【解決手段】本発明の送り台装置は、水平に設置された送り台(9)と、第1の駆動源(11)および第2の駆動源(31)と、垂直方向に沿う第1軸(7)のまわりに回転する第1のサドル(25)と、第1のサドルに設けられ、水平横方向に沿う第2軸(8)のまわりに回転する第2のサドル(51)と、第1の駆動源のトルクを伝達する第1のプロペラシャフト(13)と、第2の駆動源のトルクを伝達する第2のプロペラシャフト(35)と、第1のプロペラシャフトの回転を第1のサドルに伝達する第1の伝達装置と、第2のプロペラシャフトの回転を第2のサドルに伝達する第2の伝達装置と、対象物を把持する把持装置(52)とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に従って、本発明に係る送り台装置の実施形態を説明する。
図1は本実施形態に係る送り台装置10の斜視図、
図2は本実施形態に係る送り台装置10の縦断面図、
図3は本実施形態に係る送り台装置10の正面図である。また、
図4は
図2のIV−IV線断面図、
図5は
図2のV−V線断面図、
図6は
図5のVI−VI線断面図、
図7は本発明の実施形態に係る送り台装置の動力伝達および送り台装置に供給される流体の通路を示す模式図である。
【0010】
ここで、各図において、送り台装置10が適用される洗浄装置の正面側(送り台9の頭部9aと対面する側)から見て左右方向(水平横方向)をX軸、前後方向(水平奥行き方向)をY軸、上下方向(垂直方向)をZ軸と定め、Z軸方向に沿う第1軸7まわりの回転方向をC1−C2方向、X軸方向に沿う第2軸8まわりの回転方向をA1−A2方向と定める。そして、この定めに従い、本明細書では、適宜、X軸の正方向を「右」、X軸の負方向を「左」、Y軸の正方向を「後」又は「基端」、Y軸の負方向を「前」又は「先端」、Z軸の正方向を「上」、Z軸の負方向を「下」と言うことにする。なお、第2軸8は初期状態においてX軸方向(水平横方向)に向いているが、説明の便宜上、
図1〜4では、第2軸8をY軸方向に向けるように、第1のサドル25を初期状態から第1軸7のまわりに90°回転した状態を示している。
【0011】
送り台装置10は、例えば洗浄装置の直交型3軸移動装置に、洗浄装置の前後方向に水平な状態で横たわるように設けられる。
図1等に示すように、送り台装置10の先端部(前端部)には、Z軸方向(垂直方向)に沿う第1軸7のまわりに回転する第1のサドル25が設けられている。第1のサドル25には、X軸方向(水平横方向)に沿う第2軸8のまわりに回転する第2のサドル51が設けられている。第2のサドル51には、ハンド53(把持装置)が着脱自在に設けられる。
【0012】
中空の円柱状の送り台9は、Y軸方向に延びて設けられている。送り台9の手前側の先端部には、略方形の頭部9aが設けられている。送り台9の奥側の基端部(後端部)には、第1の駆動装置(第1の駆動源)11および第2の駆動装置(第2の駆動源)31が設けられる。第1の駆動装置11および第2の駆動装置31は、サーボモータの他、カム装置、油圧シリンダ等が利用される。洗浄装置に適用するときには、送り台9は、テレスコカバー、ジャバラ、巻き取り式カバーその他の伸縮カバーを貫通して頭部9aが洗浄領域71に、第1の駆動装置11および第2の駆動装置31が伸縮カバーの後方に位置する。なお、送り台9は中空構造の柱状であれば良く、その横断面(ZX平面に平行な断面、以下同じ)は、円形に限らず矩形断面、菱形など、自由な形状を取り得る。
【0013】
送り台9の内部には、中空軸である第2のプロペラシャフト35がベアリング36によって、送り台9の長手方向(Y軸方向)に沿って回転可能に設けられている。そして、第2のプロペラシャフト35のさらに内部に、第1のプロペラシャフト13がベアリング14によって回転可能に設けられている。第1のプロペラシャフト13は、第2のプロペラシャフト35を貫通している。送り台9、第2のプロペラシャフト35、および第1のプロペラシャフト13は、それらの中心軸6がいずれも同軸になるように設けられている。よって、第1のプロペラシャフト13および第2のプロペラシャフト35は、中心軸6のまわりに回転する。そして、第1のプロペラシャフト13は第1の駆動装置11のトルク、回転速度および回転量を、第2のプロペラシャフト35は、第2の駆動装置31のトルク、回転速度および回転量を、頭部9aの内部に設けられた動力転換機構および減速機構(いずれも後述)にそれぞれ伝達する。
