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特開2018-120167パターン形成方法、半導体装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-120167(P2018-120167A)
(43)【公開日】2018年8月2日
(54)【発明の名称】パターン形成方法、半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/40 20060101AFI20180706BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
   G03F7/40 511
   H01L21/312 C
   H01L21/312 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-13188(P2017-13188)
(22)【出願日】2017年1月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西垣 亨彦
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 豊
(72)【発明者】
【氏名】香西 昌平
(72)【発明者】
【氏名】秋元 陽介
(72)【発明者】
【氏名】永井 弥夕
(72)【発明者】
【氏名】今井 快多
【テーマコード(参考)】
2H196
5F058
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196HA34
2H196LA02
5F058AC03
5F058AC07
(57)【要約】
【課題】 シリコーン樹脂を用いて良好なパターンを形成する。
【解決手段】 シリコーン樹脂を用いたパターン形成方法であって、基板10上にレジストパターン11を形成する工程と、基板10上に、レジストパターン11を埋め込むようにシリコーン樹脂層21を形成する工程と、シリコーン樹脂層21の表面にフィルム31を押し当てて貼り付ける工程と、フィルム31の貼り付け後に、シリコーン樹脂層21を硬化する工程と、シリコーン樹脂層21の硬化後又は硬化前に、シリコーン樹脂層21からフィルム31を剥離する工程と、フィルム31の剥離後に、レジストパターン11を除去する工程と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にレジストパターンを形成する工程と、
前記基板上に、前記レジストパターンを埋め込むようにシリコーン樹脂層を形成する工程と、
前記シリコーン樹脂層の表面にフィルムを押し当てて貼り付ける工程と、
前記フィルムの貼り付け後に、前記シリコーン樹脂層を硬化する工程と、
前記シリコーン樹脂層の硬化後又は硬化前に、前記シリコーン樹脂層から前記フィルムを剥離する工程と、
前記フィルムの剥離後に、前記レジストパターンを除去する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
基板上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンが形成された前記基板上に紫外線硬化型のシリコーン樹脂層を形成する工程と、
前記シリコーン樹脂層の少なくとも前記レジストパターン上以外の領域に紫外線を照射し、該照射部分を硬化する工程と、
前記シリコーン樹脂層の前記硬化されていない部分を現像液により除去する工程と、
前記シリコーン樹脂層の除去された部分を通して前記レジストパターンを除去する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
基板上に、レジストパターンを形成する工程と、
前記基板上に、前記レジストパターンを埋め込むように第1のシリコーン樹脂層を形成する工程と、
前記第1のシリコーン樹脂層の表面にフィルムを押し当てて貼り付ける工程と、
前記フィルムの貼り付け後に、前記第1のシリコーン樹脂層を硬化する工程と、
前記フィルムの硬化後又は硬化前に、前記第1のシリコーン樹脂層から前記フィルムを剥離する工程と、
前記レジストパターン及び前記第1のシリコーン樹脂層の表面上に紫外線硬化型の第2のシリコーン樹脂層を形成する工程と、
前記第2のシリコーン樹脂層に、一部が前記レジストパターンと重ならないように部分的に紫外線を照射し、該照射領域を硬化する工程と、
前記第2のシリコーン樹脂層の前記硬化されていない部分を現像液により除去する工程と、
