特開2018-121535(P2018-121535A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-121535(P2018-121535A)
(43)【公開日】2018年8月9日
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20180713BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20180713BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20180713BHJP
【FI】
   A23L2/00 F
   A23L2/00 N
   A23L2/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-14152(P2017-14152)
(22)【出願日】2017年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】若林 明
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC00
4B117LC04
4B117LC15
4B117LG18
4B117LK12
4B117LK14
4B117LK16
4B117LL07
4B117LL09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】pH4以下の飲料において、ビタミンB類と、ロイシン、イソロイシン、バリンを安定な配合方法の提供。
【解決手段】ビタミンB類と、ロイシン、イソロイシン、バリンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸とを併用したpH4.0以下の飲料であって、糖アルコールを配合し、トレハロース以外の糖類を含有しない飲料。糖アルコールはマルチトール、ソルビトールから選択される1種又は2種以上であることが好ましく、ビタミンB類はチアミン硝化物、及びチアミン塩酸塩から選択される1種又は2種であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB1類と、
ロイシン、イソロイシン、バリンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸と、
糖アルコールとを含有し、トレハロース以外の糖類を含有しないことを特長とするpH4以下の飲料。
【請求項2】
糖アルコールが、マルチトール、ソルビトールから選択される1種又は2種以上である請求項1記載の飲料。
【請求項3】
ビタミンB1類がチアミン硝化物、及びチアミン塩酸塩から選択される1種又は2種である請求項1又は請求項2に記載の飲料。
【請求項4】
さらにジオウを含有する請求項1〜3の1項に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB類と、特定の分岐鎖アミノ酸と、糖アルコールを含有し、トレハロース以外の糖類を含有しないことを特徴とする、pH4以下の飲料に関する。なお本発明の飲料は、特定保健用食品、保健機能食品、機能性表示食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野の飲料を含み得る。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB類(ビタミンBまたはその塩もしくはその誘導体)は、様々な薬効が知られており、医薬品、食品等に広く使用されている。しかしこれらのビタミンB類は内服用液剤中での安定性に問題があり、今日まで様々な安定化の試みが為されている。例えば、特許文献1には、ビタミンB、ビタミンB12および生薬を含む液剤において、ビタミン類を疎水性ワックスによりマトリックス化することによりビタミン類の安定性が改善されることが開示されている。特許文献2には、ビタミンBを含む液剤に、アラニン、リジンおよびプロリンを配合することによりビタミンBの安定性が改善されることが開示されている。特許文献3には、ビタミンBを含む液剤に、塩化物イオンとなり得る化合物を同時に配合することによりビタミンBの安定性が改善されることが開示されている。特許文献4にはビタミンB誘導体またはその塩、ビタミンB類、および没食子酸またはその塩もしくはそのエステルを含有する内服用液剤が開示されている。
【0003】
また、アミノ酸、特にロイシン、イソロイシン及びバリンといった分岐鎖アミノ酸は筋蛋白に含まれる必須アミノ酸の約35%を占めるアミノ酸であり、筋肉を構成する筋細組織の成分として筋肉づくりに役立つことから、これを含有する飲料がスポーツサプリメントとして注目されつつある。ほとんどのアミノ酸は主に肝臓で代謝されるのに対し、分岐鎖アミノ酸はその大半が筋肉に運ばれて代謝され、筋肉のエネルギー源となる。このため、運動の前後に分岐鎖アミノ酸を摂取すると、筋肉の蛋白質が分解されてエネルギーになることが抑えられ、運動による筋肉の損傷を防止するのに役立つと考えられる。特に、分岐鎖アミノ酸のひとつであるロイシンは、筋蛋白の分解抑制と合成促進の両面の働きがあるので、その摂取は筋力アップにつながると考えられている。また分岐鎖アミノ酸には、血中乳酸値を抑える機能があり、筋肉疲労を防ぐ効果があるともいわれている。さらに分岐鎖アミノ酸は、主観的疲労感、つまり気力や集中力の低下も防止すると考えられている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−097295号公報
【特許文献2】特開平11−035467号公報
【特許文献3】特開平10−067659号公報
【特許文献4】国際特許出願公開2013−133408号
【特許文献5】国際特許出願公開2005−174803号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビタミンB類は、併用成分、加熱、pHなどの影響により分解することが知られていた。特にビタミンB類とロイシン、イソロイシン、バリンを併用して飲料に配合することにより、ビタミンBの定量値が低下する現象が認められていた。そのため、市場で販売する飲料において、ビタミンB類の配合量を商品等に記載する場合は、その記載量を超えた量のビタミンB類を配合(いわゆる増し仕込み)し、賞味期限内において、これらの含有量が表示量を下回らないよう調整することが通常行われてきた。しかしながら、これらの成分を増量して配合することは、資源の有効利用の観点から非効率的であった。そこで本発明は、pH4以下の飲料において、ビタミンB類と、ロイシン、イソロイシン、バリンを安定に配合することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本願発明を完成した。すなわち本願発明はビタミンB類と、ロイシン、イソロイシン、バリンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸とを併用したpH4.0以下の飲料において、糖アルコールを配合し、トレハロース以外の糖類を含有しないことを特徴とすることにより、ビタミンB類を安定に配合し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、糖アルコールを配合し、トレハロース以外の糖類を配合しないことにより、pH4以下の飲料において、ビタミンB類と特定の分岐鎖アミノ酸を安定に配合し得るという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