【0014】
2本のプロペラシャフトが同軸上に設けられているため、コンパクトに構成できる。そして安価に製造できる。また、それぞれのプロペラシャフトを精度よく組立できる。そのため、動力伝達系のバックラッシ・振動を制御しやすい。なお、第1のプロペラシャフト13および第1の駆動装置11と、第2のプロペラシャフト35および第2の駆動装置31の位置関係は互いに入れ換えても良い。すなわち、第1のプロペラシャフト13と第2のプロペラシャフト35の一方が他方に貫通して、かつ、両者が中心軸6上に設けられていれば良い。
【0015】
続いて主に
図4〜
図6を参照して、送り台9の内部構造について説明する。
図6に示すように、第1のプロペラシャフト13と第1の駆動装置11の出力軸はカップリング12で連結される。カップリング12は第1の駆動装置11の種類に応じて選択される。第1の駆動装置11がサーボモータの場合、カップリング12はサーボカップリングが利用される。第1のプロペラシャフト13の先端部には、第1の歯付プーリ15が設けられている。
【0016】
図5に示すように、頭部9aの内部の上方左寄りの位置には、第1のオフセットシャフト18が設けられている。
図6に示すように、第1のオフセットシャフト18は、第1のプロペラシャフト13および第2のプロペラシャフト35と平行、かつ、送り台9とも平行に設けられている。第1のオフセットシャフト18は、ベアリング19によって回転可能に設けられている。第1のオフセットシャフト18の後方には、第2の歯付プーリ17が設けられている。第1の歯付プーリ15と第2の歯付プーリ17との間に第1の無端歯付ベルト16が張られている。
【0017】
第1の無端歯付ベルト16および後述の第2の無端歯付ベルト38は、例えばポリアミド系繊維、カーボン繊維などのピアノ線よりも伸張性の低い繊維を芯線としたベルトを利用できる。このとき、第1の無端歯付ベルト16および第2の無端歯付ベルト38の円周方向の伸びが小さいため、テンションプーリを設けず、軸間距離を固定した状態で必要なテンションを加えられる。なお、上述の構成に替えて、テンションプーリを設けても良い。第1の歯付プーリ15、第2の歯付プーリ17、および第1の無端歯付ベルト16に替えて、平歯車、やまば歯車、はすば歯車またはスプロケットおよび無端チェインを利用できる。歯車機構を用いる場合、軸間距離を調整してバックラッシを調整できる。
【0018】
頭部9aは、送り台9の長手方向に送り台9から分離可能に設けられる。そして、第1のオフセットシャフト18は、軸部材である後方側シャフト18aと、前方側シャフト18bとに分割可能に構成され、後方側シャフト18aと前方側シャフト18bとは、スプライン18cで結合されている。後方側シャフト18aには、スプライン軸が設けられている。後方側シャフト18aは、送り台9側に回転可能に設けられている。前方側シャフト18bは、頭部9a側に回転可能に設けられている。そして、頭部9aが送り台9に結合されるときに、後方側シャフト18aのスプライン軸が前方側シャフト18bのスプライン穴に挿入されて、後方側シャフト18aと前方側シャフト18bとが結合される。このように構成されることで、送り台9と頭部9aとの分割ができ、組立・分解を行いやすくできる。そして、第1のオフセットシャフトの長さをスプライン18cによって調整できる。このため、傘歯車20a、20b間のバックラッシを調整できる。
【0019】
なお、トルク等の設計条件に応じて、スプライン18cに替えてセレーションを用いても良い。また、組立・分解を考慮する必要がなければ、第1のオフセットシャフト18を分離しない1本の軸部材で構成しても良い。
【0020】
第1のオフセットシャフト18の先端には、第1の動力転換機構20が設けられている。第1の動力転換機構20は、第1のオフセットシャフト18のY軸まわりの回転を第1軸7と平行なZ軸まわりの回転に転換して、第1のオフセットシャフト18の駆動力を第1の動力転換機構20に連結された第1の中間シャフト22に伝達する。なお、第1軸7と送り台9の長手方向とは垂直を成している。第1の動力転換機構20は、互いに噛合う1組の傘歯車20a、20bで構成されている。第1の動力転換機構20の動力は、第1の中間シャフト22を介して第1の減速機構24に伝達される。よって、本実施形態では、広義な意味において、第1の動力転換機構20と、第1の中間シャフト22と、第1の減速機構24とで第1の減速装置が構成されている。
