれローラ46が支持されている。この両ローラ46は、前記両間隔44内にそれぞれ位置している。従って、前記バネ43及び弾性受承部材23の弾性力の範囲内において測定機構16におけるガイドステージ機構85の上部介装プレート38及びピボット支持プレート39の移動が拘束されるとともに、ピボット支持プレート39には前記バネ43によりX軸方向及びY軸方向への移動に抗する弾性力が付与される。このため、バネ43は前記ピボット支持プレート39を原位置において弾性的に保持する。
【0019】
図5図8図9及び図10に示すように、前記支持フレーム26の隣接する2辺の各上面には支持ブロック51が固定され、その支持ブロック51のネジ孔52には支点ピン53がそのネジ部54において螺合されている。この支点ピン53はそれぞれ同一面においてそれぞれひとつのX軸方向の軸線及びY軸方向の軸線上に位置して、外側方に向かって延び、その先端に球面部55が形成されている。従って、球面部55に対して大きな力が作用した場合は、前記弾性受承部材23の弾性変形により支点ピン53が支持フレーム26とともに移動される。
【0020】
図4図6図7及び図9に示すように、前記上部介装プレート38の上面側には、カラー61により上下間隔を保持した状態でボルト62により吊下支持プレート63が固定されている。この吊下支持プレート63には4本の段付きネジよりなる下部ピン64が上方へ向かって突設固定されている。
【0021】
吊下支持プレート63上には吊下プレート65が配置され、その四隅部にはステー66が立設状態で固定されており、そのステーに66には前記下部ピン64に間隔をおいて対向する上部ピン67が下方へ向かって突設固定されている。そして、上下のピン64,67にはバネ手段としてのバネ70が外嵌されて、そのバネ70が前記下部ピン64のネジ部上の支持ナット68とステー66の上端の折曲部69との間に介在されている。この結果、このバネ70上にステー66を介して前記吊下プレート65が吊下されて、同バネ70により弾性的な吊下浮動状態(以下、単に浮動状態という)で弾性支持されている。従って、吊下プレート65は、バネ70の弾性の範囲内において全方向に傾動可能である。なお、ここで、浮動状態とは、前記のように、バネ70などの弾性部材によって傾動可能に支持された状態を指す。
【0022】
図9に示すように、吊下支持プレート63には、前記ピボット支持プレート39の支持孔40と対向する遊挿孔77が形成されている。また、吊下支持プレート63には規制ピン81が固定され、この規制ピン81は、前記吊下プレート65の大きめ規制孔82に相対移動可能に挿通されている。従って、吊下プレート65は浮動状態において吊下支持プレート63に対して、規制ピン81と規制孔82との間のクリアランスの範囲内において移動することができるが、それ以上の移動は規制される。
【0023】
図9に示すように、前記吊下プレート65のネジ孔75には連結手段としてのピボット76がそのネジ部において螺合されている。このピボット76は前記吊下支持プレート63の遊挿孔77を遊挿されている。一方、前記ピボット支持プレート39の支持孔40の内部には保持部材79の凹状球面80を介して同じく連結手段としてのボール部材78が全方向に回転可能に支持され、その中心孔に前記ピボット76の下端部がその軸方向にスライド可能に挿入されている。このため、吊下プレート65は、前記バネ70のバネ力の作用下において、ボール部材78の中心を中心として、ボール部材78の回転及びピボット76の軸方向移動や、前記ガイドステージ機構85内の少なくともX軸方向及びY軸方向の一方向のスライド移動をともないながら全方向に傾動可能である。なお、83は、吊下プレート65の過度な傾斜を規制するための部材である。
【0024】
図2及び図9に示すように、吊下支持プレート63の上面側にはスペーサ71を介してトレープレート72が固定されている。このトレープレート72は水準器91の搭載部を構成し、このトレープレート72の上面には前記水準器91が搭載されている。そして、この水準器91は、X軸を通る上下方向の面内において傾動回転された場合に、自身の傾斜角度を検出して、その検出データを外部機器(図示しない)に対して出力する。図1に示すように、水準器91はその上面に表示部92を有し、この表示部92は、気泡や振り子の位置、あるいはデジタル表示により傾斜角度を目視によって表示する。
