【解決手段】ZIKVを特異的に検出するためのLAMP増幅用核酸プライマーセット、アッセイキット、および検出のための増幅方法。プライマーセットは、アジア型検出用プライマー群、即ち、アジア型のZIKVを検出するためのプライマー群、およびアフリカ型検出用プライマー群、即ち、アフリカ型のZIKVを検出するためのプライマー群の少なくともどちらか一方を含む、プライマーセット。
前記アジア型検出用プライマー群が、更に、配列番号15、17または34の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列であるLFプライマー、および/または、配列番号14、16または18の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列を含むLBプライマーを含む請求項1〜6の何れか1項に記載のプライマーセット。
前記アフリカ型検出用プライマー群が、更に、配列番号15、17または66の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列を含むLF−2プライマー、および/または、配列番号14、27または41の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列含むLB−2プライマーを含む請求項1〜6の何れか1項に記載のプライマーセット。
3’側から5’側に向けて、F1配列、F2c配列およびF1c配列をこの順番で含み、且つ前記F1配列と前記F1c配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第1のステム・ループ構造体、
3’側から5’側に向けて、B1配列、B2配列およびB1c配列をこの順番で含み、前記B1配列と前記B1c配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第2のステム・ループ構造体、
5’側から3’側に向けて、F1c配列、F2配列およびF1配列をこの順番で含み、前記F1c配列と前記F1配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第3のステム・ループ構造体、
5’側から3’側に向けて、B1c配列、B2c配列およびB1配列をこの順番で含み、前記B1c配列と前記B1配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第4のステム・ループ構造体、
3’側から5’側に向けて、F1配列、F2c配列、F1c配列、B1配列、B2配列およびB1c配列をこの順番で含み、且つ前記F1配列と前記F1c配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、前記B1配列と前記B1c配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第1のダンベル構造体、および/または
5’側から3’側に向けて、F1c配列、F2配列、F1配列、B1c配列、B2c配列およびB1配列をこの順番で含み、且つ前記F1c配列と前記F1配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、前記B1c配列と前記B1配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第2のダンベル構造体
を含む核酸構造体であって、
ここで、F1配列とF1c配列、F2配列とF2c配列、F3配列とF3c配列、B1配列とB1c配列、B2配列とB2c配列、B3配列とB3c配列は互いに相補的であり、
前記F3配列は、配列番号1、配列番号5、配列番号9若しくは配列番号19に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記F2配列は、配列番号58、配列番号65若しくは配列番号51に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記F1配列は、配列番号36、配列番号60若しくは配列番号68に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記B1c配列は、配列番号54、配列番号62若しくは配列番号70に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記B2c配列は、配列番号55、配列番号56、配列番号64若しくは配列番号72に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、および
前記B3c配列は、配列番号2、配列番号6、配列番号10若しくは配列番号20に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含む
ことを特徴とする核酸構造体。
3’側から5’側に向けて、F1−2配列、F2c−2配列およびF1c−2配列をこの順番で含み、且つ前記F1−2配列と前記F1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第5のステム・ループ構造体、
3’側から5’側に向けて、B1−2配列、B2−2配列およびB1c−2配列をこの順番で含み、前記B1−2配列と前記B1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第6のステム・ループ構造体、
5’側から3’側に向けて、F1c−2配列、F2−2配列およびF1−2配列をこの順番で含み、前記F1c−2配列と前記F1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第7のステム・ループ構造体、
5’側から3’側に向けて、B1c−2配列、B2c−2配列およびB1−2配列をこの順番で含み、前記B1c−2配列と前記B1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第8のステム・ループ構造体、
3’側から5’側に向けて、F1−2配列、F2c−2配列、F1c−2配列、B1−2配列、B2−2配列およびB1c−2配列をこの順番で含み、且つ前記F1−2配列と前記F1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、前記B1−2配列と前記B1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第5のダンベル構造体、および/または
5’側から3’側に向けて、F1c−2配列、F2−2配列、F1−2配列、B1c−2配列、B2c−2配列およびB1−2配列をこの順番で含み、且つ前記F1c−2配列と前記F1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、前記B1c−2配列と前記B1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第6のダンベル構造体
を含む核酸構造体であって、
ここで、F1−2配列とF1c−2配列、F2−2配列とF2c−2配列、F3−2配列とF3c−2配列、B1−2配列とB1c−2配列、B2−2配列とB2c−2配列、B3−2配列とB3c−2配列は互いに相補的であり、
前記F3−2配列は、配列番号1、配列番号24若しくは配列番号37に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記F2−2配列は、配列番号57、配列番号65若しくは配列番号48に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記F1−2配列は、配列番号35、配列番号59若しくは配列番号67に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記B1c−2配列は、配列番号54、配列番号61若しくは配列番号69に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、