【0021】
頭部9aの内部の中央先端部には、第1の減速機構24が設けられている。第1の減速機構24の重心G1は、送り台9の中心部に設けられる(
図3参照)。ここで、中心部とは、送り台9の柱状部の横断面の重心G2付近をいう。
図4に示すように、第1の減速機構24は、第1段減速機である入力歯車機構24aと、第2段減速機である低バックラッシ減速機24bとを有している。
【0022】
入力歯車機構24aは、第1の中間シャフト22の下端部に設けられた小歯車24a1と、この小歯車24a1と噛合い、低バックラッシ減速機24bの入力軸24b1に設けられた大歯車24a2とからなる。入力歯車機構24aの小歯車24a1、大歯車24a2は、平歯車、はすば歯車、やまば歯車を用いられる。
【0023】
なお、入力歯車機構24aは、小歯車24a1と大歯車24a2との組合せに加えて、遊星歯車機構を用いても良い。このとき、入力軸をサンギヤに、出力軸をプラネタリギヤに設定できる。また、内歯車を取り除いても良い。
【0024】
低バックラッシ減速機24bは、中空の第1の出力軸24b2を備えている。低バックラッシ減速機24bは、バックラッシが非常に小さいか、0である減速機を含む。低バックラッシ減速機24bとしては、波動歯車機構、ローラギヤカム減速機構、遊星歯車機構、ピン歯車機構等が用いられる。第2段減速機として低バックラッシ減速機24bを用いることにより、第1の駆動装置11から低バックラッシ減速機24bまでの接続の間に蓄積されたバックラッシを低バックラッシ減速機24bの減速比で除した量までバックラッシを縮小できる。そのため、第1の出力軸24b2の遊びを小さくできる。
【0025】
なお、第1の動力転換機構20と、第1の中間シャフト22と、第1の減速機構24とを設けるのに替えて、中空出力軸を持ち、入力軸と出力軸が90°ねじれの関係にある低バックラッシ減速機1台を用いても良い。
【0026】
また、減速機構としては、上述の構成に替えて、ねじ歯車機構、ウォーム歯車機構その他の入力軸と出力軸がねじれ位置にある減速機構を利用できる。入力軸と出力軸がねじれ位置にある減速機構を利用すれば、回転方向の方向転換と、減速を同時に行うことができる。この場合においても、減速機構は低バックラッシ減速機であることが望ましい。
【0027】
第1の出力軸24b2の先端部には、第1のサドル25が設けられている。
図1を参照して、半円筒状の第1のサドル25は、その外周に円筒面25aを持つ。円筒面25aは、第2軸8をその中心軸としている。第1のサドル25の外周面の一部は、送り台9の下端よりも上側、つまり送り台9の中心側に寄せて設けられている。第1のサドル25は、C1−C2方向に自由に回転できる。第1のサドル25の回転角度は物理的に制限されない。また、第1のサドル25は、その回転角度を第1の駆動装置11によって割り出せる。なお、第1のサドル25の回転幅(回転可能な範囲)をメカニカルストッパまたは電子的手段によって制限しても良い。第1のサドル25の内部構造については後述する。
【0028】
図2を参照して、第2の駆動装置31は、第1の駆動装置11と並んで送り台9の後方端部に設けられている。第2の駆動装置31の出力軸には、カップリング32により、歯車33が連結されている。第2の駆動装置31は、例えばサーボモータが利用される。このとき、カップリング32はサーボカップリングを利用できる。第2のプロペラシャフト35の基端部には、歯車33と噛合う歯車34が設けられている。そして、第2のプロペラシャフト35の先端部には、第3の歯付プーリ37が設けられている。
【0029】
図5を併せて参照して、頭部9aの上方中央部には、第1のオフセットシャフト18と並ぶように第2のオフセットシャフト40がベアリング41によって回転可能に設けられている。第2のオフセットシャフト40は、送り台9と平行に設けられている。第2のオフセットシャフト40の基端部には第4の歯付プーリ39が設けられている。第3の歯付プーリ37と第4の歯付プーリ39との間には、第2の無端歯付ベルト38が張られている。なお、第3の歯付プーリ37、第4の歯付プーリ39、および第2の無端歯付ベルト38に替えて、平歯車、やまば歯車、はすば歯車またはスプロケットおよび無端チェインを利用できる。