ビタミンB類には、ビタミンBおよびその誘導体が含まれる。ビタミンB類としては、例えば、チアミン、チアミンの塩およびチアミンのエステル並びにその他のチアミン誘導体などが挙げられる。具体的には、例えば、チアミン、チアミン硝化物、チアミン塩酸塩、フルスルチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、チアミンプロピルジスルフィド、チアミンヒドロキシエチルテトラヒドロフルフリルジスルフィド、チアミン−8−(メチル−6−アセチルジヒドロチオクテート)ジスルフィドおよびチアミンエチルジスルフィドが挙げられる。本発明は、これらの中でも、チアミン硝化物、チアミン塩酸塩の安定性向上に特に有効である。チアミン硝化物、チアミン塩酸塩は、ベンホチアミン等のチアミン誘導体と比較して、pHや併用成分の影響を受けやすいためである。
【0010】
本発明の飲料におけるビタミンBの含有量は特に限定されないが、飲料の味や服用感の観点から、飲料100mL当たり0.01mg〜200mg含有するのが好ましく、0.1mg〜1000mg含有するのがより好ましく、0.05mg〜50mg含有するのが特に好ましい。
【0011】
本発明で用いる、ロイシン、イソロイシン、バリンは、D体、L体、DL体のいずれを用いてもよいが、L体を用いることが好ましい。
ロイシン、イソロイシン、バリンから選択される1種又は2種以上のアミノ酸は、その効果の点から3種を併用して用いることが好ましい。これらのアミノ酸は総量として1回摂取量当たり50〜500mg配合することが好ましく、さらには100〜300mgの配合量とすることが好ましい。
【0012】
本発明の飲料は糖アルコールを配合する。糖アルコールの種類としては特に限定されないが、飲料の呈味の点から、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。特にマルチトールとソルビトールを併用して用いることにより、飲料の甘味にボディ感が付与され、効果感が増強される。
【0013】
本発明の飲料はアミノ酸と反応し、最終糖化生成物となる単糖、及び二糖からなる糖類(トレハロースを除く)を配合しないことを特徴とする。かかる糖類(トレハロースを除く)を配合しないことにより、ビタミンB類と特定のアミノ酸を併用することによるビタミンB類の経時での定量値割れを改善することができる。
【0014】
本発明の飲料はpHを4以下に調整して用いる。pH調整剤としてはフィチン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸などの有機酸、塩酸、リン酸などの無機酸、レモン果汁、リンゴ果汁などの酸性を呈する果汁等を用いることができる。かかるpH調整剤は、1種を単独で若しくは2種以上を併用して用いることができる。
【0015】
本発明の飲料は、生薬を併用することにより、滋養強壮の効果が増強する。かかる生薬としては、医薬品、医薬部外品、食品に配合し得るものであれば特に限定されないが、ジオウ、サンシュユ、クコシ、トウキ、ムイラプアマ、ジコッピ、ジョテイシ、トウジン、及びトウチュウカソウから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、特にジオウを用いることが、ビタミンB類の効果をより高める上で好ましい。生薬は、その効果、及び味への影響により適宜配合量を設定することができる。
【0016】
本発明の飲料には、ビタミンB以外のビタミン類を配合することができる。かかるビタミン類としては、飲料に配合し得るビタミンであれば特に限定されない。例えばアスコルビン酸若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンC類、リボフラビン若しくはその誘導体並びにそれらの塩類から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB類、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種または2種以上のビタミンB類などが例示される。
【0017】
本発明の飲料には、ロイシン、イソロイシン、バリン以外のアミノ酸、ペプチド、タンパク質を配合することができる。かかるアミノ酸、ペプチド、タンパク質としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得るものであれば特に限定されない。例えばアミノ酸としては、アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、テアニンなどが例示される。ペプチド、タンパク質としては、例えばコラーゲン及びその加水分解物、エラスチン及びその加水分解物、大豆タンパク質及びその加水分解物などが例示される。
【0018】
本発明の飲料には、糖類以外の甘味料を配合することができる。かかる甘味料としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得る甘味料であれば特に限定されない。たとえば、甘草抽出物、ステビア抽出物及び/又はその精製物、羅漢果抽出物、ソーマチン、モネリン、ミラクリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン及び/又はその塩、ズルチン、ネオテームなどが挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明の飲料には、通常保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野の飲料に用いることが可能な成分、例えば、上記以外のビタミン類、有機酸類、無機酸類、生薬、着色料、香料、保存剤、増粘剤、オリゴ糖類、多糖類、などの他、キトサン化合物、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができ、飲料製造の常法により製造することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0021】
表1に示す処方によって本発明の実施例若しくは比較例にかかる飲料を調製した。飲料はクエン酸によりpHを3.5に、総量を30mLとなるように精製水で、それぞれ調整した。
【0022】
[ビタミンB経時安定性の確認方法]
本発明の実施例、比較例にかかる飲料について、加速試験で常温1年保管後相当時のビタミンBを定量した。ビタミンB残存率が90%以上の場合を、「○」、90%未満の場合を「×」として、結果を評価した。
【0023】
【表1】
【0024】
比較例1、2に示した通り、分岐鎖アミノ酸を含有していない比較例2は経時安定性が良好であったが、分岐鎖アミノ酸を添加することにより経時安定性は低下した。さらに、糖アルコールとショ糖を併用した比較例3においても、経時安定性が低下した。これに対し、糖類であるショ糖をマルチトール、ソルビトール、トレハロースに代替した本願実施例1〜3はともに経時安定性が良好であった。