特開2018-12073(P2018-12073A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-12073(P2018-12073A)
(43)【公開日】2018年1月25日
(54)【発明の名称】原料素材の粉砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20171222BHJP
   B02C 17/18 20060101ALI20171222BHJP
【FI】
   B02C17/16 B
   B02C17/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-143584(P2016-143584)
(22)【出願日】2016年7月21日
(71)【出願人】
【識別番号】510283801
【氏名又は名称】株式会社 テクノ・アイ
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100101166
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(72)【発明者】
【氏名】井口 惠進
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF14
4D063FF35
4D063FF36
4D063GA06
4D063GB02
4D063GC05
4D063GC14
4D063GD04
(57)【要約】
【課題】 原料素材の粉砕による微細化を、短時間でかつ確実に行うことを可能にする、原料素材の粉砕装置を提供する。
【解決手段】 この原料素材の粉砕装置1は、円筒体からなる横置き式の粉砕室3を備える装置本体2と、前記粉砕室3の中心に軸方向に沿って、回転自在に配置された回転軸6を駆動する駆動装置9とで構成されるもので、前記粉砕室3内の回転軸6は、軸方向に対して垂直になるよう設けられた複数の羽根部材7を備え、前記粉砕室3内には、多数の球状の粉砕媒体が充填される。
前記羽根部材7は、複数のブレードからなるもので、前記ブレードの回転方向の面は、平滑面7gを有するか、または回転方向の面が平滑化処理された打撃板7fを備えるよう構成されているので、原料素材を、より短時間かつ確実に粉砕することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体からなる横置き式粉砕室を備える装置本体と、前記粉砕室の中心に軸方向に沿って回転自在に配置された駆動軸を駆動する駆動装置とから構成されるものであって、
前記粉砕室内に位置する駆動軸には、
複数のブレードからなる羽根部材が、軸方向に対して鉛直となるよう設けられ、
前記ブレードの回転方向の面は、
少なくともその先端部分において、平滑面を有するか、または回転方向の面が平滑化処理された打撃板を備え、
前記粉砕室内には、
多数の粉砕媒体が充填されていること
を特徴とする原料素材の粉砕装置。
【請求項2】
前記羽根部材は、
複数のブレードからなる羽根部材を1ユニットとし、その複数を駆動軸に対して鉛直となるよう着脱自在に設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項3】
前記装置本体は、
その外側に、冷却又は加熱用のジャケットが付設されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項4】
前記粉砕室は、
その外周面に、多数の突出部が形成されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項5】
前記ジャケットは、
その内部に、多数の突出部が形成され、
前記突出部は、
先端部が球状で、前記ジャケットの内周面にリング状に形成されていること
を特徴とする請求項3に記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項6】
前記突出部は、
前記装置本体の長手方向に沿って複数設けられていること
を特徴とする請求項4又は5に記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項7】
前記羽根部材の回転速度は、
周速度で6〜20m/sであること
を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項8】
前記ブレードの厚みは、
6〜50mmであること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項9】