【0030】
なお、
図2と
図6を比較して明らかなように、第1のオフセットシャフト18の基端部に設けられた第2の歯付プーリ17より、第2のオフセットシャフト40の基端部に設けられた第4の歯付プーリ39の方が、Y軸方向において基端側に位置する。
【0031】
ここで、第2のオフセットシャフト40は、軸部材である後方側シャフト40aと前方側シャフト40bとに分割可能に設けられても良い。このとき、後方側シャフト40aと前方側シャフト40bとは、スプライン40cで結合されている。また、スプライン40cに替えてセレーションを用いても良い。勿論、第2のオフセットシャフト40を一つの軸部材で構成することもできる。なお、第2のオフセットシャフト40の詳細な構造については第1のオフセットシャフト18と同様であるため、説明を省略する。
【0032】
なお、頭部9a、第1のオフセットシャフト18、および第2のオフセットシャフト40を送り台9の長手方向(前後方向)に分割することに替えて、頭部9aを第1のオフセットシャフト18および第2のオフセットシャフト40の中心軸を通るようにZ軸方向(上下方向)に分割してもよい。このとき、第1のオフセットシャフト18、第2のオフセットシャフト40を組みつけるときに、第1の無端歯付ベルト16、第2の無端歯付ベルト38を張ればよい。この構成によっても、簡潔な方法で頭部9aを組立できる。
【0033】
また、頭部9aを、第1のオフセットシャフト18、第2のオフセットシャフト40と第1のプロペラシャフト13、第2のプロペラシャフト35との間の位置でZ軸方向に分割してもよい。このとき、頭部9aを分割した2つのブロック間の距離をシムによって調整して、第1の無端歯付ベルト16、第2の無端歯付ベルト38のテンションを調整できる。このときにおいて、第1の無端歯付ベルト16、第2の無端歯付ベルト38に替えて歯車機構を採用した場合には、ブロック間の距離によってバックラッシを調整できる。
【0034】
第2のオフセットシャフト40の先端部には、第2の動力転換機構44が設けられている。第2の動力転換機構44も、第1の動力転換機構20と並んで設けられている。第2の動力転換機構44は、互いに噛合う1組の傘歯車44a、44bで構成されている。第2の動力転換機構44は、第2のプロペラシャフト35の駆動力を、第1軸7まわりの回転に転換する。傘歯車44aは第2のオフセットシャフト40の前方端に設けられている。傘歯車44bは、第2の中間シャフト45の上端に設けられている。
【0035】
図4は、
図2のIV−IV線断面図である。
図4を参照して、第2の中間シャフト45は、第1の中間シャフト22と平行に並んで、頭部9aの内部に設けられている。第2の中間シャフト45は、その回転軸が第1軸7上に配置されるように第1の出力軸24b2の中心を貫通して設けられ、両端のベアリング46によって回転可能に支持されている。上端側のベアリング46は頭部9aに、下端側のベアリング46は第1のサドル25にそれぞれ設けられている。第2の動力転換機構44によって垂直方向(Z軸方向)に転換された回転は、第2の中間シャフト45によって次に述べる第3の動力転換機構49aに伝達される。
【0036】
図2を参照して、第2の中間シャフト45の下端部には、第3の動力転換機構49aが設けられている。第3の動力転換機構49aは、互いに噛合う1組の傘歯車49a1、49a2で構成される。第3の動力転換機構49aは、第1軸7まわりに回転する第2の中間シャフト45の駆動力を、第2軸8まわりの回転に転換する。具体的には、第2の中間シャフト45の下端部に傘歯車49a1が設けられている。傘歯車49a1と噛合う傘歯車49a2によって、第2の中間シャフト45の回転が第2軸8を中心とする方向へ転換される。
【0037】
傘歯車49a1、49a2は、第1のサドル25の内部に設けられている。傘歯車49a2は、同じく第1のサドル25の内部に設けられた第2の減速機構49bの入力軸49b1に固定されている。よって、本実施形態では、広義な意味において、第2の動力転換機構44と、第2の中間シャフト45と、第3の動力転換機構49aと、第2の減速機構49bとで第2の減速装置が構成されている。