前記第2のシリコーン樹脂層の除去された部分を通して前記レジストパターンを除去する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
検体液の物理又は化学的情報を検出するためのセンサ部が設けられた基板上に、前記センサ部を囲むように第1のシリコーン樹脂層を形成する工程と、
前記第1のシリコーン樹脂層で囲まれた領域を覆うように、前記第1のシリコーン樹脂層上にマスクを設置する工程と、
前記マスクで覆われていない前記第1のシリコーン樹脂層上及び前記基板上に、第2のシリコーン樹脂層を形成する工程と、
前記第2のシリコーン樹脂層を硬化する工程と、
前記第2のシリコーン樹脂層の硬化後に、前記マスクを除去する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板に設けられ、検体液の物理又は化学的情報を検出するためのセンサ部と、
前記基板上に、前記センサ部を囲むように設けられた第1のシリコーン樹脂層と、
第1のシリコーン樹脂層の内周よりも外側で、前記基板上及び第1のシリコーン樹脂層上に設けられた第2のシリコーン樹脂層と、
を具備したことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シリコーン樹脂を用いたパターン形成方法に関する。さらに、シリコーン樹脂を用いた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞や検体液等を検査するための各種バイオセンサを形作る土手構造や流路構造等に、PDMS(Poly-DiMethyl-Siloxane)等のシリコーン樹脂が使用される場合がある。この理由としてシリコーン樹脂は、細胞毒性が殆どない、自家蛍光や発光が少ない、透明性が高い等の特長を有するため、バイオセンサの材料に適しているためである。しかし、シリコーン樹脂は化学的に安定で従来の半導体プロセスによる加工が難しいため、シリコーン樹脂を用いた土手構造や流路等の構造を良好なパターンで形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−525569号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Dry etching of polydimethylsiloxane for microfluidic systems”, Garra et al., J. Vac Sci. Technol. A 20(3), 2002, p.p.957-982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、シリコーン樹脂を用いて良好なパターンを形成することのできるパターン形成方法を提供することである。また、シリコーン樹脂を用いて良好なパターンの土手構造を実現し得る半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のパターン形成方法は、基板上にレジストパターンを形成する工程と、前記基板上に、前記レジストパターンを埋め込むようにシリコーン樹脂層を形成する工程と、前記シリコーン樹脂層の表面にフィルムを押し当てて貼り付ける工程と、前記フィルムの貼り付け後に前記シリコーン樹脂層を硬化させる工程と、前記シリコーン樹脂層の硬化後又は硬化前に、前記シリコーン樹脂層から前記フィルムを剥離する工程と、前記フィルムの剥離後に前記レジストパターンを除去する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図。
図2】第2の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図。
図3】第3の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図。
図4】第4の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図。
図5】第5の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図。
図6】第6の実施形態に係わる半導体装置の概略構成を示す平面図と断面図。
図7】第6の実施形態に係わる半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の詳細を、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するためのもので、パターン形成工程を示す断面図である。この実施形態は、例えば基板に形成された図示しないセンサ部を囲むように、基板上に凸型の土手構造を形成する方法である。