前記粉砕媒体は、
前記粉砕室の容量の20〜40%となる量で充填されること
を特徴とする請求項1に記載の原料素材の粉砕装置。
【請求項10】
前記回転軸は、
中空のもので、内部を流路として冷水や熱水が流れるように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の原料素材の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原料素材の粉砕装置に関するものである。
より詳しくは、原料素材の粉砕による微細化、原料素材の表面改質又は原料素材同士の反応を、短時間でかつ確実に行うことを可能にする、原料素材の粉砕装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種原料の粉砕や磨砕を必要とする製造業においては、原料素材の粉砕装置として公知のロッドミルやボールミルなどの転動ミルが広く使用されている。
【0003】
このような粉砕装置において、粉砕室を構成する円筒体内には、ロッド又はボールからなる多数の粉砕媒体が充填されている。
したがって、原料素材(被粉砕物)は、前記円筒体内に投入された後、円筒の回転に伴う原料素材の上昇落下運動による衝撃や、前記粉砕媒体との摩擦作用などによって粉砕される。
【0004】
このような原料素材の粉砕装置の一例が、特開平11−319606号公報(特許文献1)および特開2015−020127号公報(特許文献2)に開示されている。
【0005】
前記特許文献1には、媒液や潤滑剤に頼ることなく、粉体の固着を有効に防止することのできるボールミルが提案されている。
【0006】
このボールミルは、粉砕対象物および媒体ボールを投入可能な略円筒状の内周面からなる粉砕室を有し、第1軸芯回りに回転自在な筒体と、前記粉砕室の内部において、第2軸芯回りに回転自在な回転羽根とを有するボールミルであって、
前記第1軸芯および前記第2軸芯が横方向に延出され、
前記粉砕室の内周面に、第1面と第2面とからなる突部を設けてあって、前記第1面と前記内周面とが交わる部分を第1境界部とし、
前記第2面と前記内周面とが交わる部分を、第2境界部とし、
前記第1面と前記第2面とが交わる部分を、第3境界部とし、
前記第1軸芯に沿った方向視において、前記第1軸芯と前記第1境界部とを結ぶ第1直線と、前記第1軸芯と前記第2境界部とを結ぶ第2直線とで挟まれた領域内に前記第3境界部を位置させると共に、前記第3境界部を、前記第1直線および前記第2直線のうち何れか一方側に偏位させてあるものである。
【0007】
一方、前記特許文献2には、粉粒体を粉砕メディアと共に撹拌して微細化する、乾式メディア撹拌型粉砕機が提案されている。
【0008】
この乾式メディア撹拌型粉砕機は、横型筒状の粉砕容器内に軸線に沿って位置する駆動軸に取り付けられるアジテータを備えて、バッチ処理を行うもので、
前記粉砕容器の上部に開口する供給口に供給弁を備え、
前記粉砕容器の下部に開口する排出口にスクリーン及び排出弁を備え、
前記供給弁は、前記供給口に固定される弁座と、該弁座に対して近接・離間する弁体とを備え、
前記排出弁は、前記排出口に固定される弁座と、該弁座に対して近接・離間する弁体とを備えてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−319606号公報(請求項1,図1,2)
【特許文献2】特開2015−020127号公報(請求項1,図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の原料素材の粉砕装置においては、構成そのものが複雑なものであって、原料となる素材を十分に粉砕するためには、処理時間を長くして、素材を粉砕媒体に十分に接触させる必要があるという問題があった。
反面、処理時間を長くすると、過粉砕が発生し、製品の歩留りが低下してしまうという問題もあった。
【0011】
前記特許文献1に開示されているボールミルは、媒液や潤滑剤に頼ることなく、粉体の固着を有効に防止することができる点において改善されている。
しかしながら、原料素材を短時間かつ確実に処理する点において、さらなる改善が求められている。
【0012】
前記特許文献2に開示されている乾式メディア撹拌型粉砕機は、駆動軸に取り付けられるアジテータが棒状のものであるため、粉砕メディアに十分な運動を与えることが困難なものである。
したがって、粉砕容器内の全体が粉砕メディアによる大きな運動エネルギーを受ける点において、さらなる改善が求められている。
【0013】