【0038】
第2の減速機構49bは、前述した低バックラッシ減速機が利用できる。第2の減速機構49bの減速比は、例えば1/20ないし1/70と大きく設計される。第2の減速機構49bの減速比が大きいため、搬送対象物54およびハンド53のイナーシャを大きくできる。第2の減速機構49bに低バックラッシ減速機を用いることで、第2の駆動装置31から第2の減速機構49bの入力軸49b1までに蓄積したバックラッシが第2の減速機構49bの減速比で縮小される。そのため、第2のサドル51の遊びを小さく設定できる。第2の減速機構49bの第2の出力軸49b2には、後述の第2のサドル51が設けられている。第2のサドル51には、自動ハンド着脱装置(把持装置)52が設けられている。
【0039】
なお、第3の動力転換機構49aおよび第2の減速機構49bを設けることに替えて、入力軸と出力軸が90°ねじれの関係にある減速機1台を用いても良い。
【0040】
また、第2の中間シャフト45を、Z軸方向に2分割して設けても良い。このとき、第2の中間シャフト45の頭部9a側のシャフトと、第1のサドル25側とのシャフトとをスプラインによって結合できる。このように構成すれば、第1のサドル25を、第1の出力軸24b2から容易に分離できる。そして、第1のサドル25を容易に組立できる。さらに、スプライン結合によって分割した両シャフトを結合すれば、第3の動力転換機構49aのバックラッシを調整できる。
【0041】
図1および
図2を参照して、第2のサドル51について説明する。第2のサドル51は、第2の出力軸49b2に設けられ、第2軸8を中心とした半径方向に延びる(別言すると、第2軸8に略直交する面内に設けられた)板状の第1の回転部材51aと、回転継手65の回転体65bに設けられ、第1の回転部材51aと第2軸8の方向で対面する板状の第2の回転部材51bと、第1の回転部材51aおよび第2の回転部材51bを接続する板状の連結体51cとで構成されている。そして、第2のサドル51は、全体としてU字状またはコ字状に形成されている。
【0042】
第2のサドル51は、その両端部がそれぞれ第2の出力軸49b2と回転体65bとに支えられて、回転可能に支持されている。第2のサドル51は、第1のサドル25の円筒面25aに沿って回転する。そのため第2のサドル51の回転範囲は、第1のサドル25の外面によって規制されている。つまり、第2のサドルは、Z軸方向に延びる位置からA1方向およびA2方向に90°まで回転できる。なお、第1のサドル25および第2のサドル51の形状を工夫することにより、その回転範囲は変更できる。
【0043】
第2のサドル51の連結体51cの半径方向外側(下面)に自動ハンド着脱装置52が設けられている。自動ハンド着脱装置52は、圧縮空気等の流体を利用して、ハンド53を着脱する。そして、自動ハンド着脱装置52がハンド53へ流体を送ることで、ハンド53が搬送対象物(対象物)54を把持または開放できる。
【0044】
図2および
図7を参照して、送り台装置10に供給される流体の通路について説明する。流体供給源61と接続された配管62は、送り台9の内部を通り、頭部9aへ接続される。第1の出力軸24b2の内部には、通路を少なくとも一つ有する回転継手63が内蔵されている。本実施形態では、通路は6つ設けられている。第1の出力軸24b2が回転継手63の回転部となっている。そして、第1の出力軸24b2の内部に、回転継手63の固定部63aが設けられている。固定部63aは、中空円筒状をなす。固定部63aは、頭部9aの内部に固定されて、第1軸7を中心として回転不能である。第1の出力軸24b2は、固定部63aの外周面と円周方向に摺動するように設けられている。固定部63aの内部にさらに、第2の中間シャフト45が貫通して設けられている。
【0045】
固定部63aと第1の出力軸24b2との間には、第1の円環通路63bが設けられている。第1の円環通路63bは、円周を1周するように設けられている。具体的には、第1の円環通路63bは、固定部63aと第1の出力軸24b2のいずれか一方、または両方に円周溝が形成されて設けられている。そして、固定部63aの内部には、配管62と第1の円環通路63bとを連通する第1の流体通路63a1が設けられている。第1の出力軸24b2の内部に、第1の円環通路63bと連通し、第1の出力軸24b2の下面に開口する第2の流体通路63cが設けられている。第1の円環通路63bを挟むように、固定部63aと第1の出力軸24b2との間の隙間を封止するようにパッキン63dが設けられる。