【0010】
まず、図1(a)に示すように、Si等の半導体基板10上に凸状のレジストパターン11を形成する。具体的には、半導体基板10上にフォトレジストを塗布し、所望パターンに露光した後に現像することにより、レジストパターン11を形成する。続いて、レジストパターン11を覆うように半導体基板10上にPDMS等の紫外線硬化型のシリコーン樹脂を塗布することにより、シリコーン樹脂層21を形成する。
【0011】
次いで、図1(b)に示すように、真空中で、シリコーン樹脂層21の表面に透明ラミネートフィルム31を押し当てながら貼り付ける。具体的には、ローラ32を用い、フィルム31に一定の押圧力を与えながらシリコーン樹脂層21の表面に押し当てる。そして、ローラ32を回転しながら平行移動させることにより、シリコーン樹脂層21の表面にフィルム31を貼り付ける。これにより、シリコーン樹脂層21はレジストパターン11の上面とほぼ同じ高さで均一な厚さになる。
【0012】
なお、フィルム31を貼り付ける際の真空度は10torr以下が望ましい。また、フィルム31を貼り付ける際のローラ32による加圧は、1kgf/cm2 以上が望ましい。
【0013】
次いで、図1(c)に示すように、フィルム31を通してシリコーン樹脂層21に紫外線を照射し、シリコーン樹脂層21を硬化させる。ここで、フィルム31は波長436nm以下の紫外線を透過するものであれば良い。また、フィルム31が紫外線を透過しないものの場合、フィルム31を剥がした後に紫外線を照射すれば良い。
【0014】
なお、シリコーン樹脂として熱硬化型のものを用いた場合、紫外線を照射する代わりに赤外線を照射又はヒータで加熱しても良い。
【0015】
次いで、図1(d)に示すように、シリコーン樹脂層21からフィルム31を剥がす。そして、レジストパターン11上に残ったシリコーン樹脂層21の残渣を、ドライエッチング又は研削により除去する。この残渣除去は極めて薄い量を除去すれば良いだけなので、残渣除去のためにシリコーン樹脂層21にダメージを与えることは殆ど無い。
【0016】
次いで、図1(e)に示すように、シリコーン樹脂層21に対して選択性のあるエッチャント、例えばアセトン或いはレジストリムーバを用いて、レジストパターン11を除去する。これにより、半導体基板10上にシリコーン樹脂層21のパターンが形成される。
【0017】
本実施形態によれば、フィルム31をシリコーン樹脂層21に貼り付けることにより、シリコーン樹脂層21を平坦に形成することができる。しかも、シリコーン樹脂層21の平坦化後にレジストパターン11を除去すればよいので、シリコーン樹脂層21の厚膜をエッチングする必要はない。これは、シリコーン樹脂層21のエッチングによる変質を防止できる効果に繋がる。また、フィルム31による押し付けを真空中で行うため、ボイドの発生を抑制できる利点もある。
【0018】
例えば、型への流し込みで凸型のシリコーン樹脂層を形成した場合、このシリコーン樹脂層を別の基板に貼り合わせる必要がある。しかし、この場合は、基板との接合面が限定されてしまう、接合強度が弱い等の問題がある。また、シリコーン樹脂層の厚膜のドライエッチングでは、シリコーン樹脂層の表面に変質層が形成され、別の基板への貼り合わせが困難になる問題がある。さらに、シリコーン樹脂層の厚膜の研磨では、表面荒れや側面残差が生じる問題がある。
【0019】
これに対して本実施形態では、フィルム31の貼り付け及びレジストパターン11の除去という極めて簡易なプロセスで、表面が平坦で表面荒れや側面残渣が少ないシリコーン樹脂の凸型パターンを基板上に良好に形成することができる。
【0020】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。この実施形態も、基板上に土手構造を形成する方法である。
【0021】
まず、図2(a)に示すように、半導体基板10上に紫外線硬化型のシリコーン樹脂を塗布し、シリコーン樹脂層21を形成する。このシリコーン樹脂層21は、紫外線の照射により硬化するものであれば良い。また、紫外線の照射により活性化し、熱を加えることにより硬化する、いわゆる紫外線活性熱硬化型のシリコーン樹脂を用いることも可能である。
【0022】
次いで、図2(b)に示すように、シリコーン樹脂層21に、該層21を凸状に残す領域に選択的に紫外線を照射し、該照射部分を硬化する。図中の21aがシリコーン樹脂層21の硬化された領域である。なお、シリコーン樹脂層21として紫外線活性熱硬化型を用いた場合、紫外線照射後に全体を加熱、例えば窒素雰囲気中オーブンでの加熱をすればよい。