この発明はかかる現状に鑑み、原料素材の粉砕による微細化を、短時間かつ確実に効率的に行うことを可能にする原料素材の粉砕装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、この発明にかかる請求項1に記載の発明は、
円筒体からなる横置き式粉砕室を備える装置本体と、前記粉砕室の中心に軸方向に沿って回転自在に配置された駆動軸を駆動する駆動装置とから構成されるものであって、
前記粉砕室内に位置する駆動軸には、
複数のブレードからなる羽根部材が、軸方向に対して鉛直となるよう設けられ、
前記ブレードの回転方向の面は、
少なくともその先端部分において、平滑面を有するか、または回転方向の面が平滑化処理された打撃板を備え、
前記粉砕室内には、
多数の粉砕媒体が充填されていること
を特徴とする原料素材の粉砕装置である。
【0015】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の原料素材の粉砕装置において、
前記羽根部材は、
複数のブレードからなる羽根部材を1ユニットとし、その複数を駆動軸に対して鉛直となるよう着脱自在に設けられていること
を特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の原料素材の粉砕装置において、
前記装置本体は、
その外側に、冷却又は加熱用のジャケットが付設されていること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の原料素材の粉砕装置において、
前記粉砕室は、
その外周面に、多数の突出部が形成されていること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項3のいずれかに記載の原料素材の粉砕装置において、
前記ジャケットは、
その内部に、多数の突出部が形成され、
前記突出部は、
先端部が球状で、前記ジャケットの内周面にリング状に形成されていること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項4又は5に記載の原料素材の粉砕装置において、
前記突出部は、
前記装置本体の長手方向に沿って複数設けられていること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項1〜6のいずれかに記載の原料素材の粉砕装置において、
前記羽根部材の回転速度は、
周速度で6〜20m/sであること
を特徴とする原料素材の粉砕装置である。
【0021】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1〜7のいずれかに記載の原料素材の粉砕装置において、
前記ブレードの厚みは、
6〜50mmであること
を特徴とするものである。
【0022】
この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1に記載の原料素材の粉砕装置において、
前記粉砕媒体は、
前記粉砕室の容量の20〜40%となる量で充填されること
を特徴とするものである。
【0023】
この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項1に記載の原料素材の粉砕装置において、
前記駆動軸は、
中空のもので、内部を流路として冷水や熱水が流れるように構成されていること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明にかかる原料素材の粉砕装置は、円筒体からなる横置き式の粉砕室を備える装置本体と、前記粉砕室の中心に軸方向に沿って、回転自在に配置された駆動軸を駆動する駆動装置とで構成されている。
前記粉砕室内の駆動軸は、軸方向に対して垂直になるよう設けられた複数の羽根部材を備え、前記粉砕室内には、多数の球状の粉砕媒体が充填される。
【0025】
前記羽根部材は、複数のブレードからなるもので、前記ブレードの回転方向の面は、少なくともその先端部分において、平滑面を有するか、または回転方向の面が平滑化処理された打撃板を備えるよう構成されている。
この原料素材の粉砕装置は、前記粉砕室内で前記羽根部材によって、前記原料素材と前記粉砕媒体を回転攪拌するに際して、前記粉砕媒体は、前記平滑面と衝突し易いので、この平滑面との衝突によって、前記粉砕媒体が弾き飛ばされ拡散し易く、前記粉砕媒体間での衝突が発生し易くなる。
したがって、前記粉砕媒体間での挟撃と衝突による運動エネルギー(重力加速度)が発生し易く、しかも、より高い運動エネルギーが得られるので、この運動エネルギーを利用して、前記原料素材を、より短時間かつ確実に粉砕することができる。
【0026】