【0025】
図2図10図11及び図12に示すように、前記両支点ピン53とそれぞれX軸方向線上及びY軸方向線上において対向する位置において、前記トレープレート72及びそのトレープレート72に固定したブラケット93の側面には、上下方向に延長された断面扁平四角形状の当接ブロック94,95が支持固定されている。これらの当接ブロック94,95の上下両端部の前側の側面及びその両側の側面(前側の側面は前面という)には、それぞれ前記被測定面であるガイド面113,114に当接される測定面941,951と、その測定面941,951に隣接して異なる角度(90度)を向く規制面942,952とを有する。当接ブロック94の両測定面941は平行に形成されている。
【0026】
そして、図10に示すように、Y軸方向軸線上において支点ピン53と対向する当接ブロック94は、両側面に測定面941を有し、その測定面941間の前面に規制面942が配置されている。X軸方向軸線上において支点ピン53と対向する当接ブロック95は両側面に規制面952を有し、その規制面952間の前面に測定面951を有している。従って、両当接ブロック94,95の測定面941,951は、X軸方向と直交する面内に位置している。
【0027】
前記両当接ブロック94,95の内側面には入り口部をテーパ状の案内部とした孔形状の支点部98が形成され、この支点部98は前記X軸方向軸線及びY軸方向軸線上において前記支点ピン53の球面部55に対向している。そして、支点部98の内径は球面部55の外径よりわずかに大きく、前記吊下支持プレート63とともに吊下プレート65がX軸方向あるいはY軸方向に移動することにより、支点部98が球面部55に嵌合状態で係合されて、支点部98の底部に球面部55が当接される。
【0028】
次に、本実施形態の測定装置10の作用を説明する。
測定装置10は、前述のように、テーパシャンク14においてマシニングセンタの主軸に把持されて、例えば、図11及び図12に示す工作機械のコラム110において、一対の上下方向に延在するガイド部111,112の90度の角度で隣接する第1,第2ガイド面113,114の傾斜角度を測定する。図11図14において、左右のガイド部111,112の第1ガイド面113は対向し、第2ガイド面114は正面を向いている。
【0029】
測定装置10は測定動作を行っていない待機状態においては、図5及び図10に示すように、固定部材41と可動部材42との間の間隔44内にローラ46がバネ43の付勢力により弾性挟持されて、ピボット支持プレート39を有するガイドステージ機構85が中立位置に保持される。従って、ボルト62及びカラー61を介して吊下支持プレート63が中立位置に保持される。また、ピボット76が中立の直立位置に弾性保持され、このため、当接ブロック94,95を有する吊下プレート65及びトレープレート72が同じく中立位置に維持される。従って、当接ブロック94,95がその支点部98を支点ピン53の球面部55に対向させた状態で、球面部55から離間されている。
【0030】
この状態において、前記コラム110の両ガイド部111,112の起立面である第1,第2ガイド面113,114の傾斜角度の測定は以下のようにして実行される。
すなわち、図13(a),図13(b)は、ガイド部111,112のそれぞれ第2ガイド面114の傾斜角度を測定する場合を示す。図13(a)に示すように、一方のガイド部111の第2ガイド面114の傾斜角度を測定する場合には、マシニングセンタの主軸の移動により、主軸に支持された測定装置10がガイド部111に向かって移動される。
【0031】
この場合、主軸の移動により、測定装置10の一方の当接ブロック95の測定面951が第2ガイド面114に指向するように、また、同当接ブロック95の一方の規制面952が第1ガイド面113に指向するように測定装置10の向きが設定される。この状態で、当接ブロック95の測定面951がガイド部111の第2ガイド面114に向かうように、測定装置10がガイド部111に向かってX軸方向に移動される。このため、測定面951が第2ガイド面114に当接する。
【0032】
この当接後は、主軸の移動の継続により、基台12がガイド部111の第1ガイド面113に向かってY軸方向に移動される。