【0046】
第1のサドル25の内部には、第2の流体通路63cと回転継手65の通路とを接続するように、第3の流体通路64が設けられている。回転継手65は、第2軸8を中心に回転するように、第1軸7を挟んで、第2の減速機構49bと反対側に設けられている。回転継手65の固定体65aは、中空円筒状をなし、第1のサドル25の第2軸8上に固定されている。固定体65aの内面は、平滑に仕上げられた円筒穴65a2となっている。円筒穴65a2は、第2軸8と同軸に設けられている。回転継手65の回転体65bは、中実円筒状をなし、円筒穴65a2に円周方向に摺動可能に設けられている。
【0047】
固定体65aと回転体65bとの間には、第2の円環通路65cが設けられている。第2の円環通路65cは、上述の第1の円環通路63bと同様である。固定体65aには、第2の円環通路65cと第3の流体通路64とを連通するように、流体通路65a1が設けられている。そして回転体65bには、第2の円環通路65cと連通する流体通路65b1が設けられている。流体通路65b1は、回転体65bの外寄りの端面側に開口している。それぞれの第2の円環通路65cを挟むように、固定体65aと回転体65bとの間の隙間を封止するようにパッキン65dが設けられる。
【0048】
第2のサドル51には、流体通路65b1と、自動ハンド着脱装置52とを連通する第4の流体通路66が設けられている。第4の流体通路66は、第2の回転部材51bと連結体51cの内部に設けられている。第4の流体通路66には、平弁67が設けられている。平弁67は、ハンド53が自動ハンド着脱装置52に接続されるときに開弁する。平弁67が開弁すると、流体は、流体供給源61から自動ハンド着脱装置52を介して、ハンドへ供給される。ハンド53は、供給された流体を用いて搬送対象物54を把持する。平弁67は、自動ハンド着脱装置52がハンド53を切り離すときに、閉弁する。
【0049】
次に、本実施形態に係る送り台装置10の作用効果について説明する。本実施形態に係る送り台装置10は、第1の駆動装置11および第2の駆動装置31と、第1のサドル25および第2のサドル51が設けられた送り台9の頭部9a(先端部)とが、送り台9によって離隔される。そして、長手方向(Y軸方向)と異なる方向(Z軸方向)である第1軸7のまわりに回転する第1のサドル25に、第1軸7と異なる方向(Y軸方向)である第2軸8のまわりに回転する第2のサドル51が設けられる。
【0050】
第1の駆動装置11のトルクが、第1のプロペラシャフト13、第1のオフセットシャフト18、第1の動力転換機構20、第1の中間シャフト22、および第1の減速機構24を介して第1のサドル25に伝達され、第1のサドル25は第1軸7のまわりにC1−C2方向に回転する。一方、第2の駆動装置31のトルクが、第2のプロペラシャフト35、第2のオフセットシャフト40、第2の動力転換機構44、第2の中間シャフト45、第3の動力転換機構49a、および第2の減速機構49bを介して第2のサドル51に伝達され、第2のサドル51は第2軸8のまわりにA1−A2方向に回転する。
【0051】
第1の減速機構24および第2の減速機構49bで第1の駆動装置11および第2の駆動装置31の回転(駆動力)を減速するため、第1の駆動装置11および第2の駆動装置31は、それぞれの許容イナーシャよりも大きいイナーシャのハンド53および搬送対象物54を回転できる。
【0052】
また、第1のプロペラシャフト13、第2のプロペラシャフト35、第1の動力転換機構20、第2の動力転換機構44、第1の中間シャフト22、第2の中間シャフト45等の伝達機構は、送り台9に内蔵される。このため、送り台装置10を、前述したように洗浄機の搬送装置として利用する際には、駆動装置および伝達機構を送り台装置10の外形によって隔離できる。そのため、本実施形態によれば非常に堅牢な送り台装置10を提供できる。
【0053】