前記B2c−2配列は、配列番号56、配列番号63若しくは配列番号71に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含み、および
前記B3c−2配列は、配列番号10、配列番号20若しくは配列番号38に含まれる連続する少なくとも13塩基またはその相補配列を含む
ことを特徴とする核酸構造体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ZIKVの流行拡大を防止または鎮静化するためには、ZIKVを精度よく、迅速に検出することが必須である。実施形態は、ZIKVのRNAのタンパク質コード領域に含まれる特定の配列を利用して設計した、ZIKVをより精度よく、迅速に検出することができる新規のLAMP増幅用プライマーセットを発見したことに基づく。
【0010】
ZIKVは、非分節型プラス鎖RNAウイルスである。ZIKVの遺伝子型は、大きく分けてアジア型とアフリカ型とに分類される。実施形態のプライマーセットによれば、アジア型および/またはアフリカ型のZIKVを精度よく、かつ迅速に検出することができる。
【0011】
実施形態のプライマーセットは、アジア型検出用プライマー群、即ち、アジア型のZIKVを検出するためのプライマー群、およびアフリカ型検出用プライマー群、即ち、アフリカ型のZIKVを検出するためのプライマー群の少なくともどちらか一方を含む。言い換えれば、実施形態のプライマーセットは、アジア型検出用プライマー群およびアフリカ型検出用プライマー群のどちらか一方を含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。
【0012】
アジア型検出用プライマー群は、アジア型のZIKVの遺伝子を増幅するための1セットのLAMPプライマーを含む。アフリカ型検出用プライマー群は、アフリカ型のZIKVの遺伝子を増幅するための1セットのLAMPプライマーを含む。従って、アジア型検出用プライマー群を含む実施形態のプライマーセットによれば、試料中のアジア型のZIKVを検出することができ、アフリカ型検出用プライマー群を含む実施形態のプライマーセットによれば、試料中のアフリカ型のZIKVを検出することができる。アジア型検出用プライマー群およびアフリカ型検出用プライマー群の両方を含むプライマーセットによれば、試料中のZIKVを、遺伝子型の違いに関わらず検出することができる。
【0013】
上記各プライマー群に含まれるプライマーは、対応する型のZIKVの遺伝子を増幅するために、対応する型のZIKVのRNAおよびそのcDNAの特定の領域に結合することができるように設計されている。各プライマーが結合すべき領域について、
図1Aおよび
図1Bを用いて説明する。
図1Aおよび
図1Bには、アジア型ZIKVのRNAおよびそのcDNAと、アジア型検出用プライマー群に含まれるプライマーとの対応について示す。
図1Aおよび
図1Bは、鋳型としての検出されるべきアジア型ZIKVのRNA(以下、「vRNA」と記す)、そのcDNAおよびプライマーを、互いに対応付けて示した図である。
【0014】
図1Aに示すアジア型ZIKVのRNAは、各プライマーが結合すべき領域(即ち、認識領域)としてF3c領域、F2c領域、F1c領域、B1領域、B2領域およびB3領域を含む。これらの領域は、3’側から5’側に向けて、この順番でZIKVのRNAに含まれる。各認識領域は、認識配列、即ち、F3c配列、F2c配列、F1c配列、B1配列、B2配列、B3配列をそれぞれ含む。
【0015】
cDNAは、vRNAを鋳型として逆転写反応により作られるvRNAの相補鎖である。
【0016】
cDNAは、認識領域として、5’側から3’側に向けて、F3領域、F2領域、F1領域、B1c領域、B2c領域およびB3c領域を含む。これらの各領域は、認識配列としてF3配列、F2配列、F1配列、B1c配列、B2c配列およびB3c配列をそれぞれ含む。
【0017】
ここで、F1配列とF1c配列、F2配列とF2c配列、F3配列とF3c配列、B1配列とB1c配列、B2配列とB2c配列、B3配列とB3c配列は、互いに相補配列である。
【0018】
このようなvRNAおよびcDNAを鋳型配列として、実施形態のプライマーセットによる増幅反応が行われる。
【0019】
アジア型検出用プライマー群は、鋳型配列の上記6つの認識配列に対応する配列を含む2つの内部プライマーと2つの外部プライマーとを含む。2つの内部プライマーは、FIPプライマーおよびBIPプライマーである。FIPプライマーは、5’側から3’側に向けてF1c配列とF2配列とを含む。BIPプライマーは、5’側から3’側に向けてB1c配列とB2配列とを含む。2つの外部プライマーは、F3プライマーおよびB3プライマーである。F3プライマーは、F3配列を含む。B3プライマーは、B3配列を含む。これらのプライマーの各配列に対応する鋳型配列の認識配列を矢印で示した。矢印の向きは、対応するプライマー配列上での方向性を示しており、矢印の始点が5’端、矢印の終点が3’端を表す。
【0020】
アジア型検出用プライマー群は、更に、ループプライマーとしてLFプライマーおよび/またはLBプライマーを含んでもよい。
図1Bは、
図1Aのプライマーに加えてLFプライマーおよびLBプライマーを含むプライマーセットのプライマーが結合すべき領域の対応の1例を示す。
【0021】
この場合、vRNAは、認識領域としてF3c領域、F2c領域、LFc領域、F1c領域、B1領域、LB領域、B2領域、B3領域を含む。これらの領域は、3’側から5’側に向けて、この順番でvRNAに含まれる。LFc領域およびLB領域は、それぞれLFc配列およびLBc配列を含む。LFプライマーおよびLBプライマーは、それぞれLFc領域およびLB領域に結合すべきLFc配列およびLBc配列を含む。
【0022】
或いは、ループプライマーは、例えば、増幅産物のループ部分に結合するように設計されてもよい。ループ部分は、例えば、
図1B中に「一本鎖部分」と示される領域である。即ち、ループ部分は、例えば、vRNAのF2c領域の5’端からF1c領域の3’端よりも3’側の塩基までの範囲、またはvRNAのB2領域の3’端からB1領域の5’端よりも5’側の塩基までの範囲であり得る。
【0023】
以上の説明は、認識配列がZIKVアフリカ型検出用の配列である点を除いて、アフリカ型検出用プライマー群にも共通して適応することができる。即ち、アフリカ型ZIKVのRNAは、認識配列として、F3c−2配列、F2c−2配列、F1c−2配列、B1−2配列、B2−2配列、B3−2配列をそれぞれ含み、そのcDNAは、認識配列として、F3−2配列、F2−2列、F1−2配列、B1c−2配列、B2c−2配列およびB3c−2配列をそれぞれ含む。F1−2列とF1c−2配列、F2−2配列とF2c−2配列、F3−2配列とF3c−2配列、B1−2配列とB1c−2配列、B2−2配列とB2c−2配列、B3−2配列とB3c−2配列は、互いに相補配列である。
【0024】
アフリカ型検出用プライマー群は、F3−2プライマー、B3−2プライマー、FIP−2プライマーおよびBIP−2プライマーを含む。F3−2プライマーは、F3−2配列を含む。B3−2プライマーは、B3−2配列を含む。FIP−2プライマーは、5’側から3’側に向けてF1c−2配列とF2−2配列とを含む。BIP−2プライマーは、5’側から3’側に向けてB1c−2配列とB2−2配列とを含む。
【0025】
アフリカ型検出用プライマー群は、更に、ループプライマーとしてLF−2プライマーおよび/またはLB−2プライマーを含んでもよい。この場合、アフリカ型ZIKVのRNAは、3’側から5’側に向けて、認識配列としてF3c−2配列、F2c−2配列、LFc−2配列、F1c−2配列、B1−2配列、LB−2配列、B2−2配列、B3−2配列を含む。LF−2プライマーはLFc−2配列を含み、LB−2プライマーはLBc−2配列を含む。ループプライマーは、アジア型検出用の場合と同様に、増幅産物のループ部分に結合するように設計されてもよい。