このため、ガイドステージ機構85のX,Y両軸方向へのスライド動作をともないながら、支点ピン53が当接ブロック95の支点部98に近づく。そして、一方のローラ46が固定部材41と可動部材42との間の間隔44から抜け出ると、ピボット支持プレート39がピボット76とともにフリーに動くことができるようになる。従って、当接ブロック95が第2ガイド面114の傾斜に従ってほとんど抵抗なく動くことができ、当接ブロック95の測定面951が第2ガイド面114に沿う状態になる。また、当接ブロック95の規制面952が第1ガイド面113に当接して、位置規制される。
【0033】
このようにして、支点ピン53の球面部55が前記支点部98に嵌合される。ここで、当接ブロック94,95はバネ70によって弾性力が作用された状態で浮動されている吊下プレート65に支持されている。このため、当接ブロック95の測定面951が第2ガイド面114に押し当てられて、測定面951が第2ガイド面114に沿う角度となる。また、当接ブロック94の一方の規制面942が第1ガイド面113に押し当てられる。
【0034】
従って、規制面952が第1ガイド面113に押し当てられることにより、吊下プレート65,トレープレート72及び水準器91の図10に示すX軸を中心とした回転が規制される。一方、当接ブロック95の測定面951が第2ガイド面114に押し当てられることにより、第2ガイド面114が傾斜している場合は、吊下プレート65,トレープレート72及び水準器91は、第2ガイド面114の傾斜角度に従って当接ブロック95とともに、X軸を通る平面内を回転される。このとき、ピボット76を介してガイドステージ機構85は、水準器91などの傾斜を許容するために、スライド動作される。このようにして、吊下プレート65上のトレープレート72上に搭載された水準器91により第2ガイド面114の傾斜角度が測定される。
【0035】
なお、主軸による押し当て力が強く、吊下プレート65やトレープレート72に対して当接ブロック95側から大きな反力を受ける場合には、ゴム材よりなる弾性受承部材23が撓んで支持フレーム26が逃げることにより、この反力が吸収される。
【0036】
第2ガイド面114の測定が終了した場合は、前記主軸が測定開始時と逆の順序で後退移動するため、基台12側が後退するにつれて、前記とは逆順に、ローラ46が間隔44内に復帰移動する。そして、支点ピン53が当接ブロック94,95の支点部98から後退し、図10の状態に復帰する。
【0037】
図13(b)に示すように、反対側のガイド部112の第2ガイド面114の傾斜角度を測定する場合は、測定装置10の移動方向が図13(a)の場合と左右対称状になるとともに、第2ガイド面114に規制される規制面952が図13(a)の場合の反対側になる。この点において図13(a)の場合と相違するが、他の動作はガイド部111の第2ガイド面114の測定の場合と同様である。
【0038】
図13(c)に示すように、ガイド部111の第1ガイド面113の傾斜角度を測定する場合は、当接ブロック94の正面側の規制面942を第2ガイド面114に指向させるとともに、一方の側面側の測定面941を第1ガイド面113に指向させる。そして、当接ブロック94の規制面942がガイド部111の第2ガイド面114を目指すように測定装置10を移動させた後に、同測定装置10を、測定面941が第1ガイド面113を目指すように移動させる。
【0039】
すなわち、この場合には、図13(c)から明らかなように、測定装置10全体の向きが図13(a)及び同図(b)の場合とは90度変更される。そして、この状態で、当接ブロック94の正面の規制面942が第2ガイド面114に押し付けられた後に、一方の測定面941が第1ガイド面113に押し付けられる。この場合も、ガイドステージ機構85によるスライド動作をともないながら、基台12が移動されて、支点ピン53の球面部55に対して当接ブロック94の支点部98が係合する。従って、当接ブロック94の規制面942によって吊下プレート65や水準器91の傾動が規制された状態で、その吊下プレート65や水準器91が当接ブロック94とともに支点ピン53と球面部55との係合部を通る図10のY軸を中心に傾動される状態になり、この傾動により第1ガイド面113の傾斜角度を測定できる。
【0040】