特に、この原料素材の粉砕装置によれば、原料素材の粉砕による微細化のみならず、原料素材の表面改質や、原料素材同士の反応なども、短時間かつ確実に行うことが可能となる。
したがって、これらの処理の効率も大幅に向上させることができる。
【0027】
さらに、前記駆動軸に付設する羽根部材を、所定の数のブレードで構成し、この羽根部材を1ユニットとして、その複数を駆動軸に対して鉛直となるよう着脱自在に設けることによって、使用中に羽根部材の一部が損傷した場合などにおいて、損傷した羽根部材を含むユニットのみを交換することで、容易に修理することが可能となる。
【0028】
さらにまた、この原料素材の粉砕装置においては、前記粉砕室の外周面に、多数の突出部を設けることによって、粉砕室の面積を大きくしているので、より速く粉砕室内を冷却することが可能で、粉砕や表面改質、反応の際の効率を図ることができる。
【0029】
前記羽根部材については、その回転速度を、周速度で6〜20m/sにし、及び/又はこれを構成する各ブレードの厚みを、6〜50mmにすることによって、原料素材の撹拌混合や粉砕などの際に十分な衝撃力を発生させることが可能となり、前記撹拌混合や粉砕などの効率をより一層高めることが可能となる。
【0030】
なお、この原料素材の粉砕装置において、前記駆動軸を中空のものとし、その内部を流路として冷水や熱水を流すように構成することによって、前記粉砕室内の温度を一定に保つことができ、その結果、粉砕や表面改質、反応の際の効率を一層高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】この発明にかかる原料素材の粉砕装置の一例を示す概略説明図である。
図2】この発明にかかる原料素材の粉砕装置の粉砕室の一例を示す断面図である。
図3図1に示す粉砕装置の断面拡大図である。
図4】この発明にかかる原料素材の粉砕装置を構成する羽根部材の一例を示す概略説明図である。
図5図4に示す羽根部材の要部の一例を示す概略説明図である。
図6】羽根部材の他の例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明にかかる原料素材の粉砕装置の実施の一例を、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
なお、この発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を変更しない範囲内で種々変更を加えることができるものである。
【0033】
この発明にかかる原料素材の粉砕装置1は、図1に示すように、円筒体からなる横置き式の粉砕室3を備える装置本体2と、前記粉砕室3の中心に軸方向に沿って回転自在に配置された駆動軸6を駆動するための駆動装置9から構成されている。
【0034】
前記粉砕室3は、ステンレスなどの耐摩耗性を有する金属材料や、セラミックライニング材で構成されるものである。
この粉砕室3は、図1〜2に示すように、その上部外周には、粉砕の対象物となる原料素材や粉砕媒体を投入するため、着脱自在なキャップを有する投入口、具体的には3aが、所要の間隔を存して複数配置されている。
一方、その下部外周には、粉砕処理された原料素材や粉砕媒体を排出するため、下方に向かって開口する排出口3bが設けられている。
なお、この実施例において、前記投入口3aと排出口3bは、それぞれ前記粉砕室3の上下に別々に設けられているが、前記投入口3aと排出口3bを兼ねるように、一方にのみ開口部を設けてもよい。
さらに、この実施例において、前記排出口3bには、粉砕処理された原料素材は通過するが、粉砕媒体は通過しない、所要の大きさのメッシュの網状体が取り付けられている。
【0035】
この実施例において、前記粉砕装置1は、前記粉砕室3の上部に設けられた投入口3aから原料素材を連続的に投入しつつ、下部に設けられた排出口3bから処理物を連続的に排出するよう構成されているので、粉砕などの処理を連続的に行うことができる。
【0036】
この実施例において、前記粉砕室3は、その内径と長さの比が1:1〜1:5になるように構成されている。
なお、前記内径と長さの比は、一定量の原料素材を一定の処理時間で粉砕する、いわゆるバッチ式の粉砕処理を行う場合には、好ましくは1:1〜1:1.3である。
また、連続的に原料素材を投入して粉砕処理を行う場合には、好ましくは1:1.5〜1:3である。
【0037】
この発明にかかる原料素材の粉砕装置1においては、前記粉砕室3を、周方向に回転又は回動可能に構成することができる。
このような構成によって、前記キャップ及び前記メッシュの網状体の着脱に際しては、前記粉砕室3を回転又は回動させることができるので、その着脱が容易なものとなる。