【0026】
実施形態のプライマーセットが、アジア型検出用プライマー群およびアフリカ型検出用プライマー群の両方を含む場合、アジア型検出用プライマー群およびアフリカ型検出用プライマー群の一方が上記の何れかのループプライマーを含み、他方がループプライマーを含んでいなくてもよいし、両方が同じ種類のループプライマーを含んでいてもよいし、両方が互いに異なる種類のループプライマーを含んでいてもよいし、両方がループプライマーを含んでいなくてもよい。
【0027】
アジア型検出用プライマー群およびアフリカ型検出用プライマー群において、F3配列およびF3−2配列、B3配列およびB3−2配列、FIP配列およびFIP−2配列、BIP配列およびBIP−2配列、LFc配列およびLFc−2配列、並びにLBc配列およびLBc−2配列はそれぞれ互いに同じ塩基配列を有していてもよい。従って、F3プライマーおよびF3−2プライマー、B3プライマーおよびB3−2プライマー、FIPプライマーおよびFIP−2プライマー、BIPプライマーおよびBIP−2プライマー、LFプライマーおよびLF−2プライマー、並びにLBプライマーおよびLB−2プライマーはそれぞれ互いに同じ塩基配列を有していてもよい。例えば、アジア型検出用プライマー群およびアフリカ型検出用プライマー群の両方を含む実施形態のプライマーセットにおいて、F3プライマーおよびF3−2プライマー、B3プライマーおよびB3−2プライマー、FIPプライマーおよびFIP−2プライマー、BIPプライマーおよびBIP−2プライマー、LFプライマーおよびLF−2プライマー、並びにLBプライマーおよびLB−2プライマーとして、それぞれ、両者を兼ねる1種類のプライマーを用いてもよい。
【0028】
実施形態のプライマーセットに含まれる各プライマーの配列は、LAMP designer(Optigene社、オンラインソフトウェア、http://www.optigene.co.uk/lamp-designer/)を用いて設計した。まず基礎となる認識領域を設計し、その後、アラインメントからの情報や実験結果などを考慮しながら、手動および目視などによって、各認識配列のcDNA上での位置や塩基の種類について改変および調整を行った。
【0029】
具体的な認識配列の例を
図2−1〜
図2−5に示す。
図2−1〜
図2−5には、5’から3’の方向で、コンセンサス配列としてのアフリカ型ZIKVのcDNA(図中「Africa consensus」)と、アフリカ型ZIKVであるZIKV976Uganda(図中「976Uganda」)、コンセンサス配列としてのアジア型ZIKV(図中「Asia consensus」)およびアフリカ型ZIKVであるZIKVPRVABC59(図中「PRVABC59」)のcDNAとのアラインメント、およびプライマー配列の認識配列の設計例を示した。括弧内に認識配列の配列番号を示す。
図2−1〜
図2−5においては、ZIKVのEタンパク質N末端側コード領域内のcDNAの領域の1番目から480番目までの配列を1位〜480位として示している。
【0030】
図2−3中の下線を付した塩基は、
図2−4に示される配列番号27および18の続きの配列である。
【0031】
アジア型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する認識配列の例は、例えば、好ましくは次の通りである。F3配列は、77位〜95位の配列、即ち、配列番号1または19に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F2配列は、138位〜161位の配列、即ち、配列番号51に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F1配列は、198位〜217位の配列、即ち、配列番号36に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B1c配列は、223位〜244位の配列、即ち、配列番号54に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B2c配列は、286位〜303位の配列、即ち、配列番号55または56に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B3c配列は、339位〜356位の配列、即ち、配列番号2または20に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。
【0032】
または、アジア型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する認識配列は、例えば、次の通りであってもよい。F3配列は、8位〜27位の配列、即ち、配列番号9に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F2配列は、35位〜53位の配列、即ち、配列番号58に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F1配列は、90位〜109位の配列、即ち、配列番号60に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B1c配列は、147位〜165位の配列、即ち、配列番号62に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B2c配列は、190位〜210位の配列、即ち、配列番号64に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B3c配列は、240位〜260位の配列、即ち、配列番号10に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。
【0033】
または、アジア型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する認識配列は、例えば、次の通りであってもよい。F3配列は、160位〜178位の配列、即ち、配列番号5に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F2配列は、224位〜241位の配列、即ち、配列番号65に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F1配列は、284位〜303位の配列、即ち、配列番号68に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B1c配列は、327位〜346位の配列、即ち、配列番号70に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B2c配列は、386位〜403位の配列、即ち、配列番号72に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B3c配列は、412位〜430位の配列、即ち、配列番号6に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。
【0034】
或いは、これらの認識配列は何れも、上記配列番号に含まれる連続する少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25塩基であってもよく、例えば、15塩基〜30塩基であってもよい。或いはこれらの相補配列であってもよい。
【0035】