図13(d)に示すように、前記と同様にして、他方のガイド部112の第1ガイド面113の傾斜角度を測定する場合は、当接ブロック94の他方の測定面941により第1ガイド面113が測定される。
【0041】
以上のようにして、図11に2点鎖線で示すように、第1,第2ガイド面113,114の上下2位置などの上下複数位置の傾斜角度を測定すれば、ガイド面113,114全体の傾斜角度を認識できる。
【0042】
なお、図14(a),(b)から明らかなように、実施形態の当接ブロック94,95が断面扁平状をなしている。従って、主軸の移動による押し付け作用により、当接ブロック94,95に対してその扁平方向と交差する方向から反力が作用した場合、図14(b)に2点鎖線で示す場合とは異なり、当接ブロックが横転することを回避でき、傾斜面の測定を支障なく実行できる。
【0043】
以上のように作用する第1実施形態の測定装置10は以下の効果を得ることができる。
(1)バネ70によって浮動状態に保持されたトレープレート72に、水準器91が搭載されるとともに、そのトレープレート72には、起立されたガイド面113,114に当接される当接ブロック94,95が設けられている。従って、当接ブロック94,95を第1,第2ガイド面113,114に当てれば、そのガイド面113,114を倒伏させることなく、ガイド面113,114の傾斜角度を測定できる。従って、ガイド面113,114の傾斜角度の測定を簡単かつ正確に行うことができる。
【0044】
しかも、当接ブロック94の両測定面941が平行に形成されているため、ガイド部111,112の各ガイド面113をそれぞれ両測定面941によって測定することにより、各ガイド面113間の平行度を確認できる。つまり、各ガイド面113の傾斜角度が等しければ、各ガイド面113は平行である。
【0045】
(2)当接ブロック94,95には測定面941,951と隣接して、測定面941,951とは異なる方向を向く規制面942,952が設けられている。このため、規制面942,952を測定対象のガイド面113,114と隣接するガイド面113,114に当てれば、トレープレート72上の水準器91において測定のための動作以外の動作を規制できて、起立されたガイド面113,114の傾斜角度を正確に測定できる。
【0046】
(3)2基の当接ブロック94,95が設けられ、一方の当接ブロック94では、両側面が測定面941に、前面が規制面942に、他方の当接ブロック95では、前面が測定面951に、両側面が規制面952になっている。従って、1台の水準器91により、両ガイド部111,112の第1,第2ガイド面113,114の傾斜角度を測定できる。このため、装置全体をコンパクトにできる。
【0047】
(4)一対のバネ43によりローラ46を保持することにより、当接ブロック94,95がガイド面113,114に当接するまでの当接ブロック94,95の妄動を防止できる。このため、ガイド面113,114の傾斜角度の測定を円滑に行なうことができる。
【0048】
(5)前記基台12には支点ピン53を設けるとともに、当接ブロック94,95には、支持フレーム26の移動によって前記支点ピン53の先端の球面部55に係合する支点部98を設けている。そして、前記球面部55と支点部98との係合部よりなる一点を中心に当接ブロック94,95が傾動されるため、ガイド面113,114の傾斜角度を正確に測定できる。
【0049】
(6)支点ピン53を支持する支持フレーム26と基台12の間に、支点ピン53に作用する過大な力を緩衝するための弾性受承部材23が設けられている。このため、当接ブロック94,95を介して支点ピン53や支持フレーム26に作用する振動や衝撃を回避して正確なガイド面113,114の測定を実行できる。
【0050】
(7)基台12にテーパシャンク14が設けられているため、測定装置10をマシニングセンタなどの主軸を利用して測定動作させることができる。このため、測定装置10を測定動作させるための専用の装置が不要になる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図15図17に基づいて説明する。
本実施形態においては、固定部材41,可動部材42及びローラ46と、それらの関連構成とを省略している。
【0052】
それに代えて、本実施形態においては、支持フレーム26上にガイド板101が固定されるとともに、上部介装プレート38にガイドピン102が立設されている。