【0023】
次いで、図2(c)に示すように、シリコーン樹脂層21の硬化されていない部分を現像液により除去する。
【0024】
現像液は、シリコーン樹脂を溶解できるものであれば良い。例えば、少なくともジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ペンタン、パーフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロデカリン、キシレン、エーテル、ヘキサン、トリクロロエチレン、ノルマルヘプタン、シクロヘキサン、ジメトキシエタン、トルエン、エチルアセテート、メチルエチルケトンを溶剤として含むものであれば良い。
【0025】
第2の実施形態は、シリコーン樹脂層21を形成した後に、選択的な紫外線の照射及び現像を行うのみの極めて簡易なプロセスでパターンを形成することができる。従って、第1の実施形態と同様に、半導体基板10上にシリコーン樹脂層21の良好なパターンを作製することができる。
【0026】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。この実施形態も、基板上に土手構造を形成する方法である。
【0027】
まず、図3(a)に示すように、第1の実施形態と同様に、Si等の半導体基板10上に凸状のレジストパターン11を形成する。続いて、レジストパターン11を覆うように、半導体基板10上にPDMS等の紫外線硬化型のシリコーン樹脂を塗布し、シリコーン樹脂層21を形成する。このとき、シリコーン樹脂層21の厚さはレジストパターン11の厚さよりも僅かに厚いものとする。
【0028】
次いで、図3(b)に示すように、レジストパターン11上以外のシリコーン樹脂層21に紫外線を照射し、照射部分を硬化する。図中の21aがシリコーン樹脂層21の硬化された領域である。
【0029】
次いで、図3(c)に示すように、硬化していないシリコーン樹脂層21を、第2の実施形態で説明した現像液により除去する。このとき、シリコーン樹脂層21の除去する厚みが少ないため、硬化したシリコーン樹脂層21が現像液から受けるダメージは極めて少ない。
【0030】
次いで、図3(d)に示すように、シリコーン樹脂層21の除去により露出したレジストパターン11を、シリコーン樹脂層21に対して選択性のあるエッチャントを用いて除去する。
【0031】
このように本実施形態によれば、第2の実施形態と同様に、シリコーン樹脂層21への選択的な紫外線照射及び現像を行うことにより、シリコーン樹脂層21の凸型パターンを形成することができる。しかも、第2の実施形態に比べ、シリコーン樹脂層21の除去する厚みが少ないため、シリコーン樹脂層21の凸型パターンとして残す部分のダメージを低減することができる。
【0032】
なお、シリコーン樹脂層21の厚さがレジストパターン11の厚さよりも大幅に厚くなってしまう場合は、第1の実施形態で記したように、シリコーン樹脂層21の表面に透明ラミネートフィルム31を押し当てながら貼り付け、この状態でシリコーン樹脂層21への選択的な紫外線照射及び硬化を行う。そして、透明ラミネートフィルム31を剥離した後に、レジストパターン11上の残渣を現像液にて除去すれば良い。
【0033】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。この実施形態は、基板上に検体液等を流すための流路を形成する方法である。
【0034】
まず、図4(a)に示すように、Si等の半導体基板10上に、流路とすべきパターンにレジストパターン11を形成する。具体的には、半導体基板10上にレジストを塗布した後、フォトリソグラフィにより流路のパターンを形成する。続いて、レジストパターン11を覆うように半導体基板10上にPDMS等の紫外線硬化型のシリコーン樹脂を塗布することにより、シリコーン樹脂層21を形成する。
【0035】
次いで、図4(b)に示すように、一部がレジストパターン11と重ならないように部分的に紫外線を照射する。より具体的には、流路に繋がる開口となる部分を除いて、シリコーン樹脂層21に紫外線を照射することにより、シリコーン樹脂層21を硬化する。図中の21aがシリコーン樹脂層21の硬化された領域である。
【0036】
次いで、図4(c)に示すように、シリコーン樹脂層21の硬化されていない部分を、第2の実施形態で説明した現像液により除去する。
【0037】
次いで、図4(d)に示すように、シリコーン樹脂層21の除去により露出したレジストパターン11を、シリコーン樹脂層21に対して選択性のあるエッチャントを用いて除去する。これにより、側壁及び上壁がシリコーン樹脂層21からなる流路が作製されることになる。