第1の駆動装置11の回転方向と、第2の駆動装置31の回転方向とを、それぞれ別の動力転換機構である第1の動力転換機構20と、第2の動力転換機構44および第3の動力転換機構49aとにより異なる方向へ転換するため、送り台装置10の動力転換機構の構造を簡潔に構成できる。
【0054】
第2の中間シャフト45を、第1の減速機構24の第1の出力軸24b2の内部を貫通するように設け、第1のサドル25の内部に第3の動力転換機構49aおよび第2の減速機構49bを設けたことにより、簡便な構造で第1のサドル25を第1軸7のまわりに回転させ、かつ、第2のサドル51を第2軸8のまわりに回転させることができる。そして、この構成により、自動ハンド着脱装置52にて水平な姿勢で把持された搬送対象物(対象物)54を、水平横軸である第2軸8のまわりにA1方向またはA2方向に所定角度(最大で90°)回転させた状態である第1姿勢に保持できる。さらに、この第1姿勢から搬送対象物54を第1軸7のまわりにC1方向またはC2方向に所定角度(角度制限なし)回転させた状態である第2姿勢に保持できる。本実施形態に係る送り台装置10を洗浄装置に適用した場合、搬送対象物54を洗浄領域内で好適な姿勢に変更できるため、洗浄時間を短縮でき、洗浄作業の効率化を図れる。
【0055】
搬送対象物の洗浄方法について具体的に説明する。
図8を参照して、搬送対象物の一例である自動車エンジン用のオイルポンプボディ154を洗浄する方法を説明する。
図8に示すように、洗浄領域71内には、噴流73が飛び散らないように、通常、水平方向にノズル72を設ける。ノズル72は、洗浄液の噴流73を噴出する。送り台装置10は、オイルポンプボディ154を洗浄領域71内に搬入する。送り台装置10は、オイルポンプボディ154を把持した状態で、オイルポンプボディ154をノズル72に対向させる。送り台装置10は、オイルポンプボディ154の姿勢および位置を変えながら、噴流73を、オイルポンプボディ154の洗浄箇所(例えば円環溝154b)へ衝突させる。
【0056】
ハンド53は、オイルポンプボディ154の中心軸154aがZ軸方向(上下方向)に向くように、オイルポンプボディ154を把持する。送り台装置10の頭部9aは、中心軸154aを中心として、回転速度nで円を描きながら、第1のサドル25を同じ回転速度nで第1軸7のまわりに回転させる。すると、オイルポンプボディ154は、回転速度nで中心軸154aを中心に回転する。この状態で噴流73を円環溝154bに衝突させると、円環溝154bの全周を洗浄できる。このように、送り台装置10は、オイルポンプボディ154のような円環溝を有する回転体を洗浄する洗浄装置に特に好適である。
【0057】
次に
図9を参照して、搬送対象物の一例であるエンジンのシリンダヘッド254を洗浄する方法を説明する。ハンド53は、シリンダヘッド254の長手方向がY軸方向(前後方向)に延びた状態で把持する(
図9(a))。第2のサドル51を第2軸8のまわりに90°回転させる。すると、シリンダヘッド254は、長手方向がZ軸方向に沿うように姿勢を変える。送り台装置10は、この姿勢でシリンダヘッド254を洗浄領域71に搬入する(
図9(b))。シリンダヘッド254は、シリンダブロック合わせ面、カムハウジング合わせ面、インテーク面、イグゾースト面に多くのめねじ、油穴、水穴を有している。送り台装置10は、シリンダヘッド254を洗浄領域71に搬入したまま、第1軸7のまわりに回転できる(
図9(c))。
【0058】
排気マニホールド取り付け面はシリンダブロック合わせ面に対して傾斜している場合が多い。送り台装置10は長手方向(Z軸)のまわりにシリンダヘッド254を回転できるため、インテーク面をノズル72に対して垂直に角度を割り出しできる。このように、送り台装置10は、クランクシャフト、カムシャフト、ヘッドシリンダなど一方向に長く伸びる搬送対象物を洗浄する洗浄装置にも好適である。
【0059】
以上、送り台装置10を洗浄装置に適用した場合について説明したが、走行ロボット又は塗装機械、ウォータージェットピーニング装置その他の噴流作業機械に適用した際にも同様の利点があるのは言うまでもない。
【0060】