ガイド板101には、X軸方向に延びる一端部側107と、Y軸方向に延びる他端部側106とよりなる平面L形状のガイド溝103が透設されている。前記ガイドピン102は、その上端部が前記ガイド溝103内に挿入されて、移動を案内される。ガイド溝103の両端には前記一端部側107及び他端部側106と直交する方向に延びる幅広部104が形成されるとともに、その一端部側107及び他端部側106の両側に斜面105が形成されている。幅広部104内において、前記ガイドピン102が幅広部104の幅方向に移動可能である。
【0053】
前記上部介装プレート38と支持フレーム26との間には、上部介装プレート38をX軸及びY軸に沿う方向に付勢して、上部介装プレート38を中立位置に保持するための一対(一方のみ図示)の引っ張りバネ108が設けられている。従って、当接ブロック94,95が図11に示すガイド面113,114から離間した状態においては、これらの引っ張りバネ108により、前記ガイドピン102がガイド溝103の中間コーナ部に保持されるとともに、両当接ブロック94,95がそれぞれ支点ピン53から離間されている。
【0054】
前記ガイド面113,114の測定においては、図17(a)〜(d)から明らかなように、前記第1実施形態と同様な動作な実行される。ただし、本実施形態においては、図17(a),(b)に示すように、ガイド面114の傾斜角度の測定においては、基台12の移動により、ガイド面114に対する当接に際して、ガイド溝103の一端部側107内を移動した後に、幅広部104内を移動する。また、図17(c),(d)に示すように、ガイド面113の傾斜角度の測定においては、基台12の移動により、ガイド面113に対する当接に際して、ガイド溝103の他端部側106内を移動した後に、幅広部104内を移動する。ガイド溝103の斜面105は、測定終了時にガイドピン102のガイド溝103の中央コーナ部側への復帰をスムーズにする。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図18及び図19に基づいて説明する。
第3実施形態は、2台の水準器911,912を用いるものであり、当接ブロック99は単一である。
【0056】
すなわち、図18及び図19に示すように、テーパシャンク14を有する基台12上に支持フレーム26がウレタン樹脂などのゴム性弾性材よりなる弾性受承部材23を介して支持されている。支持フレーム26には、1本の支点ピン53が形成されている。支持フレーム26には、前記と同様にウレタン樹脂などのゴム状弾性材よりなる弾性支持部材86を介してトレープレート72が浮動状態で支持されている。トレープレート72には、1基の当接ブロック99が固定され、その前面及び両側面には、それぞれ測定・規制面991が形成されている。測定・規制面991は、後述の説明から明らかなように、ガイド面113,114の測定機能と、規制機能との双方を有する。
【0057】
トレープレート72には、2台の水準器911,912が搭載されている。この2台の水準器911,912がその向きが90度異なる状態で設置されており、それぞれ向きが90度異なる起立したガイド面113,114の傾斜角度を測定する。
【0058】
なお、この第3実施形態においては、バネ100の付勢力により、支点ピン53の先端の球面部55に対して支点部98が係合されている。この第3実施形態以降の各実施形態において支点ピン53の球面部55を含む先端部の形状は、前記第1実施形態と同様である。
【0059】
第2実施形態における測定方法は以下のようにして行なわれる。
図18から明らかなように、正面向きの第1,第2ガイド面113,114の傾斜角度を測定する場合は、当接ブロック99の正面の測定・規制面991をガイド面113に当接させるとともに、一方の側面の測定・規制面991をガイド面114に当接させる。そして、両測定・規制面991がガイド面113,114に押し当てられると、ガイド面113,114が傾斜している場合は、当接ブロック99の支点部98と支点ピン53の球面部55との係合部を中心に水準器911または912の少なくとも一方が傾動される。このため、ガイド面113の傾斜が両水準器911によって測定されるとともに、これと同時にガイド面114の傾斜が他方の水準器912によって測定される。
【0060】