アジア型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する各認識配列の好ましい例は、次の通りである。F3配列は、配列番号1、5、9若しくは19の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号1または19の配列またはその相補配列を含む。F2配列は、配列番号45、46、47、58若しくは65の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号45、46若しくは47の配列またはその相補配列を含む。F1配列は、配列番号52、53、60若しくは68の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号52若しくは53の配列またはその相補配列を含む。B1c配列は、配列番号54、62若しくは70の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号54の配列またはその相補配列を含む。B2c配列は、配列番号55、56、64若しくは72の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号55または56の配列またはその相補配列を含む。B3c配列は、配列番号2、6、10若しくは20の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号2または20の配列またはその相補配列を含む。この場合、検出の特異性が更に向上する。
【0036】
アジア型検出用プライマー群に含まれる各プライマーの好ましい例は、例えば次の通りである。F3プライマーは、配列番号1、5、9または19の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。B3プライマーは、配列番号2、6、10または20の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。FIPプライマーは、配列番号3、7、11、28または29の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。ここで、配列番号3の配列は、配列番号48の相補配列と配列番号45の配列を含み、配列番号7の配列は、配列番号68の相補配列と配列番号65の配列を含み、配列番号11の配列は、配列番号60の相補配列と配列番号58の配列を含み、配列番号28の配列は、配列番号52の相補配列と配列番号46の配列を含み、配列番号29の配列は、配列番号53の相補配列と配列番号47の配列を含む。BIPプライマーは、配列番号4、8、12または22の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。ここで、配列番号4の配列は、配列番号54の配列と配列番号55の相補配列を含み、配列番号8の配列は、配列番号70の配列と配列番号72の相補配列を含み、配列番号12の配列は、配列番号62の配列と配列番号64の相補配列を含み、配列番号22の配列は、配列番号54の配列と配列番号56の相補配列を含む。この場合、検出の特異性が更に向上する。
【0037】
より好ましいアジア型検出用プライマー群の各プライマーの例は、例えば次の通りである。F3プライマーは、より好ましくは配列番号1または19の配列またはその相補配列を含む。B3プライマーは、より好ましくは配列番号2または20の配列またはその相補配列を含む。FIPプライマーは、より好ましくは配列番号3、28または29の配列またはその相補配列を含む。BIPプライマーは、より好ましくは配列番号4または22の配列またはその相補配列を含む。上記のより好ましい例では検出の特異性がより向上し、更に好ましい例では検出の特異性が更に向上する。
【0038】
また、アジア型検出用プライマー群にループプライマーが含まれる場合、増幅効率を更に増大することが可能である。好ましいLFプライマーのための配列の例は、配列番号15、17または34の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列を含む。LFプライマーは、好ましくは、配列番号13、15、17または30の配列またはその相補配列を含み、より好ましくは配列番号13または30の配列またはその相補配列を含む。好ましいLBプライマーのための配列の例は、配列番号14、16または18の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列を含む。LBプライマーは、好ましくは、配列番号14、16または18の配列またはその相補配列を含み、より好ましくは配列番号14の配列またはその相補配列を含む。
【0039】
好ましいループプライマーにおいて、例えば、LFプライマーは配列番号13または30を含み、LBプライマーは配列番号14を含む。或いはこれらのループプライマーは、これらの相補配列を含む。
【0040】
アフリカ型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する認識配列の例は、例えば、好ましくは次の通りである。F3配列は、77位〜95位の配列、即ち、配列番号1に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F2配列は、138位〜161位の配列、即ち、配列番号48に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F1配列は、198位〜217位の配列、即ち、配列番号35に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B1c配列は、223位〜244位の配列、即ち、配列番号54に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B2c配列は、286位〜303位の配列、即ち、配列番号56に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B3c配列は、339位〜356位の配列、即ち、配列番号20に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。
【0041】
または、アフリカ型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する認識配列は、例えば、次の通りであってもよい。F3配列は、8位〜27位の配列、即ち、配列番号24に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F2配列は、35位〜53位の配列、即ち、配列番号57に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F1配列は、90位〜109位の配列、即ち、配列番号59に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B1c配列は、147位〜165位の配列、即ち、配列番号61に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B2c配列は、190位〜210位の配列、即ち、配列番号63に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B3c配列は、240位〜260位の配列、即ち、配列番号10に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。
【0042】
または、アフリカ型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する認識配列は、例えば、次の通りであってもよい。F3配列は、160位〜178位の配列、即ち、配列番号37に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F2配列は、224位〜241位の配列、即ち、配列番号65に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。F1配列は、284位〜303位の配列、即ち、配列番号67に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B1c配列は、327位〜346位の配列、即ち、配列番号69に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B2c配列は、386位〜403位の配列、即ち、配列番号71に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。B3c配列は、412位〜430位の配列、即ち、配列番号38に含まれる連続する少なくとも13塩基を含む。