【0038】
本実施形態では、半導体基板10上にシリコーン樹脂層21からなる流路を形成することができる。この場合、シリコーン樹脂層21を直接的にパターニングして流路を形成するのではなく、レジストパターン11の除去によって流路を形成するため、良好なパターンの流路を作製することができる。
【0039】
ここで、シリコーン樹脂は、細胞毒性が殆どない、自家蛍光や発光が少ない、透明性が高い等の特長を有する。本実施形態では、流路内では半導体基板10以外の接する部分がシリコーン樹脂となるため、バイオ材料の検査に用いる検体液を流すのに適している。
【0040】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態に係わるパターン形成方法を説明するための工程断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。この実施形態も、流路を形成する方法である。
【0041】
まず、図5(a)に示すように、Si等の半導体基板10上に流路とすべきパターンにレジストパターン11を形成し、レジストパターン11の側部を第1のシリコーン樹脂層21で埋め込む。具体的には、図1(a)〜(d)と同様の処理を行う。
【0042】
次いで、図5(b)に示すように、レジストパターン11上及び第1のシリコーン樹脂層21上に第2のシリコーン樹脂を塗布し、第2のシリコーン樹脂層22を形成する。第2のシリコーン樹脂層22としては、第1のシリコーン樹脂層21と同様に紫外線硬化型を用いれば良い。
【0043】
次いで、図5(c)に示すように、一部がレジストパターン11と重ならないように部分的に紫外線を照射する。より具体的には、流路に繋がる開口となる部分を除いて、シリコーン樹脂層22に紫外線を照射することにより、シリコーン樹脂層22を硬化する。図中の22aがシリコーン樹脂層22の硬化された領域である。
【0044】
次いで、図5(d)に示すように、シリコーン樹脂層22の硬化されていない部分を、第2の実施形態で説明した現像液により除去する。
【0045】
次いで、図5(e)に示すように、シリコーン樹脂層22の除去により露出したレジストパターン11を、シリコーン樹脂層21に対して選択性のあるエッチャントを用いて除去する。これにより、側壁がシリコーン樹脂層21で形成され、上壁がシリコーン樹脂層22で形成された流路が作製される。
【0046】
本実施形態では、半導体基板10上にシリコーン樹脂層21,22からなる流路を形成することができる。この場合、第4の実施形態と同様に、シリコーン樹脂層22を直接的にパターニングして流路を形成するのではなく、レジストパターン11の除去により良好なパターンの流路を形成することができる。
【0047】
(第6の実施形態)
図6は、第6の実施形態に係わる半導体装置の概略構成を説明するためのもので、図6(a)は平面図、図6(b)は(a)の矢視I−I’断面図である。本実施形態は、検体液中の特定物質の蛍光強度や濃度等を測定するための分析装置である。
【0048】
支持基板100の中央部上にSi等の半導体基板10がマウントされている。半導体基板10の表面部には、検体液の物理的情報及び化学的情報を検出するためのセンサ部15が設けられている。センサ部15は、例えば蛍光センサを2次元的に配列したものである。また、支持基板100の表面上で半導体基板10のマウント領域を除く領域に、センサ部15と電気的に接続された電極101が設けられている。
【0049】
半導体基板10上に、センサ部15を囲むようにシリコーン樹脂からなる土手121が設けられている。そして、この土手121で囲まれた領域に検体液を溜めることが可能となっている。さらに、土手121の内周よりも外側にシリコーン樹脂からなる封止部122が設けられている。封止部122は、土手121の内周よりも外側及び支持基板100の表面を覆うように設けられている。
【0050】
このような構成であれば、シリコーン樹脂からなる土手121及び封止部122で囲まれた領域(液溜め部130)に検体液を溜めることができ、この状態でセンサ部15による検体液の検査を行うことができる。この場合、センサ部15以外で検体液が接する面はシリコーン樹脂となるため、液溜め部130の材料により検査に悪影響が生じるのを未然に防止することができる。
【0051】
図7は、第6の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図である。この実施形態は、例えば基板に形成されたセンサ部を囲むように基板上に土手構造を形成する方法である。なお、図7では、2つのセンサ部を有する例で説明する。