また、第2のオフセットシャフト40は、送り台9の頭部9aにおいて、第1のプロペラシャフト13および第2のプロペラシャフト35より上方(Z軸の正方向)の位置に配置されているため、第2の中間シャフト45を送り台9の頭部9aの中心部を通過させることができる。さらに、第1のオフセットシャフト18を第2のオフセットシャフト40と並んで設けている。そのため、送り台装置10を前方側から見たときに、送り台9の中央部に第1の減速機構24を配置することができ、送り台9の頭部9aをコンパクトかつ、簡潔に構成できる。
【0061】
第1のプロペラシャフト13と第1のオフセットシャフト18が第1の無端歯付ベルト16で接続されているため、第1のプロペラシャフト13と第1のオフセットシャフト18との間の動力伝達においてバックラッシが発生しない。第2のプロペラシャフト35と第2のオフセットシャフト40とが第2の無端歯付ベルト38で接続しているため、第2のプロペラシャフト35と第2のオフセットシャフト40との間の動力伝達においても同様に、バックラッシが発生しない。
【0062】
本実施形態では、複数の歯車機構を介して動力を伝達しているため、バックラッシが蓄積されやすいが、第1の無端歯付ベルト16、第2の無端歯付ベルト38を介すことでバックラッシを少なくして、搬送対象物54の角度割り出しが正確になる。
【0063】
送り台9の長手方向と、第1軸7および第2軸8が互いに垂直に構成されているため、送り台9が搬送する搬送対象物54の姿勢を制御しやすい。
【0064】
回転継手63が第1の出力軸24b2の内部に組み込まれているため、非常にコンパクトに送り台装置10を構成できる。さらに、回転継手63を通る第1の流体通路63a1、第2の流体通路63cを第1の出力軸24b2の内側に配置できるため、流体の通路を頭部9aの内部構造として組み込みできる。そのため、頭部9aが過酷な外部環境に晒されても、流体の通路が破損されにくい。
【0065】
第1のサドル25の下部には円筒面25aが形成されており、第2のサドル51はコ字状あるいはU字状に形成されているため、第1のサドル25に対して第2のサドル51を第2軸8のまわりに回転する際、第2のサドル51は第1のサドル25と干渉することなくスムースに回転できる。また、第1のサドル25の下部を円筒面としたことで、第1のサドル25の内部空間に各部品を設置するためのスペースを十分に確保できる。
【0066】
第2のサドル51は、第2の減速機構49bの第2の出力軸49b2と、回転継手65の回転体65bとによって両軸を固定されているため、第2のサドル51は、第2軸8に沿って正確に回転できる。そのため、送り台装置10は、ハンド53の位置を正確に割り出せる。
【0067】
頭部9aの内部の中央先端部には、第1の減速機構24が設けられている。第1の減速機構24の重心G1は、送り台9の中心部に設けられる。第1のサドル25の外周面の一部は、送り台9の下端よりも上側、つまり送り台9の中心側に寄せて設けられている。第1のサドル25の後方、把持装置の上方はデッドスペースとなる。送り台装置10は、上述の構成をとるため、デッドスペースが小さい。送り台装置10は、送り台9の下方のデッドスペースが小さいため、送り台装置10を搬送装置、洗浄装置その他の装置に組込んだときに、コンパクトな装置を提供できる。
【0068】
本発明の「第1の伝達装置」は、上記した実施形態において、第1の歯付プーリ15と、第1の無端歯付ベルト16と、第2の歯付プーリ17と、第1のオフセットシャフト18と、第1の動力転換機構20と、第1の中間シャフト22と、第1の減速機構24とにより構成されている。また、本発明の「第2の伝達装置」は、上記した実施形態において、第3の歯付プーリ37と、第2の無端歯付ベルト38と、第4の歯付プーリ39と、第2のオフセットシャフト40と、第2の動力転換機構44と、第2の中間シャフト45と、第3の動力転換機構49aと、第2の減速機構49bとにより構成されている。
【0069】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。たとえば、第1のオフセットシャフト18、第2のオフセットシャフト40を設けずに、2本のプロペラシャフトを送り台9の内部に平行に並べ、2本のプロペラシャフトの先端部に、2つの動力転換機構を設けてもよい。前述の実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。