他方のガイド部112のガイド面113,114の傾斜角度を測定する場合は、測定装置10をそのガイド部112側に移動させて、正面の測定・規制面991をガイド面114に当接させるとともに、他方の側面の測定・規制面991をガイド面113に当接させる。そして、前記と同様にして測定を行なえばよい。
【0061】
従って、この第3実施形態においては、以下の効果がある。
(8)ガイド部111,112の各ガイド面113,114の傾斜角度を同時に測定できるため、測定作業を能率よく行なうことができる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図20及び図21に基づいて説明する。
第3実施形態は、前記第1実施形態と同様に、1台の水準器91と2基の当接ブロック94,95とを用いるものである。
【0063】
この第4実施形態においては、前記のように水準器91が1台で、トレープレート72に、向きが90度異なる2基の当接ブロック94,95が設けられている点、支点ピン53が一対設けられている点が第2実施形態と異なる。基台12に弾性受承部材23を介して支持フレーム26が支持されている点、弾性支持部材86を介して支持フレーム26にトレープレート72が支持されている点は第2実施形態と同様である。ただし、第3実施形態では弾性支持部材86は複数設けられている。
【0064】
従って、この第4実施形態においては、第1実施形態と同様にして、1台の水準器91により、ガイド部111,112のガイド面113,114の傾斜角度の測定が行なわれる。
【0065】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態を図22及び図23に基づいて説明する。
この第5実施形態においては、支点ピン53を有する支持フレーム26の支点ピン53の部分に対して、弾性支持部材87がその中心の支持孔871において外嵌されている。弾性支持部材87においては、弾性本体部872の両側に側板873が固着されている。弾性本体部872の内部にはナット88が埋設されている。
【0066】
当接ブロック99の孔を通る固定ボルト89が前記ナット88に螺合され、この固定ボルト89とナット88との螺合により弾性支持部材87を介して当接ブロック99,すなわちトレープレート72が支持フレーム26に浮動状態で、かつ片持ち状態で支持されている。
【0067】
ガイド面113,114の傾斜角度の測定方法は前記第3実施形態と同様である。
(変更例)
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することが可能である。
【0068】
・第1実施形態において、吊下プレート65を省略し、ピボット76をトレープレート72に固定すること。
・第1実施形態において、ガイドステージ機構85を省略すること。この構成においては、弾性受承部材23として弾性変形量の大きなものを用い、この弾性受承部材23の弾性変形の範囲内において当接ブロック94,95が移動される。
【0069】
・第3実施形態において、支点ピン53と当接ブロック99との間のバネ100を省略して、支点ピン53の球面部55と当接ブロック99の支点部98とが離間するように構成すること。
【0070】
・当接ブロック94,95の測定面941,951及び規制面942,952を上下2位置の突起によって形成して、傾斜角度の測定に際して起立面にスポット的に当たるように構成すること。
【0071】
・第1,第2ガイド面113,114が直角以外の角度をなすガイド部111,112に対応できるように、当接ブロック94,95の測定面941,951と規制面942,952との角度関係を鈍角または鋭角にすること。
【符号の説明】
【0072】
10…測定装置、12…基台、14…テーパシャンク、16…測定機構、23…弾性受承部材、26…支持フレーム、31…吊下プレート、43…バネ、53…支点ピン、55…球面部、63…吊下支持プレート、76…ピボット、78…ボール部材、85…ガイドステージ機構、91…水準器、94…当接ブロック、95…当接ブロック、98…支点部、99…当接ブロック、941…測定面、942…規制面、951…測定面、952…規制面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23