【0052】
まず、図7(a)に示すように、支持基板100上にマウントされた半導体基板10上に、センサ部15を囲むように、シリコーン樹脂からなる土手121を形成する。この土手121は、第1〜第3の実施形態で説明した何れかの方法で作製する。
【0053】
なお、土手121は、センサ部15の外側でも良いし、センサ部15と一部重なっていても良い。また、半導体基板10を支持基板100上にマウントする前に、上記の土手形成を行っても良い。
【0054】
次いで、図7(b)に示すように、センサ部15を蓋するように、土手121上にPEEK(Polyether Ether Ketone)材或いは弗素樹脂等からなるマスク140を形成する。
【0055】
次いで、図7(c)に示すように、マスク140で覆われていない領域にシリコーン樹脂を塗布し、シリコーン樹脂からなる封止部122を形成する。
【0056】
次いで、図7(d)に示すように、紫外線の照射により封止部122のシリコーン樹脂を硬化する。その後、マスク140を除去する。これにより、センサ部15上に側壁がシリコーン樹脂からなる液溜め部130が構成される。
【0057】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0058】
実施形態では、センサ部を囲む土手の形成に適用した例を説明したが、これに限らず、シリコーン樹脂の凸型パターンを有する半導体装置の製造に適用することができる。
【0059】
実施形態では、シリコーン樹脂として紫外線硬化型を例にしたが、これに限らず、何らかのエネルギーにより選択的に硬化するものであれば良い。
【0060】
型枠として用いたレジストは必ずしもフォトレジストに限るものではなく、パターン形成が容易で、シリコーン樹脂に対して選択的に除去できる材料であればよい。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0062】
(付記)
実施形態で説明したパターン形成方法及び半導体装置の特徴は、以下の通りである。
【0063】
(1)基板10上にレジストパターン11を形成する工程と、基板10上に、レジストパターン11を埋め込むようにシリコーン樹脂層21を形成する工程と、シリコーン樹脂層21の表面にフィルム31を押し当てて貼り付ける工程と、フィルム31の貼り付け後に、シリコーン樹脂層21を硬化する工程と、シリコーン樹脂層21の硬化後又は硬化前に、シリコーン樹脂層21からフィルム31を剥離する工程と、フィルム31の剥離後に、レジストパターン11を除去する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0064】
(1-1)フィルム31を貼り付ける工程は、ローラ32を用いてフィルム31をシリコーン樹脂層21に押し当てながら貼り付けることである。
【0065】
(1-2)フィルム31を貼り付ける際の加圧は、1kgf/cm2 以上である。
【0066】
(1-3)シリコーン樹脂層21は紫外線硬化型であり、フィルム31は紫外光を透過するものである。
【0067】
(1-4)シリコーン樹脂層21を硬化させる工程は、シリコーン樹脂層21に紫外光を照射することである。
【0068】
(1-5)フィルム31を貼り付ける工程は真空中で行い、その時の真空度は10torr以下である。
【0069】
(1-6)フィルム31を剥離した後に、レジストパターン11上のシリコーン樹脂層21の残渣を、ドライエッチング又は研削により除去する。
【0070】
(1-7)現像液は、少なくともジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ペンタン、パーフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロデカリン、キシレン、エーテル、ヘキサン、トリクロロエチレン、ノルマルヘプタン、シクロヘキサン、ジメトキシエタン、トルエン、エチルアセテート、メチルエチルケトンを溶剤として含む。
【0071】
(2)基板10上に紫外線硬化型のシリコーン樹脂層21を形成する工程と、シリコーン樹脂層21に、該層21を凸状に残す領域に選択的に紫外線を照射し、該照射部分を硬化する工程と、シリコーン樹脂層21の硬化されていない部分を現像液により除去する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0072】