さらに、処理物の排出に際して、前記処理物が前記メッシュの網状体に目詰まりすることや、運転の際のブレードの回転・接触による前記メッシュの網状体及びその周囲近傍における摩耗を防止することができる。
なお、前記粉砕室3の回転又は回動を、電動機などの公知の駆動装置を用いて行ってもよく、前記駆動軸6を駆動させながら行ってもよい。
前記回転の方向については、前記駆動軸6の回転方向と同じであってもよく、逆であってもよい。
【0038】
前記装置本体2は、図3に示すように、前記粉砕室3の外側に補強部材3gを介して、冷却又は加熱用のジャケット8を備えるものである。
この実施例において、前記粉砕室3の外周面に、周方向にリブ3f,3f・・・を軸方向に沿って複数形成することによって、表面積を増やし、その内部において、より速い冷却を可能とし、粉砕や表面改質、反応の際の効率を高めるよう構成されている。
なお、前記ジャケット8の内周面に、内部に突出する弧状の突出部を多数形成することによって、あるいは前記粉砕室3の外周面に上方に向かって突出する、多数の突出部を複数形成することによって、前記同様の効果が得られる。
例えば、前記ジャケット8の内周面に、先端部が球状の前記突出部を、リング状に前記装置本体2の長手方向に沿って複数形成することができる。
【0039】
すなわち、図3において、前記冷却又は加熱用のジャケット8の外周面には、内部と連通する、冷却水などの冷却媒体又は加熱水などの熱媒体の流入口3dと流出口3eが形成されると共に、前記粉砕室3の外周面と前記冷却又は加熱用のジャケット8の内周面との間には、前記冷却媒体又は熱媒体が流れる流路が形成され、この流路を通じて冷却媒体又は熱媒体が流れるように構成されている。
したがって、その内部において、より速い冷却又は加熱を可能とし、粉砕や表面改質、反応の際の効率を高めることを可能としている。
その際、前記粉砕室3の外周面において、前記リブ3fを軸方向に沿って複数形成する場合には、図示しないが、前記リブ3fの側面に、冷却媒体又は熱媒体の流路としての貫通口を形成することによって、冷却媒体又は熱媒体が流路内の全体に流れるように構成してもよい。
【0040】
さらに、図2に示すように、前記粉砕室3には、その内部と連通するキャップを有する通気口3cが設けられている。
したがって、この通気口3cから不活性化ガスを導入し、あるいは吸引して真空状態にすることによって、粉砕や表面改質、反応の際の効率をさらに高めることが可能である。
【0041】
前記粉砕室3の中心には、図1に示すように、軸方向に沿って、前記モータ10によって作動する駆動装置9の駆動軸6が回転自在に配置されている。
この実施例において、前記粉砕室3の相対する前後の側面には、それぞれ軸受4,5が配され、これらの軸受4,5間に前記駆動軸6が回転自在に軸支されている。
前記駆動軸6は、前記駆動装置9の駆動軸9aからの回転動力が、減速機11およびジョイントギア12を介して伝達されることによって回転する。
【0042】
なお、この実施例において、前記駆動軸6は中空のもので、内部を流路6aとして冷水や熱水が流れるように構成されている。
かかる構成を採用することによって、前記粉砕室3内の温度を一定に保つことができるので、粉砕や表面改質、反応の際の効率を一層高めることが可能となる。
【0043】
前記装置本体2内の駆動軸6には、図2及び4に示すように、複数のブレードからなる羽根部材7が、軸方向に対して並列状態で鉛直となるようキー等で着脱自在に取り付けられている。
【0044】
この発明において、前記ブレードの回転方向の面は、少なくともその先端部分、例えば、10〜100mmの範囲が平滑化処理されて平滑面を形成するよう構成される。
したがって、前記粉砕室3内で前記羽根部材7によって、原料素材と粉砕媒体を回転攪拌するに際して、前記粉砕媒体は、前記平滑面と衝突し易いので、この平滑面との衝突によって前記粉砕媒体が弾き飛ばされ拡散しやすく、前記粉砕媒体間での衝突が発生し易くなる。
【0045】
なお、この実施例において、前記ブレード7a,7b,7cの回転方向R(図4参照)の面の先端部分には、図5に示すように、回転方向Rの面が平滑化処理されて平滑面7gを形成した打撃板7fが、例えば、肉盛り溶接によって設けられている。
このような構成とした場合にも、前記同様、平滑面7gとの衝突によって前記粉砕媒体が弾き飛ばされ拡散しやすく、前記粉砕媒体間での衝突が発生し易くなる。
このような打撃板7fも、前記同様、前記ブレード7a,7b,7cの回転方向Rの面の少なくともその先端部分、例えば、10〜100mmの範囲に、設けることができる。