【0043】
或いは、これらの認識配列は何れも、上記配列番号に含まれる連続する少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25塩基であってもよく、例えば、15塩基〜30塩基であってもよい。或いはこれらの相補配列であってもよい。
【0044】
アフリカ型検出用プライマー群に含まれるプライマーに対応する認識配列の好ましい例は、例えば次の通りである。F3配列は、配列番号1、24若しくは37の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号1の配列またはその相補配列を含む。F2配列は、配列番号42、43、44、57若しくは65の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号42、43若しくは44の配列またはその相補配列を含む。F1配列は、配列番号49、50、59若しくは67の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号49若しくは50の配列またはその相補配列を含む。B1c配列は、配列番号54、61若しくは69の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号54の配列またはその相補配列を含む。B2c配列は、配列番号56、63若しくは71の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号56の配列またはその相補配列を含む。B3c配列は、配列番号20、10若しくは38の配列またはその相補配列を含み、好ましくは、配列番号20の配列またはその相補配列を含む。この場合、検出の特異性が更に向上する。
【0045】
アフリカ型検出用プライマー群の各プライマーの好ましい例は、例えば次の通りである。F3−2プライマーは、配列番号19または24の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。B3−2プライマーは、配列番号10または20の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。FIP−2プライマーは、配列番号21、25、31または32の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。ここで、配列番号21の配列は、配列番号50の相補配列と配列番号44の配列を含み、配列番号25の配列は、配列番号59の相補配列と配列番号57の配列を含み、配列番号31の配列は、配列番号49の相補配列と配列番号43の相補配列を含み、配列番号32の配列は、配列番号49の相補配列と配列番号42の相補配列を含む。BIP−2プライマーは、配列番号22または26の配列またはその相補配列を含むことが好ましい。ここで、配列番号22の配列は、配列番号54の配列と配列番号56の相補配列を含み、配列番号26の配列は、配列番号61の配列と配列番号63の相補配列を含む。この場合、検出の特異性が更に向上する。
【0046】
より好ましいアフリカ型検出用プライマー群の各プライマーの例は、例えば次の通りである。F3−2プライマーは、より好ましくは配列番号19の配列またはその相補配列を含む。B3−2プライマーは、より好ましくは配列番号20の配列またはその相補配列を含む。FIP−2プライマーは、より好ましくは配列番号21、31または32の配列またはその相補配列を含む。BIP−2プライマーは、より好ましくは配列番号22の配列またはその相補配列を含む。上記のより好ましい例では検出の特異性がより向上し、更に好ましい例では検出の特異性が更に向上する。
【0047】
また、アフリカ型検出用プライマー群にループプライマーが含まれる場合、増幅効率を更に増大することが可能である。好ましいLF−2プライマーのための配列の例は、配列番号15、17または66の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列を含む。LF−2プライマーは、好ましくは、配列番号17、23または33の配列またはその相補配列を含み、より好ましくは配列番号23または33の配列またはその相補配列を含む。好ましいLB−2プライマーのための配列の例は、配列番号14、27または41の配列、またはこれらの配列の連続する少なくとも13塩基を含む配列またはその相補配列を含む。LB−2プライマーは、好ましくは、配列番号14または27の配列またはその相補配列を含み、より好ましくは配列番号14の配列またはその相補配列を含む。
【0048】
好ましいループプライマーにおいて、例えば、LF−2プライマーは配列番号23または33を含み、LB−2プライマーは配列番号14を含む。或いはこれらのループプライマーは、これらの相補配列を含む。
【0049】
以上に記載した各プライマーの長さは、13〜40塩基、例えば、15〜30塩基であってもよい。認識配列に加えて鋳型へのアニーリングを阻害せず、且つプライマーの伸長を妨げない限り、何れのプライマーにおいても、認識配列に加えて更なる配列または成分を含んでもよい。
【0050】
例えば、上記FIPプライマーおよびFIP−2プライマーは、それぞれF1c配列とF2配列の間、またはF1c−2配列とF2−2配列の間にリンカーを含んでいてもよい。また、上記BIPプライマーおよびBIP−2プライマーは、それぞれ、B1配列とB2c配列の間、またはB1−2配列とB2c−2配列の間にリンカーを含んでいてもよい。リンカー配列は、任意の塩基配列であればよく、好ましくは鋳型配列に特異的に結合しない配列であり得る。リンカー配列の長さは、例えば、1〜6塩基であればよい。好ましいリンカー配列の例は、TTTTである。
【0051】
アジア型検出用プライマー群に含まれるF3プライマー、B3プライマー、FIPプライマーおよびBIPプライマーのための配列の組み合わせは、表1に示す以下の群より選択されてもよい:
【表1】
【0052】
(As1)配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4の組み合わせ;
(As2)配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8の組み合わせ;
(As3)配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12の組み合わせ;
(As4)配列番号19、配列番号20、配列番号28および配列番号22の組み合わせ;
(As5)配列番号19、配列番号20、配列番号29および配列番号22の組み合わせ;
(As1’)〜(As5’)前記(As1)〜(As5)の何れかの組み合わせに含まれる4つの配列のそれぞれの相補配列の組み合わせ。これらの組み合わせのアジア型検出用プライマー群を用いた場合、検出の特異性が更に向上する。
【0053】
また、更にループプライマーを含むアジア型検出用プライマー群に含まれるF3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LFcループプライマーおよびLBcループプライマーの組み合わせは、表2および表3に示す以下の群より選択されてもよい:
【表2】
【0055】
(As6)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号13および配列番号14の組み合わせ;
(As7)配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号15および配列番号16の組み合わせ;