(3)基板10上にレジストパターン11を形成する工程と、レジストパターン11が形成された基板10上に紫外線硬化型のシリコーン樹脂層21を形成する工程と、シリコーン樹脂層21のレジストパターン11上以外の領域に紫外線を照射し、該照射部分を硬化する工程と、シリコーン樹脂層21の硬化されていない部分を現像液により除去する工程と、シリコーン樹脂層21の除去された部分を通してレジストパターン11を除去する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0073】
(4)基板10上に、流路とすべきレジストパターン11を形成する工程と、レジストパターン11が形成された基板10上に紫外線硬化型のシリコーン樹脂層21を形成する工程と、シリコーン樹脂層21に、一部がレジストパターン11と重ならないように部分的に紫外線を照射し、該照射領域を硬化する工程と、硬化されていないシリコーン樹脂層21を現像液により除去する工程と、シリコーン樹脂層21の除去された部分を通してレジストパターン11を除去する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0074】
(5)基板10上に、流路とすべきレジストパターン11を形成する工程と、基板10上に、レジストパターン11を埋め込むように第1のシリコーン樹脂層21を形成する工程と、第1のシリコーン樹脂層21の表面にフィルム31を押し当てて貼り付ける工程と、フィルム31の貼り付け後に、第1のシリコーン樹脂層21を硬化する工程と、フィルム31の硬化後又は硬化前に、第1のシリコーン樹脂層21からフィルム31を剥離する工程と、レジストパターン11及び第1のシリコーン樹脂層21の表面上に紫外線硬化型の第2のシリコーン樹脂層22を形成する工程と、第2のシリコーン樹脂層22に、一部がレジストパターン11と重ならないように部分的に紫外線を照射し、該照射領域を硬化する工程と、第2のシリコーン樹脂層22の硬化されていない部分を現像液により除去する工程と、第2のシリコーン樹脂層22の除去された部分を通してレジストパターン11を除去する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0075】
(6)検体液の物理又は化学的情報を検出するためのセンサ部15が設けられた基板10上に、センサ部15を囲むように第1のシリコーン樹脂層(土手)121を形成する工程と、第1のシリコーン樹脂層121で囲まれた領域を覆うように、第1のシリコーン樹脂層121上にマスク140を形成する工程と、マスク140で覆われていない第1のシリコーン樹脂層121上及び基板10上に、第2のシリコーン樹脂層(封止部)122を形成する工程と、第2のシリコーン樹脂層122を硬化する工程と、第2のシリコーン樹脂層122の硬化後に、マスク140を除去する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0076】
(6-1)センサ部15を囲むように第1のシリコーン樹脂層121を形成する工程は、基板10上に紫外線硬化型の第1のシリコーン樹脂層121を形成した後、センサ部15を囲むように基板10上に第1のシリコーン樹脂層121を凸状に残す領域に選択的に紫外線を照射することにより、該照射部分を硬化し、しかる後に第1のシリコーン樹脂層121の硬化されていない部分を現像液により除去することである。
【0077】
(6-2)センサ部15を囲むように第1のシリコーン樹脂層121を形成する工程は、基板10上にセンサ部15を囲むようにレジストパターン11を形成した後、レジストパターン11を埋め込むようにシリコーン樹脂層121を形成し、次いでシリコーン樹脂層121の表面にフィルム31を押し当てて貼り付け、次いでシリコーン樹脂層121を硬化させ、シリコーン樹脂層121の硬化後又は硬化前に、シリコーン樹脂層121からフィルム31を剥離し、次いでレジストパターン11を除去することである。
【0078】
(7)基板10に設けられ、検体液の物理又は化学的情報を検出するためのセンサ部15と、基板10上に、センサ部15を囲むように設けられた第1のシリコーン樹脂層(土手)121と、第1のシリコーン樹脂層121の内周よりも外側で、基板10上及び第1のシリコーン樹脂層121上に設けられた第2のシリコーン樹脂層(封止部)122と、を具備したことを特徴とする半導体装置。
【符号の説明】
【0079】
10…半導体基板
11…レジストパターン
15…センサ部
21…第1のシリコーン樹脂層
22…第2のシリコーン樹脂層
31…ラミネートフィルム
32…ローラ
121…バンク
122…封止部
130…液溜め部
140…マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7