なお、前記打撃板7fについては、摩耗防止のため、ステライトやコルモノイなどの耐摩耗鋼からなる摩耗防止材で構成することが好ましい。
その際、前記打撃板7fの肉厚は、5〜20mm程度とすることが好ましい。
【0046】
前記平滑面の大きさについては、前記粉砕室の大きさなどに応じて適宜選択することができるが、好ましくは縦200mm×横50mm〜縦10mm×横5mmである。
【0047】
前記羽根部材7及びこれを構成するブレード7a,7b,7cは、その材質については特段の制限がないので、選択される原料素材に応じて適宜選択すればよい。
したがって、例えば、ステンレスなどの金属素材や、アルミナやジルコニア、その他窒化ケイ素などのセラミック素材を選択することができる。
なお、前記羽根部材7及びこれを構成するブレード7a,7b,7cを、アルミナやジルコニア、窒化ケイ素などのセラミック素材で構成することによって、摩耗による金属粉の発生を抑制することができる。
【0048】
この実施例においては、図4に示すように、前記羽根部材7は、長さの等しい3つのブレード7a,7b,7cを1ユニットとして、図2に示すように、5ユニットを連結させたもので、1ユニット毎に取り換え可能に構成したものである。
このような構成を採用することによって、使用中に羽根部材7の一部が損傷した場合などにおいては、損傷した羽根部材を含むユニットのみを交換することで、容易に修理することが可能となる。
なお、この実施例において、前記3つのブレードの長さ及び厚みは全て同一としているが、その長さについては、特に制限はなく、これらの全てを同一としなくてもよい。
【0049】
かかる羽根部材7は、これを備える駆動軸6の回転に伴って回転する。
その際、前記羽根部材7の回転速度は処理される原料素材にもよるが、例えば、周速度で6〜20m/s、好ましくは周速度で6〜14m/sである。
周速度が前記周速度6m/sより遅い場合には、衝撃力に起因する高い運動エネルギーが発生しない傾向にあり、周速度20m/sよりも速い場合には、後述する粉砕媒体は揃って回転するため粉砕媒体同士の衝突が発生せず、十分な衝撃力が発生しない傾向にある。
なお、前記羽根部材7を金属素材で構成した場合、その回転速度は、より好ましくは周速度で8〜13m/sである。
【0050】
前記羽根部材7を構成するブレード(7a,7b,7c)の厚みは、好ましくは6〜50mm、より好ましくは6〜25mmである。
厚みが6mm未満の場合には、各ブレードの破損が発生し易い傾向にあり、50mmを超える場合には、駆動軸6を回転させるために、より大きな駆動力が必要となり、モータや駆動軸に大きな負荷がかかるため、粉砕などの効率が悪くなる傾向にある。
【0051】
前記羽根部材7を構成するブレード(7a,7b,7c)の端縁と、前記粉砕室3の内周との間隔(隙間)は、好ましくは10〜100mm程度、より好ましくは10〜30mm程度、さらに好ましくは10〜15mm程度である。
かかる構成とすることによって、原料素材を効果的および/または効率的に粉砕し、表面改質し、原料素材同士の反応などを行うことができる。
【0052】
前記羽根部材7は、前記駆動軸6上に装着されるもので、所定の枚数のブレードを、その方向(角度)を変えて組み合わせて1ユニットとしたものである。
【0053】
なお、前記羽根部材7を構成するブレード7a,7b,7cは、それぞれ図4に示すように、その中央に前記駆動軸6が貫通する貫通孔7dが形成され、さらに、この貫通孔7dの所定の位置には、外方に向かって切欠いて形成された切欠き7eが設けられている。
さらに、前記駆動軸6の外周上には、軸方向に沿って突起が形成されているので、これを前記切欠き7eと嵌合させることで、前記羽根部材7を前記駆動軸6に固定することができる。
その際、この切欠き7eの位置を、ブレード毎に変えることで、各ブレードの方向を変えることができる。
【0054】
この実施例において、前記羽根部材7は、図4に示すように、3枚のブレード7a,7b,7cから構成されているが、その枚数ないし各ブレード間の角度については、前記粉砕室の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
したがって、図6に示すように、2枚のブレード7a,7bで構成することもできる。
前記ブレードの枚数ないしブレード間の角度については、好ましくは2〜24枚(すなわち各ブレード間の角度180°〜15°)、より好ましくは2〜12枚(すなわち各ブレード間の角度180°〜30°)である。
【0055】
前記粉砕室3内には、粉砕媒体として、図示しないが、多数のボールが充填される。