(As8)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号17および配列番号18の組み合わせ;
(As9)配列番号19、配列番号20、配列番号28、配列番号22、配列番号30および配列番号14の組み合わせ;
(As10)配列番号19、配列番号20、配列番号29、配列番号22、配列番号30および配列番号14の組み合わせ;
(As6’)〜(As10’)前記(As6)〜(As10)に含まれる4つの配列のそれぞれの相補配列の組み合わせ。
【0056】
これらの組み合わせのアフリカ型検出用プライマー群を用いた場合、検出の特異性が更に向上する。
【0057】
より好ましいアジア型検出用プライマー群の組み合わせは、上記(As1)、(As4)、(As5)、(As6)、(As9)および(As10)である。この場合、検出の特異性が更に向上する。
【0058】
アフリカ型検出用プライマー群に含まれるF3−2プライマー、B3−2プライマー、FIP−2プライマーおよびBIP−2プライマーのための配列の組み合わせは、表4に示す以下の群より選択されてもよい:
【表4】
【0059】
(Af1)配列番号19、配列番号20、配列番号21および配列番号22の組み合わせ;
(Af2)配列番号24、配列番号10、配列番号25および配列番号26の組み合わせ;
(Af3)配列番号19、配列番号20、配列番号31および配列番号22の組み合わせ;
(Af4)配列番号19、配列番号20、配列番号32および配列番号22の組み合わせ;
(Af5)配列番号37、配列番号38、配列番号39および配列番号40の組み合わせ;
(Af1’)〜(Af5’)前記(Af1)〜(Af5)に含まれる4つの配列のそれぞれの相補配列の組み合わせ。これらの組み合わせのアフリカ型検出用プライマー群を用いた場合、検出の特異性が更に向上する。
【0060】
また、更にループプライマーを含むアフリカ型検出用プライマー群に含まれるF3−2プライマー、B3−2プライマー、FIP−2プライマー、BIP−2プライマー、LFc−2ループプライマーおよびLBc−2ループプライマーの組み合わせは、表5および表6に示す以下からなる群より選択されてもよい:
【表5】
【0062】
(Af6)配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23および配列番号14の組み合わせ;
(Af7)配列番号24、配列番号10、配列番号25、配列番号26、配列番号17および配列番号27の組み合わせ;
(Af8)配列番号19、配列番号20、配列番号31、配列番号22、配列番号33および配列番号14の組み合わせ;
(Af9)配列番号19、配列番号20、配列番号32、配列番号22、配列番号33および配列番号14の組み合わせ;
(Af10)配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号15および配列番号41の組み合わせ;
(Af6’)〜(Af10’)前記(Af6)〜(Af10)の何れかの組み合わせに含まれる4つの配列のそれぞれの相補配列の組み合わせ。
【0063】
これらの組み合わせのアフリカ型検出用プライマー群を用いた場合、検出の特異性が更に向上する。
【0064】
より好ましいループプライマーを含むアジア型検出用プライマー群の組み合わせは、上記(Af1)、(Af3)、(Af4)、(Af6)、(Af8)および(Af9)である。この場合、検出の特異性が更に向上する。
【0065】
実施形態のプライマーセットによれば、アジア型およびアフリカ型のZIKVを従来に比べてより精度よく検出することが可能となる。
【0066】
また、上述のプライマーセットによれば、アジア型およびアフリカ型のZIKVの遺伝子を短い時間で増幅することが可能である。即ち、従来では、ZIKVの遺伝子の増幅には2時間以上かかっていた。しかしながら、実施形態のプライマーセットによれば、迅速に、例えば、15分〜30分以内にZIKVの遺伝子を検出できるまでに増幅することが可能である。その結果、ZIKVの検出をより迅速に行うことが可能である。
【0067】
更に、従来のプライマーセットでは、例えば、同じフラビウイルス属ウイルスであるデングウイルスなどに感染しており、ジカウイルスに感染していない場合に得られる結果は偽陽性となってしまう可能性が高い。しかしながら、実施形態のプライマーセットによれば、後述するように約65℃以上でLAMP増幅反応を行った場合、例えば、同じフラビウイルス属ウイルスであるデングウイルスなどと区別して、アジア型およびアフリカ型のZIKVを特異的に増幅することができる。その結果、ZIKVを更に精度よく検出することが可能となる。
【0068】
更なる実施形態によれば、試料にZIKVが含まれているか否かを判定する方法が提供される。当該方法は、上述の何れかのプライマーセットを用いて試料に含まれる核酸を増幅し、増幅産物を検出することにより前記試料にZIKVが含まれているか否かを判定する。
【0069】
当該方法に供される試料は、分析されるべき対象であり、核酸を含む可能性のあるものであればよい。例えば、試料は、血液、血清、白血球、リンパ液、髄液、尿、便、精液、汗、唾液、口腔内粘膜、喀痰、涙液、母乳、羊水、組織、バイオプシー、または培養細胞などの生体物質、環境から採取された環境物質、或いはそれらの混合物などの材料そのものであってもよい。或いは、それらを材料として調製された調製物であってもよい。試料は、増幅反応を妨害しない状態にあることが好ましく、採取された後にそれ自身公知の何れかの手段により前処理が行われてもよい。前処理は、例えば、細切、ホモジナイズ、遠心、沈殿、抽出および/または分離などである。
【0070】
核酸の増幅は、等温増幅法で行われる。等温増幅法は、例えば、LAMP法またはLAMP法と同様の原理により核酸を増幅するそれ自身公知の何れの方法であればよい。
【0071】
核酸の増幅に先駆けて逆転写反応を行ってもよい。或いは、逆転写反応と増幅反応とを1つの反応において行うRT−LAMP法を用いてもよい。当該方法におけるより好ましい増幅方法は、RT−LAMP法である。逆転写反応を行う場合、逆転写酵素は、例えば、WarmStart RTxであることが好ましい。その場合、ZIKVをより高感度かつ迅速に検出することが可能である。
【0072】
等温増幅の温度条件は、例えば、60℃〜67℃であればよい。この温度で等温増幅を行うことによって、アジア型およびアフリカ型のZIKVを、精度よくかつ迅速に増幅することができ、その結果、精度よくかつ迅速にZIKVを検出することができる。温度条件は、65℃以上であることが好ましい。その場合、アジア型およびアフリカ型のZIKVを、他のウイルス、例えば、同じフラビウイルス属ウイルスであるデングウイルスなどと区別してより精度よく増幅することが可能である。その結果、アジア型およびアフリカ型のZIKVをより精度よく検出することができる。
【0073】
増幅産物の検出は、例えば、蛍光を指標に行うことができる。その場合、増幅産物の検出は、例えば、カルセインを含む蛍光試薬やインタカレータなど、増幅産物または増幅反応の存在に応じて蛍光を生ずる試薬を用い、生じた蛍光を検出することにより行われればよい。増幅産物の検出は、例えば、経時的に、または増幅反応を開始した後の特定の時点で行われる。
【0074】
例えば、核酸の増幅および増幅産物の検出は、それぞれ公知の装置によって行われてもよい。例えば、核酸の増幅および増幅産物の検出は、一つの装置によって行われてもよい。このような装置は、例えば、Genelyzer(登録商標)FIII(東芝メディカルシステムズ社)、またはGenie(登録商標)III(Optigene社製)等であれば、より迅速に検出できるため好ましい。
【0075】
試料に、ZIKVが含まれているか否かの判定は、例えば、特定の時点で増幅産物が予め定められた閾値以上であるか否かを基準として行われる。例えば、予め定めた値以上の強度の蛍光が測定されたときに、試料中にZIKVが含まれていると判定すればよい。或いは、予め定められた値以上の強度の蛍光が測定されるまでにかかった時間が、予め定められた時間よりも短い場合に、試料中にZIKVが含まれていると判定すればよい。例えば、増幅開始から30分までの間に予め定められた閾値以上の蛍光が測定されたときに試料にZIKVが含まれていると判定してもよい。
【0076】
このような方法によれば、従来よりも精度よくかつ迅速にZIKVを検出することが可能となる。
【0077】
当該方法では、増幅産物またはその一部分として核酸構造体が得られる。このような核酸構造体も実施形態として提供される。これらの核酸構造体の存在を検出することにより、アジア型および/またはアフリカ型のZIKVが検出できる。
【0078】
アジア型検出用プライマー群を含む実施形態のプライマーセットを用いた当該方法において形成される核酸構造体について、
図3を参照しながら説明する。
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)および
図3(d)は、互いに相補的な配列からなる二本鎖領域であるステム部分と、この二本鎖領域により形成された一本鎖領域であるループ部分とを含むステム・ループ構造体を示す。
【0079】
図3(a)の核酸構造体は、3’側から5’側に向けて、F1配列、F2c配列およびF1c配列をこの順番で含む。F1配列およびF1c配列は、互いに結合し二本鎖を形成している。
【0080】
図3(b)の核酸構造体は、3’側から5’側に向けて、B1配列、B2配列およびB1c配列をこの順番で含む。B1配列および前記B1c配列は、互いに結合し二本鎖を形成している。
【0081】
図3(c)の核酸構造体は、5’側から3’側に向けて、F1c配列、F2配列およびF1配列をこの順番で含む。F1c配列および前記F1配列は、互いに結合し二本鎖を形成している。
【0082】
図3(d)の核酸構造体は、5’側から3’側に向けて、B1c配列、B2c配列およびB1配列をこの順番で含む。B1c配列および前記B1配列は、互いに結合し二本鎖を形成している。
【0083】
図3(e)および(f)は、3’側と5’側にそれぞれステム・ループ構造を有するダンベル構造体を示す。
【0084】
図3(e)の核酸構造体は、3’側から5’側に向けて、F1配列、F2c配列、F1c配列、B1配列、B2配列およびB1配列をこの順番で含む。F1配列とF1c配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、B1配列とB1c配列とが互いに結合し二本鎖を形成している。
【0085】
図3(f)の核酸構造体は、5’側から3’側に向けて、F1c配列、F2配列、F1配列、B1c配列、B2c配列およびB1配列をこの順番で含む。F1c配列とF1配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、B1c配列とB1配列とが互いに結合し二本鎖を形成している。
【0086】
核酸構造体は、アフリカ型検出用プライマー群を用いた方法によっても形成される。即ち、実施形態によれば、以下の核酸構造体も提供される(図示せず)。
【0087】
(g)3’側から5’側に向けて、F1−2配列、F2c−2配列およびF1c−2配列をこの順番で含み、且つ前記F1−2配列と前記F1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第5のステム・ループ構造体、
(h)3’側から5’側に向けて、B1−2配列、B2−2配列およびB1c−2配列をこの順番で含み、前記B1−2配列と前記B1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第6のステム・ループ構造体、
(i)5’側から3’側に向けて、F1c−2配列、F2−2配列およびF1−2配列をこの順番で含み、前記F1c−2配列と前記F1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第7のステム・ループ構造体、
(j)5’側から3’側に向けて、B1c−2配列、B2c−2配列およびB1−2配列をこの順番で含み、前記B1c−2配列と前記B1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第8のステム・ループ構造体、
(k)3’側から5’側に向けて、F1−2配列、F2c−2配列、F1c−2配列、B1−2配列、B2−2配列およびB1c−2配列をこの順番で含み、且つ前記F1−2配列と前記F1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、前記B1−2配列と前記B1c−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第5のダンベル構造体、および/または
(l)5’側から3’側に向けて、F1c−2配列、F2−2配列、F1−2配列、B1c−2配列、B2c−2配列およびB1−2配列をこの順番で含み、且つ前記F1c−2配列と前記F1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成し、前記B1c−2配列と前記B1−2配列とが互いに結合し二本鎖を形成している第6のダンベル構造体。
【0088】
これらの核酸構造体に含まれる配列は、増幅反応に使用されるプライマーセットの配列により決定される。即ち、当該核酸構造体は、上述したプライマーセットが提供されることにより初めて得られるものである。そして、このような核酸構造体を検出すれば、ZIKVを従来に比べて精度よく検出することが可能となる。例えば、
図3(a)〜(f)の核酸構造体を検出することにより、アジア型のZIKVを検出することができ、上記(g)〜(l)の核酸構造体を検出することにより、アフリカ型のZIKVを検出することができる。また、このような核酸構造体は、上述のプライマーセットを用いることによって迅速に形成される。従って、当該核酸構造体は、アジア型および/またはアフリカ型のZIKVを迅速に検出するために使用することができる。
【0089】
また実施形態によれば、試料にZIKVが含まれているか否かを判定する方法において使用するためのアッセイキットが提供される。そのようなアッセイキットは、上述した何れかのプライマーセットを含めばよい。更に、当該アッセイキットは、プライマーセットを収容する容器、増幅反応を行うための酵素、基質、洗浄液、緩衝液および/または緩衝液を調製するための塩類などを含んでもよい。
【0090】
このようなアッセイキットによれば、ZIKVを従来に比べて精度よく検出することが可能である。また、このようなアッセイキットによって、ZIKVの遺伝子を短い時間で増幅することが可能である。そのため、ZIKVの検出を迅速に行うことが可能である。
【0091】
[例]
例1:実施形態のプライマーセットを用いたアフリカ型ジカウイルスの検出
(1)鋳型RNAの準備
Vero細胞(アフリカミドリザル由来)にジカウイルス(ZIKV976Uganda:アフリカ型)を接種した。感染上清(140μL)から、Viral RNA Mini kit(キアゲン社)を用いて、キット付属のプロトコールに従いウイルスRNAを抽出および精製した。最終的にRNase free水(60μL)に溶出したものを鋳型RNAとして使用した。
【0092】
(2)プライマーセットの準備
上記ウイルスRNAの検出を行うためのプライマーセットを作製した。作製したプライマーセットを表7に示す。プライマーセットは、F3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LFcループプライマーおよびLBcループプライマーが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号13および配列番号14であるアジア型検出用プライマー群、並びにF3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー、BIPプライマー、LFcループプライマーおよびLBcループプライマーが、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23および配列番号14であるアフリカ型検出用プライマー群を含む。