このボールは、所要の大きさの球体からなるもので、アルミナやジルコニア、窒化ケイ素などのセラミック素材や耐摩耗性を有する金属素材で構成される。
なお、前記ボールをセラミック素材で構成した場合には、摩耗による金属粉の発生が抑制される。
この実施例において、前記ボールは、直径5mmを有するものであるが、直径3〜15mm程度のものであってもよい。
【0056】
前記ボールの充填量は、原料素材に応じて適宜選択すればよいが、前記粉砕室3の容量に対して好ましくは20〜40%、より好ましくは30〜40%である。
【0057】
かかる原料素材の粉砕装置1を使用して、原料素材を粉砕するメカニズムについて説明する。
【0058】
原料素材の粉砕に際し、前記ジャケット8を利用し、前記流入孔3dから前記装置本体2に加熱水もしくは冷却水を導入し、装置本体2を加熱もしくは冷却する。
ついで、前記装置本体2に設けられた投入口3aから、前記粉砕室3内に粉砕媒体として所要の大きさのボールと、原料素材を定量供給したのち、モータ10を始動させて駆動装置9を作動させ、駆動軸6を回転させてブレード7a,7b,7cを回転させる。
【0059】
前記駆動軸6が回転し始めると、原料素材は、前記粉砕室3内で前記ブレード7a,7b,7cによって回転攪拌されるが、同様に、前記粉砕室3内に充填されている前記ボールも回転攪拌される。
【0060】
その際、前記ボールは、高速回転している前記羽根部材7を構成している各ブレード7a,7b,7cの先端部分の平滑面7gと確実に衝突するので、弾き飛ばされて拡散し、高い頻度で互いに衝突して衝撃力を発生させ、大きな重力加速度(200〜300G)を発生させる。
その結果、前記原料素材は、前記ボール間で挟撃されることに加えて、前記衝撃力を受けることで、粉砕される。
【0061】
したがって、この発明にかかる原料素材の粉砕装置1によれば、前記衝撃力に起因する高い運動エネルギーが発生し易く、これを利用して粉砕処理を行うことができるので、短時間、特に従来の原料素材の粉砕装置の1/5〜1/20の時間で確実に粉砕処理を行うことが可能である。
【0062】
さらに、前記原料素材の粉砕装置1は、粉砕媒体同士の衝突による衝撃力を主体とするものであって、ビーズミルのように撹拌によって粉砕媒体を擦り合わせるのではなく、ボールミル、振動ミルのように粉砕室(容器)やボールの回転により粉砕媒体を擦り合わせるのでもないので、粉砕媒体と前記粉砕室3の内周面との間での摩擦が少なく、この内周面における摩耗の発生が少ない。
【0063】
なお、粉砕処理された原料素材の回収については、公知の方法によって行うことができる。
例えば、前記粉砕処理された原料素材を、ブロワーで吸引して、捕集・分離のための装置(例えばサイクロン)で回収することができる。
【0064】
この実施例においては、前記原料素材の粉砕装置を使用して、メカニカルミリングなどの粉砕処理を行う例を示したが、メカニカルアロイング、メカノケミカルなどの機械的表面改質及び反応の処理にも適用することができる。
【0065】
また、この実施例においては、前記原料素材の粉砕装置を、乾式の原料素材の粉砕装置として使用する例を示したが、湿式の原料素材の粉砕装置に適用することも可能である。
【0066】
なお、この発明において、前記原料素材については、特に制限はない。
例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Gb、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、及びGd、並びにそれら2種類以上の複合物、並びにそれらの酸化物、窒化物、及び炭化物などから選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明にかかる原料素材の粉砕装置は、原料素材の粉砕による微細化や原料素材の表面改質、又は原料素材同士の反応を短時間かつ確実に行うことを可能にするものである。
したがって、粉体製品を製造ないし取扱う業界に利用される可能性の高いものである。
【符号の説明】
【0068】
1 原料素材の粉砕装置
2 装置本体
3 粉砕室
3a 投入口
3b 排出口
3c 通気口
3d 冷却水又は温水の流入口
3e 冷却水又は温水の排出口
3f リブ
3g 補強部材
4,5 軸受
6 駆動軸
6a 流路
7 羽根部材
7a〜7c ブレード
7d 貫通孔
7e 切欠き
7f 打撃板
7g 平滑面
8 ジャケット
9 駆動装置
10 モータ
11 減速機
12 ジョイントギア
R 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6