【表7】
【0093】
(3)増幅反応液の調整
上記プライマーセットを含むプライマー混合液(4μL)を調製した。プライマー混合液の組成を表8に示す。
【表8】
【0094】
次に、プライマー混合液(4μL)を含む反応マスターミックス(20μL)を調製した。反応マスターミックスの組成を表9に示す。
【表9】
【0095】
8セットの反応マスターミックス(20μL)に(1)で準備した鋳型RNA(5μL)を添加し、表10に示す8セットの増幅反応液(25μL)を得た。
【表10】
【0096】
増幅反応液は、それぞれ鋳型RNAを1.0×10
6コピー(well1)、1.0×10
5コピー(well2)、1.0×10
4コピー(well3)、1.0×10
3コピー(well4)、1.0×10
2コピー(well5)、1.0×10コピー(well6)、1.0コピー(well7)および0コピー(ネガティブコントロール、well8)含む。ネガティブコントロールは、反応マスターミックス(20μL)に水(5μL)を添加して作製した。
【0097】
(4)増幅反応
各増幅反応液に対して、等温遺伝子増幅検出装置Genie(登録商標)III(Optigene社製)を用いて増幅反応および検出を行った。温度制御は以下のように行った。
【0098】
Preheat:40℃
Amplification:65℃、30分
Melt:95℃〜75℃、0.1℃/秒
結果を
図4に示す。
【0099】
ネガティブコントロールおよび鋳型RNAを1.0コピー含む試料においては、測定時間0分〜60分までの何れの時点においても蛍光値は0であった。鋳型RNAを鋳型RNAを1.0×10
6コピー、1.0×10
5コピー、1.0×10
4コピー、1.0×10
3コピー、1.0×10
2コピー、1.0×10コピー含む試料においては、何れも30分以内に蛍光値の立ち上がり(鋳型RNAの増幅)が得られた。特に、1.0×10
6コピーまたは1.0×10
5コピーでは、約15分で蛍光値の立ち上がり(鋳型RNAの増幅)が得られ、1.0×10
3コピー、1.0×10
2コピーまたは1.0×10コピーでは、20分〜25分の間に蛍光値の立ち上がり(鋳型RNAの増幅)が得られた。
【0100】
この結果から、実施形態のプライマーセットによればアフリカ型のZIKVを短時間で、精度よく検出できることが明らかとなった。
【0101】
例2:実施形態のプライマーセットを用いたアジア型およびアフリカ型ジカウイルスの検出、並びに増幅温度の違いによる検出精度の評価
(1)鋳型RNAの準備
アフリカ型ジカウイルス(ZIKV 976Uganda)、アジア型ジカウイルス(ZIKV PRVABC59)、並びに2種類のデングウイルス(Dengue Virus serotype1およびDengue Virus serotype3)をそれぞれ接種したVero細胞を用意した。各細胞の感染上清(140μL)からViral RNA Mini kit(キアゲン社)を用いて、キット付属のプロトコールに従い、それぞれのウイルスRNAを抽出および精製した。最終的にRNase free水(60μL)に溶出したものを鋳型RNAとして使用した。
【0102】
(2)プライマーセットおよび増幅反応液の準備
例1と同じプライマーセットを用いて、例1と同様の反応マスターミックスを調製した。
【0103】
8セットの反応マスターミックス(20μL)に、(1)で準備した鋳型RNA(5μL)を添加し、表11に示す8セットの増幅反応液(25μL)を得た。
【表11】
【0104】
増幅反応液は、それぞれDengue Virus serotype1の鋳型RNAを2.0×10
4コピー(well1、well2(2反復))、Dengue Virus serotype3の鋳型RNAを2.0×10
4コピー(well3、well4(2反復))、ZIKV 976Ugandaの鋳型RNAを1.0×10
2コピー(well5)、ZIKV PRVABC59の鋳型RNAを1.0×10
2(well6)、および0コピー(ネガティブコントロール、well7、8)含む。ネガティブコントロールは、反応マスターミックス(20μL)に水(5μL)を添加して作製した。
【0105】
(3)増幅反応
各増幅反応液に対して、等温遺伝子増幅検出装置Genie(登録商標)III(Optigene社製)を用いて、以下の3つの異なる温度条件で増幅反応および検出を行った。
【0106】
条件1
Preheat:40℃
Amplification:63℃、30分
Melt:95℃〜75℃、0.1℃/秒
条件2
Preheat:40℃
Amplification:65℃、30分
Melt:95℃〜75℃、0.1℃/秒
条件3
Preheat:40℃
Amplification:67℃、30分
Melt:95℃〜75℃、0.1℃/秒
結果を
図5に示す。
【0107】
図5の(a)は、条件1での結果を示す。アフリカ型ZIKV(well5)およびアジア型ZIKV(well6)のRNAをそれぞれ14分30秒、18分45秒で増幅することができた。しかしながら、デングウイルスRNAを含むサンプルのうち、2サンプル(well1、3)でもRNAが増幅された。
【0108】
図5の(b)は、条件2での結果を示す。デングウイルスRNAは増幅されず、アフリカ型ZIKV(well5)およびアジア型ZIKV(well6)のRNAのみを増幅することができた。
【0109】
図5の(c)は、条件3での結果を示す。デングウイルスRNAおよびアジア型ZIKV(well5)が増幅されず、アフリカ型ZIKV(well6)のRNAのみが増幅された。
【0110】
以上の結果から、実施形態のプライマーセットによれば、ZIKVのRNAが1.0×10
2コピー存在する増幅反応液においては、63℃〜67℃の増幅条件でアフリカ型ZIKVを検出することができ、63℃〜65℃でアジア型ZIKVを検出することができ、65℃以上であれば、デングウイルスと区別してZIKVを特異的に増幅および検出できることが明らかとなった。
【0111】
例3:逆転写酵素の添加条件による検出感度の評価
実施形態のプライマーセットを用いたZIKVのRNAの検出を、逆転写酵素の種類または逆転写酵素の濃度の異なる条件で行い、各条件における検出感度を評価した。
【0112】
(1)試料の調整
各1mLのPBS並びに健常人から採取した血清および尿に、ZIKV(976Uganda)懸濁液(10μL)を添加し、最終ウイルス力価14.5TCID
50/mLの疑似感染試料を得た。疑似感染試料(140μL)をRNA抽出キット(キアゲン社)で抽出し、ウイルスRNA液を得た。
【0113】
(2)LAMP増幅
以下の3つの逆転写酵素の添加条件の増幅反応液を調製した。
【0114】
1.AMV RTase(Optigene社) 0.15U/反応
2.AMV RTase(Optigene社) 1U/反応
3.WarmStart RTx(NEB社) 1U/反応
各増幅反応液は、他に、それぞれ、例1のプライマーセット(各F3およびB3を0.2μM、FIPおよびBIPを0.8μM、LFおよびLBを0.4μM)を含む。各増幅反応液に対して、Genie(登録商標)III(Optigene社製)を用いて増幅反応および検出を行った。結果を表12に示す。
【表12】
【0115】
表中の「陽性(数)」は、測定時間(30分)以内に明らかな蛍光値の増加を示したサンプル数を示し、「陽性(率)」は、全サンプル数(4サンプル)に対する、明らかな蛍光値の増加を示したサンプル数の割合を示す。WarmStart RTx(表中ではWS RTxと表記)を用いた場合、何れの試料においても、他の2条件と比べて蛍光値が得られたサンプル数が多く、検出時間が短かった。従って、WarmStart RTxによれば、検出の感度が向上し、かつ検出時間が短縮できることが明らかとなった。